(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0003】
電気的制御複屈折率の原理、ECB効果、またはDAP効果(整列相の変形:deformation of aligned phases)は、1971年に最初に記載された(M.F.SchieckelおよびK.Fahrenschon、「Deformation of nematic liquid crystals with vertical orientation in electrical fields」、Appl.Phys.Lett.19(1971)、3912;非特許文献1)。その後、J.F.Kahn(Appl.Phys.Lett.20(1972)、1193;非特許文献2)およびG.LabrunieおよびJ.Robert(J.Appl.Phys.44(1973)、4869;非特許文献3)による論文が続いた。
【0004】
J.RobertおよびF.Clerc(SID 80 Digest Techn.Papers(1980)、30;非特許文献4)、J.Duchene(Displays 7(1986)、3;非特許文献5)およびH.Schad(SID 82 Digest Techn.Papers(1982)、244;非特許文献6)の論文では、ECB効果に基づく高情報量のディスプレイ素子中で使用できるためには、液晶相が、高い値の弾性定数比K
3/K
1、高い光学異方性値Δn、−0.5〜−5の値の誘電異方性Δεを有していなければならないことが示された。ECB効果に基づく電気光学的ディスプレイ素子はホメオトロピックなエッジ配向を有している。
【0005】
この効果を電気光学的ディスプレイ素子において工業的に応用するには、多数の要求を満足するLC相が必要となる。ここで特に重要なものは、水分、空気、および熱、赤外線、可視および紫外領域の放射、直流および交流電界などの物理的効果に対する化学的安定性である。更に、工業的に使用できるLC相は、適切な温度範囲での液晶中間相および低粘度が必要である。
【0006】
現在までに開示された液晶中間相を有する一連の化合物には、単一の化合物でこれら全ての要求を満たすものはなかった。従って、LC相として使用できる物質を得るためには、一般に、2〜25種類、好ましくは3〜18種類の化合物の混合物が調製される。しかしながら、著しく負の誘電異方性および適切な長期安定性を有する液晶材料がこれまで入手できなかったため、理想的な相は、このような方法では簡単には生成できない。
【0007】
マトリクス液晶ディスプレイ(MLCディスプレイ)は既知である。個々のピクセルをそれぞれスイッチングするために使用することができる非線形素子の例は、アクティブ素子(即ち、トランジスター)がある。よって、これは「アクティブマトリクス」と呼ばれ、2つの区別されるタイプに分けられる:
1.基体としてのシリコンウエハー上のMOS(金属酸化物半導体)トランジスター、
2.基体としてのガラス板上の薄膜トランジスター(TFT)。
【0008】
第1のタイプの場合、使用される電気光学的効果は、通常、動的散乱またはゲスト−ホスト効果である。基板材料として単結晶シリコンを使用すると、色々な部品ディスプレイのモジュール組み立て品の場合であっても接続部での問題が生じるため、ディスプレイの大きさが制限される。
【0009】
好適であってより有望な第2のタイプの場合には、TN効果が、通常使用される電気光学的効果である。区別される2つの技術がある:例えばCdSeなどの化合物半導体を含むTFT、または多結晶またはアモルファスシリコンに基づくTFTである。後者の技術について、世界的に集中的な研究努力がなされている。
【0010】
TFTマトリクスはディスプレイの一方のガラス板の内面に適用される一方で、他方のガラス板の内面は透明な対向電極を有する。ピクセル電極の大きさと比較して、TFTは非常に小さく、事実上、画像に対する悪影響はない。この技術は、フルカラー対応画像のディスプレイにも拡張でき、このディスプレイでは、各々のフィルター素子がスイッチング可能なピクセルのに対向するように、赤、緑および青フィルターのモザイクが配置される。
【0011】
これまでに開示されたTFTディスプレイは、通常、透過光に対して交差した偏光子を備えるTNセルとして動作させ、バックライトで照らされる。
【0012】
ここで用語MLCディスプレイは、集積非線形素子を備える任意のマトリクスディスプレイを網羅し、即ち、アクティブマトリクスに加えて、バリスターまたはダイオード(MIM、即ち、metal−insulator−metal)などのパッシブ素子を備えるディスプレイも含む。
【0013】
このタイプのMLCディスプレイは、特にテレビ用途(例えばポケットテレビセット)または自動車または航空機内での高度情報ディスプレイに適している。コントラストの角度依存性および応答時間の問題に加えて、MLCディスプレイにおいては、液晶混合物の比抵抗が十分に高くないことに起因する問題がある[TOGASHI、S.、SEKIGUCHI、K.、TANABE、H.、YAMAMOTO、E.、SORIMACHI、K.、TAJIMA、E.、WATANABE、H.およびSHIMIZU、H.、Proc.Eurodisplay 84、1984年9月、A210〜288、Matrix LCD Controlled by Double Stage Diode Rings、141ff頁、パリ(非特許文献7);STROMER、M.、Proc.Eurodisplay 84、1984年9月、Design of Thin Film Transistors for Matrix Addressing of Television Liquid Crystal Displays、145ff頁、パリ(非特許文献8)]。抵抗の低下に伴い、MLCディスプレイのコントラストが劣化する。液晶混合物の比抵抗は、ディスプレイの内部表面との相互作用のために、一般に、MLCディスプレイの寿命全体に渡って低下するので、許容される抵抗値を長期の動作期間で有さなければならないディスプレイのためには、高い(初期)抵抗が非常に重要である。
【0014】
これまでに開示されたMLC−TNディスプレイの不具合は、それらの比較的低いコントラスト、比較的高い視野角依存性およびこれらのディスプレイにおいてグレーシェイドを生じさせることが困難なことである。
【0015】
式Iの化合物は、欧州特許出願公開第1 935 963号公報(特許文献1)において、負の誘電異方性の液晶媒体の一部として開示されているが、他のトラン類およびある種の誘電的に負のターフェニル類と共に組み合わせて開示されているのみである。
【0016】
よって、非常に高い比抵抗を有すると同時に、広い動作温度範囲、短い応答時間および低い閾電圧を有しており、これらの助けにより各種のグレーシェイドを生じさせることができるMLCディスプレイが引き続き強く要求されている。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の1つの好ましい実施形態において、媒体は式Iの化合物のもの以外のトラン類を含まない。そのような媒体は中程度の光学異方性(0.2より低い)を有するが、高い透明点を有し、好ましくは100℃を超える。
【0024】
好ましい実施形態は、以下の通りである。
【0025】
a)式Ia〜Idから選択される1種類以上の化合物、特には、式Iaの少なくとも1種類の化合物を含む媒体。
【0027】
alkyl、alkyl
*およびalkoxy(即ち、O−alkyl)は、それぞれの場合で全ての式に対して、1〜6個の炭素原子を含有する直鎖状の残基である。式中の用語「alkenyl」は、2〜7個のC原子で直鎖状および分岐状のアルケニル基を含む。直鎖状のアルケニル基が好ましい。更に好ましいアルケニル基は、C
2〜C
7−1E−アルケニル、C
4〜C
7−3E−アルケニル、C
5〜C
7−4−アルケニル、C
6〜C
7−5−アルケニルおよびC
7−6−アルケニル、特にはC
2〜C
7−1E−アルケニル、C
4〜C
7−3E−アルケニルおよびC
5〜C
7−4−アルケニルである。これらのなかでも、特に好ましいアルケニル基は、ビニル、1E−プロペニル、1E−ブテニル、1E−ペンテニル、1E−ヘキセニル、1E−ヘプテニル、3−ブテニル、3E−ペンテニル、3E−ヘキセニル、3E−ヘプテニル、4−ペンテニル、4Z−ヘキセニル、4E−ヘキセニル、4Z−ヘプテニル、5−ヘキセニルおよび6−ヘプテニルである。5個までのC原子のアルケニル基が、特に好ましい。
【0028】
式Iaの化合物が特に好ましく、好ましくは、以下の式の1種類以上である。
【0029】
【化4】
好ましくは、媒体は、トラン類、即ち基−C≡C−を有する化合物として、主に式Iの化合物、好ましくは排他的に式Iの化合物を含む。これは、液晶媒体中のトラン類の総量の少なくとも50質量%が式Iであることを意味しており、より好ましくは80質量%以上、最も好ましくは、媒体中の全てのトラン類が式Iまたはそのサブ式のものである。
【0030】
b)式IIの少なくとも1種類の化合物を含む媒体。
【0031】
【化5】
式中、
R
3およびR
4は、R
1およびR
2に対して与えられる意味を有し、
環Dは、
【0032】
【化6】
であり、
mは0または1、好ましくは1であり、および
X
1およびX
2は、それぞれ独立に、F、Cl、OCF
3、OCHF
2またはCF
3である。
【0033】
式IIにおいて、環Dは、好ましくは、
【0034】
【化7】
である。X
1およびX
2は、好ましくは、Fである。R
3は、好ましくは、アルキルまたはアルケニルである。R
4は、好ましくは、アルキルまたはアルコキシ、より好ましくはアルコキシである。これら全ての態様は、独立して好ましい。
【0035】
媒体は、好ましくは60質量%より多くの、より好ましくは65質量%より多くの式IIの化合物を含む。媒体は、好ましくは30質量%より多くの、より好ましくは40質量%より多くの、nが1である式IIの化合物を含む。
【0036】
他の利点のなかでも、上記パーセンテージに従う媒体は高い透明点を示す。
【0037】
c)式IIAの少なくとも1種類の化合物を含む媒体。
【0038】
【化8】
式中、
R
3およびR
4は、R
1およびR
2に対して与えられる意味を有し、および
X
1およびX
2は、それぞれ独立に、F、Cl、OCF
3、OCHF
2またはCF
3である。
【0039】
媒体は、好ましくは15質量%より多くの、より好ましくは20質量%より多くの式IIAの化合物を含む。
【0040】
d)式IIBの少なくとも1種類の化合物を含む媒体。
【0041】
【化9】
式中、
R
3およびR
4は、R
1およびR
2に対して与えられる意味を有し、および
X
1およびX
2は、それぞれ独立に、F、Cl、OCF
3、OCHF
2またはCF
3である。
【0042】
媒体は、好ましくは13質量%より多くの、より好ましくは16質量%より多くの式IIBの化合物を含む。
【0043】
e)式IIIの少なくとも1種類の化合物を追加的に含む媒体。
【0044】
【化10】
式中、
R
5およびR
6は、それぞれ独立に、1〜8個のC原子のアルキルまたはアルコキシで、ただし、これらの基中の1個以上のCH
2−基は−CH=CH−で置き換えられていてもよく、
環A、BおよびCの少なくとも1つが、
【0045】
【化11】
であることを条件として、
【0047】
【化13】
であり、
L
1〜4は、それぞれ独立に、Cl、F、CF
3またはCHF
2であり、好ましくは、L
1〜4は、それぞれ独立にFである。
【0048】
式IIIの好ましい化合物は、式IIIAの化合物より選択される。
【0049】
【化14】
式中、R
5、R
6、環Aおよび環Cは、式IIIに対して上の通り定義される。
【0050】
f)混合物全体における式Iの化合物の割合が5〜20質量%である媒体。
【0051】
g)混合物全体における式IIの化合物の割合が10〜90質量%、好ましくは30〜75質量%である媒体。
【0052】
媒体は、好ましくは、少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%の、mが1である式IIの化合物を含む。これらの混合物の透明点は優位に高いが、光学異方性は中程度である(例えば、0.20より低い)。
【0053】
好ましい実施形態において、環Dは、好ましくは、
【0054】
【化15】
より選択される環である。結果として生じる化合物(II−1)は、好ましくは15%より多く、より好ましくは20%より多く(例えば、20〜35%)媒体中に含まれる。環Dがフェニレンである化合物、化合物II−2は、好ましくは15%より多く、より好ましくは18〜25%間で媒体中に含まれる。
【0055】
h)混合物全体における式IIIの化合物の割合は5〜30質量%、より好ましくは11〜23質量%である媒体。
【0056】
i)式IIa〜IIvより選択される少なくとも1種類の化合物を含む液晶媒体。
【0059】
【化18】
式中、
alkylおよびalkyl
*は、それぞれ独立に、C
1〜6−アルキルであり、
alkenylはC
2〜6−アルケニル、好ましくは、CH
2=CH、CH
2=CHCH
2CH
2、CH
3CH=CHCH
2CH
2またはCH
3CH=CHであり、
特に、式IIb、IIc、IIh、IIi、IIm、IIn、IIsまたはIIuの少なくとも1種類の化合物を含む媒体である。
【0060】
j)式III−a〜III−lより選択される少なくとも1種類の化合物を含む液晶媒体。
【0062】
【化20】
式中、alkylおよびalkyl
*はC
1〜6−アルキルである。
【0063】
k)式IVa〜IVjより選択される少なくとも1種類の化合物を含む液晶媒体。
【0065】
【化22】
式中、
R
7およびR
7aは、それぞれ独立に、1〜8個のC原子のアルキルまたはアルコキシで、ただし、これらの基中の1個以上のCH
2−基は−CH=CH−で置き換えられていてもよく、
Lは、H、FまたはClである。
【0066】
好ましくは、媒体は、式IVaおよび/またはIVbの少なくとも1種類の化合物を含む。
【0067】
l)式Vの1種類以上の化合物を追加的に含む媒体。
【0070】
【化25】
R
8およびR
9は、それぞれ独立に、1〜8個のC原子のアルキルまたはアルコキシで、ただし、これらの基中の1個以上のCH
2−基は−CH=CH−で置き換えられていてもよく、および
Z
1およびZ
2は、それぞれ独立に、単結合、−CH
2CH
2−、−O(CO)−または−(CO)O−である。
【0071】
式Vの化合物は、好ましくは、式V−1の化合物を含む。
【0072】
【化26】
式中、R
8およびR
9は上で定義される通りであるが、好ましくは、
R
8およびR
9は、それぞれ独立に、1〜8個のC原子のアルキルである。
【0073】
媒体は、好ましくは0〜8質量%、より好ましくは0.5〜3質量%の式Vの化合物を含む。
【0074】
m)5〜20質量%の式Iの1種類以上の化合物と、
20〜75質量%の式IIの1種類以上の化合物と、
5〜30質量%の式IIIの1種類以上の化合物とを本質的に含み、
ただし、混合物中における式I、IIおよびIIIの化合物の総量は100%以下であるが、好ましくは90%以上である液晶媒体。
【0075】
n)以下の式の1種類以上の4環化合物を付加的に含む液晶媒体。
【0076】
【化27】
式中、
R
0は1〜8個のC原子のアルキルまたはアルコキシで、ただし、この基中の1個以上のCH
2−基は−CH=CH−で置き換えられていてもよく、
wおよびxは、それぞれ互いに独立に、1〜6を表す。
【0077】
o)好ましくは3質量%より多く、特には5質量%以上、非常に特に好ましくは5〜25質量%の量で、以下の式の1種類以上の化合物を付加的に含む液晶媒体。
【0078】
【化28】
式中、
R
21は1〜8個のC原子のアルキルまたはアルコキシで、ただし、この基中の1個以上のCH
2−基は−CH=CH−で置き換えられていてもよく、
mは、1〜6を表す。
【0079】
p)式B−1〜B−3の1種類以上のビフェニル類を追加的に含む液晶媒体。
【0080】
【化29】
式中、
alkylおよびalkyl
*は、それぞれ互いに独立に、1〜6個のC原子を有する直鎖状のアルキルを表し、および
alkenylおよびalkenyl
*は、それぞれ互いに独立に、2〜6個のC原子を有する直鎖状のアルケニル基を表す。
【0081】
混合物全体における式B−1〜B−3のビフェニル類の割合は、好ましくは、1〜10重量%である。
【0082】
式B−1〜B−3の化合物のうち、式B−1およびB−2の化合物が好ましい。
【0083】
特に好ましいビフェニル類は、以下である。
【0084】
【化30】
本発明による媒体は、特に好ましくは、式B−1aおよび/またはB−2cの1種類以上の化合物を含む。
【0085】
q)好ましくは3質量%より多く、特には5質量%以上、非常に特に好ましくは5〜25質量%の量で、以下の式の1種類以上の化合物を付加的に含む液晶媒体。
【0086】
【化31】
式中、
R
22はR
1に示される意味を有し、R
23はCH
3、C
2H
5またはn−C
3H
7を表し、qは1または2を表す。
【0087】
r)式Z−1〜Z−13の少なくとも1種類の化合物を付加的に含む液晶媒体。
【0089】
【化33】
式中、RはR
5の通りに定義され、alkylおよびalkenylは上で示される意味を有し、pは1または2である。
【0090】
s)式O−1〜O−12の少なくとも1種類の化合物を含む液晶媒体。
【0091】
【化34】
式中、R
1およびR
2は上で示される通りの意味を有し、R
1およびR
2は、それぞれ互いに独立に好ましくは、直鎖状のアルキル、更にアルケニルを表す。
【0092】
t)本発明による好ましい液晶媒体は、例えば、式N−1〜N−5の化合物などのテトラヒドロナフチルまたはナフチル単位を含む1種類以上の物質を含む。
【0093】
【化35】
式中、R
1NおよびR
2Nは、それぞれ互いに独立に、R
1で示される意味を有し、好ましくは直鎖状のアルキル、直鎖状のアルコキシまたは直鎖状のアルケニルを表し、およびZ、Z
1およびZ
2は、それぞれ互いに独立に、−C
2H
4−、−CH=CH−、−(CH
2)
4−、−(CH
2)
3O−、−O(CH
2)
3−、−CH=CHCH
2CH
2−、−CH
2CH
2CH=CH−、−CH
2O−、−OCH
2−、−COO−、−OCO−、−C
2F
4−、−CF=CF−、−CF=CH−、−CH=CF−、−CF
2O−、−OCF
2−、−CH
2−または単結合を表す。
【0094】
v)媒体は、それぞれ式IIA、IIBおよびIIの少なくとも1種類の化合物を含み、ただし、nは0で、後者は、好ましくは少なくとも10質量%、より好ましくは15質量%の量である。
【0095】
w)本発明の別の好ましい実施形態において、媒体は、45%以上、好ましくは50%以上の、式Iの化合物を含むトラン化合物(即ち、1または2個のCC三重結合を有する)を含む。好ましくは、これらの媒体は、10〜20%の式IIの化合物を含む。好ましくは、これらの媒体は、15〜25%の式IIIの化合物を更に含む。この実施形態の媒体は、20%まで、好ましくは3〜12%の式IVの化合物を好ましくは含む。
【0096】
【化36】
式中、R
1およびR
2は上の通り定義され、R
1およびR
2は、それぞれ互いに独立に好ましくは、直鎖状のアルキルまたはアルケニルを表す。R
1は好ましくはアルキルで、R
2は好ましくはアルケニルである。
【0097】
更に、本発明は、上に記載される通りの液晶媒体を誘電体として含有することを特徴とし、ECB効果に基づくアクティブまたはパッシブマトリクスアドレスを有する電気光学的ディスプレイに関する。パッシブマトリクスアドレスのディスプレイが、好ましい実施形態である。
【0098】
本発明による媒体は、高い透明点を有する。本発明による液晶媒体は、好ましくは、20℃以下〜90℃以上まででネマチック相を有し、特に好ましくは、30℃以下〜100℃以上、非常に特に好ましくは、40℃以下〜105℃以上である。これは、透明点が非常に好ましくは100℃以上、または105℃以上ですらあることを意味する。
【0099】
ここで用語「ネマチック相を有する」は、一方でスメクチック相および結晶化が対応する温度の低温で確認されないことを意味し、他方でネマチック相から加熱しても透明化しないことを意味する。低温における検討は対応する温度において流動粘度計中で行なわれ、電気光学的用途に対応する層厚みを有する試験用セルに少なくとも100時間保存して確認する。
【0100】
対応する試験用セル中における−20℃の温度での保存安定性が1000時間以上の場合、媒体はこの温度において安定であるとみなされる。−30℃および−40℃の温度において、対応する時間は、それぞれ500時間および250時間である。高温においては、毛細管による従来法により、透明点が測定される。
【0101】
液晶混合物は、好ましくは、少なくとも60Kのネマチック相範囲と、20℃において最大で30mm
2・s
−1の流動粘度ν
20を有する。
【0102】
本発明による液晶混合物は、−0.5〜−0.8、特には、−3.0〜−6.0のΔεを有し、ただしΔεは誘電異方性を表す。回転粘度γ
1は、好ましくは200mPa・s未満、特には、170mPa・s未満である。
【0103】
液晶混合物中の複屈折率Δnの値は、好ましくは、0.10および0.3の間である。本発明の1つの実施形態において、Δnは、好ましくは0.10および0.20の間、より好ましくは0.11および0.19の間である。
【0104】
本発明による液晶媒体は負の誘電異方性を有し、比較的高い誘電異方性の絶対値(|Δε|)を有し、好ましくは3から5以上の範囲内である。
【0105】
本発明による液晶媒体は比較的低い値の閾電圧(V
0)を有する。それらは、好ましくは、1.7V〜2.5Vの範囲、特に好ましくは、2.3V以下、非常に特に好ましくは、2.2V以下である。
【0106】
加えて、本発明による液晶媒体は、液晶セル中において高い値の電圧保持率を有する。20℃において新たに充填されたセルについては、セル中で、電圧保持率は95%以上、好ましくは97%以上、非常に特に好ましくは99%以上であり、100℃のオーブンで5分後のセル中では、電圧保持率は90%以上、好ましくは93%以上、非常に特に好ましくは98%以上である。
【0107】
一般に、低いアドレス電圧または閾電圧を有する液晶媒体は、高いアドレス電圧または閾電圧を有する液晶媒体よりも低い電圧保持率を有し、逆もそうである。
【0108】
本発明において、用語「誘電的に正の化合物」は1.5より大きいΔεを有する化合物を表し、用語「誘電的に中性の化合物」は−1.5以上1.5以下のΔεを有する化合物を表し、用語「誘電的に負の化合物」は−1.5未満のΔεを有する化合物を表す。ここで、化合物の誘電異方性は、化合物を10%の濃度で液晶ホストに溶解し、それぞれの場合で20μmの厚みでホメオトロピックおよびホモジニアス表面配向を有する少なくとも1つの試験用セル中で1kHzにおいて、結果として生じる混合物の容量を決定することにより決定される。測定電圧は典型的には0.5V〜1.0Vであるが、検討されるそれぞれの液晶混合物の容量閾値よりは常に低い。
【0109】
誘電的に正および誘電的に中性な化合物に使用されるホスト混合物はZLI−4792で、誘電的に負な化合物に使用されるホスト混合物はZLI−2857で、いずれも独国のメルク社製である。検討される化合物を添加後にホスト化合物の誘電率の変化より検討される個々の化合物の値が得られ、これを化合物の100%に外挿する。10%の検討される化合物がホスト混合物に溶解される。このためには物質の溶解度が低すぎる場合、所望の温度で検討が行えるようになるまで濃度を段階的に半分にしていく。
【0110】
本発明で示される全ての温度の値は℃においてである。
【0111】
本発明において、用語「閾電圧」は、明示的に他に示さない限り、フレデリクス閾値としても知られる容量的閾電圧(V
0)に関する。例においては、一般的な通例として、10%相対的コントラストについての光学的閾値(V
10)も決定し示される。
【0112】
電気光学的特性、例えば閾電圧(V
0)(容量的測定)および光学的閾値(V
10)は、スイッチング挙動と同様に、メルク社によって製造された試験用セル中で測定される。測定用セルはソーダライムガラスを有し、互いに直交するようにラビングされたポリイミド配向層を備えるECBまたはVA型構成(
**26希釈(混合比1:1)のSE−1211、いずれも日産化学社製、日本)で作製される。透明な領域、即ち実質的に正方形のITO電極は1cm
2である。使用される試験用セルの層厚みは、光学的位相差が(0.33±0.01)μmとなるよう検討される液晶混合物の複屈折率に従って選択される。偏光子は一方はセルの前面に配置され他方はセルの後ろに配置され、吸収軸が互いに90°を成しており、これらの軸は、それぞれの偏光子に隣接する材料のラビング方向に平行である。層厚みは、通常、約4.0μmである。セルは大気圧下で毛管現象を利用して充填され、非密封の状態で検討される。他に示さない限り、使用される液晶混合物にキラルドーパントを添加しないが、液晶混合物は、このタイプのドープが必要な用途にも特に適している。
【0113】
試験用セルの電気光学的特性および応答時間は、ドイツ国Karlsruche市のAutronic−Melchers社製DMS301測定装置において、20℃の温度で決定される。使用されるアドレス波の形状は、周波数60Hzの矩形波である。電圧は、V
rms(2乗平均平方根)で示される。応答時間の測定の間、電圧は0Vから光学的閾値の2倍(2V
10)まで上昇され戻される。示された応答時間は光の強度のそれぞれの全体の変化が90%に達するまでの電圧の変化から経過する全時間に適用され、即ち、τ
on≡t(0%から90%へ)およびτ
off≡t(100%から10%へ)、即ち、それぞれの遅延時間も含まれる。個々の応答時間はアドレス電圧に依存するため、結果の比較を向上するために、それぞれの応答時間の合計(Σ=τ
on+τ
off)または平均応答時間(τ
av.=(τ
on+τ
off)/2)も示される。
【0114】
本発明による混合物は、例えば、VAN、MVA、(S)−PVAおよびASVなどの全てのアクティブおよびパッシブVA−TFT用途に適する。更に、それらは、Δεが負であるIPS(in−plane switching)、FFS(fringe field switching)およびPALCの用途に適する。
【0115】
本発明によるディスプレイ中のネマチック液晶混合物は一般に2種類の成分AおよびBを含んでおり、それらの成分自身は1種類以上の個々の化合物より成る。
【0116】
成分Aは著しい負の誘電異方性を有しており、−0.5以下の誘電異方性のネマチック相を与える。成分Aは、好ましくは、式IIおよびIIIの化合物を含む。
【0117】
成分Aの割合は、好ましくは、45および100%の間であり、特には、60および100%の間である。
【0118】
成分Aのためには、−0.8以下の値のΔεを有する1種類以上の個々の化合物を、好ましくは選択する。混合物全体におけるAの割合が低いほど、この値をより負としなければならない。
【0119】
成分Bは明瞭なネマトゲン性を有しており、20℃において30mm
2・s
−1以下、好ましくは25mm
2・s
−1以下の流動粘度を有する。
【0120】
成分Bの特に好ましい個々の化合物は、非常に低粘度のネマチック液晶で、20℃において18mm
2・s
−1以下、好ましくは12mm
2・s
−1以下の流動粘度を有する。
【0121】
成分Bはモノトロピック性またはエナンチオトロピック性のネマチックであり、スメクチック相を有さず、液晶混合物において極めて低温までスメクチック相の発生を防止できる。例えば、高いネマトゲン性の各種材料をスメクチック液晶混合物に加えた場合、これらの材料のネマトゲン性は、スメクチック相を抑制する達成された程度を通して比較できる。
【0122】
多数の好適な材料が、文献より当業者に知られている。式IIIの化合物が特に好ましい。
【0123】
加えて、これらの液晶相も18種類より多い成分を含む場合があり、好ましくは18〜25種類の成分である。
【0124】
その相は、好ましくは、3〜15種類、特には4〜12種類、特に好ましくは10種類より少ない、式IおよびIIおよび任意成分としてIIIの化合物を含む。
【0125】
式I、II、IIIおよびIVの化合物に加え、他の構成成分も、例えば混合物全体の45%まで、しかしながら好ましくは35%まで、特には10%までの量で存在してもよい。
【0126】
他の構成成分は、好ましくは、ネマチックまたはネマトゲン性の物質より選択され、特には、アゾキシベンゼン類、ベンジリデンアニリン類、ビフェニル類、ターフェニル類、フェニルまたはシクロヘキシル安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸のフェニルまたはシクロヘキシルエステル類、フェニルシクロヘキサン類、シクロヘキシルビフェニル類、シクロヘキシルシクロヘキサン類、シクロヘキシルナフタレン類、1,4−ビスシクロヘキシルビフェニル類またはシクロヘキシルピリミジン類、フェニルまたはシクロヘキシルジオキサン類、任意にハロゲン化されていてもよいスチルベン類、ベンジルフェニルエーテル類、トラン類および置換された桂皮酸エステル類に分類される既知の物質である。
【0127】
このタイプの液晶相の構成成分として適する最も重要な化合物は、式Xで特徴付けることができる。
【0128】
【化37】
式中、LおよびEは、それぞれ、1,4−二置換ベンゼンおよびシクロヘキサン環類、4,4’−二置換ビフェニル、フェニルシクロヘキサンおよびシクロへキシルシクロヘキサン構造類、2,5−二置換ピリミジンおよび1,3−ジオキサン環類、2,6−二置換ナフタレン、ジ−およびテトラヒドロナフタレン、キナゾリンおよびテトラヒドロキナゾリンから成る群より選択される炭素環構造またはヘテロ環構造を表す。
【0129】
Gは、−CH=CH−、−N(O)=N−、−CH=CQ−、−CH=N(O)−、−C≡C−、−CH
2−CH
2−、−CO−O−、−CH
2−O−、−CO−S−、−CH
2−S−、−CH=N−、−COO−Phe−COO−、−CF
2O−、−CF=CF−、−OCF
2−、−OCH
2−、−(CH
2)
4−、−(CH
2)
3O−またはC−C単結合を表し、Qはハロゲン、好ましくは塩素、または−CNを表し、R
9およびR
10は、それぞれ、18個までの、好ましくは8個までの炭素原子を有するアルキル、アルケニル、アルコキシ、アルカノイルオキシまたはアルコキシカルボニルオキシを表し、あるいは、これらの基の1つは、CN、NC、NO
2、SF
5、SCN、NCS、CF
3、OCF
3、F、ClまたはBrを表す。
【0130】
これらの化合物の殆どにおいて、R
9およびR
10は互いに異なっており、これらの基の1つは、通常、アルキルまたはアルコキシ基である。提案された置換基の他の変体もまた一般的である。そのような物質またはそれらの混合物もまた、商業的に入手できる。全てのこれらの物質は、文献から知られる方法によって調製できる。
【0131】
当業者には言うまでもなく、本発明によるVA、IPS、FFSまたはPALC混合物は、例えば、H、N、O、ClおよびFが対応する同位体で置き換えられた化合物も含むことができる。
【0132】
本発明による液晶ディスプレイの構造は、例えば、欧州出願公開第0 240 379号公報に記載される通りの通常の構成に対応する。
【0133】
以下の例は、制限することなく、本発明を説明することを意図する。上および下において、パーセンテージは質量パーセントを表し、温度はすべて摂氏度で示される。
【0134】
式Iの化合物に加え、本発明による混合物は、好ましくは、以下に示す1種類以上の化合物を含む。
【0135】
以下の略称を使用する(n、mおよびzは、それぞれ互いに独立に、1、2、3、4、5または6である)。
【0146】
【化48】
本発明に従って使用できる液晶媒体は、それ自体従来の方法で調製される。一般に、より少ない量で使用される成分の所望の量を、主要な組成を構成する成分中に、有利には加温して溶解する。例えば、アセトン、クロロホルムまたはメタノールの有機溶媒中の成分溶液を混合し、完全に混合後、例えば蒸留によって溶媒を再び除去することも可能である。また、所謂マルチボトルシステムの2種類以上の媒体を混合することによっても、液晶媒体の最終組成を達成できる。それぞれのボトルは、幾分異なる組成で僅かに異なる特性を有しているが、一般に同一の用途に適する媒体を含んでいる。
【0147】
本発明の1つの実施形態は少なくとも2種類の液晶媒体を含むマルチボトルシステムであり、ここにおいて少なくとも1種類の媒体が本発明による媒体であるか、または本発明による媒体が2個または3個のこれらのボトルを混合することで得られる。
【0148】
誘電体は、例えばUV吸収剤、抗酸化剤、ナノ微粒子およびフリーラジカル補足剤などの当業者に既知で文献に記載されている更なる添加剤を含むこともできる。例えば、0〜15%の多色性色素、安定化剤またはキラルドーパントを加えることができる。
【0149】
例えば、0〜15%の多色性色素を加えることができ、更に、導電性塩、好ましくは、4−ヘキソキシ安息香酸エチルジメチルドデシルアンモニウム、テトラフェニルホウ酸テトラブチルアンモニウムまたはクラウンエーテル類の錯塩(例えば、Hallerら、Mol.Cryst.Liq.Cryst.24、249〜258頁(1973年)参照)を、導電性を改良するために添加することができ、誘電異方性、粘度および/またはネマチック相の配向を改変するために物質を加えることもできる。このタイプの物質は、例えば、ドイツ国出願公開第22 09 127号公報、ドイツ国出願公開第22 40 864号公報、ドイツ国出願公開第23 21 632号公報、ドイツ国出願公開第23 38 281号公報、ドイツ国出願公開第24 50 088号公報、ドイツ国出願公開第26 37 430号公報およびドイツ国出願公開第28 53 728号公報に記載されている。
【0150】
表Aに、本発明による混合物に添加できる可能なドーパントを示す。混合物がドーパントを含む場合、0.01〜4質量%、好ましくは0.1〜1.0質量%の量で使用する。
【0153】
【表3】
例えば、本発明による混合物に添加することができる安定剤を下の表Bに示す。
【0158】
【表8】
以下の例は、本発明を制限することなく、本発明を説明することを意図している。上および下において、
V
0は20℃における容量閾電圧(V)を表し、
Δnは20℃および589nmで測定される光学異方性を表し、
Δεは20℃および1kHzでの誘電異方性を表し、
cl.p.は透明点(℃)を表し、
K
1は20℃における「スプレイ」変形に対する弾性定数(pN)を表し、
K
3は20℃における「ベンド」変形に対する弾性定数(pN)を表し、
γ
1は20℃で測定される回転粘度(mPa・s)を表し、
LTSは低温安定性(ネマチック相)を表し、試験セル中で決定される。
【0159】
閾電圧の測定用に使用されるディスプレイは20μmの間隔で離れている2枚の平坦で平行な外板と、その外板の内側上に、液晶のホメオトロピック配向に効果を有するSE−1211(日産化学製)の配向層が積層された電極層とを有している。
【0160】
下の例は、本発明を限定することなく、本発明を説明するものである。単独の例で使用されるLC媒体の特性および組成は他の媒体にも適用でき、それは明らかには述べられていないが、請求項により包含されている。当該分野の一般的な知識によって実用的な詳細を一般化し、本発明の技術的事項に関連する任意の具体的な問題または課題に対する解決策としてそれらを適用するために、当業者は、明細書中に明らかには述べられていない本発明の実用的な詳細を認識し得るであろう。
【実施例】
【0161】
以下の例は、パッシブマトリクス用途向けのVA混合物である。
【0162】
<例1>
【0163】
【表9】
<例2>
【0164】
【表10】
<例3>
【0165】
【表11】
本発明の実施形態の更なる組み合わせおよび本発明の改変は、以下の請求項によって開示される。