特許第5886952号(P5886952)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5886952個々に能動的に支持されたコンポーネントを有する光学結像装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5886952
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月16日
(54)【発明の名称】個々に能動的に支持されたコンポーネントを有する光学結像装置
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20160303BHJP
   G02B 7/182 20060101ALI20160303BHJP
   G02B 17/06 20060101ALI20160303BHJP
【FI】
   G03F7/20 503
   G03F7/20 521
   G02B7/182
   G02B17/06
【請求項の数】55
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2014-517472(P2014-517472)
(86)(22)【出願日】2011年7月1日
(65)【公表番号】特表2014-521204(P2014-521204A)
(43)【公表日】2014年8月25日
(86)【国際出願番号】EP2011061157
(87)【国際公開番号】WO2013004278
(87)【国際公開日】20130110
【審査請求日】2014年6月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】503263355
【氏名又は名称】カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100147692
【弁理士】
【氏名又は名称】下地 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100132045
【弁理士】
【氏名又は名称】坪内 伸
(72)【発明者】
【氏名】イム ブン パトリック クワン
【審査官】 佐野 浩樹
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−543070(JP,A)
【文献】 特開2004−343075(JP,A)
【文献】 特開2004−343078(JP,A)
【文献】 特開2008−311647(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/128713(WO,A2)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0174876(US,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第02128700(EP,A1)
【文献】 特開2010−263230(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/00 、 7/18 − 7/24 、
9/00 −17/08 、21/02 −21/04 、
25/00 −25/04 、
G03F 7/20 − 7/24 、 9/00 − 9/02 、
H01L21/027、21/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学投影ユニットと制御装置とを備える光学結像装置であって、
前記光学投影ユニットは、支持構造体と、露光工程において露光光を使用して露光経路に沿って、マスクユニットのパターン像を基板ユニットの基板に転写するようになされた光学素子ユニット群とを有し;
前記光学素子ユニット群は第1光学素子ユニットと複数の第2光学素子ユニットとを有し;
前記第1光学素子ユニットと前記第2光学素子ユニットとは、前記制御装置による制御下で、前記支持構造体によって能動的に支持され;
前記第1光学素子ユニットは低い第1制御帯域幅で能動的に支持され、これにより、前記光学投影ユニットの計測構造体に対する前記第1光学素子ユニットのドリフト制御が実現され
前記第2光学素子ユニットは、第2制御帯域幅で能動的に支持され、前記第2光学素子の各々の前記第1光学素子ユニットに対する所定の空間関係を実質的に維持され、前記第2光学素子の各々は、前記光学素子ユニット群の慣性基準を形成する前記第1光学素子に対して能動的に配置される、光学結像装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光学結像装置において、
前記第1制御帯域幅の範囲は5Hz〜100Hzである;
前記第2制御帯域幅は前記第1制御帯域幅と少なくとも等しく、20Hz〜400Hzの範囲である;
前記第2光学素子ユニットの内の少なくとも2つで、前記第2制御帯域幅が異なる、
の内の少なくとも一つである、光学結像装置。
【請求項3】
請求項1に記載の光学結像装置において、
前記第1光学素子ユニットは、能動第1支持ユニットを介して、前記支持構造体により、支持され;
前記第2光学素子ユニットの各々は、能動第2支持ユニットを介して、前記支持構造体により、支持され;
前記第1支持ユニットは、5Hz〜100Hzの第1調整周波数帯域幅で、少なくとも一つの自由度において、前記第1光学素子ユニットの第1光学素子の配向及び位置の内の少なくとも一つを調整するようになされ;
前記第2支持ユニットの各々は、前記第1調整周波数帯域幅と少なくとも等しく、5Hz〜400Hzの範囲の第2調整周波数帯域幅で、少なくとも一つの自由度において、付随する第2光学素子ユニットの第2光学素子の配向及び位置の内の少なくとも一つを調整するようになされた、光学結像装置。
【請求項4】
請求項3に記載の光学結像装置において、
前記第1光学素子の前記配向及び位置は、全6つの自由度で調整される;
前記第1調整周波数帯域幅は40Hz〜100Hzの範囲である;
前記第2光学素子の内の少なくとも一つの前記配向及び位置は、全6つの自由度で調整される;
前記第2調整周波数帯域幅は100Hz〜300Hzの範囲である、
の内の少なくとも一つである、光学結像装置。
【請求項5】
請求項1に記載の光学結像装置において、
前記光学素子ユニット群の前記光学素子ユニットの各々は共振周波数を呈し、前記第1光学素子ユニットは、前記光学素子ユニット群の前記光学素子ユニットの中で最小共振周波数を呈する;
前記光学素子ユニット群の前記光学素子ユニットの各々は光学設置面積を呈し、前記第1光学素子ユニットは前記光学素子ユニット群の前記光学素子ユニットの中で最大光学設置面積を呈する;
前記第1光学素子ユニットは、前記光路に沿った、前記像を前記基板に転写する際に前記露光が最後に当たる、前記光学投影ユニットの究極の光学素子ユニットである、
の内の少なくとも一つである、光学結像装置。
【請求項6】
請求項3に記載の光学結像装置において、
前記能動支持デバイスの内の少なくとも一つは、アクチュエータデバイス及び重力補償デバイスの内の少なくとも一つを有し;
前記アクチュエータデバイスは、前記光学素子ユニットの光学素子の配向及び位置の内の少なくとも一つを能動的に調整するようになされ;
前記重力補償デバイスは、前記光学素子ユニットに作用する重力の少なくとも一部を補償するようになされた、光学結像装置。
【請求項7】
請求項に記載の光学結像装置において、前記アクチュエータデバイス及び前記重力補償デバイスの内の少なくとも一つは、非接触アクチュエータ、能動的磁気アクチュエータ、ローレンツアクチュエータ及び受動的重力補償装置の内の少なくとも一つを有する、光学結像装置。
【請求項8】
請求項1に記載の光学結像装置において、
計測装置が設けられ;
前記計測装置は、基準光学素子ユニットを形成する前記第1光学素子ユニットと、前記光学結像装置の少なくとも一つの更なるコンポーネントとの間の空間関係を捕捉し;
前記計測装置は基準素子を有し;
前記基準素子は前記基準光学素子ユニット及び前記更なるコンポーネントの内の一つに機械的に直接接続される、光学結像装置。
【請求項9】
請求項8に記載の光学結像装置において、前記基準素子は基準面を有し、該基準面は、反射面及び回折面の内の少なくとも一つである、光学結像装置。
【請求項10】
請求項8に記載の光学結像装置において、
前記計測装置は、前記基準光学素子ユニットと、前記光学素子ユニット群の更なる光学素子ユニット、前記パターンを受けるマスクユニット、及び前記基板を受ける基板ユニットの内の少なくとも一つとの間の空間関係を捕捉する;
前記第1光学素子ユニットは前記第1制御帯域幅に能動的に支持され、前記第1光学素子ユニットの前記計測装置の計測構造体に対する所定の空間関係が実質的に維持される、
の内の少なくとも一つである、光学結像装置。
【請求項11】
請求項8に記載の光学結像装置において、
前記計測装置は計測構造体を有し;
前記計測装置は、前記計測構造体と前記基準光学素子ユニットとの間の第1空間関係と、前記計測構造体と前記更なるコンポーネントとの間の第2空間関係とを捕捉し;
前記計測装置は、前記第1空間関係と前記第2空間関係とを使用して、前記基準光学素子ユニットと前記更なるコンポーネントとの間の前記空間関係を決定する、光学結像装置。
【請求項12】
請求項1に記載の光学結像装置において、前記光学投影ユニットは、波長5nm〜20nmにおけるEUV範囲の露光光を使用する、光学結像装置。
【請求項13】
請求項1に記載の光学結像装置において、
計測装置が設けられ;
前記計測装置は、少なくとも一つの自由度において、基準ユニットと前記光学素子ユニット群の付随する光学素子ユニットとの間の空間関係を捕捉し;
前記計測装置は基準素子を有し;
前記基準素子は基準素子の位置で、前記付随する光学素子ユニットに機械的に直接接続され;
前記基準素子の位置の選択は前記付随する光学素子ユニットの空間境界条件によって制限され;
前記付随する光学素子ユニットは共振周波数の変形振動モードを有し;
前記光学素子ユニットは、前記振動モードで、前記少なくとも一つの自由度において変形励起運動を呈し、前記少なくとも一つの自由度において最小運動を呈する少なくとも一つの節点を有し;
前記光学素子ユニットの幾何学的形状、質量分布及び剛性分布の内の少なくとも一つは、前記基準素子の位置に応じて、前記基準素子の位置が前記節点の少なくとも近くに位置するように選択される、光学結像装置。
【請求項14】
請求項13に記載の光学結像装置において、
前記基準素子の位置は、前記光学素子ユニットの主要拡張面において、前記節点から節点距離に位置し;
記節点距離は、前記露光工程において、前記主要拡張面で光学的に使用される前記光学素子ユニットの光学面の最大寸法の10%以下である、光学結像装置。
【請求項15】
請求項13に記載の光学結像装置において、
前記光学素子ユニット、前記露光経路及び隣接するコンポーネントの内の少なくとも一つは、前記光学素子ユニットの第1領域を画定し、前記空間境界条件は前記基準素子の設置を含まず;
前記光学素子ユニットと前記隣接するコンポーネントの内の少なくとも一つは、前記基準素子が位置する前記光学素子ユニットの第2領域を画定し;
前記光学素子ユニットの幾何学的形状、質量分布及び剛性分布の内の少なくとも一つは、前記基準素子の位置に応じて、前記第2領域が前記節点を有するように選択される、光学結像装置。
【請求項16】
請求項13に記載の光学結像装置において、
前記光学素子ユニットは主要拡張面を画定し、前記露光工程で使用される光学面を有し;
前記光学面は前記主要拡張面に実質的に平行して延在する半径方向を画定する光学面外輪郭を有し、
前記基準素子は前記光学素子ユニットの半径方向の凹部の領域に位置する、光学結像装置。
【請求項17】
請求項16に記載の光学結像装置において、前記半径方向の凹部は、前記半径方向において、前記光学面の下に到達する、光学結像装置。
【請求項18】
請求項16に記載の光学結像装置において、
前記光学素子ユニットは複数の支持インターフェース領域を有し、該光学素子ユニットは該支持インターフェース領域を介して排他的に支持され;
前記半径方向の凹部は、前記光学素子ユニットの円周方向において、2つの連続する支持インターフェース領域に位置する、光学結像装置。
【請求項19】
請求項18に記載の光学結像装置において、前記連続する支持インターフェース領域 の内の少なくとも一つは前記光学素子ユニットから前記半径方向に突出する、光学結像装置。
【請求項20】
請求項13に記載の光学結像装置において、
前記光学素子ユニットは主要拡張面を画定する細長いユニットであり;
前記光学素子ユニットは長い外輪郭部と短い外輪郭部とを有し;
前記長い外輪郭部は、前記主要拡張面において第1の方向に延在し;
前記短い外輪郭部は、前記主要拡張面において第2の方向に延在し、該第2の方向は前記第1の方向に交差して延在し;
前記基準素子は前記短い外輪郭部の領域に位置する、光学結像装置。
【請求項21】
請求項20に記載の光学結像装置において、
前記長い外輪郭部は、前記第1の方向において、長い第1寸法を有し;
前記短い外輪郭部は、前記第2の方向において、短い第2寸法を有し;
前記長い第1寸法は前記短い第2寸法の少なくとも140%である、光学結像装置。
【請求項22】
請求項20に記載の光学結像装置において、
前記光学素子ユニットは複数の支持インターフェース領域を有し、該光学素子ユニットは該支持インターフェース領域を介して排他的に支持され;
前記支持インターフェース領域の少なくとも2つは、前記短い外輪郭部の領域に位置する、光学結像装置。
【請求項23】
請求項20に記載の光学結像装置において、前記光学素子ユニットは、前記主要拡張面において、一般的に長方形の外輪郭及び一般的に楕円形の外輪郭の内の一つを画定する、光学結像装置。
【請求項24】
請求項13に記載の光学結像装置において、
前記計測装置はエンコーダデバイスを有し、
前記エンコーダデバイスは前記基準素子の基準構造体を使用して、前記少なくとも一つの自由度において前記空間関係を捕捉する、光学結像装置。
【請求項25】
請求項13に記載の光学結像装置において、
前記基準素子の位置は、前記光学素子ユニットの主要拡張面において、前記露光工程で光学的に使用される前記光学素子ユニットの光学面の外輪郭の半径方向外側の基準素子距離にあり、
前記基準素子距離は、前記主要拡張面における前記光学面の最大寸法の20%以下の距離である、光学結像装置。
【請求項26】
請求項15に記載の光学結像装置において、
前記光学素子ユニットは主要拡張面を画定し、前記露光工程で使用される光学面を有し;
前記光学面は半径方向を画定する光学面外輪郭を有し;
前記基準素子の位置は、前記主要拡張面において、前記光学面外輪郭の半径方向外側の基準素子距離であり;
前記光学素子ユニットの幾何学的形状、質量分布及び剛性分布の内の少なくとも一つは、前記少なくとも一つの節点が前記第2領域内に位置するように選択される、光学結像装置。
【請求項27】
請求項1に記載の光学結像装置において、
計測装置が設けられ;
前記計測装置は、前記光学素子ユニット群の光学素子ユニットと前記光学結像装置の基準ユニットとの間の空間関係を捕捉し;
前記制御装置は前記計測装置に接続され、前記光学素子ユニットと前記基準ユニットとの間の前記空間関係を表す信号を受信し;
前記制御装置は、前記計測装置から受信した前記信号に応じて、前記パターン像を前記基板へ転写する際に、前記光学結像装置のコンポーネントの位置及び配向の内の少なくとも一つを制御する、光学結像装置。
【請求項28】
請求項27に記載の光学結像装置において、
前記制御装置は、少なくとも一つの自由度において、補正調整周波数帯域幅で、前記計測装置から受信した前記信号に応じて、露光工程において、前記パターン像を前記基板に転写する際に、補正光学ユニットの光学コンポーネントの位置及び配向の内の少なくとも一つを制御して、前記露光工程の結像エラーを補正し、前記補正光学ユニットは、前記第2光学素子ユニット、前記マスクユニット及び前記基板ユニットの内の一つであり、
前記補正調整周波数帯域幅は、200Hz〜500Hzの範囲である;
前記光学素子ユニット群の前記光学素子ユニットの各々は共振周波数を呈し、前記補正光学素子ユニットは、前記光学素子ユニット群の前記光学素子ユニットの中で最大共振周波数を呈する;
前記光学素子ユニット群の前記光学素子ユニットの各々は、光学設置面積を呈し、前記補正光学素子ユニットは、前記光学素子ユニット群の前記光学素子ユニットの中で最小光学設置面積を呈する
内の少なくとも一つである、光学結像装置。
【請求項29】
請求項1に記載の光学結像装置において、前記光学素子ユニット群は4〜8個の光学素子ユニットから成る、光学結像装置。
【請求項30】
請求項1に記載の光学結像装置において、
前記マスクユニットは第3制御帯域幅で、支持構造体によって能動的に支持及び調整され、前記基板ユニットは第4制御帯域幅で、支持構造体によって能動的に支持及び調整される;
前記マスクユニット及び前記基板ユニットの各々は能動的に調整され、前記第1光学素子ユニットに対する所定の空間関係が実質的に維持される;
前記第3制御帯域幅及び前記第4制御帯域幅の各々は前記第1制御帯域幅と少なくとも等しく、20Hz〜500Hzの範囲である、
の内の少なくとも一つである、光学結像装置。
【請求項31】
光学投影ユニットと計測装置とを備える光学結像装置であって、
前記光学投影ユニットは、支持構造体と、露光工程において露光光を使用して露光経路に沿って、パターン像を基板に転写するようになされた光学素子ユニット群とを有し;
前記光学素子ユニット群は複数の光学素子ユニットを有し;
前記計測装置は、少なくとも一つの自由度において、基準ユニットと前記光学素子ユニット群に付随する光学素子ユニットとの間の空間関係を捕捉し;
前記計測装置は基準素子を有し;
前記基準素子は、基準素子の位置で、前記付随する光学素子ユニットに機械的に直接接続され;
前記基準素子の位置の選択は、前記付随する光学素子ユニットの空間境界条件によって制限され;
前記付随する光学素子ユニットは、共振周波数の変形振動モードを有し;
前記光学素子ユニットは、前記振動モードにおいて、前記少なくとも一つの自由度において変形励起運動を呈し、前記少なくとも一つの自由度において最小運動を呈する少なくとも一つの節点を有し;
前記光学素子ユニットの幾何学的形状、質量分布及び剛性分布の内の少なくとも一つは、前記基準素子の位置に応じて、前記基準素子の位置が前記節点に少なくとも近接して位置するように選択される、光学結像装置。
【請求項32】
請求項31に記載の光学結像装置において、
前記基準素子の位置は、前記光学素子ユニットの主要拡張面において、前記節点から節点距離に位置し;
前記節点距離は、前記主要拡張面における前記光学面の最大寸法の10%以下の距離である、光学結像装置。
【請求項33】
請求項31に記載の光学結像装置において、
前記光学素子ユニット、前記露光経路及び隣接するコンポーネントの内の少なくとも一つは前記光学素子ユニットの第1領域を画定し、前記空間境界条件は前記基準素子の設置を含まず;
前記光学素子ユニットと前記隣接するコンポーネントの内の少なくとも一つは、前記基準素子が位置する前記光学素子ユニットの第2領域を画定し;
前記光学素子ユニットの幾何学的形状、質量分布及び剛性分布の内の少なくとも一つは、前記基準素子の位置に応じて、前記第2御領域が前記節点を有するように選択される、光学結像装置。
【請求項34】
請求項31に記載の光学結像装置において、
前記光学素子ユニットは主要拡張面を画定し、前記露光工程で使用される光学面を有し;
前記光学面は前記主要拡張面に実質的に平行に延在する、半径方向を画定する光学面外輪郭を有し;
前記基準素子の位置は前記光学素子ユニットの半径方向の凹部の領域にある、光学結像装置。
【請求項35】
請求項34に記載の光学結像装置において、
前記半径方向の凹部は、前記半径方向において、前記光学面の下に到達する;
前記光学素子ユニットは複数の支持インターフェース領域を有し、前記光学素子ユニットは、前記支持インターフェース領域を介して排他的に支持される;
前記半径方向の凹部は、前記光学素子ユニットの円周方向において、2つの連続する支持インターフェース領域の間にある、
の内の少なくとも一つである、光学結像装置。
【請求項36】
請求項35に記載の光学結像装置において、前記連続する支持インターフェース領域の内の少なくとも一つは、前記光学素子ユニットから前記半径方向に突出する、光学結像装置。
【請求項37】
請求項31に記載の光学結像装置において、
前記光学素子ユニットは主要拡張面を画定する細長いユニットであり;
前記光学素子ユニットは長い外輪郭部と短い外輪郭部とを有し;
前記長い外輪郭部は、前記主要拡張面において、第1の方向に沿って延在し;
前記短い外輪郭部は、前記主要拡張面において、第2の方向に沿って延在し、該第2の方向は前記第1の方向に交差して延在し;
前記基準素子は前記短い外輪郭部の領域にある、光学結像装置。
【請求項38】
請求項37に記載の光学結像装置において、
前記長い外輪郭部は、前記第1の方向において、長い第1寸法を有し;
前記短い外輪郭部は、前記第2の方向において、短い第2寸法を有し;
前記長い第1寸法は前記短い第2寸法の少なくとも140%である、光学結像装置。
【請求項39】
請求項37に記載の光学結像装置において、
前記光学素子ユニットは複数の支持インターフェース領域を有し、該光学素子ユニットは該支持インターフェース領域を介して排他的に支持され;
前記支持インターフェース領域の少なくとも2つは、前記短い外輪郭部の領域にある、光学結像装置。
【請求項40】
請求項37に記載の光学結像装置において、前記光学素子ユニットは、前記主要拡張面において、一般的に長方形の外輪郭及び一般的に楕円形の外輪郭の内の一つを画定する、光学結像装置。
【請求項41】
請求項31に記載の光学結像装置において、
前記計測装置はエンコーダデバイスを有し;
前記エンコーダデバイスは前記基準素子の基準構造体を使用して、前記少なくとも一つの自由度において前記空間関係を捕捉する、光学結像装置。
【請求項42】
請求項31に記載の光学結像装置において、
前記基準素子の位置は、前記光学素子ユニットの主要拡張面において、前記露光工程で光学的に使用される前記光学素子ユニットの光学面における外輪郭の半径方向外側に、基準素子距離で位置し;
前記基準素子距離は、前記主要拡張面における前記光学面の最大寸法の20%以下である、光学結像装置。
【請求項43】
請求項33に記載の光学結像装置において、
前記光学素子ユニットは主要拡張面を画定し、前記露光工程で使用される光学面を有し;
前記光学面は半径方向を画定する光学面外輪郭を有し;
前記基準素子の位置は、前記主要拡張面において、前記光学面外輪郭の半径方向外側に基準素子距離で位置し;
前記光学素子ユニットの幾何学的形状、質量分布及び剛性分布の内の少なくとも一つが、前記基準素子の位置に応じて、前記少なくとも一つの節点が前記第2領域内に位置するように選択される、光学結像装置。
【請求項44】
請求項31に記載の光学結像装置において、
制御ユニットが設けられ;
前記制御ユニットは前記計測装置に接続され、前記光学素子ユニットと前記基準素子との間の前記空間関係を表す信号を受信し;
前記制御ユニットは、前記計測装置から受信した信号に応じて、前記パターン像を前記基板上に転写する際、前記光学結像装置のコンポーネントの位置及び配向の内の少なくとも一つを制御する、光学結像装置。
【請求項45】
光学投影ユニットのコンポーネントを支持する方法であって、
支持構造体を設けるステップと;
第1光学素子ユニットと複数の第2光学素子ユニットとを有する光学素子ユニット群を設けるステップと;
前記光学素子ユニットの各々を、前記支持構造体を介して、個々に能動的に支持し、前記光学素子ユニット群が露光工程において、マスクユニットのパターン像を基板ユニットに転写する光学系を形成するステップと、を含み、
前記第1光学素子ユニットを低い第1制御帯域幅で能動的に支持し;
前記第2光学素子ユニットを第2制御帯域幅で能動的に支持し、前記第2光学素子の各々の前記第1光学素子ユニットに対する所定の空間関係を実質的に維持し、
前記第2光学素子の各々は、前記光学素子ユニット群の慣性基準を形成する前記第1光学素子に対して能動的に配置され、
前記第1光学素子ユニットは低い制御帯域幅で能動的に支持され、これにより、前記光学投影ユニットの計測構造体に対する前記第1光学素子ユニットのドリフト制御が実現される方法。
【請求項46】
請求項45に記載の方法において、前記光学素子ユニット群は4〜8個の光学素子ユニットを有する方法。
【請求項47】
請求項45に記載の方法において、前記マスクユニット及び前記基板ユニットの内の少なくとも一つを支持構造体によって能動的に支持し、前記第1光学素子ユニットに対する所定の空間関係を実質的に維持する方法。
【請求項48】
光学結像装置の光学素子ユニットと基準ユニットとの間の空間関係を捕捉する方法であって、
露光工程において、パターン像を基板に転写するようになされ、共振周波数での変形振動モードを有する少なくとも一つの光学素子ユニットを有する、光学素子ユニット群を設けるステップであって、前記光学素子ユニットは、前記振動モードで、少なくとも一つの自由度において変形励起運動を呈し、前記少なくとも一つの自由度において最小運動を呈する少なくとも一つの節点を有するステップと;
基準素子を有する計測装置を設けるステップと;
前記基準素子を前記少なくとも一つの光学素子ユニットに、基準素子の位置で機械的に直接接続するステップであって、前記基準素子の位置の選択は、前記付随する光学素子ユニットの空間境界条件によって制限されるステップと;
前記計測装置を介して、前記少なくとも一つの自由度において、基準ユニットと前記少なくとも一つの光学素子ユニットとの間の空間関係を捕捉するステップと
を含み、
前記光学素子ユニット群を設けるステップは、前記少なくとも一つの光学素子ユニットの幾何学的形状、質量分布及び剛性分布の内の少なくとも一つを、前記基準素子の位置に応じて、前記基準素子の位置が前記節点に少なくとも近接して位置するように選択する方法。
【請求項49】
パターン像を基板に転写する方法において、
転写ステップにおいて、光学結像装置を使用して前記パターン像を前記基板に転写するステップと;
前記転写ステップの捕捉ステップにおいて、請求項45に記載の方法を使用して、光学結像装置の光学素子ユニットと基準ユニットとの間の空間関係を捕捉するステップと;
前記転写ステップの制御ステップにおいて、前記光学結像装置の少なくとも一つのコンポーネントの位置及び配向の内の少なくとも一つを、前記捕捉ステップにおける前記空間関係に応じて制御するステップとを含む方法。
【請求項50】
光学投影ユニットを有する光学結像装置であって、
前記光学投影ユニットは、支持構造体と、露光工程において露光光を使用して露光経路に沿って、マスクユニットのパターン像を基板ユニットの基板に転写するようになされた光学素子ユニット群とを有し;
前記光学素子ユニット群は、第1光学素子ユニットと複数の第2光学素子ユニットとを有し;
前記第1光学素子ユニット、前記第2光学素子ユニット、前記マスクユニット及び前記基板ユニットは、前記制御装置の制御下において、前記支持構造体によって能動的に支持され;
前記第1光学素子ユニットは低い第1制御帯域幅で能動的に支持され、これにより、前記光学投影ユニットの計測構造体に対する前記第1光学素子ユニットのドリフト制御が実現され;
前記第2光学素子ユニットは第2制御帯域幅で能動的に支持され、前記第2光学素子の各々の前記第1光学素子ユニットに対する所定の空間関係が実質的に維持され、前記第2光学素子の各々は、前記光学素子ユニット群の慣性基準を形成する前記第1光学素子に対して能動的に配置され
前記マスクユニットは第3制御帯域幅で能動的に支持され、前記マスクユニットの前記第1光学素子ユニットに対する所定の空間関係が実質的に維持され;
前記基板ユニットは第3制御帯域幅で能動的に支持され、前記基板ユニットの前記第1光学素子ユニットに対す所定の空間関係が実質的に維持される、光学結像装置。
【請求項51】
光学投影ユニットと制御装置とを備える光学結像装置であって、
前記光学投影ユニットは、支持構造体と、露光工程において露光光を使用して露光経路に沿って、マスクユニットのパターン像を基板ユニットの基板に転写するようになされた光学素子ユニット群とを有し;
前記光学素子ユニット群は第1光学素子ユニットと複数の第2光学素子ユニットとを有し;
前記第1光学素子ユニットと前記第2光学素子ユニットとは、前記制御装置による制御下で、前記支持構造体によって能動的に支持され;
前記第1光学素子ユニットは第1制御帯域幅で能動的に支持され、これにより、前記光学投影ユニットの計測構造体に対する前記第1光学素子ユニットのドリフト制御が実現され
前記マスクユニットは第2制御帯域幅で能動的に支持され、及び/又は前記基板ユニットは第3制御帯域幅で能動的に支持され、前記マスクユニット及び/又は前記基板ユニットの前記第1光学素子ユニットに対する所定の空間関係が実質的に維持され
前記マスクユニット及び/又は前記基板ユニットは前記光学素子ユニット群の慣性基準を形成する前記第1光学素子に対して能動的に配置される、光学結像装置。
【請求項52】
前記第1光学素子ユニットは、前記第2光学素子ユニットの各々よりも大きく及び/又は重い、請求項1又は50に記載の光学結像装置。
【請求項53】
前記第2光学素子ユニットの各々は、前記第1制御帯域幅よりも高い前記第2制御帯域幅で能動的に支持される、請求項1又は50に記載の光学結像装置。
【請求項54】
前記第1光学素子ユニットは、前記第2光学素子ユニットの各々よりも大きく及び/又は重い、請求項45に記載の方法。
【請求項55】
前記第2光学素子ユニットの各々を、前記第1制御帯域幅よりも高い前記第2制御帯域幅で能動的に支持する、請求項45に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光工程で使用される光学結像装置、特にマイクロリソグラフィシステムの光学結像装置に関する。本発明は更に、光学結像装置のコンポーネント間の空間関係を捕捉する方法に関する。また、本発明は、パターン像を基板に転写する方法に関する。更に本発明は、光学投影ユニットのコンポーネントを支持する方法に関する。本発明は、マイクロ電子デバイス、特に半導体デバイスを製造するフォトリソグラフィ工程、又はこのようなフォトリソグラフィ工程において使用されるマスク又はレチクルなどのデバイスの製造において使用することができる。
【背景技術】
【0002】
典型的に、半導体デバイスなどのマイクロ電子デバイスの製造において使用される光学系は、光学系の光路内に配置される、レンズやミラーなどの光学素子を有する複数の光学素子ユニットを備えている。これらの光学素子は通常露光工程において協働し、マスク、レチクルなどに形成されたパターン像をウエハなどの基板に転写する。これらの光学素子は通常、一つ又は複数の機能的に異なる光学素子の群に組み込まれる。これらの種々の光学素子の群は、種々の露光ユニットによって保持することができる。特に、主に屈折系において、このような光学露光ユニットはしばしば、一つ又は複数の光学素子を保持する光学素子モジュールのスタックから構成される。通常これらの光学素子モジュールは、外部に略リング状の支持デバイスを有しており、このデバイスは一つ又は複数の、各々が光学素子を保持する光学素子ホルダを支持する。
【0003】
レンズなどの少なくとも主に屈折性光学素子を有する光学素子群は、大抵、通常光軸と称される、光学素子の直線の共通対称軸を有している。更にこのような光学素子群を保持する光学露光ユニットは、大抵細長くほぼ管状に設計されているため、典型的に鏡筒とも称される。
【0004】
半導体デバイスの小型化が進んでいるため、これらの半導体デバイスの製造に使用される光学系の分解能を高める必要性が常にある。このような分解能を高める必要性は、光学系の開口数(NA)や結像精度を増大させる必要性を明らかに高める。
【0005】
分解能を高めるための手法として、露光工程で使用される光の波長の短縮がある。近年、5nm〜20nm、典型的には約13nmの波長を使用する、極紫外線(EUV)範囲の光を使用する手法がとられている。このEUV範囲においては、一般の屈折光学はもはや使用できない。これは、このEUV範囲において、一般に屈折性光学素子に使用される材料が、質の高い露光結果を得るには高すぎる吸収度を示すという事実によるものである。従ってEUV範囲では、ミラーなどの反射素子を有する反射系を露光工程で使用し、マスクに形成されたパターン像をウエハなどの基板に転写する。
【0006】
EUV範囲における、高開口数(例えばNA>0.4〜0.5)反射系の使用への移行は、光学結像装置の設計に関してかなりの難題をもたらす。
【0007】
極めて重要な精度要件の一つは、視線(LoS)精度とも称される、基板上における画像の位置精度である。視線精度は典型的に開口数の略逆数に比例する。従って視線精度は、開口数NA=0.45の光学結像装置の方が、開口数NA=0.33の光学結像装置よりも1.4倍小さい。典型的に、視線精度は、開口数NA=0.45の場合、0.5nm以下である。露光工程においてダブルパターニングも可能である場合、一般に精度を更に1.4倍下げなければならないだろう。従ってこの場合、視線精度は0.3nm以下にさえもなるだろう。
【0008】
特に上述のことは、露光工程に関わるコンポーネント間の相対位置に関して、非常に厳しい条件をもたらす。更に、高品質の半導体デバイスを確実に得るには結像精度の高い光学系を設けさえすればよいというわけではない。このような高い精度は、露光工程全体及び光学系の寿命にわたって維持することも必要である。結果として、光学結像装置のコンポーネント、すなわち、例えば露光工程において協働するマスク、光学素子及びウエハを規定の方法で支持し、これらの光学結像装置のコンポーネント間における所定の空間関係を維持して、高品質の露光工程を提供しなければならない。
【0009】
光学結像装置を支持する接地構造体、及び/又は光学結像装置を囲む大気を介して導入される振動による影響下、並びに熱的に誘導される位置変化の影響下であっても、光学結像装置のコンポーネント間の所定の空間関係を全露光工程において維持するには、光学結像装置の特定のコンポーネント間の空間関係を少なくとも断続的に捕捉し、光学結像装置の少なくとも一つの位置をこの捕捉工程の結果に応じて調整する必要がある。
【0010】
一方で開口数の増加は、典型的に、光学素子の光学設置面積とも称される、使用される光学素子のサイズの増大をもたらす。使用される光学素子の光学設置面積の増大は、それらの動力学的性質及び上述の調整を達成するために使用される制御系に悪影響を及ぼす。更に、光学設置面積の増大は、典型的に、光線入射角の増大をもたらす。しかしながら、そのように増大した大きな光線入射角においては、光学素子の反射面の生成に典型的に使用される多層コーティングの透過率が大幅に低下し、光パワーの望ましくない損失と、吸収による光学素子の加熱の増大が明らかにもたらされる。その結果、更に大きな光学素子を使用して、商用的に許容可能なスケールでこのような結像を可能にしなければならない。このような環境は、最高で1m×1mの光学設置面積を有し、60mm以下の相互間隔で非常に近接して配置される、比較的大きな光学素子を備えた光学結像装置をもたらす。
【0011】
このような状況からいくつかの問題が生じる。先ず、光学素子のいわゆるアスペクト比(すなわち、厚さと直径の比率)に関係なく、大きな光学素子は一般に低い共振周波数を呈する。一方で、例えば、光学設置面積150mm(直径)及び厚さ25mmのミラーの共振周波数は典型的に4000Hzであり、光学設置面積700mmのミラーは、典型的には、厚さ200mmであっても1500Hz以上の共振周波数に達することはほとんどない。更に、光学素子のサイズと重量の増大は、世界中の様々な場所で重力定数が異なることによる、静的変形の増大も意味しており、補正されない場合は結像性能が損なわれる。
【0012】
最大剛性(すなわち、支持系の最大化された共振周波数)で光学素子を支持しようとする従来の支持系では、光学素子自体の低共振周波数が調整制御帯域幅を低減させることとなり、これによって位置精度が低下する。
【0013】
更に考慮すべき問題は、像シフトに対する物体の距離(すなわち、マスク上の物点と基板上の像点との間の光路に沿った距離)を小さく保つために、光学素子をできるだけ近付けて配置しなければならないという事実である、というのも、像シフトに対して大きな物体は、大型構造、動力学的性質の低下及び熱膨張効果の増大により、精度の問題を明らかに悪化させるからである。
【0014】
これらの空間境界の条件は、設計の自由、特にこのような光学素子のアクチュエータやセンサを動的に好適な位置に設置する自由を大幅に制限する。この状況は低共振周波数と同じ、ましてやそれ以上に問題であることが分かる。より正確には、典型的に、2000Hz以下の共振周波数及び好ましくないセンサ位置の光学素子は、100Hz以上の制御帯域幅にはほとんど到達しないが、好ましいセンサの配置が可能である光学素子には、典型的に、商業的に許容される用途においては250Hzが必要であると考えられている。
【0015】
更に、像シフトにとって大きな物体となる大きな光学素子は、究極的に、光学系にとって大きく、そして剛性の低い支持構造体をもたらす。このような剛性の低い支持構造体は、調整制御性能を更に制限するだけでなく、残りの低周波数振動外乱によって生じる準静的変形による残差の一因となる。
【0016】
そして、使用する光学素子に対する(光エネルギーの吸収による)熱負荷の増大、及びこのようなシステムに望まれるスループットの増大により、より多くの冷却作業が必要となり、特に、使用する冷却液の流量を高める必要性が生じる。このような冷却液の流量の増大は、システムに導入される振動外乱を増大させる傾向にあり、よって、視線精度の低下をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
従って本発明の課題は、少なくともある程度上記の欠点を克服し、露光工程で使用される光学結像装置の良好かつ長期にわたって確実な結像特性を提供することである。
【0018】
本発明の更なる課題は、光学結像装置に必要な作業を減らし、一方で、露光工程で使用される光学結像装置の結像精度を維持することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
これらの課題は、本発明に係る一態様によれば、以下の技術的教示に基づいて達成される。この技術的教示は、光学結像装置の結像精度を少なくとも維持しながら光学結像装置に必要な作業を全体的に削減することは、(個々の光学素子ユニットの安定した、正確な全地球測位を行うために)光学素子ユニットの個々の支持をできる限り厳密に行うとう従来の支持方法が、修正概念によって不要となるのであれば達成できるというものである。この修正概念によれば、光学素子ユニットの第1ユニット、典型的には必要とされる高い制御帯域幅の到達にとって最も深刻な問題となる、最も大きくて重いユニットを低帯域(この帯域において、この光学素子ユニットに対する制御を容易に実現することができる)で制御して能動的に支持し、少なくとも一方で、光学系の少なくともその他の第2光学素子ユニットは第1光学素子ユニットの動きに追従し、光学系の少なくとも全ての光学素子ユニットの第1光学素子ユニットに対する、そして相互間の、十分に安定した正確な空間関係を維持する。
【0020】
好適には、露光工程に関わるいくつかの、又は全ての更なるコンポーネント、特にマスクユニット及び基板ユニットは、同様に第1光学素子ユニットの動きに追従し、これらのコンポーネントの第1光学素子ユニットに対する、十分に安定した正確な空間関係を維持する。
【0021】
尚、能動的支持とは、本発明において、それぞれの光学素子ユニットが、少なくとも一つの自由度において、所定の制御帯域幅で、光学素子ユニットの位置及び/又は配向を能動的に調整する(例えば、対応する制御ユニットの制御下において)能動コンポーネント又はユニットを介して支持される、支持概念のことである。
【0022】
更に、重要な第1光学素子ユニットの能動的な低制御帯域幅での支持は、(例えば、1Hz以下の共振周波数を有する)第1光学素子ユニットの防振支持に関する更なる概念と比較した場合、第1光学素子ユニットの低帯域幅制御は、第1光学素子ユニットと計測構造体との間の空間関係を捕捉する計測系の計測構造体の動きに、第1光学素子ユニットが追従できるようになるという利点がある。この手段により、第1光学素子ユニットと計測構造体との間の過剰な相対運動が、計測系の捕捉デバイスの捕捉範囲を超える、あるいは換言すれば、センサ範囲の問題を大変有益な方法で回避することができる。
【0023】
その結果、典型的に、露光工程に関わる全てのコンポーネントが能動的に制御されなければならないという事実にかかわらず、最も重要な第1光学素子ユニットの制御帯域幅に対する要件は、高度に有益な方法で大きく緩和されることとなる。この肯定的な効果は、一般に、能動的な支持のために増加する費用よりも価値のあるものである。具体的には、このような大きな光学設置面積の第1光学素子ユニットを含む光学系の適切な調整制御が、大幅に容易化される(商業的に実行可能とまではならなくても)。
【0024】
従って、例えば、典型的に200Hz〜300Hzの調整制御帯域幅が使用され、そしてこれが個々の光学素子ユニットに必要であると考えられる従来のシステムと比較すると、本発明では、相当低い調整制御帯域幅、例えば5Hz〜100Hz、好適には40Hz〜100Hzを重要な第1光学素子ユニットに使用し、結像工程に関わる他のコンポーネント(すなわち、例えば更なる光学素子ユニット、マスクユニット及び基板ユニット)を従来所望されてきた高い調整制御帯域幅、例えば、200Hz〜300Hzで制御することができる。
【0025】
従って、重要な(典型的には大きい及び/又は重い)第1光学素子ユニットを、その他のコンポーネント(最大で他のコンポーネント全て)が測定、及び最終的には調整のために参照することのできる慣性基準として使用することができる。
【0026】
本発明において、光学素子ユニットはミラーなどの光学素子からのみ構成することができると理解されよう。しかしながら、このような光学素子ユニットは、光学素子などを保持するホルダなどのコンポーネントを更に有することができる。
【0027】
よって本発明の第1の態様によれば、光学投影ユニットと制御装置とを備える光学結像装置が提供される。光学投影ユニットは、支持構造体と、露光工程において露光光を使用して露光経路に沿って、マスクユニットのパターン像を基板ユニットの基板上に転写するようになされた、光学素子ユニット群とを有する。光学素子ユニット群は第1光学素子ユニットと複数の第2光学素子ユニットとを有し、これらの第1光学素子ユニット及び第2光学素子ユニットは、制御装置の制御下において、支持構造体によって能動的に支持される。第1光学素子ユニットは低い第1制御帯域幅で支持され、第2光学素子ユニットは第2制御帯域幅で能動的に支持され、各第2光学素子ユニットの第1光学素子ユニットに対する所定の空間関係が実質的に維持される。
【0028】
本発明の第2の態様によれば、光学投影ユニットのコンポーネントを支持する方法が提供される。本方法は、支持構造体を提供するステップと、第1光学素子ユニットと、光学素子ユニット群が露光工程において、マスクユニットのパターン像を基板ユニットの基板上に転写する光学系を形成するように、支持構造体を介して光学素子の各々を個別に能動的に支持する複数の第2光学素子ユニットとを有する光学素子ユニット群を提供するステップとを含む。第1光学素子ユニットは低い第1制御帯域幅で能動的に支持し、第2光学素子ユニットは、各第2光学素子の第1光学素子ユニットに対する所定の空間関係を実質的に維持するよう、第2制御帯域幅で能動的に支持する。
【0029】
本発明の第3の態様によれば、光学投影ユニットを備える光学結像装置が提供される。光学投影ユニットは、支持構造体と、露光工程において露光光を使用して露光経路に沿って、マスクユニットのパターン像を基板ユニットの基板に転写するようになされた光学素子ユニット群とを有している。光学素子ユニット群は第1光学素子ユニットと複数の第2光学素子ユニットとを有している。第1光学素子ユニット、第2光学素子ユニット、マスクユニット及び基板ユニットは、制御装置による制御下で、支持構造体によって能動的に支持されており、第1光学素子ユニットは低い第1制御帯域幅で能動的に支持され、第2光学素子ユニットは第2制御帯域幅で能動的に支持され、各第2光学素子の第1光学素子ユニットに対する所定の空間関係を実質的に維持し、マスクユニットは第3制御帯域幅で能動的に支持され、マスクユニットの第1光学素子ユニットに対する所定の空間関係を実質的に維持し、基板ユニットは第3制御帯域幅で能動的に支持され、基板ユニットの第1光学素子ユニットに対する所定の空間関係を実質的に維持する。
【0030】
上記の目的は本発明の更なる態様によっても達成される。この態様は、光学結像装置に必要な作業の全体的な削減を、光学結像装置の結像精度を少なくとも維持しつつ、光学結像装置の特定の光学素子ユニットの動的かつ計測的に好ましい設計によって達成することができるという技術的教示に基づくものである。
【0031】
より正確には、(光学素子ユニットと所定の基準との間の空間関係を捕捉する)計測装置のコンポーネントを設置するための、好ましくない空間境界条件下にある光学素子ユニットの設計は、光学素子ユニットの特定の振動モードで最小(典型的にはゼロ)の行程を経る節点など、光学素子ユニットの計測的に関連する点の位置を、計測装置のコンポーネントの設置に(所定の空間境界条件に従って)利用できる位置へとシフトするように修正できることがわかった。
【0032】
計測コンポーネントの設置に利用できる位置へのこのような節点のシフトは、これらの特別な振動モードでの光学素子ユニットの振動励起変形が、計測装置によって行われる、光学素子ユニットのいわゆる剛体運動の取得を意図する捕捉工程の結果に影響を与えない、又は少なくとも悪い影響が少ないという大きな利点がある。このような振動モードの変形をなくすことによる捕捉結果への影響は、調整制御工程の安定性を大きく改善する。
【0033】
例えば従来の手法において、光学素子の空間的配置に、比較的長くて狭い光学素子が必要となる場合があり、この場合は、(更なる光学素子を近接して設置するような)空間境界条件では、光学素子ユニットの短い長手方向の端部に計測コンポーネントを設置することができるのみである。このように長くて狭い光学素子の(第1共振周波数での)第1振動モードは(この第1振動モードの節点が従来設計の光学素子ユニットの外周からかなり離れて位置する状態で)屈曲しているので、短い長手方向の端部に位置する計測コンポーネントは、所定の仕様に従って最終的に調整しなければならない光学面を有する光学素子の中心部に対して、逆位相方向に移動する。このような位相の異なる測定は、典型的に、不安定な計測ループをもたらす。上記に概要を示すように、本発明によって実現されるそれぞれの節点のシフトにより、これらの問題が少なくとも大きく緩和される。
【0034】
本発明の本態様によれば、個々の光学素子ユニットの幾何学的形状及び/又は質量分布及び/又は剛性分布は、光学素子ユニットの節点が、光学素子ユニットと基準ユニットとの間の空間関係の決定に使用される、計測装置の基準素子の設置に利用できる位置の方へシフトされるように選択される。典型的に、本発明の本態様によれば、これは、意図的かつ構造的に光学素子ユニットを弱化させ、このような節点の、典型的には、計測コンポーネントの設置に十分な空間がより容易に利用できる、外周方向への外方向のシフトを実現させることによって実現される。
【0035】
光学素子ユニットの対応する局所的な構造的弱化は、いくつかの方法によって実現することができる。例えば、対応する凹部を光学素子ユニットに導入して光学素子ユニットの全体的な幾何学的形状を修正することによって、その外周領域の特定の位置の光学素子に質量の付加、又は除去を行うことができる。質量の修正はまた、光学素子ユニットに使用される材料の対応する密度分布によっても実現させることができる。更に、追加的又は代替的に、光学素子ユニットの構造的剛性の分布を修正することができる。例えば、光学素子ユニットの構造的剛性は、それぞれの節点の所望のシフトが実現されるように、光学素子ユニットに適切に分布することによって実現される。
【0036】
構造的剛性分布のこのような修正は、例えば、光学素子ユニットの外周領域において、一つ又は複数の凹部(適切な溝、ボアなど)又はキャビティなどの特性を提供するコンプライアンスを光学素子ユニットに導入することによって実現することができる。これらのコンプライアンスを提供する特性は、ある程度の、これらのコンプライアンス提供特性の半径方向外側にある質量における一部の動的な遮断を提供し、これによって所望する外側への節点のシフトが実現される。
【0037】
光学素子ユニットのこのような弱化は、光学素子ユニットの共振周波数を典型的に下げ、これは従来、調整制御性能(すなわち、光学素子ユニットの位置及び/又は配向の調整における制御性能)の面では好ましくないと考えられていると理解されよう。しかしながら、本発明によって実現される(光学素子ユニットの検知位置及び/又は配向のより好ましい位相情報の結果による)制御ループの安定性の増大は、調整制御性能が著しく改善されるため、この共振周波数の犠牲よりも大きな価値がある。
【0038】
本発明による概念は、捕捉する任意の所望される自由度に適用することができると理解されよう。好適には、いわゆる光学的にセンシティブな自由度、すなわち、光学素子ユニットの調整精度がシステム全体の結像精度(特に視線精度)に大きな影響を与える自由度に適用される。典型的には、鏡筒の従来の一般に垂直な配置において、これらの光学的にセンシティブな自由度は、垂直軸に沿った並進自由度、及びこの垂直軸に垂直な2つの軸の周りの2つの回転自由度である。
【0039】
従って、本発明の第4の態様によれば、光学投影ユニットと計測装置とを備える光学結像装置が提供される。光学投影ユニットは、支持構造体と、露光工程において露光光を使用して露光経路に沿って、パターン像を基板上に転写するようになされた光学素子ユニット群とを有しており、光学素子ユニット群は複数の光学素子ユニットを有している。計測装置は、少なくとも一つの自由度において、基準ユニットと、光学素子ユニット群に付随する光学素子ユニットとの間の空間関係を捕捉する。計測装置は基準素子を有し、この基準素子は、付随する光学素子ユニットの空間境界条件によって制限される、選択された基準素子の位置で、付随する光学素子ユニットに機械的に直接接続される。この付随する光学素子ユニットは共振周波数における変形振動モードを有しており、光学素子ユニットは振動モードで、少なくとも一つの自由度において変形励起運動を呈し、その少なくとも一つの自由度において最小動作を呈する少なくとも一つの節点を有している。この光学素子ユニットの幾何学的形状、質量分布及び剛性分布の内の少なくとも一つを基準素子の位置に応じて選択し、その基準素子の位置が節点に少なくとも近接するようにする。
【0040】
本発明の第5の態様によれば、光学結像装置の光学素子ユニットと基準ユニットとの間の空間関係を捕捉する方法が提供される。本方法は、露光工程において、パターン像を基板上に転写するようになされ、共振周波数における変形振動モードを有する少なくとも一つの光学素子ユニットを有する、光学素子ユニット群を提供するステップを含み、この光学素子ユニットは、振動モードにおいて少なくとも一つの自由度で変形励起運動を呈し、その少なくとも一つの自由度において最小運動を呈する少なくとも一つの節点を有する。本方法は、基準素子を有し、この基準素子を少なくとも一つの光学素子ユニットに、基準素子の位置において機械的に直接接続させる計測装置を提供するステップを更に含み、この基準素子の位置の選択は、付随する光学素子ユニットの空間境界条件によって制限される。本方法は、計測装置を介して、少なくとも一つの自由度において、基準ユニットと少なくとも一つの光学素子ユニットとの間の空間関係を捕捉するステップを更に含む。光学素子ユニット群を提供するステップは、少なくとも一つの光学素子ユニットの幾何学的形状、質量分布及び剛性分布の内の少なくとも一つを、基準素子の位置に応じて、基準素子の位置が少なくとも節点に近接するように選択するステップを更に含む。
【0041】
本発明の第6の態様によれば、パターン像を基板上に転写する方法が提供される。本方法は、転写ステップにおいて、光学結像装置を使用して、パターン像を基板に転写するステップと、転写ステップの捕捉ステップにおいて、光学結像装置の光学素子ユニットと基準ユニットとの間の空間関係を、本発明によるこのような空間関係を捕捉する方法を使って捕捉するステップと、転写ステップの制御ステップにおいて、光学結像装置の少なくとも一つのコンポーネントの位置及び配向の内の少なくとも一つを、捕捉ステップで捕捉された空間関係に応じて制御するステップとを含んでいる。
【0042】
本発明の更なる態様及び実施形態は、従属請求項及び添付の図を参照した、以下の好適な実施形態の記載によって明らかとなるだろう。開示された特徴の全ての組み合わせは、請求項に明示的に記載されているか否かに係らず、本発明の範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】本発明による方法の好適な実施形態を実行することのできる、本発明による光学結像装置の好適な実施形態の略図である。
図2図1の光学結像装置における光学素子ユニットの概略上面図である。
図3図2のIII−III線における、図2の光学素子ユニットの概略断面図である。
図4図2のIV−IV線における断面から見た、図2の光学素子ユニットの振動モードを概略的に示す図である。
図5図1の光学結像装置で実行することのできる、本発明によるパターン像を基板に転写する方法の好適な実施形態の構成図である。
図6】本発明による光学結像装置の更なる好適な実施形態の詳細を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
(第1の実施形態)
以下に、本発明による方法の好適な実施形態を実行することのできる、本発明による光学結像装置101の好適な第1の実施形態を、図1図5を参照して説明する。以下の説明を理解し易くするため、xyz座標系を図に導入する。z方向は垂直方向(すなわち重力方向)を示す。
【0045】
図1は、EUV範囲において13nmの波長で作動する光学露光装置101の形態の光学結像装置の、高度に概略化されたノンスケール図である。光学露光装置101は、マスク103.1(マスクユニット103のマスクテーブル103.2上に位置する)上に形成されたパターン像を、(基板ユニット104の基板テーブル104.2上に位置する)基板104.1上に転写するようになされた光学投影ユニット102を有する。このため、光学露光装置101は、適切な導光系(図示せず)を介して反射マスク103.1を照明する照明系105を有している。光学投影ユニット102はマスク103.1から反射された(主光線105.1で示す)光を受光し、マスク103.1上に形成されたパターン像を、例えばウエハなどの基板104.1上に投影する。
【0046】
このため光学投影ユニット102は、光学素子ユニット106.1〜106.6の光学素子ユニット群106を保持する。この光学素子ユニット群106は支持構造体102.1内に保持される。支持構造体102.1は光学投影ユニット102のハウジングの形態としてもよく、これは以下において、投影光学ボックス(POB)102.1とも称される。しかしながらこの支持構造体は、必ずしも光学素子ユニット群106の完全な、又はぴったりした筐体の形態である必要はないと理解されよう。むしろ部分的に開放された構造としてもよい。
【0047】
投影光学ボックス102.1はベース構造体107によって振動を遮断するように支持され、ベース構造体107は、マスクテーブル支持デバイス103.3を介してマスクテーブル103.2、およびそして基板テーブル支持デバイス104.3を介して基板テーブル104.2をも支持する。
投影光学ボックス102.1は、複数の防振装置及び少なくとも一つの中間支持構造体ユニットを介して直列的に支持され、良好な防振を実現すると理解されよう。一般にこれらの防振装置は、広い周波数範囲にわたって良好な防振を実現するために、異なる分離周波数を有することができる。
【0048】
光学素子ユニット群106は全部で6つの光学素子ユニット、すなわち、第1光学素子ユニット106.1、第2光学素子ユニット106.2、第3光学素子ユニット106.3、第4光学素子ユニット106.4、第5光学素子ユニット106.5及び第6光学素子ユニット106.6を有する。本発明において、光学素子ユニット106.1〜106.6の各々は、ミラー状の光学素子から成る。
【0049】
しかしながら本発明の他の実施形態では、光学素子ユニットはそれぞれ、例えば、開口絞りや、光学素子を保持し、最終的に光学素子ユニットを支持構造体に接続させる支持ユニットのインターフェースを形成する、ホルダ又はリテーナなどの更なるコンポーネントを(光学素子自体以外に)有することができると理解されよう。
【0050】
本発明の他の実施形態では、他の数の光学素子ユニットを使用することができると更に理解されよう。好適には、4〜8ケの光学素子ユニットが設けられる。
【0051】
ミラー106.1〜106.6の各々は、投影光学ボックス102.1によって形成される支持構造体上に、付随する支持デバイス108.1〜108.6によって支持される。支持デバイス108.1〜108.6の各々は、ミラー106.1〜106.6の各々が規定された制御帯域幅で能動的に支持されるように、能動デバイスとして形成される。
【0052】
本例において、光学素子ユニット106.6は、光学素子ユニット群106の第1光学素子ユニットを形成する、大きくて重いコンポーネントであり、その他の光学素子ユニット106.1〜106.5は、光学素子ユニット群106の複数の第2光学素子ユニットを形成する。第1光学素子ユニット106.6は低い第1の制御帯域幅で能動的に支持され、第2光学素子ユニット106.1〜106.5 は、第2制御帯域幅で能動的に支持され、各第2光学素子ユニット106.1〜106.5の第1光学素子ユニット106.6に対する所定の空間関係が実質的に維持される。
【0053】
本例においては、同様の能動的支持コンセプトがマスクテーブル支持デバイス103.3及び基板テーブル支持デバイス104.3に選択され、これはどちらも第3及び第4制御帯域幅でそれぞれ能動的に支持され、マスクテーブル103.2及び基板テーブル104.2の第1光学素子ユニット106.6に対する所定の空間関係をそれぞれ実質的に維持する。しかしながら本発明の他の実施形態においては、別の支持コンセプトをマスクテーブル及び/又は基板テーブルに選択してもよいと理解されよう。
【0054】
以下に更に詳細を説明するように、能動支持デバイス108.1〜108.6,103.3及び104.3の制御は、計測装置110の信号に応じて制御ユニット109によって行われる。結像工程に関わるコンポーネントの調整制御は以下のように行われる。
【0055】
第1光学素子ユニット106.6の能動的な低帯域幅による支持を実現するために、第1光学素子ユニット106.6の第1支持デバイス108.6は、第1光学素子ユニット106.6の計測装置110のコンポーネントに対する調整が、5Hz〜100Hz、好適には40Hz〜100Hzの第1調整制御帯域幅で行われるように構成され、制御される。
【0056】
更に、第2光学素子ユニット106.1〜106.5、マスクテーブル103.2及び基板テーブル104.2の能動的な支持をそれぞれ行うために、第2光学素子ユニット106.1〜106.5の第2支持デバイス108.1〜108.5の各々並びにマスクテーブル支持デバイス103.3及び基板テーブル支持デバイス104.3はそれぞれ、付随する光学素子ユニット106.1〜106.5、マスクテーブル103.2及び基板テーブル104.2の調整が、5Hz〜400Hz、好適には200Hz〜300Hzの第2、第3及び第4調整制御帯域幅でそれぞれ行われるように構成され、制御される。本発明の特定の実施形態において、第2制御帯域幅は第2支持デバイス108.1〜108.5においてそれぞれ異なるものであってもよいと理解されよう。
【0057】
上記に概要を示すように、本発明は、従来の設計と比較して、修正された支持方法に従うものであり、この戦略によれば、典型的にEUVマイクロリソグラフィにおいて必要とされる高制御帯域幅到達の上で最も深刻な問題となる、大きくて重い第1光学素子ユニット106.6は、低帯域幅(この帯域幅において、この光学素子ユニット106.6の制御を容易に行うことができる)の制御下で能動的に支持され、露光工程に関わるその他のコンポーネント、すなわち第2光学素子ユニット106.1〜106.5、マスクテーブル103.2及び基板テーブル104.2は、第1光学素子ユニット106.6に対して、従って相互的に、十分に安定し、かつ正確な空間関係を維持するように制御される。
【0058】
従って本例において、結像工程に関わる全てのコンポーネント(すなわち、ミラー106.1〜106.6、マスク103.1及び基板104.1)が能動的に制御されるという事実にもかかわらず、第1光学素子ユニット106.6の制御帯域幅調整の大きく緩和された要件は、個々のコンポーネントの能動的な支持のために増加する費用よりも価値がある。具体的には、第6ミラー106.6(最大で1.5m×1.5mの光学設置面積、最大で350kgの質量)などの大きな光学設置面積のコンポーネントの調整制御は、典型的に200Hz〜300Hzの調整制御帯域幅を使用し、これが必要であると考えられる(低共振周波数のため、このように大きな光学設置面積コンポーネントにとってほとんど達成されることのない制御帯域幅))従来のシステムと比べて大幅に容易になる。
【0059】
本発明の支持戦略によれば、光学系の一つのコンポーネント(典型的に、光学系のコンポーネントの中で大きい、及び/又は重いもの)を慣性基準として使用し、これは、他のコンポーネントの中の一つ又は複数(最大で他のコンポーネント全て)の、測定及び最終的には調整のための基準となるものである。本例において、大きな光学設置面積の第6ミラー106.6を慣性基準として使用し、これは、以下に更に詳細を説明するように、結像工程に関わる更なる全てのコンポーネント106.1〜106.5,103.1及び104.1の基準となるものである。しかしながら本発明のその他の実施形態において、光学系の設計に応じて、露光光に最後に当たった光学素子ユニット以外の任意の適切なコンポーネントを、この慣性基準として使用することができると理解されよう。
【0060】
ミラー支持デバイス108.1〜108.6の特定の設計を、図2及び図3に示す第3光学素子ユニット106.3のミラー及び支持デバイス108.3の例を使って以下に説明する。本例において、全てのミラー支持デバイス108.1〜108.6は基本的に同じコンポーネントと同じ機能性とを有している。しかしながら、本発明の他の実施形態では、個々のミラー支持デバイスに異なる設計を選ぶことができると理解されよう。
【0061】
図2及び図3からわかるように、ミラー支持デバイス108.3は、ミラー106.3の外周に分布された3つの支持ユニット111.1〜111.3を排他的に有している。
【0062】
支持ユニット111.1〜111.3の各々は、2脚架状に配置された2つのアクチュエータデバイス112.1及び112.2並びに中心に配置された能動的な重力補償デバイス112.3を排他的に有している。
【0063】
しかしながら、本発明の他の実施形態では、ミラー支持デバイスのコンポーネントの任意の他の適切な設計及びアライメントを選択することができると理解されよう。例えば、アクチュエータデバイスの内の一つを能動的な重力補償デバイスと組み合わせて、重力の方向に作動させてもよい。残りのアクチュエータデバイスは、その他のアクチュエータデバイスの作用線に対して(約60°の)傾いているが、垂直ではない作用線を有している。
【0064】
アクチュエータデバイス112.1及び112.2並びに重力補償デバイス112.3は、一端で、ミラー106.3の外周に接続されている。アクチュエータデバイス112.1及び112.2並びに重力補償デバイス 112.3のもう片方の端は投影光学ボックス102.1の構造的コンポーネントに接続されている。従って、3つの支持ユニット111.1〜111.3全てのアクチュエータデバイス112.1及び112.2は、6つの全ての自由度において、ミラー106.3の位置及び配向を調整する六脚支持体を形成する。
【0065】
しかしながら、本発明の他の実施形態では、それぞれの光学素子ユニットの空間調整は、それぞれの光学素子ユニットの要件に応じて、任意の他の所望の数の自由度で提供することができると理解されよう。より正確には、空間的及び光学的境界条件によって、一つ又は複数の自由度における光学素子ユニットの動作は、光学的に関係なく(すなわち、結像精度に目立つ影響なく)、個々の自由度における調整はなくてもすむ(例えば、光学面のその面内における並進運動)。更に、アクチュエータの任意の他の所望の数及び/又は調整を使って、所望の数の自由度において所望の調整を実現させることができる。
【0066】
3つの重力補償デバイス112.3は各々、ミラー106.3に作用する重力のごく一部に、それらが共にミラー106.3に作用する重力を累積的に補償するように対抗する。従って、アクチュエータデバイス112.1及び112.2は、空間でミラー106.3(すなわち、その位置及び/又は配向)の調整に必要な動力を生成しさえすればよい。しかしながら本発明の他の実施形態では、このような重力補償デバイスは省いてもよい。
【0067】
各アクチュエータデバイス112.1及び112.2並びに重力補償デバイス112.3は、いわゆるローレンツアクチュエータ(また、しばしばボイスコイルアクチュエータとも称される)の形態の、いわゆるフォースアクチュエータ(すなわち、所定の制御信号に応じて所定の作動力を生成するアクチュエータ)を有している。このソリューションは、ローレンツアクチュエータがミラー及び支持構造物の動的な減結合を可能にする、非接触アクチュエータであるという利点がある。具体的には、個々のローレンツアクチュエータの剛性は、ミラー支持デバイス108.3の所望の共振周波数に同調することができる。
【0068】
しかしながら、本発明の他の実施形態では、支持の所望の制御帯域幅が実現される限り、異なるコンセプトをアクチュエータデバイスに使用することができる。例えば、いわゆる変位アクチュエータ(すなわち、一定の制御信号に応じて所定の作動変位を生成するアクチュエータ)の組み合わせを(単独で、又はフォースアクチュエータと組み合わせて)使用してもよい。同様のことが重力補償デバイスにもあてはまる。この場合は、例えば、受動的なコンセプトを使用することもできる。
【0069】
マスク103.1上に形成されたパターン像は、大抵の場合サイズが縮小され、基板104.1のいくつかの目標領域に転写される。マスク103.1上に形成されたパターン像は、光学露光装置101の設計に応じて、2つの異なる方法で基板104.1上のそれぞれの目標領域に転写することができる。光学露光装置101がいわゆるウエハステッパ装置として設計されている場合、パターン像全体は、マスク103.1に形成されたパターン全体を照射することにより、一つのステップで、基板104.1上のそれぞれの目標領域に転写される。光学露光装置101がいわゆるステップアンドスキャン装置として設計されている場合、パターン像は、マスクテーブル103.2及び従って、マスク103.1上に形成されたパターンを投影ビーム下で徐々にスキャンし、一方で、基板テーブル104.2及び従って、基板104.1の動作の対応するスキャンを同時に行うことによって、基板104.1のそれぞれの目標領域に転写される。
【0070】
どちらの場合も、露光工程に関わるコンポーネントの一定の空間関係(すなわち、光学素子ユニット群106であるミラー106.1〜106.6の相互間の空間関係並びにそれらのマスク103.1及び基板104.1に対する空間関係)を所定の制限内に維持し、高品質の結像結像を取得しなければならない。
【0071】
光学露光装置101の動作中、ミラー106.1〜106.6の相互間並びにそれらのマスク103.1及び基板104.1に対する相対位置は、システムに導入される内因性及び外因性外乱の両方によって変化する。このような外乱は、例えば、システム自体の内部に発生するが、例えばベース支持構造体107(これ自体が接地構造体である、又は接地構造体に支持されている)などのシステムの周辺を介して導入される、例えば振動形態の機械的外乱であってもよい。これらは熱的に励起される外乱、例えば、システムの部品の熱膨張による位置変化であってもよい。
【0072】
ミラー106.1〜106.6の相互間、並びにマスク103.1及び基板104.1に対する空間関係の上述の所定の制限を維持するために、ミラー106.1〜106.6の各々は、支持デバイス108.1〜108.6をそれぞれ介して、空間に能動的に配置される。同様に、マスクテーブル103.2及び基板テーブル104.2は、支持デバイス103.3及び104.3をそれぞれ介して、空間に能動的に配置される。
【0073】
以下において、結像工程に関わるコンポーネント106.1〜106.6,103.1及び104.1の空間調整の制御コンセプトを、図1図3を参照して説明する。上述のように、コンポーネント106.1〜106.6,103.1及び104.1の調整の制御は、全6つの自由度において、概要を上記に示す特定の調整制御帯域幅において、支持デバイス108.1〜108.6,103.3及び104.3(図1の制御ユニット109及びそれぞれの支持デバイスにおいて、実線及び点線で示す)の各々に接続され、各々に対応する制御信号を提供する制御ユニット109を使用して行われる。
【0074】
制御ユニット109は、その制御信号を計測装置110の計測信号に応じて生成し、計測装置110は、コンポーネント106.1〜106.6,103.1及び104.1の各々の位置及び配向を、全6つの自由度(図1及び図2に点線で示す)において捕捉する。上述のように、計測装置110は大きな光学設置面積の第6ミラー106.6を、結像工程に関わる他の全てのコンポーネント106.1〜106.5,103.1及び104.1の基準となる慣性基準(すなわち基準光学素子ユニット)として使用する。図1からわかるように、第6ミラー106.6は、光路において、マスク103.1上に形成されたパターン像を基板104.1上に転写する際、露光光105.1が最後に当たる究極のミラーユニットである。
【0075】
このため、計測装置は計測構造体に機械的に接続された複数の計測デバイス110.2を有する計測ユニット110.1を使用し、計測構造体は、図1に示すように、投影光学ボックス構造体102.1によって支持されている。図3からわかるように、本実施形態において、各計測デバイス110.2は、計測構造体に接続され、ミラー106.3に機械的に直接接続される基準素子110.4と協働する、センサヘッド110.3を有している。
【0076】
「機械的に直接接続された」という用語は、本発明において、片方の部品の位置を、もう片方の部品の位置を測定することによって確実に決定することを可能とする、部品間の短い距離(もしあれば)を含む、2つの部品間の直接的な接続であると理解されたい。具体的に、この用語は、例えば熱的効果又は振動効果による、位置決定に不確実さをもたらす部品が他に介在しないことを意味している。本発明の特定の実施形態において、基準素子はミラーに接続された別個のコンポーネントではなく、例えば、ミラー製造時に別の工程で形成された回折格子などとして、ミラーの表面に直接的又は一体的に形成されたコンポーネントであると理解されよう。
【0077】
本実施形態において、計測デバイス110.2はエンコーダの原理に従って作動する、すなわち、センサヘッド110.3は構造面に向けてセンサ光線を放出し、基準素子110.4の構造面から反射された読み取り光線を検出する。構造面は、例えば、一連の平行線(1次元回折格子)又は相互に傾斜した格子線(2次元回折格子)を含む回折格子とすることができる。位置の変化は基本的に、読み取り光線を介して実現された信号から派生するセンサビームの通過した線を数えることによって捕捉される。
【0078】
しかしながら本発明の他の実施形態において、エンコーダの原理は別として、任意の他のタイプの非接触測定原理(例えば、干渉測定原理、用量測定原理、誘導測定原理など)を単独で、又は任意の組み合わせで使用することができる。しかしながら本発明の他の実施形態においては、任意の適切な接触ベースの計測装置も使用することができると理解されよう。接触ベースの動作原理として、例えば、磁歪又は電歪動作原理などを用いてもよい。具体的には、動作原理の選択を精度要件に応じて行うことができる。
【0079】
第6ミラー106.6に付随する計測デバイス110.2は(全6つの自由度において)、計測構造体と、慣性基準を形成する第6ミラー106.6との間の第1空間関係を捕捉する。更に、結像工程に関わる他のコンポーネント106.1〜106.5,103.1及び104.1に付随する計測デバイス110.2は(全6つの自由度において)、計測構造体と、付随するコンポーネント106.1〜106.5,103.1及び104.1との間の空間関係を捕捉する。最終的に、計測装置110は第1空間関係及び第2空間関係を用いて、第6ミラー106.6と、個々の更なるコンポーネント106.1〜106.5,103.1及び104.1との間の空間関係を決定する。その後対応する計測信号が制御ユニット109に提供され、制御ユニット109はこれらの計測信号に応じて、それぞれの支持デバイス108.1〜108.6,103.3及び104.4に対応する制御信号を生成する。
【0080】
本実施形態において、計測構造体と第6ミラー106.6との間の第1空間関係を表す計測信号に応じて、制御ユニット109は、第6ミラー106.6(すなわち、本発明における第1光学素子ユニット)の第1支持デバイス108.6に対応する制御信号を生成し、第6ミラー106.6を、計測ユニット110.1の計測構造体に対して、上述の第1調整制御帯域幅(5Hz〜100Hz、好適には40Hz〜100Hzの範囲)で調整する。
【0081】
重要な第1光学素子ユニット106.6のこの低帯域幅制御は、第1光学素子ユニット106.6における計測ユニット110.1の計測構造体に対する低帯域幅ドリフト制御を提供する。換言すれば、これにより、第1光学素子ユニット106.6は、第1光学素子ユニット106.6と、計測ユニット110.1の計測構造体との間の空間関係を捕捉する計測ユニット110.1の対応する低周波数動作に追従することができる。この手段により、計測ユニット110.1の捕捉デバイスにおける捕捉範囲を超える、第1光学素子ユニット106.6と計測ユニット110.1の計測構造体との間の過度の相対運動、換言すればセンサ範囲の問題を、有益な方法で回避することができる。
【0082】
基板テーブル104.2と基板104.1との間の空間関係は、例えば露光工程の直前の測定操作によって既知であると理解されよう。同様のことがマスクテーブル103.2とマスク103.1との間の空間関係にも言える。従って、マスクテーブル103.2及び基板テーブル104.2にそれぞれ接続されるそれぞれの基準素子110.4もまた、基準ミラー106.6と、マスク103.1及び基板104.1との間におけるそれぞれの空間関係の捕捉を可能にする。
【0083】
その結果、露光工程に関わる全てのコンポーネントが、典型的に、能動的に制御されなくてはならなくなったという事実にかかわらず、最も重要な第1光学素子ユニット106.6の制御帯域幅に対する要件は、高度に有益な方法で大きく緩和される。この肯定的な効果は、一般に、全てのコンポーネントの能動的な支持のために増加する費用よりも価値のあるものである。
【0084】
従って、例えば、典型的に個々の光学素子ユニットに200Hz〜300Hzの調整制御帯域幅が使用され、また必要であると考えられる従来のシステムと比較すると、本発明では、相当低い調整制御帯域幅、例えば5Hz〜100Hz、好適には40Hz〜100Hzを重要な第1光学素子ユニット106.6に使用し、結像工程に関わる他の全てのコンポーネント(すなわち、光学素子ユニット106.1〜106.5、マスクユニット103.1及び基板ユニット104.1)を従来所望されてきた高い調整制御帯域幅、例えば、200Hz〜400Hzで容易に制御し、第1光学素子ユニット106.6によって形成された慣性基準に対する適切なアライメントを提供することができる。
【0085】
更に、上述の(間接的な)測定コンセプトは、計測ユニット110.1の計測構造体における瞬時の剛体位置及び配向、具体的には、計測ユニット110.1の計測構造体に導入される振動外乱は、計測構造体が計測構造体の動的変形を大きく回避するほど十分に高い剛性である限り、本質的には関係ないという利点があることを理解されよう。具体的には、空間における計測構造体の位置及び/又は配向を安定させるための作業が少なくてすむ。典型的には、しかしながらそれでも、振動を遮断するように、計測構造体自体を投影光学ボックス構造体102.1によって支持してもよい。
【0086】
本発明の他の実施形態では、基準光学素子(例えば第6ミラー)と、結像工程に関わるそれぞれの更なるコンポーネント(例えばミラー106.1〜106.5、マスク103.1及び基板104.1)の何れか一つとの間の空間関係の直接的な測定も提供することができるとさらに理解できよう。空間境界の条件に応じて、このような直接的及び間接的測定の任意の組み合わせも使用することができる。
【0087】
本実施形態において、第2ミラー106.2(本発明において第2光学素子ユニットの内の一つ)は比較的小型で軽量であり、その調整制御は約250Hz〜500Hzの高い制御帯域幅で容易に行うことができる。従って、本実施形態において、第2ミラー106.2は、結像エラー、特に露光工程で発生する視線精度を補正する補正光学ユニットとして使用することができる。このため、制御ユニット109は、計測ユニット110.1の計測信号及び/又は最終的にはそれぞれの結像ミラーを表す(計測ユニット110.1又はその他の捕捉デバイスの)更なる信号に応じて、像を基板104.1へ転写する際に、約250Hz〜500Hzの高い補正調整周波数帯域幅で、第2ミラー106.2の支持デバイス108.2に対応する制御信号を生成し、適切な補正に必要な自由度において、第2ミラー106.2の調整を提供する。
【0088】
追加的又は代替的に、マスクユニット103及び/又は基板ユニット104をこのような補正光学ユニットとして使用することができると理解されよう。好適には、光学系の光学素子ユニットの中で最大共振周波数を呈する光学素子ユニットを、補正光学素子ユニットとして使用する。更に好適には、光学系の光学素子ユニットの中で最小共振周波数を呈する光学素子ユニットを補正光学素子ユニットとして使用する。
【0089】
本発明の他の実施形態では、基準素子の代わりに、センサヘッド又は読取りヘッドも結像工程に関わるそれぞれのコンポーネントに接続し、そして、基準素子を計測構造体(間接的な測定の場合)又は結像工程に関わるそれぞれのその他のコンポーネントに接続する(直接的な測定の場合)と更に理解されよう。この場合も、上記に概要を示すように、読取りヘッド及び基準素子を配置するコンセプトを任意に組み合わせることが可能である。
【0090】
以下において、光学素子ユニット106.1〜106.6の中のあるユニットの特定の設計を、第3ミラー106.3の設計を示す図2図4を参照して説明する。この光学素子ユニットの特定の設計はそれ自体、上記に概要を示すような、支持と制御のコンセプトの独立した発明を具現化するものであると理解されよう。
【0091】
図2及び図3からわかるように、第3ミラー106.3は、ミラー106.3の主要な拡張面並びに主要拡張面に存在する円周方向及び半径方向を画定する、細長く狭い鏡体113.1を有している。ミラー106.3は結像工程で光学的に使用され、鏡体113.1の多層被膜によって形成される、反射光学面113.2を有している。光学面113.2は、ミラー106.3の円周方向に延在する外輪郭113.3を有している。
【0092】
図2からわかるように、第3ミラー106.3は、第1の方向(ここではy方向)に沿って(主要拡張面に)延在する長い外輪郭部115.4と、第1の方向に対して直角に延在する第2の方向(ここではx方向)に沿って(主要拡張面に)延在する短い外輪郭部115.5とを有する、一般に長方形又は楕円形の形状をしている。
【0093】
本実施形態において、長い外輪郭部113.4は第1の方向に長い第1の寸法を、また、短い外輪郭部113.5は第2の方向に短い第2の寸法を有し、長い第1寸法は短い第2寸法の175%である。しかしながら、本発明の他の実施形態では、第1及び第2の寸法の間の関係は、他の任意の所望のものであってもよいと理解されよう。好適には、長い第1寸法は短い第2寸法の少なくとも140%である。
【0094】
第3ミラー106.3は、投影光学ボックス102.1に存在する空間境界条件、具体的には、光学素子106.1〜106.6の光学機能関連の所定の空間的配置並びに露光光の光路の形状及び配置により、細長く狭い形状となっている。より正確には、ミラー106.3の形状は、隣接する第1ミラー106.1、隣接する第6ミラー106.6及び結像光105.1を通すために空けられている空間が、第3ミラー106.3のために利用できる空間を大きく制限しているという事実によるものである。
【0095】
この場合、隣接する第1ミラー106.1及び結像光105.1のために空けられている空間は、第3ミラー106.3のために空けられている空間を第2方向(ここではx軸)に制限し、隣接する第6ミラー106.6は第3ミラー106.3の後側113.6の接近を防いでいる。
【0096】
その結果、その長い外輪郭部113.4並びにその後側113.6に沿う第3ミラー106.3の第1領域は、支持ユニット111.1〜111.3並びに全6つの自由度で第3ミラー106.3の位置及び配向を捕捉する3つの計測ユニット110.2の基準素子110.4の設置に利用できなくなる。
【0097】
そして結局、支持デバイス111.1〜111.3のインターフェース部分は、短い外輪郭部113.5で鏡体113.1から半径方向に突出するラグ状の突起部113.7〜113.9に形成される。ラグ113.7及び113.8は鏡体113.1の一端に形成され、残りのラグ113.9は鏡体113.1のもう片方の端部に形成される。
【0098】
各々の基準素子110.4は、鏡体113.1の外輪郭に機械的に直接接続され、ラグ113.7〜113.9の内の2つの(円周方向に)連続するラグの間に形成された鏡体113.1の凹部113.10〜113.12に位置している。それぞれの(主要拡張面における)基準素子110.4の基準素子の位置の距離はこのように、従来の設計(点線の輪郭115によって示す)と比較して、光学面外輪郭113.3の半径方向外側の基準素子の距離DRに低減され、この距離は、光学面113.2の最大寸法又は径Dmaxの約3%である。
【0099】
しかしながら本発明の他の実施形態では、基準素子距離DRは、主要拡張面の最大寸法Dmaxの0%〜15%の範囲であってもよいと理解されよう。
【0100】
尚、典型的に、機能的光学面(すなわち光学的に使用される表面)の半径方向外側にはいわゆる研磨代がある。研磨代は光学面の製造に必要であり、ミニエンバイロメントに(機械的な)シーリングを提供して、アウトガスから光学面をシールする。
【0101】
図4を参照して以下に説明するように、鏡体113.1の凹部113.10〜113.12を有する設計は、第3ミラー106.3の幾何学的形状、質量分布及び剛性分布が、各基準素子110.4の基準素子の位置が、第3ミラー106.3の第1振動モードの節点にある(又は少なくとも近くにある)ようになっているという利点がある。
【0102】
第3ミラー106.3は一般に細長く狭く、かつスリムな素子であるので、所定の共振周波数における第1変形振動モードを有しており、これは、主要拡張面に位置し、第2方向(x方向)に延在する曲げ軸の周りの曲げ振動である。図4は、非常に一般的な方法(図2のIV−IV線に沿った断面)で、この第1振動モードにおける、鏡体113.1の中心層113.13における第1最大偏向状況114.1及び第2最大偏向状況114.2を示している。図4からわかるように、2つの節点114.3及び114.4があり、この場合、中心層113.13及び、よって、ミラー106.6はその主要拡張面に垂直な方向(z方向)に、最小曲げ行程を呈している。
【0103】
図4にも示すように、従来のミラー設計は、図2に点線の輪郭115で示すように、第1の最大偏向状況115.1と第2の最大偏向状況115.2とを有する第1振動モードを呈している。この場合、節点114.3及び114.4から更に半径方向内側に位置する2つの節点115.3及び115.4が形成される。
【0104】
その結果、輪郭115によって示される従来の設計では、この第1振動モードの節点は、ミラー115の外周からかなり離れたところにある。従って、基準素子は、この第1振動モードにおいて、所定の仕様に従って最終的に調整されなければならない光学面を有するミラー115の中心部に対して逆位相方向に動く位置に配置される。このような反位相の測定は、典型的に、制御ループの不安定性を招く。
【0105】
上記に概要を示すように、本発明では、第3ミラー106.3の幾何学的形状、質量分布及び剛性分布が凹部113.10〜113.12を介して実現され、それぞれの節点114.3及び114.4の、基準素子110.4の設置に利用できるミラー106.3の第2部に向う半径方向外側のシフトとなり、これにより、これらの問題が大きく軽減される。更に、凹部113.10〜113.12は、基準素子110.4の基準位置の、計測構造体(図2に示さず)に接続されたセンサヘッド110.3との半径方向内側へのシフトを可能とし、最終的に、基準素子の位置と、節点114.3及び114.4とのそれぞれの一致が実現される。
【0106】
節点114.3及び114.4の位置の基準素子の位置へのシフトは、光学素子ユニットの振動励起変形が、計測装置によって行われる、最終的にいわゆるミラー106.3の剛体運動を得ることを意図する捕捉工程の結果に悪影響を与えない、又は与える悪影響が少なくなるという利点がある。このように捕捉結果に対する振動による変形の影響を取り除くことで、調整工程の速度と安定性が大きく改善される。
【0107】
上述のように、本例では、節点114.3及び114.4は基準素子の位置とほぼ一致する。しかしながら本発明の他の実施形態では、節点と基準素子の位置との間に一定の節点距離が存在してもよいと理解されよう。好適には、この節点距離の範囲は、主要拡張面における光学面113.2の最大径Dmaxの0%〜10%である。
【0108】
本例は、鏡筒のその概して垂直な配置により、計測デバイス110.2で使用されるエンコーダ原理により、基準素子110.4におけるz方向の最小限の行程が高度に正確な結果を導き、光学的に高度にセンシティブな自由度、つまり、z軸に沿った並進自由度及びx軸及びy軸の周りの2つの回転自由度をもたらすという点において、特に有利である。
【0109】
本発明の他の実施形態では、追加的又は代替的に、構造的剛性分布の修正、従って節点のシフトは、例えば、図3に二点鎖の輪郭で示すように、光学素子ユニット、例えば光学素子ユニットの外周領域に、一つ又は複数の凹部(適切な溝、ボアなど)などのコンプライアンス提供特性113.14を導入することによって実現することができると理解されよう。これらのコンプライアンス提供特性113.14は、ある程度まで、これらのコンプライアンス提供特性113.14の半径方向外側に位置する質量部分の動的な減結合を提供し、これにより、所望する節点の外側へのシフトが実現される。
【0110】
基準素子の基準位置の設置に関して同じ空間境界条件下にあり、上述の節点シフトを必要とする2つ以上の光学素子があり得ることを更に理解されよう。本例においては、これを第1ミラー106.1とすることができる。
【0111】
図1の光学結像装置101において、パターン像を基板上に転写する本発明による方法の好適な実施形態は、本発明による光学投影ユニットのコンポーネントを支持する方法の好適な実施形態並びに、図1図4を参照して以下に記載するような、本発明による光学素子ユニットと基準ユニットとの間の空間関係を捕捉する方法の好適な実施形態を使って実行することができる。
【0112】
本方法の転写ステップ116において、マスク103.1上に形成されたパターン像は、光学結像装置101の光学投影ユニット102を使って基板104.1に転写する。
【0113】
このため、転写ステップ116の捕捉ステップ116.1では、結像工程に関わるコンポーネント106.1〜106.6,103.1及び104.1間の空間関係は、上記に概要を示す、本発明による光学素子ユニットと基準ユニットとの間の空間関係を捕捉する方法の好適な実施形態を使って捕捉する。
【0114】
転写ステップ116の制御ステップ116.2において、基板テーブル104.2、マスクテーブル103.2及びその他のミラー106.1〜106.5の第6ミラー106.6に対する位置及び/又は配向、並びに第6ミラー106.6の計測ユニット110.1の計測構造体に対する位置及び/又は配向は、上記に概要を示す捕捉ステップ116.1において先に捕捉した空間関係に応じて制御する。露光工程116.3において、制御ステップ116.2の直後、又はこのステップと最終的に重複して、マスク103.1上に形成されたパターン像を、光学結像装置1を使用して基板104.1上に露光する。
【0115】
捕捉ステップ116.1のステップ116.4において、予め設けられたマスク103.1を有するマスクユニット103、及び基板104.1を有する基板ユニット104の空間を調整する。尚、マスク103.1及び基板104.1は、実際の位置捕捉前の遅い時点又は露光ステップ116.3前の更に遅い時点で、マスクユニット103及び基板ユニット104にそれぞれ挿入することもできると理解されよう。
【0116】
捕捉ステップ116.1のステップ116.5において、上記に概要を示すように、本発明による光学投影ユニットのコンポーネントを支持する方法の好適な実施形態により、光学投影ユニット102のコンポーネントを設けて支持する。このためステップ116.6において、光学投影ユニット102のミラー106.1〜106.6を、光学投影ユニット102の光学投影ボックス102.1内に設け、そして設置する。ステップ116.7において、ミラー106.1〜106.6を投影光学ボックス102.1内において、それぞれの制御帯域幅で能動的に支持し、図1図3に関して上記に記載した様な構成を提供する。
【0117】
捕捉ステップ116.1のステップ116.8では、図1図3に関して上記の様な構成で予め提供されている計測装置110を使用する。尚、基準素子110.2は、それらが配置されるそれぞれのミラー106.1〜106.6と共に、より早い時点において先に提供することができると理解されよう。しかしながら本発明の他の実施形態では、基準素子110.4を実際の位置捕捉ステップ前の遅い時点において、計測装置110のその他のコンポーネントと共に設けてもよい。
【0118】
捕捉ステップ116.1のステップ116.9において、光学結像装置101の中心慣性基準としての第6ミラー106.6と、基板テーブル104.2、マスクテーブル103.2並びにその他のミラー106.1〜106.5との間の実際の空間関係を、その後、上記に概要を示すように捕捉する。
【0119】
第6ミラー106.6と、基板テーブル104.2、マスクテーブル103.2及びその他のミラー106.1〜106.5との間の実際の空間関係並びに第6ミラー106.6の計測ユニット110.1の計測構造体に対する実際の空間的関係は、露光工程全体にわたって連続的に捕捉することができると理解されよう。ステップ116.9では、この連続的な捕捉工程の最新の結果を検索して使用する。
【0120】
上述のように、制御ステップ116.2において、基板テーブル104.2、マスクテーブル103.2及びミラー106.1〜106.6の位置を以前捕捉したこの空間関係に応じて制御し、露光ステップ116.3において、マスク103.1上に形成したパターン像を基板104.1上に露光する。
【0121】
(第2の実施形態)
以下において、本発明に係る方法の好適な実施形態を実施することのできる、本発明に係る光学結像装置201の第2の好適な実施形態を、図5を参照して説明する。光学結像装置201はその基本設計及び機能において、光学結像装置101にほぼ対応するので、ここでは主に違いについて記載する。具体的には、類似のコンポーネントには同じ参照番号に100を加えたものを表示する。明示的に逸脱する記載を以下に示す場合を除き、明示的参照は、これらのコンポーネントに関する第1の実施形態において前述した説明を参照されたい。
【0122】
光学結像装置201と光学結像装置101との唯一の違いは、第3ミラー206.3の偏向した設計である。第3ミラー206.3は、光学結像装置101の第3ミラー106.3と交換可能であると理解されよう。
【0123】
第3ミラー206.3(図2のIV−IV線によるものと同様の断面)の一部の断面を示す図5からわかるように、第3ミラー206.3の第3ミラー106.3に対する唯一の違いは、ミラー206.3の第1方向(y方向)の長さがミラー106.3(図2に点線217で示す)よりも長く、半径方向の凹部213.10が第3ミラー206.3の光学面 213.2の下に届き、基準素子110.4も光学面213.2の下に位置することである。
【0124】
この場合も、凹部213.10はミラー206.3の幾何学的形状、質量分布及び剛性分布を提供し、これにより、第1振動モードの節点と基準素子の位置とが、上記に概要を示す利点を実現するくらい十分に近接する。この手法はミラー206.3のもう片方の端の他の基準素子の位置にも適用することができると理解されよう。
【0125】
上記において、光学素子をもっぱら反射素子として本発明の実施形態を説明したが、本発明の他の実施形態において、反射、屈折又は回折素子又はこれらの任意の組み合わせを光学素子ユニットの光学素子に使用することができると理解されよう。
図1
図2
図3
図4
図5