(54)【発明の名称】リソグラフィ装置用の所望のデバイスパターンのベクタ形式表現を変換する装置および方法、プログラマブルパターニングデバイスにデータを供給する装置および方法、リソグラフィ装置、デバイス製造方法
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記フローコントローラは、前記所望のドースパターンのそれぞれの部分がターゲット上に形成されるべき一つまたは複数の位置を指定する情報を受け取るように構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の装置。
前記フローコントローラは、前記プログラマブルパターニングデバイスに対する前記基板の走査速度、ターゲット上の所望のドースパターンの拡大の度合い、または走査速度と拡大の度合いの両方の関数として、前記バッファメモリに前記データユニットが転送される速度を制御するように構成されることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の装置。
一つ以上の前記データユニットのそれぞれに幾何学的変換を適用して、前記データユニットによって表現される前記所望のパターンの部分が形成されるべき領域内の基板の幾何学的状態を考慮するように構成された基板適応ユニットをさらに備えることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の装置。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明のある実施の形態は、プログラマブルパターニングデバイスを含んでもよい装置に関連し、当該デバイスは例えば自発光型コントラストデバイスのアレイからなることがある。こうした装置に関する更なる情報は国際公開第2010/032224号、米国特許出願公開第2011−0188016号、米国特許出願第61/473636号、米国特許出願第61/524190号を参照してもよく、この全体が本明細書に援用される。しかしながら、例えば上述したものを含む任意の形態のプログラマブルパターニングデバイスとともに、本発明の一実施形態を使用してもよい。
【0039】
図1は、リソグラフィ装置または露光装置の部分の概略側断面図を概略的に示す。この実施形態においては、装置は、後述するようにXY面で実質的に静止した個別制御可能素子を有するが、そうである必要はない。装置1は、基板を保持する基板テーブル2と、基板テーブル2を最大6自由度で移動させる位置決め装置3と、を備える。基板は、レジストで被覆された基板であってもよい。ある実施の形態においては、基板はウェーハである。ある実施の形態においては、基板は多角形(例えば矩形)の基板である。ある実施の形態においては、基板はガラスプレートである。ある実施の形態においては、基板はプラスチック基板である。ある実施の形態においては、基板は箔である。ある実施の形態においては、装置は、ロールトゥロール製造に適する。
【0040】
装置1は、複数のビームを発するよう構成されている複数の個別に制御可能な自発光型コントラストデバイス4をさらに備える。ある実施の形態においては、自発光型コントラストデバイス4は、放射発光ダイオード(例えば、発光ダイオード(LED)、有機LED(OLED)、高分子LED(PLED))、または、レーザダイオード(例えば、固体レーザダイオード)である。ある実施の形態においては、個別制御可能素子4の各々は青紫レーザダイオード(例えば、三洋の型式番号DL-3146-151)である。こうしたダイオードは、三洋、日亜、オスラム、ナイトライド等の企業により供給される。ある実施の形態においては、ダイオードは、例えば約365nmまたは約405nmの波長を有するUV放射を発する。ある実施の形態においては、ダイオードは、0.5mWないし200mWの範囲から選択される出力パワーを提供することができる。ある実施の形態においては、レーザダイオードの(むき出しのダイの)サイズは、100μmないし800μmの範囲から選択される。ある実施の形態においては、レーザダイオードは、0.5μm
2ないし5μm
2の範囲から選択される発光領域を有する。ある実施の形態においては、レーザダイオードは、5度ないし44度の範囲から選択される発散角を有する。ある実施の形態においては、それらのダイオードは、合計の明るさを約6.4×10
8W/(m
2・sr)以上にするための構成(例えば、発光領域、発散角、出力パワーなど)を有する。
【0041】
自発光型コントラストデバイス4は、フレーム5に配設されており、Y方向に沿って及び/またはX方向に沿って延在してもよい。1つのフレーム5が図示されているが、装置は、
図2に示すように複数のフレーム5を有してもよい。フレーム5には更に、レンズ12が配設されている。フレーム5、従って、自発光型コントラストデバイス4及びレンズ12はXY面内で実質的に静止している。フレーム5、自発光型コントラストデバイス4、及びレンズ12は、アクチュエータ7によってZ方向に移動されてもよい。それに代えて又はそれとともに、レンズ12はこの特定のレンズに関係づけられたアクチュエータによってZ方向に移動されてもよい。任意選択として、各レンズ12にアクチュエータが設けられていてもよい。
【0042】
自発光型コントラストデバイス4はビームを発するよう構成されていてもよく、投影系12、14、18はそのビームを基板の目標部分に投影するよう構成されていてもよい。自発光型コントラストデバイス4及び投影系が光学コラムを形成する。装置1は、光学コラム又はその一部を基板に対して移動させるためのアクチュエータ(例えばモータ)11を備えてもよい。フレーム8には視野レンズ14及び結像レンズ18が配設されており、そのアクチュエータを用いてフレーム8は回転可能であってもよい。視野レンズ14と結像レンズ18との結合が可動光学系9を形成する。使用時においては、フレーム8は自身の軸10まわりを、例えば
図2に矢印で示す方向に、回転する。フレーム8は、アクチュエータ(例えばモータ)11を使用して軸10まわりに回転させられる。また、フレーム8はモータ7によってZ方向に移動されてもよく、それによって可動光学系9が基板テーブル2に対し変位させられてもよい。
【0043】
内側にアパーチャを有するアパーチャ構造13がレンズ12の上方でレンズ12と自発光型コントラストデバイス4との間に配置されてもよい。アパーチャ構造13は、レンズ12、それに関連する自発光型コントラストデバイス4、及び/または、隣接するレンズ12/自発光型コントラストデバイス4の回折効果を限定することができる。
【0044】
図示される装置は、フレーム8を回転させると同時に光学コラム下方の基板テーブル2上の基板を移動させることによって、使用されてもよい。自発光型コントラストデバイス4は、レンズ12、14、18が互いに実質的に整列されたときこれらのレンズを通じてビームを放つことができる。レンズ14、18を移動させることによって、基板上でのビームの像が基板の一部分を走査する。同時に光学コラム下方の基板テーブル2上の基板を移動させることによって、自発光型コントラストデバイス4の像にさらされる基板の当該部分も移動する。光学コラム又はその一部の回転を制御し、自発光型コントラストデバイス4の強度を制御し、かつ基板速度を制御するコントローラにより自発光型コントラストデバイス4の「オン」と「オフ」とを高速に切り換える制御をすることによって(例えば、「オフ」であるとき出力がないか、しきい値を下回る出力を有し、「オン」であるときしきい値を上回る出力を有する)、所望のパターンを基板上のレジスト層に結像することができる。
【0045】
図2は、自発光型コントラストデバイス4を有する
図1の装置の概略上面図である。
図1に示す装置1と同様に、装置1は、基板17を保持する基板テーブル2と、基板テーブル2を最大6自由度で移動させる位置決め装置3と、自発光型コントラストデバイス4と基板17とのアライメントを決定し、自発光型コントラストデバイス4の投影に対して基板17が水平か否かを決定するためのアライメント/レベルセンサ19と、を備える。図示されるように基板17は矩形形状を有するが、追加的に又は代替的に円形の基板が処理されてもよい。
【0046】
自発光型コントラストデバイス4はフレーム15に配設されている。自発光型コントラストデバイス4は、放射発光ダイオード、例えばレーザダイオード、例えば青紫レーザダイオードであってもよい。
図2に示されるように、自発光型コントラストデバイス4はXY面内に延在するアレイ21に配列されていてもよい。
【0047】
アレイ21は細長い線であってもよい。ある実施の形態においては、アレイ21は、自発光型コントラストデバイス4の一次元配列であってもよい。ある実施の形態においては、アレイ21は、自発光型コントラストデバイス4の二次元配列であってもよい。
【0048】
回転フレーム8が設けられていてもよく、これは、矢印で図示される方向に回転してもよい。回転フレームには、各自発光型コントラストデバイス4の像を与えるためのレンズ14、18(
図1参照)が設けられていてもよい。本装置には、フレーム8及びレンズ14、18を備える光学コラムを基板に対して回転させるためのアクチュエータが設けられていてもよい。
【0049】
図3は、周辺部にレンズ14、18が設けられている回転フレーム8を高度に概略的に示す斜視図である。複数のビーム、本実施例では10本のビームが、それらレンズの一方へと入射し、基板テーブル2により保持された基板17のある目標部分に投影されている。ある実施の形態においては、複数のビームは直線に配列されている。回転可能フレームは、アクチュエータ(図示せず)によって軸10まわりに回転可能である。回転可能フレーム8の回転の結果として、それらビームは、一連のレンズ14、18(視野レンズ14及び結像レンズ18)に入射する。一連のレンズの各々に入射してビームは偏向され、それによりビームは基板17の表面の一部分に沿って動く。詳しくは
図4を参照して後述する。ある実施の形態においては、各ビームが対応する源によって、すなわち自発光型コントラストデバイス、例えばレーザダイオードによって、生成される(
図3には図示せず)。
図3に示される構成においては、ビームどうしの距離を小さくするために、それらビームはともに、あるセグメントミラー30によって偏向されかつ運ばれる。それによって、後述するように、より多数のビームを同一のレンズを通じて投影し、要求解像度を実現することができる。
【0050】
回転可能フレームが回転すると、ビームが連続する複数のレンズへと入射する。このときあるレンズがビームに照射されるたびに、レンズ表面上でビームが入射する場所が移動する。レンズ上のビーム入射場所に依存してビームが異なって(例えば、異なる偏向をもって)基板に投影されるので、(基板に到達する)ビームは後続のレンズが通過するたびに走査移動をすることになる。この原理について
図4を参照して更に説明する。
図4は、回転可能フレーム8の一部を高度に概略的に示す上面図である。第1ビームセットをB1と表記し、第2ビームセットをB2と表記し、第3ビームセットをB3と表記する。ビームセットのそれぞれが、回転可能フレーム8の対応するレンズセット14、18を通じて投影される。回転可能フレーム8が回転すると、複数ビームB1が基板17に投影され、走査移動によって領域A14を走査する。同様に、ビームB2は領域A24を走査し、ビームB3は領域A34を走査する。対応するアクチュエータによる回転可能フレーム8の回転と同時に、基板17及び基板テーブルが(
図2に示すX軸に沿う方向であってもよい)方向Dに移動され、そうして領域A14、A24、A34におけるビームの走査方向に実質的に垂直に移動される。方向Dの第2のアクチュエータによる移動(例えば、対応する基板テーブルモータによる基板テーブルの移動)の結果、回転可能フレーム8の一連のレンズによって投影されるとき連続する複数回のビーム走査が互いに実質的に隣接するよう投影されて、実質的に隣接する領域A11、A12、A13、A14がビームB1の走査のたびに生じ(
図4に示すように、領域A11、A12、A13は以前に走査され、領域A14は今回走査されている)、領域A21、A22、A23、A24がビームB2の走査のたびに生じ(
図4に示すように、領域A21、A22、A23は以前に走査され、領域A24は今回走査されている)、領域A31、A32、A33、A34がビームB3の走査のたびに生じる(
図4に示すように、領域A31、A32、A33は以前に走査され、領域A34は今回走査されている)。このようにして、基板表面の領域A1、A2、A3が、回転可能フレーム8を回転させる間に基板を方向Dに移動させることにより、覆われてもよい。多数のビームを同一のレンズを通じて投影することにより、(回転可能フレーム8をある同一の回転速度とすると)より短い時間で基板全体を処理することができる。レンズ通過のたびに各レンズにより基板を複数のビームが走査するので、連続する複数回の走査に際して方向Dの変位量を大きくすることができるからである。見方を変えると、多数のビームを同一のレンズを通じて基板に投影するとき、ある所与の処理時間における回転可能フレームの回転速度を小さくしてもよいということである。こうして、回転可能フレームの変形、摩耗、振動、乱流などといった高回転速度による影響を軽減してもよい。ある実施の形態においては、
図4に示すように、複数のビームは、レンズ14、18の回転の接線に対してある角度をなして配列されている。ある実施の形態においては、複数のビームは、各ビームが重なるか、又は各ビームが隣接ビームの走査経路に隣接するように配列されている。
【0051】
多数のビームを一度に同一レンズにより投影する態様の更なる効果は、公差の緩和に見ることができる。レンズの公差(位置決め、光学投影など)があるために、連続する領域A11、A12、A13、A14(及び/または領域A21、A22、A23、A24及び/またはA31、A32、A33、A34)の位置には、互いの位置決めにいくらかの不正確さが現れ得る。したがって、連続する領域A11、A12、A13、A14間にいくらかの重なりが必要とされるかもしれない。1本のビームの例えば10%を重なりとする場合、同一レンズに一度にビームが一つであると、同様に10%の係数で処理速度が遅くなるであろう。一方、同一レンズを通じて一度に5本又はそれより多数のビームが投影される状況においては、(上記同様1本のビームについて)同じ10%の重なりが5本又はそれより多数の投影線ごとにあるとすると、重なりの総計は概ね5(又はそれより多数)分の1である2%(又はそれ未満)へと小さくなるであろう。これは、全体的な処理速度を顕著に小さくする効果をもつ。同様に、少なくとも10本のビームを投影することにより、重なりの総計をおよそ10分の1に小さくしうる。したがって、多数のビームを同時に同一レンズにより投影するという特徴によって、基板の処理時間に生じる公差の影響を小さくしうる。それに加えて又はそれに代えて、より大きな重なり(従って、より大きな公差幅)が許容されてもよい。一度に同一レンズにより多数のビームを投影するのであれば、重なりが処理に与える影響が小さいからである。
【0052】
多数のビームを同一レンズを通じて同時に投影することに代えて又はそれとともに、インタレース技術を使用することができるかもしれない。しかしながらそのためには、より厳格にレンズどうしを整合させることが必要になるかもしれない。従って、それらレンズのうちある同一レンズを通じて一度に基板に投影される少なくとも2つのビームは相互間隔を有し、装置は、その間隔の中に後続のビーム投影がなされるように光学コラムに対して基板を移動させるよう第2アクチュエータを動作させるよう構成されていてもよい。
【0053】
1つのグループにおいて連続するビームどうしの方向Dにおける距離を小さくするために(それによって、例えば方向Dに解像度を高くするために)、それらビームは方向Dに対して、互いに斜めに配列されていてもよい。そうした間隔は、各セグメントが複数ビームのうち対応する1つのビームを反射するセグメントミラー30を光路に設けることによって更に縮小されてもよい。それらセグメントは、それらミラーに入射するビームどうしの間隔よりもミラーで反射されたビームどうしの間隔を狭くするよう配設されている。そうした効果は、複数の光ファイバによっても実現しうる。この場合、ビームのそれぞれが複数ファイバのうち対応する1つのファイバに入射し、それらファイバが、光路に沿って光ファイバ上流側でのビームどうしの間隔よりも光ファイバ下流側でのビームどうしの間隔を狭くするよう配設されている。
【0054】
また、そうした効果は、複数ビームのうち対応する1つのビームを各々が受光する複数の入力を有する集積光学導波路回路を使用して実現されてもよい。この集積光学導波路回路は、光路に沿って集積光学導波路回路の上流側でのビームどうしの間隔よりも集積光学導波路回路の下流側でのビームどうしの間隔を狭くするよう構成されている。
【0055】
基板に投影される像のフォーカスを制御するためのシステムが提供されてもよい。上述のある構成において、ある光学コラムの部分又は全体により投影される像のフォーカスを調整するための構成が提供されてもよい。
【0056】
一実施形態では、投影システムは、基板17の上方の物質層から形成された基板上に少なくとも一つの放射ビームを投影する。基板上で、レーザ誘起された物質の移動によって材料(例えば金属)の液滴の局所堆積を生じさせるように、デバイスが形成されている。
【0057】
図5を参照すると、レーザ誘起物質移動の物理的なメカニズムが描かれている。一実施形態では、材料202(例えばガラス)のプラズマブレークダウンより低い強度で、実質的に透明な材料202を通して放射ビーム200が集中される。材料202を覆っているドナー材料層204(例えば金属膜)で形成された基板上で、表面熱吸収が発生する。熱吸収により、ドナー材料204が溶解する。さらに、熱によって前方方向への誘起圧力勾配が生じ、ドナー材料層204から、ひいてはドナー構造(例えばプレート)208からドナー材料の液滴206を前方に加速させる。こうして、ドナー材料層204からドナー材料の液滴206が解放され、その上にデバイスが形成される基板17に向けて基板上に(重力の助けでまたは重力の助けなしに)移動する。ドナープレート208上の適切な位置にビーム200を向けることによって、基板17上にドナー材料パターンを堆積させることができる。一実施形態では、ドナー材料層204上にビームが集中される。
【0058】
一実施形態では、ドナー材料の移動を引き起こすために、一つまたは複数の短パルスが使用される。一実施形態では、溶解物質の準1次元の前方への熱および質量の移動を行うためのパルスの長さは数ピコ秒または数フェムト秒であってもよい。このような短パルスは、材料層204内の横方向の熱の流れをなくすことを促進することは殆どなく、ドナー構造208上の熱負荷はわずかであるか全くない。短パルスにより、物質の急速な溶解および前方加速が可能になる(例えば、金属などの蒸発した物質は前方の方向性を失い、スプラッタ状の堆積につながる)。短パルスにより、加熱温度のすぐ上であるが蒸発温度よりは低い温度に物質を加熱することができる。例えば、アルミニウムでは、約900−1000°Cの温度が望ましい。
【0059】
一実施形態では、レーザパルスの使用中に、ある量の材料(例えば金属)が100−1000nmの液滴の形態でドナー構造208から基板17に移動される。一実施形態では、ドナー材料は金属を含むか本質的に金属からなる。一実施形態では、金属はアルミニウムである。一実施形態では、材料層204はフィルムの形態である。一実施形態では、フィルムが別の本体または層に取り付けられる。上述したように、本体または層はガラスであってもよい。
【0060】
基板上に形成されるべき所望のデバイスパターンのベクタ形式表現を、プログラマブルパターニングデバイスの駆動に適した制御信号に変換するために、「データパス」と呼ばれることもあるデータ処理システム100を構成するハードウェアおよび/またはソフトウェアを設けてもよい。こうして、所望のデバイスパターンを形成するのに適した放射のドースパターンがターゲット(例えば基板)に付与される。
図6は、このようなデータパスに含めることができる例示的な処理ステージ100を示す模式図である。一実施形態では、ステージはそれぞれ隣接するステージに直接接続される。しかしながら、必ずしもこうである必要はない。一実施形態では、図示のステージのうちの任意のものの間に、一つまたは複数の追加処理ステージが設けられてもよい。加えてまたは代替的に、一つまたは複数のステージのそれぞれが複数のステージを備えていてもよい。一つまたは複数のステージが組み合わされてもよい。一実施形態では、単一の物理処理ユニット(例えば、計算操作を実行可能なコンピュータまたはハードウェア)または異なる処理ユニットを使用して、ステージが実装される。
【0061】
図6に示す例では、所望のデバイスパターンのベクタ形式表現が記憶ステージ102で提供される。一実施形態では、ベクタ形式表現は、GDSIIなどのベクタ設計パッケージを用いて構築される。記憶されたベクタ形式表現は、記憶ステージ102から、直接にあるいは一つ以上の中間ステージを経由して、ラスタ化ステージ104に送られる。中間ステージの例には、ベクタプリプロセッシングステージおよびローパスフィルタステージが含まれる。一実施形態では、ローパスフィルタステージは、例えばアンチエイリアス処理を実行する。
【0062】
ラスタ化ステージ104は、所望のデバイスパターンのベクタ形式表現(または、ベクタ形式表現の処理済みバージョン)を、所望のデバイスパターンに対応する所望のドースパターンのラスタ化表現(すなわち、基板の露光後処理によって所望のデバイスパターンを形成するのに適した表現)に変換する。一実施形態では、ラスタ化表現はビットマップデータを含む。ビットマップデータは、「ピクセルマップ」データとも呼ばれることがある。一実施形態では、ビットマップデータは、グリッド点の各点において、所望のドースを示す一連の値を含む。グリッド点はラスタ化グリッドと呼ばれることもある。
【0063】
一実施形態では、(ラスタ化ステージ104からの直接的なまたはさらなる処理後の出力としての)ラスタ化表現が、制御信号生成ステージ106に提供される。制御信号生成ステージ106は、(図示のように)単一ステージとして実装されてもよいし、複数の別個のステージとして実装されてもよい。
【0064】
一実施形態では、制御信号生成ステージ106は、ラスタ化グリッドと、ターゲット(例えば基板)レベルでパターニングデバイスがスポット露光を形成できる場所を定義するグリッド(「スポット露光グリッド」と呼ばれることもある)と、の間のマッピング操作を実行する。各スポット露光は、ドース分配を含む。ドース分配は、スポットによって基板に与えられる単位面積当たりのエネルギー(すなわち、単位面積当たりのドース)が、スポット内の位置の関数としてどのように変化するかを特定する。ドース分配は、「ポイントスプレッド関数」と呼ばれることもある。一実施形態では、スポット露光の位置は、ドース分配内の特徴点の参照によって定義される。一実施形態では、特徴点は、単位面積当たりの最大ドースの位置である。一実施形態では、単位面積当たりの最大ドースの位置は、スポットの中央領域である。他の実施形態では、単位面積当たりの最大ドースの位置は、スポットの中央領域ではない。一実施形態では、ドース分布は円対称である。このような実施形態では、スポットは円形スポットとも呼ばれる。このような実施形態では、単位面積当たりの最大ドースの位置は、円の中心に位置してもよい。他の実施形態では、ドース分配は円形ではない。一実施形態では、ドース分配内の特徴点は、ドース分配の「質量中心」である(変化する密度を有する平坦な物体の質量中心の直喩によって定義される。スポット露光の単位面積当たりのドースは、平坦な物体の単位面積当たりの質量と等価である)。したがって、ドース分配の「質量中心」は、ドースの平均位置を表している。一実施形態では、スポット露光グリッド内の各グリッド点は、パターニングデバイス(および/または投影システム)が基板に付与することができるスポット露光の異なるものの位置(例えば、特徴点の位置)を表している。
【0065】
一実施形態では、リソグラフィ装置または露光装置は、離散した「スポット」(例えば円形スポット)からなるスポット露光を生成するように構成される。このような実施形態の一例では、ターゲットレベルにおける所与の放射ビームの強度は、その放射ビームによる異なるスポットの露光の間の時間でゼロに達する。一実施形態では、リソグラフィ装置または露光装置は、連続的な線でスポット露光を生成するように構成される。連続線は、基板のレベルにおける所与の放射ビームの強度が、その放射ビームによる一連の異なるスポットの露光の間にゼロに到達しない、一連のスポット露光とみなすことができる。このタイプの例示的な実施形態は、
図4を参照して説明されている。
【0066】
一実施形態では、
各スポット露光は、例えば一定のパワーで駆動されているコントラストデバイスの単一期間中に、単一の自発光型コントラストデバイスから生じるターゲット上の放射ドースの領域に対応する。一実施形態では、マッピング操作は、ラスタ化グリッドとスポット露光グリッドの間の内挿を含む。一実施形態では、マッピング操作は、メトロロジデータ記憶ステージ108からメトロロジデータを受け取るように構成される。一実施形態では、メトロロジデータは、例えば、搭載される基板および/または搭載される基板上の以前に形成されたデバイスパターンの、パターニングデバイスに対する位置および/または向き(orientation)を特定する。一実施形態では、メトロロジデータは、搭載される基板または以前に形成されたデバイスパターンの測定された歪みを特定する。一実施形態では、歪みには、例えばずれ、回転、スキューおよび/または拡大のうち一つまたは複数が含まれる。したがって、メトロロジデータは、ターゲット上の所望のドースパターンの適切な位置決めを確保するために、ラスタ化グリッドとスポット露光グリッドの間の内挿をいかに実行すべきかについての情報を提供する。
【0067】
制御信号生成ステージ106は、所望のドースパターンを形成するためにスポット露光グリッド内の各位置に適用すべき一連の「強度」、「エネルギー」および/または「ドース」を計算してもよい。本出願では、「強度」に言及する場合、強度、エネルギーおよび/またはドースを包含するものと理解される。一実施形態では、一連の強度は、グリッド内の各位置について、例えばその位置に中心があるスポットの生成に使用されるべき放射ビームの出力を定義する。一実施形態では、放射ビームの出力は、例えば放射ビームを生成するために自発光型コントラストデバイスに付加される電圧または電流の大きさによって決定される。この計算は光投影システムの特性を考慮してもよく、したがって「インバースオプティクス(inverse-optics)」計算と呼ばれてもよい。この計算は、個々のスポットのサイズおよび/または形状を考慮する。一実施形態では、この計算は、光投影システムの特性によって少なくとも部分的に決定される個別のスポットのサイズおよび/または形状を考慮する。一実施形態では、スポットの取り得る適用される強度の所与のセットのそれぞれについて、サイズおよび/または形状が定義される。一実施形態では、スポットサイズおよび/または形状は、例えば所与のスポットに対して適用されるドースの位置の変動を定義する。一実施形態では、理想的な(すなわち、工学的な誤差のない)スポット露光グリッドジオメトリによって定義される名目位置からのスポットの位置の変動を考慮に入れて、計算が行われる。
【0068】
一実施形態では、プログラマブルパターニングデバイスは、個別に制御可能な露光時間を有する複数の放射ビームを生成するように構成される。各露光時間は、所与のスポット露光に対応する放射が付与される期間に対応する。このような実施形態の一例では、制御信号生成ステージ106は、一連のターゲット露光時間を計算する。一実施形態では、放射源(例えば、一つまたは複数の自発光型コントラスト要素)とターゲットとの間に位置するシャッタ要素またはシャッタ要素のマトリクスを使用して、露光時間が制御される。このような実施形態の一例では、放射源は、異なるスポットの露光の間、「オン」のままになるように構成されてもよい。露光時間は、シャッタ要素またはシャッタ要素のマトリクスの関連部分が「開いて」いる時間の長さによって決まる。代替的にまたは追加して、放射源(例えば、一つまたは複数の自発光型コントラスト要素)の駆動持続時間を制御することによって、露光時間が制御される。
【0069】
一実施形態では、プログラマブルパターニングデバイスは、個別に制御可能な強度と個別に制御可能な露光時間とを有する複数の放射ビームを生成するように構成される。このような実施形態の一例では、制御信号生成ステージ106は、所望のドースパターンを達成するのに適したターゲット強度値およびターゲット露光時間の組み合わせを計算する。
【0070】
一実施形態では、ターゲット(例えば基板)レベルでスポットが互いに重なり合い、その結果、スポット露光グリッド内の基準位置で達成される最終的なドースは、複数の近隣スポットに付与された強度によって決まる。この影響は、数学的にはコンボリューション(またはデコンボリューション)演算によって記述(処理/モデル化)することができる。一実施形態では、制御信号生成ステージ106は、リバースプロセスを実行して、所与の所望のドースパターンについて各位置に付与するべき強度を決定する。したがって、このような実施形態では、制御信号生成ステージ106は、デコンボリューション(またはコンボリューション)演算を実行する。この演算は、以下では(デ−)コンボリューション演算と呼ばれる。一実施形態では、(デ−)コンボリューション演算は(デ−)コンボリューションカーネルによって定義される。一実施形態では、(デ−)コンボリューションカーネルは(デ−)コンボリューション行列によって表現される。一実施形態では、このような(デ−)コンボリューション行列の係数は、スポット露光グリッド内の対応する点(またはスポット)で付与されるべき強度を計算するときに、所望のドースパターン内の基準点の領域内の点におけるドースを考慮に入れる必要の程度を定義する重みとして解釈される。
【0071】
図7および8は、このようなデコンボリューション演算のステップを高度に模式的に示した図である。
【0072】
図7は、高度に模式化された例示的なスポット露光グリッド120の一部を示す。グリッド120内の各点125は、ターゲット上にパターニングデバイスによって形成されるスポットの中心を表している。デコンボリューション演算は、点125のそれぞれに適用する強度値を決定することを目的とする。スポット露光グリッド120は、ターゲット上にパターニングデバイスが形成することができるスポット露光のパターンに対応するジオメトリを有している。したがって、一実施形態では、スポット露光グリッドのジオメトリは不規則である。不規則なグリッドでは、本願の意味の範囲内で、グリッド点の密度が位置の関数として変化する。そのため、単一のグリッド点のみを含む単一のユニットセルをモザイクにする(tessellate)ことによってグリッドを完全に構成することは不可能である。
図7に示すグリッド120のジオメトリは高度に模式化されており、商用デバイスに関連するスポット露光グリッドを必ずしも表してはいない。
【0073】
図8は、高度に模式化されたラスタ化グリッド122の例示的な部分を示す。この例では、ラスタ化グリッド122は規則的なジオメトリである。この例では、規則的なジオメトリは長方形である。規則的なグリッドのグリッド点の密度は、本願の意味の範囲内で、単一グリッド点のみを含む単一タイプのユニットセルのモザイクによってグリッドを完全に形成することができるという意味で、「一様」である。点線121は例示的なユニットセルを表す。点線は四つのグリッド点の1/4と交差しており、したがって全体として一つのグリッド点を含む。一実施形態では、所望のドースパターンのサンプルが、グリッド122内の点126のそれぞれに設けられてもよい。
【0074】
図7の黒丸グリッド点123は、(ランダムに選択される)基準グリッド点を表している。黒丸グリッド点123に適用されるべき強度を導出するためのデコンボリューション演算の適用は、基準グリッド点123の位置に対応するスポット露光グリッドの領域における、スポット露光グリッド内の複数のグリッド点における所望のドースパターンのサンプルの重み付き寄与を必要とする。
図8の黒丸グリッド点127は、このようなデコンボリューション演算に必要となるグリッド点を模式的に表している。一実施形態では、行列として表現されるデコンボリューションカーネルは、(行列内の非ゼロの係数の位置によって)いずれのグリッド点126が関与するかを、および(行列内の非ゼロの係数の値によって)グリッド点が関与する程度を定義する。
【0075】
一実施形態では、デコンボリューション演算の性質は、スポット露光グリッド内の異なる点で(または、異なる点同士の間でさえ)異なっている。一実施形態では、この変動は、例えばパターニングデバイスの光学性能の変動を考慮する。一実施形態では、キャリブレーション測定を用いて光学性能の変動が求められる。一実施形態では、キャリブレーション測定から選択的に取得される、デコンボリューションカーネルのライブラリが記憶されており、必要に応じてアクセスされる。
【0076】
一実施形態では、制御信号生成ステージ106は、制御信号を生成するために、スポット露光グリッド内の各点に適用されるべき一連の強度値をセットポイント値に変換する。一実施形態では、セットポイント値は、パターニングデバイスの性質を考慮に入れる。例えば、パターニングデバイスが複数の自発光型コントラストデバイスを含む場合、このような実施形態におけるセットポイント値は、自発光型コントラストデバイスの応答における非線形性(例えば、適用したセットポイント値/電圧/電流の関数としての、出力の変動における非線形性)を考慮する。一実施形態では、セットポイント値は、例えばキャリブレーション測定による名目上は同一のコントラストデバイスの特性における変動を考慮する。
【0077】
制御信号出力ステージ110は、制御信号生成ステージから制御信号を受け取り、その信号をパターニングデバイスに提供する。
【0078】
図6に示した例では、ステージ102、104はデータパスのオフライン部112にて動作し、ステージ106−110はデータパスのオンライン(すなわちリアルタイム)部114にて動作する。しかしながら、これは本質的ではない。一実施形態では、ステージ104に関連する機能の全てまたは一部がオンラインで実行される。代替的にまたは追加して、ステージ106および/または108の機能の全てまたは一部がオフラインで実行される。
【0079】
図9は、基板W上のデバイスレイアウトの例を示す。デバイスレイアウトは、例えばフラットパネルディスプレイまたはその一部のためのものであってよい。レイアウトは、境界領域132に囲まれた、ピクセル154のアレイ(
図10に示す)を含む複数の長方形領域134を含む。
図10は、長方形領域の一つのコーナー領域130の拡大図である。
【0080】
図示のデバイスレイアウトは、多数回の繰り返しを含む。ピクセル154のそれぞれを定義するのに必要なデバイスパターンは同一である。同様に、境界領域132の区画138−145を定義するために必要なデバイスパターンのそれぞれも同一である。ピクセル154のそれぞれ、および/または一つ以上の区画138−145のそれぞれの中にも、かなりの程度の繰り返しが存在する。
【0081】
一実施形態では、ベクタ形式表現内で階層を使用することによって、所望のデバイスパターン内の繰り返しが利用される。一実施形態では、プリミティブパターンのライブラリが提供され、ベクタ形式表現は、これらのプリミティブパターンのインスタンスがパターン内に位置する場所を指定することによって(例えば、その場所と向きを指定することによって)、デバイスパターンを記述する。
【0082】
図11は、二つのプリミティブの例P1、P2を示す。
図12は、二つのプリミティブP1、P2から構成されるターゲットデバイスパターンの一部を示す。軸160、162はベクタ形式表現の座標形内の軸(例えば、X,Y)を表している。矢印164,166、168は、パターン内の三つのプリミティブの位置を指定するベクトルである。このパターンを定義するベクタ形式表現は、使用される二つのプリミティブP1、P2(「プリミティブデータとも呼ばれる」)とベクトル164、166、168(「インスタンスデータ」とも呼ばれる)のそれぞれの定義を含む。この例では、インスタンスデータは(ベクトル164、166、168を介した)位置情報のみを含む。しかしながら、一実施形態では、向き情報などの他の情報が提供される。プリミティブP1は、プリミティブP1の複数のインスタンスが存在するという事実にも関わらず、一度だけ定義されればよい。したがって、任意の所与のプリミティブの多数のインスタンスが存在する場合、繰り返しがあるにも関わらず各プリミティブを別個に定義する表現(すなわち、階層無しのシステム)と比較して、データ容量が大きく削減される。
【0083】
パターニングデバイス用の制御信号を形成するためのステップとして、データパス処理は、ベクタ形式表現をラスタ化表現に変換する。しかしながら、ラスタ化プロセスは、典型的に、階層を保持しないビットマップファイルの生成を必要とする。フィーチャが繰り返される場合、そのフィーチャを定義するビットマップ値の全てが繰り返される傾向がある。したがって、ラスタ化プロセスの出力は、ベクタ形式表現よりもはるかに大きくなる傾向がある。例えば、100nmのグリッド上に定義される典型的なパターンのベクタ形式表現では、典型的なデータサイズは約100Mバイトである。このようなパターンの完全に解凍されたラスタ化表現(すなわち、階層無しの表現)は、約100Tバイトになることがある。
【0084】
データ容量が大きくなるとデータパス内で効率的に扱うのが困難になり、コストが増大しおよび/または性能が阻害される。
【0085】
一実施形態によると、データパス内の後続まで、所望のドースパターンデータの完全な解凍を遅延することによって、データパスの性能が改善される。これは、所望のデバイスパターンのベクタ形式表現を、ある程度の階層を維持する(したがって圧縮された)ラスタ化表現に変換することによって達成される。ある程度の階層を維持するラスタ化表現を、階層的ラスタ化表現と呼ぶことがある。
【0086】
一実施形態によると、階層的ラスタ化表現は以下のように生成される。ベクタ形式表現内で使用されるプリミティブパターンそれぞれのラスタ化バージョンが生成される。このラスタ化バージョンを「ラスタ化プリミティブ」と呼ぶことがある。所与の所望のデバイスパターンのラスタ化プリミティブは、各ラスタ化プリミティブの各インスタンスがパターン内で位置する場所を記述するインスタンスデータとともに記憶される。一実施形態では、所与のベクタ形式表現が変換されるべきときに毎回、ラスタ化プリミティブが生成される。代替的にまたは追加して、プレ−ラスタ化プリミティブのライブラリが形成される。一実施形態では、このようなライブラリは、変換されるべき所与のベクタ形式表現で使用されるプリミティブに対応するラスタ化プリミティブと、他のベクタ形式表現を変換するのに有用である複数の他のラスタ化プリミティブと、を含む。一実施形態では、ライブラリは、所与のタイプのベクタ形式表現によって使用可能なあらゆるプリミティブに対するラスタ化プリミティブを含む。一実施形態では、ライブラリは、GDSIIフォーマットで使用可能な各プリミティブのラスタ化プリミティブを含む。このようなライブラリを使用すると、階層的ラスタ化表現の生成プロセスを迅速化することができる。
【0087】
図13は、一実施形態において、
図11に示したプリミティブP1、P2にそれぞれ対応するラスタ化プリミティブRP1、RP2を形成する方法を模式的に示している。この実施形態では、ラスタ化プリミティブは、ラスタ化グリッドの一連の領域158のそれぞれに付与されるべきドースを表す一連の値を含む。
【0088】
図14は、一実施形態におけるインスタンスデータが、ラスタ化プリミティブRP1、RP2を位置決めする方法をどのように記述するかを示している。軸170、172は、座標系を定義する。この実施形態では、インスタンスデータは、座標系に対して定義されたベクトル174、176、178を含み、これらは、ラスタ化プリミティブRP1の二つのインスタンスの位置と、ラスタ化プリミティブRP2の一つのインスタンスの位置を指定する。この例では、インスタンスデータは(ベクトル174、176、178を介した)位置情報のみを含む。しかしながら、一実施形態では、向き情報などの他の情報が提供される。
【0089】
(ベクタ形式および/またはラスタ化)プリミティブは、様々な形態を取りうる。一実施形態では、プリミティブは、以下のうちの一つまたは複数を含む:閉鎖形(例えば円)、多角形(規則的または不規則)、閉じていない形を形成する交差線(例えば、十字形)、非交差線(例えば、単線、複数の線、平行線、角または屈曲部を形成する線)。一実施形態では、プリミティブは、特定のデバイスフィーチャに対応する所望のデバイスパターンの部分を含む。一実施形態では、少なくとも一つのプリミティブが、単一のフラットパネルディスプレイピクセルを定義するのに必要なパターンの大部分または全てを含む。一実施形態では、少なくとも一つのプリミティブが、フラットパネルディスプレイの境界領域のセグメントを定義するのに必要なパターンの大部分または全てを含む。一実施形態では、境界領域のセグメントは、基板の走査方向と略直交するように整列された境界領域の一部を含む。このような実施形態では、境界領域の一部が、走査方向と略平行な境界領域の幅の全てと、走査方向と略直交する境界領域の長さの一部とを選択的に含む。一実施形態では、境界領域のセグメントは、走査方向と略平行に整列された境界領域の一部を含む。このような実施形態では、境界領域の一部が、走査方向と略直交する境界領域の幅の全てと、走査方向と略平行な境界領域の長さの一部とを含む。
【0090】
一実施形態では、所望のデバイスパターンを形成する一つ以上のプリミティブが互いに重なり合っていてもよい。
【0091】
図6を参照して上述したデータパス処理シーケンスの例では、ラスタ化ステージ104がオフラインで動作するように構成されている。したがって、ラスタ化ステージが完全に解凍されたラスタ化表現(すなわち、階層無し)を生成する場合、出力を記憶しデータパスのオンライン部に出力を転送するために、大容量の記憶ハードウェアが使用される。
【0092】
一実施形態では、完全に解凍されたラスタ化表現の代わりに、上述したような階層的ラスタ化表現を出力するように、ラスタ化ステージ104が構成される。このアプローチは、記憶するデータ容量を削減し、したがってコストおよび/または時間が抑えられる。
【0093】
一実施形態では、階層的ラスタ化表現の解凍(すなわち、階層の除去)は、制御信号生成部106によって実行される。一実施形態では、解凍はオンラインで実行される。一実施形態では、例えばラスタ化グリッドとスポット露光グリッドの間のマッピング操作の一部として、解凍が実行される。一実施形態では、解凍プロセスは、ラスタ化グリッドとスポット露光グリッド間の内挿プロセスと組み合わされる。一実施形態では、リソグラフィ装置または露光装置により基板内または基板上にパターンが形成されている間に、解凍および/またはマッピングおよび/または内挿の少なくとも一部が実行される。一実施形態では、解凍は、ラスタ化グリッド内の各点に対して、インスタンスデータとラスタ化プリミティブデータとを参照して、その点における所望のドース値を決定することを含む。
【0094】
図15は、一実施形態に係るデータ処理システム100の一部を示す。この実施形態では、セットポイントデータ、またはセットポイントデータを導出するときに使用するデータが、出力ユニット180を介して出力される。複数の出力ユニット180が設けられる。各出力ユニット180は、その上に所望のドースパターンが露光されるべきターゲット(例えば基板)の面積の部分に対応している。一実施形態では、各部分は、パターニングデバイスに対する基板の走査方向と略平行に整列されたストリップである。一実施形態では、各部分は、単一の機械的に区別されるパターニングデバイス、またはパターニングデバイスの一部からのスポット露光が受け取られる領域に対応する。一実施形態では、ストリップはそれぞれ、パターニングデバイスの一つの自発光型コントラストデバイス、または二つ以上の自発光型コントラストデバイスのグループからのスポット露光と位置合わせされる。一実施形態では、ストリップはそれぞれ、特定の一つの自発光型コントラストデバイス、または二つ以上の自発光型コントラストデバイスのグループからの放射を受け取るとともに、一つの自発光型コントラストデバイス、または二つ以上の自発光型コントラストデバイスのグループと固定の空間関係を有するように構成されたレンズ12からのスポット露光と位置合わせされる(例えば、レンズ12は、レンズ14、18のようにフレーム8上を回転するようには構成されていない)。一実施形態では、走査方向と略直交する方向でストリップが互いに重なり合い、形成されるドースパターン内の連続性を確保する。
【0095】
出力ユニット180はそれぞれ、接続される出力ユニット180に対するセットポイントデータ(または、セットポイントデータを導出するのに使用されるデータ)を計算するように構成された処理ユニット182に接続される。一実施形態では、この計算は、制御信号生成ステージ106に関連する上述した一つ以上の計算を含む。一実施形態では、この計算は、処理ユニット182に関連するストリップに対応する所望のドースパターンの一部のラスタ化表現を、所望のドースパターンを生成するための一連のセットポイントデータに変換することを含む。一実施形態では、パターニングデバイスの特定の一部に処理ユニットが関連している場合、セットポイントデータは、パターニングデバイスのその部分に関連する一つまたは複数のコントラストデバイスの制御に適するように構成される。
【0096】
一実施形態では、データ処理システム100は、高帯域幅メモリ区画185と、低帯域幅メモリ区画189と、を備えている(高帯域幅メモリ区画185は、低帯域幅メモリ区画よりも高い帯域幅を有している)。一実施形態では、高帯域幅メモリ区画185は、複数の別個のローカルメモリ184を備える。一実施形態では、ローカルメモリ184はそれぞれ、処理ユニット182の一つと接続される。一実施形態では、低帯域幅区画189は、一つまたは複数の共有メモリ188を備える。一実施形態では、一つまたは複数の共有メモリ188はそれぞれ、二つ以上の処理ユニット182に選択的に接続可能である。図示の例では、共有メモリ188はそれぞれ、スイッチ186を介して二つの処理ユニット182に選択的に接続可能である。他の実施形態では、共有メモリは、三つ以上の処理ユニット182に接続可能であり、および/または互いに直近にない(すなわち隣接していない)処理ユニットに接続可能である。
【0097】
一実施形態では、データ処理システム100は、複数のローカルメモリ184を備え、共有メモリ188を備えていない。一実施形態では、データ処理システム100は、複数の共有メモリ188を備え、ローカルメモリ184を備えていない。一実施形態では、ローカルメモリ184の有無にかかわらず、単一の共有メモリ188が提供される。
【0098】
異なる帯域幅を有する別個のメモリ区画を設けることで、処理ユニット182によって変換されるべきラスタ化表現をより最適な形で記憶することが可能になる。具体的には、高頻度でアクセスされる必要があるデータを高いレートで、および/または、いくつかの処理ユニット182によって同時に高帯域幅メモリ区画185内に記憶し、低頻度でアクセスされる必要があるデータを低いレートで、および/または、少数のまたはゼロ台の処理ユニット182によって同時に低帯域幅メモリ区画189内に記憶することが可能になる。このアプローチにより、所与のレベルの性能に対する全メモリ帯域幅を最小化して、コストを低減または最小化することができる(および/または、所与のコストに対する性能を最大化または改善することができる)。
【0099】
一実施形態では、異なる処理ユニット182によって同時にアクセスする必要があるような、走査方向と略直交する方向に繰り返される所望のデバイスパターンの部分に関連するデータが、高帯域幅区画185に(例えば
図15に示すタイプの構成における各ローカルメモリ184に)記憶される。一実施形態では、二つ以上のストリップのそれぞれに対して一つ以上のインスタンスを有するプリミティブパターンが、高帯域幅区画185に記憶されてもよい。一実施形態では、ストリップの大半のそれぞれに対して一つ以上のインスタンスを有するプリミティブパターンが、高帯域幅区画185に記憶されてもよい。一実施形態では、三つ以上の(または大半の)ストリップにおけるインスタンスを有するとともに、走査方向と略直交する方向で互いに重なり合うプリミティブが、高帯域幅区画185に記憶されてもよい。
【0100】
図9、10に示したタイプのデバイスレイアウトを処理するように構成された実施形態において、走査方向が水平に左から右へ向かう場合、ピクセル154および走査方向と略直交する境界領域のセグメント138、139と関連するデータが、高帯域幅区画185に記憶される。対照的に、走査方向と略平行に整列する(および、多数の異なる処理ユニット182によって同時に必要とされることがまれである)セグメント140−145に関連するデータは、低帯域幅メモリ区画189に(例えば
図15に示すタイプの構成における各共有メモリ188に)記憶される。
【0101】
一実施形態では、デバイスパターンの平均よりも自身の内部のフィーチャ繰り返しのレベルが低く(および/またはエントロピーが高く)、走査方向と略直交する方向に細長い所望のデバイスパターンの部分に関連するデータは、高帯域幅区画185に記憶される。このような部分の例は、フラットディスプレイデバイスパターンにおける境界領域(またはそのセグメント)である(例えばセグメント138、139)。このような部分を表すための、パターンの単位面積当たりのデータ量は、(階層/圧縮を使用してさえ)比較的大きくなる。走査方向と略直交する細長さは、高いレートで、および/または複数の処理ユニットによって同時にデータがアクセスされる必要があることを意味する傾向にある。したがって、高帯域幅区画185を使用すると、このような部分では有利である。
【0102】
一実施形態では、デバイスパターンの平均よりも自身の内部の繰り返しのレベルが低い(および/またはエントロピーが高い)が、走査方向と略直交する方向に細長くはない、所望のデバイスパターンの部分に関連するデータは、低帯域幅区画189に記憶される。このような部分の例は、フラットディスプレイデバイスパターンにおける境界領域(またはそのセグメント)である(例えばセグメント140−145)。このような部分を表すためのパターンの単位面積当たりのデータ量は大きくなるが、走査方向と略直交する細長い部分が無いと、データパス計算のためにデータがアクセスされるレート、および/または同時にデータにアクセスする処理ユニットの数が小さくなる傾向にある。
【0103】
一実施形態では、低帯域幅メモリ区画189または高帯域幅メモリ区画185にデータが選択的に記憶されるデバイスパターンの繰り返し部分は、最小閾値サイズよりも大きな表面積を有している。一実施形態では、最小閾値サイズは約10
4×(臨界寸法)
2である。ここで、「臨界寸法」(「CD」とも呼ばれる)とは、使用する装置の解像度、または装置によって基板内または基板上に結像または形成可能である最小の構造の特徴的な長さスケールのことを指す。一実施形態では、臨界寸法は約1ミクロンである。このような実施形態の一例では、最小閾値サイズは、約10
4×(ミクロン)
2である。一実施形態では、最小閾値サイズよりも小さい所望のデバイスパターンの一部が集積されて、最小閾値サイズよりも大きな部分を形成する。一実施形態では、ラスタ化ユニット104によってこの集積処理が実行される。一実施形態では、階層的ラスタ化表現の一部としてラスタ化ユニット104によって出力されるラスタ化プリミティブは、集積されたパターンのラスタ化バージョンを含む。
【0104】
(ラスタ化されたまたはされていない)階層を有する所望のドースパターンの表現を、露光中または露光直前の処理ステップでデータがアクセスされる必要のある順序で、メモリ内に記憶することは一般的にできない。データパスのオンライン部で階層が依然として存在する場合、所望のスループットを達成するために階層表現を十分迅速に処理することができるハードウェアを提供することは、困難または非常に高価なものとなり得る。
【0105】
一実施形態では、特定の(例えば予め決められた)期間内に基板上に形成される所望のドースパターンの一部のみを、「ジャストインタイム」で画像の再構成をする装置および方法が提供される。一実施形態では、利用可能なメモリおよびメモリ帯域幅にしたがってこの期間が設定される。
【0106】
図16は、一実施形態に係るデータパスの一部を示す。リソースステージ190が設けられる。リソースステージ190は、要求に応じて、データユニットを提供する。これらのデータユニットはそれぞれ、所望のドースパターンの異なる部分を表現する。一実施形態では、リソースステージ190は、データユニットを記憶するメモリを備える。一実施形態では、リソースユニット190は、データユニットを記憶するメモリと通信する。リソースステージ190からデータユニットを受け取るバッファメモリ196が設けられる。バッファメモリ196は、必要に応じて(例えば「ジャストインタイム」で)データユニットを出力195し、プログラマブルパターニングデバイスに制御信号を提供する。一実施形態では、バッファメモリ196には限界サイズがあるが高い帯域幅を有している。一実施形態では、プログラマブルパターニングデバイスに直接、出力195が提供される。一実施形態では、出力が使用されてプログラマブルパターニングデバイスを駆動する前に、その出力をさらに処理する中間処理デバイスに出力195が提供される。一実施形態では、出力195はリアルタイムで(すなわち、露光プロセスの少なくとも一部の間に、データパスのオンライン部内で)提供される。
【0107】
一実施形態では、データユニットとバッファメモリ196の間の送受信を制御するフローコントローラ192が設けられる。一実施形態では、この制御は、完全な所望のドースパターンを露光するために必要な時間よりも短い期間の間、各データユニットがバッファメモリ196内に記憶されるようにする。それゆえ、完全な所望のドースパターンを記憶するメモリと比較して、バッファメモリ196のサイズは小さくなる。
【0108】
一実施形態では、所望のドースパターンは複数の部分に分割される。一実施形態では、各部分は一つのデータユニットによって表現される。部分はブロックと呼ばれることもある。一実施形態では、一つのブロックは、少なくとも一つの他のブロックとほぼ同じサイズを有する。一実施形態では、全てのブロックが略同一のサイズを有する。一実施形態では、一つのブロックは、少なくとも一つの他のブロックとほぼ同じ形状を有している。一実施形態では、全てのブロックがほぼ同じ形状を有している。一実施形態では、一つのブロックは少なくとも一つの他のブロックと同じ向きを有している。一実施形態では、全てのブロックがほぼ同じ向きを有している。一実施形態では、所望のドースパターンの所与のストリップ内にある全てのブロックが、ほぼ同じ形状および/または向きを有している。一実施形態では、異なるストリップ内のブロックは、異なる形状および/または向きを有している。一実施形態では、パターニングデバイスに対する基板の走査方向と略平行に各ストリップが整列されている。一実施形態では、各ストリップは、単一の機械的に区別されたパターニングデバイス、またはパターニングデバイスの一部からのスポット露光が受け取られる領域に対応している。
【0109】
一実施形態では、所望のドースパターンの個々の構造が一つのブロック内に完全に配置されるように制限されない。個々のフィーチャが複数のブロックにまたがってもよい。一実施形態では、個々の構造は、ブロックおよび/またはラスタ化グリッドと整列していない。一実施形態では、データ処理デバイス100は、複数のブロックにまたがりブロックと整列していないかおよび/またはラスタ化グリッドと整列していない構造間のスティッチング(縫い合わせ)を実行する。
【0110】
一実施形態では、各ブロックは、ラスタ化グリッド内で長方形または正方形のグリッド点を含む。一実施形態では、各ブロックは32×32個の点を含む。一実施形態では、各ブロックは16×16個の点を含む。一実施形態では、各ブロックは32×16個の点を含む。一実施形態では、各ブロックは、32×32、16×16、または32×16個の点以外の数の点を含む。
【0111】
一実施形態では、各データユニットは、ブロック内の所望のドースパターンの階層的な圧縮表現を含む。一実施形態では、階層的表現はラスタ化表現である。一実施形態では、ラスタ化表現は、一つまたは複数のラスタ化プリミティブとインスタンスデータとを含む。各ラスタ化プリミティブは、異なるプリミティブパターンのラスタ化バージョンである。インスタンスデータは、データユニット内に記憶された各ラスタ化プリミティブの一つ以上のインスタンスから、ブロック内の所望のドースパターンの部
分が形成される方法を指定する。
【0112】
一実施形態では、フローコントローラ192は、各データユニット内で指定されたドースパターンの部分がターゲット(例えば基板)上で形成されるべき一つ以上の位置を指定する情報を受け取る。一実施形態では、この情報は、少なくとも部分的にデータユニット自身から(例えばインスタンスデータから)導出される。
【0113】
一実施形態では、フローコントローラ192は、校正ユニット194からの出力を受け取るように構成される。一実施形態では、校正ユニット194は、基板の状態についての情報を提供する。一実施形態では、基板の状態についての情報は、基板の状態の測定から導出される。一実施形態では、基板の状態についての情報は、オペレータによって指定される。一実施形態では、基板の状態には、(例えば、プログラマブルパターニングデバイス、および/またはリソグラフィ装置の据付環境に対して固定されている他の基準フレームに対する)基板の位置および/または速度が含まれる。一実施形態では、基板の状態には、基板の歪みおよび/または基板の向きが含まれる。一実施形態では、歪み/向きは、拡大、並進移動、回転、および/またはスキューから選択された一つまたは複数を含む。一実施形態では、校正ユニット194は、投影システム光学系の状態についての情報も提供する。一実施形態では、例えば基板の向きに対する投影システム光学系の向きが提供される。
【0114】
一実施形態では、フローコントローラ192は、データユニットが必要とされる時間に影響を与える一つ以上の因子の関数として、バッファメモリ196との間のデータユニットの送受信を制御する。一実施形態では、このような因子についての情報は、校正ユニット194によって提供される。一実施形態では、フローコントローラ192は、以下のうちの一つまたは複数の関数として、バッファメモリ196との間のデータユニットの送受信を制御する:1)プログラマブルパターニングデバイスに対する基板の走査速度、2)ターゲット(例えば基板)上の所望のドースパターンの拡大の度合い。このようにして、バッファメモリ196内にデータユニットを記憶するための平均時間が短くなる。そのため、バッファメモリ196のサイズおよび/または帯域幅要件を小さくできる。
【0115】
一実施形態では、基板適応ユニット198が提供される。一実施形態では、フローコントローラ192は、基板適応ユニット198からバッファメモリ196へのデータユニットの転送を制御する。一実施形態では、基板適応ユニット198は、リソースユニット190からデータユニットを受信する。一実施形態では、基板適応ユニット198は、受信したデータユニットに対して変換(例えば、幾何学的な変換)を適用する。一実施形態では、この変換は、(例えば投影システム光学系の幾何学的状態(例えば向き)に対する)基板の幾何学的状態を考慮するようにデータユニットを訂正する。一実施形態では、基板の幾何学的状態についての情報は、フローコントローラ192および/または校正ユニット194によって提供される。一実施形態では、この変換は、データユニットに対応するパターンが形成される領域における基板の幾何学的状態を考慮するように、各データユニットを訂正する。一実施形態では、基板の幾何学的状態には、基板の向き、並進移動、回転移動、スキュー、および/または拡大から選択される一つまたは複数が含まれる。
【0116】
リソースユニット190の下流で、基板の幾何学的状態を考慮するようにデータユニットを適応/変換すると、リソースユニット190により提供されるデータユニットが基板に依存する必要がある程度を低下させる。基板への依存を低下させると、基板が交換されるときに、リソースユニット190のレベルにおいてデータユニットが適応される必要がある程度を低下させる。したがって、データ処理要件を潜在的に小さくする。基板の幾何学的状態が完全に考慮される限界において、リソースユニット190によって
提供されるデータユニットは基板から独立していてもよい。データユニットを基板から独立にすることは、基板を交換するときにデータユニットをリロードする必要がなくなることを意味する。このため、基板交換時の処理負荷が軽くなり、および/または基板交換処理を迅速化し、および/またはスループットが改善する。
【0117】
リソースユニット190の下流で、基板の向きを考慮するようにデータユニットを適応/変換すると、基板の様々な向きを効率的に扱うことが可能になる(例えば、ある基板と次の基板とで異なる向き、長方形でない向き、および/または所望のドースパターンまたは所望のドースパターンを構成するブロックと同じ方向に整列されていない向き)。リソースユニット190において、またはリソースユニット190の前で、いずれのデータ処理操作も変更することなく異なる向きに対処することができる。
【0118】
リソースユニット190の下流の基板の速度を考慮すると、リソースユニット190において、またはリソースユニット190の前で、いずれのデータ処理操作も変更することなく異なる走査速度に対処することができる。
【0119】
一実施形態では、ドースパターンの一つまたは複数の領域がブランク領域である。一実施形態では、ブランク領域は、基板エッジの領域に位置する。一実施形態では、このようなブランク領域は、「黒の」ブロックまたは一様にゼロの強度/ドースを含むブロックによって表現される。このような黒のブロックを表現する単一のデータユニットは、ブランク領域を形成するために繰り返し再利用することができ、効率が改善される。
【0120】
一実施形態では、リソースユニット190は、基板から独立している一つ以上のデータユニットと、基板に依存する一つ以上のデータユニットとを処理するように構成される。一実施形態では、基板から独立したデータユニットおよび基板に依存するデータユニットは、上記にしたがって、(例えば、特定の基板の走査速度および/または幾何学的状態および/または向きを補償するように)リソースユニット190の下流で処理される。一実施形態では、基板から独立したデータユニットは、複数の異なる基板に対して同一である所望のドースパターンのブロックを表す。一実施形態では、基板に依存するデータユニットは、連番の基板の全てまたは一部を表すブロックなどの、露光中の特定の基板に固有である所望のドースパターンのブロックを表す。リソースユニット190が、基板依存データと基板独立データの両方を処理できるようにすると、連番などの小さな固有のフィーチャを除き、一連の基板について同一である所望のドースパターンを効率的に処理することが可能になる。例えば基板交換時に、基板に依存するデータのみをメモリ内にロードする必要がある。データの大半はリロードする必要がない。
【0121】
所望のデバイスパターンのベクタ形式表現を、対応するドースパターンのラスタ化表現またはサンプリング(sampled;標本化)表現に変換するプロセスは、かなりの計算リソースを必要とすることがある。求めたラスタ化表現またはサンプリング表現の処理は、かなりの記憶要件を必要とすることがある。求めたラスタ化表現またはサンプリング表現の転送または通信は、かなりの転送帯域を必要とすることがある。求めたラスタ化表現またはサンプリング表現を処理して、例えばプログラマブルパターニングデバイス用のセットポイントデータを生成するには、かなりの処理能力を必要とすることがある。
【0122】
一実施形態では、ラスタ化プロセスは、ラスタ化グリッドまたはサンプリンググリッドに基づき実行される。ラスタ化グリッドまたはサンプリンググリッドは、ラスタ化表現またはサンプリング表現が所望のドース値を定義する点または場所を定義する(すなわちサンプリング)。一実施形態では、ラスタ化グリッドまたはサンプリンググリッドは、一つまたは複数の基底関数によって定義される。一実施形態では、このような基底関数には、ディラックデルタ関数パルス、スプライン、フーリエ級数、および/または多項式から選択された一つまたは複数が含まれる。
【0123】
一実施形態では、所望のデバイスパターンの領域に対応するラスタ化表現またはサンプリング表現を求め、記憶し、または処理するための計算要件の測定値を求めるために、その領域の分析が実行される。一実施形態では、その領域に対応するラスタ化表現またはサンプリング表現を使用して処理されるシミュレートされたまたは実際のドースパターンの分析が実行される。
【0124】
一実施形態では、この分析に基づき、ラスタ化グリッドまたはサンプリンググリッドが修正される。一実施形態では、ラスタ化グリッドまたはサンプリンググリッドのジオメトリを変更するために、ラスタ化グリッドまたはサンプリンググリッドが修正される。一実施形態では、ラスタ化グリッドまたはサンプリンググリッドの基底関数を変更するために、ラスタ化グリッドまたはサンプリンググリッドが修正される。一実施形態では、ラスタ化グリッドまたはサンプリンググリッドの密度を変更するために、ラスタ化グリッドまたはサンプリンググリッドが修正される。
【0125】
一実施形態では、ラスタ化表現またはサンプリング表現を処理するための一つ以上の計算要件が利用可能なリソースに十分適合しているかが分析で明らかになる場合、ラスタ化グリッドまたはサンプリンググリッドがその適合を改善するように修正される。一実施形態では、計算要件が大きすぎる(利用可能なリソースを使いすぎる)ことが分析で明らかになる場合、ラスタ化グリッドまたはサンプリンググリッドの密度(例えば、単位面積当たりのグリッド点の数の平均によって表される)が小さくされる。一実施形態では、計算要件が小さすぎる(利用可能なリソースが活用されない)ことが分析で明らかになる場合、ラスタ化グリッドまたはサンプリンググリッドの密度が大きくされる。
【0126】
一実施形態では、シミュレートされたまたは実際のドースパターンの分析は、シミュレートされたまたは実際のドースパターンの画像品質の分析を含む。続いて、ラスタ化グリッドまたはサンプリンググリッドは、所望のレベルの画像品質を達成するように修正される。一実施形態では、画像品質が低すぎる場合、(例えばグリッド密度を増大することによって)画像品質を高めるように、ラスタ化グリッドまたはサンプリンググリッドが修正される。一実施形態では、画像品質が不必要に高い場合、(例えばグリッド密度を低下することによって)画像品質を落とすように、ラスタ化グリッドまたはサンプリンググリッドが修正される。一実施形態では、ラインエッジ粗さ、正規化イメージログスロープ(NILS)、またはその両方を決定するために、画像品質が分析される。
【0127】
これによって、利用可能なリソースに対してドースパターンの品質を最大化することができる。一実施形態では、異なる領域の全てに対して画像品質を最適化するために、異なる領域に対して独立に、ラスタ化グリッドまたはサンプリンググリッドの修正が適用される。一実施形態では、異なる領域におけるラスタ化グリッドは、異なる密度、ジオメトリおよび/または基底関数を有している。
【0128】
図17は、ベクタ形式表現をラスタ化表現またはサンプリング表現に変換する例示的な装置の模式図である。記憶デバイス210は、ベクタ形式表現を記憶し、ベクタ形式表現またはその部分をデータ処理デバイス220に提供するように構成されている。この実施形態のデータ処理デバイス220は、所望のデバイスパターンの領域を分析し、計算要件の測定値を求め、その領域を処理するか、またはその領域のラスタ化表現またはサンプリング表現を使用して生成されるシミュレートされたまたは実際のドースパターンを分析するように構成された分析器212を備える。分析器212は、分析結果をグリッド修正ユニット214に出力する。グリッド修正ユニット214は、ラスタ化グリッドまたはサンプリンググリッドを修正すべきか否かを決定し、修正すべき場合、ラスタ化グリッドまたはサンプリンググリッドの修正方法を決定する。
【0129】
一実施形態では、データ処理デバイス220は、ローパスフィルタ215(アンチエイリアシングフィルタと呼ばれることもある)とラスタライザ216とを備える。ローパスフィルタ15は、所望のデバイスパターンをフィルタリングし、一つまたは複数の高い空間周波数成分を取り除くように構成される。一実施形態では、ローパスフィルタ215は、カットオフ周波数または周波数範囲(実質的にブロックする周波数成分から実質的に通過させる周波数成分へとローパスフィルタの挙動が変化する周波数範囲を表す。)によって特徴付けられる。ローパスフィルタ215は、カットオフ周波数または周波数範囲よりも低い入力信号の周波数成分を実質的に通過させる。ローパスフィルタ215は、カットオフ周波数または周波数範囲よりも大きい入力信号の周波数成分を実質的にブロックする。
【0130】
一実施形態では、ラスタライザ216は、ローパスフィルタ215によってフィルタリングされた所望のデバイスパターンのバージョンをラスタライズまたはサンプリングするように構成される。
【0131】
一実施形態では、ローパスフィルタ215の挙動(例えばカットオフ周波数または周波数範囲)は、ラスタ化を実行するために使用すべきラスタ化グリッドまたはサンプリンググリッドの関数として選択される。一実施形態では、フィルタ挙動は、ラスタ化グリッドまたはサンプリンググリッドによる、フィルタリングされたドースパターンの不十分なサンプリングによって生じるエイリアシングを回避するように選択される。
【0132】
一実施形態では、グリッド修正ユニット214によって生成された修正後のラスタ化グリッドまたはサンプリンググリッドがローパスフィルタ215に出力され(それに従ってフィルタ特性を選択できるようにする)、ラスタライザ216に出力される(ラスタ化の実行時に使用される)。
【0133】
一実施形態では、ラスタライザ216からの出力218を使用して、露光装置のプログラマブルパターニングデバイスを駆動するための一連のセットポイントデータを生成する。
【0134】
図18は、修正されたラスタ化グリッドまたはサンプリンググリッドを求めるプロセスの一例を示す。一実施形態では、図示のプロセスは、
図17の実施形態の記憶デバイス210、分析器212、グリッド修正ユニット214、およびローパスフィルタ215によって実行される。一実施形態では、
図17に示す実施形態のラスタライザ216に出力が送られる。
【0135】
ステップ222で、所望のデバイスパターンのベクタ形式表現が(例えば記憶デバイス210から)供給される。
【0136】
フィルタステップ224で、(例えばローパスフィルタ215を使用して)所望のデバイスパターンが選択的にローパスフィルタリングされる。代替的な実施形態では、フィルタリング操作は、修正されたラスタ化グリッドまたはサンプリンググリッドを求めるプロセスの一部を構成せず、ステップ222が直接ステップ226に進み、ステップ224をバイパスする(経路225)。
【0137】
分析ステップ226で、所望のデバイスパターンのある領域が分析され、その領域のラスタ化表現またはサンプリング表現を求め、記憶し、または処理するのに必要な計算要件の測定値を求めるか、またはその領域のラスタ化表現またはサンプリング表現を使用して生成されたシミュレートされたまたは実際のドースパターンが分析されて、画像品質の測定値を求める。
【0138】
比較ステップ228で、求められた計算要件または画像品質の測定値が、記憶されているターゲット計算要件またはターゲット画像品質と比較230される。比較結果から、求められた測定値が低すぎるか高すぎることが明らかになると(分岐236)、ラスタ化グリッドまたはサンプリンググリッドが修正され(ステップ232)、修正されたラスタ化グリッドまたはサンプリンググリッドが分析ステップ226に提供される。分析ステップ226は、新たなラスタ化グリッドまたはサンプリンググリッドに基づき,前回に実行された分析を繰り返す。
【0139】
比較ステップ228における比較により、求められた測定値が、記憶されているターゲット要件230の許容誤差の範囲内であることが明らかになるか、または特定の(例えば予め定められた)回数の繰り返し(ステップ226、228、232を通るループ)が実行された場合、プロセスは分岐238を通り、出力ステップ234で、現在の修正されたラスタ化グリッドまたはサンプリンググリッドを出力する(比較ステップ228は初回は満足されず、この場合、初回の修正されていないラスタ化グリッドまたはサンプリンググリッドが出力される)。
【0140】
一実施形態では、複数の個別の領域に対して、計算要件または画像品質の測定値を求めるための分析が実行される。一実施形態では、個別に分析された領域のそれぞれに対応するラスタ化グリッドまたはサンプリンググリッドの部分が個別に修正される。一実施形態では、より複雑でない、または解像度の低いデバイスパターンの面積に対応する領域(または、領域内のデバイスパターンを特定の精度レベルに形成するのに適したドースパターンを生成するためにより密度の低いラスタ化グリッドまたはサンプリンググリッドを必要とする領域)に対して、より複雑な、またはより解像度の高いデバイスパターンの面積に対応する領域(または、領域内のデバイスパターンを特定の精度レベルに形成するのに適したドースパターンを生成するためにより密度の高いラスタ化グリッドまたはサンプリンググリッドを必要とする領域)内で高くなるように、ラスタ化グリッドまたはサンプリンググリッドの密度が修正される。こうして、ラスタ化グリッドまたはサンプリンググリッドの密度を空間的に変化させて、所望のデバイスパターンの一つまたは複数の要件(例えば、ラインエッジ粗さおよび/または正規化イメージログスロープ)に適合させることができる。全ての領域においてラスタ化グリッドまたはサンプリンググリッドが一様の密度を有する場合に対して、ラスタ化グリッドまたはサンプリンググリッドのグリッド点の総数を減らすことができる。パターンが相対的に疎なサンプリングしか必要としない領域のオーバーサンプリングがよりたやすく回避される。パターンが相対的に密なサンプリングを必要とする領域のアンダーサンプリングがよりたやすく回避される。
【0141】
一実施形態では、上述した計算要件には、記憶要件(例えば、物理メモリサイズ要件)、(例えば、ラスタ化データを転送するための)帯域要件、および/または(例えば、ラスタ化表現を下流処理して、プログラマブルパターニングデバイスのセットポイントデータを生成するか、セットポイントデータを生成するために使用可能な中間データを生成するための)処理要件から選択される一つまたは複数が含まれる。
【0142】
デバイス製造方法によると、パターンが投影された基板から、ディスプレイ、集積回路、又はその他の任意の品目等のデバイスが製造されうる。
【0143】
本書ではICの製造におけるリソグラフィ装置または露光装置の使用を例として説明しているが、本明細書に説明した装置は他の用途にも適用することが可能であるものと理解されたい。他の用途としては、集積光学システム、磁気ドメインメモリ用案内パターンおよび検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッドなどがある。当業者であればこれらの他の適用に際して、本明細書における「ウェーハ」あるいは「ダイ」という用語がそれぞれ「基板」あるいは「目標部分」という、より一般的な用語と同義であるとみなされると理解することができるであろう。本書に言及された基板は露光前または露光後において、例えばトラック(典型的にはレジスト層を基板に塗布し、露光後のレジストを現像する装置)、メトロロジツール、及び/またはインスペクションツールにより処理されてもよい。適用可能であれば、本明細書の開示はこれらのまたは他の基板処理装置にも適用され得る。また、基板は例えば多層ICを製造するために複数回処理されてもよく、その場合には本明細書における基板という用語は既に処理されている多数の処理層を含む基板をも意味し得る。
【0144】
「レンズ」という用語は、文脈が許す限り、屈折光学部品、回折光学部品、反射光学部品、磁気的光学部品、電磁気的光学部品、静電的光学部品、またはこれらの組み合わせを含む各種の光学部品のいずれかを指し示してもよい。
【0145】
本発明の特定の実施形態が上述されたが、説明したもの以外の態様で本発明が実施されてもよい。例えば、本発明は、上述の方法を記述する機械で読み取り可能な命令の1つまたは複数のシーケンスを含むコンピュータプログラム、または、そうしたコンピュータプログラムを記録したデータ記録媒体(例えば半導体メモリ、磁気ディスク、または光ディスク)の形式をとってもよい。また、機械で読み取り可能な命令は、2以上のコンピュータプログラムにより具現化されていてもよい。それら2以上のコンピュータプログラムは、1つ又は複数の異なるメモリ及び/またはデータ記録媒体に記録されていてもよい。
【0146】
上述の説明は例示であり、限定を意図しない。よって、以下に述べる請求項の範囲から逸脱することなく既述の本発明に変更を加えることができるということは、当業者には明らかなことである。