特許第5884493号(P5884493)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5884493-重金属含有排水の処理方法 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5884493
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月15日
(54)【発明の名称】重金属含有排水の処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/52 20060101AFI20160301BHJP
   C02F 1/56 20060101ALI20160301BHJP
   C02F 1/44 20060101ALI20160301BHJP
   B01D 61/02 20060101ALI20160301BHJP
【FI】
   C02F1/52 K
   C02F1/56 K
   C02F1/44 E
   B01D61/02 500
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-3286(P2012-3286)
(22)【出願日】2012年1月11日
(65)【公開番号】特開2013-141641(P2013-141641A)
(43)【公開日】2013年7月22日
【審査請求日】2015年1月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(72)【発明者】
【氏名】育野 望
【審査官】 金 公彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−029964(JP,A)
【文献】 特開昭61−192386(JP,A)
【文献】 特開平11−090165(JP,A)
【文献】 特開2009−101359(JP,A)
【文献】 特開平02−157090(JP,A)
【文献】 特開2000−202461(JP,A)
【文献】 特開2010−227898(JP,A)
【文献】 特開2006−061754(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 21/01
C02F 1/44
C02F 1/52− 1/64
B01D 53/22
B01D 61/00−71/82
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重金属含有排水に塩化マグネシウムを添加し、pHを11以上とした後、アニオン系ポリマー凝集剤を添加し、
第1固液分離処理し、
その後、該第1固液分離処理の処理水に鉄系無機凝集剤を添加し、pH9.5〜11とした後、第2固液分離処理する重金属含有排水の処理方法であって、
該塩化マグネシウムの添加量が該重金属含有排水中の重金属1モルに対して25〜200モルであり、
該アニオン系ポリマー凝集剤の添加量が1〜5mg/Lであり、
該鉄系無機凝集剤の添加量が100〜300mg/Lであることを特徴とする重金属含有排水の処理方法。
【請求項2】
請求項1において、鉄系無機凝集剤は塩化第二鉄であることを特徴とする重金属含有排水の処理方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、重金属含有排水はCuを0.1mg/L以上含有することを特徴とする重金属含有排水の処理方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、前記第2固液分離処理の処理水を逆浸透処理することを特徴とする重金属含有排水の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重金属含有排水の処理方法に係り、特に重金属含有排水に塩化マグネシウムを添加し、固液分離する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、重金属含有排水処理方法としては
(i)アルカリ凝集沈殿法(アルカリ性とすることにより水酸化物を生成させ沈殿させる(例えば特許文献1,2))
(ii)Fe−Ca置換法(FeClで凝集あるいはキレート系重金属をFeで置換させた後アルカリ性にしてCaと置換。Fe、重金属は水酸化物として析出させる(例えば特許文献3))
(iii)Mg法(塩化マグネシウムを添加し次いでアルカリ性とすることにより金属を水酸化物として沈殿除去する(例えば特許文献4))が用いられてきた。
【0003】
なお、特許文献2には重金属含有排水を上記(i)のように処理した後、さらに逆浸透膜装置(以下、RO装置ということがある。)で膜分離処理することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−168798
【特許文献2】特開2002−320979
【特許文献3】特開2003−300081
【特許文献4】特開2003−293157
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、水回収率向上ニーズの高まりと共に重金属含有排水の処理水も回収し再利用するケースが増加している。水回収処理においてはROが主として用いられるが、ROは重金属に対して弱く、RO給水に0.1mg/L程度存在した場合でも、閉塞を引き起こし易い。また、排水中の重金属がRO膜表面に付着すると、これが酸化触媒として作用し、RO膜を劣化させることがある。そのため重金属含有排水の処理水をRO処理して回収するには上記前処理を施した後、カチオン交換塔あるいはキレート樹脂塔に通水し重金属濃度を低減させた後ROに通水する必要があった。
【0006】
本発明は、重金属含有排水中の重金属を容易に極低レベルまで除去することができる重金属含有排水の処理方法を提供することを目的とする。
【0007】
また、本発明はその一態様において、さらにRO処理する場合にRO膜の劣化を防止することができる重金属含有排水の処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の重金属含有排水の処理方法は、重金属含有排水に塩化マグネシウムを添加し、pHを11以上とした後、アニオン系ポリマー凝集剤を添加し、第1固液分離処理し、その後、該第1固液分離処理の処理水に鉄系無機凝集剤を添加し、pH9.5〜11とした後、第2固液分離処理する重金属含有排水の処理方法であって、該塩化マグネシウムの添加量が該重金属含有排水中の重金属1モルに対して25〜200モルであり、該アニオン系ポリマー凝集剤の添加量が1〜5mg/Lであり、該鉄系無機凝集剤の添加量が100〜300mg/Lであることを特徴とするものである。
【0009】
鉄系無機凝集剤としては塩化第二鉄が好適である。
【0010】
本発明は、重金属含有排水がCuを0.1mg/L以上含有する場合に適用するのに好適である。
【発明の効果】
【0011】
重金属含有排水に塩化マグネシウムを添加し、pHを11以上とすることによりキレート系重金属をMgで置換させると共に重金属を水酸化物として析出させる。これにポリマー凝集剤を添加することによりフロックが成長するので、第1固液分離処理によりフロックを除去する。この第1固液分離処理水に、鉄系無機凝集剤を添加すると、微量の残留していた重金属がFeとの共沈反応を引き起こし、第2固液分離により除去される。この鉄系無機凝集剤添加工程においてpHを9.5〜11とする理由は第1固液分離工程からリークする微小重金属とキレート有機物との再置換反応を防止するためである。これにより重金属濃度が著しく低い処理水となる。この処理水は、RO装置に通水されても、RO膜を閉塞させたり劣化させることが極めて少ない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態に係る重金属含有排水の処理方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0014】
[重金属含有排水]
重金属含有排水としては、銅配線基板のポリッシング工程などCuを多量に、例えば5〜20mg/L程度含む排水などが例示される。
【0015】
[塩化マグネシウムの添加及びpH調整]
この重金属含有排水に添加する塩化マグネシウムの量は、重金属含有排水中の重金属1モルに対し25〜200モル特に30〜100モル程度が好適である。
【0016】
塩化マグネシウム添加後は、アルカリを添加してpHを11以上、例えば11〜12特に好ましくは11.2〜11.5とし、重金属の水酸化物及びMg(OH)を析出させる。アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウムなどを用いることができる。
【0017】
[ポリマー凝集剤]
重金属及びマグネシウムの水酸化物を析出させた後、ポリマー凝集剤を添加して析出フロックを成長させる。このフロックは正に帯電しているので、ポリマー凝集剤としてはアニオン系ポリマー凝集剤を用いるのが好ましい。アニオン系ポリマー凝集剤の添加量は、1〜5mg/L特に2〜3mg/Lとなる程度が好ましい。
【0018】
[第1固液分離処理]
ポリマー凝集剤を添加してフロックを成長させた後、好ましくは沈降分離、遠心分離などの比重差分離によってフロックを除去する。これにより重金属及びマグネシウムの水酸化物がほぼ除去された第1固液分離処理水が得られる。
【0019】
[鉄系無機凝集剤の添加及びpH調整]
第1固液分離処理水に残留する重金属を除去するために、第1固液分離処理水に鉄系無機凝集剤を添加する。鉄系無機凝集剤としては、塩化第二鉄、ポリ硫酸鉄などが挙げられるが、特に好ましくは塩化第二鉄が挙げられる。鉄系無機凝集剤の添加量は100〜300mg/L特に150〜200mg/L程度が好ましい。この鉄系無機凝集剤の添加により、残留していた重金属がFeとの共沈反応により除去される。また、鉄系無機凝集剤中の鉄も水酸化鉄として析出する。
【0020】
第1固液分離処理水に鉄系無機凝集剤を添加した後、必要に応じpH調整剤を添加して、pHを9.5〜11に調整する。このpHが9.5よりも低いと、キレート系Mgと再置換し重金属がリークするおそれがあり、11よりも高いと鉄系無機凝集剤からのFeがリークするおそれがある。pH調整剤としては、塩酸、硫酸などの酸が用いられるが、これらに限定されない。
【0021】
[第2固液分離]
鉄系無機凝集剤添加後の固液分離としては、濾材層に通水する濾過が望ましい。濾材としては、砂、アンスラサイトなどを用いることができる。この第2固液分離処理により、重金属及び鉄の水酸化物が除去され、重金属濃度が著しく低い処理水が得られる。
【0022】
この処理水中の重金属濃度が著しく低いので、この処理水をRO処理しても、RO膜の閉塞や劣化が防止される。ROにより脱塩されたRO処理水は、冷却水、トイレ用中水、超純水製造用原水などに利用することができる。
【実施例】
【0023】
[実施例1]
銅配線基板のポリッシング工程から排出されるCu含有排水(Cu:10mg/L、pH7.2)を図1の通り反応槽1に導入し、塩化マグネシウムを200mg/L(as Mg)を添加した後、NaOHを添加してpH=11.5に調整した。これを凝集槽2に導入し、アニオン系ポリマー凝集剤(栗田工業(株)クリフロック PA372)を3mg/L添加した。これを沈降槽3に導入し、第1固液分離処理し、上澄水を反応槽4内に導入し、塩化第二鉄を100mg/Lとなるように添加し、NaOHを添加してpH=9.5に調整した。これを第2固液分離手段としての二層濾過器5(濾材:砂、アンスラサイト)にてLV=8m/hrにて濾過した。濾過処理水のSDI値及びCu濃度を表1に示す。
【0024】
[実施例2]
反応槽4のpHを10としたこと以外は実施例1と同様にして処理を行った。濾過処理水のSDI値及びCu濃度を表1に示す。
【0025】
[実施例3]
反応槽4のpHを11としたこと以外は実施例1と同様にして処理を行った。濾過処理水のSDI値及びCu濃度を表1に示す。
【0026】
[比較例1]
反応槽4のpHを11.5としたこと以外は実施例1と同様にして処理を行った。濾過処理水のSDI値及びCu濃度を表1に示す。
【0027】
[比較例2]
反応槽4のpHを9としたこと以外は実施例1と同様にして処理を行った。濾過処理水のSDI値及びCu濃度を表1に示す。
【0028】
[比較例3]
実施例1において、反応槽4以下を省略し、沈降槽3までの処理とした。沈降槽3から流出する上澄水のSDI値及びCu濃度を表1に示す。
【0029】
【表1】
【0030】
表1の通り、反応槽4のpHが9.5〜11であると、処理水のSDI値及びCu濃度が低い。これに対し、反応槽4のpHが11.5になると、処理水のCu濃度は低いがSDI値が高くなる。これはFeのリークによるものである。また、反応槽4のpHが9になると、処理水のSDI値は低いものの、CuがリークしてCu濃度が高くなる。
【0031】
この結果より、反応槽4のpHを9.5〜11とすることによりSDI値及びCu濃度の低い処理水が得られることが認められた。
【符号の説明】
【0032】
1 反応槽
2 凝集槽
3 沈降槽
4 反応槽
5 二層濾過器
図1