特許第5884563号(P5884563)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本ゼオン株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5884563
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月15日
(54)【発明の名称】ハードコートフィルム
(51)【国際特許分類】
   G02B 1/14 20150101AFI20160301BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20160301BHJP
   B32B 27/16 20060101ALI20160301BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20160301BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20160301BHJP
【FI】
   G02B1/14
   B32B27/00 B
   B32B27/16
   B32B27/30 A
   G09F9/00 313
   G09F9/00 366A
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-50229(P2012-50229)
(22)【出願日】2012年3月7日
(65)【公開番号】特開2013-186236(P2013-186236A)
(43)【公開日】2013年9月19日
【審査請求日】2014年8月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】小林 孝央
(72)【発明者】
【氏名】円谷 学
(72)【発明者】
【氏名】幸本 壮悟
【審査官】 吉川 陽吾
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/015332(WO,A1)
【文献】 特開2008−102511(JP,A)
【文献】 特開2007−114760(JP,A)
【文献】 特開2012−168244(JP,A)
【文献】 特開2003−222713(JP,A)
【文献】 特開2007−102208(JP,A)
【文献】 特開2012−048099(JP,A)
【文献】 特開2009−265143(JP,A)
【文献】 特開2006−267839(JP,A)
【文献】 特開2011−145593(JP,A)
【文献】 特開2011−081219(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0080643(US,A1)
【文献】 特開2007−041533(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0086326(US,A1)
【文献】 特開2010−079098(JP,A)
【文献】 特開2009−229501(JP,A)
【文献】 特開2011−133881(JP,A)
【文献】 特開2006−163034(JP,A)
【文献】 特開2011−011394(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0229423(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シクロオレフィンフィルムの少なくとも一方の表面にハードコート層を有するハードコートフィルムであって、
前記ハードコート層が紫外線硬化アクリル樹脂、平均粒子径が1.0μm以上4.0μm以下の有機粒子、および1種以上の平均粒子径が50nm以下の無機微粒子を含み、
前記有機粒子の含有量が前記紫外線硬化アクリル樹脂の固形分100部に対して、0.5部以上10部以下、
前記無機微粒子の含有量が前記紫外線硬化アクリル樹脂の固形分100部に対して、30部以上100部以下、
前記ハードコートフィルム表面の算術平均粗さ(Ra)が0.01μm以上0.1μm以下であることを特徴とするハードコートフィルム。
【請求項2】
シクロオレフィンフィルムの少なくとも一方の表面にハードコート層を有するハードコートフィルムであって、
前記ハードコート層が紫外線硬化アクリル樹脂、平均粒子径が1.0μm以上4.0μm以下の有機粒子、および1種以上の平均粒子径が50nm以下の無機微粒子を含み、
前記有機粒子の含有量が前記紫外線硬化アクリル樹脂の固形分100部に対して、0.5部以上10部以下、
前記無機微粒子の含有量が前記紫外線硬化アクリル樹脂の固形分100部に対して、30部以上100部以下、
前記ハードコートフィルムのヘイズが0.5%以下であることを特徴とするハードコートフィルム。
【請求項3】
シクロオレフィンフィルムの少なくとも一方の表面にハードコート層を有するハードコートフィルムであって、
前記ハードコート層が紫外線硬化アクリル樹脂、平均粒子径が1.0μm以上3.0μm以下の有機粒子、および1種以上の平均粒子径が50nm以下の無機微粒子を含み、
前記有機粒子の含有量が前記紫外線硬化アクリル樹脂の固形分100部に対して、0.5部以上6部以下、
前記無機微粒子の含有量が前記紫外線硬化アクリル樹脂の固形分100部に対して、30部以上100部以下、
前記紫外線硬化アクリル樹脂と前記無機微粒子とからなるバインダー成分の屈折率と、前記有機粒子の屈折率との屈折率差が0.02以下であることを特徴とするハードコートフィルム。
【請求項4】
前記紫外線硬化アクリル樹脂と前記無機微粒子とからなるバインダー成分の屈折率と、前記有機粒子の屈折率との屈折率差が0.02以下であり、ハードコート層とシクロオレフィンフィルムとの屈折率差が0.03以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のハードコートフィルム。
【請求項5】
前記ハードコートフィルム表面の算術平均粗さ(Ra)が0.01μm以上0.1μm以下であり、十点平均粗さ(Rz)が0.1μm以上1.0μm以下の凹凸部が形成されていることを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載のハードコートフィルム。
【請求項6】
前記ハードコートフィルムのハードコート層表面とシクロオレフィンフィルムとの静摩擦係数および動摩擦係数が0.9以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のハードコートフィルム。
【請求項7】
前記ハードコートフィルムのヘイズが0.5%以下であることを特徴とする請求項1及び3〜6のいずれか一項に記載のハードコートフィルム。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載のハードコートフィルムを用いた、フラットパネル表示装置。
【請求項9】
請求項8に記載のフラットパネル表示装置を用いた、タッチパネル一体型表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シクロオレフィンフィルムの少なくとも一方の表面にハードコート層を有するハードコートフィルム、及びこのハードコートフィルムを備えるフラットパネル表示装置およびそれを用いたタッチパネル一体型表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LCD などのフラットパネルディスプレイの表示面上には、取扱い時に傷がついて視認性が落ちないように、耐擦傷性を付与することが要求される。そのため、基材フィルムにハードコート層を設けたフィルムを利用して耐擦傷性を付与することが一般的に行われている。さらに近年、表示表面上に、表示を見ながら指やペン等で押さえることで、データや指示を入力できるタッチパネルの普及により、光学的視認性の維持と耐擦傷性を有する、ハードコートフィルムに対する機能的要求は高まっている。
一方、基材フィルムとして、耐熱性、耐薬品性、光学特性に優れるシクロオレフィンは、光学部材用途として利用され、シクロオレフィンフィルム上にハードコート層を設けることも行われている。しかし、シクロオレフィンはその性質ゆえ、ハードコート層との密着性が悪いことがあり、シクロオレフィンフィルム上にアンカーコート層を設けて密着性を高めるようなことも行われている(例えば特許文献1)。
しかし、アンカーコート層を設けるだけでは、密着性が不十分なこともあり、さらに上記タッチパネル用途では、ブロッキングを防止しつつ、視認性も維持しなければならないという課題もある(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−110875号公報
【特許文献2】特開2010−79098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、シクロオレフィンフィルムの表面にハードコート層を有するハードコートフィルムで生じる問題に鑑み、ハードコート層とシクロオレフィンフィルムとの密着性に優れ、ブロッキング防止性能を有し、視認性にも優れたハードコートフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、シクロオレフィンフィルムの少なくとも一方の表面にハードコート層を有するハードコートフィルムにおいて、ハードコート層に含有させる粒子の種類、含量、その比率を特定のものとすることによって上記課題が解決されることを見出した。
【0006】
すなわち、本発明は、
〔1〕シクロオレフィンフィルムの少なくとも一方の表面にハードコート層を有するハードコートフィルムであって、
前記ハードコート層が紫外線硬化アクリル樹脂、平均粒子径が1.0μm以上4.0μm以下の有機粒子、および1種以上の平均粒子径が50nm以下の無機微粒子を含み、
前記有機粒子の含有量が前記紫外線硬化アクリル樹脂の固形分100部に対して、0.5部以上10部以下、
前記無機微粒子の含有量が前記紫外線硬化アクリル樹脂の固形分100部に対して、30部以上100部以下であることを特徴とするハードコートフィルム。
【0007】
〔2〕前記紫外線硬化アクリル樹脂と前記無機微粒子の屈折率とからなるバインダー成分の屈折率と、前記有機粒子の屈折率との屈折率差が0.02以下であり、ハードコート層とシクロオレフィンフィルムとの屈折率差が0.03以下であることを特徴とする〔1〕に記載のハードコートフィルム。
〔3〕前記ハードコートフィルム表面の算術平均粗さ(Ra)が0.01μm以上0.1μm以下であり、十点平均粗さ(Rz)が0.1μm以上1.0μm以下の凹凸部が形成されていることを特徴とする〔1〕または〔2〕に記載のハードコートフィルム。
【0008】
〔4〕前記ハードコートフィルムのハードコート層表面とシクロオレフィンフィルムとの静摩擦係数および動摩擦係数が0.9以下であることを特徴とする〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のハードコートフィルム。
〔5〕前記ハードコートフィルムのヘイズが0.5%以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のハードコートフィルム。
〔6〕〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のハードコートフィルムを用いた フラットパネル表示装置およびそれを用いたタッチパネル一体型表示装置、
である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、シクロオレフィンフィルムの少なくとも一方の表面にハードコート層を有するハードコートフィルムにおいて、透明性を維持しつつ、密着性、ブロッキング防止性に優れたハードコートフィルムを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本発明において特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない限りにおいて、好ましい態様は任意に変更して実施しうる。
【0011】
〔シクロオレフィンフィルム〕
本発明のハードコートフィルムは、シクロオレフィン系重合体からなるシクロオレフィンフィルムを用いる。シクロオレフィン系重合体としては、特開平3−14882号や特開平3−122137号、特開平4−63807号などで公知の樹脂であり、具体的には、ノルボルネン系単量体の開環重合体、その水素添加物、ノルボルネン系単量体の付加型重合体、ノルボルネン系単量体とオレフィンの付加型重合体、単環の環状オレフィン系重合体、環状共役ジエン系重合体、ビニル脂環式炭化水素系重合体樹脂、これらの重合体の変性物などが挙げられる。より具体的には、日本ゼオン(株)製のゼオネックスやゼオノア(ノルボルネン系樹脂)、住友ベークライト(株)製 スミライトFS‐1700、JSR(株)製 アートン(変性ノルボルネン系樹脂)、三井化学(株)製 アペル(環状オレフィン共重合体)、Ticona社製の Topas(環状オレフィン共重合体)、日立化成(株)製 オプトレッツOZ‐1000シリーズ(脂環式アクリル樹脂)等が挙げられる。
【0012】
本発明においては、シクロオレフィン系重合体の数平均分子量は、トルエン溶媒によるGPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ)法で測定したポリスチレン換算値で、10,000〜200,000、好ましくは15,000〜100,000、より好ましくは20,000〜50,000のものである。また、シクロオレフィン系重合体は、ガラス転移温度が、好ましくは80℃以上、より好ましくは100〜250℃である。
【0013】
本発明で用いるシクロオレフィン系重合体には、所望により、フェノール系やリン系などの老化防止剤;フェノール系などの熱劣化防止剤;ベンゾフェノン系などの紫外線安定剤;アミン系などの帯電防止剤;脂肪族アルコールのエステル、多価アルコールの部分エステル及び部分エーテルなどの滑剤;などの各種添加剤を添加してもよい。また、本発明の目的を損なわない範囲で、他の樹脂などを混合して用いることもできる。
【0014】
本発明で用いるシクロオレフィンフィルムは、シクロオレフィン系重合体をフィルム状に成形したものである。成形方法は、特に限定されないが、熱可塑性樹脂の一般的成形法である、射出成形、溶融押し出し、熱プレス、溶剤キャスト、延伸などを用いることができる。
【0015】
シクロオレフィンフィルムは、膜厚が20μm以上250μm以下が好ましく、より好ましくは30μm以上200μm以下である。
【0016】
本発明で使用されるシクロオレフィンフィルムは、その目的によって、10nm以下の面内及び/または厚み方向のレターデーション値であるものや、可視光550nmの透過光に対する面内のレターデーション値が100〜150nmを示し、厚み方向のレターデーション値が60〜225nmの範囲にある1/4波長板の特性を有するフィルムであってもよい。
【0017】
面内方向のレターデーション(Re)のバラツキ、厚み方向のレターデーション(Rth)のバラツキは、好ましくは10nm以内、より好ましくは5nm以内、特に好ましくは2nm以内である。前記面内方向のレターデーションReのバラツキ、厚み方向のレターデーション(Rth)のバラツキを、上記範囲にすることにより、液晶表示装置用の位相差フィルムとして用いた場合に表示品質を良好なものにすることが可能になる。
【0018】
上記可視光550nmの透過光に対する面内のレターデーション値が100〜150nmを示し、厚み方向のレターデーション値が60〜225nmの範囲にある1/4波長板の特性を有するフィルムは、シクロオレフィン系重合体から得られる未延伸フィルムを1軸、2軸又は斜め延伸することにより、好適に得られる。延伸方法は特に限定はされないが、ロール方式、フロート方式の縦延伸法、テンター方式の横一軸延伸と同時二軸延伸が挙げられる。さらに、長尺のフィルムを連続的に斜め延伸処理することができるものであれば、特に制約されず、種々のタイプの延伸機を使用することができる。
【0019】
上記の斜め延伸によって得られるフィルムは、残留揮発性成分の含有量が、好ましくは0.1重量%以下、より好ましくは0.05重量%以下、さらに好ましくは0.02重量%以下である。残留揮発性成分の含有量が多いと経時的に光学特性が変化するおそれがある。揮発性成分の含有量を上記範囲にすることにより、寸法安定性が向上し、面内方向レターデーションReや厚さ方向レターデーションRthの経時変化を小さくすることができる。
【0020】
未延伸フィルムを斜め延伸するときの温度は、前記脂環式構造含有重合体樹脂のガラス転移温度をTgとすると、好ましくはTg−30℃からTg+60℃の間、より好ましくはTg−10℃ からTg+50℃の温度範囲である。また、延伸倍率は、通常、1.01〜30倍、好ましくは1.01〜10倍、より好ましくは1.01〜5倍である。
【0021】
延伸された熱可塑性樹脂の平均厚みは、機械的強度などの観点から、好ましくは20μm以上250μm以下、さらに好ましくは23μm以上188μm以下である。また、延伸フィルムの幅方向の厚みムラは巻き取りの可否に影響を与えるため、好ましくは3μm以下、より好ましくは2μm以下である。
【0022】
未延伸フィルムを成形する方法としては特に制約されず、公知の成形法を採用することができる。例えば、加熱溶融成形法、溶液流延法のいずれも採用することができるが、シート中の揮発性成分を低減させる観点から、加熱溶融成形法を用いるのが好ましい。加熱溶融成形法は、さらに詳細には、溶融押出成形法、プレス成形法、インフレーション法、射出成形法、ブロー成形法、延伸成形法などに分類できる。これらの中で、機械的強度および表面精度などに優れる延伸フィルムを得るためには、溶融押出し成形法を用いるのが好ましい。熱可塑性ノルボルネン系樹脂を成形したものである。成形方法は、特に限定されない。熱可塑性樹脂の一般的成形法である、射出成形、溶融押し出し、熱プレス、溶剤キャスト、延伸などを用いることができる。
【0023】
成形条件は、使用目的や成形方法により適宜選択されるが、溶融押出成形法による場合は、シリンダー温度が、好ましくは100〜600℃、より好ましくは150〜350℃ の範囲で適宜設定される。
【0024】
未延伸フィルムの厚みは、得られる延伸フィルムの使用目的などに応じて適宜決定することができる。フィルムの厚みは、安定した延伸処理による均質な延伸フィルムが得られる観点から、好ましくは30μm以上300μm以下である。
【0025】
シクロオレフィン系重合体からなる1/4波長機能を有するフィルムのガラス転移温度(Tg)は、好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上、特に好ましくは150℃以上である。該樹脂のTgが低すぎると、成形品の耐熱性が低下する。
【0026】
さらに、ハードコート層の形成時およびタッチパネル製造工程を考慮すると、Tg120℃以上で光弾性係数が10×10−10・Pa−1以下のものを用いるのが好ましい。Tgが120℃に満たないと、ハードコートの乾燥工程及び活性エネルギー線硬化させる際のストレスや導電層を積層する際の温度等により、基材シートに変形やしわが発生するおそれがある。また、光弾性係数が10×10−10・Pa−1を越えると、貼り合わせなどの引っ張りストレスにより、容易に面内及び厚み方向のレターデーション値が変化してしまい、部分的に光学等方性でなくなるおそれがある。
【0027】
また、本発明におけるシクロオレフィンフィルムは、ハードコート層との接着性を高める目的で表面処理を施したものであってもよい。該表面処理としては、プラズマ処理、コロナ処理、アルカリ処理、コーティング処理等が挙げられる。とりわけコロナ処理を用いることで、上記熱可塑性ノルボルネン系樹脂からなるフィルムとハードコート層の密着を強固とすることができる。
コロナ処理条件としては、コロナ放電電子の照射量として1〜1000W/m/minであることが好ましい。上記コロナ処理後の熱可塑性ノルボルネン系フィルムの水に対する接触角は、10〜50°であることが好ましい。。また、コロナ処理をした直後に塗工しても、除電させてから塗工してもよいが、ハードコート層の外観が良好となることから、除電させてから塗工した方が好ましい。
【0028】
〔ハードコート層〕
本発明において、ハードコートフィルムのハードコート層は、紫外線硬化アクリル樹脂、平均粒子径が1.0μm以上4.0μm以下の有機粒子、および少なくとも一種以上の平均粒子径が50nm以下の無機微粒子を含み、ブロッキング防止性能を有するハードコート層である。すなわち、ハードコート層は、紫外線硬化アクリル樹脂と平均粒子径が1.0μm以上4.0μm以下の有機粒子、および少なくとも一種以上の平均粒子径が50nm以下の無機微粒子および必要に応じて他の成分とを含む紫外線硬化型樹脂組成物をシクロオレフィンフィルム上に塗布して、紫外線を照射することにより形成される。
【0029】
紫外線硬化型樹脂組成物の塗布する方法は、スピンコート法、ディップ法、スプレー法、スライドコート法、バーコート法、ロールコーター法、スクリーン印刷法等、公知の方法を挙げることができる。前記ハードコート形成材料の硬化手段は特に制限されないが、電離放射線硬化が好ましい。その手段には各種活性エネルギーを用ることができるが、紫外線が好適である。エネルギー線源としては、例えば、高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプ、窒素レーザー、電子線加速装置、放射性元素などの線源が好ましい。塗布後の紫外線硬化型樹脂組成物を紫外線照射により硬化させる照射時間は通常0.01秒から10秒の範囲であり、エネルギー線源の照射量は、紫外線波長365nmでの積算露光量として、通常40mJ/cmから1000mJ/cmの範囲である。また、紫外線の照射は、例えば窒素及びアルゴン等の不活性ガス中において行ってもよく、空気中で行ってもよい。
【0030】
本発明のハードコート層の厚さは0.5μm以上10.0μm以下が好ましく、2.0μm以上5.0μm以下が特に好ましい。ハードコート層の厚さはこれよりも厚すぎると視認性で問題になる可能性があり、薄すぎると耐擦傷性が劣る可能性がある。ハードコート層表面には凹凸部が形成されていることが好ましく、表面の算術平均粗さ(Ra)が0.01μm以上0.1μm以下、十点平均粗さ(Rz)は0.1以上1.0μm以下であることが好ましく、さらに算術平均粗さ(Ra)が0.03μm以上0.07μm以下、十点平均粗さ(Rz)は0.1以上1.0μm以下であることが好ましい。このような凹凸構造は、後述する有機粒子および無機微粒子の粒子径、含量を規定の範囲のものとすることにより実現することができる。
【0031】
ハードコート層のヘイズは、0.5%以下、好ましくは0.3%以下である。このようなヘイズ値であることにより、本発明のハードコートフィルムをフラットパネル表示装置やタッチパネル表示装置として好適に使用することができる。また、ハードコート層表面とシクロオレフィンフィルムとの静摩擦係数及び、動摩擦係数が0.9以下であることが好ましく、さらに0.6以下であることが好ましい。このような静摩擦係数及び、動摩擦係数を有するハードコートフィルムはブロッキング防止性能を有するため好適である。
【0032】
(紫外線硬化アクリル樹脂)
本発明でハードコート層の形成に用いる紫外線硬化アクリル樹脂は、通常用いられるハードコート用紫外線硬化型アクリル樹脂成分であれば特に制限されない。JISK5600−5−4に規定される鉛筆硬度試験で、「HB」以上の硬度を示す硬化膜を形成できる紫外線硬化型アクリル樹脂成分であれば特に好ましい。紫外線硬化型アクリル樹脂成分の具体例としては、多官能(メタ)アクリル系化合物を主成分とする紫外線硬化型樹脂組成物よりなるものが好ましい。ここで(メタ)アクリルとはアクリルとメタクリルを示す。
【0033】
ここで、多官能(メタ)アクリル系化合物としては、例えばトリメチロール「」プロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、イソシアヌルEO変性トリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリストールヘキサアクリレートのエチレンオキサイド付加物、もしくはエチレンオキサイドのHをフッ素置換したもの等の6官能(メタ)アクリル系化合物や、例えばペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリストールテトラアクリレートのエチレンオキサイド付加物(1〜8)、もしくは、エチレンオキサイドのHをフッ素置換したもの等の4官能(メタ)アクリル系化合物等を用いることができる。これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0034】
(有機粒子)
有機粒子の例としては、(メタ)アクリル、スチレン-アクリル共重合体、ポリスチレン、ポリカーボネート、オレフィン、ポリエーテル、ポリエステル、ウレタン、ポリエステル、シリコーン、ポリシラン、ポリイミドおよびフッ素粒子からなる群から選択される少なくとも1種類が挙げられ、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。この中でも、(メタ)アクリルが好ましい。使用される有機粒子の屈折率は1.45以上1.55以下、好ましくは、1.47以上1.53以下、さらに好ましくは1.48以上1.51以下である。有機粒子の屈折率は、紫外線硬化アクリル樹脂と後述する無機微粒子とのマトリックスの屈折率との差が0.02以下、さらに好ましくは0.01以下であることが好ましい。屈折率差の下限は特に制限はないが、シクロオレフィンフィルムとの屈折率差による干渉ムラ抑制という理由で1.49以上であることが好ましい。有機粒子の屈折率は、紫外線硬化アクリル樹脂と後述する無機微粒子とのマトリックスの屈折率との差が、0.02以上である場合、ハードコート層のヘイズが高くなるため、好ましくない。
【0035】
有機粒子の平均粒子径は、1.0μm以上、4.0μm以下、好ましくは1.5μm以上、3.0μm以下である。ここで平均粒子径は、数平均粒子径であり、レーザー回折・散乱法により測定することができる。また、有機粒子の含有量は、紫外線硬化型アクリル樹脂固形分100重量部に対して、0.5重量部以上10重量部以下、好ましくは、1.0重量部以上8.0重量部以下、さらに好ましくは、1.5重量部以上6.0重量部以下である。
【0036】
(無機微粒子)
無機微粒子の例としては、シリカ(オルガノシリカゾルを含む)、アルミナ、チタニア、ゼオライト、雲母、合成雲母、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、五酸化アンチモン、酸化亜鉛、フッ化マグネシウム、スメクタイト、合成スメクタイト、バーミキュライト、ITO(酸化インジウム/酸化錫)、ATO(酸化アンチモン/酸化錫)、酸化錫、酸化インジウムおよび酸化アンチモンからなる群から選択される少なくとも1種類以上が挙げられる。この中で、表面硬度の向上効果を特に高くすることができ、強度を特に高くすることができ、所望の屈折率が得られることからシリカ微粒子が好ましい。
【0037】
無機微粒子にシリカ微粒子を使用する場合は、表面未処理のシリカ微粒子を使用することが好ましい。表面未処理シリカ微粒子はJIS K 5101に規定する吸油量測定方法によって算出した吸油量が250ml/100g以上であるものをいい、未処理シリカ微粒子を使用することによって、ハードコート層とシクロオレフィンフィルムとの密着性を発現することができる。
【0038】
使用される無機微粒子の屈折率は1.40以上1.70以下、好ましくは、1.40以上1.60以下、さらに好ましくは1.40以上1.50以下である。無機微粒子の平均粒子径は、100nm以下であり、好ましくは70nm以下、さらに好ましくは、50nm以下である。100nm以上を超える場合は、光の散乱が発生し、ハードコートの透過率が低下したり、着色したりして透明性の観点から好ましくはない。ここで平均粒子径は、有機粒子と同様に数平均粒子径であり、レーザー回折・散乱法により測定することができる。
【0039】
無機微粒子の含有量は、紫外線硬化型アクリル樹脂固形分100重量部に対して、10重量部以上150重量部以下、好ましくは、20重量部以上100重量部以下、さらに好ましくは、40重量部以上80重量部以下である。前記有機粒子の平均粒子径および含有量が前記範囲内、かつ無機微粒子の含量、平均粒子径が上記範囲内である場合に、ハードコート層のブロッキング防止の効果およびすべり性を発現することができる。
【0040】
(その他の成分)
紫外線硬化型樹脂組成物には、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、前記有機粒子、前記無機微粒子のほかに、光増感剤、重合禁止剤、重合開始助剤、レベリング剤、濡れ性改良剤、界面活性剤、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、シランカップリング剤を添加してもよい。レべリング剤としては、一般的なレべリング剤を使用できるが、例えば、フッ素系ノニオン界面活性剤、アクリル系レべリング剤、シリコーン系レべリング剤などが挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。を使用することができ、その中でもアクリル系レべリング剤が好ましい。レべリング剤の使用量は、ハードコート層形成樹脂100部に対して0.1重量部以上、2.0重量部以下用いることが好ましい。さらに好ましくは、0.3重量部以上1.0重量部以下用いることが望ましい。レべリング剤の使用により、予備乾燥および溶媒乾燥時に当該レベリング剤が空気界面にブリードしてくるので、酸素による紫外線硬化型樹脂の硬化阻害を防ぐことができ、最表面においても十分な硬度を有するハードコート層を得ることができる。さらに、アクリル系レベリング剤は、活性度が低く表面張力を下げないことからリコート性にすぐれた特性を付与できるという利点がある。
【0041】
重合開始剤としては、紫外線により重合を開始させる能力があれば、特に限定はなく、例えばモノカルボニル化合物、ジカルボニル化合物、アセトフェノン化合物、ベンゾインエーテル化合物、アシルホスフィンオキシド化合物、アミノカルボニル化合物などが使用できる。
【0042】
具体的には、モノカルボニル化合物としては、ベンゾフェノン、4−メチル−ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、メチル−o−ベンゾイルベンゾエート、4−フェニルベンゾフェノン、4−(4−メチルフェニルチオ)フェニル−エタノン、3,3´−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、4−(1,3−アクリロイル−1,3,3´−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、4−(1,3−アクリロイル−1,4,7,10,13−ペンタオキソトリデシル)ベンゾフェノン、3,3´,4,4´−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−N,N,N−トリメチル−1−プロパンアミン塩酸塩、4−ベンゾイル−N,N−ジメチル−N−2−(1−オキソ−2−プロペニルオキシエチル)メタアンモニウムシュウ酸塩、2−/4−イソ−プロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−ヒドロキ−3−(3,4−ジメチル−9−オキソ−9Hチオキサントン−2−イロキシ−N,N,N−トリメチル−1−プロパンアミン塩酸塩、ベンゾイルメチレン−3−メチルナフト(1,2−d)チアゾリン等が挙げられる。
【0043】
ジカルボニル化合物としては、1,2,2−トリメチル−ビシクロ[2.1.1]ヘプタン−2,3−ジオン、ベンザイル、2−エチルアントラキノン、9,10−フェナントレンキノン、メチル−α−オキソベンゼンアセテート、4−フェニルベンザイル等が挙げられる。
【0044】
アセトフェノン化合物としては、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−ジ-2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−スチリルプロパン−1−オン重合物、ジエトキシアセトフェノン、ジブトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2,2−ジエトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタン−1−オン、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、3,6−ビス(2−メチル−2−モルホリノ−プロパノニル)−9−ブチルカルバゾール等が挙げられる。
【0045】
ベンゾインエーテル化合物としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイゾブチルエーテル、ベンゾインノルマルブチルエーテル等が挙げられる。
【0046】
アシルホスフィンオキシド化合物としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、4−n−プロピルフェニル−ジ(2,6−ジクロロベンゾイル)ホスフィンオキシド等が挙げられる。
【0047】
アミノカルボニル化合物としては、メチル−4−(ジメトキシアミノ)ベンゾエート、エチル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート、2−n−ブトキシエチル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート、イソアミル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート、2−(ジメチルアミノ)エチルベンゾエート、4,4´−ビス−4−ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4´−ビス−4−ジエチルアミノベンゾフェノン、2,5´−ビス(4−ジエチルアミノベンザル)シクロペンタノン等が挙げられる。
【0048】
重合開始剤の市販品としてはチバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製イルガキュア184、651、500、907、127、369、784、2959、BASF社製ルシリンTPO、日本シイベルヘグナー(株)製エサキュアワン等があげられる。これらの光重合開始剤は、一種類で用いられるほか、二種類以上を混合して用いてもよい。 光重合開始剤の使用量に関しては、特に制限はされないが、紫外線硬化型樹脂組成物100重量部に対して1〜20重量部の範囲内で使用することが好ましい。
【0049】
溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンシクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン類; 酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類; イソプロピルアルコール、エチルアルコールなどのアルコール類; ベンゼン、トルエン、キシレン、メトキシベンゼン、1 , 2 − ジメトキベンゼンなどの芳香族炭化水素類; フェノール、パラクロロフェノールなどのフェノール類; クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類等があげられる。これら溶媒は1 種を単独で、または2 種以上を混合して用いることができる
【0050】
(フラットパネル表示装置、タッチパネル)
本発明のハードコートフィルムは、必要に応じて他の層を積層した上で、フラットパネル表示装置やタッチパネル用途として使用することができる。フラットパネルディスプレイに本発明のハードコートフィルムを使用する場合、ディスプレイの最表層に用いることができる。タッチパネル用途に使用する場合、本発明のハードコート層上に直接、導電層を積層することもできるが、1種以上の中間層を設けてもよい。中間層としては導電層との屈折率差が0.1以上の層が好ましく、層の屈折率としては、1.3〜2.3が好ましい。さらに、無機物、有機物または無機物と有機物との混合物により形成することができる。例えば、無機物として、NaF(1.3)、Na3AlF6(1.35)、LiF(1.36)、MgF2(1.38)、CaF2(1.4)、BaF2(1.3)、SiO2(1.46)、LaF3(1.55)、CeF3(1.63)、Al23(1.63)などの無機物〔上記各材料の( )内の数値は光の屈折率である〕があげられる。これらのなかでも、SiO2、MgF2、A123などが好ましく用いられる。特に、SiO2が好適である。のようなものが考えられる。導電層は特に限定されなく、導電性材料ならいずれもよく、例えば導電性材料は、導電性ポリマー、銀ペーストやポリマーペースト等の導電性ペースト、さらに金や銅等の金属コロイド、ITO等の金属酸化物等が挙げられる。その材料としては、具体的には、錫をドープしたインジウム酸化物(ITO)、アンチモンまたはフッ素をドープした錫酸化物(ATOまたはFTO)、アルミニウムをドープした亜鉛酸化物(AZO)、カドミウム酸化物、カドミウムと錫の酸化物、酸化チタン、酸化亜鉛、ヨウ化銅などの金属酸化物、または金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)などの金属が挙げられる。この導電層の成膜は、特に限定されないが、スパッタリング法、真空蒸着法、CVD法、イオンプレーティング法、ゾル・ゲル法、コーティング法などが例示される。
【実施例】
【0051】
次に、実施例により本発明を更に詳細に説明する。本発明は下記の実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において量を示す「部」は特に断らない限り重量基準である。
【0052】
実施例及び比較例中の試験及び評価は以下の方法で行った。
(試験法、測定法)
I.ヘイズ
ハードコートフィルムをJIS K−7136に準拠して、ヘイズメーター(「NDH 2000」,日本電色工業(株)製)を用いて測定した。
II.全光線透過率
ハードコートフィルムをJIS K−7361に準拠して、ヘイズメーター(「NDH 2000」,日本電色工業(株)製)を用いて測定した。
【0053】
III.耐擦傷性
スチールウール#0000に荷重0.025MPaをかけた状態で、ハードコートフィルムの表面を10往復させ、往復させた後の表面状態を目視で観測した。
○:傷が認められない。
△:スジ傷が3本以上7本以下ある。
×:スジ傷が8本以上ある。
IV.密着性
いわゆる碁盤目剥離試験法により評価した。低屈折率層上からカッターにより1mm間隔で縦横互いに直角に交わる各11本の切れ目を入れ、1mm四方の碁盤目を100目作り、セロハン粘着テープ[積水化学社製]を貼り、粘着テープを表面に対して垂直方向に引っ張って剥がす試験により、100目中の剥離しなかった目の数で表した。
○:100/100 (剥れ無しの数)
△:95〜99/100 (剥れ無しの数)
×:0〜94/100 (剥れ無しの数)
【0054】
V.算術平均粗さ(Ra)及び突出高さの測定
光学フィルムの算術平均粗さ(Ra)及び十点平均粗さ(Rz)は、カラー3Dレーザー顕微鏡((株)キーエンス製 VK−9700)の用い、JIS B 0601−2001に準拠し測定した。
VI.摩擦係数
新東化学株式会社製表面性測定機トライボギア(TYPE:38)で、ハードコート面と非塗工面を平行に設置し、200g荷重で測定(移動距離:100mm、速度:6,000mm/min)を行い、動摩擦係数と静摩擦係数を測定した。
【0055】
VII.ブロッキング防止性の評価
ハードコートフィルムを2枚使用し、ハードコート層面同士を密着させて1kg/25cmにて加圧し、その際の両層のブロッキングの状態を観察し、評価した。評価基準は、下記のとおりである。
○・・・両層面は密着していなかった
△・・・両層面の一部分が密着し貼り付いていた
×・・・両層面が密着し貼り付いていた
VIII.干渉ムラ
ハードコートフィルムの未塗工面に、黒板を貼り合せ目視確認で干渉ムラのレベルを観察し評価した。評価基準は下記のとおりである。
○・・・干渉ムラは確認できない
△・・・一部分に干渉ムラが発生していた
×・・・全面に干渉ムラが発生していた
【0056】
(ハードコート試薬の作成方法)
(1)ハードコート層形成用組成物H1の調製
3官能基以上のアクリロイル基を含有するウレタンアクリレートオリゴマー(ジペンタエリスリトールトリアクリレートを基本骨格として含む)100部に、二酸化ケイ素分散液(日産化学工業社製、数平均粒径20nm)40部、PMMA粒子(積水化成品工業社製 数平均粒子2.0μm)3部と光重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、商品名「IRGACURE184」)6部とを加え、攪拌機を用いて2000rpmで5分間攪拌することにより、ハードコート層形成用組成物H1を得た。
【0057】
(2)ハードコート層形成用組成物H2の調製
3官能基以上のアクリロイル基を含有するウレタンアクリレートオリゴマー100部に、二酸化ケイ素分散液(日産化学工業社製、数平均粒径20nm)60部、PMMA粒子(積水化成品工業社製 数平均粒子2.0μm)3部と光重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、商品名「IRGACURE184」)6部とを加え、攪拌機を用いて2000rpmで5分間攪拌することにより、ハードコート層形成用組成物H2を得た。
【0058】
(3)ハードコート層形成用組成物H3の調製
3官能基以上のアクリロイル基を含有するウレタンアクリレートオリゴマー100部に、二酸化ケイ素分散液(日産化学工業社製、数平均粒径20nm)80部、PMMA粒子(積水化成品工業社製 数平均粒子2.0μm)3部と光重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、商品名「IRGACURE184」)6部とを加え、攪拌機を用いて2000rpmで5分間攪拌することにより、ハードコート層形成用組成物H3を得た。
【0059】
(4)ハードコート層形成用組成物H4の調製
3官能基以上のアクリロイル基を含有するウレタンアクリレートオリゴマー100部に、二酸化ケイ素分散液(日産化学工業社製、数平均粒径20nm)60部、PMMA粒子(積水化成品工業社製 数平均粒子2.0μm)1部と光重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、商品名「IRGACURE184」)6部とを加え、攪拌機を用いて2000rpmで5分間攪拌することにより、ハードコート層形成用組成物H4を得た。
【0060】
(5)ハードコート層形成用組成物H5の調製
3官能基以上のアクリロイル基を含有するウレタンアクリレートオリゴマー100部に、二酸化ケイ素分散液(日産化学工業社製、数平均粒径20nm)60部、PMMA粒子(積水化成品工業社製 数平均粒子2.0μm)5部と光重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、商品名「IRGACURE184」)6部とを加え、攪拌機を用いて2000rpmで5分間攪拌することにより、ハードコート層形成用組成物H5を得た。
【0061】
(6)ハードコート層形成用組成物H6の調製
3官能基以上のアクリロイル基を含有するウレタンアクリレートオリゴマー100部に、二酸化ケイ素分散液(日産化学工業社製、数平均粒径50nm)60部、PMMA粒子(積水化成品工業社製 数平均粒子2.0μm)3部と光重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、商品名「IRGACURE184」)6部とを加え、攪拌機を用いて2000rpmで5分間攪拌することにより、ハードコート層形成用組成物H6を得た。
【0062】
(7)ハードコート層形成用組成物H7の調製
3官能基以上のアクリロイル基を含有するウレタンアクリレートオリゴマー100部に、二酸化ケイ素分散液(日産化学工業社製、数平均粒径20nm)60部、PMMA粒子(総研化学社製 数平均粒子1.5μm)3重量部と光重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、商品名「IRGACURE184」)6部とを加え、攪拌機を用いて2000rpmで5分間攪拌することにより、ハードコート層形成用組成物H7を得た。
【0063】
(8)ハードコート層形成用組成物H8の調製
3官能基以上のアクリロイル基を含有するウレタンアクリレートオリゴマー100部に、二酸化ケイ素分散液(日産化学工業社製、数平均粒径20nm)60部、PMMA粒子(積水化成品工業社製 数平均粒子3.0μm)3部と光重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、商品名「IRGACURE184」)6部とを加え、攪拌機を用いて2000rpmで5分間攪拌することにより、ハードコート層形成用組成物H8を得た。
【0064】
(9)ハードコート層形成用組成物H9の調製
3官能基以上のアクリロイル基を含有するウレタンアクリレートオリゴマー100部に、二酸化ケイ素分散液(日産化学工業社製、数平均粒径20nm)60部、PMMA粒子(積水化成品工業社製 数平均粒子5.0μm)3部と光重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、商品名「IRGACURE184」)6部とを加え、攪拌機を用いて2000rpmで5分間攪拌することにより、ハードコート層形成用組成物H9を得た。
【0065】
(10)ハードコート層形成用組成物H10の調製
3官能基以上のアクリロイル基を含有するウレタンアクリレートオリゴマー100部に、二酸化ケイ素分散液(日産化学工業社製、数平均粒径20nm)10部、PMMA粒子(積水化成品工業社製 数平均粒子2.0μm)3部と光重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、商品名「IRGACURE184」)6部とを加え、攪拌機を用いて2000rpmで5分間攪拌することにより、ハードコート層形成用組成物H10を得た。
【0066】
(11)ハードコート層形成用組成物H11の調製
3官能基以上のアクリロイル基を含有するウレタンアクリレートオリゴマー100部に、二酸化ケイ素分散液(日産化学工業社製、数平均粒径20nm)120部PMMA粒子(積水化成品工業社製 数平均粒子2.0μm)3部と光重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、商品名「IRGACURE184」)6部とを加え、攪拌機を用いて2000rpmで5分間攪拌することにより、ハードコート層形成用組成物H11を得た。
【0067】
(12)ハードコート層形成用組成物H12の調製
3官能基以上のアクリロイル基を含有するウレタンアクリレートオリゴマー100部に、二酸化ケイ素分散液(日産化学工業社製、数平均粒径100nm)60部PMMA粒子(積水化成品工業社製 数平均粒子2.0μm)3部と光重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、商品名「IRGACURE184」)6部とを加え、攪拌機を用いて2000rpmで5分間攪拌することにより、ハードコート層形成用組成物H12を得た。
【0068】
(13)ハードコート層形成用組成物H13の調製
3官能基以上のアクリロイル基を含有するウレタンアクリレートオリゴマー100部に、PMMA粒子(積水化成品工業社製 数平均粒子2.0μm)3部と光重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、商品名「IRGACURE184」)6部とを加え、攪拌機を用いて2000rpmで5分間攪拌することにより、ハードコート層形成用組成物H13を得た。
【0069】
(14)ハードコート層形成用組成物H14の調製
3官能基以上のアクリロイル基を含有するウレタンアクリレートオリゴマー100部に、スチレン−アクリル粒子(積水化成品工業社製 数平均粒子2.0μm)3部と光重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、商品名「IRGACURE184」)6部とを加え、攪拌機を用いて2000rpmで5分間攪拌することにより、ハードコート層形成用組成物H14を得た。
【0070】
(15)ハードコート層形成用組成物H15の調製
3官能基以上のアクリロイル基を含有するウレタンアクリレートオリゴマー100部に、二酸化ケイ素分散液(日産化学工業社製、数平均粒径20nm)100部と光重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、商品名「IRGACURE184」)6部とを加え、攪拌機を用いて2000rpmで5分間攪拌することにより、ハードコート層形成用組成物H15を得た。
【0071】
(ハードコート層の形成方法)
ワイヤーバーを用いて、コロナ処理をした基材上シートに、前記ハードコート層形成組成物Hを塗布し、乾燥(70℃×2分)、紫外線照射(積算光量200mW/cm)を行うことにより、膜厚が3μmのハードコート層を形成し、ハードコートフィルムを得た。
【0072】
(実施例1)
基材として、厚みが100μmの日本ゼオン社製、商品名「ZeonorFilm ZF16」(以下ZF16と省略)を用いた。前記基材上に、ハードコート層形成組成物H1を3μm片面に塗布し紫外線照射により硬化を行った。得られたハードコートフィルムの物性等を測定した結果を表1に示す。
【0073】
(実施例2)
ハードコート層形成組成物H1をH2に変えた以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルム2を得た。結果を表1に示す。
【0074】
(実施例3)
ハードコート層形成組成物H1をH3に変えた以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルム3を得た。結果を表1に示す。
【0075】
(実施例4)
ハードコート層形成組成物H1をH4に変えた以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルム4を得た。結果を表1に示す。
【0076】
(実施例5)
ハードコート層形成組成物H1をH5に変えた以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルム5を得た。結果を表1に示す。
【0077】
(実施例6)
ハードコート層形成組成物H1をH6に変えた以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルム6を得た。結果を表1に示す。
【0078】
(実施例7)
ハードコート層形成組成物H1をH7に変えた以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルム7を得た。結果を表1に示す。
【0079】
(実施例8)
ハードコート層形成組成物H1をH8に変えた以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルム8を得た。結果を表1に示す。
【0080】
(比較例1)
ハードコート層形成組成物H1をH9に変えた以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルム9を得た。結果を表2に示す。
【0081】
(比較例2)
ハードコート層形成組成物H1をH10に変えた以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルム10を得た。結果を表2に示す。
【0082】
(比較例3)
ハードコート層形成組成物H1をH11に変えた以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルム11を得た。結果を表2に示す。
【0083】
(比較例4)
ハードコート層形成組成物H1をH12に変えた以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルム12を得た。結果を表2に示す。
【0084】
(比較例5)
ハードコート層形成組成物H1をH13に変えた以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルム13を得た。結果を表2に示す。
【0085】
(比較例6)
ハードコート層形成組成物H1をH14に変えた以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルム14を得た。結果を表2に示す。
【0086】
(比較例7)
ハードコート層形成組成物H1をH15に変えた以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルム15を得た。結果を表2に示す。
【0087】
【表1】
【0088】
【表2】
【0089】
上記結果から、本発明の要件を満たす実施例1〜8のハードコート層はハードコート層とシクロオレフィンフィルムとの密着性は良好であることが判った。一方、比較例1のように、膜厚以上の有機粒子を含むとヘイズがあがり、比較例2のように微粒子の含有量が少ないとブロッキング防止性に問題があり、比較例3,4のように平均粒子径が大きくなったり、含有量が多くなるにつれ、ヘイズ値が上がることがわかった。また、比較例5、6のように平均粒子径が50nm以下の微粒子を含まないハードコート層はハードコート層とシクロオレフィンフィルムとの密着性に問題があり、有機粒子を含まない比較例7のハードコート層は、ブロッキング防止性、耐擦傷性に問題があることが判った。