(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5887069
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月16日
(54)【発明の名称】電流閉じ込め構造および粗面処理を有するLED
(51)【国際特許分類】
H01L 33/14 20100101AFI20160303BHJP
H01L 33/22 20100101ALI20160303BHJP
【FI】
H01L33/00 150
H01L33/00 172
【請求項の数】17
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-117144(P2011-117144)
(22)【出願日】2011年5月25日
(62)【分割の表示】特願2007-552114(P2007-552114)の分割
【原出願日】2005年9月15日
(65)【公開番号】特開2011-160007(P2011-160007A)
(43)【公開日】2011年8月18日
【審査請求日】2011年6月24日
【審判番号】不服2014-25366(P2014-25366/J1)
【審判請求日】2014年12月11日
(31)【優先権主張番号】11/042,030
(32)【優先日】2005年1月24日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】592054856
【氏名又は名称】クリー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CREE INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン ピー.デンバーズ
(72)【発明者】
【氏名】ナカムラ シュウジ
(72)【発明者】
【氏名】マックス バトレス
【合議体】
【審判長】
河原 英雄
【審判官】
山口 裕之
【審判官】
近藤 幸浩
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−193338(JP,A)
【文献】
特開平2−78280(JP,A)
【文献】
特開平2−181980(JP,A)
【文献】
特開2004−47760(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00 - 33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光ダイオード(LED)であって、
関連した第1のコンタクト(110)を有する第1のドープ層(102)と、
第2のドープ層(106)と、
前記第1のドープ層(102)と前記第2のドープ層(106)との間の活性領域(108)と、
前記第1のコンタクト(110)と軸方向に並んだ電流閉じ込め層(114)と、
コンタクト層(112)と
を備え、
前記電流閉じ込め層(114)及び前記コンタクト層(112)は、いずれも前記第2のドープ層(106)に接し、前記コンタクト層(112)は、前記電流閉じ込め層(114)を取り囲み、
前記コンタクト層(112)は、前記電流閉じ込め層(114)の表面まで延出しておらず、
前記コンタクト層(112)及び前記電流閉じ込め層(114)の外側の面は、同一平面上にあることを特徴とするLED。
【請求項2】
前記電流閉じ込め層(114)は、前記第2のドープ層(106)に接することを特徴とする請求項1に記載のLED。
【請求項3】
前記電流閉じ込め層(114)が絶縁材料を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のLED。
【請求項4】
前記電流閉じ込め層(114)は、前記第1のコンタクト(110)及び前記電流閉じ込め層(114)と並んでいる前記活性領域(108)の面積と一致する前記活性領域(108)からの光の放射を妨げることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のLED。
【請求項5】
前記電流閉じ込め層(114)は、二酸化ケイ素(SiO2)、窒化アルミニウム(AlN)および窒化ケイ素(SiN)からなる群から選ばれる材料を含むことを特徴とする請求項3に記載のLED。
【請求項6】
前記電流閉じ込め層(114)は、二酸化ケイ素(SiO2)を含むことを特徴とする請求項3に記載のLED。
【請求項7】
前記第1のドープ層(102)と前記第2のドープ層(106)とは反対にドープされていることを特徴とする請求項1に記載のLED。
【請求項8】
前記電流閉じ込め層(114)は、前記第1のコンタクト(110)と同じ面積を有することを特徴とする請求項1に記載のLED。
【請求項9】
発光ダイオード(LED)であって、
関連した第1のコンタクト(110)を有する第1のドープ層(102)と、
第2のドープ層(106)と、
前記第1のドープ層(102)と前記第2のドープ層(106)との間の活性領域(108)と、
前記第1のドープ層(102)の上にあって、前記第1のドープ層(102)の一部のみを覆っている第1のコンタクト(110)と、
前記第2のドープ層(106)に接し、前記第2のドープ層(106)の一部のみを覆っている絶縁性の電流閉じ込め層(114)であって、前記第1のコンタクト(110)の下にある前記活性領域(122)からの光の放射を妨げる、絶縁性の電流閉じ込め層(114)と、
コンタクト層(112)と
を備え、
前記絶縁性の電流閉じ込め層(114)及びコンタクト層(112)は、いずれも前記第2のドープ層(106)に接し、前記コンタクト層(112)は、前記閉じ込め層(114)を取り囲み、
前記コンタクト層(112)は、前記絶縁性の電流閉じ込め層(114)の表面まで延出しておらず、
前記コンタクト層(112)及び前記電流閉じ込め層(114)の外側の面は、同一平面上にあることを特徴とするLED。
【請求項10】
前記コンタクト層(112)は、前記絶縁性の電流閉じ込め層(114)によって覆われていない前記第2のドープ層(106)を全て覆っていることを特徴とする請求項9に記載のLED。
【請求項11】
前記絶縁性の電流閉じ込め層(114)と前記第1のコンタクト(110)とは、軸方向に並んでいることを特徴とする請求項9に記載のLED。
【請求項12】
前記第1のドープ層(102)と前記第2のドープ層(106)とは反対にドープされていることを特徴とする請求項9に記載のLED。
【請求項13】
前記絶縁性の電流閉じ込め層(114)は、二酸化ケイ素(SiO2)を含むことを特徴とする請求項9に記載のLED。
【請求項14】
前記絶縁性の電流閉じ込め層(114)は、二酸化ケイ素(SiO2)、窒化アルミニウム(AlN)および窒化ケイ素(SiN)からなる群から選ばれる材料を含むことを特徴とする請求項9に記載のLED。
【請求項15】
前記絶縁性の電流閉じ込め層(114)は、前記第1のコンタクト(110)と同じ面積を有することを特徴とする請求項9に記載のLED。
【請求項16】
関連した第1のコンタクト(110)を有する第1のドープ層(102)と、第2のドープ層(106)と、前記第1のドープ層(102)と前記第2のドープ層(106)との間の活性領域(108)を製造するステップと、
前記第2のドープ層(106)の上にコンタクト層(112)を形成するステップと、
前記第1のコンタクト(110)と軸方向に並んだ、前記コンタクト層(112)の一部分をエッチング除去するステップと、
前記エッチング除去された一部分に、電流閉じ込め層(114)を形成するステップであって、前記コンタクト層(112)が前記電流閉じ込め層(114)を取り囲むように、前記電流閉じ込め層(114)を形成するステップと
を備え、
前記コンタクト層(112)及び前記電流閉じ込め層(114)の外側の面は、同一平面上にあることを特徴とする方法。
【請求項17】
第1のドープ層(102)と、第2のドープ層(106)と、前記第1のドープ層(102)と前記第2のドープ層(106)との間の活性領域(108)とを含むLEDを製造するステップと、
前記第1のドープ層(102)の上にあって、前記第1のドープ層(102)の一部のみを覆っている第1のコンタクト(110)を形成するステップと、
前記第2のドープ層(106)に接するコンタクト層(112)を形成するステップと、
前記コンタクト層(112)の一部分をエッチング除去するステップと、
前記エッチング除去された一部分に、絶縁性の電流閉じ込め層(114)を形成するステップであって、前記コンタクト層(112)が前記絶縁性の電流閉じ込め層(114)を取り囲むように、前記絶縁性の電流閉じ込め層(114)を形成するステップと
を備え、
前記絶縁性の電流閉じ込め層(114)は、前記第1のコンタクト(110)の下にある前記活性領域(122)からの光の放射を妨げ、
前記コンタクト層(112)及び前記絶縁性の電流閉じ込め層(114)の外側の面は、同一平面上にあることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオード(LED)に関し、より詳細には、LEDからの光抽出を向上させる新しい構造に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)は、電気エネルギーを光に変換する重要な部類の固体デバイスであり、一般に、2つの反対にドープされた層の間にサンドイッチ状に挟まれた半導体材料の活性層を備える。ドープ層の両端間にバイアスが加えられたとき、正孔と電子が活性層に注入され、そこで再結合して光を発生する。光は、活性層から全方向に放射され、LEDのすべての表面から放射される。
【0003】
高い降伏電界、広い禁制帯幅(GaNでは室温で3.36eV)、大きな伝導帯オフセット、および大きな電子飽和ドリフト速度を含む材料特性の特異な組合せのために、III族窒化物ベースの材料系から形成されたLEDに対する関心が最近非常に大きい。ドープされた活性層は一般に、シリコン(Si)、炭化珪素(SiC)、およびサファイア(Al
2O
3)等の様々な材料から作製することができる基板の上に形成される。SiCウェハが多くの場合に好まれるが、それはSiCウェハがIII族窒化物に非常に近い結晶格子整合を有し、その結果、より高い品質のIII族窒化物膜をもたらすためである。また、SiCは非常に高い熱伝導率を有するので、SiC上のIII族窒化物デバイスの全出力パワーは(サファイアまたはSiに形成された一部のデバイスの場合にそうであるように)ウェハの熱抵抗により制限されない。また、半絶縁性SiCウェハを利用できることで、商業デバイスを可能にするデバイス分離および寄生キャパシタンス減少の能力が与えられる。SiC基板は、ノースカロライナ州ダラムのCree Inc.から入手可能であり、この基板を製造する方法は、特許文献1、2、および3や科学文献で明らかにされている。
【0004】
LEDからの効率のよい光抽出は、高効率LEDの製造において大きな問題である。単一の出力結合面(out coupling surface)を有する従来のLEDでは、外部量子効率は、基板を通過するLEDの放射領域からの光の内部全反射(TIR)によって制限される。TIRは、LEDの半導体と周囲環境との間の屈折率の大きな差によって生じることがある。エポキシ(ほぼ1.5)などの周囲材料の屈折率に比べてSiC(ほぼ2.7)の屈折率が高いために、SiC基板を有するLEDの光抽出効率は比較的低い。この差のために、活性部分からの光線がSiC基板からエポキシの中に伝播し最終的にはLEDパッケージから脱出することができる脱出円錐(escape cone)が小さくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第Re34,861号明細書
【特許文献2】米国特許第4,946,547号明細書
【特許文献3】米国特許第5,200,022号明細書
【特許文献4】米国特許第6,410,942号明細書
【特許文献5】米国特許第6,657,236号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Windisch et al., “Impact of Texture-Enhanced Transmission on High-Efficiency Surface Textured Light Emitting Diodes,” Appl. Phys. Lett., Vol. 79, No. 15, Oct. 2001, Pgs. 2316-2317
【非特許文献2】Schnitzer et al. “30% External Quantum Efficiency From Surface Textured, Thin Film Light Emitting Diodes,” Appl. Phys. Lett., Vol. 64, No. 16, Oct. 1993, Pgs. 2174-2176
【非特許文献3】Windisch et al., “Light Extraction Mechanisms in High-Efficiency Surface Textured Light Emitting Diodes,” IEEE Journal on Selected Topics in Quantum Electronics, Vol. 8, No.2, March/April 2002, Pgs. 248-255
【非特許文献4】Streubel et al., “High Brightness AlGaNInP Light Emitting Diodes,” IEEE Journal on Selected Topics in Quantum Electronics, Vol. 8, No., March/April 2002
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
TIRを減少させ全体的な光抽出を改善するために様々な方法が開発されており、比較的一般的な方法の1つは、表面テクスチャリングである。表面テクスチャリングは、脱出円錐を見出す多数の機会を光子に与える多様な表面を実現することによって、光の脱出確率を高める。脱出円錐を見出さない光は、TIRを経験し続け、脱出円錐を見出すまで様々な角度でテクスチャ面(textured surface)から反射する。表面テクスチャリングの利点はいくつかの論文で述べられている。[非特許文献1、2、3、および4を参照されたい。]。
【0008】
Cree Inc.に譲渡された特許文献4は、第1および第2の広がり層(spreading layer)の間に形成された、電気的に相互接続された微小LEDのアレイを備えるLED構造を開示している。これらのスプレッダ(spreader)の両端間にバイアスが加えられたとき、微小LEDは光を放射する。微小LEDの各々からの光は、ほんの短い距離を進んだ後で表面に達し、それによってTIRが減少される。
【0009】
また、Cree Inc.に譲渡された特許文献5は、アレイ状に形成された内部および外部光学要素を使うことによってLEDの光抽出を向上させる構造を開示している。光学要素は、半球および角錐などの多くの異なる形を有し、LEDの様々な層の表面または層の中に位置付けされることがある。これらの要素は、光が屈折または散乱する表面を実現する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
簡単に一般的に言えば、本発明は、光抽出向上の特徴を有するLEDを対象とする。本発明の一態様では、LEDは、関連したpコンタクトを有するp型材料層と、関連したnコンタクトを有するn型材料層と、前記p型層と前記n型層との間の活性領域とを備える。さらに、LEDは、前記p型材料層と前記n型材料層のうちの少なくとも1つの中に形成された閉じ込め構造を備える。前記閉じ込め構造は、前記閉じ込め構造の面積と一致する活性領域の面積からの光の放射を実質的に妨げる。また、LEDは、前記p型材料層および前記n型材料層のうちの1つと関連した粗面を備える。
【0011】
本発明の他の態様では、LEDは、関連した第1のコンタクトおよび光が放射される第1の表面を有する第1の材料層と、関連した第2のコンタクトを有する第2の材料層と、前記第1の層と前記第2の層との間の活性領域とを備える。LEDは、さらに、前記第1の層および前記第2の層のうちの1つと一体化された閉じ込め構造を備える。前記閉じ込め構造は、前記第1のコンタクトとほぼ軸方向に一列に並んでおり、前記閉じ込め構造の面積と一致する前記活性領域の面積における光の放射を実質的に妨げる。
【0012】
本発明のさらに他の態様では、LEDは、関連した第1のコンタクトおよび光が放射される第1の表面を有する第1の材料層と、第2の材料層と、前記第1の層と前記第2の層との間の活性領域と、前記第2の材料層に隣接し、関連した基板コンタクトを有する電導性基板とを備える。LEDは、さらに、前記第1の層、前記第2の層および前記基板のうちの1つの中にある少なくとも1つの閉じ込め構造を備える。前記閉じ込め構造は、前記第1のコンタクトとほぼ軸方向に一列に並んでおり、さらに、前記活性領域の方に向かって流れる電流を、前記閉じ込め構造の面積と一致する前記活性領域の面積から遠ざけるように方向付ける。
【0013】
本発明のさらに他の態様では、LEDは、関連した第1のコンタクトおよび光が放射される第1の表面を有する第1の材料層と、関連した第2のコンタクトを有する第2の材料層と、前記第1の層と前記第2の層との間の活性領域とを備える。LEDは、さらに、前記第2のコンタクトと関連した閉じ込め構造を備える。前記閉じ込め構造は、前記活性領域の方に向かって流れる電流を、前記閉じ込め構造の面積と一致する前記活性領域の面積から遠ざけるように方向付ける。
【0014】
本発明のこれら及び他の態様および利点は、以下の詳細な説明および本発明の特徴を例示する添付図面から明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】電導性材料の2つの層間の活性領域と、電導性材料のいずれかの層に位置付けることができる電流閉じ込め構造とを備えるLEDのある概略的実施形態を示す断面図である。
【
図2】電導性材料の2つの層間の活性領域と、基板と、粗面処理された上面と、電導性材料のいずれかの層または基板に位置付けることができる電流閉じ込め構造とを備えるLEDの別の概略的実施形態を示す断面図である。
【
図3】n型材料の下層に電流閉じ込め構造を備える
図1のLEDの構成の断面図である。
【
図4】p型材料の上層の電流閉じ込め構造と、粗面処理された上面を有する透明電導性材料の層とを備える
図2のLEDの構成の断面図である。
【
図5】p型材料の下層の電流閉じ込め構造と、粗面処理された上面を有するn型材料の層とを備える
図1のLEDの構成の断面図である。
【
図6】n型材料の上層の電流閉じ込め構造と、粗面処理された上面を有するn型材料の層とを備える
図1のLEDの構成の断面図である。
【
図7】電導性材料の2つの層間の活性領域と、上側コンタクトと、下側コンタクトと、下側コンタクトの層内に位置付けられた電流閉じ込め構造とを備えるLEDの別の概略的実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、基礎(base)LED構造のp型材料層およびn型材料層のうちの少なくとも1つの中に形成された閉じ込め構造によって、発光ダイオード(LED)の光抽出の改善を実現する。閉じ込め構造は、LEDの上面の主放射面上のコンタクトとほぼ一列に並んでおり、閉じ込め構造および上面コンタクトの面積と一致する活性領域の面積からの光の放射を実質的に防げる。したがって、そうでなければ上面コンタクトの下で放射し吸収される可能性がある光が、活性層の他の領域と、コンタクトの吸収効果が相当に減少した放射面(emitting side)とにリダイレクトされる。好ましい実施形態では、電流閉じ込め構造は、イオン注入を使用して基礎LED構造の中に形成される。電流閉じ込め構造は、選択的酸化を使用してLED基礎構造に形成してもよい。電流閉じ込め構造は、エピタキシャル再成長を用いてLED構造の一部として形成してもよい。
【0017】
さらに、LEDは、吸収性コンタクトのまわりに粗面(roughed surface)を備えてもよい。粗面は、基礎LED構造の層の表面積のすべて又は一部に含まれてもよく、または、基礎LED構造に付けられた追加の材料層の表面積のすべて又は一部に含まれてもよい。例えば、十分に厚いn型材料層を有し、n型側が上であるLED構造では、n型層を粗面処理することが好ましいことがある。比較的薄いp型材料層を有し、p型側が上である基礎LED構造では、透明材料の層をp型層に追加し、その透明材料層を粗面処理することが好ましいことがある。透明材料の層を、n型側が上であるLED構造のn型層に追加してもよい。いずれの場合にも、粗面と、電流を粗面の方に方向付けて吸収性コンタクトから遠ざける電流閉じ込め構造との組合せは、さらなる光抽出の向上を実現する。そうでなければ内部全反射でLED内に捕獲される可能性のある光が脱出し、光放射に寄与することができるようにする多様な表面を実現することによって、粗面は光抽出を改善する。
【0018】
ここで図面、特に
図1および2を参照すると、本発明に従ったLED10の一実施形態が示されている。LED10は、光が放射される第1の表面14を有する第1の材料層12と、第2の材料層16と、第1の層と第2の層との間にサンドイッチ状に挟まれた活性材料の層18とを備える。第1の層12、第2の層16、および活性層18が、支持構造36の上に位置付けられた基礎LED構造を形成している。
【0019】
基礎LED構造は、III族窒化物ベースの材料系等の異なる半導体材料系から作製してもよい。III族窒化物は、窒素と、周期律表のIII族の元素、通常はアルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、およびインジウム(In)、との間で形成される半導体化合物を意味する。この用語は、また、AlGaNやAlInGaNのような三元化合物や三次(tertiary)化合物も意味する。好ましい実施形態では、活性材料の層18は、第1の層12および第2の層16と隣接接触し(adjacent contact)、第1および第2の層を形成する材料はGaNであり、第1の層と第2の層のいずれかがp型材料であり他方の層がn型材料である。この実施形態では、活性層を形成する材料はInGaNである。代替実施形態では、第1および第2の層の材料は、AlGaN、AlGaAs、またはAlGaInPであることがある。
【0020】
LED構成に応じて、支持構造36は基板またはサブマウントとすることができる。p型側が上であるLED構成では、支持構造36は基板である可能性があり、適切な基板は4Hポリタイプの炭化珪素であるが、3C、6Hおよび15Rポリタイプを含む他の炭化珪素ポリタイプを使用することもできる。炭化珪素は、サファイアよりもIII族窒化物に遥かに近い結晶格子整合を有し、その結果、より高い品質のIII族窒化物膜をもたらす。炭化珪素は、非常に高い熱伝導率を有するので、炭化珪素上のIII族窒化物デバイスの全出力パワーは、(サファイア上に形成された一部のデバイスの場合にそうであるように)基板の熱放散によって制限されない。また、炭化珪素基板を利用できることで、商業デバイスを可能にするデバイス分離および寄生キャパシタンス減少の能力が与えられる。SiC基板は、ノースカロライナ州ダラムのCree Inc.から入手可能であり、この基板を製造する方法は、特許文献1、2、および3や科学文献に明らかにされている。n型側が上であるLED構成では、支持構造36はサブマウントである可能性がある。
【0021】
第1のコンタクト22は第1の層12と関連し、第2のコンタクト24は第2の層16と関連している。コンタクト22、24のそれぞれの層12、16との関連は、直接的である場合があり、間接的である場合もある。第1のコンタクトが第1の層12と直接に接触し、かつ第2のコンタクト24が第2の層16と直接に接触している直接的な関連が、
図1に示されている。第2のコンタクト24では、基板36が非電導性材料で形成されたとき、この関連が存在する。間接的な関連は
図2に示され、第1のコンタクト22に関してはLEDが透明電導性材料の層25を備える場合に、また第2のコンタクト24に関しては支持構造36が電導性材料から形成された基板である場合に、間接的な関連が存在する可能性がある。直接的接触および間接的接触の両方で光抽出を向上させるために、第2のコンタクトは、銀(Ag)、アルミニウム(Al)またはロジウム(Rh)等の反射性材料から形成してもよい。
【0022】
電流閉じ込め構造20は、LEDと一体であり、(
図2に示されるように)第1の層12、第2の層16、または基板36のうちの少なくとも1つの中等のLED内の異なる位置に形成することができる。いくつかの実施形態では、2以上の電流閉じ込め構造が使用されることがあり、一実施形態では、電流閉じ込め構造20は、活性材料18の一部が閉じ込め構造20の間にあるように第1の層12および第2の層16の両方に形成されることがある。いくつかの実施形態では、閉じ込め構造20は、イオン注入または酸化等の当技術分野で知られたプロセスによって結晶構造または分子特性が変化させられた材料の層の領域であることがある。他の実施形態では、閉じ込め構造20は、第1または第2の層12、16の材料に対して反対にドープされた材料から形成された電流阻止層であってもよい。この電流阻止材料層は、既知のプロセスであるエピタキシャル再成長によって第1および第2の層の1つまたは複数に組み込まれてもよい。
【0023】
電流閉じ込め構造20は、第1のコンタクトの中心または軸26が閉じ込め構造の中心または軸28とほぼ一列に並ぶように、第1のコンタクト22に対して位置付けされる。閉じ込め構造20の断面積の大きさは、本質的に第1のコンタクト22の大きさを反映している。電流閉じ込め構造20の厚さは、層の全厚さの0.1%から80%までの範囲にあってもよい。例えば、厚さ1ミクロンのn型材料層では、電流閉じ込め構造20は、厚さ0.001から0.8ミクロンであってもよい。
【0024】
電流閉じ込め構造20は、活性領域18の方に向かって流れている電流30を、第1のコンタクト22と実質的に一致し一列に並んだ活性領域の部分32から遠ざけるように方向付ける。この電流の再方向付けは、第1のコンタクト22と一列に並んだ活性領域の部分32における電流電荷、すなわち「正孔」および「電子」の再結合を実質的に妨げ、したがって、この領域を本質的に不活性にする。
【0025】
光34は、活性材料18から放射され、LED構造を通って伝播する。光は活性材料18からすべての方向に放射するが、図示を容易にするために、図中の光はLEDの上面すなわち主放射面の方に向かう上向き方向だけが示されている。
図1において、上面は、上部材料層12の表面14である。
図2では、上面は、粗面処理された材料の層25である。
【0026】
図3を参照すると、p型材料の第1の層40およびn型材料の第2の層42を有するp型側が上であるLEDを備える、本発明による
図1の概略的なLEDの一実施形態が示されている。好ましい実施形態では、材料はGaNである。以下でさらに説明されるように、LED製造プロセス中に、電流閉じ込め構造44はn型材料層42内に組み込まれる。構造44は、n型材料内に不純物を添加することによって形成される。不純物の添加は、イオン注入によって行ってもよい。例えば、n型GaN材料の場合には、Alイオン又はGaイオンのいずれかを注入してもよい。
【0027】
pコンタクト46とnコンタクト48との間にバイアスを加えると、(p型材料の「正孔」移動の形の)電流がp型材料を通って、活性領域の方へ更に活性領域の中へ流れる。同様に、(n型材料の「電子」移動の形の)電流がn型材料42を通って、活性領域50の方へ更に活性領域50の中へ流れる。閉じ込め構造44の不純物のために、n型材料42中を流れる電流は、電流閉じ込め構造から遠ざかり、電流閉じ込め構造と実質的に一致し一列に並んだ活性領域の不活性部分54のまわりの部分52において活性領域50に入る。活性領域のこの部分は、活性領域の活性部分52と呼ばれる。
【0028】
また、p型材料40中を流れる電流も、電流閉じ込め構造44から遠ざかって、n型材料からの電流が入った活性領域の部分に流れ込む。p型材料電流のこの動きは、n型材料内に電流閉じ込め構造44が存在することと、活性領域50の活性部分52に存在するn型電流「電子」にp型電流「正孔」が引き付けられることの両方の組合せの結果である。
【0029】
電流閉じ込め構造44は、n型層42の深さに沿ったいくつかの位置のいずれかに位置付けることができる。これは、n型層42の成長プロセスを中断し、不純物を不完全なn型層に注入し、次に、成長プロセスを再開してn型層の残りを完成することによって行わうことができる。成長プロセスは、金属酸化物化学気相成長(MOCVD)、ハイブリッド気相エピタキシ(HVPE)、または分子線エピタキシ(MBE)を含む様々な既知のプロセスのいずれかとすることができる。例示的な閉じ込め構造形成プロセスは、n層に、180KeVのアルミニウムイオンを10
13、10
14、および10
15cm
-2のドーズで注入することを含む。好ましい実施形態では、n型電流が電流閉じ込め構造を完全に回って、さらに再び不活性領域54の方に流れるのを効果的に防ぐために、さらに、電流閉じ込め構造44が活性領域50の反対側のp型層の電流に及ぼす効果を高めるために、電流閉じ込め構造44は活性領域50の近くに位置付けられる。
【0030】
図4を参照すると、電流閉じ込め構造44がp型層40中に位置していることを除いて
図3を参照して説明したものと本質的に同一であるp型側が上であるLEDを備える、本発明による
図2の概略的なLED10の別の実施形態が示されている。また、基板58は電導性であり、したがってnコンタクト48とn型層42との間の間接的関連を可能にしている。透明電導性材料の層56がp型層40の上に備えられ、この電導性材料層の一部がpコンタクト46とp型層との間にサンドイッチ状に挟まれている。この材料層は、ZnO、In
2O
3、および酸化インジウム錫(ITO)から形成さしてもよい。
図4に示される電導性材料層の上面のすべては粗面処理されているが、pコンタクト46で覆われていない電導性材料層56の少なくとも一部が粗面処理される。透明電導性材料56の層と、電流閉じ込め構造44によって実現された吸収性コンタクト46から離れた局部的な光発生との組合せは、LEDの光抽出効果を高める。
【0031】
図5を参照すると、n型材料の第1の層60およびp型材料の第2の層62を有するn型側が上であるフリップチップLEDを備える、
図1の概略的なLED10の別の実施形態が示されている。追加の処理ステップとして、LEDの上の主放射面を露出させるために、一般に第1のn型層60に隣接している基板が除去される。
【0032】
好ましい実施形態では、LED材料はGaNである。LED製造プロセス中に、層60、62、64およびpコンタクト下部構造(substructure)をサブマウント78の上に裏返しにする前に、電流閉じ込め構造64がp型材料層62に組み込まれる。成長中にイオン注入によりp型材料に不純物を添加することによって、閉じ込め構造64が形成される。例えば、p型GaN材料の場合、Alイオン又はGaイオンのいずれかを打ち込むことができる。n型層の上面66は、光抽出粗面を形成するために、粗面処理される。この粗面は、光電気化学(PEC)エッチング等の当技術分野で知られたいくつかの方法のいずれかを使用して、エッチングにより実現してもよい。この構成において粗面は、p型側が上であるLEDの場合にp層の相対的な薄さのために一般に必要とされるような透明電導性材料の別個の追加層を介してではなく、直接n型層に加えられる。
【0033】
nコンタクト68とpコンタクト70との間にバイアスを加えると、電流はp型材料を通って活性領域72の方に流れ、さらに活性領域72の中に流れ込む。同様に、電流はn型材料60を通って活性領域72の方に流れ、さらに活性領域72の中に流れ込む。p型材料62を流れる電流は、電流閉じ込め構造64から遠ざかり、不活性部分76のまわりの活性部分74の活性領域72に入る。n型材料60を流れる電流もまた、電流閉じ込め構造64から遠ざかって、活性領域の活性部分74の中に流れ込む。
【0034】
図3の実施形態のように、電流閉じ込め構造64は、p型層の成長プロセスを中断し、不完全なp型層に不純物を注入し、次に、成長プロセスを再開してこの層を完成することによって、p型層62の深さに沿って様々な位置に位置付けてもよい。好ましい実施形態では、p型電流が電流閉じ込め構造を完全に回って、さらに再び活性領域76の方へ流れるのを効果的に防ぐために、さらに、電流閉じ込め構造が活性領域72の反対側のn型層の電流に及ぼす効果を高めるために、電流閉じ込め構造64は活性領域72の近くに位置付けられる。
図6を参照すると、別の実施形態において、
図1の概略的なLEDは、電流閉じ込め構造64がn型層60に位置付けられていることを除いて、
図5を参照して説明したものと本質的に同一のn型側が上であるLEDである。
【0035】
ここで
図7を参照すると、光の大部分が放射される第1の表面104を有する第1の材料層102、第2の材料層106、および第1の層と第2の層との間にサンドイッチ状に挟まれた活性材料の層108を備えるLED100が示されている。好ましい実施形態では、活性材料の層108は、第1の層102および第2の層106と隣接接触しており、第1および第2の層を形成する材料はGaNであり、活性層を形成する材料はInGaNである。代替実施形態では、第1および第2の層の材料は、AlGaN、AlGaAsまたはAlGaInPとすることができる。
【0036】
第1のコンタクト110は第1の層102と関連し、第2のコンタクト112は第2の層106と関連する。電流閉じ込め構造114は第2のコンタクトの層112に備えられ、さらに、第1のコンタクトの中心または軸116が閉じ込め構造の中心または軸118とほぼ一列に並ぶように、第1のコンタクト110に対して位置付けられている。第2のコンタクトの層112および閉じ込め構造114は、コンタクト材料の層を堆積し、コンタクト材料の層の一部をエッチング除去し、そしてその一部を閉じ込め構造の材料に取り替えることによって形成される。閉じ込め構造114は、SiO
2、AlN、およびSiNなどの絶縁性、非電導性材料から形成され、第1のコンタクト110の大きさと本質的に同じ断面積の大きさを有している。
【0037】
電流閉じ込め構造114は、活性領域108の方に向かって流れている電流120を、第1のコンタクト110と実質的に一致しかつ一列に並べられた活性領域の部分122から遠ざかるように方向付ける。この電流の再方向付けは、第1のコンタクト110と一列に並んだ活性領域の部分122における電流電荷、すなわち「正孔」および「電子」の再結合を実質的に妨げ、したがって、この領域を本質的に不活性にする。
【0038】
図3から6を参照して説明した実施形態のように、
図7の概略的なLEDは、第1の層102がn型層またはp型層のいずれかであり、第2の層106が第1の層の型と反対の型の層であるように形成される。LED100はまた、第1の層102の粗面処理された上面か、粗面処理された上面を有する追加の透明電導材料層かのいずれかの態様の粗面処理を含む。
【0039】
当業者によって理解されることであろうが、
図1〜7の実施形態で説明したような本発明の概念は、他のLED構成に組み込むことができる。例えば、
図1〜7のLEDは縦方向に、すなわちLEDの対向する側にコンタクトを有しているが、本発明は横方向に配列されたコンタクト、すなわち共振空洞LED等のLEDの同一側にコンタクトを有するLEDに適用してもよい。
【0040】
本発明の特定の形態を図示して説明してきたが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく様々な修正を行うことができることは、上記から明らかであろう。したがって、添付の特許請求の範囲以外によっては、本発明は限定されない意図である。