(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施形態を、添付図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態にかかる露光装置の構成を概略的に示す図である。
図2は、
図1の空間光変調ユニットの内部構成を概略的に示す図である。
図1において、感光性基板であるウェハWの転写面(露光面)の法線方向に沿ってZ軸を、ウェハWの転写面内において
図1の紙面に平行な方向にY軸を、ウェハWの転写面内において
図1の紙面に垂直な方向にX軸をそれぞれ設定している。
【0016】
図1を参照すると、本実施形態の露光装置では、光源1から露光光(照明光)が供給される。光源1として、たとえば193nmの波長の光を供給するArFエキシマレーザ光源や、248nmの波長の光を供給するKrFエキシマレーザ光源などを用いることができる。光源1から射出された光は、ビーム送光部2および空間光変調ユニット3を介して、リレー光学系4に入射する。ビーム送光部2は、光源1からの入射光束を適切な大きさおよび形状の断面を有する光束に変換しつつ空間光変調ユニット3へ導くとともに、空間光変調ユニット3に入射する光束の位置変動および角度変動をアクティブに補正する機能を有する。
【0017】
空間光変調ユニット3は、
図2に示すように、光源1から入射した光に空間的な光変調を付与して射出する反射型の回折光学素子30と、回折光学素子30とリレー光学系4との間の光路中に配置された空間光変調器31と、主制御系CRからの制御信号に基づいて空間光変調器31の複数のミラー要素を個別に制御する制御部32とを備えている。回折光学素子30は、照明光路に対して挿脱自在に配置され、回折特性の異なる別の反射型の回折光学素子(不図示)と交換可能である。
【0018】
空間光変調器31は、後述するように、所定面内に配列されて個別に制御される複数のミラー要素と、制御部32からの信号に基づいて複数のミラー要素の姿勢を個別に制御駆動する駆動部とを有する。制御部32は、主制御系CRからの制御信号に基づいて、照明光路に対する回折光学素子の切り換えを制御する。回折光学素子の切り換え方式として、たとえば周知のターレット方式やスライド方式などを用いることができる。回折光学素子30の作用および空間光変調器31の構成および作用については後述する。
【0019】
空間光変調ユニット3から射出された光は、フーリエ変換光学系としてのリレー光学系4を介して、所定面5に入射する。すなわち、リレー光学系4は、その前側焦点位置が空間光変調器31の複数のミラー要素の配列面の位置とほぼ一致し且つその後側焦点位置が所定面5の位置とほぼ一致するように設定されている。後述するように、空間光変調器31を経た光は、複数のミラー要素の姿勢に応じた光強度分布を所定面5に可変的に形成する。
【0020】
所定面5に光強度分布を形成した光は、リレー光学系6を介して、マイクロフライアイレンズ(またはフライアイレンズ)7に入射する。リレー光学系6は、所定面5とマイクロフライアイレンズ7の入射面とを光学的に共役に設定している。したがって、空間光変調ユニット3を経た光は、所定面5と光学的に共役な位置に配置されたマイクロフライアイレンズ7の入射面に、所定面5に形成された光強度分布に対応した光強度分布を形成する。
【0021】
マイクロフライアイレンズ7は、たとえば縦横に且つ稠密に配列された多数の正屈折力を有する微小レンズからなる光学素子であり、平行平面板にエッチング処理を施して微小レンズ群を形成することによって構成されている。マイクロフライアイレンズでは、互いに隔絶されたレンズエレメントからなるフライアイレンズとは異なり、多数の微小レンズ(微小屈折面)が互いに隔絶されることなく一体的に形成されている。しかしながら、レンズ要素が縦横に配置されている点でマイクロフライアイレンズはフライアイレンズと同じ波面分割型のオプティカルインテグレータである。
【0022】
マイクロフライアイレンズ7における単位波面分割面としての矩形状の微小屈折面は、マスクM上において形成すべき照野の形状(ひいてはウェハW上において形成すべき露光領域の形状)と相似な矩形状である。なお、マイクロフライアイレンズ7として、例えばシリンドリカルマイクロフライアイレンズを用いることもできる。シリンドリカルマイクロフライアイレンズの構成および作用は、例えば米国特許第6913373号明細書に開示されている。
【0023】
マイクロフライアイレンズ7に入射した光束は多数の微小レンズにより二次元的に分割され、その後側焦点面またはその近傍の照明瞳には、入射面に形成される光強度分布とほぼ同じ光強度分布を有する二次光源(多数の小光源からなる実質的な面光源:瞳強度分布)が形成される。マイクロフライアイレンズ7の直後の照明瞳に形成された二次光源からの光束は、照明開口絞り(不図示)に入射する。照明開口絞りは、マイクロフライアイレンズ7の後側焦点面またはその近傍に配置され、二次光源に対応した形状の開口部(光透過部)を有する。
【0024】
照明開口絞りは、照明光路に対して挿脱自在に構成され、且つ大きさおよび形状の異なる開口部を有する複数の開口絞りと切り換え可能に構成されている。照明開口絞りの切り換え方式として、たとえば周知のターレット方式やスライド方式などを用いることができる。照明開口絞りは、後述する投影光学系PLの入射瞳面と光学的にほぼ共役な位置に配置され、二次光源の照明に寄与する範囲を規定する。なお、照明開口絞りの設置を省略することもできる。
【0025】
照明開口絞りにより制限された二次光源からの光は、コンデンサー光学系8を介して、マスクブラインド9を重畳的に照明する。こうして、照明視野絞りとしてのマスクブラインド9には、マイクロフライアイレンズ7の矩形状の微小屈折面の形状と焦点距離とに応じた矩形状の照野が形成される。マスクブラインド9の矩形状の開口部(光透過部)を介した光束は、結像光学系10の集光作用を受けた後、所定のパターンが形成されたマスクMを重畳的に照明する。すなわち、結像光学系10は、マスクブラインド9の矩形状開口部の像をマスクM上に形成することになる。
【0026】
マスクステージMS上に保持されたマスクMを透過した光束は、投影光学系PLを介して、ウェハステージWS上に保持されたウェハ(感光性基板)W上にマスクパターンの像を形成する。こうして、投影光学系PLの光軸AXと直交する平面(XY平面)内においてウェハステージWSを二次元的に駆動制御しながら、ひいてはウェハWを二次元的に駆動制御しながら一括露光またはスキャン露光を行うことにより、ウェハWの各露光領域にはマスクMのパターンが順次露光される。
【0027】
本実施形態の露光装置は、投影光学系PLを介した光に基づいて投影光学系PLの瞳面における瞳強度分布を計測する瞳強度分布計測部DTと、瞳強度分布計測部DTの計測結果に基づいて空間光変調ユニット3を制御し且つ露光装置の動作を統括的に制御する主制御系CRとを備えている。瞳強度分布計測部DTは、例えば投影光学系PLの瞳位置と光学的に共役な位置に配置された撮像面を有するCCD撮像部を備え、投影光学系PLの像面の各点に関する瞳強度分布(各点に入射する光が投影光学系PLの瞳位置に形成する瞳強度分布)をモニターする。瞳強度分布計測部DTの詳細な構成および作用については、例えば米国特許公開第2008/0030707号明細書を参照することができる。
【0028】
本実施形態では、マイクロフライアイレンズ7により形成される二次光源を光源として、照明光学系の被照射面に配置されるマスクM(ひいてはウェハW)をケーラー照明する。このため、二次光源が形成される位置は投影光学系PLの開口絞りASの位置と光学的に共役であり、二次光源の形成面を照明光学系の照明瞳面と呼ぶことができる。典型的には、照明瞳面に対して被照射面(マスクMが配置される面、または投影光学系PLを含めて照明光学系と考える場合にはウェハWが配置される面)が光学的なフーリエ変換面となる。なお、瞳強度分布とは、照明光学系の照明瞳面または当該照明瞳面と光学的に共役な面における光強度分布(輝度分布)である。
【0029】
マイクロフライアイレンズ7による波面分割数が比較的大きい場合、マイクロフライアイレンズ7の入射面に形成される大局的な光強度分布と、二次光源全体の大局的な光強度分布(瞳強度分布)とが高い相関を示す。このため、マイクロフライアイレンズ7の入射面および当該入射面と光学的に共役な面における光強度分布についても瞳強度分布と称することができる。
図1の構成において、リレー光学系4,6、およびマイクロフライアイレンズ7は、空間光変調ユニット3中の空間光変調器31を経た光束に基づいてマイクロフライアイレンズ7の直後の照明瞳に瞳強度分布を形成する分布形成光学系を構成している。
【0030】
次に、空間光変調ユニット3中の空間光変調器31の構成および作用を具体的に説明する。空間光変調器31は、
図3に示すように、所定面内に配列された複数のミラー要素31aと、複数のミラー要素31aを保持する基盤31bと、基盤31bに接続されたケーブル(不図示)を介して複数のミラー要素31aの姿勢を個別に制御駆動する駆動部31cとを備えている。空間光変調器31では、主制御系CRからの指令により制御部32が出力した制御信号に基づいて作動する駆動部31cの作用により、複数のミラー要素31aの姿勢がそれぞれ変化し、各ミラー要素31aがそれぞれ所定の向きに設定される。
【0031】
空間光変調器31は、
図4に示すように、二次元的に配列された複数の微小なミラー要素31aを備え、入射した光に対して、その入射位置に応じた空間的な変調を可変的に付与して射出する。説明および図示を簡単にするために、
図3および
図4では空間光変調器31が4×4=16個のミラー要素31aを備える構成例を示しているが、実際には16個よりもはるかに多数のミラー要素31aを備えている。
【0032】
図3を参照すると、空間光変調器31に入射する光線群のうち、光線L1は複数のミラー要素31aのうちのミラー要素SEaに、光線L2はミラー要素SEaとは異なるミラー要素SEbにそれぞれ入射する。同様に、光線L3はミラー要素SEa,SEbとは異なるミラー要素SEcに、光線L4はミラー要素SEa〜SEcとは異なるミラー要素SEdにそれぞれ入射する。ミラー要素SEa〜SEdは、その位置に応じて設定された空間的な変調を光L1〜L4に与える。
【0033】
空間光変調器31では、すべてのミラー要素31aの反射面が1つの平面に沿って設定された基準状態において、回折光学素子30と空間光変調器31との間の光路の光軸AXと平行な方向に沿って入射した光線が、空間光変調器31で反射された後に、空間光変調器31とリレー光学系4との間の光路の光軸AXとほぼ平行な方向に進むように構成されている。また、上述したように、空間光変調器31の複数のミラー要素31aの配列面は、リレー光学系4の前側焦点位置またはその近傍に位置決めされている。
【0034】
したがって、空間光変調器31の複数のミラー要素SEa〜SEdによって反射されて所定の角度分布が与えられた光は、所定面5に所定の光強度分布SP1〜SP4を形成し、ひいてはマイクロフライアイレンズ7の入射面に光強度分布SP1〜SP4に対応した光強度分布を形成する。すなわち、リレー光学系4は、空間光変調器31の複数のミラー要素SEa〜SEdが射出光に与える角度を、空間光変調器31の遠視野領域(フラウンホーファー回折領域)である所定面5上での位置に変換する。こうして、マイクロフライアイレンズ7が形成する二次光源の光強度分布(瞳強度分布)は、空間光変調器31およびリレー光学系4,6がマイクロフライアイレンズ7の入射面に形成する光強度分布に対応した分布となる。
【0035】
空間光変調器31は、
図4に示すように、平面状の反射面を上面にした状態で1つの平面に沿って規則的に且つ二次元的に配列された多数の微小な反射素子であるミラー要素31aを含む可動マルチミラーである。各ミラー要素31aは可動であり、その反射面の傾き、すなわち反射面の傾斜角および傾斜方向は、制御部32からの制御信号に基づいて作動する駆動部31cの作用により独立に制御される。各ミラー要素31aは、その反射面に平行な二方向であって互いに直交する二方向を回転軸として、所望の回転角度だけ連続的或いは離散的に回転することができる。すなわち、各ミラー要素31aの反射面の傾斜を二次元的に制御することが可能である。
【0036】
各ミラー要素31aの反射面を離散的に回転させる場合、回転角を複数の状態(例えば、・・・、−2.5度、−2.0度、・・・0度、+0.5度・・・+2.5度、・・・)で切り換え制御するのが良い。
図4には外形が正方形状のミラー要素31aを示しているが、ミラー要素31aの外形形状は正方形に限定されない。ただし、光利用効率の観点から、ミラー要素31aの隙間が少なくなるように配列可能な形状(最密充填可能な形状)とすることができる。また、光利用効率の観点から、隣り合う2つのミラー要素31aの間隔を必要最小限に抑えることができる。
【0037】
本実施形態では、空間光変調器31として、たとえば二次元的に配列された複数のミラー要素31aの向きを連続的にそれぞれ変化させる空間光変調器を用いている。このような空間光変調器として、たとえば特表平10−503300号公報およびこれに対応する欧州特許公開第779530号公報、特開2004−78136号公報およびこれに対応する米国特許第6,900,915号公報、特表2006−524349号公報およびこれに対応する米国特許第7,095,546号公報、並びに特開2006−113437号公報に開示される空間光変調器を用いることができる。なお、二次元的に配列された複数のミラー要素31aの向きを離散的に複数の段階を持つように制御してもよい。
【0038】
空間光変調器31では、制御部32からの制御信号に応じて作動する駆動部31cの作用により、複数のミラー要素31aの姿勢がそれぞれ変化し、各ミラー要素31aがそれぞれ所定の向きに設定される。空間光変調器31の複数のミラー要素31aによりそれぞれ所定の角度で反射された光は、マイクロフライアイレンズ7の直後の照明瞳に、所望の瞳強度分布を形成する。さらに、マイクロフライアイレンズ7の直後の照明瞳と光学的に共役な別の照明瞳の位置、すなわち結像光学系10の瞳位置および投影光学系PLの瞳位置(開口絞りASが配置されている位置)にも、所望の瞳強度分布が形成される。
【0039】
図5(a)は、ビーム送光部2と空間光変調器31との間に回折光学素子30が介在しない比較例の構成において、空間光変調器31の遠視野領域(フラウンホーファー回折領域)である所定面5上に複数の強度レベルを持つ瞳強度分布を形成する状態を示す図である。空間光変調器31の複数のミラー要素SEa〜SEdに入射する光束L1〜L4は、
図5(b)に示すように、その断面に亘ってそれぞれ均一な強度分布を有し、且つその光強度Iは互いに等しい。
【0040】
この場合、
図5(a)に示す通り、空間光変調器31の複数のミラー要素SEaおよびSEbを経た光束L1およびL2を瞳強度分布上の1つの単位領域(分割領域)に重ね合わせることによって、最小強度(1つのミラー要素SEc、SEdを経て1つの分割領域に入射する光束L3、L4による光強度分布SP3、SP4の強度)の複数倍の強度レベルを持つ光強度分布SP1を得ている。
【0041】
ここで、上述の構成(ビーム送光部2と空間光変調器31との間に回折光学素子30が介在しない構成)において、均一な強度分布および正方形状の断面を有する平行光束が、4000個のミラー要素31aを有する空間光変調器31に入射し、マイクロフライアイレンズ7の直後の照明瞳に光軸AXを中心とする円形状の瞳強度分布が形成される場合について考える。この場合、次の式(1)に示すように、円形状の瞳強度分布の分割数(ピクセル数)を32に設定しても、瞳強度分布の各分割領域(各ピクセル)の強度レベル(階調)は4段階程度にしかならない。しかも、各分割領域の強度レベルは、最小強度の整数倍(1倍、2倍、・・・)である。
4000/(32×32×π/4)≒4.9 (1)
【0042】
すなわち、ミラー要素数の比較的少ない高耐久性タイプの空間光変調器を用いる構成では、瞳強度分布の分割数を小さくしない限り、ひいては瞳強度分布の形状に関する自由度を犠牲にしない限り、瞳強度分布の各分割領域の強度レベルに関して所要の自由度を確保することができない。別の表現をすれば、複数のミラー要素を経た光を瞳強度分布上の1つの単位領域(分割領域)に重ね合わせない限り、最小強度(1つのミラー要素を経て1つの分割領域に入射する光束の強度)の複数倍の強度レベルを実現することができないため、瞳強度分布の強度レベルに関して所要の自由度を確保しようとすると、瞳強度分布の分割数が小さくなり、ひいては瞳強度分布の形状に関する自由度が損なわれる。その結果、瞳強度分布の形状に関する高い自由度と、瞳強度分布の強度レベルに関する高い自由度とを両立させることができない。
【0043】
本実施形態では、ビーム送光部2と空間光変調器31との間の光路中に配置された反射型の回折光学素子30を備えている。回折光学素子30は、光源1から入射した光に空間的な光変調を付与して、空間光変調器31の複数のミラー要素31aの要素毎にその位置に応じた強度レベルの光束を入射させる機能を有する。単純な例では、回折光学素子30を経て各ミラー要素31aに入射する光束はそれぞれ均一な強度分布を有するが、複数のミラー要素31aに入射する光束の強度レベルは離散的に分布する。換言すれば、回折光学素子30を経て空間光変調器31に入射する光束は、その断面に亘って不連続な強度分布、典型的には階段状に変化する強度分布を有する。
【0044】
図6(a)は、ビーム送光部2と空間光変調器31との間の光路中に反射型の回折光学素子30を配置した本実施形態の構成において、空間光変調器31の遠視野領域(フラウンホーファー回折領域)である所定面5上に複数の強度レベルを持つ瞳強度分布を形成する状態を示す図である。空間光変調器31の複数のミラー要素31aに入射する光束L1〜L4は、
図6(b)に示すように、その断面に亘ってそれぞれ均一な強度分布を有するが、その光強度Iは互いに異なる。換言すれば、光束L1〜L4は、離散的に分布した複数の強度レベルを有している。
【0045】
その結果、
図6(a)に示す通り、空間光変調器31の複数のミラー要素SEa〜SEdを経た光束L1〜L4を瞳強度分布上の互いに異なる単位領域(分割領域)に入射させたとしても、所定面5上に形成される瞳強度分布の各分割領域に到達する光束L1〜L4の強度レベルは、対応するミラー要素SEa〜SEdへの入射光束L1〜L4の強度レベルに応じた値になる。
【0046】
こうして、本実施形態において、制御部32は、例えば各ミラー要素31aへの入射光束の強度レベルに関する情報と瞳強度分布に関する情報とに基づいて、1つのミラー要素31aを経た光が瞳強度分布上の1つの分割領域(単位領域)へ入射するように複数のミラー要素31aを個別に制御する。その結果、瞳強度分布の各分割領域の強度レベルは対応するミラー要素31aへの入射光束の強度レベルに応じた値になり、ひいては瞳強度分布の各分割領域の強度レベルが離散的に分布することになる。しかも、各分割領域の強度レベルの最小強度に対する比を多様に変化させることができる。このことは、瞳強度分布の分割数を空間光変調器31のミラー要素31aの数と一致させて、瞳強度分布の形状に関して高い自由度を確保したとしても、瞳強度分布の各分割領域の強度レベルに関して高い自由度が確保されることを意味している。
【0047】
以上のように、本実施形態の空間光変調ユニット3では、光源1から入射した光に空間的な光変調を付与して、空間光変調器31の複数のミラー要素31aの要素毎にその位置に応じた強度レベルの光束を入射させる空間光変調素子としての回折光学素子30を備えている。したがって、各ミラー要素31aに入射する光束の強度レベルに関する情報に基づいて複数のミラー要素31aを個別に制御することにより、瞳強度分布の形状に関する自由度を損なうことなく、瞳強度分布の強度レベルに関する自由度を向上させることができる。特に、本実施形態では、回折特性の異なる複数の回折光学素子30を照明光路に対して切り換えて、複数のミラー要素31aに入射する光束の強度レベルの離散的な分布を変化させることにより、瞳強度分布の強度レベルに関する自由度をさらに向上させることができる。
【0048】
本実施形態の照明光学系(2〜10)では、空間光変調ユニット3を用いて、マイクロフライアイレンズ7の直後の照明瞳に形成される瞳強度分布の形状に関する自由度を損なうことなく、瞳強度分布の強度レベルに関する自由度を向上させて、多様性に富んだ照明条件を実現することができる。また、本実施形態の露光装置(2〜WS)では、多様性に富んだ照明条件を実現する照明光学系(2〜10)を用いて、転写すべきマスクMのパターンの特性に応じて実現された適切な照明条件のもとで良好な露光を行うことができる。
【0049】
なお、上述の説明では、回折光学素子30を経て複数のミラー要素31aに入射する光束の強度レベルが離散的に分布する例、すなわち回折光学素子30を経て空間光変調器31に入射する光束が階段状(断続的)に変化する強度分布を有する例に基づいて本実施形態の作用効果を説明している。しかしながら、これに限定されることなく、回折光学素子30を経て空間光変調器31に入射する光束がその断面に亘って連続的に(滑らかに)変化する強度分布を有する場合であっても、各ミラー要素31aに入射する光束はほぼ均一な強度分布を有し、複数のミラー要素31aに入射する光束の強度レベルはほぼ離散的に分布するため、上述の実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0050】
また、上述の説明では、1つのミラー要素31aを経た光を瞳強度分布上の1つの分割領域(単位領域)へ入射させる単純な例に基づいて、本実施形態の作用効果を説明している。しかしながら、これに限定されることなく、必要に応じて、複数のミラー要素31aを経た光を瞳強度分布上の1つの分割領域に重ね合わせても良いことはいうまでもない。
【0051】
また、上述の説明では、二次元的に配列されて個別に制御される複数のミラー要素を有する空間光変調器として、二次元的に配列された複数の反射面の向き(角度:傾き)を個別に制御可能な空間光変調器を用いている。しかしながら、これに限定されることなく、たとえば二次元的に配列された複数の反射面の高さ(位置)を個別に制御可能な空間光変調器を用いることもできる。このような空間光変調器としては、たとえば特開平6−281869号公報及びこれに対応する米国特許第5,312,513号公報、並びに特表2004−520618号公報およびこれに対応する米国特許第6,885,493号公報の
図1dに開示される空間光変調器を用いることができる。これらの空間光変調器では、二次元的な高さ分布を形成することで回折面と同様の作用を入射光に与えることができる。なお、上述した二次元的に配列された複数の反射面を持つ空間光変調器を、たとえば特表2006−513442号公報およびこれに対応する米国特許第6,891,655号公報や、特表2005−524112号公報およびこれに対応する米国特許公開第2005/0095749号公報の開示に従って変形しても良い。
【0052】
なお、上述の実施形態では、空間光変調器31が所定面内で二次元的に配列された複数のミラー要素31aを備えているが、これに限定されることなく、所定面内に配列されて個別に制御される複数の透過光学要素を備えた透過型の空間光変調器を用いることもできる。
【0053】
また、上述の実施形態では、空間光変調素子30と空間光変調器31との間の光路中には光学系が配置されていないが、この間の光路中にリレー光学系を配置してもよい。このリレー光学系としては、空間光変調素子30が配置される面の光学的なフーリエ変換面を空間光変調器31上に形成するフーリエ変換光学系であってもよい。
【0054】
また、上述の実施形態では、光源1から入射した光に空間的な光変調を付与して複数のミラー要素31aの要素毎にその位置に応じた強度レベルの光束を入射させる空間光変調素子として、反射型の回折光学素子30を用いている。しかしながら、反射型の回折光学素子30に代えて、透過型の回折光学素子を用いることもできる。
【0055】
また、
図7に示すように、反射型の回折光学素子30に代えて、所定面内に配列されて個別に制御される複数のミラー要素33aを備えた反射型の空間光変調器33を用いる構成も可能である。
図7の第1変形例にかかる空間光変調ユニット3Aにおいて、空間光変調器33は、空間光変調器31と同様に、二次元的に配列された複数のミラー要素33aと、複数のミラー要素の姿勢を個別に制御駆動する駆動部33cとを有する。駆動部33cは、制御部32からの制御信号に基づいて、複数のミラー要素33aの向きを連続的または離散的に変化させる。空間光変調器33と空間光変調器31との間の光路中には、リレー光学系34が配置されている。このリレー光学系34としては、空間光変調器33の複数のミラー要素33aが配列される配列面の光学的なフーリエ変換面を空間光変調器31上に形成するフーリエ変換光学系であってもよい。
【0056】
第1変形例では、空間光変調器33の1つのミラー要素33aを経た光が、リレー光学系34を介して、空間光変調器31の一群のミラー要素31aに選択的に入射する。その結果、空間光変調器33およびリレー光学系34を経て複数のミラー要素31aに入射する光束の強度レベルは離散的に分布し、空間光変調器31に入射する光束はその断面に亘って階段状に変化する強度分布を有する。
【0057】
こうして、空間光変調器33の複数のミラー要素33aの姿勢を個別に制御して、空間光変調器31の複数のミラー要素31aに入射する光束の強度レベルの離散的な分布を変化させることにより、瞳強度分布の形状に関する高い自由度と瞳強度分布の強度レベルに関する高い自由度とを両立させることができる。第1変形例では、空間光変調器33が二次元的に配列された複数のミラー要素33aを備えているが、これに限定されることなく、所定面内に配列されて個別に制御される複数の透過光学要素を備えた透過型の空間光変調器を用いることもできる。
【0058】
また、
図8に示すように、空間光変調素子として、所定の空間的な反射率分布を有するフィルタ35を用いる構成も可能である。
図8の第2変形例にかかる空間光変調ユニット3Bにおいて、フィルタ35は、例えば照明光路に対して挿脱自在に配置され、反射率分布の異なる別のフィルタ(不図示)と交換可能である。第2変形例においても、上述の実施形態の場合と同様に、フィルタ35を経て複数のミラー要素31aに入射する光束の強度レベルは離散的に分布し、空間光変調器31に入射する光束はその断面に亘って階段状に変化する強度分布を有する。
【0059】
また、第2変形例では、反射率分布の異なる複数のフィルタ35を照明光路に対して切り換えて、複数のミラー要素31aに入射する光束の強度レベルの離散的な分布を変化させることにより、瞳強度分布の強度レベルに関する自由度をさらに向上させることができる。第2変形例では、所定の空間的な反射率分布を有するフィルタ35を用いているが、これに限定されることなく、所定の空間的な透過率分布を有するフィルタを用いることもできる。
【0060】
一般に、本実施形態の制御方法では、照明光学系の光路中に配置された空間光変調器の複数の光学要素の各々に離散的な強度レベルの光束を入射させ、この離散的な強度レベルに関する情報に基づいて複数の光学要素を個別に制御する。また、所定面内に配列されて個別に制御される複数の光学要素を有する空間光変調器における複数の光学要素の駆動を制御する制御プログラムを用いて、本実施形態の制御方法をコンピュータにより実行させることができる。
【0061】
上述の実施形態では、オプティカルインテグレータとして、マイクロフライアイレンズ7を用いているが、その代わりに、内面反射型のオプティカルインテグレータ(典型的にはロッド型インテグレータ)を用いても良い。この場合、リレー光学系6の代わりに、所定面5からの光を集光する集光光学系を配置する。そして、マイクロフライアイレンズ7とコンデンサー光学系8との代わりに、所定面5からの光を集光する集光光学系の後側焦点位置またはその近傍に入射端が位置決めされるようにロッド型インテグレータを配置する。このとき、ロッド型インテグレータの射出端がマスクブラインド9の位置になる。ロッド型インテグレータを用いる場合、このロッド型インテグレータの下流の結像光学系10内の、投影光学系PLの開口絞りASの位置と光学的に共役な位置を照明瞳面と呼ぶことができる。また、ロッド型インテグレータの入射面の位置には、照明瞳面の二次光源の虚像が形成されることになるため、この位置およびこの位置と光学的に共役な位置も照明瞳面と呼ぶことができる。ここで、上記の集光光学系、上記の結像光学系、およびロッド型インテグレータを分布形成光学系とみなすことができる。
【0062】
上述の実施形態では、マスクの代わりに、所定の電子データに基づいて所定パターンを形成する可変パターン形成装置を用いることができる。このような可変パターン形成装置を用いれば、パターン面が縦置きでも同期精度に及ぼす影響を最低限にできる。なお、可変パターン形成装置としては、たとえば所定の電子データに基づいて駆動される複数の反射素子を含むDMD(デジタル・マイクロミラー・デバイス)を用いることができる。DMDを用いた露光装置は、例えば特開2004−304135号公報、国際特許公開第2006/080285号パンフレットおよびこれに対応する米国特許公開第2007/0296936号公報に開示されている。また、DMDのような非発光型の反射型空間光変調器以外に、透過型空間光変調器を用いても良く、自発光型の画像表示素子を用いても良い。ここでは、米国特許公開第2007/0296936号公報の教示を参照として援用する。
【0063】
上述の実施形態の露光装置は、本願特許請求の範囲に挙げられた各構成要素を含む各種サブシステムを、所定の機械的精度、電気的精度、光学的精度を保つように、組み立てることで製造される。これら各種精度を確保するために、この組み立ての前後には、各種光学系については光学的精度を達成するための調整、各種機械系については機械的精度を達成するための調整、各種電気系については電気的精度を達成するための調整が行われる。各種サブシステムから露光装置への組み立て工程は、各種サブシステム相互の、機械的接続、電気回路の配線接続、気圧回路の配管接続等が含まれる。この各種サブシステムから露光装置への組み立て工程の前に、各サブシステム個々の組み立て工程があることはいうまでもない。各種サブシステムの露光装置への組み立て工程が終了したら、総合調整が行われ、露光装置全体としての各種精度が確保される。なお、露光装置の製造は温度およびクリーン度等が管理されたクリーンルームで行っても良い。
【0064】
次に、上述の実施形態にかかる露光装置を用いたデバイス製造方法について説明する。
図9は、半導体デバイスの製造工程を示すフローチャートである。
図9に示すように、半導体デバイスの製造工程では、半導体デバイスの基板となるウェハWに金属膜を蒸着し(ステップS40)、この蒸着した金属膜上に感光性材料であるフォトレジストを塗布する(ステップS42)。つづいて、上述の実施形態の投影露光装置を用い、マスク(レチクル)Mに形成されたパターンをウェハW上の各ショット領域に転写し(ステップS44:露光工程)、この転写が終了したウェハWの現像、つまりパターンが転写されたフォトレジストの現像を行う(ステップS46:現像工程)。
【0065】
その後、ステップS46によってウェハWの表面に生成されたレジストパターンをマスクとし、ウェハWの表面に対してエッチング等の加工を行う(ステップS48:加工工程)。ここで、レジストパターンとは、上述の実施形態の投影露光装置によって転写されたパターンに対応する形状の凹凸が生成されたフォトレジスト層であって、その凹部がフォトレジスト層を貫通しているものである。ステップS48では、このレジストパターンを介してウェハWの表面の加工を行う。ステップS48で行われる加工には、例えばウェハWの表面のエッチングまたは金属膜等の成膜の少なくとも一方が含まれる。なお、ステップS44では、上述の実施形態の投影露光装置は、フォトレジストが塗布されたウェハWを、感光性基板つまりプレートPとしてパターンの転写を行う。
【0066】
図10は、液晶表示素子等の液晶デバイスの製造工程を示すフローチャートである。
図10に示すように、液晶デバイスの製造工程では、パターン形成工程(ステップS50)、カラーフィルタ形成工程(ステップS52)、セル組立工程(ステップS54)およびモジュール組立工程(ステップS56)を順次行う。ステップS50のパターン形成工程では、プレートPとしてフォトレジストが塗布されたガラス基板上に、上述の実施形態の投影露光装置を用いて回路パターンおよび電極パターン等の所定のパターンを形成する。このパターン形成工程には、上述の実施形態の投影露光装置を用いてフォトレジスト層にパターンを転写する露光工程と、パターンが転写されたプレートPの現像、つまりガラス基板上のフォトレジスト層の現像を行い、パターンに対応する形状のフォトレジスト層を生成する現像工程と、この現像されたフォトレジスト層を介してガラス基板の表面を加工する加工工程とが含まれている。
【0067】
ステップS52のカラーフィルタ形成工程では、R(Red)、G(Green)、B(Blue)に対応する3つのドットの組をマトリックス状に多数配列するか、またはR、G、Bの3本のストライプのフィルタの組を水平走査方向に複数配列したカラーフィルタを形成する。ステップS54のセル組立工程では、ステップS50によって所定パターンが形成されたガラス基板と、ステップS52によって形成されたカラーフィルタとを用いて液晶パネル(液晶セル)を組み立てる。具体的には、例えばガラス基板とカラーフィルタとの間に液晶を注入することで液晶パネルを形成する。ステップS56のモジュール組立工程では、ステップS54によって組み立てられた液晶パネルに対し、この液晶パネルの表示動作を行わせる電気回路およびバックライト等の各種部品を取り付ける。
【0068】
また、本実施形態は、半導体デバイス製造用の露光装置への適用に限定されることなく、例えば、角型のガラスプレートに形成される液晶表示素子、若しくはプラズマディスプレイ等のディスプレイ装置用の露光装置や、撮像素子(CCD等)、マイクロマシーン、薄膜磁気ヘッド、及びDNAチップ等の各種デバイスを製造するための露光装置にも広く適用できる。更に、本発明は、各種デバイスのマスクパターンが形成されたマスク(フォトマスク、レチクル等)をフォトリソグラフィ工程を用いて製造する際の、露光工程(露光装置)にも適用することができる。
【0069】
なお、上述の実施形態では、露光光としてArFエキシマレーザ光(波長:193nm)やKrFエキシマレーザ光(波長:248nm)を用いているが、これに限定されることなく、他の適当なレーザ光源、たとえば波長157nmのレーザ光を供給するF
2レーザ光源などに対して本発明を適用することもできる。
【0070】
また、上述の実施形態において、投影光学系と感光性基板との間の光路中を1.1よりも大きな屈折率を有する媒体(典型的には液体)で満たす手法、所謂液浸法を適用しても良い。この場合、投影光学系と感光性基板との間の光路中に液体を満たす手法としては、国際公開第WO99/49504号パンプレットに開示されているような局所的に液体を満たす手法や、特開平6−124873号公報に開示されているような露光対象の基板を保持したステージを液槽の中で移動させる手法や、特開平10−303114号公報に開示されているようなステージ上に所定深さの液体槽を形成し、その中に基板を保持する手法などを採用することができる。ここでは、国際公開第WO99/49504号パンフレット、特開平6−124873号公報および特開平10−303114号公報の教示を参照として援用する。
【0071】
また、上述の実施形態では、露光装置においてマスク(またはウェハ)を照明する照明光学系に対して本発明を適用しているが、これに限定されることなく、マスク(またはウェハ)以外の被照射面を照明する一般的な照明光学系に対して本発明を適用することもできる。