(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
地球資源の有効利用を促進する上で、少なくとも樹脂硬化物と不溶物を含む複合体の廃材などを再生利用することは極めて重要である。
上記の複合体として、例えば、エポキシ樹脂とカーボン繊維を含むカーボン繊維強化プラスチック(適宜、CFRPと略称する。)、不飽和ポリエステル樹脂とガラス繊維を含むガラス繊維強化プラスチック(適宜、GFRPと略称する。)、エポキシ樹脂と金属部品を含むモールドコイル(適宜、モールドコイルと略称する。)、又は、導電性コイルと絶縁ワニスを含むモーターコイル(適宜、モーターコイルと略称する。)が挙げられる。これらCFRP、GFRP、モールドコイル及びモーターコイル等の複合体の廃材は、その廃棄量が膨大であることから、再生利用を行うことを目的として、様々な技術が研究開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、エポキシ樹脂と不溶物からなる複合材料のリサイクル方法として、分解触媒と有機溶媒とを含む溶解液で処理し、エポキシ樹脂硬化物を分解及び溶解させたのち、無機物を回収する方法が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、不飽和ポリエステル樹脂と不溶物からなる複合材料のリサイクル方法として、分解触媒と有機溶媒とを含む溶解液で処理し、不飽和ポリエステル樹脂硬化物を分解及び溶解させたのち、不溶物を回収する方法が開示されている。
【0005】
(従来例)
次に、従来例にかかる複合体の溶解処理装置について、図面を参照して説明する。
図3は、従来例にかかる複合体の溶解処理装置を説明するための要部の概略図を示している。
図3において、従来例にかかる複合体の溶解処理装置101(適宜、溶解処理装置101と略称する。)は、一般的に、バッチ式の処理装置であり、複合体(図示せず)を収納する容器111、溶解槽102、加熱手段103、冷却手段104、冷却還流手段105、溶解液受槽106及び容器111を移送する移送手段(図示せず)などを備えている。
【0006】
なお、複合体(図示せず)は、少なくとも樹脂硬化物と不溶物からなっており、不溶物として、例えば、ガラス繊維、カーボン繊維、導電材料及び導電金属加工部品の少なくとも一つが挙げられる。
また、回収される不溶物は、再利用時の価値を維持したり向上させ
たりするために、粉砕しない、或は、細かく粉砕しない方が望ましい場合が多い。
【0007】
容器111は、フレームにパンチングメタル、エキスパンドメタル又は金網等が取り付けられた直方体状であり、あらかじめ複合体が収納されている。
また、移送手段は、コンベアなどの移動手段及びクレーンなどの昇降手段を有しており、容器111を溶解槽102に投入したり、溶解槽102から容器111を取り出したりする。
また、溶解槽102は、蓋開閉手段(図示せず)を有しており、容器111を収容する。
また、冷却手段104及び冷却還流手段105は、それぞれ冷却用熱交換器を有しており、溶解液12及び溶解液12の蒸気を冷却する。
【0008】
上記の溶解処理装置101は、複合体の収納された容器111が溶解槽102に投入され、溶解槽102の蓋を閉じた後、新しい溶解液12が溶解槽102に供給される。次に、加熱手段103が溶解液12を所定の温度に加熱し、この状態で所定の時間を経過させることによって、複合体の中の樹脂硬化物が分解され溶解液12に溶解し、不溶物が容器111に残る。なお、溶解液12については、後述する。
【0009】
次に、溶解処理装置101は、冷却手段104が溶解槽102内の溶解液12を安全な温度まで冷却した後に、溶解液12が溶解液受槽106に排出される。続いて、溶解槽102の蓋が開かれ、容器111が溶解槽102から取り出される。容器111に残された不溶物は、取り出された後、洗浄及び乾燥工程を経て回収される。また、溶解液受槽106に排出された溶解液12は、処理能力が大幅に低下するまで、新しい溶解液12の代わりに用いられる。
なお、上記の工程が繰り返し行われ、溶解液12の処理能力がなくなると、繰り返し使用されてきた溶解液12は、別の溶解液再生工程で再生される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[複合体の溶解処理装置、及び、複合体の溶解処理方法の実施形態]
図1は、本発明の実施形態にかかる複合体の溶解処理装置を説明するための要部の概略図を示している。
図1において、本実施形態の複合体の溶解処理装置1(適宜、溶解処理装置1と略称する。)は、溶解槽2、投入手段3、取出手段4、冷却洗浄手段5、溶解液管理手段6及び溶解液再利用手段7などを備えた構成としてある。
この溶解処理装置1は、少なくとも樹脂硬化物と不溶物を含む複合体(図示せず)に対し、所定の溶解液12を用いて、樹脂硬化物を分解し溶解させ、樹脂硬化物を分離し不溶物を排出(回収)する。
【0018】
(複合体)
本実施形態の複合体は、上述したように、少なくとも樹脂硬化物と不溶物からなっており、例えば、CFRP、GFRP、モールドコイル及びモーターコイルの少なくとも一つが挙げられる。
また、樹脂硬化物として、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂及びワニスの少なくとも一つが挙げられる。
また、不溶物として、例えば、ガラス繊維、カーボン繊維、導電材料及び導電金属加工部品の少なくとも一つが挙げられる。
さらに、回収される不溶物は、上述したように、再利用時の価値を維持したり向上させ
たりするために、粉砕しない、或は、細かく粉砕しない方が望ましい場合が多い。したがって、本実施形態では、粉砕しない、或は、粗く粉砕された複合体を容器11に収納し、この状態で溶解処理を行う構成としてある。これにより、粉砕に関連するコストを削減することができる。
【0019】
(容器)
容器11は、フレームにパンチングメタル、エキスパンドメタル又は金網等が取り付けられた直方体状であり、あらかじめ複合体が収納されている。このような容器11を用いることにより、溶解処理前の複合体、及び、溶解処理後の不溶物の形状や大きさが様々な場合であっても、効率よく投入、搬送及び取出等を行うことができる。
なお、容器11の形状は、上記に限定されるものではなく、また、網目寸法や開口率は、不溶物の形状や寸法などに応じて、適宜、設定される。
【0020】
(溶解槽)
溶解槽2は、横型のほぼ円筒状の槽としてあり、両端に鏡板を有し、また、両端付近の上部に、容器11を投入するための投入口、及び、容器11を取り出すための取出口が設けられている。この溶解槽2は、複数の容器11を収容するとともに、投入されたこれらの容器11を搬送する搬送手段21を有している。また、溶解槽2は、溶解処理装置1の稼動中、樹脂硬化物を
分解し溶解する溶解液12が常に貯留されており、従来例の溶解処理装置101と比べると、溶解液12の供給及び排出を頻繁に行う必要がないので、処理効率を向上させることができる。また、内部の圧力を常圧としてあるので、耐圧構造とする必要がなくなり、設備費用のコストダウンを図ることができる。
なお、溶解槽2は、強度や耐温度変化特性等を考慮し、円筒型状としてあるが、これに限定されるものではなく、例えば、箱型形状でもよい。
【0021】
搬送手段21は、通常、チェーンコンベア等が用いられ、投入された容器11を横方向に(本実施形態では、左側から右側へ)搬送する。この搬送手段21は、図示してないが、フレーム、ガイドレール、スプロケット、チェーン、駆動シャフト及び位置センサ等を有している。
このようにすると、容器11に収納され、溶解槽2内に投入された複合体は、搬送手段21によって、一定間隔毎に一定ピッチずつ投入口側から取出口側へ搬送され、この間に溶解液12によって、樹脂硬化物は分解
し溶解され溶解液に分散され、一方、溶解されない不溶物は容器11内に残り、取出手段4によって溶解槽2から取り出される。
【0022】
(溶解液)
本実施形態の所定の溶解液12は、溶剤としてのベンジルアルコールと、触媒としてのリン酸三カリウムとを含んでおり、投入された複合体の樹脂硬化物を
分解し溶解する。また、溶解槽2内の溶解液12は、後述する溶解液管理手段6によって、液温が約195℃(溶解液12の沸点より10℃程度低い温度)に制御される。
なお、溶解液12は、上記に限定されるものではなく、例えば、溶剤としてはアルコール類、ケトン類又はエーテル類を含んでいればよい。また、触媒としてはリン酸塩類、又は金属水酸化物類を含んでいればよい。このようにすると、大気圧下であっても、短時間で熱硬化性樹脂を溶解することができる。したがって、耐圧構造などを必要としないので、設備費用のコストダウンを図ることができ、また、溶解するまでの時間が短縮でき、ランニング費用のコストダウンを図ることができる。
また、アルコール類、ケトン類又はエーテル類として、例えば、ベンジルアルコール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジイソブチルケトン、メチルシクロヘキサノン、又は、ジエチレングリコールジメチルエーテルが挙げられる。
リン酸塩類、又は金属水酸化物類として、例えば、リン酸三ルビジウム、リン酸三カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三リチウム、水酸化ルビジウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、又は、水酸化リチウムが挙げられる。
【0023】
(投入手段)
投入手段3は、溶解槽2の投入口を覆い、外気から遮断する投入用パスボックス31、この投入用パスボックス31の内部の雰囲気を制御する雰囲気制御手段32、溶解槽2の投入口蓋22を開閉する蓋開閉手段33、及び、容器11を溶解槽2へ投入するための移送手段34などを備えており、複合体を収納した容器11を溶解槽2へ投入する。
【0024】
投入用パスボックス31は、フレーム及びシート材(板状部材でもよい。)などを備えた密閉構造、あるいは、ほぼ密閉構造を有するボックスとしてあり、容器11を通すための開閉シャッター311などを備えている。
また、雰囲気制御手段32は、外気導入手段、窒素ガス導入手段、排気手段、酸素濃度計(図示せず)及び溶剤ガス濃度計(図示せず)などを有している。また、外気導入手段、窒素ガス導入手段及び排気手段は、通常、ファン、弁、ガスタンクやノズルなどを有しており、プログラマブルロジックコントローラなどの制御手段(この制御手段は、通常、溶解処理装置1の他の機器などをも制御する。)によって、後述するように制御される。
【0025】
また、蓋開閉手段33は、溶解槽2の投入口蓋22を投入口のフランジに上方から押さえ付けるための押圧用のエアシリンダ、及び、投入口蓋22を水平方向に移動させる移動用のエアシリンダなどを有している。この蓋開閉手段33は、投入口蓋22を閉めるとき、押圧用のエアシリンダで押さえ付け、また、投入口蓋22を開けるときは、押圧用のエアシリンダによる押さえ付けを開放し、移動用のエアシリンダが投入口蓋22を水平方向に移動させる。なお、投入口のフランジには、Oリング等のシール部材が取り付けられている。このようにすると、投入口蓋22を閉じているとき、溶解槽2内の高濃度の溶剤ガスの漏出と空気の混入を防止することができる。
【0026】
また、移送手段34は、通常、走行手段341及び昇降手段342を有している。
走行手段341は、例えば、ローラコンベア、ガイドレール、位置決め用のストッパ及び位置センサを有しており、複合体の収納された容器11を水平方向に移送する。
また、昇降手段342は、例えば、フック付きエアシリンダ、このフック付きエアシリンダを垂直方向に移動させるエアシリンダ、ガイドレール、位置決め用のストッパ及び位置センサを有しており、複合体の収納された容器11を垂直方向に移送する。
【0027】
次に、投入手段3の動作及び雰囲気制御手段の制御などについて説明する。
まず、走行手段341の一方の端部(この端部は、投入用パスボックス31の外側に位置している。)に容器11が載置されると、開閉シャッター311が開き、容器11が投入用パスボックス31の内部に移送されると、開閉シャッター311が閉じる。この際、容器11を移送する前に、制御手段が外気導入手段と排気手段を制御し、投入用パスボックス31内の酸素濃度が酸欠濃度(例えば、18%)以上であり、溶剤ガス濃度が爆発下限濃度(例えば、25%LEL(Lower Explosion Limit))以下になっていることを確認してから、開閉シャッター311を開けて、容器11を投入用パスボックス31の内部に移送する。これによって、投入用パスボックス31内の窒素ガスや溶媒ガスが外の作業環境に漏出するのを防ぐことができる。
【0028】
次に、走行手段341の他方の端部(この端部は、投入用パスボックス31の内側に位置している。)に容器11が移送されると、投入口蓋22が開き、昇降手段342が容器11を溶解槽2の搬送手段21上に移送し、投入口蓋22が閉じられる。この際、投入口蓋22を開く前に、制御手段が窒素ガス導入手段と排気手段を制御し、投入用パスボックス31内の酸素濃度が限界酸素濃度(例えば、8%)以下になっていることを確認してから、投入口蓋22を開けて、昇降手段342が容器11を溶解槽2内に投入する。これによって、仮に投入用パスボックス31内の溶剤ガス濃度が爆発範囲内に入ったとしても、酸素濃度が限界酸素濃度以下に抑え
られているので爆発を防止することができる。
このように、投入手段3によれば、容器11を溶解槽2に投入する際、溶解液12中の
溶剤の蒸気成分が作業環境に拡散されるといった不具合を防止するので、作業環境を向上させることができ、また、酸素濃度を限界酸素濃度以下に抑えることにより、安全性を向上させることができる。
【0029】
(取出手段)
取出手段4は、溶解槽2の取出口を覆い、外気から遮断する取出用パスボックス41、この取出用パスボックス41の内部の雰囲気を制御する雰囲気制御手段42、溶解槽2の取出口蓋23を開閉する蓋開閉手段43、及び、容器11を溶解槽2から取り出すための移送手段44などを備えており、溶解されない不溶物を収納した容器11を溶解槽2から取り出す。
【0030】
取出用パスボックス41は、フレーム及びシート材(板状部材でもよい。)などを備えた密閉構造、あるいは、ほぼ密閉構造を有するボックスとしてあり、容器11を通すための開閉シャッター411などを備えている。なお、本実施形態では、取出用パスボックス41が、後述する冷却洗浄手段5の処理槽51の出入口をも覆う構成としてあるので、投入用パスボックス31より大型となっている。
また、雰囲気制御手段42は、外気導入手段、窒素ガス導入手段、排気手段、酸素濃度計(図示せず)及び溶剤ガス濃度計(図示せず)などを有している。また、外気導入手段、窒素ガス導入手段及び排気手段は、通常、ファン、弁、ガスタンクやノズルなどを有しており、上記の制御手段によって、後述するように制御される。
【0031】
また、蓋開閉手段43は、溶解槽2の取出口蓋23を取出口のフランジに上方から押さえ付けるための押圧用のエアシリンダ、及び、取出口蓋23を水平方向に移動させる移動用のエアシリンダなどを有している。この蓋開閉手段43は、取出口蓋23を閉めるとき、押圧用のエアシリンダで押さえ付け、また、取出口蓋23を開けるときは、押圧用のエアシリンダによる押さえ付けを開放し、移動用のエアシリンダが取出口蓋23を水平方向に移動させる。なお、取出口のフランジには、Oリング等のシール部材が取り付けられている。このようにすると、取出口蓋23を閉じているとき、溶解槽2内の高濃度の溶剤ガスの漏出と空気の混入を防止することができる。
【0032】
また、移送手段44は、通常、昇降手段442及び走行手段441を有している。
昇降手段442は、例えば、フック付きエアシリンダ、このフック付きエアシリンダを水平方向に移動させるエアシリンダ、ガイドレール、位置決め用のストッパ及び位置センサを有しており、不溶物の収納された容器11を垂直方向に移送する。
また、走行手段441は、例えば、ローラコンベア、ガイドレール、位置決め用のストッパ及び位置センサを有しており、複合体の収納された容器11を水平方向に移送する。
【0033】
次に、取出手段4の動作及び雰囲気制御手段の制御などについて説明する。
まず、取出口蓋23が開き、昇降手段442が容器11を溶解槽2の搬送手段21上から走行手段441の一方の端部(この端部は、取出用パスボックス41の内側に位置している。)上に移送し、取出口蓋23が閉じられる。この際、取出口蓋23を開く前に、制御手段が窒素ガス導入弁と排気弁を制御し、取出用パスボックス41内の酸素濃度が限界酸素濃度(例えば、8%)以下になっていることを確認してから、取出口蓋23を開けて、昇降手段が容器11を溶解槽2から取り出す。これによって、仮に取出用パスボックス41内の溶剤ガス濃度が爆発範囲内に入ったとしても、酸素濃度が限界酸素濃度以下に抑え
られているので爆発を防止することができる。
【0034】
次に、走行手段441の一方の端部に容器11が載置されると、走行手段441が、容器11を開閉シャッター411の方向に移送する。なお、本実施形態では、この移送の途中で、冷却洗浄手段5が容器11及び不溶物を冷却及び洗浄する。開閉シャッター411の前まで移送されると、開閉シャッター411が開き、容器11が走行手段441の他方の端部(この端部は、取出用パスボックス41の外側に位置している。)まで移送されると、開閉シャッター411が閉じる。この際、開閉シャッター411を開ける前に、制御手段が外気導入弁と排気弁を制御し、取出用パスボックス41内の酸素濃度が酸欠濃度(例えば、18%)以上であり、溶剤ガス濃度が爆発下限濃度(例えば、25%LEL)以下になっていることを確認してから、開閉シャッター411を開けて、容器11を取出用パスボックス41の外部に移送する。これによって、取出用パスボックス41内の窒素ガスや
溶剤ガスが外の作業環境に漏出するのを防ぐことができる。
このように、取出手段4によれば、容器11を溶解槽2から取り出す際、溶解液12中の
溶剤の蒸気成分が作業環境に拡散されるといった不具合を防止するので、作業環境を向上させることができ、また、酸素濃度を限界酸素濃度以下に抑えることにより、安全性を向上させることができる。
【0035】
(冷却洗浄手段)
冷却洗浄手段5は、容器11を収容し、冷却及び洗浄を行うための処理槽51、容器11を移送する移送手段52、冷却及び洗浄を行うための液を循環させる液循環手段53、及び、処理槽51の処理槽用蓋511を開閉する蓋開閉手段54などを有し、取り出された不溶物を冷却及び洗浄する。
また、本実施形態では、冷却及び洗浄を行うための液として、溶解液12とほぼ同じものであり、かつ、溶解促進触媒を含まない
溶剤を使用している。これによって、例えば、分離及び精製の後処理工程が省力でき、処理コストの低減を図ることができる。
【0036】
処理槽51は、縦型のほぼ円筒状の槽としてあり、底部に鏡板を有し、また、上部に、容器11を出し入れする出入口が設けられている。この出入口には、処理槽用蓋511が取り付けられ、処理槽用蓋511を開閉するために、蓋開閉手段54が設けられている。また容器11の出し入れを行うために、移送手段52が設けられている。なお、蓋開閉手段54は、蓋開閉手段43とほぼ同様な構成としてあり、また、移送手段52は、昇降手段442とほぼ同様な構成としてある。
【0037】
また、液循環手段53は、液受槽、循環ポンプ、配管、弁及び噴射ノズルなどを有しており、処理槽51に容器11が収容され、処理槽用蓋511が閉められると、液受槽の液が噴射ノズルから吹き出て、容器11が浸漬される。ここで、容器11が浸漬された後も、液が噴射ノズルから吹き出るとよく、このようにすると、処理槽51内の液の循環撹拌効果が格段に向上し、効率よく冷却及び洗浄を行うことができる。
なお、冷却及び洗浄の完了後に、液を液受槽に戻すことにより、容器11や不溶物の表面に付着している液の液切りができ、液の持出を抑制することができる。
【0038】
(溶解液管理手段)
溶解液管理手段6は、溶解槽2内の溶解液12を循環することにより撹拌する溶解液循環撹拌手段61、前記溶解液12の温度を制御する溶解液温度制御手段62、溶解槽2への溶解液12の供給及び排出を行う溶解液供給排出手段、及び、溶解槽2内の溶解液蒸気を冷却し還流する冷却還流手段64などを有し、溶解槽2で溶解された樹脂を含む溶解液12を管理する。
【0039】
溶解液循環撹拌手段61は、循環用配管、循環用ポンプ、及び、溶解槽2の下方内部に配設された複数の噴射ノズルなどを有しており、溶解槽2内の溶解液12を循環させるとともに撹拌する。この溶解液循環撹拌手段61によって、溶解槽2内の溶解液12の組成等が均一になり、また、複合体の表面から分解し溶解された樹脂が速やかに溶解液12に分散され、複合体の表面が常に溶解液12と接触することによって、溶解速度が速くなり、処理時間の短縮を図ることができる。
なお、溶解液循環撹拌手段61の構成は、上記に限定されるものではなく、例えば、図示してないが、機械的な撹拌装置や、窒素ガス等によるバブリング手段を併用してもよい。
【0040】
溶解液温度制御手段62は、加温用熱交換器621、冷却用熱交換器622及び自動制御弁などを有している。加温用熱交換器621は、弁などを介して溶解槽2と連通しており、温度センサや温度コントローラにより制御される自動制御弁が、熱媒油(HM)を循環させると、溶解槽2内の溶解液12を加温する。また、冷却用熱交換器622は、弁などを介して溶解槽2と連通しており、冷却水(CW)を循環させることにより、溶解槽2内の溶解液12を冷却する。したがって、溶解処理装置1の立上時や通常運転時は、加温用熱交換器621で、溶解液12を加熱することができ、溶解液12の温度を安定させることができる。また、溶解処理装置1の立ち下げ時や緊急時は、冷却用熱交換器622で、系内の溶解液12の温度を所定温度まで下げて安全に溶解処理装置1を停止させることができる。
【0041】
また、溶解工程の進行に伴って、複合体の中の樹脂硬化物が分解し溶解され、溶解液12の中に蓄積されることなどによって、溶解液12の溶解能力が低下する。この能力低下を防止するため、溶解液12の循環系に溶解液
供給排出手段として、溶解液供給弁631及び溶解液排出弁632を有している。溶解液排出弁632は、使用済溶解液の一部を連続的に系外に排出し、溶解液供給弁631は、排出された使用済溶解液と等量の新溶解液を供給し、溶解槽2内の溶解液量を一定に維持する。このようにすると、溶解液としての処理能力を一定に維持できるので、溶解の品質不良(未溶解樹脂)が発生するといった不具合を防止でき、溶解処理の品質を向上させることができる。また、溶解液12の管理を単純化することができ、装置としての使い勝手などを向上させることができる。
【0042】
冷却還流手段64は、溶解槽2内の上部の気体(この気体は、ほぼ溶解液12の蒸気である。)を冷却する熱交換器などを有しており、熱交換器に冷却水(CW)を循環させることにより、溶解液12の蒸気を冷却して溶解槽2内の溶解液12に戻し、溶解液12を再利用する。
【0043】
(溶解液再利用手段)
溶解液再利用手段7は、溶解された樹脂を含む溶解液12(本実施形態では、溶解液排出弁632によって排出される使用済溶解液)から樹脂残渣を除去する蒸発装置71、この溶解液12から低沸点成分を除去する蒸留装置72、及び、前記溶解液12に触媒を調合する触媒調合装置73などを有し、溶解された樹脂を含む溶解液12を再利用する。
上述した溶解液排出弁632によって排出される使用済溶解液は、主に、溶解された樹脂等の不揮発成分、水等の低沸点成分、及び有機溶媒などを含有している。
【0044】
蒸発装置71は、使用済溶解液を蒸発させ、不揮発成分を樹脂残渣として分離排出し、蒸留装置72は、蒸発させた溶解液12を蒸留し、低沸点成分を分離排出する。また、触媒調合装置73は、蒸留装置72を経て得られた再生溶媒に対し、触媒を調合し、再生溶解液とする。この再生溶解液は、図示してないが、新溶解液の代わりに、溶解槽2内に供給される。このように、使用済溶解液をクローズドシステムによって再利用することにより、ランニングコストなどを低減することができる。
なお、蒸発装置71を経ることによって得られる樹脂残渣は、補助燃料(例えば、固形燃料と混合して使用される。)としての再利用が可能であり、また、蒸留装置72を経ることによって得られる低沸点成分は、別工程(図示せず)の処理液として再利用できる。
【0045】
次に、上記構成の溶解処理装置1の動作、及び、本実施形態の複合体の溶解処理方法などについて、図面を参照して説明する。また、本発明は、少なくとも樹脂硬化物と不溶物を含む複合体の溶解処理方法の発明としても有効であり、本実施形態の複合体の溶解処理方法は、上述した溶解処理装置1を用いる方法としてある。
図2は、本発明の実施形態にかかる複合体の溶解処理方法を説明するための概略フローチャート図を示している。
図2に示すように、まず、溶解処理装置1は、投入手段3が、複合体の収納された容器11を間欠的に溶解槽2に投入する(ステップS1)。
【0046】
(投入工程)
この投入工程において、投入手段3は、走行手段341の一方の端部(この端部は、投入用パスボックス31の外側に位置している。)に容器11が載置されると、開閉シャッター311を開く前に、投入用パスボックス31内の雰囲気を制御する(ステップS11)。すなわち、投入手段3は、投入用パスボックス31内の雰囲気の酸素濃度が酸欠濃度(例えば、18%)以上であり、かつ、溶剤ガス濃度が爆発下限濃度(例えば、25%LEL)以下になっているかどうかを確認する。そして、上記の条件を満足しない場合、外気導入手段及び排気手段を制御し、条件を満足するように雰囲気を制御し、条件を満足していることを確認する。これによって、開閉シャッター311を開いても、投入用パスボックス31内の窒素ガスや溶媒ガスが外の作業環境に漏出するのを防ぐことができる。
【0047】
次に、投入手段3は、開閉シャッター311を開き、走行手段341が、走行手段341の一方の端部に載置された容器11を投入用パスボックス31の内部に移送し(ステップS12)、開閉シャッター311を閉じる。なお、投入用パスボックス31の内部に移送された容器11は、走行手段341の他方の端部まで移送される。
【0048】
続いて、投入手段3は、投入口蓋22を開く前に、投入用パスボックス31内の雰囲気を制御する(ステップS13)。すなわち、投入手段3は、投入用パスボックス31内の酸素濃度が限界酸素濃度(例えば、8%)以下になるように、窒素ガス導入手段及び排気手段を制御し、上記の条件を満足していることを確認する。これによって、仮に投入用パスボックス31内の溶剤ガス濃度が爆発範囲内に入ったとしても、酸素濃度が限界酸素濃度以下に抑え
られているので爆発を防止することができる。
【0049】
次に、投入手段3は、蓋開閉手段33が投入口蓋22を開き、昇降手段342が、容器11を降下させ、溶解槽2の内部へ投入し(ステップS14)、投入が完了したら、蓋開閉手段33が投入口蓋22を閉じる。
この際、投入用パスボックス31内は溶解槽2から溢出した
溶剤ガスによって、
溶剤ガスの濃度が非常に高くなっているので、投入手段3は、窒素ガス導入手段及び排気手段を制御し、溶剤ガス濃度が爆発下限濃度(例えば、25%LEL)以下になるように雰囲気を制御してから、次の容器11の移送サイクルに備えて、外気導入手段及び排気手段を制御し、酸素濃度が酸欠濃度以上になるように雰囲気を制御する(ステップS15)。
【0050】
(溶解工程)
次に、溶解処理装置1は、溶解槽2に貯留された溶解液12を用いて、投入された容器11内の複合体の樹脂硬化物を溶解する(ステップS2)。
この際、溶解槽2に投入された複合体を収納した容器11は、溶解液12に浸漬した状態となり、搬送手段21によって、取出口側へ搬送される。この際、上述したように、容器11は、搬送手段21によって、一定間隔毎に一定ピッチずつ投入口側から取出口側へ搬送される。そして、搬送される間に、複合体の中の樹脂硬化物は、溶解液12で分解
し溶解され、溶解された樹脂は、溶解液12の中に分散され、溶解されない不溶物は容器11の中に残されている。
【0051】
(取出工程)
次に、溶解処理装置1は、取出手段4が、溶解されない不溶物を収納する容器11を溶解槽2から間欠的に取り出す(ステップS3)。
なお、本実施形態では、上述したように、取出用パスボックス41が冷却洗浄手段5の処理槽51の出入口をも覆う構成としてあるので、取出工程に、冷却洗浄工程が含まれる。
また、容器11を溶解槽2から取り出す前のタイミングにおいて、取出口蓋23及び処理槽用蓋511の上方の走行手段441には、容器11がなく、処理槽51に容器11が収容されており、開閉シャッター411の内側に容器11が待機しており、この状態から取出工程について説明する。
【0052】
この取出工程において、取出手段4は、開閉シャッター411を開く前に、取出用パスボックス41内の雰囲気を制御する(ステップS31)。すなわち、取出手段4は、取出用パスボックス41内の雰囲気の酸素濃度が酸欠濃度(例えば、18%)以上であり、かつ、溶剤ガス濃度が爆発下限濃度(例えば、25%LEL)以下になっているかどうかを確認する。そして、上記の条件を満足しない場合、外気導入手段及び排気手段を制御し、条件を満足するように雰囲気を制御し、条件を満足していることを確認する。これによって、開閉シャッター411を開いても、取出用パスボックス41内の窒素ガスや
溶剤ガスが外の作業環境に漏出するのを防ぐことができる。
【0053】
次に、取出手段4は、開閉シャッター411を開き、走行手段441が、開閉シャッター411の内側で待機している容器11を取出用パスボックス41の外部に移送し(ステップS32)、開閉シャッター411を閉じる。なお、取出用パスボックス41の外部に移送された容器11は、走行手段441の他方の端部まで移送される。
【0054】
続いて、取出手段4は、取出用パスボックス41内の雰囲気を制御する(ステップS33)。すなわち、取出手段4は、取出用パスボックス41内の酸素濃度が限界酸素濃度(例えば、8%)以下になるように、窒素ガス導入手段及び排気手段を制御し、上記の条件を満足していることを確認する。これによって、仮に取出用パスボックス41内の溶剤ガス濃度が爆発範囲内に入ったとしても、酸素濃度が限界酸素濃度以下に抑えているので爆発を防止することができる。
【0055】
次に、冷却洗浄手段5は、蓋開閉手段54が処理槽用蓋511を開け、移送手段52が収容していた容器11を処理槽51から取り出す(ステップS34)。
続いて、取出手段4は、蓋開閉手段43が取出口蓋23を開け、昇降手段442が容器11を溶解槽2から取り出し、走行手段441が、溶解槽2から取り出した容器11及び処理槽51から取り出した容器11を移送し、移送手段52が溶解槽2から取り出した容器11を処理槽51に投入し、投入が完了したら、取出口蓋23及び処理槽用蓋511が閉じられる(
ステップS35)。
【0056】
この際、取出用パスボックス41内は溶解槽2から溢出した
溶剤ガスによって、
溶剤ガスの濃度が非常に高くなっているので、取出手段4は、窒素ガス導入手段及び排気手段を制御し、溶剤ガス濃度が爆発下限濃度(例えば、25%LEL)以下になるように雰囲気を制御してから、次の容器11の移送サイクルに備えて、外気導入手段及び排気手段を制御し、酸素濃度が酸欠濃度以上になるように雰囲気を制御する(ステップS36)。
【0057】
なお、上記ステップS35において、容器11が処理槽51に投入されると、図示してないが、冷却洗浄工程が開始される。すなわち、溶解槽2から取り出された不溶物は、冷却及び洗浄を行うための液が循環されることによって、冷却されるとともに洗浄される。この際、容器11が浸漬された後も、液が循環され噴射ノズルから吹き出るとよく、このようにすると、処理槽51内の液の循環撹拌効果が格段に上がり、不溶物表面に付着している溶解された樹脂などを効率よく洗浄することができる。
そして、冷却及び洗浄の完了後に、弁を制御し、液を液受槽に戻すことにより、容器11や不溶物の表面に付着している液の液切りができ、液の持出を抑制することができる。
【0058】
上記の各工程が連続的に繰り返されることによって、溶解処理装置1は、あらかじめ容器11に収納された複合体を間欠的に溶解槽2に投入し、溶解槽2の中で樹脂硬化物が分解溶解され、冷却及び洗浄された不溶物を間欠的に取り出すことができ、処理効率を大幅に向上させることができる。さらに、従来例の溶解処理装置101と比べると、1サイクルの溶解処理中に、溶解液12の加熱及び冷却、並びに、溶解液12の供給及び排出を行う必要がないので、省エネ性及び処理効率を向上させることができる。
また、上記の各工程と並行して、後述する溶解液管理工程及び溶解液再利用工程が行われる。
【0059】
(溶解液管理工程)
溶解処理装置1は、溶解液管理手段6が溶解槽2で溶解された樹脂を含む溶解液12を管理する(ステップS4)。すなわち、溶解槽2内の溶解液12は、溶解液温度制御手段62によって所定温度(例えば、約195℃)に制御され、また、溶解液循環撹拌手段61によって、溶解された樹脂は複合体の表面から溶解液12に分散される。
また、溶解の進行に従って、溶解液12の中の樹脂濃度が徐々に高くなり、溶解液12の溶解処理能力が低くなることを防ぐため、連続的に所定量の溶解液12を使用済溶解液として系外に排出し、それによって不足となる溶解液12は、新溶解液(あるいは、上記の再生溶解液)で補充する。このようにすると、溶解液12の処理能力を容易に維持することができ、樹脂硬化物は、溶解槽2内で、安定的、かつ、効率よく溶解処理される。
【0060】
(溶解液再利用工程)
また、溶解処理装置1は、溶解された樹脂を含む使用済溶解液を再利用する(ステップS5)。すなわち、上記の溶解工程で排出される使用済溶解液は、水などの低沸点成分、有機溶媒及び樹脂硬化物等の不揮発成分を含有している。この使用済溶解液を再利用するには、まず、蒸発装置71が、揮発成分と不揮発成分(樹脂残渣)に分離する。この樹脂残渣は、補助燃料(例えば、固形燃料に添加する。)として再利用される。
次に、蒸留装置72が、蒸発装置71によって分離された揮発成分を、水等の低沸点成分と有機溶媒に分離する。この低沸点成分は、別の工程で再利用できる。
続いて、触媒調合装置73が、得られた有機溶媒に対し触媒を調合し、再生溶解液として上記の溶解工程で再利用される。
【0061】
以上説明したように、本実施形態の溶解処理装置1、及び、複合体の溶解処理方法によれば、処理品質、処理効率、省エネ性及び安全性などを向上させることができる。
また、少なくとも樹脂硬化物と不溶物を含む複合体に対して、樹脂硬化物を分解し溶解させ、不溶物を回収することによって、低コストでかつ、間欠的に連続した状態で、効率よく処理することができる。
【0062】
以上、本発明の複合体の溶解処理装置、及び、複合体の溶解処理方法について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明に係る複合体の溶解処理装置、及び、複合体の溶解処理方法は、上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
例えば、移送手段34、44や蓋開閉手段33、43などの構成は、上記に限定されるものではなく、様々な構成としてもよい。
また、取出用パスボックス41が、冷却洗浄手段5の処理槽51の出入口をも覆う構成としてあるが、これに限定されるものではなく、例えば、図示してないが、取出用パスボックス41の外側に処理槽51の出入口を設けてもよい。