(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記第1のプラズマ室におけるアンモニアガスとシランガスの流量比(アンモニアガス流量/シランガス流量)が0.1〜1.0であることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池の製造方法。
上記第2のプラズマ室におけるアンモニアガスとシランガスの流量比(アンモニアガス流量/シランガス流量)が1.5〜3.0であることを特徴とする請求項2に記載の太陽電池の製造方法。
上記半導体基板は、第1導電型のシリコン基板の受光面となる側の面に第1導電型と反対の導電型の拡散層が形成されたものであり、この拡散層上に反射防止膜を形成することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の太陽電池の製造方法。
上記半導体基板は、第1導電型のシリコン基板の受光面とは反対面となる側の面の少なくとも一部に第1導電型と同じ導電型の拡散層が形成されたものであり、この拡散層が形成された面上に反射防止膜を形成することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の太陽電池の製造方法。
【背景技術】
【0002】
太陽電池は、光エネルギーを電力に変換する半導体素子であり、p−n接合型、pin型、ショットキー型などがあり、特にp−n接合型が広く用いられている。また、太陽電池をその基板材料を基に分類すると、シリコン結晶系太陽電池、アモルファス(非晶質)シリコン系太陽電池、化合物半導体系太陽電池の3種類に大きく分類される。シリコン結晶系太陽電池は、更に、単結晶系太陽電池と多結晶系太陽電池に分類される。太陽電池用シリコン結晶基板は、比較的容易に製造できることから、その生産規模は現在最大となっており、今後も更に普及していくものと思われる(例えば、特開平8−073297号公報(特許文献1))。
【0003】
太陽電池の出力特性は、一般に、ソーラーシミュレーターを用いて出力電流電圧曲線を測定することにより評価される。この曲線上で出力電流I
maxと出力電圧V
maxとの積、I
max×V
maxが最大となる点を最大出力P
maxとよび、このP
maxを太陽電池に入射する総光エネルギー(S×I:Sは素子面積、Iは照射する光の強度)で除した値:
η={P
max/(S×I)}×100(%)
が太陽電池の変換効率ηとして定義される。
【0004】
変換効率ηを高めるには、短絡電流I
sc(電流電圧曲線にてV=0の時の出力電流値)あるいはV
oc(電流電圧曲線にてI=0の時の出力電圧値)を大きくすること、及び出力電流電圧曲線をなるべく角形に近い形状のものとすることが重要である。なお、出力電流電圧曲線の角形の度合いは、一般に、
FF=P
max/(I
sc×V
oc)
で定義されるフィルファクタ(曲線因子)により評価でき、このFFの値が1に近いほど出力電流電圧曲線が理想的な角形に近づき、変換効率ηも高められることを意味する。
【0005】
上記変換効率ηを向上させるには、キャリアの表面再結合を低減させることが重要である。シリコン結晶系太陽電池においては、太陽光の入射光によって光生成した少数キャリアが、主に拡散によってp−n接合面へ到達した後、受光面及び裏面に取り付けられた電極から多数キャリアとして外部へ取り出され、電気エネルギーとなる。
その際、電極面以外の基板表面に存在する界面準位を介して、本来電流として取り出すことのできたキャリアが再結合して失われることがあり、変換効率ηの低下に繋がる。
【0006】
そこで、高効率太陽電池においては、シリコン基板の受光面及び裏面を、電極とのコンタクト部を除いて絶縁膜で保護し、シリコン基板と絶縁膜との界面におけるキャリア再結合を抑制し、変換効率ηの向上が図られている。このような絶縁膜として、窒化珪素膜が有用な膜として使われている。その理由は、窒化珪素膜は、結晶系シリコン太陽電池の反射防止膜としての機能と同時に、シリコン基板表面及び内部のパッシベーション効果にも優れているためである。
【0007】
窒化珪素膜は、従来、熱CVD、プラズマCVD、触媒CVDなどのCVD法(Chemical Vapor Deposition:化学気相蒸着法)によって形成されている。これらの中で最も一般的に普及しているのは、プラズマCVD法である。
図1は、一般にダイレクトプラズマCVDと呼ばれる平行平板型プラズマCVD装置を模式的に示すものである。
図1に示すCVD装置10は、成膜室1を構成する真空チャンバー10cを有し、この成膜室1には、所定位置に半導体基板2を載置するためのトレー3、このトレー3を一定温度に保つためのヒーターブロック4、及びヒーターブロック4の温度を制御する温度制御手段5が配設されている。また、成膜室1には、反応性ガスである所定の成膜用ガスを成膜室1内に導入する成膜用ガス導入路6、導入されたガスにエネルギーを与えてプラズマを発生させる高周波電源7、及び排気装置8が備えられている。
【0008】
上記CVD装置にて絶縁膜を成膜する場合、成膜用ガス導入路6によって所定の成膜用ガスを所定の流量で成膜室1内に導入した後、高周波電源7を動作させて高周波電界を設定する。この操作により、高周波放電が発生して成膜用ガスがプラズマ化し、プラズマによって生じる反応を利用して、半導体基板2の表面に絶縁膜が成膜される。例えば、窒化珪素膜を成膜する場合には、成膜用ガスとしてシランとアンモニアの混合ガスを成膜用ガス導入路6から成膜室1内へ導入し、プラズマ中でのシランの分解反応等を利用して窒化珪素膜を成膜する。
【0009】
プラズマCVD法は、プロセス温度が400℃程度と比較的低温であっても高い成膜速度を有するため、太陽電池の絶縁膜形成プロセスで多用されている。しかし、プラズマ中で生成される高エネルギー荷電粒子が、成膜した膜やシリコン基板表面にダメージを与えやすいため、得られる窒化珪素膜は界面準位密度が多くなり、十分なパッシベーション効果が得られない問題があった。そのためパッシベーション効果の向上には、水素等によるダングリングボンド(未結合手)の封止を図る必要があった。
【0010】
このような問題に対して、例えば、特開2005−217220号公報(特許文献2)では、プラズマダメージを抑制する方法として、リモートプラズマCVD法が提案されている。
図2はその装置の一例を模式的に示すものである。
図2に示すリモートプラズマCVD装置は、内部に導入された反応ガスを励起してプラズマ化させる筒状の励起室93と、この励起室93の下方にこの励起室93と連通して設けられた反応室(処理室)98とを備えている。また、励起室93は、その上部にキャリアガス91の導入口93a、その中央部にマッチング装置94を介してマイクロ波電源95が接続される高周波導入部(導波管)93cを備え、反応室98には、成膜用の反応ガス97の供給管が接続され、室内に基板99aを支持する基板ホルダ99が設けられている。このような構成の装置では、まず励起室93にマイクロ波電源95からマイクロ波を導入してキャリアガス91を励起し、これをガスの排気の流れに従って反応室98に導入し、反応室98内に導入された反応ガス97を活性化させ、基板99aに接触させることにより、基板99a上に成膜することが可能となり、例えば、キャリアガス91としてアンモニアガス、反応ガス97としてシランガスを用いて基板99a上に窒化珪素膜を形成することができる。このリモートプラズマCVD装置によれば、基板をプラズマ領域96から離れた位置に配置する構成であるため、基板のプラズマダメージをある程度軽減することが可能である。
【0011】
また、特開2009−117569号公報(特許文献3)には、表面波プラズマによる窒化珪素膜の成膜前に、前処理としてアンモニアガスを用いたプラズマ処理を行うことでパッシベーション効果が向上することが報告されている。また、特開2009−130041号公報(特許文献4)においては、窒化珪素膜の成膜前に、水素ガスとアンモニアガスとを含む混合ガスを用いて形成されるプラズマによって処理することでパッシベーション効果が向上することが報告されている。
しかしながら、上記方法においては、いずれも、絶縁膜形成プロセスとは別のプロセスを要するため、製造コストが高くなり、また、生産性向上が難しいという問題があった。
【0012】
また、プラズマCVD法により形成される窒化珪素膜の膜組成を化学量論比から珪素過剰側にシフトさせ、正の固定電荷を形成させるようにすると、バンドペンディングが生じ、シリコン基板と窒化珪素膜接触界面近傍にてシリコン基板側に電子が過剰となる反転層が形成され、これを利用してn領域側でのパッシベーション効果を高めることが可能となる。
【0013】
特開2002−270879号公報(特許文献5)では、第1の誘電体膜として高屈折率の窒化珪素膜を形成した後、その上に第2の誘電体膜として低屈折率の窒化珪素膜を形成し、二層構造とすることで変換効率が向上することが報告されている。しかしながら、この方法においては高屈折率と低屈折率の窒化珪素膜の形成プロセスが別となり、例えばまず高屈折率の窒化珪素膜を形成し、次いでアンモニアガスとシランガスの流量比など成膜ガスの流量調整を行った後に、低屈折率の窒化珪素膜を形成するようになることから、製造コストが高くなり、生産性向上が困難であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、パッシベーション効果に優れる窒化珪素からなる反射防止膜を生産性よく形成する太陽電池の製造方
法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは上記目的を達成するために鋭意検討した結果、リモートプラズマCVD装置において成膜ガスとしてアンモニア及びシランガスを用い、半導体基板に第1のプラズマ室からのプラズマ流及び第2のプラズマ室における第1のプラズマ室とは流量比の異なるアンモニアガスとシランガスに基づくプラズマ流により、順次成膜して組成の異なる二層以上の構造の窒化珪素膜を形成し、特に半導体基板側に珪素過剰の窒化珪素膜を形成することで、半導体基板と窒化珪素膜接触界面近傍にて半導体基板側に電子が過剰となる反転層が形成され、かつ基板のプラズマダメージが軽減されてパッシベーション効果に優れたものとなることを見出し、本発明を成すに至った。
【0016】
従って、本発明は、上記目的を達成するため、下記の太陽電池の製造方
法を提供する。
〔1〕 リモートプラズマCVD装置を用いて半導体基板表面に窒化珪素からなる反射防止膜を形成する工程を有する太陽電池の製造方法であって、
上記リモートプラズマCVD装置は、半導体基板が移動可能に配置される成膜室と、この成膜室の上方に連通して設けられ、アンモニアガスのプラズマ流を発生させ、このプラズマ流にシランガスを導入した上で成膜室に向けて該プラズマ流を噴出させる複数のプラズマ室とを備え、かつ上記複数のプラズマ室はそれぞれ導入されるアンモニアガスとシランガスの流量比を調整するフローコントローラが付設され、
上記半導体基板は、第1のプラズマ室からのプラズマ流により第1の窒化珪素膜が形成され、更に第2のプラズマ室の下方に移動して、第1のプラズマ室とは流量比の異なるアンモニアガスとシランガスに基づくプラズマ流により上記第1の窒化珪素膜とは異なる組成の第2の窒化珪素膜が形成されることを特徴とする太陽電池の製造方法。
〔2〕 上記第1のプラズマ室におけるアンモニアガスとシランガスの流量比(アンモニアガス流量/シランガス流量)が0.1〜1.0であることを特徴とする〔1〕に記載の太陽電池の製造方法。
〔3〕 上記第2のプラズマ室におけるアンモニアガスとシランガスの流量比(アンモニアガス流量/シランガス流量)が1.5〜3.0であることを特徴とする〔2〕に記載の太陽電池の製造方法。
〔4〕 上記半導体基板は、第1導電型のシリコン基板の受光面となる側の面に第1導電型と反対の導電型の拡散層が形成されたものであり、この拡散層上に反射防止膜を形成することを特徴とする〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の太陽電池の製造方法。
〔5〕 上記半導体基板は、第1導電型のシリコン基板の受光面とは反対面となる側の面の少なくとも一部に第1導電型と同じ導電型の拡散層が形成されたものであり、この拡散層が形成された面上に反射防止膜を形成することを特徴とする〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の太陽電池の製造方法
。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、リモートプラズマCVD法により二層構造の窒化珪素膜を形成するので、パッシベーション効果に優れた反射防止膜を形成することができ、また2つのプラズマ室それぞれにおけるアンモニアガスとシランガスの流量比を固定した状態で連続的に成膜するので、太陽電池の生産性向上を図りつつ、所期の組成比の二層構造の窒化珪素膜を安定して形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の太陽電池の製造方法を図面を参照して説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
図3,
図4は、本発明の太陽電池の製造方法における一実施形態の製造工程を示す概略図である。以下、各工程について詳細に説明する。
【0020】
(1)基板
図3,
図4に示すように、本発明において用いる半導体基板であるシリコン基板11はn型でもp型でもよく、
図3(A)にn型シリコン基板を、
図4(A)にp型シリコン基板を示す。シリコン単結晶基板の場合、チョクラルスキー(CZ)法及びフロートゾーン(FZ)法のいずれの方法によって作製されていてもよい。シリコン基板11の比抵抗は、高性能の太陽電池を作る点から、0.1〜20Ω・cmが好ましく、0.5〜2.0Ω・cmがより好ましい。シリコン基板11としては、比較的高いライフタイムが得られる点から、リンドープn型単結晶シリコン基板が好ましい。リンドープのドーパント濃度は1×10
15〜5×10
16cm
-3が好ましい。
【0021】
(2)ダメージエッチング/テクスチャ形成
例えば、シリコン基板11を水酸化ナトリウム水溶液に浸し、スライスによるダメージ層をエッチングで取り除く。この基板のダメージ除去は、水酸化カリウム等の強アルカリ水溶液を用いてもよく、フッ硝酸等の酸水溶液でも同様の目的を達成することが可能である。
ダメージエッチングを行った基板11に、ランダムテクスチャを形成する。太陽電池は通常、表面(受光面)に凹凸形状を形成するのが好ましい。その理由は、可視光域の反射率を低減させるために、できる限り2回以上の反射を受光面で行わせる必要があるためである。凹凸形状を形成する一つ一つの山のサイズは1〜20μm程度が好ましい。代表的な表面凹凸構造としては、V溝、U溝が挙げられる。これらは、研削機を利用して形成可能である。また、ランダムな凹凸構造を作るには、水酸化ナトリウムにイソプロピルアルコールを加えた水溶液に浸すウェットエッチングや、他には、酸エッチングやリアクティブ・イオン・エッチング等を用いることができる。なお、
図3,
図4中では両面に形成したテクスチャ構造は微細なため省略する。
【0022】
(3)n型拡散層形成
図3に示すように、シリコン基板11がn型の場合は、裏面にドーパントを含む塗布剤を塗布した後に熱処理を行うことで、n型拡散層13を裏面側の少なくとも一部に、特に裏面全面に形成する[
図3(B)]。また、
図4に示すように、シリコン基板がp型の場合は、受光面にドーパントを含む塗布剤を塗布した後に熱処理を行うことで、n型拡散層13を受光面に形成する[
図4(B)]。ドーパントはリンが好ましい。n型拡散層13の表面ドーパント濃度は、1×10
18〜5×10
20cm
-3が好ましく、5×10
18〜1×10
20cm
-3がより好ましい。
熱処理後、シリコン基板11に付いたガラス成分はガラスエッチング等により洗浄する。
【0023】
(4)p型拡散層形成
図3(C)に示すように、n型拡散層形成と同様の処理を受光面で行い、p型拡散層12を受光面全体に形成する。あるいは、n型拡散層13を形成した裏面同士を合わせて、BBr
3による気相拡散により、表面にp型拡散層12を形成するようにしてもよい。ドーパントはボロンが好ましく、また、p型拡散層12の表面ドーパント濃度は、1×10
18〜5×10
20cm
-3が好ましく、更には5×10
18〜1×10
20cm
-3がより好ましい。
【0024】
(5)pn接合分離
プラズマエッチャーを用い、pn接合分離を行う。このプロセスでは、プラズマやラジカルが受光面や裏面に侵入しないよう、サンプルをスタックし、その状態で端面を数ミクロン削る。接合分離後、基板に付いたガラス成分、シリコン粉等はガラスエッチング等により洗浄する。
【0025】
(6)反射防止膜形成
引き続き、太陽光の光を有効的にシリコン基板内に取り込むために、シリコン基板表面及び裏面の両方[
図3(D)]又は受光面[
図4(C)]に、反射防止膜である窒化珪素膜14を形成する。この窒化珪素膜は、シリコン基板表面及び内部のパッシベーション膜としても機能する。窒化珪素膜の形成方法としては、
図5に示すリモートプラズマCVD装置100を用いたプラズマCVD法により形成する。
【0026】
ここで、本発明で用いるリモートプラズマCVD装置100は、
図5に示すように、成膜室101を構成する真空チャンバー100cと、真空チャンバー100cの上部に成膜室101に連通して設けられる2つのプラズマ室111,112を構成する2つのプラズマ隔壁部100a,100bと、真空チャンバー100c内部、即ち成膜室101を排気する排気装置108とを備え、更にプラズマ室111,112ごとに独立して、導入するキャリアガス116と反応ガス117の流量比を調整するフローコントローラ113を備える。なお、プラズマ隔壁部100a,100bは、不図示の補助排気装置を備える。
【0027】
成膜室101は、室内に上記pn接合分離までの処理が終了した半導体基板102を搬送可能に支持するトレー103と、発熱してトレー103を介して半導体基板102を加熱するヒーターブロック104とを有している。また、ヒーターブロック104には、該ヒーターブロック104の発熱温度を制御する温度制御手段105が接続されている。
【0028】
また、プラズマ室111,112はそれぞれ、その上流側で導入されるキャリアガス116を励起して(プラズマ化して)反応活性種(ラジカル種)を生成する励起部111a,112aと、励起部111a,112aの下流側で、励起したキャリアガス116に対して反応ガス117を導入して活性反応種による化学反応を起こさせる活性化反応部111b、112bとからなる筒状のプラズマ発生室であり、半導体基板102の搬送方向にプラズマ室111,112の順で成膜室101の上方に配置され、それぞれの端部開口部が成膜室101に連通している。また、プラズマ室111,112の端部開口部は半導体基板102に成膜可能に近づけて配置されるが、該端部開口部から噴出するプラズマ流に半導体基板102が直接さらされない程度、即ち半導体基板102がプラズマダメージを受けない程度に半導体基板102から離されている。
【0029】
励起部111a,112aの上部には、キャリアガス116を内部に導入するキャリアガス導入口111c,112cが設けられ、励起部111a,112a側面に内部に導入されたキャリアガスに2.45GHzのマイクロ波を照射し放電させるマイクロ波電源115が設けられている。
【0030】
また、活性化反応部111b,112bには、反応ガス117を内部に導入する反応ガス導入口111d,112dが設けられている。
【0031】
プラズマ室111,112では、フローコントローラ113によりプラズマ室111,112ごとに独立してキャリアガス116と反応ガス117の流量比が調整された上で該キャリアガス116及び反応ガス117が導入され、励起部111a,112aにおいてマイクロ波電源115からマイクロ波が照射されてキャリアガス116が励起(プラズマ化)され、プラズマ領域110を形成しており、次いで活性化反応部111b,112bにおいて励起したキャリアガス116に対して反応ガス117を導入して活性化させ、活性化反応部111b,112b内及び活性化反応部111b,112bから成膜室101に出た領域辺りでキャリアガス成分と反応ガス成分の化学反応を起こさせる。なお、プラズマ室111,112の端部開口部からは直下に配置される半導体基板102に向けて上記プラズマ流が噴出している。この状態で、半導体基板102をプラズマ室111,112の端部開口部の下方に配置すると、半導体基板102上に成膜ガスであるキャリアガス116及び反応ガス117の組成に対応した皮膜が形成される。
【0032】
本発明においては、成膜ガスのうち、キャリアガス116としてアンモニア(NH
3)を用い、反応ガス117としてSiH
4、Si
2H
6等のシランガスを用いることにより窒化珪素膜が形成されるようになる。
【0033】
本工程では次の手順で成膜処理が行われる。即ち、リモートプラズマCVD装置100の成膜室101において、まず半導体基板102をトレー103上に載置し排気装置108で室内を真空排気した後、所定の温度に加熱し、フローコントローラ113によりプラズマ室111,112ごとに独立して流量比が調整されたキャリアガス116であるアンモニアガス及び反応ガス117であるシランガスを導入し、上記のようにプラズマ領域110を形成した状態とする。次に、トレー103上で半導体基板102を搬送しながら、第1のプラズマ室111の端部開口部の下方において、半導体基板102上に第1の窒化珪素膜を成膜し、次いで、第1のプラズマ室111とは流量比の異なるキャリアガス116(アンモニアガス)と反応ガス117(シランガス)が導入された第2のプラズマ室112の端部開口部の下方に移動して、第1の窒化珪素膜上に該第1の窒化珪素膜とは組成の異なる第2の窒化珪素膜を成膜し、二層構造の窒化珪素膜とする。
【0034】
窒化珪素膜の総膜厚は、膜の反射率や半導体基板表面形状により適宜設定すればよく、通常60〜100nm程度、特に70〜90nm程度であることが好ましい。また、第1の窒化珪素膜の膜厚は、30〜70nmが好ましく、35〜55nm程度がより好ましく、第2の窒化珪素膜の膜厚は30〜70nmが好ましく、35〜55nm程度がより好ましい。
【0035】
ここで、第1のプラズマ室111における成膜ガス条件(ガス流量)は、成膜室101の形状、大きさ、及び半導体基板102の搬送速度等により適宜設定すればよいが、例えば縦横寸法10cm×10cm〜15cm×15cmのシリコン基板を連続的に搬送して該シリコン基板の表面に窒化珪素膜を成膜する場合、アンモニア50〜500sccm、モノシラン300〜1,000sccmであることが好ましく、アンモニア250〜350sccm、モノシラン350〜500sccmであることがより好ましい。
【0036】
また、第2のプラズマ室112における成膜ガス条件(ガス流量)は、アンモニア300〜1,000sccm、モノシラン10〜500sccmであることが好ましく、アンモニア450〜500sccm、モノシラン250〜300sccmであることがより好ましい。
【0037】
第1のプラズマ室111、第2のプラズマ室112のいずれの場合もガス流量が上記範囲よりも少ないと均一な窒化珪素膜が形成できない場合があり、上記範囲よりも多いと成膜ガスが無駄になる場合がある。
【0038】
また、第1のプラズマ室111におけるアンモニアガスとシランガスの流量比(アンモニアガス流量/シランガス流量)が第2のプラズマ室112におけるアンモニアガスとシランガスの流量比(アンモニアガス流量/シランガス流量)よりも小さいことが好ましい。具体的には、第1のプラズマ室111におけるアンモニアガスとシランガスの流量比(アンモニアガス流量/シランガス流量)が0.1〜1.0であることが好ましく、0.5〜0.8であることがより好ましい。この流量比が0.1未満となると反射防止膜として不適なものとなる場合があり、1.0超となるとパッシベーション効果を高める効果が得られないおそれがある。また、第2のプラズマ室112におけるアンモニアガスとシランガスの流量比(アンモニアガス流量/シランガス流量)が1.5〜3.0であることが好ましく、1.5〜2.0であることがより好ましい。この流量比が1.5未満となり、あるいは3.0超となると、反射防止膜として不適なものとなるおそれがある。
【0039】
またこの場合の成膜条件として、成膜室101内の圧力10〜100Pa、半導体基板102の温度250〜600℃が好ましく、トレー103の搬送速度は成膜ガスの流量及び流量比等により異なるが、形成する窒化珪素膜の総膜厚が60〜100nmの場合、90〜150cm/minであることが好ましい。
【0040】
以上のように、
図5のリモートプラズマCVD装置を用い、上記の成膜条件で二層構造の窒化珪素膜を形成することで、パッシベーション効果が優れた窒化珪素膜を安定に形成することができる。
【0041】
(7)電極形成
スクリーン印刷装置等を用い、受光面側及び裏面側に、例えば銀を含むペーストをp型拡散層12及びn型拡散層13上に印刷し、櫛形電極パターン状(フィンガー電極15及び裏面電極16)に塗布して乾燥させる[
図3(E),
図4(D)]。特にシリコン基板にp型を使用する場合は、裏面側にアルミニウム(Al)粉末を有機バインダで混合したペーストをスクリーン印刷し、乾燥させて裏面電極16を形成することが好ましい。次いで、受光面及び裏面の両方に[
図3(F)]又は受光面に[
図4(D)]銀ペースト等でバスバー電極17をスクリーン印刷等により形成する。最後に、焼成炉において、500〜900℃で1〜30分焼成を行い、p型拡散層12又はn型拡散層13と電気的に接続する、フィンガー電極15、裏面電極16、及びバスバー電極17を形成する。なお、
図3(F)ではフィンガー電極15、裏面電極16が拡散層12,13と、
図4(D)ではフィンガー電極15は拡散層13と接続されていないように示されているが、焼成によりファイヤースルーされ、実際は拡散層と接続されている。
【実施例】
【0042】
以下に、本発明の実施例及び比較例を挙げて、更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0043】
[実施例1]
図3に示すように、結晶面方位(100)、15.65cm角、200μm厚、アズスライス比抵抗2Ω・cm(ドーパント濃度7.2×10
15cm
-3)リンドープn型単結晶シリコン基板11を、水酸化ナトリウム水溶液に浸してダメージ層をエッチングで取り除き、水酸化カリウム水溶液にイソプロピルアルコールを加えた水溶液に浸してアルカリエッチングすることでテクスチャ形成を行った[
図3(A)]。
得られたシリコン基板11の裏面に、リンドーパントを含む塗布剤を塗布した後に、900℃,1時間熱処理を行い、n型拡散層13を裏面に形成した[
図3(B)]。熱処理後、基板に付いたガラス成分は高濃度フッ酸溶液等により除去後、洗浄した。
引き続き、n型拡散層13を形成したシリコン基板11の裏面同士を合わせて、BBr
3による気相拡散を行い、p型拡散層12を受光面全体に形成した[
図3(C)]。
次に、プラズマエッチャーを用い、pn接合分離を行った。プラズマやラジカルが受光面や裏面に侵入しないよう、対象をスタックした状態で端面を数ミクロン削った。その後、基板に付いたガラス成分を高濃度フッ酸溶液により除去後、洗浄した。
【0044】
続いて、
図5に示す構成のリモートプラズマCVD装置(型名SiNA1000、Roth&Rau社製)を用い、キャリアガス116としてアンモニア、反応ガス117としてモノシラン(SiH
4)を使用し、フローコントローラ113により第1のプラズマ室111におけるアンモニアガスとモノシランガスの流量比(アンモニアガス流量(sccm)/モノシランガス流量(sccm))を0.5、第2のプラズマ室112におけるアンモニアガスとモノシランガスの流量比(アンモニアガス流量(sccm)/モノシランガス流量(sccm))を2.0として、受光面側のp型拡散層12、及び裏面側のn型拡散層13のそれぞれの上に誘電体膜である二層構造の窒化珪素膜14を積層した[
図3(D)]。これらの膜厚は70nmであった。
最後に、受光面側及び裏面側にそれぞれ銀ペーストを電極印刷し、乾燥後、750℃で3分焼成を行い、フィンガー電極15、裏面電極16及びバスバー電極17を形成した[
図3(E),(F)]。
【0045】
[実施例2]
図4に示すように、実施例1と同様のシリコン基板11にp型単結晶シリコン基板を使用し、実施例1と同様に水酸化ナトリウム水溶液に浸してダメージ層をエッチングで取り除き、水酸化カリウム水溶液にイソプロピルアルコールを加えた水溶液に浸してアルカリエッチングすることでテクスチャ形成を行った[
図4(A)]。
得られたシリコン基板11の受光面に、リンドーパントを含む塗布剤を塗布した後に、800℃で1時間熱処理を行い、n型拡散層13を形成した[
図4(B)]。熱処理後、基板に付いたガラス成分は高濃度フッ酸溶液等により除去後、洗浄した。
【0046】
次に、
図5に示す構成のリモートプラズマCVD装置(型名SiNA1000、Roth&Rau社製)を用い、キャリアガス116としてアンモニア、反応ガス117としてモノシラン(SiH
4)を使用し、フローコントローラ113により第1のプラズマ室111におけるアンモニアガスとモノシランガスの流量比(アンモニアガス流量(sccm)/モノシランガス流量(sccm))を0.5、第2のプラズマ室112におけるアンモニアガスとモノシランガスの流量比(アンモニアガス流量(sccm)/モノシランガス流量(sccm))を2.0として、受光面側のn型拡散層13上に誘電体膜である二層構造の窒化珪素膜14を積層した[
図4(C)]。この膜厚は80nmであった。
引き続き、受光面側及び裏面側にそれぞれ銀ペースト及びアルミニウムペーストを電極印刷し、乾燥後、750℃で3分焼成を行い、フィンガー電極15、裏面電極16及びバスバー電極17を形成した[
図4(D)]。
【0047】
[比較例1]
実施例1において、リモートプラズマCVD装置100の代わりに
図1に示すダイレクトプラズマCVD装置を用いて、受光面側のp型拡散層12、及び裏面側のn型拡散層13上に膜厚70nmの窒化珪素膜を形成し、それ以外は実施例1と同様の条件で太陽電池を作製した。
【0048】
[比較例2]
実施例2において、リモートプラズマCVD装置100の代わりに
図1に示すダイレクトプラズマCVD装置を用いて、受光面側のn型拡散層13上に膜厚80nmの窒化珪素膜を形成し、それ以外は実施例2と同様の条件で太陽電池を作製した。
【0049】
実施例1,2及び比較例1,2で得られた太陽電池を、25℃の雰囲気の中、ソーラーシミュレーター(光強度:1kW/m
2,スペクトル:AM1.5グローバル)の下で電流電圧特性を測定した。結果を表1に示す。なお、表中の数字は、実施例1,2及び比較例1,2で作製したセルそれぞれ10枚の平均値である。
【0050】
【表1】
【0051】
実施例1,2では、
図5のリモートプラズマCVD装置により2つのプラズマ室それぞれにおけるアンモニアガスとシランガスの流量比を固定した状態で連続的に成膜するので、シリコン基板表面側で正の固定電荷に富んだ窒化珪素膜が形成されることで、パッシベーション効果に優れ、かつ生産性に優れた窒化珪素膜が安定して形成されることで、比較例1,2よりも高い変換効率を示した。
【0052】
なお、これまで本発明を図面に示した実施形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。