特許第5885418号(P5885418)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5885418リソグラフィ装置、収差ディテクタ、およびデバイス製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5885418
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月15日
(54)【発明の名称】リソグラフィ装置、収差ディテクタ、およびデバイス製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20160301BHJP
【FI】
   G03F7/20 521
【請求項の数】11
【外国語出願】
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2011-160655(P2011-160655)
(22)【出願日】2011年7月22日
(65)【公開番号】特開2012-33927(P2012-33927A)
(43)【公開日】2012年2月16日
【審査請求日】2014年7月18日
(31)【優先権主張番号】61/369,349
(32)【優先日】2010年7月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504151804
【氏名又は名称】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(72)【発明者】
【氏名】ローイアッケルス,ウィルヘルムス,ヤコブス,マリア
【審査官】 藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2002/063664(WO,A1)
【文献】 特開2003−309066(JP,A)
【文献】 特開2004−343082(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20−7/24
G03F 9/00−9/02
G01M 11/00−11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターニングデバイスを支持するサポートと、
基板を支持する基板テーブルと、
前記サポートによって支持されたパターニングデバイスの像を前記基板テーブル上に支持された基板上に投影する投影システムと、
前記投影システムの収差を測定する収差ディテクタと、を含み、
前記収差ディテクタは、
前記サポートによって支持され、少なくとも1つのピンホールフィーチャを含むターゲットと、
前記基板テーブルによって支持され、前記投影システムによって投影された前記少なくとも1つのピンホールフィーチャの像を捕捉する結像デバイスと、
前記結像デバイスを前記基板テーブルに対して前記投影システムの光軸に平行な方向に移動させるアクチュエータと、
前記結像デバイスを用いて前記投影システムの前記光軸に平行な方向における前記結像デバイスの2つの異なる位置について前記投影システムによって投影された前記少なくとも1つのピンホールフィーチャの各像を取得し、かつ、前記各像から前記投影システムの前記収差の表現を取得するコントローラと、
を含む、リソグラフィ装置。
【請求項2】
前記コントローラは、前記投影システムの前記光軸に平行な方向における前記結像デバイスの前記2つの異なる位置についての前記各像における各ピンホールフィーチャの対応する像の中心の位置における差分から局所的な位相勾配を推定することによって、前記投影システムの前記収差の前記表現を取得するように構成される、請求項1に記載のリソグラフィ装置。
【請求項3】
前記コントローラは、ゼルニケ係数の形式で前記投影システムの前記収差の前記表現を求めるように構成される、請求項1又は請求項2に記載のリソグラフィ装置。
【請求項4】
前記収差ディテクタの前記ターゲットは、照明フィールド全体に亘る複数のピンホールフィーチャを含む、請求項1乃至請求項3のうち何れか1項に記載のリソグラフィ装置。
【請求項5】
前記コントローラは、前記結像デバイスおよび前記アクチュエータを用いて前記投影システムの前記光軸に平行な方向における前記結像デバイスの3つ以上の異なる位置について前記投影システムによって投影された前記1つ以上のピンホールフィーチャの各像を取得し、かつ、前記像を用いて前記投影システムの前記収差の前記表現を取得するように構成される、請求項1乃至請求項4のうち何れか1項に記載のリソグラフィ装置。
【請求項6】
少なくとも1つのピンホールフィーチャを含む前記ターゲットは、パターニングデバイスの像を基板上に投影する前記リソグラフィ装置の動作中に前記パターニングデバイスが支持される領域に隣接して前記サポートに取り付けられる、請求項1乃至請求項5のうち何れか1項に記載のリソグラフィ装置。
【請求項7】
少なくとも1つのピンホールフィーチャを含む前記ターゲットはパターニングデバイスであり、該パターニングデバイスは、前記収差ディテクタの動作中に、前記パターニングデバイスの像を基板上に投影する前記リソグラフィ装置の動作中に前記パターニングデバイスを支持する領域において前記サポート上に支持される、請求項1乃至請求項6のうち何れか1項に記載のリソグラフィ装置。
【請求項8】
前記投影システムの入射瞳をフラグメント化する瞳ファセットミラーをさらに含む、請求項1乃至請求項7のうち何れか1項に記載のリソグラフィ装置。
【請求項9】
リソグラフィ装置内の投影システムの収差を測定する収差ディテクタであって、
少なくとも1つのピンホールフィーチャを含むパターニングデバイスと、
前記投影システムによって投影された前記少なくとも1つのピンホールフィーチャの像を捕捉し、基板テーブルによって支持される結像デバイスと、
前記結像デバイスを前記基板テーブルに対して前記投影システムの光軸に平行な方向に移動させるアクチュエータと、
前記結像デバイスを用いて前記投影システムの前記光軸に平行な方向における前記結像デバイスの2つの異なる位置について前記投影システムによって投影された前記少なくとも1つのピンホールフィーチャの各像を取得し、かつ、前記各像から前記投影システムの前記収差の表現を取得するコントローラと、
を含む、収差ディテクタ。
【請求項10】
リソグラフィ装置を用いて、サポートによって支持されたパターニングデバイスの像を基板テーブル上に支持された基板上に投影することと、
前記像を前記基板に投影するように用いた投影システムの収差を測定することと、
を含み、
前記収差を測定することは、
少なくとも1つのピンホールフィーチャを含むパターニングデバイスを前記サポートに設けることと、
前記基板テーブルによって支持された結像デバイスを用いて、前記投影システムによって投影された前記少なくとも1つのピンホールフィーチャの第1の像を捕捉することと、
前記結像デバイスを前記基板テーブルに対して前記投影システムの光軸に平行な方向に移動させることと、
前記結像デバイスが前記第1の像が捕捉された位置とは異なる位置に移動された後に、前記結像デバイスを用いて、前記投影システムによって投影された前記少なくとも1つのピンホールフィーチャの第2の像を捕捉することと、
前記第1および第2の像から前記投影システムの前記収差の表現を取得することと、 を含む、デバイス製造方法。
【請求項11】
前記像の品質が、前記投影システムの前記収差の前記表現のデータを用いて制御される、請求項10に記載のデバイス製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本発明は、リソグラフィ装置、収差ディテクタ、およびデバイスを製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002] リソグラフィ装置は、所望のパターンを基板上、通常、基板のターゲット部分上に付与する機械である。リソグラフィ装置は、例えば集積回路(IC)の製造に用いることができる。その場合、ICの個々の層上に形成される回路パターンを生成するために、マスクまたはレチクルとも呼ばれるパターニングデバイスを用いることができる。このパターンは、基板(例えばシリコンウェーハ)上のターゲット部分(例えば1つ以上のダイの一部を含む)に転写することができる。通常、パターンの転写は、基板上に設けられた放射感応性材料(レジスト)層上への結像によって行われる。一般には、単一の基板が、連続的にパターニングされる隣接したターゲット部分のネットワークを含んでいる。
【0003】
[0003] リソグラフィは、ICおよび他のデバイスおよび/または構造の製造における重要なステップの1つとして広く認識されている。しかしながら、リソグラフィを使用して作られるフィーチャの寸法が小さくなるにつれて、リソグラフィは小型ICまたは他のデバイスおよび/または構造を製造可能にするためのより重大な要素になりつつある。
【0004】
[0004] パターンプリンティングの限界の理論推定値は、式(1)に示されるような解像度についてのレイリー(Rayleigh)基準によって与えることができる:
【数1】

ここで、λは用いられる放射の波長であり、NAはパターンのプリントに用いられる投影システムの開口数であり、k1はレイリー定数とも呼ばれる、プロセス依存型調節係数であり、CDはプリントされたフィーチャのフィーチャサイズ(またはクリティカルディメンション)である。式(1)から、フィーチャの最小プリント可能サイズの縮小は、3つの方法、すなわち、露光波長λを短くすること、開口数NAを大きくすること、またはk1の値を小さくすることによって得られることが分かる。
【0005】
[0005] 露光波長を短くする、したがって最小プリント可能なサイズを縮小するために、極端紫外線(EUV)源を使用することが提案されている。EUV放射は、10〜20nmの範囲内、例えば13〜14nmの範囲内であるの波長を有する電磁放射である。6.7nmまたは6.8nmといった例えば5〜10nmの範囲内である10nm未満の波長を有するEUV放射を用いることがさらに提案されている。このような放射は、極端紫外線または軟X線放射と呼ばれる。可能な放射源としては、例えばレーザ生成プラズマ源、放電プラズマ源、または電子蓄積リングによって供給されるシンクロトロン放射に基づいた放射源が挙げられる。
【0006】
[0006] EUV放射はプラズマを用いて生成されうる。EUV放射を生成するように構成された放射システムは、燃料を励起してプラズマを供給するためのレーザと、プラズマを閉じ込めるための放射源コレクタモジュールとを含みうる。プラズマは、例えば好適な物質(例えばスズ)の粒子、または、XeガスまたはLi蒸気といった適切なガスまたは蒸気のストリームである燃料にレーザビームを向けることによって生成されうる。結果として生じるプラズマは、例えばEUV放射である出力放射を放出し、この放射は放射コレクタを用いて集められる。放射コレクタは、放射を受け取りかつ放射をビームに集束するミラー付き法線入射放射コレクタであってよい。放射源コレクタモジュールは、プラズマを支援するための真空環境を与えるように構成された囲い構造またはチャンバを含みうる。このような放射システムは、通常、レーザ生成プラズマ(LPP)源と呼ばれる。
【0007】
[0007] 基板上に形成された像における誤差を最小限にするためには、パターニングデバイスの像を基板上に投影するように用いられる投影システムの位相収差を測定することが望ましい。通常、このような収差は、干渉法を用いて、例えばラテラルシアリング干渉法に基づいたシステムを用いて測定される。しかし、EUV放射システムに従来の干渉システムを用いることは問題があることが分かっている。例えば、通常、放射ビームを分割することが必要である。しかし、EUV放射ビーム用のビームスプリッタを設けることには問題がある。具体的には、そのようなコンポーネントはEUV放射ビームの強度の相当な部分を吸収してしまいうる、および/または、製造することが困難でありうる、および/または、壊れ易い。
【発明の概要】
【0008】
[0008] EUV放射を用いるリソグラフィシステムに特に容易に適用しうる、投影システムの収差を測定するための代替システムを提供することが望ましい。
【0009】
[0009] 本発明の一態様では、パターニングデバイスを支持するように構成されたサポートと、基板を支持するように構成された基板テーブルと、サポートによって支持されたパターニングデバイスの像を基板テーブル上に支持された基板上に投影するように構成された投影システムと、投影システムの収差を測定するように構成された収差ディテクタとを含むリソグラフィ装置が提供される。収差ディテクタは、サポートによって支持され、少なくとも1つのピンホールフィーチャを含むターゲットと、基板テーブルによって支持され、投影システムによって投影された少なくとも1つのピンホールフィーチャの像を捕捉するように構成された結像デバイスと、結像デバイスを投影システムの光軸に平行な方向に移動させるように構成されたアクチュエータと、結像デバイスを用いて投影システムの光軸に平行な方向における結像デバイスの2つの異なる位置について投影システムによって投影された少なくとも1つのピンホールフィーチャの各像を取得し、かつ、各像から投影システムの収差の表現を取得するように構成されたコントローラとを含む。
【0010】
[0010] 本発明の一態様では、リソグラフィ装置内の投影システムの収差を測定するように構成された収差ディテクタであって、少なくとも1つのピンホールフィーチャを含むパターニングデバイスと、投影システムによって投影された少なくとも1つのピンホールフィーチャの像を捕捉するように構成された結像デバイスと、結像デバイスを投影システムの光軸に平行な方向に移動させるように構成されたアクチュエータと、結像デバイスを用いて投影システムの光軸に平行な方向における結像デバイスの2つの異なる位置について投影システムによって投影された少なくとも1つのピンホールフィーチャの各像を取得し、かつ、各像から投影システムの収差の表現を取得するように構成されたコントローラとを含む、収差ディテクタが提供される。
【0011】
[0011] 本発明の一態様では、リソグラフィ装置を用いて、サポートによって支持されたパターニングデバイスの像を基板テーブル上に支持された基板上に投影することと、像を基板に投影するように用いた投影システムの収差を測定することと、を含むデバイス製造方法が提供される。収差を測定することは、少なくとも1つのピンホールフィーチャを含むパターニングデバイスをサポートに設けることと、基板テーブルによって支持された結像デバイスを用いて、投影システムによって投影された少なくとも1つのピンホールフィーチャの第1の像を捕捉することと、結像デバイスを投影システムの光軸に平行な方向に移動させることと、結像デバイスが第1の像が捕捉された位置とは異なる位置に移動された後に、結像デバイスを用いて、投影システムによって投影された少なくとも1つのピンホールフィーチャの第2の像を捕捉することと、第1および第2の像から投影システムの収差の表現を取得することを含む。
【0012】
[0012] 本発明の更なる特徴および利点、ならびに本発明の様々な実施形態の構造および動作を、添付図面を参照して以下に詳細に説明する。本発明は、本明細書に記載した具体的な実施形態に限定されないことに留意されたい。このような実施形態は本明細書において例示目的のみに提示されている。本明細書に含まれる教示内容に基づき、当業者には追加の実施形態が明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
[0013] 本明細書に組み込まれかつその一部を形成する添付図面は本発明を例示し、以下の記載と共に本発明の原理をさらに説明し、当業者が本発明をなしかつ利用することを可能にする。
図1】[0014] 図1は本発明の一実施形態によるリソグラフィ装置を示す。
図2】[0015] 図2図1の装置のより詳細な図である。
図3】[0016] 図3図1および図2の装置の放射源コレクタモジュールSOのより詳細な図である。
図4】[0017] 図4は本発明の一実施形態による収差ディテクタの配置を示す。
図5】[0018] 図5は2つの異なる位置における本発明の一実施形態による収差ディテクタの一部を示す。
図6】[0019] 図6は2つの異なる位置における本発明の一実施形態による代替の収差ディテクタの一部を示す。
図7】[0020] 図7は本発明の一実施形態による収差ディテクタの更なる一部の配置を示す。
図8】[0021] 図8は本発明の一実施形態による収差ディテクタの更なる一部の代案を示す。
【0014】
[0022] 本発明の特徴および利点は、図面と共に解釈されると以下の詳細な説明からより明らかとなろう。図中、同様の参照文字は全体に亘って対応する要素を特定している。図中、同様の参照番号は通常同一の、機能上同様の、および/または構造上同様の要素を示す。ある要素が最初に登場する図面は、対応する参照番号の一番左の数字によって示される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[0023] 本明細書は、本発明の特徴を組み込んだ1つ以上の実施形態を開示する。開示された実施形態は、本発明を例示するに過ぎない。本発明の範囲は、開示された実施形態に限定されない。本発明は添付の特許請求の範囲によって定義される。
【0016】
[0024] 記載された実施形態、および、明細書における「1つの実施形態」、「一実施形態」、「実施形態例」等への参照は、記載される実施形態が特定の特徴、構造、または特性を含みうることを示すが、どの実施形態も必ずしもその特定の特徴、構造、または特性を含むわけではない。さらに、この表現は必ずしも同じ実施形態を参照しているわけではない。また、特定の特徴、構造、または特性が一実施形態に関連して記載される場合、本明細書に明示的に記載されるか否かに関わらず他の実施形態に関連してかかる特徴、構造、または特性を実現させることは当業者の知識の範囲内であると理解されるものとする。
【0017】
[0025] 本発明の実施形態は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、またはこれらの任意の組み合わせで実施しうる。本発明の実施形態はさらに、1つ以上のプロセッサによって読み出されて実行されうる、機械可読媒体上に記憶された命令として実施されうる。機械可読媒体は、機械(例えばコンピュータデバイス)によって可読である形態で情報を記憶または送信するように構成された任意の機構を含みうる。例えば機械可読媒体は、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、磁気ディスク記憶媒体、光学記憶媒体、フラッシュメモリデバイス、電気的、光学的、音響的、または他の形態の伝播信号(例えば搬送波、赤外線信号、デジタル信号等)等を含みうる。さらに、本明細書において、ファームウェア、ソフトウェア、ルーチン、命令が特定の動作を行うとして説明されうる。しかし、このような記載は便宜のために過ぎず、このような動作は実際にはコンピュータデバイス、プロセッサ、コントローラ、または、ファームウェア、ソフトウェア、ルーチン、命令等を実行する他のデバイスの結果生じるものであることを理解すべきである。
【0018】
[0026] しかし、このような実施形態をより詳細に説明する前に、本発明の実施形態が実施されうる例示的な環境を提示することが有益である。
【0019】
[0027] 図1は、本発明の一実施形態による放射源コレクタモジュールSOを含むリソグラフィ装置100を概略的に示す。このリソグラフィ装置は、放射ビームB(例えばEUV放射)を調整するように構成された照明システム(イルミネータ)ILと、パターニングデバイス(例えばマスクまたはレチクル)MAを支持するように構成され、かつパターニングデバイスを正確に位置決めするように構成された第1ポジショナPMに接続されたサポート構造(例えばマスクテーブル)MTと、基板(例えばレジストコートウェーハ)Wを保持するように構成され、かつ基板を正確に位置決めするように構成された第2ポジショナPWに接続された基板テーブル(例えばウェーハテーブル)WTと、パターニングデバイスMAによって放射ビームBに付けられたパターンを基板Wのターゲット部分C(例えば1つ以上のダイを含む)上に投影するように構成された投影システム(例えば反射投影レンズシステム)PSとを含む。
【0020】
[0028] 照明システムとしては、放射を誘導し、整形し、または制御するために、屈折型、反射型、磁気型、電磁型、静電型、またはその他のタイプの光コンポーネント、或いはそれらの任意の組み合せ等の様々なタイプの光コンポーネントを含むことができる。
【0021】
[0029] サポート構造MTは、パターニングデバイスの向き、リソグラフィ装置の設計、および、パターニングデバイスが真空環境内で保持されているか否か等の他の条件に応じた態様で、パターニングデバイスMAを保持する。サポート構造は、機械式、真空式、静電式またはその他のクランプ技術を使って、パターニングデバイスを保持することができる。サポート構造は、例えば、必要に応じて固定または可動式にすることができるフレームまたはテーブルであってもよい。サポート構造は、パターニングデバイスを、例えば投影システムに対して所望の位置に確実に置くことができる。
【0022】
[0030] 「パターニングデバイス」という用語は、基板のターゲット部分内にパターンを作り出すように、放射ビームの断面にパターンを与えるために使用できるあらゆるデバイスを指していると広く解釈されるべきである。放射ビームに付与されたパターンは、集積回路等のターゲット部分内に作り出されるデバイス内の特定の機能層に対応しうる。
【0023】
[0031] パターニングデバイスは、透過型であっても反射型であってもよい。パターニングデバイスの例としては、マスク、プログラマブルミラーアレイ、およびプログラマブルLCDパネルが含まれる。マスクは、リソグラフィでは周知であり、バイナリ、レべンソン型(alternating)位相シフト、およびハーフトーン型(attenuated)位相シフト等のマスク型、ならびに種々のハイブリッドマスク型を含む。プログラマブルミラーアレイの一例では、小型ミラーのマトリックス配列が用いられ、入射する放射ビームを様々な方向に反射させるように各小型ミラーを個別に傾斜させることができる。傾斜されたミラーは、ミラーマトリックスによって反射される放射ビームにパターンを付与する。
【0024】
[0032] 投影システムは、照明システムと同様に、用いられる露光放射に、または真空の使用といった他の要素に適切な屈折型、反射型、反射屈折型、磁気型、電磁型、静電型、または他の型の光学コンポーネント、またはそれらのあらゆる組合せを含むあらゆる型の光学コンポーネントを含みうる。ガスは放射を吸収しすぎることがあるので、EUV放射には真空を用いることが望ましい。したがって、真空環境を、真空壁および真空ポンプを用いてビーム経路全体に提供しうる。
【0025】
[0033] 本明細書に示されているとおり、リソグラフィ装置は反射型装置であってよい(例えば反射型マスクを採用する)。
【0026】
[0034] リソグラフィ装置は、2つ(デュアルステージ)以上の基板テーブル(および/または2つ以上のマスクテーブル)を有するタイプのものであってもよい。そのような「マルチステージ」機械では、追加のテーブルを並行して使うことができ、すなわち予備工程を1つ以上のテーブル上で実行しつつ、別の1つ以上のテーブルを露光用に使うこともできる。
【0027】
[0035] 図1を参照すると、イルミネータILは、放射源コレクタモジュールSOから極端紫外線ビームを受け取る。EUV光を生成する方法には、次に必ずしも限定されないが、物質を、EUV範囲内の1本以上の輝線を有する例えばキセノン、リチウム、またはスズである少なくとも1つの元素を有するプラズマ状態に変換することが含まれる。多くの場合、レーザ生成プラズマ(「LPP」)と呼ばれるこのような方法の1つでは、必要とされるプラズマは、必要な輝線を放出する元素を有する物質の液滴、ストリームまたはクラスタといった燃料をレーザビームによって照射することによって生成することができる。放射源コレクタモジュールSOは、燃料を励起するレーザビームを提供する、図1には図示しないレーザを含むEUV放射システムの一部であってよい。結果として生じるプラズマは、例えばEUV放射である出力放射を放出し、この放射は、放射源コレクタモジュール内に配置される放射源コレクタを使って集められる。例えばCOレーザを用いて燃料励起のためのレーザビームを提供する場合は、レーザと放射源コレクタモジュールは別個の構成要素であってよい。
【0028】
[0036] その場合、レーザは、リソグラフィ装置の一部を形成しているとはみなされず、また、放射ビームはレーザから放射源コレクタモジュールへ、例えば適切な誘導ミラーおよび/またはビームエキスパンダを含むビームデリバリシステムを使って送られる。その他の場合、例えば放射源が多くの場合DPP源と呼ばれる放電生成プラズマEUVジェネレータである場合、放射源は放射源コレクタモジュールの一体部分とすることもできる。
【0029】
[0037] イルミネータILは、放射ビームの角強度分布を調節するように構成されたアジャスタを含むことができる。一般に、イルミネータの瞳面内の強度分布の少なくとも外側および/または内側半径範囲(通常、それぞれσ-outerおよびσ-innerと呼ばれる)を調節することができる。さらに、イルミネータは、ファセットフィールドデバイスおよび瞳ミラーデバイスといった様々な他のコンポーネントを含むことができる。イルミネータを使って放射ビームを調整すれば、放射ビームの断面に所望の均一性および強度分布を持たせることができる。
【0030】
[0038] 放射ビームBは、サポート構造(例えばマスクテーブル)MT上に保持されているパターニングデバイス(例えばマスク)MA上に入射して、パターニングデバイスによってパターン形成される。パターニングデバイス(例えばマスク)MAから反射された後、放射ビームBは投影システムPSを通過し、投影システムPSは、基板Wのターゲット部分C上にビームの焦点を合わせる。第2ポジショナPWおよび位置センサPS2(例えば、干渉計デバイス、リニアエンコーダ、または静電容量センサ)を使い、例えば、様々なターゲット部分Cを放射ビームBの経路内に位置決めするように、基板テーブルWTを正確に動かすことができる。同様に、第1ポジショナPMおよび別の位置センサPS1を使い、パターニングデバイス(例えばマスク)MAを放射ビームBの経路に対して正確に位置決めすることもできる。パターニングデバイス(例えばマスク)MAおよび基板Wは、マスクアライメントマークM1、M2と、基板アライメントマークP1、P2を使って位置合わせされうる。
【0031】
[0039] 例示の装置は、以下に説明するモードのうち少なくとも1つのモードで使用できる。
1.ステップモードでは、サポート構造(例えばマスクテーブル)MTおよび基板テーブルWTを基本的に静止状態に保ちつつ、放射ビームに付けられたパターン全体を一度にターゲット部分C上に投影する(すなわち、単一静的露光)。その後、基板テーブルWTは、Xおよび/またはY方向に移動され、それにより別のターゲット部分Cを露光することができる。
2.スキャンモードでは、サポート構造(例えばマスクテーブル)MTおよび基板テーブルWTを同期的にスキャンする一方で、放射ビームに付けられたパターンをターゲット部分C上に投影する(すなわち、単一動的露光)。サポート構造(例えばマスクテーブル)MTに対する基板テーブルWTの速度および方向は、投影システムPSの(縮小)拡大率および像反転特性によって決めることができる。
3.別のモードでは、プログラマブルパターニングデバイスを保持した状態で、サポート構造(例えばマスクテーブル)MTを基本的に静止状態に保ち、また基板テーブルWTを動かす、またはスキャンする一方で、放射ビームに付けられているパターンをターゲット部分C上に投影する。このモードでは、通常、パルス放射源が採用され、さらにプログラマブルパターニングデバイスは、基板テーブルWTの移動後ごとに、またはスキャン中の連続する放射パルスと放射パルスとの間に、必要に応じて更新される。この動作モードは、前述のタイプのプログラマブルミラーアレイといったプログラマブルパターニングデバイスを利用するマスクレスリソグラフィに容易に適用することができる。
【0032】
[0040] 上述の使用モードの組合せおよび/またはバリエーション、或いは完全に異なる使用モードもまた採用可能である。
【0033】
[0041] 図2は、放射源コレクタモジュールSO、照明システムIL、および投影システムPSを含むリソグラフィ装置100をより詳細に示す。放射源コレクタモジュールSOは、放射源コレクタモジュールSOの囲い構造220内に真空環境が維持可能であるように構成される。EUV放射を放出するプラズマ210が放電生成プラズマ源によって形成されうる。EUV放射は、例えばXeガス、Li蒸気またはSn蒸気といったガスまたは蒸気によって生成されてよく、ガスまたは蒸気内で非常に高温のプラズマ210が生成されて電磁スペクトルのEUV範囲の放射が放出される。非常に高温のプラズマ210は、例えば少なくとも部分的にイオン化されたプラズマを引き起こす放電によって生成される。約10Paの分圧のXe、Li、Sn蒸気または任意の他の好適なガスまたは蒸気が、放射の効率のよい発生には必要となりうる。一実施形態では、励起されたスズ(Sn)のプラズマが提供されてEUV放射が生成される。
【0034】
[0042] 高温プラズマ210によって放出された放射は、放射源チャンバ211からコレクタチャンバ212内へと、放射源チャンバ211の開口内またはその後方に位置決めされる光学ガスバリアまたは汚染物質トラップ230(汚染物質バリアまたはフォイルトラップとも呼ばれることがある)を介して渡される。汚染物質トラップ230はチャネル構造を含みうる。汚染物質トラップ230はガスバリア、または、ガスバリアとチャネル構造の組み合わせを含んでもよい。本明細書に示す汚染物質トラップまたは汚染物質バリア230はさらに、当技術において周知であるように少なくともチャネル構造を含む。
【0035】
[0043] コレクタチャンバ211は、いわゆるかすめ入射コレクタでありうる放射コレクタCOを含みうる。放射コレクタCOは、上流放射コレクタ側251と下流放射コレクタ側252を有する。コレクタCOを通過する放射は格子スペクトルフィルタ240から反射して仮想放射源点IFに合焦される。仮想放射源点IFは通常中間焦点と呼ばれ、放射源コレクタモジュールは中間焦点IFが囲み構造220の開口221にまたはその付近に位置するように構成される。仮想放射源点IFは放射を放出するプラズマ210の像である。
【0036】
[0044] 次に、放射は照明システムILを通過する。照明システムILは、パターニングデバイスMAにおいて放射ビーム21の所望の角分布を提供し、また、パターニングデバイスMAにおいて所望の放射強度の均一性を提供するように構成されたファセットフィールドミラーデバイス22およびファセット瞳ミラーデバイス24を含みうる。サポート構造MTによって保持されたパターニングデバイスMAにおいて放射ビーム21が反射した後、パターン付きビーム26が形成されて、このパターン付きビーム26は、反射要素28、30を介してウェーハステージまたは基板テーブルWTによって保持された基板W上に投影システムPSによって結像される。
【0037】
[0045] 図示するよりも多くの要素が一般的に照明光学ユニットILおよび投影システムPS内に存在しうる。格子スペクトルフィルタ240は、リソグラフィ装置の型に依存して任意選択的に存在しうる。さらに図示するよりも多くのミラーが存在してよく、例えば図2に示すよりも1〜6個追加の反射要素が投影システムPS内に存在してもよい。
【0038】
[0046] 図2に示すコレクタ光学部品COは、コレクタ(またはコレクタミラー)のほんの一例として、かすめ入射リフレクタ253、254、および255を有するネスト型コレクタとして示される。かすめ入射リフレクタ253、254、および255は光軸O周りに軸対称に配置され、この型のコレクタ光学部品COは、DPP源と多くの場合呼ばれる放電生成プラズマ源と組み合わせて用いられることが好適である。
【0039】
[0047] 或いは、放射源コレクタモジュールSOは、図3に示すようにLPP放射システムの一部であってもよい。レーザLAがキセノン(Xe)、スズ(Sn)、またはリチウム(Li)といった燃料にレーザエネルギーを堆積するように構成され、それにより、数十eVの電子温度を有する、高度にイオン化されたプラズマ210が生成される。脱励起およびこれらのイオンの再結合時に発生されるエネルギー放射がプラズマから放出され、近法線入射コレクタ光学系COによって集められ囲い構造220の開口221に合焦される。
【0040】
[0048] 本発明は、干渉法を用いることなく投影システムPSの収差を測定するように構成された、リソグラフィ装置用の収差ディテクタを提供する。図4は本発明の収差ディテクタ50の動作原理を概略的に説明する。
【0041】
[0049] 図示するように、ターゲット51が、リソグラフィ装置100の通常動作時にはパターニングデバイスMAを支持するサポート構造MT上に設けられる。ターゲット51は1つ以上のピンホールフィーチャ52を含む。このようなピンホールフィーチャ52は、投影システムPSに細い放射ビームを送るように構成される。
【0042】
[0050] 図1および図4に示すような反射システムでは、ピンホールフィーチャ52は放射を反射しない領域によって囲まれた小さい反射要素でありうることが理解されよう。このような配置はEUV放射と共に用いるのに適していることがある。しかし、本発明の収差ディテクタ50は、他の形態の放射を用いるリソグラフィ装置と共に用いられてもよいことはさらに理解されよう。その場合、パターニングデバイスは透過型である透過型システムが用いられてよい。この場合、ピンホールフィーチャ52は細いアパーチャでありうる。
【0043】
[0051] 反射型システムが用いられようと透過型システムが用いられようと、ピンホールフィーチャ52のサイズは可能な限り小さく選択されうる。しかし、ピンホールフィーチャのサイズは、以下に説明する測定を行うために十分な放射が通過するのに十分でなければならないことは理解されよう。例えばピンホールフィーチャ52のサイズは約100μmであってよい。
【0044】
[0052] 図4に示すように、ターゲット51のピンホールフィーチャ52に関連付けられた放射線53は、投影システムPSによって、基板テーブルWTによって支持された結像デバイス55上に投影される。図4に示すように、投影システム内に収差がない場合、放射線は投影システムの光軸に対して公称経路53’をたどる。しかし、投影システムPS内の収差によって、実際の放射線53はこの公称経路53’から僅かに逸れる。図4および後続の図面に示す逸脱は、本発明の原理を説明するために誇張して示してある。
【0045】
[0053] 一実施形態では、投影システムの入射瞳は、例えばEUV放射を用いるように構成された装置の場合は瞳ファセットミラーによってフラグメント化されうる。この場合、対応する複数の強度フィーチャは、ターゲット51の各ピンホールフィーチャ52について、結像デバイス55によって捕捉されうる。このような配置は、向上された収差感度を与えうる、すなわち、強度像からの収差の判断において向上された信号対雑音を与える。しかし、瞳のフラグメント化は必須ではないことは理解すべきである。
【0046】
[0054] 投影システムPSの収差を測定するために、収差ディテクタ50は、結像デバイス55が投影システムPSの光軸に平行な方向に移動しうるように構成される。投影システムPSの光軸に平行な方向における、結像デバイス55の2つの異なる位置について、結像デバイス55を用いて像が捕捉される。これらの像は、以下に説明するように投影システムPSの収差の表現(representation)を与えるために比較されうる。光軸に平行な方向における移動は必要であるが、結像デバイスが別の方向、例えば投影システムPSの光軸に垂直な平面内でも移動されうることを除外するものではないことは理解すべきである。この場合、収差ディテクタ50は、投影システムの光軸に平行な方向以外の任意の方向における移動を考慮するように構成されうる。
【0047】
[0055] 結像デバイス55が2つの異なる位置に設けられ、これらの位置で像が捕捉されることを示す図5および図6に示すように、結像デバイス55は基板テーブルWT上に取り付けられうる。具体的には、結像デバイス55は基板テーブルWTの上面上、例えば基板テーブルWTが基板を支持しうる領域に隣接して取り付けられうる。したがって、結像デバイス55は、基板テーブルWTの移動用に設けられているポジショナPWによる基板テーブルWTの上面に平行な方向における基板テーブルWTの移動によって、投影システムPSによって結像デバイス55上に投影されたターゲット51の像を捕捉するための位置に移動されうる。
【0048】
[0056] 基板テーブルWT用のこのような位置決めシステムPWはさらに、基板テーブルWTの上面に垂直、すなわち投影システムPSの光軸と平行な方向において、基板テーブルWT、したがって基板テーブルWT上に支持された基板Wの位置を調節するように構成されうる。このような位置決め制御は、例えば焦点面調節を達成するために与えられうる。
【0049】
[0057] 一実施形態では、図5に示すように、投影システムPSの光軸に平行な方向における基板テーブルWTの移動の範囲は、収差ディテクタ50にも用いてよい。
【0050】
[0058] 具体的には、収差ディテクタ50は、ポジショナPWを用いて基板テーブルWTと基板テーブルWTの上面に取り付けられた結像デバイス55とを、少なくとも、投影システムPSの光軸に平行な方向において異なる2つの位置間で移動させるコントローラ60を含みうる。
【0051】
[0059] コントローラ60はさらに、図5に示すような2つの異なる位置の各々においてターゲット51の像を捕捉するために、結像デバイス55を制御しうる。
【0052】
[0060] 2つの位置は、収差ディテクタの動作を最適化するために選択されうることは理解されよう。一例では、この2つの位置は、投影システムPSの光軸に平行である移動方向に沿ってポジショナPWが到達可能な極端位置であるように選択されうる。このような位置は、像が捕捉される2つの位置間の距離間隔を最大限としうる。これは、翻って、収差に起因する2つの捕捉像間の差分を最大限としうる。当然ながら、これは収差測定の精度を最大限としうる。
【0053】
[0061] 一実施形態では、投影システムPSの光軸に平行な方向における2つの位置間の距離間隔は1mmであってよい。
【0054】
[0062] 投影システムの光軸に平行な方向における結像デバイス55の移動が基板テーブルWTのポジショナPWによって与えられるこのような実施形態は、任意の追加のアクチュエータシステムおよび関連の制御システムを必要としないことが有利であることは理解されよう。さらに、基板テーブルWTの位置は、リソグラフィプロセス時の基板テーブルWTの移動の制御のために設けられているシステムを用いて正確に決定されうる。したがって、像が捕捉される2つの位置の間の結像デバイス55の移動を測定するための追加のセンサは不要である。
【0055】
[0063] 一実施形態では、基板テーブルWTのポジショナPWによって実現される結像デバイス55の移動範囲、すなわち投影システムPSの光軸に平行な方向における基板テーブルWTの移動範囲が、不十分であると考えられる場合がある。したがって、基板テーブルWTのポジショナPWを用いて結像デバイス55の位置を調節することの代わりにまたは追加して、アクチュエータシステム65が設けられて、少なくとも投影システムPSの光軸に平行な方向において、基板テーブルWTの位置に対する結像デバイス55の位置を制御するように構成される。
【0056】
[0064] 図6に示す2つの図に示すように、このような実施形態では、結像デバイス55は、少なくとも投影システムPSの光軸に平行な方向において、少なくとも2つの異なる位置間で、基板テーブルWTに対して移動されうる。これらの位置の各々において、投影システムの収差の表現を取得するために結像デバイス55によって像が捕捉されうる。
【0057】
[0065] 基板テーブルWTに対する結像デバイス55の位置を制御するように構成されたアクチュエータシステム65は、収差ディテクタのコントローラ60によっても制御されうることは理解されよう。ターゲット51の像が捕捉される位置において結像デバイス55の位置の正確な判断ができるように、基板テーブルWTに対する結像デバイス55の位置を正確に測定するために、位置測定システムがさらに設けられてもよい。
【0058】
[0066] 基板テーブルWTに対する結像デバイス55の位置を制御するためにアクチュエータシステム65が設けられている図6に示すような配置は、基板テーブルWTの移動のみを用いて実現可能な距離間隔よりも大きい、ターゲット51の像が捕捉される結像デバイス55の位置間の距離間隔を可能にすることが有利でありうることがさらに理解されよう。このことは、投影システムPSの収差の測定精度を向上させうる。
【0059】
[0067] 本発明は、結像デバイス55の2つの位置におけるピンホールフィーチャ52の像の捕捉に関連して上述してきたが、ターゲット51は照明フィールドに散在する複数のピンホールフィーチャ52を含んでもよい。したがって、ターゲット51の捕捉された像は、複数のピンホールフィーチャ52の各々の対応する像を含みうる。様々な捕捉像における各ピンホールフィーチャ52の各像を分析することによって、照明フィールドの各部分について、投影システムPSの収差に関するデータが与えられる。
【0060】
[0068] 様々な位置の各々において結像デバイス55から取得した像から投影システムPSの収差の表現を取得するために、ターゲット51の捕捉された像は例えばコントローラ60によって処理されて、投影システムによって導入されている拡大効果または形状効果を含まない瞳像が生成される。例えば像の座標系が結像デバイス55に関連付けられた座標系から好適な座標系に変換されて、以下に説明するように投影システムの収差の表現を取得しうる。この結果として得られる処理済み瞳像を用いて、投影システムPSの収差の表現を取得しうる。
【0061】
[0069] 例えば投影システムの収差の表現は、強度輸送方程式(TIE):
【数2】

並びに、投影システムPSの光軸に平行な方向における結像デバイス55の様々な位置において結像デバイス55を用いて捕捉された強度像I(x,y,z)およびI(x,y,z+dz)から、波面位相Φ(x,y,z)を求めることによって取得しうる。
【0062】
[0070] これは、例えばK.A.Nugentによって第8回X線顕微鏡国際会議、IPAP会議シリーズ7のプロシーディングの399〜402頁に説明されるような任意の好都合な公知の数学的技法を用いて行われうる。このプロシーディングはその全体を参照することによって本願に組み込まれている。
【0063】
[0071] 別の配置では、単純化した技術によって、例えば瞳がフラグメント化された装置用の投影システムの収差の一次近似が提供されうる。この場合、各処理済み瞳像の各強度フィーチャの中心位置が求められる。結像デバイス55の2つの異なる位置についての処理済み瞳像を比較した際の強度フィーチャの変位量は、局所的な位相勾配に比例する。したがって、各強度フィーチャに対する値は、照明フィールドの関連付けられた領域に割り当てられて、投影システムPSの収差の近似を与えるために共にステッチされる。
【0064】
[0072] コントローラ60は、ゼルニケ(Zernike)係数の形式で投影システムの収差の表現を与えるように構成されうる。これは、リソグラフィ装置の動作の向上に、投影システムPSの収差の表現を用いることを容易にしうる。例えば投影システムの収差の表現のデータは、リソグラフィ装置によって形成された像の質を可能な限り確実に高くするためにリソグラフィ装置の1つ以上の設定を調節するために用いられうる。したがって、本発明の収差ディテクタ50は、リソグラフィ装置のセットアップ時に用いられてもよいことは理解されよう。
【0065】
[0073] また、収差ディテクタ50は、リソグラフィ装置による基板Wのバッチの処理と処理の間に用いられてもよい。したがって、本発明の収差ディテクタ50は、例えば任意の小さい温度変動に起因する投影システムPSの収差における任意の変動をモニタリングするように用いられてよく、そして、リソグラフィ装置の動作に適切な調節が行われうる。
【0066】
[0074] 例えばレンズの加熱は、ゼルニケ項Z5およびZ12(非点収差項)に重大な影響を及ぼしうる。具体的には、ダイポール照明モードが用いられる場合、レンズ要素の2つの領域が照射され、したがって加熱され、その一方で残りは加熱されない。これは、これらの特定の領域における位相波面における凹みをもたらしうる。このような収差のための補償は、レンズまたはミラー要素を変位させることによって、または、レンズまたはミラー要素を局所的に加熱する、変位させる、または力を加えることによって与えられうる。
【0067】
[0075] 図7に示すように、少なくとも1つのピンホールフィーチャ52を含むターゲット51は、リソグラフィ装置の通常使用時にはパターニングデバイスMAがサポートMT上に支持される、すなわちパターニングデバイスMAの像が基板上に投影される領域に隣接する位置において、パターニングデバイスMAを支持するように構成されたリソグラフィ装置内のサポートMT上に取り付けられうる。したがって、本発明の収差ディテクタ50を動作させるために、サポートMTは、ターゲット51が照明システムILによって照射されるようにその関連のポジショナPMによって移動されうる。例えば、これは、結像デバイス55がターゲット51の像を捕捉するように位置付けられるように基板テーブルWTがその関連のポジショナPWによって移動されるのと同時に起きうる。したがって、このように構成されたリソグラフィ装置は、パターニングデバイスMAの像が基板W上に投影される第1のモードから本発明の収差ディテクタ50が用いられうる第2のモードに素早く切り替わりうる。
【0068】
[0076] 図8に示すような別の配置では、ターゲット51は、基板W上に像を形成してデバイスを形成するように用いられるパターニングデバイスMAの代わりにサポートMT上に支持されうるパターニングデバイスのように設けられてもよい。このような配置は、ターゲット51をより大きくしうる点で図7に示す配置に比べて有利となりうる。これは、照明フィールド全体に亘って一斉にピンホールフィーチャ52を照射することを可能にしうる。したがって、投影システムの収差の表現を取得するための収差ディテクタの動作がより高速となりうる。
【0069】
[0077] 有利には、本発明の収差ディテクタ50はリソグラフィ装置内に容易に組み込むことができ、かつ、結像デバイスを用いて2つの強度像を捕捉することによって比較的速く動作できるので、投影システムPSの収差を求めるのにかかる時間は比較的短くて済む。したがって、リソグラフィ装置のダウンタイムを最小限に抑えることができる。
【0070】
[0078] 本発明は、投影システムPSの収差の表現が、2つの異なる位置において結像デバイス55によってそれぞれ捕捉された2つの像から求められる例について上述してきたが、本発明はそのような配置に限定されないことを理解すべきである。具体的には、ターゲット51の追加の像が更なる位置において捕捉されて、すべての像からのデータを用いて投影システムPSの収差の表現を求めることもできる。これは、測定された収差の精度を向上しうる。
【0071】
[0079] 本明細書において、IC製造におけるリソグラフィ装置の使用について具体的な言及がなされているが、本明細書記載のリソグラフィ装置が、集積光学システム、磁気ドメインメモリ用のガイダンスパターンおよび検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッド等の製造といった他の用途を有し得ることが理解されるべきである。当業者には当然のことであるがそのような別の用途においては、本明細書で使用される「ウェーハ」または「ダイ」という用語はすべて、それぞれより一般的な「基板」または「ターゲット部分」という用語と同義であるとみなしてよい。本明細書に記載した基板は、露光の前後を問わず、例えば、トラック(通常、基板にレジスト層を塗布し、かつ露光されたレジストを現像するツール)、メトロロジーツール、および/またはインスペクションツールで処理されてもよい。適用可能な場合には、本明細書中の開示内容を上記のような基板プロセシングツールおよびその他の基板プロセシングツールに適用してもよい。さらに基板は、例えば、多層ICを作るために複数回処理されてもよいので、本明細書で使用される基板という用語は、すでに多重処理層を包含している基板を表すものとしてもよい。
【0072】
[0080] 光リソグラフィの関連での本発明の実施形態の使用について上述のとおり具体的な言及がなされたが、当然のことながら、本発明の実施形態は、他の用途、例えば、インプリントリソグラフィに使われてもよく、さらに状況が許すのであれば、光リソグラフィに限定されることはない。インプリントリソグラフィにおいては、パターニングデバイス内のトポグラフィによって、基板上に創出されるパターンが定義される。パターニングデバイスのトポグラフィは、基板に供給されたレジスト層の中にプレス加工され、基板上では、電磁放射、熱、圧力、またはそれらの組合せによってレジストは硬化される。パターニングデバイスは、レジストが硬化した後、レジスト内にパターンを残してレジストの外へ移動される。
【0073】
[0081] 「レンズ」という用語は、文脈によって、屈折、反射、磁気、電磁気、および静電型光コンポーネントを含む様々な種類の光コンポーネントのいずれか1つまたはこれらの組合せを指すことができる。
【0074】
[0082] 以上、本発明の具体的な実施形態を説明してきたが、本発明は、上述以外の態様で実施できることが明らかである。例えば、本発明は、上記に開示した方法を表す1つ以上の機械読取可能命令のシーケンスを含むコンピュータプログラムの形態、またはこのようなコンピュータプログラムが記憶されたデータ記憶媒体(例えば半導体メモリ、磁気ディスクまたは光ディスク)の形態であってもよい。上記の説明は、限定ではなく例示を意図したものである。したがって、当業者には明らかなように、添付の特許請求の範囲を逸脱することなく本記載の発明に変更を加えてもよい。
【0075】
結論
[0083] 発明の概要および要約の項目は、発明者が想定するような本発明の1つまたは複数の例示的実施形態について述べることができるが、全部の例示的実施形態を述べることはできず、したがって本発明および請求の範囲をいかなる意味でも制限しないものとする。
【0076】
[0084] 本発明の実施形態は、特定の機能の実施とそれらの関係を示す機能的構成要素を用いて上に説明された。これらの機能的構成要素の境界は、説明の便宜上任意に定義されている。特定の機能およびそれらの関係が適切に行われる限り別の境界が定義されてもよい。
【0077】
[0085] 特定の実施形態の上記の説明は、本発明の一般的性質を十分に明らかにし、それにより、当業者の知識を適用することによって、他の人が、必要以上の実験を行うことなく、本発明の一般的な概念から逸脱することなく、特定の実施形態の様々な適用を容易に修正および/または適応することができるようにする。したがって、このような適応および修正は、本明細書に提示する教示および指導内容に基づいて、開示された実施形態の等価物の意味および範囲内であることを意図するものである。なお、本明細書における表現および用語は、説明のためであって限定を目的とせず、したがって、本明細書の用語および表現は教示および指導内容を鑑みて当業者によって解釈されるべきであることを理解すべきである。
【0078】
[0086] 本発明の範囲は、上述した例示的な実施形態のいずれにも限定されるべきではなく、以下の特許請求の範囲およびその等価物に応じてのみ定義されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8