特許第5887164号(P5887164)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5887164
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月16日
(54)【発明の名称】ウエーハのレーザー加工方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20160303BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20160303BHJP
   B23K 26/14 20140101ALI20160303BHJP
【FI】
   H01L21/78 B
   B23K26/00 A
   B23K26/14
【請求項の数】2
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-39354(P2012-39354)
(22)【出願日】2012年2月24日
(65)【公開番号】特開2013-175606(P2013-175606A)
(43)【公開日】2013年9月5日
【審査請求日】2015年1月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】九鬼 潤一
【審査官】 竹口 泰裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−032419(JP,A)
【文献】 特開2006−196641(JP,A)
【文献】 特開2011−230153(JP,A)
【文献】 特開2005−142398(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/301、21/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエーハの上面に形成されたデバイスを格子状に区画する複数の分割予定ラインに沿ってレーザー光線を照射し、アブレーション加工を施してレーザー加工溝を形成するウエーハのレーザー加工方法であって、
該ウエーハの上面にレーザー光線を照射し、該分割予定ラインの内側に所定の間隔を持って2条のレーザー加工溝を形成するレーザー加工溝形成ステップを含み、
該レーザー加工溝形成ステップでは、該分割予定ラインの一方の岸の近傍に該レーザー加工溝を形成しつつ、該分割予定ラインの一方の岸の外側から該分割予定ラインの中央へ向かって該レーザー加工溝と加工点付近で交差するように気体を吹き付け、該アブレーション加工によって発生する粉塵が該分割予定ラインの該一方の岸の外側の該デバイスへと飛散することを規制することを特徴とするウエーハのレーザー加工方法。
【請求項2】
前記レーザー加工溝形成ステップにおいて、前記気体は、該レーザー加工溝が前記分割予定ラインに沿って形成される方向で、前記レーザー光線より前方側から吹き付けられることを特徴とする請求項1記載のウエーハのレーザー加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエーハ等のウエーハの表面に対してレーザー光線を照射し、アブレーション加工を施すウエーハのレーザー加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)等のデバイスが形成された半導体ウエーハや、LED(Light Emitting Diode)素子等のデバイスが形成されたサファイヤウエーハの分割予定ラインをレーザー加工装置によってレーザー光線を照射し、表面に溝を形成することで個々のデバイスに分割し、携帯電話、PC(Personal Computer)、LEDライト等の電子機器が製造されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この加工工程において、半導体ウエーハやサファイヤウエーハにレーザー光線を照射するとデブリと呼ばれる微細な粉塵が発生・散してデバイスの表面に堆積し、デバイスの品質を低下させることが知られている。その対策として、レーザー光線を照射する前に、ウエーハの表面に保護膜を被覆し、レーザー光線で表面に溝を形成後、保護膜に付着した粉塵ごと保護膜を洗浄して除去する加工方法が提案されている(例えば、特許文献2及び特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−032419号公報
【特許文献2】特開2006−196641号公報
【特許文献3】特開2004−322168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、保護膜によるデバイスの保護は充分とは言えず、大量の粉塵が発生する加工条件や、運動エネルギーの大きい粉塵(飛散速度が速い、遠距離まで飛散する等)は、保護膜を突き抜けてデバイスに付着してしまう場合もある。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、レーザー加工の際に生じる粉塵がデバイスに付着することを抑制できるウエーハのレーザー加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のウエーハのレーザー加工方法は、ウエーハの上面に形成されたデバイスを格子状に区画する複数の分割予定ラインに沿ってレーザー光線を照射し、アブレーション加工を施してレーザー加工溝を形成するウエーハのレーザー加工方法であって、該ウエーハの上面にレーザー光線を照射し、該分割予定ラインの内側に所定の間隔を持って2条のレーザー加工溝を形成するレーザー加工溝形成ステップを含み、該レーザー加工溝形成ステップでは、該分割予定ラインの一方の岸の近傍に該レーザー加工溝を形成しつつ、該分割予定ラインの一方の岸の外側から該分割予定ラインの中央へ向かって該レーザー加工溝と加工点付近で交差するように気体を吹き付け、該アブレーション加工によって発生する粉塵が該分割予定ラインの該一方の岸の外側の該デバイスへと飛散することを規制することを特徴とする。
【0008】
前記ウエーハのレーザー加工方法は、前記レーザー加工溝形成ステップにおいて、前記気体は、該レーザー加工溝が前記分割予定ラインに沿って形成される方向で、前記レーザー光線より前方側から吹き付けられることが望ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明のウエーハのレーザー加工方法は、レーザー光線を照射してレーザー加工を行いながら、分割予定ラインの外側から中央側へと気体を吹き付けるため、レーザー加工により発生するデブリを分割予定ラインの中央側へと移動させることができる。このために、レーザー加工により発生するデブリを分割予定ラインの外側にあるデバイスへと飛散することを抑制でき、レーザー加工の際に生じるデブリがデバイスに付着することを抑制することができるという効果を得られる。
【0010】
また、分割予定ラインの外側からレーザー加工溝と交差するように気体を吹き付ける。このために、飛散するデブリを分割予定ラインの中央寄りに確実に移動でき、レーザー加工の際に生じるデブリがデバイスに付着することを確実に抑制することができるという効果を得られる。
【0011】
さらに、平面視におけるレーザー光線の進行方向の前方側から気体を吹き付けることとなる。このために、飛散するデブリがレーザー光線の進行方向の後方に移動されるので、該デブリがレーザー光線に干渉することを抑制できる。したがって、安定したアブレーション加工を行うことができるという効果を得られる。この場合、レーザー加工溝とのなす角度が、5度程度となる向きに気体を吹き付けることが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施形態1に係るウエーハのレーザー加工方法を行うレーザー加工装置の構成例を示す図である。
図2図2は、実施形態1に係るレーザー加工装置のレーザー光線照射手段とチャックテーブルなどを示す斜視図である。
図3図3は、実施形態1に係るレーザー加工装置のレーザー加工溝を形成する状態を拡大して示す斜視図である。
図4図4は、実施形態1に係るレーザー加工装置のレーザー光線照射手段と気体吹付け手段などを示す斜視図である。
図5図5は、実施形態1に係るレーザー加工装置のレーザー加工溝を形成する状態を拡大して示す断面図である。
図6図6は、実施形態1に係るレーザー加工装置のレーザー加工溝を形成する状態の平面視を模式的に示す図である。
図7図7は、実施形態1に係るレーザー加工装置のレーザー加工溝を形成する状態の平面視を模式的に示す図である。
図8図8は、実施形態1に係るウエーハのレーザー加工方法のフローを示す図である。
図9図9は、実施形態2に係るレーザー加工装置のレーザー光線照射手段と気体吹付け手段などを示す斜視図である。
図10図10は、実施形態2に係るレーザー加工装置のレーザー加工溝を形成する状態の平面視を模式的に示す図である。
図11図11は、実施形態2に係るレーザー加工装置のレーザー加工溝を形成する状態の平面視を模式的に示す図である。
図12図12は、実施形態3に係るレーザー加工装置のレーザー加工溝を形成する状態の平面視を模式的に示す図である。
図13図13は、実施形態3に係るレーザー加工装置のレーザー加工溝を形成する状態の平面視を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0014】
〔実施形態1〕
図1は、実施形態1に係るウエーハのレーザー加工方法を行うレーザー加工装置の構成例を示す図である。図2は、実施形態1に係るレーザー加工装置のレーザー光線照射手段とチャックテーブルなどを示す斜視図である。図3は、実施形態1に係るレーザー加工装置のレーザー加工溝を形成する状態を拡大して示す斜視図である。図4は、実施形態1に係るレーザー加工装置のレーザー光線照射手段と気体吹付け手段などを示す斜視図である。図5は、実施形態1に係るレーザー加工装置のレーザー加工溝を形成する状態を拡大して示す断面図である。図6は、実施形態1に係るレーザー加工装置のレーザー加工溝を形成する状態の平面視を模式的に示す図である。図7は、実施形態1に係るレーザー加工装置のレーザー加工溝を形成する状態の平面視を模式的に示す図である。図8は、実施形態1に係るウエーハのレーザー加工方法のフローを示す図である。
【0015】
実施形態1に係るウエーハWのレーザー加工方法は、図1に示されたレーザー加工装置1により行われる。レーザー加工装置1は、ウエーハWに一旦保護膜P(図2などに示す)を被覆した後、この保護膜Pが被覆されたウエーハWを保持したチャックテーブル10と、レーザー光線照射手段20とを相対移動させることで、ウエーハWにアブレーション加工を施して、ウエーハWにレーザー加工溝S(図2に示す)を形成するものである。
【0016】
レーザー加工装置1は、図1に示すように、チャックテーブル10と、レーザー光線照射手段20と、撮像手段30と、気体吹付け手段90と、制御手段40とを含んで構成されている。なお、レーザー加工装置1は、更に、レーザー加工前後のウエーハWを収容するカセットエレベータ50と、レーザー加工前後のウエーハWを一時的に載置する仮置き手段60と、レーザー加工前のウエーハWに保護膜Pを被覆しかつレーザー加工後のウエーハWから保護膜Pを除去する保護膜形成兼洗浄手段70と、を含んで構成されている。さらに、レーザー加工装置1は、チャックテーブル10とレーザー光線照射手段20とをX軸方向に相対移動させる図示しないX軸移動手段と、チャックテーブル10とレーザー光線照射手段20とをY軸方向に相対移動させる図示しないY軸移動手段と、チャックテーブル10とレーザー光線照射手段20とをZ軸方向に相対移動させる図示しないZ軸移動手段とを含んで構成されている。
【0017】
カセットエレベータ50は、粘着テープTを介して環状フレームFに貼着されたウエーハWを複数枚収容するものである。カセットエレベータ50は、レーザー加工装置1の装置本体2にZ軸方向に昇降自在に設けられている。
【0018】
仮置き手段60は、カセットエレベータ50からレーザー加工前のウエーハWを一枚取り出すとともに、レーザー加工後のウエーハWをカセットエレベータ50内に収容するものである。仮置き手段60は、レーザー加工前のウエーハWをカセットエレベータ50から取り出すとともにレーザー加工後のウエーハWをカセットエレベータ50内に挿入する搬出入手段61と、レーザー加工前後のウエーハWを一時的に載置する一対のレール62とを含んで構成されている。
【0019】
保護膜形成兼洗浄手段70は、一対のレール62上のレーザー加工前のウエーハWが第1の搬送手段81により搬送されてきて、このレーザー加工前のウエーハWに保護膜Pを被覆するものである。また、保護膜形成兼洗浄手段70は、レーザー加工後のウエーハWが第2の搬送手段82により搬送されてきて、このレーザー加工後のウエーハWの保護膜Pを除去するものである。保護膜形成兼洗浄手段70は、スピンナテーブル71を有し、レーザー加工前後のウエーハWが載置され、保持される。スピンナテーブル71は、装置本体2に収容されているスピンナテーブル駆動源と連結されている。
【0020】
保護膜形成兼洗浄手段70は、スピンナテーブル71にレーザー加工前のウエーハWが保持されると、スピンナテーブル駆動源が発生する回転力により、ウエーハWを回転させる。そして、保護膜形成兼洗浄手段70は、図示しない塗布ノズルからウエーハWの上面WSに、PVA、PEGやPEO等の水溶性樹脂を含んだ液状樹脂を噴射することで、塗布し、液状樹脂が硬化することで、保護膜Pを形成する。保護膜形成兼洗浄手段70は、スピンナテーブル71にレーザー加工後のウエーハWが保持されると、スピンナテーブル駆動源が発生する回転力により、ウエーハWを回転させる。そして、保護膜形成兼洗浄手段70は、図示しない洗浄ノズルからウエーハWの上面WSに、洗浄液を噴射することで、保護膜Pを除去するとともにウエーハWの上面WSを洗浄する。
【0021】
なお、レーザー加工前のウエーハWは、塗布ノズルにより保護膜Pが被覆されて、第2の搬送手段82によりチャックテーブル10上に載置される。また、レーザー加工後のウエーハWは、洗浄ノズルにより保護膜Pが除去されて、第1の搬送手段81により仮置き手段60のレール62上に載置される。
【0022】
チャックテーブル10は、保護膜形成兼洗浄手段70のスピンナテーブル71上のレーザー加工前の保護膜Pが形成されたウエーハWが第2の搬送手段82により載置されてきて、当該ウエーハWを保持するものである。チャックテーブル10は、表面を構成する部分がポーラスセラミック等から形成された円盤形状であり、図示しない真空吸引経路を介して図示しない真空吸引源と接続され、表面に載置されたウエーハWを吸引することで保持する。なお、チャックテーブル10は、切削装置1の装置本体2に設けられたテーブル移動基台3(図2に示す)に着脱可能である。なお、テーブル移動基台3は、X軸移動手段によりX軸方向に移動自在に設けられかつY軸移動手段によりY軸方向に移動自在に設けられているとともに図示しない基台駆動源により中心軸線(Z軸と平行である)回りに回転自在に設けられている。また、チャックテーブル10の周囲には、クランプ部11が設けられており、クランプ部11が図示しないエアーアクチュエータにより駆動することで、ウエーハWの周囲の環状フレームFが挟時される。
【0023】
レーザー光線照射手段20は、レーザー光線L(図3に示す)を保護膜P側からウエーハWの上面WSに照射し、チャックテーブル10に保持されたウエーハWにレーザー加工溝Sを形成するものである。レーザー光線照射手段20は、チャックテーブル10に保持されたウエーハWに対して、Z軸移動手段によりZ軸方向に移動自在に設けられている。レーザー光線照射手段20は、図示しないレーザー光線発振手段と、レーザー光線発振手段により発振されたレーザー光線LをウエーハWの上面WSに照射する図示しない集光器とを含んで構成されている。レーザー光線発振手段は、ウエーハWの種類、加工形態などに応じて適宜選択することができ、例えば、YAGレーザー発振器やYVOレーザー発振器などを用いることができる。集光器は、レーザー光線発振手段により発振されたレーザー光線Lの進行方向を変更する全反射ミラーやレーザー光線Lを集光する集光レンズなどを含んで構成される。
【0024】
撮像手段30は、チャックテーブル10に保持されたウエーハWの上面WSを撮像するものである。撮像手段30は、チャックテーブル10に保持されたウエーハWに対して、Z軸移動手段50によりレーザー光線照射手段20と一体にZ軸方向に移動自在に設けられている。撮像手段30は、図示しないCCDカメラを備えている。CCDカメラは、チャックテーブル10に保持されたウエーハWの外周縁の一部とチャックテーブル10の保持面11aの一部とを撮像して得た画像を得る装置である。撮像手段30は、CCDカメラが得た画像の情報を制御手段40に出力する。
【0025】
気体吹付け手段90は、チャックテーブル10に保持されたウエーハWにレーザー光線照射手段20がレーザー光線Lを照射してレーザー加工溝Sを形成する際に生じる微細な粉塵(デブリ)Dbに気体を吹き付けて、この粉塵DbがデバイスDへと飛散することを規制するものである。実施形態1では、気体吹付け手段90の吹き付ける気体の流速は、400m/sec以上である。気体吹付け手段90は、図4に示すように、レーザー光線照射手段20の先端部に取り付けられたケース91と、複数の飛散方向規制ノズル92と、気体供給源93などを含んで構成されている。
【0026】
ケース91は、レーザー光線照射手段20の照射するレーザー光線Lを通すことのできる開口部を設けた箱状に形成されている。ケース91は、レーザー光線照射手段20の先端部に取り付けられて、前述した集光器などを収容している。飛散方向規制ノズル92は、レーザー光線照射手段20からのレーザー光線LのウエーハWに照射される位置K(以下、加工点と呼ぶ)から舞い上がる微細な粉塵Dbに気体を吹付けるものである。実施形態1では、飛散方向規制ノズル92は、二つ設けられ、これらの二つの飛散方向規制ノズル92は、X軸方向に間隔をあけて並べられている。また、これらの二つの飛散方向規制ノズル92は、レーザー光線照射手段20の先端よりも、レーザー加工溝Sが形成される際にウエーハW上をレーザー光線L即ち加工点Kが移動する方向(図4などに矢印Y1で示す)の前方側に配設されている。実施形態1では、二つの飛散方向規制ノズル92は、レーザー光線照射手段20の先端からY軸方向に間隔あけている。
【0027】
飛散方向規制ノズル92は、それぞれ、Z軸方向に直線状に延びかつケース91に取り付けられた円筒状のノズル本体94と、このノズル本体94の下端部からレーザー光線照射手段20の下方に向けて水平方向に延びた噴射ノズル95とを備えている。噴射ノズル95は、先細の円筒状に形成されて、気体供給源93から供給される加圧された気体をレーザー光線照射手段20の下方に向けて吹き付ける。実施形態1では、平面視において、図6及び図7に示すように、軸芯Ax上に加工点Kが位置するように、噴射ノズル95は、ノズル本体94から延びている。また、鉛直方向では、図5に示すように、軸芯Axが水平方向即ちウエーハWの上面WSと平行になり、かつ図5中に二点鎖線で示すデブリDbの飛散範囲の高さ方向の中央付近に向かって延びるように、噴射ノズル95は、ノズル本体94から延びている。
【0028】
気体供給源93は、飛散方向規制ノズル92に接続しており、加圧された気体を飛散方向規制ノズル92に供給し続けるものである。また、気体供給源93と飛散方向規制ノズル92との間には、開閉弁(電磁弁)96が設けられている。
【0029】
ここで、ウエーハWは、レーザー加工装置1によりレーザー加工される加工対象であり、本実施形態ではシリコン、サファイア、ガリウムなどを母材とする円板状の半導体ウエーハや光デバイスウエーハである。ウエーハWは、図2及び図3に示すように、上面WSに形成された複数のデバイスDが分割予定ラインとしての第1及び第2のストリートW1,W2によって格子状に区画されている。なお、第1のストリートW1と第2のストリートW2は、それぞれ複数設けられ、互いに交差(実施形態1では直交)している。また、実施形態1では、第1及び第2のストリートW1,W2の幅Hは、100μmである。ウエーハWは、図1及び図2に示すように、デバイスDが複数形成されている上面WSの反対側の裏面が粘着テープTに貼着され、ウエーハWに貼着された粘着テープTに環状フレームFが貼着されることで、環状フレームFに固定される。また、ウエーハWの上面WSには、層間絶縁膜材料としてLow−k材料(主に、ポーラス材料)で構成された図示しない所謂Low−k膜が形成されている。
【0030】
制御手段40は、レーザー加工装置1を構成する上述した構成要素をそれぞれ制御するものである。制御手段40は、ウエーハWに対する加工動作をレーザー加工装置1に行わせるものである。また、制御手段40は、ウエーハWに対する加工動作をレーザー加工装置1に行わせる際、即ち、レーザー光線照射手段20からウエーハWの上面WSにレーザー光線Lを照射する際に、二つの飛散方向規制ノズル92に接続された開閉弁96の一方を開き、他方を閉じて、一方の飛散方向規制ノズル92の噴射ノズル95から加工点Kに向かって気体を吹付けて、微細な粉塵DbがデバイスDへと飛散することを規制するものでもある。なお、制御手段40は、例えばCPU等で構成された演算処理装置やROM、RAM等を備える図示しないマイクロプロセッサを主体として構成されており、加工動作の状態を表示する表示手段83や、オペレータが加工内容情報などを登録する際に用いる図示しない操作手段と接続されている。
【0031】
次に、実施形態1に係るウエーハWのレーザー加工方法について説明する。実施形態1に係るウエーハWのレーザー加工方法は、ウエーハWの上面WSに形成されたデバイスDを格子状に区画する複数の第1及び第2のストリートW1,W2に沿ってレーザー光線Lを照射し、アブレーション加工を施してレーザー加工溝Sを形成する方法である。まず、デバイスDが形成された上面WSの裏面に粘着テープTを付着し、さらに、粘着テープTに環状フレームFを貼着する。そして、環状フレームFに粘着テープTを介して貼着されたウエーハWをカセットエレベータ50内に収容する。
【0032】
そして、オペレータが加工内容情報を制御手段40に登録し、オペレータから加工動作の開始指示があった場合に、レーザー加工装置1が加工動作を開始する。加工動作において、制御手段40が、図8中のステップST1において、レーザー加工前のウエーハWを搬出入手段61によりカセットエレベータ50から仮置き手段60まで搬出し、仮置き手段60の一対のレール62上に載置した後、第1の搬送手段81により保護膜形成兼洗浄手段70のスピンナテーブル71まで搬送し、スピンナテーブル71に保持させる。そして、制御手段40が、スピンナテーブル71を降下した後、スピンナテーブル71を中心軸線回りに回転させながら、塗布ノズルから液状樹脂をスピンナテーブル71上のウエーハWに噴出させる。すると、遠心力により液状樹脂がスピンナテーブル71に保持されたウエーハWの外周に移動する。所定時間経過後に、スピンナテーブル71を停止し、塗布ノズルからの液状樹脂の塗布を停止する。ウエーハWの上面WSに塗付された液状樹脂が硬化することで、ウエーハWの上面WSに液状樹脂で構成された保護膜Pを被覆される。このように、ステップST1では、ウエーハWの上面WSに液状樹脂を塗布して保護膜Pを形成する。なお、ステップST1は、保護膜被覆ステップをなしている。保護膜Pの被覆が終了すると、制御手段40が、スピンナテーブル71を上昇させ、第2の搬送手段82にスピンナテーブル71から保護膜Pが被覆されたウエーハWをチャックテーブル10まで搬送させ、チャックテーブル10に保持させて、ステップST2に進む。
【0033】
次に、制御手段40は、X軸移動手段及びY軸移動手段によりチャックテーブル10を移動して、撮像手段30の下方にチャックテーブル10に保持されたウエーハWを位置付け、撮像手段30に撮像させる。撮像手段30は、撮像した画像の信号を制御手段40に出力する。そして、制御手段40が、チャックテーブル10に保持されたウエーハWのストリートW1,W2と、ストリートW1,W2に沿ってレーザー光線Lを照射するレーザー光線照射手段20の集光器との位置合わせを行なうためのパターンマッチング等の画像処理を実行し、レーザー光線照射手段20のアライメントを遂行して、ステップST3に進む。
【0034】
次に、制御手段40は、ステップST3で検出したアライメント情報などに基づいて、X軸移動手段及びY軸移動手段によりチャックテーブル10を移動させ、基台駆動源によりチャックテーブル10を中心軸線回りに回転させ、Z軸移動手段によりレーザー光線照射手段20を移動させて、所定のストリートW1,W2の一端を集光器の直下に位置付ける。このとき、まず、所定のストリートW1,W2の一方の岸Sa(図6に示す)の近傍即ちデバイスDの近傍をレーザー光線照射手段20の集光器の直下に位置付ける。そして、制御手段40は、レーザー光線照射手段20の集光器からレーザー光線Lを照射しつつ、Y軸移動手段によりウエーハWを保持したチャックテーブル10を、レーザー光線照射手段20に対して、所定のストリートW1,W2に沿って矢印Y1方向に所定の加工速度で移動させる。
【0035】
すると、レーザー光線Lが照射された所定のストリートW1,W2の一方の岸Saの近傍には、ウエーハW及び保護膜Pの一部が昇華して、図6に示すように、レーザー加工溝Sが形成される。所定のストリートW1,W2の他端が集光器の直下に達したら、レーザー光線照射手段20からのレーザー光線Lの照射を停止するとともに、Y軸移動手段によるチャックテーブル10の移動を停止する。
【0036】
そして、制御手段40は、Y軸移動手段により、矢印Y1の逆向きにチャックテーブル10を移動させた後、X軸移動手段によりチャックテーブル10をX軸方向に移動させて、所定のストリートW1,W2の一端において、他方の岸Sb(図7に示す)の近傍即ちデバイスDの近傍をレーザー光線照射手段20の集光器の直下に位置付ける。そして、制御手段40は、前述したように、レーザー光線照射手段20の集光器からレーザー光線Lを照射しつつ、Y軸移動手段によりウエーハWを保持したチャックテーブル10を、レーザー光線照射手段20に対して、所定のストリートW1,W2に沿って矢印Y1方向に所定の加工速度で移動させる。制御手段40は、レーザー光線Lが照射された所定のストリートW1,W2の他方の岸Sbの近傍に、レーザー加工溝Sを形成する。所定のストリートW1,W2の他端が集光器の直下に達したら、レーザー光線照射手段20からのレーザー光線Lの照射を停止するとともに、Y軸移動手段によるチャックテーブル10の移動を停止する。こうして、ステップST3では、各ストリートW1,W2の内側に所定の間隔を持って2条のレーザー加工溝Sを形成する。なお、実施形態1では、各ストリートW1,W2に設けられた2条のレーザー加工溝Sと、各レーザー加工溝Sに最も近いデバイスDとの間隔Iは、10μmであり、各レーザー加工溝Sの幅Hlは、10μmである。
【0037】
制御手段40は、前述したように、順にストリートW1,W2にレーザー光線Lを照射して、これらのストリートW1,W2に2条のレーザー加工溝Sを形成して、ウエーハWの全てのストリートW1,W2に2条のレーザー加工溝Sを形成する。このように、ステップST3では、ウエーハWの上面WSにレーザー光線Lを照射し、ストリートW1,W2の内側に所定の間隔を持って2条のレーザー加工溝Sを形成する。なお、ステップST3は、レーザー加工溝形成ステップをなしている。
【0038】
また、レーザー加工溝形成ステップとしてのステップST3では、所定のストリートW1,W2の一方の岸Saの近傍にレーザー光線Lを照射してレーザー加工溝Sを形成しつつ、図6に示すように、一方の岸Saの外側寄りの一方の飛散方向規制ノズル92(以下、符合92aで示す)のみから加工点Kに向かって気体を吹き付ける。飛散方向規制ノズル92の噴射ノズル95の軸芯Axが平面視において加工点Kに向かって延びかつ鉛直方向においてデブリDbの飛散範囲の高さ方向の中央付近に向かって延びているので、一方の飛散方向規制ノズル92aは、所定のストリートW1,W2の一方の岸Saの外側から所定のストリートW1,W2の中央(幅方向の中央)へ向かって、レーザー加工溝Sと加工点K付近で交差するように、気体を吹き付ける。すると、アブレーション加工によって発生する微細な粉塵Dbが、図6に示すように、所定のストリートW1,W2の中央(幅方向の中央)へ向かって移動して、一方の岸Saの外側のデバイスDへの飛散することが規制される。
【0039】
さらに、レーザー加工溝形成ステップとしてのステップST3では、所定のストリートW1,W2の他方の岸Sbの近傍にレーザー光線Lを照射してレーザー加工溝Sを形成しつつ、図7に示すように、他方の岸Sbの外側寄りの他方の飛散方向規制ノズル92(以下、符合92bで示す)のみから加工点Kに向かって気体を吹き付ける。飛散方向規制ノズル92の噴射ノズル95の軸芯Axが平面視において加工点Kに向かって延びかつ鉛直方向においてデブリDbの飛散範囲の高さ方向の中央付近に向かって延びているので、他方の飛散方向規制ノズル92bは、所定のストリートW1,W2の他方の岸Sbの外側から所定のストリートW1,W2の中央(幅方向の中央)へ向かって、レーザー加工溝Sと加工点K付近で交差するように、気体を吹き付ける。すると、アブレーション加工によって発生する微細な粉塵Dbが、図7に示すように、所定のストリートW1,W2の中央(幅方向の中央)へ向かって移動して、他方の岸Sbの外側のデバイスDへの飛散することが規制される。
【0040】
また、レーザー加工溝形成ステップとしてのステップST3では、飛散方向規制ノズル92a,92bが前述した位置に配設されているので、飛散方向規制ノズル92a,92bから加工点Kに吹付けられる気体は、レーザー加工溝Sが所定のストリートW1,W2に沿って形成される方向で、レーザー光線Lより、当該レーザー光線LのウエーハWに対する移動方向である矢印Y1の前方側から加工点Kに吹き付けられる。
【0041】
全てのストリートW1,W2に2条のレーザー加工溝Sが形成されると、制御手段40は、X軸駆動手段によりチャックテーブル10を保護膜形成兼洗浄手段70の近傍まで移動させ、第2の搬送手段82にチャックテーブル10上のレーザー加工が施されたウエーハWを保護膜形成兼洗浄手段70のスピンナテーブル71上に載置させ、スピンナテーブル71に保持させる。そして、制御手段40は、スピンナテーブル71を下降させた後、スピンナテーブル71を中心軸線回りに回転させながら、洗浄ノズルから洗浄水をスピンナテーブル71上のウエーハWに噴出させる。すると、保護膜Pが水溶性樹脂で構成されているので、洗浄水及び遠心力により、保護膜Pがレーザー加工の際に付着した粉塵DbとともにウエーハWの上面WSから除去される(洗い流される)。保護膜Pの除去が終了すると、制御手段40は、スピンナテーブル71の中心軸線回りの回転及び洗浄ノズルからの洗浄水の供給を停止した後、スピンナテーブル71を上昇させて、第1の搬送手段81により仮置き手段60まで搬送する。制御手段40は、レーザー加工などが施されたウエーハWを搬出入手段61により仮置き手段60からカセットエレベータ50内に搬入する。
【0042】
以上のように、実施形態1に係るウエーハWのレーザー加工方法によれば、レーザー光線Lを照射してレーザー加工を行いながら、平面視においてストリートW1,W2の外側から中央側へと気体を吹き付けるため、レーザー加工により発生する粉塵DbをストリートW1,W2の中央側へと移動させることができる。このために、レーザー加工により発生する粉塵DbをストリートW1,W2の外側にあるデバイスDへと飛散することを抑制でき、レーザー加工の際に生じる粉塵DbがデバイスDに付着することを抑制することができる。
【0043】
また、レーザー光線Lの平面視における進行方向である矢印Y1の前方側から気体を吹き付けるので、飛散する粉塵Dbがレーザー光線Lの進行方向である矢印Y1の後方に移動されるので、該粉塵Dbがレーザー光線Lに干渉することを抑制でき、安定したアブレーション加工を行うことができる。
【0044】
なお、実施形態1では、レーザー加工溝Sと軸芯Axとのなす角度が5度程度となっており、レーザー加工溝Sとのなす角度が5度程度となる向きに、飛散方向規制ノズル92が気体を吹き付ける。
【0045】
〔実施形態2〕
次に、実施形態2に係るウエーハのレーザー加工方法を説明する。なお、実施形態1と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。
【0046】
図9は、実施形態2に係るレーザー加工装置のレーザー光線照射手段と気体吹付け手段などを示す斜視図である。図10は、実施形態2に係るレーザー加工装置のレーザー加工溝を形成する状態の平面視を模式的に示す図である。図11は、実施形態2に係るレーザー加工装置のレーザー加工溝を形成する状態の平面視を模式的に示す図である。
【0047】
実施形態2に係るウエーハWのレーザー加工方法を行うレーザー加工装置1では、図9に示すように、気体吹付け手段90は、一方(一つ)の飛散方向規制ノズル92aと、レーザー光線照射手段20の先端(集光器)と、他方(他の一つ)の飛散方向規制ノズル92bとを、順にX軸方向に並べている。
【0048】
実施形態2のレーザー加工装置1を用いたウエーハWのレーザー加工方法のレーザー加工溝形成ステップとしてのステップST3では、所定のストリートW1,W2の一方の岸Saの近傍にレーザー光線Lを照射してレーザー加工溝Sを形成しつつ、図10に示すように、一方の岸Saの外側寄りの一方の飛散方向規制ノズル92aのみから加工点Kに向かって気体を吹き付ける。飛散方向規制ノズル92の噴射ノズル95の軸芯Axが平面視において加工点Kに向かって延びかつ鉛直方向においてデブリDbの飛散範囲の高さ方向の中央付近に向かって延びているので、一方の飛散方向規制ノズル92aは、所定のストリートW1,W2の一方の岸Saの外側から所定のストリートW1,W2の中央(幅方向の中央)へ向かって、レーザー加工溝Sと加工点K付近で交差するように、気体を吹き付ける。すると、アブレーション加工によって発生する微細な粉塵Dbが、図10に示すように、所定のストリートW1,W2の中央(幅方向の中央)へ向かって移動して、一方の岸Saの外側のデバイスDへの飛散することが規制される。
【0049】
さらに、レーザー加工溝形成ステップとしてのステップST3では、所定のストリートW1,W2の他方の岸Sbの近傍にレーザー光線Lを照射してレーザー加工溝Sを形成しつつ、図11に示すように、他方の岸Sbの外側寄りの他方の飛散方向規制ノズル92bのみから加工点Kに向かって気体を吹き付ける。飛散方向規制ノズル92の噴射ノズル95の軸芯Axが平面視において加工点Kに向かって延びかつ鉛直方向においてデブリDbの飛散範囲の高さ方向の中央付近に向かって延びているので、他方の飛散方向規制ノズル92bは、所定のストリートW1,W2の他方の岸Sbの外側から所定のストリートW1,W2の中央(幅方向の中央)へ向かって、レーザー加工溝Sと加工点K付近で交差するように、気体を吹き付ける。すると、アブレーション加工によって発生する微細な粉塵Dbが、図11に示すように、所定のストリートW1,W2の中央(幅方向の中央)へ向かって移動して、他方の岸Sbの外側のデバイスDへの飛散することが規制される。
【0050】
実施形態2においても、実施形態1と同様に、レーザー加工により発生する粉塵DbをストリートW1,W2の外側にあるデバイスDへと飛散することを抑制でき、レーザー加工の際に生じる粉塵DbがデバイスDに付着することを抑制することができるとともに、安定したアブレーション加工を行うことができる。
【0051】
〔実施形態3〕
次に、実施形態3に係るウエーハのレーザー加工方法を説明する。なお、実施形態1及び実施形態2と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。
【0052】
図12は、実施形態3に係るレーザー加工装置のレーザー加工溝を形成する状態の平面視を模式的に示す図である。図13は、実施形態3に係るレーザー加工装置のレーザー加工溝を形成する状態の平面視を模式的に示す図である。
【0053】
実施形態3に係るウエーハWのレーザー加工方法を行うレーザー加工装置1では、図12及び図13に示すように、気体吹付け手段90は、飛散方向規制ノズル92を四つ備えている。四つのうちの二つの飛散方向規制ノズル92a,92bは、加工点K即ちレーザー光線照射手段20の先端よりも矢印Y1方向の前方に設けられ、かつ残りの二つの飛散方向規制ノズル92c,92dは、加工点K即ちレーザー光線照射手段20の先端よりも矢印Y1方向の後方に設けられている。また、全ての飛散方向規制ノズル92a,92b,92c,92dの噴射ノズル95の軸芯Axは、平面視において、加工点Kに向かって延び、かつ鉛直方向においてデブリDbの飛散範囲の高さ方向の中央付近に向かって延びている。
【0054】
実施形態3のレーザー加工装置1を用いたウエーハWのレーザー加工方法のレーザー加工溝形成ステップとしてのステップST3では、所定のストリートW1,W2の一方の岸Saの近傍にレーザー光線Lを照射してレーザー加工溝Sを形成しつつ、図12に示すように、ウエーハWに対してレーザー光線Lが矢印Y1方向に移動して、矢印Y1の前方側でかつ一方の岸Saの外側寄りの飛散方向規制ノズル92aのみから加工点Kに向かって気体を吹き付ける。飛散方向規制ノズル92の噴射ノズル95の軸芯Axが平面視において加工点Kに向かって延びかつ鉛直方向においてデブリDbの飛散範囲の高さ方向の中央付近に向かって延びているので、飛散方向規制ノズル92aは、所定のストリートW1,W2の一方の岸Saの外側から所定のストリートW1,W2の中央(幅方向の中央)へ向かって、レーザー加工溝Sと加工点K付近で交差するように、気体を吹き付ける。すると、アブレーション加工によって発生する微細な粉塵Dbが、図12に示すように、所定のストリートW1,W2の中央(幅方向の中央)へ向かって移動して、一方の岸Saの外側のデバイスDへの飛散することが規制される。
【0055】
さらに、レーザー加工溝形成ステップとしてのステップST3では、所定のストリートW1,W2の他方の岸Sbの近傍にレーザー光線Lを照射してレーザー加工溝Sを形成しつつ、図13に示すように、ウエーハWに対してレーザー光線Lを矢印Y1の逆向きの矢印Y2方向に移動させる。そして、矢印Y2の前方側でかつ他方の岸Sbの外側寄りの飛散方向規制ノズル92dのみから加工点Kに向かって気体を吹き付ける。飛散方向規制ノズル92の噴射ノズル95の軸芯Axが平面視において加工点Kに向かって延びかつ鉛直方向においてデブリDbの飛散範囲の高さ方向の中央付近に向かって延びているので、飛散方向規制ノズル92dは、所定のストリートW1,W2の他方の岸Sbの外側から所定のストリートW1,W2の中央(幅方向の中央)へ向かって、レーザー加工溝Sと加工点K付近で交差するように、気体を吹き付ける。すると、アブレーション加工によって発生する微細な粉塵Dbが、図13に示すように、所定のストリートW1,W2の中央(幅方向の中央)へ向かって移動して、他方の岸Sbの外側のデバイスDへの飛散することが規制される。
【0056】
また、実施形態3では、レーザー加工溝形成ステップとしてのステップST3では、飛散方向規制ノズル92から加工点Kに吹付けられる気体は、レーザー加工溝Sが所定のストリートW1,W2に沿って形成される方向で、レーザー光線Lより、当該レーザー光線LのウエーハWに対する移動方向である矢印Y1,Y2の前方側から加工点Kに吹き付けられる。
【0057】
実施形態3においても、実施形態1及び実施形態2と同様に、レーザー加工により発生する粉塵DbをストリートW1,W2の外側にあるデバイスDへと飛散することを抑制でき、レーザー加工の際に生じる粉塵DbがデバイスDに付着することを抑制することができるとともに、安定したアブレーション加工を行うことができる。
【0058】
また、実施形態3では、レーザー光線LをウエーハWに対して矢印Y1とこの矢印Y1の逆向きの矢印Y2との双方に移動させて、レーザー加工溝Sを形成する。このために、レーザー加工溝Sの加工能率を向上することができる。また、レーザー光線LをウエーハWに対して矢印Y1とこの矢印Y1の逆向きの矢印Y2との双方に移動させて、矢印Y1,Y2の前方側から気体を吹き付ける。したがって、粉塵Dbがデバイスに付着することを確実に抑制できる。
【0059】
前述した実施形態1〜実施形態3では、保護膜Pを一旦被覆した後、レーザー加工を施しているが、本発明は、これに限定されることなく、必ずしも保護膜Pを一旦被覆しなくても良い。また、前述した実施形態1〜実施形態3では、飛散方向規制ノズル92の噴射ノズル95が鉛直方向においてデブリDbの飛散範囲の高さ方向の中央付近に向かって延びているが、本発明ではこれに限定されることなく、飛散方向規制ノズル92の噴射ノズル95を、ウエーハWの上面WSからデブリDbの飛散範囲の上限の間の適当な位置に位置付けても良い。
【0060】
また、本発明は、特に、実施形態3において、レーザー光線LのウエーハWに対する移動方向の後方側の飛散方向規制ノズル92から気体を吸い込んで、レーザー加工の際に生じる粉塵Dbをレーザー光線LのウエーハWに対する移動方向の後方側の飛散方向規制ノズル92に吸い込んでも良い。
【0061】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0062】
D デバイス
Db 粉塵
K 加工点
L レーザー光線
S レーザー加工溝
Sa 一方の岸
W ウエーハ
W1 第1のストリート(分割予定ライン)
W2 第2のストリート(分割予定ライン)
WS 上面
ST3 レーザー加工溝形成ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13