特許第5886730号(P5886730)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5886730成膜方法、その成膜方法のプログラム、そのプログラムを記録した記録媒体、及び、成膜装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5886730
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月16日
(54)【発明の名称】成膜方法、その成膜方法のプログラム、そのプログラムを記録した記録媒体、及び、成膜装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/31 20060101AFI20160303BHJP
   H01L 21/316 20060101ALI20160303BHJP
   C23C 16/44 20060101ALI20160303BHJP
【FI】
   H01L21/31 B
   H01L21/316 X
   C23C16/44 A
【請求項の数】6
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2012-257651(P2012-257651)
(22)【出願日】2012年11月26日
(65)【公開番号】特開2014-107344(P2014-107344A)
(43)【公開日】2014年6月9日
【審査請求日】2015年4月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】池川 寛晃
(72)【発明者】
【氏名】上西 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宏輔
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 優
(72)【発明者】
【氏名】小川 淳
【審査官】 境 周一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−103495(JP,A)
【文献】 特開2011−210872(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0236598(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0324826(US,A1)
【文献】 特開2007−201083(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0173028(US,A1)
【文献】 特開2007−247066(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0218701(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/00−21/98
C23C 14/00−16/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基板が載置される回転テーブルと、前記回転テーブルの上方において区画される第1の処理領域に配置された第1のガス供給部と、前記回転テーブルの周方向に沿って前記第1の処理領域から離間する第2の処理領域に配置された第2のガス供給部と、前記第1の処理領域と前記第2の処理領域との間に設けられた分離ガス供給部と、前記分離ガス供給部から供給された分離ガスを前記第1の処理領域と前記第2の処理領域とへ導く狭隘な空間を形成する分離領域とを備える成膜装置の成膜方法であって、
前記分離ガス供給部及び前記第1のガス供給部から前記分離ガス及び第1の反応ガスを夫々供給しながら、前記回転テーブルを第1の角度まで回転する第1反応ステップと、
前記分離ガス供給部及び前記第1のガス供給部から前記分離ガス及び前記第1の反応ガスを夫々供給しながら、前記第2のガス供給部から第2の反応ガスを供給し、且つ、前記回転テーブルを第2の角度まで回転する第2反応ステップと、
前記分離ガス供給部及び前記第1のガス供給部から前記分離ガス及び前記第1の反応ガスを夫々供給しながら、前記回転テーブルを第3の角度まで回転する第3反応ステップと、
前記分離ガス供給部及び前記第1のガス供給部から前記分離ガス及び前記第1の反応ガスを夫々供給しながら、前記第2のガス供給部から第3の反応ガスを供給し、且つ、前記回転テーブルを第4の角度まで回転する第4反応ステップと
を含み、
前記第1の反応ガスは、前記第2の反応ガス及び前記第3の反応ガスと反応して反応生成物を生成するガスであり、
前記第2の角度及び前記第4の角度は360度の整数倍であり、
前記第1反応ステップから前記第4反応ステップを複数回繰り返し、前記第1反応ステップから前記第4反応ステップのサイクルを繰り返す毎に、前記第1のガス供給部及び前記第2のガス供給部がガス供給を開始する前記回転テーブルの位置をずらすことで、前記基板に複数の反応生成物を積層する
ことを特徴とする成膜方法。
【請求項2】
前記第2反応ステップは、前記分離ガス供給部から前記分離ガスを供給して前記第1の処理領域と前記第2の処理領域とを分離しつつ、前記第2のガス供給部から前記第2の反応ガスを供給することによって、前記基板の表面に該第2の反応ガスを吸着させ、
前記第3反応ステップは、前記第2反応ステップで前記基板の表面に吸着した前記第2の反応ガスと前記第1の反応ガスとを反応させて反応生成物を生成し、生成した反応生成物の薄膜を該基板の表面に堆積し、
前記第4反応ステップは、前記分離ガス供給部から前記分離ガスを供給して前記第1の処理領域と前記第2の処理領域とを分離しつつ、前記第2のガス供給部から前記第3の反応ガスを供給することによって、前記基板の表面に該第3の反応ガスを吸着させ、
前記第1反応ステップは、前記第4反応ステップで前記基板の表面に吸着した前記第3の反応ガスと前記第1の反応ガスとを反応させて反応生成物を生成し、生成した反応生成物の薄膜を該基板の表面に堆積する、
ことを特徴とする、請求項に記載の成膜方法。
【請求項3】
前記第1反応ステップ又は前記第3反応ステップは、前記第2のガス供給部から不活性ガスを供給する不活性ガス供給ステップを更に含む、
ことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の成膜方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載の成膜方法をコンピュータを用いて成膜装置に実行させるためのプログラム。
【請求項5】
請求項に記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項6】
真空容器内に回転可能に収容され、複数の基板が載置される載置部を上面に有する回転テーブルと、
前記上面の上方において区画される第1の処理領域に配置され、前記上面に第1の反応ガスを供給する第1のガス供給部と、
前記回転テーブルの周方向に沿って前記第1の処理領域から離間する第2の処理領域に配置され、前記上面に第2の反応ガス又は第3の反応ガスを供給する第2のガス供給部と、
前記第1の処理領域と前記第2の処理領域との間に設けられ、前記上面に対して分離ガスを供給する分離ガス供給部と、
供給された前記分離ガスを前記第1の処理領域と前記第2の処理領域へ導く狭隘な空間を前記上面に対して形成する天井面を含む分離領域と、
前記回転テーブルの回転角度、前記第1のガス供給部、前記第2のガス供給部及び前記分離ガス供給部を制御する制御手段と
を備える成膜装置であって、
前記第1の反応ガスは、前記第2の反応ガス及び前記第3の反応ガスと反応して反応生成物を生成するガスであり、
前記制御手段は、
前記分離ガス供給部に前記分離ガスを供給させ、且つ、前記第1のガス供給部に前記第1の反応ガスを供給させながら、前記回転テーブルを第1の角度まで回転させ、
前記分離ガスを供給させ、且つ、前記第1の反応ガスを供給させながら、前記第2のガス供給部に前記第2の反応ガスを供給させ、前記回転テーブルを360度の整数倍である第2の角度まで回転させ、
前記分離ガスを供給させ、且つ、前記第1の反応ガスを供給させながら、前記回転テーブルを第3の角度まで回転させ、
前記分離ガスを供給させ、且つ、前記第1の反応ガスを供給させながら、前記第2のガス供給部に前記第3の反応ガスを供給させ、前記回転テーブルを360度の整数倍である第4の角度まで回転させる、
回転動作を複数回繰り返し、前記回転動作を繰り返す毎に、前記第1のガス供給部及び前記第2のガス供給部がガス供給を開始する前記回転テーブルの位置をずらすことで、前記基板に複数の反応生成物を積層するように制御する
ことを特徴とする成膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板表面に薄膜を生成する成膜方法又は成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体記憶素子の記憶容量増大の観点から、半導体記憶素子中のメモリセルの絶縁層に高誘電率の材料を用いる技術が知られている。そのような材料の一つに、酸化ジルコニウム(ZrO)がある。ZrOは約24から40といった誘電率を有しているが、耐電圧性が低いという問題がある。そこで、ZrOに対してアルミニウム(Al)を添加することにより、耐電圧性の向上を図る技術が知られている(例えば特許文献1)。
【0003】
また、半導体記憶素子の低コスト化の観点から、半導体ウエハ(以下、「基板」という。)の大口径化が進められている。これに伴って、基板表面内における均一性の向上が求められている。このような要望に応える成膜方法として、原子層成膜(ALD)法(又は、分子層成膜(MLD)法)と呼ばれる成膜方法がある。
【0004】
ALD法では、互いに反応する2種類の反応ガスのうちの一方の反応ガス(以下、「反応ガスA」という。)を基板表面に吸着させ、吸着した反応ガスAを他方の反応ガス(以下、「反応ガスB」という。)で反応させるサイクルを繰り返す。これにより、ALD法では、基板上に反応ガスAと反応ガスBとの反応生成物を生成し、生成した反応生成物による薄膜を基板表面に成膜する。
【0005】
ALD法を例えばバッチ式の成膜装置で実施する場合には、先ず、基板が収容される処理室内に反応ガスAを供給し、基板表面に反応ガスAを吸着させる。次に、処理室内を排気/パージする。次いで、処理室内に反応ガスBを供給し、基板表面上の反応ガスAと供給する反応ガスBとを反応させる。このとき、反応生成物が基板表面に生成される。以後、処理室内を排気/パージし、所定の膜厚を有する薄膜が得られるまで上記の工程が繰り返される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−18707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
バッチ式の成膜装置を用いてALD法を実施する場合には、反応ガスAの供給及び排気/パージ、並びに、反応ガスBの供給及び排気/パージの工程を要する。このため、バッチ式の成膜装置でALD法を実施する場合には、成膜に時間を要する場合があった。
【0008】
一方、いわゆる回転テーブル式の成膜装置では、複数の基板が載置された回転テーブルを用いて、複数の基板の表面を処理する。これにより、回転テーブル式の成膜装置では、基板一枚当たりの成膜処理に要する時間を短縮することができる。
【0009】
また、回転テーブル式の成膜装置では、回転テーブルを回転することによって、反応ガスAの供給領域、分離領域及び反応ガスBの供給領域に基板を順次通過させる。これのとき、反応ガスAの供給領域において基板表面に反応ガスAを吸着させ、反応ガスBの供給領域において反応ガスAと反応ガスBとを反応させる。
【0010】
しかしながら、上記回転テーブル式の成膜装置では、基板を成膜する際に、回転テーブルの回転周期と反応ガスA又は反応ガスBの供給タイミングとが同期する場合に、処理する複数の基板のうちで反応ガスA又は反応ガスBの添加量が多い基板と少ない基板とが成膜されるときがあった。すなわち、上記回転テーブル式の成膜装置では、複数の基板のうちの同じ基板にのみに反応ガスA又は反応ガスBが直接的に供給されるため、複数の基板の基板間及び基板表面内の成膜の制御性及び均一性が低下する場合があった。
【0011】
本発明は、上述の事情に鑑み、回転テーブル式の成膜装置において、複数の基板の基板間及び基板表面内の成膜の制御性及び均一性を向上させることができる原子層(分子層)成膜方法又は成膜装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一の態様によれば、複数の基板が載置される回転テーブルと、前記回転テーブルの上方において区画される第1の処理領域に配置された第1のガス供給部と、前記回転テーブルの周方向に沿って前記第1の処理領域から離間する第2の処理領域に配置された第2のガス供給部と、前記第1の処理領域と前記第2の処理領域との間に設けられた分離ガス供給部と、前記分離ガス供給部から供給された分離ガスを前記第1の処理領域と前記第2の処理領域とへ導く狭隘な空間を形成する分離領域とを備える成膜装置の成膜方法であって、前記分離ガス供給部及び前記第1のガス供給部から前記分離ガス及び第1の反応ガスを夫々供給しながら、前記回転テーブルを第1の角度まで回転する第1反応ステップと、前記分離ガス供給部及び前記第1のガス供給部から前記分離ガス及び前記第1の反応ガスを夫々供給しながら、前記第2のガス供給部から第2の反応ガスを供給し、且つ、前記回転テーブルを第2の角度まで回転する第2反応ステップと、前記分離ガス供給部及び前記第1のガス供給部から前記分離ガス及び前記第1の反応ガスを夫々供給しながら、前記回転テーブルを第3の角度まで回転する第3反応ステップと、前記分離ガス供給部及び前記第1のガス供給部から前記分離ガス及び前記第1の反応ガスを夫々供給しながら、前記第2のガス供給部から第3の反応ガスを供給し、且つ、前記回転テーブルを第4の角度まで回転する第4反応ステップとを含み、前記第1の反応ガスは、前記第2の反応ガス及び前記第3の反応ガスと反応して反応生成物を生成するガスであり、前記第2の角度及び前記第4の角度は360度の整数倍であり、前記第1反応ステップから前記第4反応ステップを複数回繰り返し、前記第1反応ステップから前記第4反応ステップのサイクルを繰り返す毎に、前記第1のガス供給部及び前記第2のガス供給部がガス供給を開始する前記回転テーブルの位置をずらすことで、前記基板に複数の反応生成物を積層する、ことを特徴とする成膜方法が提供される
【0013】
本発明の他の態様によれば、上記成膜方法をコンピュータを用いて成膜装置に実行させるためのプログラムであってもよい。また、前記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体であってもよい。
【0014】
本発明の他の態様によれば、真空容器内に回転可能に収容され、複数の基板が載置される載置部を上面に有する回転テーブルと、前記上面の上方において区画される第1の処理領域に配置され、前記上面に第1の反応ガスを供給する第1のガス供給部と、前記回転テーブルの周方向に沿って前記第1の処理領域から離間する第2の処理領域に配置され、前記上面に第2の反応ガス又は第3の反応ガスを供給する第2のガス供給部と、前記第1の処理領域と前記第2の処理領域との間に設けられ、前記上面に対して分離ガスを供給する分離ガス供給部と、供給された前記分離ガスを前記第1の処理領域と前記第2の処理領域へ導く狭隘な空間を前記上面に対して形成する天井面を含む分離領域と、前記回転テーブルの回転角度、前記第1のガス供給部、前記第2のガス供給部及び前記分離ガス供給部を制御する制御手段とを備える成膜装置であって、前記第1の反応ガスは、前記第2の反応ガス及び前記第3の反応ガスと反応して反応生成物を生成するガスであり、前記制御手段は、前記分離ガス供給部に前記分離ガスを供給させ、且つ、前記第1のガス供給部に前記第1の反応ガスを供給させながら、前記回転テーブルを第1の角度まで回転させ、前記分離ガスを供給させ、且つ、前記第1の反応ガスを供給させながら、前記第2のガス供給部に前記第2の反応ガスを供給させ、前記回転テーブルを360度の整数倍である第2の角度まで回転させ、前記分離ガスを供給させ、且つ、前記第1の反応ガスを供給させながら、前記回転テーブルを第3の角度まで回転させ、前記分離ガスを供給させ、且つ、前記第1の反応ガスを供給させながら、前記第2のガス供給部に前記第3の反応ガスを供給させ、前記回転テーブルを360度の整数倍である第4の角度まで回転させる、回転動作を複数回繰り返し、前記回転動作を繰り返す毎に、前記第1のガス供給部及び前記第2のガス供給部がガス供給を開始する前記回転テーブルの位置をずらすことで、前記基板に複数の反応生成物を積層するように制御する、ことを特徴とする成膜装置が提供される

【発明の効果】
【0015】
本発明に係る成膜方法又は成膜装置によれば、複数の基板の基板間及び基板表面内の成膜の制御性及び均一性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る成膜方法を実施するのに好適な成膜装置を示す断面図である。
図2図1の成膜装置の真空容器内の構造を示す斜視図である。
図3図1の成膜装置の真空容器内の構造を示す概略上面である。
図4図1の成膜装置の一部断面図である。
図5図1の成膜装置の他の一部断面図である。
図6】本発明の実施形態に係る成膜方法を説明するタイムチャートである。
図7】本発明の実施例に係る成膜方法の効果・利点を確認するために行った実験の結果を示すグラフである。
図8】本発明の実施例に係る成膜方法の効果・利点を確認するために行った実験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
添付の図面を参照しながら、限定的でない例示の実施形態に係る成膜方法又は成膜装置を用いて、本発明を説明する。本発明は、以下に説明する成膜方法又は成膜装置以外でも、複数のガスを用いて、複数の基板の表面を処理するもの(装置、機器、ユニット、システムなど)であれば、いずれのものにも用いることができる。
【0018】
なお、以後の説明において、添付の全図面の記載の同一又は対応する装置、部品又は部材には、同一又は対応する参照符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面は、装置、部品若しくは部材間の限定的な関係を示すことを目的としない。したがって、具体的な相関関係は、以下の限定的でない実施形態に照らし、当業者により決定することができる。
【0019】
本発明の実施形態に係る成膜装置を用いて、下記に示す順序で本発明を説明する。
【0020】
1.成膜装置の構成
2.成膜方法
3.プログラム及び記録媒体
4.実施例
(1.成膜装置の構成)
図1乃至図5を用いて、本発明の実施形態に係る成膜方法を実施するのに好適な成膜装置について説明する。ここで、成膜装置は、本実施形態では、所謂回転テーブル式(後述)の成膜装置であって、互いに反応する2種類以上の反応ガスを交互に供給領域に供給することによって、複数の基板の表面を成膜処理する装置のことを意味する。
【0021】
なお、図1は、成膜装置の断面図であり、図3のI−I'線に沿った断面を示している。図2及び図3は、真空容器1(後述)内の構造を説明する図である。図2及び図3は、説明の便宜上、天板11(後述)の図示を省略している。
【0022】
図4は、反応ガスノズル31(後述)から反応ガスノズル32(後述)までの回転テーブル2(後述)の同心円に沿った真空容器1の断面図である。図5は、天井面44(後述)が設けられる領域を示す一部断面図である。
【0023】
図1乃至図3に示すように、本実施形態に係る成膜装置は、ほぼ円形の平面形状を有する扁平な真空容器1と、真空容器1内に設けられる回転テーブル2と、成膜装置全体の動作(例えば回転テーブル2の回転角度)を制御する制御部100(制御手段)とを備える。
【0024】
真空容器1は、有底の円筒形状を有する容器本体12と、容器本体12の上面に気密に着脱可能に配置される天板11とを備える。天板11は、例えばOリングなどのシール部材13(図1)を介して気密に着脱可能に配置され、真空容器1内の気密性を確保する。
【0025】
回転テーブル2は、真空容器1の中心を回転中心に、ケース体20に収納されている円筒形状のコア部21に固定される。回転テーブル2は、複数の基板(以下、「基板W」という。)が載置される載置部を上面に有する。
【0026】
ケース体20は、その上面が開口した筒状のケースである。ケース体20は、その上面に設けられたフランジ部分を真空容器1の底部14の下面に気密に取り付けられている。ケース体20は、その内部雰囲気を外部雰囲気から隔離する。
【0027】
コア部21は、鉛直方向に伸びる回転軸22の上端に固定されている。回転軸22は、真空容器1の底部14を貫通する。また、回転軸22の下端は、回転軸22を鉛直軸回りに回転させる駆動部23に取り付けられる。更に、回転軸22及び駆動部23は、ケース体20内に収納されている。
【0028】
図3に示すように、回転テーブル2の表面(載置部)は、回転方向(周方向)に沿って複数(本実施形態では5枚)の基板Wを載置するための円形状の複数の凹部24を有する。ここで、図3では、便宜上、1個の凹部24だけに基板Wを図示する。なお、本発明に用いることができる回転テーブル2は、複数の基板として、4枚以下又は6枚以上の基板を載置する構成であってもよい。
【0029】
凹部24は、本実施形態では、基板Wの直径(例えば300mm)よりも僅かに大きい内径(例えば4mm大きい内径)とする。また、凹部24は、基板Wの厚さにほぼ等しい深さとする。これにより、本実施形態に係る成膜装置は、凹部24に基板Wを載置すると、基板Wの表面と回転テーブル2の表面(基板Wが載置されない領域)とを略同じ高さにすることができる。
【0030】
本実施形態に係る成膜装置において、反応ガスノズル31は、第1のガス供給部であり、回転テーブル2の上方において区画される第1の処理領域(後述)に配置される。反応ガスノズル32は、第2のガス供給部であり、回転テーブル2の周方向に沿って第1の処理領域から離間する第2の処理領域(後述)に配置される。分離ガスノズル41,42は、分離ガス供給部であり、第1の処理領域と第2の処理領域との間に配置される。なお、反応ガスノズル31等は、例えば石英からなるノズルを用いてもよい。
【0031】
具体的には、図2及び図3に示すように、本実施形態に係る成膜装置は、真空容器1の周方向に間隔をおいて、基板搬送用の搬送口15から時計回り(回転テーブル2の回転方向)に反応ガスノズル31、分離ガスノズル41、反応ガスノズル32及び分離ガスノズル42の順に配列する。これらのノズル31、32、41及び42は、それぞれの基端部であるガス導入ポート31a、32a、41a及び42a(図3)を容器本体12の外周壁に固定している。また、ノズル31等は、真空容器1の外周壁から真空容器1内に導入される。更に、ノズル31等は、容器本体12の半径方向に沿って回転テーブル2の中心方向に、且つ、回転テーブル2に対して平行に伸びるように取り付けられる。
【0032】
反応ガスノズル31、32は、回転テーブル2に向かって下方に開口する複数のガス吐出孔(不図示)を備える。反応ガスノズル31、32は、そのノズルの長さ方向に沿って、例えば10mmの間隔で開口を配列することができる。これにより、反応ガスノズル31の下方領域は、基板Wに吸着している第2の反応ガスGa又は第3の反応ガスGb(例えばTEMAZガス又はTMAガス)を酸化させる領域(以下、「第1の処理領域P1」という。)となる。また、反応ガスノズル32の下方領域は、基板Wに第2の反応ガスGa又は第3の反応ガスGb(例えばTEMAZガス又はTMAガス)を吸着させる領域(以下、「第2の処理領域P2」という。)となる。
【0033】
反応ガスノズル31は、回転テーブル2の上面の上方において区画される第1の処理領域P1に配置される。反応ガスノズル31は、不図示の配管、バルブ及び流量制御器(例えばマスフローコントローラ)等を介して、第1の反応ガスGoの供給源(不図示)に接続されている。すなわち、反応ガスノズル31は、回転テーブル2の上面に第1の反応ガスGoを供給する。
【0034】
反応ガスノズル32は、回転テーブル2の上面の上方において区画される第2の処理領域P2に配置される。反応ガスノズル32は、不図示の配管等を介して、第2の反応ガスGa及び第3の反応ガスGbの供給源(不図示)に接続されている。すなわち、反応ガスノズル32は、回転テーブル2の上面に第2の反応ガスGa又は第3の反応ガスGbを供給する。反応ガスノズル32は、本実施形態では、開閉バルブ(不図示)を相補的に開閉することにより、第2の反応ガスGa又は第3の反応ガスGbのいずれか一方を真空容器1(第2の処理領域P2)内へ供給する。
【0035】
なお、本発明を用いることができる成膜装置は、反応ガスノズル32を用いて、第2の処理領域P2(回転テーブル2の上面)に不活性ガスを更に供給することができる構成であってもよい。また、本発明を用いることができる成膜装置は、反応ガスノズル32として2つ又は3つ以上のノズルを用いて、第2の反応ガスGa及び第3の反応ガスGb並びに不活性ガスGnを夫々供給する構成であってもよい。
【0036】
分離ガスノズル41、42は、対向する第1の処理領域P1と第2の処理領域P2との間に夫々設けられる。分離ガスノズル41、42は、不図示の配管等を介して、分離ガスGnの供給源(不図示)に接続されている。すなわち、分離ガスノズル41、42は、回転テーブル2の上面に対して分離ガスを供給する。
【0037】
本実施形態に係る成膜装置は、第1の反応ガスGoとして、酸素を含有するガスを用いる。酸素を含有するガスは、例えば酸素ガス又はオゾンガスである。すなわち、反応ガスノズル31から供給する反応ガス(第1の反応ガスGo)は、反応ガスノズル32から供給されて基板に吸着した反応ガス(第2の反応ガスGa、第3の反応ガスGb)を酸化して、酸化物(例えばZrO、AlO)を生成する。
【0038】
本実施形態に係る成膜装置は、第2の反応ガスGaとして、例えばジルコニウム(Zr)を含有するガス(又は蒸気、以下同じ)を用いる。ジルコニウムを含有するガスは、例えばジルコニウムを含有する有機金属原料のガスである。
【0039】
本実施形態に係る成膜装置は、第3の反応ガスGbとして、例えばアルミニウム(Al)を含有するガスを用いる。アルミニウムを含有するガスは、例えばアルミニウムを含有する有機金属原料のガスである。
【0040】
本実施形態に係る成膜装置は、分離ガスGnとして、不活性ガスを用いる。不活性ガスは、例えばArやHeなどの希ガス又は窒素ガスである。
【0041】
なお、本発明に係る成膜装置が用いることができるガスは、上記に示す第1の反応ガスGo、第2の反応ガスGa、第3の反応ガスGb及び分離ガスGnに限定されるものではない。すなわち、本発明に係る成膜装置は、生成する反応生成物の組成に対応するガスを用いることができる。
【0042】
図2及び図3に示すように、本実施形態に係る成膜装置の真空容器1内には、2つの凸状部4が設けられている。凸状部4は、頂部が円弧状に切断された略扇型の平面形状を有する。凸状部4は、本実施形態では、内円弧が突出部5に連結する。また、凸状部4は、外円弧が真空容器1の容器本体12の内周面に沿うように配置されている。
【0043】
具体的には、凸状部4は、図4に示すように、天板11の裏面に取り付けられる。また、凸状部4は、その下面である平坦な低い天井面44(第1の天井面)と、この天井面44の周方向両側に位置する天井面45(第2の天井面)とを有する。ここで、凸状部4の天井面45は、天井面44よりも高い天井面である。これにより、凸状部4は、真空容器1内に、狭隘な空間である分離空間Hと、分離空間Hからガスを流入される空間481及び空間482とを形成する。すなわち、凸状部4は、形成した狭隘な空間である分離空間Hを後述する図6に示す分離領域Dとして機能させる。
【0044】
また、図4に示すように、凸状部4は、周方向中央に溝部43を有する。溝部43は、回転テーブル2の半径方向に沿って延びている。また、溝部43は、分離ガスノズル42が収容されている。もう一つの凸状部4にも同様に溝部43が形成され、ここに分離ガスノズル41が収容されている。
【0045】
なお、図中に示す参照符号42は、分離ガスノズル42に形成されるガス吐出孔である。ガス吐出孔42hは、分離ガスノズル42の長手方向に沿って所定の間隔(例えば10mm)をあけて複数個形成されている。また、ガス吐出孔の開口径は、例えば0.3から1.0mmである。図示を省略するが、分離ガスノズル41にも同様にガス吐出孔が形成されている。
【0046】
更に、図4に示すように、本実施形態に係る成膜装置は、高い天井面45の下方の空間に、反応ガスノズル31、32をそれぞれ設ける。これらの反応ガスノズル31、32は、天井面45から離間して基板Wの近傍に設けられている。なお、説明の便宜上、図4に示すように、反応ガスノズル31が設けられる空間(高い天井面45の下方の空間)を参照符号481で表す。また、反応ガスノズル32が設けられる空間(高い天井面45の下方の空間)を参照符号482で表す。
【0047】
低い天井面44は、狭隘な空間である分離空間Hを回転テーブル2に対して形成している。分離ガスノズル42から不活性ガス(例えばNガス)が供給されると、この不活性ガスは、分離空間Hを流通して、空間481及び空間482へ向かって流出する。ここで、分離空間Hの容積は空間481及び482の容積よりも小さいため、本実施形態に係る成膜装置は、空間481及び482の圧力と比較して、供給した不活性ガスを用いて分離空間Hの圧力を高くすることができる。すなわち、空間481及び482の間隙において、分離空間Hは圧力障壁を提供(形成)する。
【0048】
更に、分離空間Hから空間481及び482へ流出した不活性ガスは、第1の処理領域P1の第1の反応ガスと、第2の処理領域P2の第2の反応ガス及び第3の反応ガスとに対してカウンターフローとして働く。したがって、本実施形態に係る成膜装置は、分離空間Hを用いて、第1の処理領域P1の第1の反応ガスと、第2の処理領域P2の第2の反応ガス及び第3の反応ガスとを分離する。すなわち、本実施形態の成膜装置は、真空容器1内において第1の反応ガスと、第2の反応ガス若しくは第3の反応ガスとが混合して反応することを抑制する。
【0049】
なお、回転テーブル2の上面に対する天井面44の高さh1は、成膜時の真空容器1内の圧力、回転テーブル2の回転速度及び/又は供給する分離ガス(Nガス)の供給量などに基づいて、分離空間Hの圧力を空間481及び482の圧力に比べて高くするのに適した高さとすることができる。また、回転テーブル2の上面に対する天井面44の高さh1は、成膜装置の仕様及び供給するガスの種類に対応した高さとすることができる。更に、回転テーブル2の上面に対する天井面44の高さh1は、予め実験又は計算等で定められる高さとすることができる。
【0050】
図2及び図3に示すように、天板11の下面には、回転テーブル2を固定するコア部21の外周を囲むように突出部5が設けられている。突出部5は、本実施形態では、凸状部4における回転中心側の部位と連続しており、その下面が天井面44と同じ高さに形成されている。
【0051】
図5に示すように、略扇型の凸状部4の周縁部(真空容器1の外縁側の部位)には、回転テーブル2の外端面に対向するようにL字型に屈曲する屈曲部46が形成されている。屈曲部46は、回転テーブル2と容器本体12の内周面との間の空間を通して、空間481及び空間482の間でガスが流通するのを抑制する。扇型の凸状部4は天板11に設けられる。
【0052】
本実施形態に係る成膜装置は、天板11を容器本体12から取り外すことができるので、屈曲部46の外周面と容器本体12との間には僅かな隙間を有する。成膜装置は、屈曲部46の内周面と回転テーブル2の外端面との隙間、及び、屈曲部46の外周面と容器本体12との隙間を、例えば回転テーブル2の上面に対する天井面44の高さと同様の寸法に設定することができる。
【0053】
再び図3を参照すると、回転テーブル2と容器本体の内周面との間において、空間481(図4)と連通する第1の排気口610と、空間482(図4)と連通する第2の排気口620とが形成されている。第1の排気口610及び第2の排気口620は、図1に示すように、各々排気管630を介して、真空排気手段(例えば真空ポンプ640)に接続されている。なお、図1中の参照符号650は圧力調整器である。
【0054】
回転テーブル2と真空容器1の底部14との間の空間には、図1及び図5に示すように、加熱手段であるヒータユニット7が設けられる。回転テーブル2を介して回転テーブル2上の基板Wが、プロセスレシピで決められた温度(例えば450℃)に加熱される。回転テーブル2の周縁付近の下方側には、回転テーブル2の下方の空間へガスが侵入するのを抑えるために、リング状のカバー部材71が設けられている。
【0055】
図5に示すように、カバー部材71は、回転テーブル2の外縁部及び外縁部よりも外周側を下方側から臨むように設けられた内側部材71aと、この内側部材71aと真空容器1の内壁面との間に設けられた外側部材71bと、を備えている。外側部材71bは、凸状部4の外縁部に形成された屈曲部46の下方にて、屈曲部46と近接して設けられる。内側部材71aは、回転テーブル2の外縁部下方(及び外縁部よりも僅かに外側の部分の下方)において、ヒータユニット7を全周に亘って取り囲んでいる。
【0056】
制御手段は、成膜装置の各構成に動作を指示し、各構成の動作を制御する手段である。成膜装置は、本実施形態では、制御手段として、装置全体の動作のコントロールを行うためのコンピュータからなる制御部100を用いる。制御部100は、例えば記憶部101に記憶されたプログラムを実行し、ハードウェアと協働することで、複数の基板の表面を成膜する。なお、制御手段は、公知技術のCPU( Central Processing Unit )及びメモリ( ROM、RAMなど )等を含む演算処理装置で構成することができる。
【0057】
具体的には、制御部100は、内蔵するメモリ内に、後述する成膜方法(2.成膜方法)を成膜装置に実施させるためのプログラムを格納することができる。このプログラムは、例えばステップ群を組まれている。制御部100は、媒体102(ハードディスク、コンパクトディスク、光磁気ディスク、メモリカード、フレキシブルディスクなど)に記憶されている上記プログラムを記憶部101へ読み込み、その後、制御部100内にインストールすることができる。
【0058】
制御部100は、本実施形態では、反応ガスノズル31(第1のガス供給部)の動作を制御することで、回転テーブル2の上面に第1の反応ガスGoを供給する動作を制御することができる。また、制御部100は、反応ガスノズル32(第2のガス供給部)の動作を制御することで、回転テーブル2の上面に第2の反応ガスGa及び第3の反応ガスGbを供給する動作を制御することができる。更に、制御部100は、分離ガスノズル41,42(分離ガス供給部)の動作を制御することで、回転テーブル2の上面に分離ガスGnを供給する動作を制御することができる。なお、本発明を用いることができる成膜装置は、反応ガスノズル32を用いて第2の処理領域P2に不活性ガスを更に供給する構成とし、第2の処理領域P2をパージしてもよい。
【0059】
また、制御部100は、本実施形態では、回転テーブル2の回転角度を制御する。具体的には、制御部100は、先ず、第1反応ステップとして、回転テーブル2を第1の角度θ1まで回転する。次に、制御部100は、第2反応ステップとして、回転テーブル2を第2の角度θ2で回転する。次いで、制御部100は、第3反応ステップとして、回転テーブル2を第3の角度θ3で回転する。その後、制御部100は、第4反応ステップとして、回転テーブル2を第4の角度θ4で回転する。
【0060】
(2.成膜方法)
これまでに参照した図面(図1から図5)に加えて、図6を参照しながら、本発明の実施形態に係る成膜装置が実施する成膜方法の一例を説明する。図6は、本実施形態に係る成膜方法を説明するタイムチャートの一例を示した図である。
【0061】
本実施形態に係る成膜装置は、回転テーブル2の回転動作と反応ガスノズル31(第1のガス供給部)及び反応ガスノズル32(第2のガス供給部)のガス供給の開始動作とを非同期とする。成膜装置は、制御部100を用いて、例えば第1の角度θ1、第2の角度θ2、第3の角度θ3及び第4の角度θ4の和を360度の整数倍でない角度にすることによって、回転テーブル2の回転動作と反応ガスノズル31等のガス供給の開始動作とを非同期とすることができる。
【0062】
また、成膜装置は、制御部100を用いて、後述する酸化工程1(図6のStep1)において、後の反応工程1(図6のStep2)で第2の反応ガスGaを供給する前に基板の表面を酸化することができる最小角度以上(例えば60度)とすることができる。また、成膜装置は、同様に、制御部100を用いて、後述する酸化工程2(図6のStep3)において、後の反応工程2(図6のStep4)で第3の反応ガスGbを供給する前に基板の表面を酸化することができる最小角度以上(例えば60度)とすることができる。すなわち、成膜装置は、制御部100を用いて、例えば第1の角度θ1及び第3の角度θ3の和を60度以上360度未満の範囲の角度、又は、360度を超える角度とすることによって、回転テーブル2の回転動作と反応ガスノズル31等のガス供給の開始動作とを非同期としてもよい。なお、成膜装置は、上記の最小角度を回転テーブル2に載置する基板の大きさ及び/又は基板の枚数に対応する角度とすることができる。また、成膜装置は、上記の最小角度を実験又は計算等で予め定められる角度としてもよい。
【0063】
更に、成膜装置は、図6に示すように、例えば第1の角度θ1及び第3の角度を60度とし、且つ、第2の角度θ2及び第4の角度θ4を360度とすることによって、回転テーブル2の回転動作と反応ガスノズル31等のガス供給のサイクル(図6のStep1からStep4までのサイクル)とを非同期としてもよい。以下、具体的に説明する。
【0064】
(搬入工程)
本実施形態に係る成膜装置は、先ず、図示しないゲートバルブを開き、搬送アーム10(図3)を用いて、搬送口15を介して、基板Wを回転テーブル2の凹部24内に受け渡す。成膜装置は、凹部24が搬送口15に臨む位置に停止したときに凹部24の底面の貫通孔を介して、真空容器1の底部側から不図示の昇降ピンを昇降させることによって、基板Wの受け渡しを行ってもよい。また、成膜装置は、回転テーブル2を間欠的に回転させ、回転テーブル2の複数(本実施形態では、5つ)の凹部24内に夫々基板Wを載置する。
【0065】
(プレ工程:図6のStep0)
成膜装置は、ゲートバルブを閉じ、真空ポンプ640を用いて真空容器1を最低到達真空度まで排気した後に、分離ガスノズル41,42から分離ガスGn(例えば不活性ガス)を所定の流量で供給させる。このとき、成膜装置は、本実施形態では、分離ガス供給管51及びパージガス供給管72、72(図1)からも不活性ガスを所定の流量で供給させる。これにより、成膜装置は、圧力調整器650を用いて、真空容器1内を予め設定した処理圧力に調整することができる。
【0066】
次いで、成膜装置は、回転テーブル2を時計回りの方向Rwに回転させながら、ヒータユニット7を用いて基板Wを加熱する。
【0067】
(酸化工程1:図6のStep1)
成膜装置は、第1反応ステップとして、分離ガスノズル41,42から分離ガスGnを供給させながら、反応ガスノズル31から第1の反応ガスGo(例えば酸素を含有するガス)を供給させる。また、成膜装置は、制御部100を用いて、回転テーブル2を第1の角度θ1まで回転させる。このとき、成膜装置は、第1の処理領域P1を通過する基板Wの表面(例えば最表面)を酸化する。また、成膜装置は、後述する図6のStep4の後の酸化工程1において、第2の反応ガスGaを供給する前の下地準備をする(例えば反応生成物の最表面を酸化する)ことができる。
【0068】
制御部100は、本実施形態では、図6のStep1に示すように、第1反応ステップとして回転テーブル2を60度(第1の角度θ1)まで回転させる。これにより、成膜装置は、後の第2反応ステップ(図6のStep2)において、第1反応ステップで基板表面を酸化された基板Wを第2の処理領域P2に配置することができる。
【0069】
(反応工程1:図6のStep2)
成膜装置は、第2反応ステップとして、分離ガスノズル41,42及び反応ガスノズル31から分離ガスGn及び第1の反応ガスGoを夫々供給させながら、反応ガスノズル32から第2の反応ガスGa(例えばZrを含有するガス)を供給させる。また、成膜装置は、制御部100を用いて、回転テーブル2を第2の角度θ2まで回転させる。このとき、成膜装置は、第2の処理領域P2において、基板Wの表面(例えば最表面)に第2の反応ガスGaを吸着させる。また、成膜装置は、第1の処理領域P1において、第2の反応ガスGaが吸着された基板Wの表面を酸化する。すなわち、成膜装置は、基板W上に第2の反応ガスGaの酸化物(例えばZrO膜)を堆積(成膜)することができる。
【0070】
制御部100は、本実施形態では、図6のStep2に示すように、第2反応ステップとして回転テーブル2を360度(第2の角度θ2)まで回転させる。
【0071】
なお、分離ガスGn、第1の反応ガスGo及び第2の反応ガスGaは、分離領域Dにより分離され、真空容器1内で互いに混合することは殆ど無い。
【0072】
(酸化工程2:図6のStep3)
成膜装置は、第3反応ステップとして、分離ガスノズル41,42及び反応ガスノズル31から分離ガスGn及び第1の反応ガスGoを夫々供給させながら、反応ガスノズル32から不活性ガスGnを供給させる。また、成膜装置は、制御部100を用いて、回転テーブル2を第3の角度θ3まで回転させる。このとき、成膜装置は、第2の反応ガスGaが供給された第2の処理領域P2を不活性ガスGnでパージする。また、成膜装置は、第1の処理領域P1において、基板Wの表面(例えばStep2で第2の反応ガスGaが吸着した表面)を酸化する。
【0073】
制御部100は、本実施形態では、図6のStep3に示すように、第3反応ステップとして回転テーブル2を60度(第3の角度θ3)まで回転させる。これにより、成膜装置は、後の第4反応ステップ(図6のStep4)において、第3反応ステップで表面が酸化された基板Wを第2の処理領域P2に配置することができる。
【0074】
(反応工程2:図6のStep4)
成膜装置は、第4反応ステップとして、分離ガスノズル41,42及び反応ガスノズル31から分離ガスGn及び第1の反応ガスGoを夫々供給させながら、反応ガスノズル32から第3の反応ガスGb(例えばAlを含有するガス)を供給させる。また、成膜装置は、制御部100を用いて、回転テーブル2を第4の角度θ4まで回転させる。このとき、成膜装置は、第2の処理領域P2において、基板Wの表面(例えばStep3で酸化した表面)に第3の反応ガスGbを吸着させることができる。また、成膜装置は、第1の処理領域P1において、第3の反応ガスGbが吸着された基板Wの表面を酸化することができる。すなわち、成膜装置は、基板W上に第3の反応ガスGbの酸化物(例えばAlO膜)を堆積(成膜)することができる。
【0075】
制御部100は、本実施形態では、図6のStep4に示すように、第4反応ステップとして回転テーブル2を360度(第4の角度θ4)まで回転させる。
【0076】
なお、分離ガスGn、第1の反応ガスGo及び第3の反応ガスGbは、分離領域Dにより分離され、真空容器1内で互いに混合することは殆ど無い。
【0077】
その後、成膜装置は、酸化工程1(図6のStep1)に戻り、反応生成物の薄膜の膜厚が所望の厚さになるまで、上記Step1からStep4の動作を繰り返す。すなわち、成膜装置は、反応生成物の薄膜の膜厚が所望の厚さになるまで、酸化物を積層する。ここで、成膜装置は、上記Step1からStep4までの動作において、第1の角度θ1、第2の角度θ2、第3の角度θ3及び第4の角度θ4の和を360度の整数倍でない角度で回転テーブル2を回転させる。すなわち、成膜装置は、回転テーブル2の回転動作と反応ガスノズル31等のガス供給の開始動作とを非同期とする。
【0078】
なお、成膜装置は、図6のStep1に戻った場合には、反応ガスノズル32から不活性ガスGnを供給することによって、第2の処理領域P2を不活性ガスGnでパージする。
【0079】
(酸化工程3:図6のStep5)
成膜装置は、分離ガスノズル41,42から分離ガスGnを供給させながら、反応ガスノズル31から第1の反応ガスGo(例えば酸素を含有するガス)を供給させる。これにより、成膜装置は、成膜された基板Wの表面(例えば最表面)を酸化させることができる。
【0080】
(搬出工程:図6のStep6)
成膜装置は、図示しないゲートバルブを開き、搬送アーム10(図3)を用いて、搬送口15を介して、成膜された基板Wを搬出する。成膜装置は、(搬入工程)と同様に、不図示の昇降ピンなどを用いて、基板Wを搬出する。
【0081】
以上のとおり、本発明の実施形態に係る成膜方法によれば、回転テーブル式の成膜装置において、回転テーブルの回転動作に対して非同期に2種類以上の反応ガスを供給することができる。また、本実施形態に係る成膜方法によれば、制御部100を用いて、例えば第1の角度θ1、第2の角度θ2、第3の角度θ3及び第4の角度θ4の和を360度の整数倍でない角度にすることによって、回転テーブル2の回転動作と反応ガスノズル31及び反応ガスノズル32のガス供給の開始動作とを非同期とすることができる。これにより、本実施形態に係る成膜方法によれば、Step1からStep4のサイクルを繰り返して成膜する際に、ガス供給を開始する基板W上の位置をサイクル毎にずらすことができる。すなわち、本実施形態に係る成膜方法によれば、反応ガスの供給量を基板間で均一にすることができる。更に、本実施形態に係る成膜方法によれば、制御部100を用いて、回転テーブル2の回転動作と反応ガスノズル31及び反応ガスノズル32のガス供給の開始動作とを非同期とすることができるので、複数の基板の基板間及び基板表面内の成膜の制御性及び均一性を向上することができる。
【0082】
また、本発明の実施形態に係る成膜方法によれば、反応工程1において吸着される第2の反応ガスGa(例えばZrO膜)に、反応工程2においてほぼ1分子層の第3の反応ガスGb(例えばAlO)を反応させることができるので、基板W上に所望の反応生成物を生成することができる。更に、本実施形態に係る成膜方法によれば、第2の反応ガスGaにほぼ1分子層の第3の反応ガスGbを反応させて反応生成物を生成することができるので、上記工程を繰り返すことによって周期的に挿入された多層膜(例えば多層膜状のAl添加ZrO膜)を基板W表面に成膜(積層)することができる。
【0083】
(3.プログラム及び記録媒体)
本発明は、上記成膜方法をコンピュータを用いて成膜装置に実行させるためのプログラムPrであってもよい。また、本発明は、上記プログラムPrを記録したコンピュータによって読み取り可能な記録媒体Mdとしてもよい。上記プログラムPrを記録した記録媒体Mdは、フレキシブルディスク(FD)、CD−ROM(Compact Disk−ROM)、CD−R(CD Recordable)、DVD(Digital Versatile Disk)、テープドライブ及びその他コンピュータ読み取り可能な媒体、並びに、フラッシュメモリ、RAM、ROM等の半導体メモリ、メモリカード、HDD(Hard Disc Drive)及びその他コンピュータ読み取り可能なものを用いることができる。
【0084】
なお、本実施形態に係る成膜装置は、上記プログラムPrを記憶部101(図1)に記憶してもよい。また、本実施形態に係る成膜装置は、上記記録媒体Mdを媒体102(図1)としてもよい。
【実施例】
【0085】
成膜装置の実施例を用いて、本発明を説明する。本実施例では、第1の反応ガスGoとして、O(オゾン)ガスを使用した。第2の反応ガスGaとして、TEMAZ(テトラキス・エチルメチル・アミノジルコニウム)ガスを使用した。第3の反応ガスGbとして、TMA(トリメチルアルミニウム)ガスを使用した。分離ガスGnとして、N(窒素)ガスを使用した。すなわち、本実施例では、Zr/Al系の成膜を行った。なお、本発明に係る成膜装置は、酸化膜系、窒化膜系又はその他2種類以上のガスを反応させて生成した反応生成物を堆積させる成膜を行うことができる。
【0086】
(成膜装置の構成)及び(成膜方法)
本実施例に係る成膜装置の構成及び成膜方法等を図1から図6に示す。ここで、本実施例に係る成膜装置の構成等は、実施形態に係る成膜装置の構成等と基本的に同様のため、異なる部分を主に説明する。なお、以後の説明において、回転テーブル2の回転速度は、例えば3rpmから6rpmとした。しかしながら、本発明に係る成膜装置は、3rpmから6rpmの範囲以外の回転速度で回転テーブル2を回転してもよい。
【0087】
(プレ工程:図6のStep0)
成膜装置は、ゲートバルブを閉じ、真空ポンプ640を用いて真空容器1を最低到達真空度まで排気した後に、分離ガスノズル41,42からNガス(分離ガスGn)を所定の流量で供給させた。このとき、成膜装置は、本実施例では、分離ガス供給管51及びパージガス供給管72、72(図1)からもNガスを所定の流量で供給した。これにより、成膜装置は、圧力調整器650を用いて、真空容器1内を予め設定した処理圧力に調整した。
【0088】
次いで、成膜装置は、回転テーブル2を時計回りの方向Rwに回転させながら、ヒータユニット7を用いて基板Wを加熱した。成膜装置は、基板Wを例えば250℃から350℃までの範囲の温度に加熱した。
【0089】
(酸化工程1:図6のStep1)
次いで、成膜装置は、第1反応ステップとして、分離ガスノズル41,42からNガスを供給させながら、反応ガスノズル31からOガス(第1の反応ガスGo)を供給させた。このとき、成膜装置は、本実施例では、制御部100を用いて、回転テーブル2を360度(第1の角度θ1)まで回転させた。これにより、成膜装置は、第1の処理領域P1を通過した基板Wの最表面を均一に酸化させることができた。
【0090】
(反応工程1:図6のStep2)
成膜装置は、第2反応ステップとして、分離ガスノズル41,42及び反応ガスノズル31からNガス及びOガスを夫々供給させながら、反応ガスノズル32からTEMAZガス(第2の反応ガスGa)を供給させた。このとき、成膜装置は、本実施例では、制御部100を用いて、回転テーブル2を360度(第2の角度θ2)まで回転させた。これにより、成膜装置は、第2の処理領域P2を通過した基板Wの表面にTEMAZガスを吸着させることができた。また、成膜装置は、TEMAZガスが吸着された基板Wを第1の処理領域P1に通過させることによって、基板Wの表面に吸着したTEMAZガスをOガスで酸化させ、基板Wの表面にZrO膜を成膜(堆積)させた。ここで、成膜装置は、基板Wの表面全体にほぼ1分子層分のTEMAZガス(ZrO膜)を吸着(成膜)させる。
【0091】
なお、上述の基板Wの温度範囲においては、TEMAZガスは、基板Wの表面にほぼ自己制限的に吸着する。すなわち、TEMAZガスは、基板Wの表面には吸着し、基板Wの表面に吸着したTEMAZガスの上には殆ど吸着しない。また、TEMAZガスは、基板Wの表面上で熱分解しない。このため、基板Wが、第2の処理領域P2を複数回通過しても、基板Wの表面全体はほぼ1分子層のTEMAZガスで覆われることとなる。
【0092】
(酸化工程2:図6のStep3)
成膜装置は、第3反応ステップとして、分離ガスノズル41,42及び反応ガスノズル31からNガス及びOガスを夫々供給させながら、反応ガスノズル32からNガスを供給させた。これにより、成膜装置は、TEMAZガスが供給された第2の処理領域P2をNガスでパージした。また、成膜装置は、TEMAZガスが吸着した基板Wを第1の処理領域P1に通過させることによって、基板Wの表面に吸着したTEMAZガスをOガスで酸化させ、基板Wの表面にZrO膜を成膜(堆積)した。
【0093】
成膜装置は、本実施例では、制御部100を用いて、回転テーブル2の回転周期とOガスの供給タイミングとを非同期とするために、第3の角度θ3として、回転テーブル2を「360度−18度」又は「360度+18度」まで回転させた。
【0094】
(反応工程2:図6のStep4)
成膜装置は、第4反応ステップとして、分離ガスノズル41,42及び反応ガスノズル31からNガス及びOガスを夫々供給させながら、反応ガスノズル32からTMAガス(第3の反応ガスGb)を供給させた。このとき、成膜装置は、本実施例では、制御部100を用いて、回転テーブル2を360度(第4の角度θ2)まで回転させた。これにより、成膜装置は、回転テーブル2を回転させることによって、第2の処理領域P2を通過した基板Wの表面(ZrO膜)にTMAガスを吸着させた。また、成膜装置は、TMAガスが吸着された基板Wを第1の処理領域P1に通過させることによって、基板Wの表面に吸着したTMAガスをOガスで酸化させ、基板Wの表面にAlO膜を成膜(堆積)した。ここで、成膜装置は、基板Wの表面全体にほぼ1分子層分のTMAガス(AlO膜)を吸着(成膜)させた。
【0095】
その後、成膜装置は、酸化工程1(図6のStep1)に戻り、反応生成物(ZrO膜及びAlO膜)の薄膜の膜厚が所望の厚さになるまで、上記Step1からStep4の動作を繰り返した。
【0096】
なお、成膜装置は、図6のStep4の後にStep1に戻った場合に、反応ガスノズル32から不活性ガスGnを供給させることによって、第2の処理領域P2を不活性ガスGnでパージした。また、成膜装置は、図6のStep4の後にStep1に戻った場合に、制御部100を用いて、回転テーブル2の回転周期と以後に繰り返すタイミング(図6のStep1からStep4)とを非同期とするために、第1の角度θ1として、回転テーブル2を「360度−18度」又は「360度+18度」まで回転してもよい。
【0097】
(実験1)
図7に、本発明の実施例に係る成膜方法の効果を確認するために行った実験結果の一例を示す。本実験は、回転テーブル2の回転動作と反応ガスノズル32(第2のガス供給部)のガス供給の開始動作とを非同期とした場合の成膜の制御性を検討するために行った。
【0098】
なお、図7の横軸は、回転テーブル2の複数の凹部24に夫々載置された複数の基板W(S1乃至S5)を示す。図7の実線は、左縦軸の膜厚を示す。図7の破線は、右縦軸の膜厚のばらつき(同一基板内のばらつき)を示す。また、本実験において膜厚の測定は、ラザフォード後方散乱(RBS)法を用いた。
【0099】
本実験では、第3反応ステップにおいて、回転テーブル2を「360度+18度」まで回転させることによって、回転テーブル2の回転動作と反応ガスノズル32のガス供給の開始動作とを非同期とした。すなわち、本実験では、回転テーブル2を3rpmの回転速度で回転させたときに、第3反応ステップの回転時間を1秒追加した場合(非同期、図中のL1)の実験結果と、1秒追加しない場合(同期、図中のLo)の実験結果とを比較した。
【0100】
図7に示すように、基板の膜厚(図中の実線)は、非同期の場合(実線のL1)と同期の場合(実線のLo)とでほぼ同様の傾向を示した。
【0101】
一方、基板表面内の膜厚のばらつき(図中の破線)は、同期の場合(破線のLo)と比較して、非同期の場合(破線のL1)にそのばらつきが小さい値となった。すなわち、本実施例に係る成膜方法では、回転テーブル2の回転動作と反応ガスノズル32のガス供給の開始動作とを非同期とした場合に、同一基板表面内の膜厚のばらつきを小さくすることができた。したがって、本実施例に係る成膜方法では、複数の基板を処理する場合において、回転テーブル2の回転動作と反応ガスノズル32のガス供給の開始動作とを非同期としたときに、夫々の基板表面内の成膜の制御性及び均一性を向上することができた。
【0102】
(実験2)
図8に、本発明の実施例に係る成膜方法の効果を確認するために行った実験結果を示す。
【0103】
なお、図8は、基板表面をラミネート(Laminate)成膜した実験結果の一例である。図8の横軸は、回転テーブル2の複数の凹部24に夫々載置された複数の基板W(S1乃至S5)を示す。図8の実線は、左縦軸の膜厚を示す。図8の破線は、右縦軸の膜厚のばらつき(同一基板内)を示す。
【0104】
本実験では、第3反応ステップにおいて、回転テーブル2を「360度+18度」又は「360度−18度」まで回転させることによって、回転テーブル2の回転動作と反応ガスノズル32のガス供給の開始動作とを非同期とした。すなわち、本実験では、回転テーブル2を6rpmの回転速度で回転させたときの第3反応ステップの回転時間を0.5秒追加した場合(非同期、図中のLa)の実験結果及び0.5秒減少した場合(非同期、図中のLb)の実験結果と、0.5秒追加及び減少しない場合(同期、図中のLo)の実験結果とを比較した。
【0105】
図8に示すように、基板の膜厚(図中の実線)は、同期の場合(実線のLo)と比較して、非同期の場合(実線のLa及びLb)に複数の基板間の膜厚のばらつきが小さくなる傾向を示した。すなわち、本実施例に係る成膜方法では、回転テーブル2の回転動作と反応ガスノズル32のガス供給の開始動作とを非同期とした場合に、基板間の膜厚のばらつきを小さくすることができた。また、図8に示すように、基板の膜厚は、回転テーブル2を「360度+18度」とした非同期の場合(実線のLa)と比較して、回転テーブル2を「360度−18度」とした非同期の場合(実線のLb)の複数の基板間の膜厚のばらつきが小さくなる傾向を示した。すなわち、本実施例に係る成膜方法では、本実験では、回転テーブル2の回転動作と反応ガスノズル32のガス供給の開始動作とを回転角度を減少(−18度)して非同期とした場合に、複数の基板間の膜厚のばらつきを更に小さくすることができた。
【0106】
一方、図8に示すように、同一基板表面内の膜厚のばらつき(図中の破線)は、同期の場合(破線のLo)と比較して、非同期の場合(破線のLa及びLb)にそのばらつきが小さい値となった。すなわち、本実施例に係る成膜方法では、回転テーブル2の回転動作と反応ガスノズル32のガス供給の開始動作とを非同期とした場合に、同一基板表面内の膜厚のばらつきを小さくすることができた。具体的には、同一基板表面内の膜厚のばらつきは、図中のS5の基板において、同期の場合(破線のLo)の基板表面内の膜厚分布Logと、非同期の場合(破線のLa及びLb)の基板表面内の膜厚分布Lag及びLbgとを比較したときに、同期の場合(破線のLo)には基板表面上の膜厚が局所的に厚くなる部分が存在した。すなわち、本実施例に係る成膜方法は、回転テーブル2の回転動作と反応ガスノズル32のガス供給の開始動作とを非同期する(反応ガスを供給するタイミングをずらす)ことで、基板面間及び基板表面内の成膜の均一性を改善した。
【0107】
以上より、本発明の実施例に係る成膜方法によれば、1分子層のZrO層及びAlO層を複数の基板表面にそれぞれ堆積することができるので、基板間及び基板表面内の成膜を均一に形成することができる。また、本実施例に係る成膜方法によれば、Al添加量したZrO層の反応生成物を基板表面に成膜することができるので、誘電率が大きく、しかもリーク特性に優れた(耐電圧性が高い)誘電体層を得ることが可能となる。
【0108】
また、本発明の実施例に係る成膜方法によれば、実施形態に係る成膜方法と同様の効果を得ることができる。
【0109】
以上、本発明の実施形態及び実施例を参照しながら、本発明を説明したが、本発明は上記の実施形態及び実施例に限定されることなく、添付の特許請求の範囲に照らし、種々に変更又は変形することが可能である。
【0110】
また、上記の実施例では、基板Wの表面に吸着したTEMAZガス又はTMAガスを酸化する酸化ガスとしてOガスを使用したが、これに代わって、酸素(O)プラズマや、酸化チッ素(NOx)ガス、HOガスなどを使用してもよい。Oプラズマを用いる場合には、真空容器1内にプラズマ発生源を設けることが好ましい。プラズマ発生源としては、真空容器1内に、互いに平行で、回転テーブル2にも平行な2本のロッド状の電極を配置し、電極間の空間にOガスを供給すると共に、電極間に高周波電力を供給してOプラズマを発生させてもよい。また、このような容量結合型(CCP)のプラズマ発生源に代わり、誘導結合型(ICP)のプラズマ発生源を用いてもよい。
【0111】
また、上記の実施例では、TEMAZガスとTMAガスとを用いる場合を説明したが、ジルコニウムを含む原料ガスであれば、TEMAZガスに限らず例えばトリ(ジメチルアミノ)シクロペンタジエニルジルコニウムを用いてよく、アルミニウムを含む原料ガスであれば、TMAガスに限らずトリエチルアルミニウムなど、有機金属アルミニウムを用いることができる。
【0112】
また、上記の実施例では、Al添加ZrO膜について説明したが、タンタル(Ta)、ハフニウム(Hf)、ランタン(La)、ストロンチウム(Sr)、チタン(Ti)、ニオブ(Nb)、又はシリコン(Si)の酸化膜に制御性良く均一に不純物を添加する場合にも、本発明の成膜方法を適用することができる。
【符号の説明】
【0113】
1・・・成膜装置
2・・・回転テーブル
4・・・凸状部
11・・・天板
12・・・容器本体
15・・・搬送口
24・・・凹部(基板載置部)
31,32・・・反応ガスノズル
41,42・・・分離ガスノズル
P1・・・第1の処理領域
P2・・・第2の処理領域
H・・・分離区間
W,S1,S2,S3,S4,S5・・・基板(例えばウエハ、半導体ウエハ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8