(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
樹脂(A)と、繊維状充填材(B)と、前記繊維状充填材(B)よりも硬い粒状充填材(C)と、を押出機に供給し、溶融混練して混練物を押し出すことにより、樹脂組成物を得る樹脂組成物の製造方法であって、
前記押出機に供給する前記繊維状充填材(B)の重量平均繊維長が1mm以上であり、
前記樹脂組成物中の前記繊維状充填材(B)の重量平均繊維長が140μm以下であり、
前記樹脂(A)及び繊維状充填材(B)の総供給量100質量部に対する前記粒状充填材(C)の供給量が、0.1〜3質量部であり、
前記樹脂(A)、繊維状充填材(B)及び粒状充填材(C)を別々に前記押出機に供給することを特徴とする樹脂組成物の製造方法。
前記樹脂(A)及び繊維状充填材(B)の総供給量に占める前記樹脂(A)の比率が50〜80質量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂組成物の製造方法。
前記繊維状充填材(B)が、ガラス繊維、バサルト繊維、アルミナ繊維及びシリカアルミナ繊維からなる群から選択される一種以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の樹脂組成物の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る樹脂組成物の製造方法は、樹脂(A)と、繊維状充填材(B)と、前記繊維状充填材(B)よりも硬い粒状充填材(C)と、を押出機に供給し、溶融混練して混練物を押し出すことにより、樹脂組成物を得る樹脂組成物の製造方法であって、前記樹脂組成物中の前記繊維状充填材(B)の重量平均繊維長が140μm以下であることを特徴とする。
本発明によれば、通常の押出機を用いて、一回の溶融混練により、重量平均繊維長が140μm以下の繊維状充填材(B)を含有する樹脂組成物が得られ、耐発塵性に優れた成形体を得るための樹脂組成物が、効率的に高い汎用性で得られる。
【0013】
樹脂(A)の例としては、液晶ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリイミド等が挙げられる。
樹脂(A)は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0014】
樹脂(A)は、液晶ポリエステルであることが好ましい。すなわち、前記樹脂組成物は、液晶ポリエステル組成物であることが好ましい。
前記液晶ポリエステルは、溶融状態で液晶性を示す液晶ポリエステルであり、450℃以下の温度で溶融するものであることが好ましい。なお、液晶ポリエステルは、液晶ポリエステルアミドであってもよいし、液晶ポリエステルエーテルであってもよいし、液晶ポリエステルカーボネートであってもよいし、液晶ポリエステルイミドであってもよい。液晶ポリエステルは、原料モノマーとして芳香族化合物のみを用いてなる全芳香族液晶ポリエステルであることが好ましい。
【0015】
液晶ポリエステルの典型的な例としては、
(I)芳香族ヒドロキシカルボン酸と、芳香族ジカルボン酸と、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物と、を重合(重縮合)させてなるもの、
(II)複数種の芳香族ヒドロキシカルボン酸を重合させてなるもの、
(III)芳香族ジカルボン酸と、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物と、を重合させてなるもの、
(IV)ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルと、芳香族ヒドロキシカルボン酸と、を重合させてなるもの
が挙げられる。ここで、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンは、それぞれ独立に、その一部又は全部に代えて、その重合可能な誘導体が用いられてもよい。
【0016】
芳香族ヒドロキシカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸のようなカルボキシル基を有する化合物の重合可能な誘導体の例としては、カルボキシル基をアルコキシカルボニル基又はアリールオキシカルボニル基に変換してなるもの(エステル)、カルボキシル基をハロホルミル基に変換してなるもの(酸ハロゲン化物)、及びカルボキシル基をアシルオキシカルボニル基に変換してなるもの(酸無水物)が挙げられる。
芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジオール及び芳香族ヒドロキシアミンのようなヒドロキシル基を有する化合物の重合可能な誘導体の例としては、ヒドロキシル基をアシル化してアシルオキシル基に変換してなるもの(アシル化物)が挙げられる。
芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンのようなアミノ基を有する化合物の重合可能な誘導体の例としては、アミノ基をアシル化してアシルアミノ基に変換してなるもの(アシル化物)が挙げられる。
【0017】
液晶ポリエステルは、下記一般式(1)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(1)」ということがある。)を有することが好ましく、繰返し単位(1)と、下記一般式(2)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(2)」ということがある。)と、下記一般式(3)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(3)」ということがある。)とを有することがより好ましい。
【0018】
(1)−O−Ar
1−CO−
(2)−CO−Ar
2−CO−
(3)−X−Ar
3−Y−
(式中、Ar
1は、フェニレン基、ナフチレン基又はビフェニリレン基であり;Ar
2及びAr
3は、それぞれ独立にフェニレン基、ナフチレン基、ビフェニリレン基又は下記一般式(4)で表される基であり;X及びYは、それぞれ独立に酸素原子又はイミノ基であり;前記Ar
1、Ar
2及びAr
3中の一つ以上の水素原子は、それぞれ独立にハロゲン原子、アルキル基又はアリール基で置換されていてもよい。)
(4)−Ar
4−Z−Ar
5−
(式中、Ar
4及びAr
5は、それぞれ独立にフェニレン基又はナフチレン基であり;Zは、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基又はアルキリデン基である。)
【0019】
前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。
前記アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、n−ノニル基及びn−デシル基が挙げられ、その炭素数は、1〜10であることが好ましい。
前記アリール基の例としては、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、1−ナフチル基及び2−ナフチル基が挙げられ、その炭素数は、6〜20であることが好ましい。
前記水素原子がこれらの基で置換されている場合、その数は、Ar
1、Ar
2又はAr
3で表される前記基毎に、それぞれ独立に2個以下であることが好ましく、1個であることがより好ましい。
【0020】
前記アルキリデン基の例としては、メチレン基、エチリデン基、イソプロピリデン基、n−ブチリデン基及び2−エチルヘキシリデン基が挙げられ、その炭素数は1〜10であることが好ましい。
【0021】
繰返し単位(1)は、所定の芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する繰返し単位である。繰返し単位(1)としては、Ar
1が1,4−フェニレン基であるもの(p−ヒドロキシ安息香酸に由来する繰返し単位)、及びAr
1が2,6−ナフチレン基であるもの(6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸に由来する繰返し単位)が好ましい。
【0022】
繰返し単位(2)は、所定の芳香族ジカルボン酸に由来する繰返し単位である。繰返し単位(2)としては、Ar
2が1,4−フェニレン基であるもの(テレフタル酸に由来する繰返し単位)、Ar
2が1,3−フェニレン基であるもの(イソフタル酸に由来する繰返し単位)、Ar
2が2,6−ナフチレン基であるもの(2,6−ナフタレンジカルボン酸に由来する繰返し単位)、及びAr
2がジフェニルエ−テル−4,4’−ジイル基であるもの(ジフェニルエ−テル−4,4’−ジカルボン酸に由来する繰返し単位)が好ましい。
【0023】
繰返し単位(3)は、所定の芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシルアミン又は芳香族ジアミンに由来する繰返し単位である。繰返し単位(3)としては、Ar
3が1,4−フェニレン基であるもの(ヒドロキノン、p−アミノフェノール又はp−フェニレンジアミンに由来する繰返し単位)、及びAr
3が4,4’−ビフェニリレン基であるもの(4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4−アミノ−4’−ヒドロキシビフェニル又は4,4’−ジアミノビフェニルに由来する繰返し単位)が好ましい。
【0024】
繰返し単位(1)の含有量は、液晶ポリエステルを構成する全繰返し単位の合計量(液晶ポリエステルを構成する各繰返し単位の質量をその各繰返し単位の式量で割ることにより、各繰返し単位の物質量相当量(モル)を求め、それらを合計した値)に対して、好ましくは30モル%以上、より好ましくは30〜80モル%、さらに好ましくは40〜70モル%、特に好ましくは45〜65モル%である。
繰返し単位(2)の含有量は、液晶ポリエステルを構成する全繰返し単位の合計量に対して、好ましくは35モル%以下、より好ましくは10〜35モル%、さらに好ましくは15〜30モル%、特に好ましくは17.5〜27.5モル%である。
繰返し単位(3)の含有量は、液晶ポリエステルを構成する全繰返し単位の合計量に対して、好ましくは35モル%以下、より好ましくは10〜35モル%、さらに好ましくは15〜30モル%、特に好ましくは17.5〜27.5モル%である。
繰返し単位(1)の含有量が多いほど、液晶ポリエステルの溶融流動性、耐熱性、強度・剛性が向上し易いが、あまり多いと、溶融温度や溶融粘度が高くなり易く、成形に必要な温度が高くなり易い。
【0025】
繰返し単位(2)の含有量と繰返し単位(3)の含有量との割合は、[繰返し単位(2)の含有量]/[繰返し単位(3)の含有量](モル/モル)で表して、好ましくは0.9/1〜1/0.9、より好ましくは0.95/1〜1/0.95、さらに好ましくは0.98/1〜1/0.98である。
【0026】
なお、液晶ポリエステルは、繰返し単位(1)〜(3)を、それぞれ独立に二種以上有してもよい。また、液晶ポリエステルは、繰返し単位(1)〜(3)以外の繰返し単位を有してもよいが、その含有量は、液晶ポリエステルを構成する全繰返し単位の合計量に対して、好ましくは10モル%以下、より好ましくは5モル%以下である。
【0027】
液晶ポリエステルは、繰返し単位(3)として、X及びYがそれぞれ酸素原子であるものを有すること、すなわち、所定の芳香族ジオールに由来する繰返し単位を有することが好ましく、繰返し単位(3)として、X及びYがそれぞれ酸素原子であるもののみを有することがより好ましい。このようにすることで、液晶ポリエステルは溶融粘度が低くなり易い。
【0028】
液晶ポリエステルは、これを構成する繰返し単位に対応する原料モノマーを溶融重合させ、得られた重合物(プレポリマー)を固相重合させることにより、製造することが好ましい。これにより、耐熱性や強度・剛性が高い高分子量の液晶ポリエステルを操作性よく製造することができる。溶融重合は、触媒の存在下で行ってもよく、この場合の触媒の例としては、酢酸マグネシウム、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸鉛、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、三酸化アンチモン等の金属化合物や、4−(ジメチルアミノ)ピリジン、1−メチルイミダゾール等の含窒素複素環式化合物が挙げられ、含窒素複素環式化合物が好ましく用いられる。
【0029】
液晶ポリエステルは、その流動開始温度が、好ましくは270℃以上、より好ましくは270℃〜400℃、さらに好ましくは280℃〜380℃である。流動開始温度が高いほど、耐熱性や強度・剛性が向上し易いが、高過ぎると、溶融温度や溶融粘度が高くなり易く、成形に必要な温度が高くなり易い。
【0030】
なお、流動開始温度は、フロー温度又は流動温度とも呼ばれ、毛細管レオメーターを用いて、9.8MPa(100kg/cm
2)の荷重下、4℃/分の速度で昇温しながら、液晶ポリエステルを溶融させ、内径1mm及び長さ10mmのノズルから押し出すときに、4800Pa・s(48000ポイズ)の粘度を示す温度であり、液晶ポリエステルの分子量の目安となるものである(小出直之編、「液晶ポリマー−合成・成形・応用−」、株式会社シーエムシー、1987年6月5日、p.95参照)。
【0031】
樹脂(A)として液晶ポリエステルを用いる場合、液晶ポリエステル以外の樹脂(A)として、ポリプロピレン、ポリアミド、液晶ポリエステル以外のポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルイミド等の液晶ポリエステル以外の熱可塑性樹脂;フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、シアネート樹脂等の熱硬化性樹脂を併用してもよい。
液晶ポリエステル以外の樹脂の供給量は、液晶ポリエステル100質量部に対して、好ましくは0〜99質量部である。
【0032】
繊維状充填材(B)は、無機充填材であってもよいし、有機充填材であってもよい。
繊維状無機充填材の例としては、ガラス繊維、バサルト繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維等のセラミック繊維が挙げられる。また、チタン酸カリウムウイスカー、チタン酸バリウムウイスカー、ウォラストナイトウイスカー等のウイスカーも挙げられる。
繊維状有機充填材の例としては、ポリエステル繊維及びアラミド繊維が挙げられる。
繊維状充填材(B)は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0033】
繊維状充填材(B)は、セラミック繊維であることが好ましく、ガラス繊維、バサルト繊維、アルミナ繊維及びシリカアルミナ繊維からなる群から選択される一種以上であることがより好ましく、成形加工時の装置に与える磨耗負荷や入手性の点から、ガラス繊維であることがさらに好ましい。
【0034】
繊維状充填材(B)は、表面コーティング剤又はチタンカップリング剤等のカップリング剤による表面コーティング処理、あるいは各種熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂による表面コーティング処理が行われたものでもよい。このような繊維状充填材(B)を用いることにより、後述する成形体からの発生ガスをより低減できて、成形体の化学的安定性を向上させることができ、電気電子機器又は光学機器を組み立てた際に、成形体からの発生ガスによる周辺部材の汚染を低減できる。
また、繊維状充填材(B)の中でも、ガラス繊維は、エポキシ系、ウレタン系、アクリル系等の被覆剤又は集束剤で処理されたものであってもよい。
【0035】
繊維状充填材(B)は、重量平均繊維長が好ましくは1mm以上、より好ましくは1mm〜10mm、さらに好ましくは1〜6mmである。
繊維状充填材(B)は、繊維長に分布がなく、一定に揃ったチョップドストランドが好ましい。
【0036】
繊維状充填材(B)の平均繊維径は、通常の生産品と同様でよいが、好ましくは3〜15μmである。3μm以上であることにより、成形体の補強効果が向上する。また、15μm以下であることにより、成形性が向上して、成形体表面の外観がより良好となる。
【0037】
粒状充填材(C)は、繊維状充填材(B)よりも硬いものであり、溶融混練時に繊維状充填材(B)の繊維長を短くするものである。
粒状充填材(C)は、無機充填材であってもよいし、有機充填材であってもよい。
粒状充填材(C)の例としては、酸化チタン、酸化ジルコニウム、アルミナ、炭化ジルコニウム、炭化ケイ素、炭化ホウ素等が挙げられる。
粒状充填材(C)は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
粒状充填材(C)は、成形加工時の装置に与える磨耗負荷や入手性を考慮すると、酸化チタンであることが好ましい。
【0038】
粒状充填材(C)の硬さは、例えば、モース硬度で表すことができる。
モース硬度とは、10種の基準となる鉱物と比較することによって、鉱物の硬度を求める経験的な尺度である。基準となる鉱物は、柔らかいもの(モース硬度1)から硬いもの(モース硬度10)の順に、滑石、石膏、方解石、ホタル石、燐灰石、正長石、石英、黄玉、鋼玉、ダイヤモンドであり、硬度を測りたい試料物質で基準の鉱物をこすり、ひっかき傷の有無で硬度を測定する。例えば、ホタル石では傷が付かず、燐灰石で傷が付く場合、その試料物質のモース硬度は4.5(4と5の間の意)となる。
【0039】
本発明においては、樹脂(A)、繊維状充填材(B)及び粒状充填材(C)以外に、これら充填材以外の他の充填材、添加剤等の他の成分を押出機に供給して、樹脂組成物を製造してもよい。
前記他の成分は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0040】
前記他の充填材の供給量は、液晶ポリエステル100質量部に対して、好ましくは0〜100質量部である。
【0041】
前記添加剤の例としては、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、界面活性剤、難燃剤及び着色剤が挙げられる。
添加剤の供給量は、液晶ポリエステル100質量部に対して、好ましくは0〜5質量部である。
【0042】
前記樹脂組成物は、樹脂(A)、繊維状充填材(B)、粒状充填材(C)、及び必要に応じて用いられる他の成分を押出機に供給し、溶融混練して混練物を押し出すことで製造する。そして、混練物を押し出して、ペレット状の樹脂組成物とすることが好ましい。
【0043】
前記押出機は、シリンダーと、シリンダー内に配置された1本以上のスクリューと、を有し、前記シリンダーの2箇所以上にフィード(供給)口が設けられたものが好ましく、さらにシリンダーの1箇所以上にベント部が設けられたものがより好ましい。そして、前記シリンダーは、メインフィード口と、このメインフィード口よりも押出方向下流側にサイドフィード口と、が設けられたものが好ましい。
【0044】
樹脂(A)及び繊維状充填材(B)の総供給量に占める樹脂(A)の比率は、好ましくは50〜80質量%、より好ましくは60〜70質量%である。下限値以上とすることで、樹脂組成物の流動性が向上し、成形がより容易となる。また、上限値以下とすることで、繊維状充填材(B)による補強効果が向上して、成形体の剛性がより向上する。
【0045】
樹脂(A)及び繊維状充填材(B)の総供給量100質量部に対する、粒状充填材(C)の供給量は、好ましくは0.1〜3質量部、より好ましくは0.5〜2質量部である。下限値以上とすることで、粒状充填材(C)による、樹脂組成物中の繊維状充填材(B)の繊維長を短くする効果がより向上する。また、上限値以下とすることで、樹脂組成物の流動性が向上し、成形がより容易となる。
【0046】
図1は、前記樹脂組成物の製造方法で用いる押出機を例示する概略断面図である。
図1に示す押出機10は、モーターボックス1aに収容されたモーター1と、モーターボックス1aに隣接して設けられたシリンダー2と、シリンダー2内に挿入され、モーター1と接続されたスクリュー3と、を有する。押出機10は、シリンダー2内に2本のスクリュー3が配置された二軸押出機である。
【0047】
シリンダー2には、その内部に樹脂(A)、繊維状充填材(B)、粒状充填材(C)、及び必要に応じて用いられる他の成分(以下、まとめて「原料成分」ということがある。)を供給するためのメインフィード口5と、メインフィード口5よりも押出方向下流側(後方)で、シリンダー2の内部に必要に応じて前記原料成分の一部を供給するためのサイドフィード口7と、シリンダー2内で生じた揮発成分(ガス)を排出するための第一ベント部4及び第二ベント部6と、溶融混練して得られた混練物を成形する吐出ダイ9と、が設けられている。
シリンダー2には、押出方向最上流の位置(モーターボックス1側の位置)に、メインフィード口5が設けられ、メインフィード口5から押出方向下流側(押出方向後方、すなわち吐出ダイ9側)に向けて、サイドフィード口7、第一ベント部4及び第二ベント部6がこの順に設けられており、シリンダー2の押出方向下流側の端部に、シリンダー2と連通するノズル穴9a有する吐出ダイ9が設けられている。
【0048】
メインフィード口5及びサイドフィード口7は、シリンダー2の内部に接続されたホッパーと、前記原料成分を定質量又は定容量で供給する供給装置と、を有する。供給装置の供給方式の例としては、ベルト式、スクリュー式、振動式、テーブル式が挙げられる。
【0049】
第一ベント部4及び第二ベント部6は、大気に開放されたオープンベント方式であってもよいし、水封式ポンプ、ロータリーポンプ、油拡散ポンプ、ターボポンプ等に接続して真空に保持する真空ベント方式であってもよい。
【0050】
スクリュー3には、前記原料成分又は混練物を搬送するための搬送部8が設けられている。また、スクリュー3には、メインフィード口5とサイドフィード口7との間に、前記原料成分又は混練物の可塑化及びニーディングを行うための第一混練部11が設けられ、サイドフィード口7と第一ベント部4との間に、前記原料成分又は混練物の可塑化及びニーディングを行うための第二混練部12が設けられており、第一ベント部4と第二ベント部6に、さらに、後述する第三混練部13とは異なる第四混練部と第五混練部(図示略)が設けられていてもよい。このとき、剪断発熱を抑制するために、シリンダー温度の充分な制御を行うことが好ましい。
【0051】
このようなスクリュー3は、スクリューエレメントを組み合わせて構成される。搬送部8は順フライト(フルフライト)のスクリューエレメント、第一混練部11、第二混練部12及び第三混練部13は、フルフライト、逆フライト、シールリング、順ニーディングディスク、ニュートラルニーディングディスク、逆ニーディングディスク等のスクリューエレメントが組み合わされて構成されるのが一般的である。
【0052】
第一混練部11、第二混練部12及び第三混練部13としては、それぞれ、ニーディングディスクを位相角が0よりも大きく90度よりも小さくなるようにずらしながら重ねた構成のエレメントとニュートラルニーディングエレメント(ニーディングディスクを位相角90度でずらして重ね合わせた構成)を用いることが好ましい。
【0053】
なお、スクリュー3の第三混練部13よりも押出方向下流側にさらに混練部が設けられている場合には、最下流に位置する混練部にニュートラルニーディングエレメントを用い、最下流以外の混練部にはニーディングディスクを位相角が0よりも大きく90度よりも小さくなるようにずらしながら重ねた構成のエレメントとニュートラルニーディングエレメントを用いることが好ましい。例えば、第一ベント部4と第二ベント部6に、さらに第四混練部、第五混練部が設けられている場合には、第一〜第四混練部のエレメントとして、ニーディングディスクを位相角が0よりも大きく90度よりも小さくなるようにずらしながら重ねた構成のエレメントとニュートラルニーディングエレメントを用い、第五混練部のエレメントとしてニュートラルニーディングエレメントを用いることが好ましい。
スクリュー3を構成するその他のエレメントとしては、溶融した混練物の全体的な搬送性を失わない限りは、どのようなスクリューエレメントを用いてもよい。
【0054】
本発明で用いる押出機は、
図1に示す二軸押出機に限定されず、短軸押出機でもよい。二軸押出機の例としては、同方向回転の1条ネジのものから3条ネジのもの、異方向回転の平行軸型、斜軸型又は不完全噛み合い型のもの等が挙げられるが、同方向回転の二軸押出機が好ましい。
【0055】
ここまでで説明した押出機は、本発明において用いることが可能なものの一部に過ぎず、本発明においては、これらに限定されず、公知の様々な押出機を用いることができる。
【0056】
本発明においては、用いる押出機に複数のフィード口(メインフィード口及びサイドフィード口)が設けられている場合には、樹脂(A)等の原料成分は、それぞれ、メインフィード口及びサイドフィード口のいずれからも押出機に供給できるが、少なくとも一部はメインフィード口から供給することが好ましい。このとき、それぞれの原料成分は、全てをメインフィード口から押出機に供給してもよいし、一部をメインフィード口から押出機に供給し、残部(メインフィード口からの供給量を、全供給量から引いた量)をサイドフィード口から押出機に供給してもよい。
【0057】
本発明においては、樹脂(A)、繊維状充填材(B)、粒状充填材(C)、及び必要に応じて用いられる他の成分からなる群から選択される二種以上の成分を、あらかじめ混合してから押出機に供給してもよい(このとき、混合せずに供給する成分があってもよい)し、すべての成分を別々に押出機に供給してもよい。ただし、得られる樹脂組成物中の繊維状充填材(B)の繊維長を短くする効果により優れる点から、繊維状充填材(B)及び粒状充填材(C)は、別々に押出機に供給することが好ましい。
【0058】
混練物を押し出すことにより得られた前記樹脂組成物中の繊維状充填材(B)は、重量平均繊維長が140μm以下であり、好ましくは80〜140μm、より好ましくは80〜120μmである。また、数平均繊維長は好ましくは80〜120μm、より好ましくは80〜100μmである。重量平均繊維長及び数平均繊維長が上限値以下であることで、樹脂組成物の流動性が向上し、成形がより容易となる。また、成形体表面の概観が良好となり、繊維状充填材(B)の脱落やそれに由来する樹脂屑の発生等による発塵性が改善される(耐発塵性が向上する)。また、下限値以上であることで、繊維状充填材(B)による補強効果が向上して、成形体の剛性がより向上し、異方性が小さくなる。
【0059】
繊維状フィラーの重量平均繊維長及び数平均繊維長は、例えば、樹脂組成物1.0gをるつぼに採取し、電気炉内にて600℃で4時間処理して灰化させ、その残渣をメタノールに分散させてスライドガラス上に展開した状態で顕微鏡写真をとり、その写真から繊維状フィラーの形状を直接的に読み取って、繊維長の平均値を算出することにより求められる。
【0060】
前記樹脂組成物は、各種成形体を製造するのに好適である。
樹脂組成物の成形方法は、溶融成形法が好ましく、その例としては、射出成形法;Tダイ法、インフレーション法等の押出成形法;圧縮成形法;ブロー成形法;真空成形法;プレス成形法等が挙げられ、射出成形法が好ましい。
【0061】
前記成形体の例としては、電気・電子部品、光学部品が挙げられ、その具体例としては、コネクター、ソケット、リレー部品、コイルボビン、光ピックアップ、発振子、プリント配線板、回路基板、半導体パッケージ、コンピュータ関連部品、カメラ鏡筒、光学センサー筐体、コンパクトカメラモジュール筐体(パッケージ、鏡筒)、プロジェクター光学エンジン構成部材、ICトレー、ウエハーキャリヤー等の半導体製造プロセス関連部品;VTR、テレビ、アイロン、エアコン、ステレオ、掃除機、冷蔵庫、炊飯器、照明器具等の家庭電気製品部品;ランプリフレクター、ランプホルダー等の照明器具部品;コンパクトディスク、レーザーディスク(登録商標)、スピーカー等の音響製品部品;光ケーブル用フェルール、電話機部品、ファクシミリ部品、モデム等の通信機器部品等が挙げられる。
また、これら以外の例としては、分離爪、ヒータホルダー等の複写機、印刷機関連部品;インペラー、ファン歯車、ギヤ、軸受け、モーター部品、ケース等の機械部品;自動車用機構部品、エンジン部品、エンジンルーム内部品、電装部品、内装部品等の自動車部品;マイクロ波調理用鍋、耐熱食器等の調理用器具;床材、壁材等の断熱もしくは防音用材料、梁もしくは柱等の支持材料、屋根材等の建築資材又は土木建築用材料;航空機、宇宙機、宇宙機器用部品;原子炉等の放射線施設部材;海洋施設部材;洗浄用治具;光学機器部品;バルブ類;パイプ類;ノズル類;フィルター類;膜;医療用機器部品及び医療用材料;センサー類部品;サニタリー備品;スポーツ用品;レジャー用品等が挙げられる。
【0062】
前記樹脂組成物を用いて得られた成形体は、樹脂組成物中の繊維状充填材(B)の重量平均繊維長が140μm以下であることにより、成形性に優れ、表面の概観が良好であるだけでなく、耐発塵性に優れたものである。
【実施例】
【0063】
以下、具体的実施例により、本発明についてさらに詳しく説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。なお、液晶ポリエステルの流動開始温度、並びに液晶ポリエステル組成物中の繊維状フィラーの重量平均繊維長及び数平均繊維長は、以下の方法で測定した。
【0064】
(液晶ポリエステルの流動開始温度の測定)
フローテスター(島津製作所社製、CFT−500型)を用いて、液晶ポリエステル約2gを、内径1mm及び長さ10mmのノズルを有するダイを取り付けたシリンダーに充填し、9.8MPa(100kg/cm
2)の荷重下、4℃/分の速度で昇温しながら、液晶ポリエステルを溶融させ、ノズルから押し出し、4800Pa・s(48000ポイズ)の粘度を示す温度を測定した。
【0065】
(液晶ポリエステル組成物中の繊維状フィラーの重量平均繊維長及び数平均繊維長の測定)
液晶ポリエステル組成物1.0gをるつぼに採取し、電気炉内にて600℃で4時間処理して灰化させ、その残渣をメタノールに分散させてスライドガラス上に展開した状態で顕微鏡写真をとり、その写真から繊維状フィラー(ガラス繊維)の形状を直接的に読み取って、繊維長の平均値を算出した。なお、平均値の算出にあたっては、母数を400以上とした。各重量については、繊維状フィラーの比重より各繊維長に対する重量を算出し、平均値の算出にあたっては、用いた試料の全重量を用いた。
【0066】
<液晶ポリエステルの製造>
[製造例1]
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、p−ヒドロキシ安息香酸994.5g(7.2モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル446.9g(2.4モル)、テレフタル酸299.0g(1.8モル)、イソフタル酸99.7g(0.6モル)、無水酢酸1347.6g(13.2モル)及び1−メチルイミダゾール0.194gを仕込み、反応器内を十分に窒素ガスで置換した後、窒素ガス気流下で撹拌しながら15分かけて室温から145℃まで昇温し、この温度(145℃)を保持して1時間還流させた。
次いで、1−メチルイミダゾール0.194gを加え、留出する副生成物の酢酸及び未反応の無水酢酸を留去しながら、3時間かけて145℃から320℃まで昇温し、320℃で2時間保持した後、反応器から内容物を取り出し、室温まで冷却して得られた固形物を、粉砕機で粉砕し、粉末状のプレポリマーを得た。このプレポリマーの流動開始温度は、261℃であった。
次いで、このプレポリマーを、窒素ガス雰囲気下、室温から250℃まで1時間かけて昇温し、250℃から285℃まで5時間かけて昇温し、285℃で3時間保持することにより固相重合させた後、冷却して、粉末状の液晶ポリエステルを得た。この液晶ポリエステルの流動開始温度は、327℃であった。このようにして得られた液晶ポリエステルをLCP1とする。
【0067】
<液晶ポリエステル組成物の製造>
[実施例1、比較例1〜2]
製造例1で得られたLCP1と、ガラス繊維(日東紡績社製「CS−3J−260S」、重量平均繊維長3mm)と、酸化チタン(石原産業社製「CR−60」)又はガラスビーズ(ポッターズバロティーニ社製「EGB731」)とを、それぞれ別々に、表1に示す供給量(質量部)で二軸押出機(東芝機械社製「TEM−41SS」)にメインフィード口から全量を供給し、シリンダー温度を340℃として溶融混練し、混練物を押し出すことにより、液晶ポリエステル組成物のペレットを得た。用いた二軸押出機は、
図1に示す構成のものである。そして、得られたペレット中のガラス繊維の重量平均繊維長及び数平均繊維長を算出した。結果を表2に示す。なお、酸化チタンはガラス繊維よりも硬い材料(モース硬度7)であり、ガラスビーズはガラス繊維と同等の硬さの材料、又はガラス繊維よりも硬くない材料である。
【0068】
【表1】
【0069】
【表2】
【0070】
上記結果から明らかなように、実施例1では、一回の溶融混練により、ガラス繊維の重量平均繊維長が140μm以下である液晶ポリエステル組成物が得られた。
これに対して、比較例1〜2では、一回の溶融混練により、ガラス繊維の重量平均繊維長が140μm以下まで短くなった液晶ポリエステル組成物が得られなかった。