【実施例】
【0021】
次に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(基材)
圧延銅箔としては、厚さ8μmの圧延銅箔(JX日鉱日石金属製の型番C1100)を用いた。
電解銅箔としては、厚さ8μmの無粗化処理の電解銅箔(JX日鉱日石金属製の型番JTC箔)を用いた。
Cuメタライズドフィルムとしては、厚さ8μmのメタライジングCCL(日鉱金属製の製品名「マキナス」)を用いた。
アルミニウム箔としては、厚さ12μmのアルミニウム箔(サン・アルミニウム工業社製)を用いた。
Alメタライズドフィルムとしては、厚さ12μmのPETフィルム(東洋紡績社製)に真空蒸着でアルミニウムを2μm形成したものを用いた。
【0022】
(合金層)
合金層を、上記基材の片面に形成した。表1に、合金層の形成方法を示す。
表1において「めっき」とは、
図1(a)に示す方法で第1めっき層21、第2めっき層22をこの順でめっきした後、表1に示す条件で熱処理したものである。表1において「合金めっき」は、合金めっきにより合金層を形成したものである。
なお、Ni、Sn、Ag、Cu、Zn、Ni−Sn合金、Co−Sn合金の各めっきは、以下の条件で形成した。
Niめっき:硫酸Ni浴(Ni濃度:20g/L、電流密度:2〜10A/dm
2)
Sn:フェノールスルホン酸Sn浴(Sn濃度:40g/L、電流密度:2〜10A/dm
2)
Agめっき:シアン化Ag浴(Ag濃度:10g/L、電流密度:0.2〜4A/dm
2)
Cuめっき:硫酸Cu浴(Cu濃度:20g/L、電流密度:2〜10A/dm
2)
Znめっき:硫酸Zn浴(Zn濃度:20g/L、電流密度:1〜5A/dm
2)
Ni−Sn:ピロリン酸塩浴(Ni濃度10g/L、Sn濃度10g/L、電流密度:0.1〜2A/dm
2)
Co−Snめっき:ピロリン酸塩浴(Co濃度20g/L、Sn濃度20g/L、電流密度:0.2〜3A/dm
2)
Ni−P:硫酸浴(Ni濃度:20g/L、P濃度:20g/L、電流密度:2〜4A/dm
2)
Ni−W:硫酸浴(Ni濃度:20g/L、W濃度:20g/L、電流密度:0.1〜2A/dm
2)
Ni−Fe:硫酸浴(Ni濃度:20g/L、Fe濃度:10g/L、電流密度:0.1〜2A/dm
2)
Ni−Co:硫酸浴(Ni濃度:20g/L、Co濃度:10g/L、電流密度:0.1〜2A/dm
2)
【0023】
表1において「スパッタ」は、Ni,Snをこの順でスパッタした後、表1に示す条件で熱処理したものである。
表1において「合金スパッタ」は、対応する合金のターゲット材を用いてスパッタして合金層を形成したものである。なお、合金スパッタで成膜される層は合金層そのものの組成であるので、熱処理は行わなかった。
なお、スパッタ、合金スパッタは以下の条件で行った。
スパッタ装置:バッチ式スパッタリング装置(アルバック社、型式MNS−6000)
スパッタ条件:到達真空度1.0×10
-5Pa、スパッタリング圧0.2Pa、スパッタリング電力50W
ターゲット:Ni(純度3N)、Ag(純度3N)、Ni−Sn(Ni:Sn=20:80at%)
【0024】
表1において「蒸着」は、以下の条件で行った。
蒸着装置:真空蒸着装置(アルバック社、型式MB05−1006)
蒸着条件:到達真空度5.0×10
-3Pa、電子ビーム加速電圧6kV
蒸着源:Ni(純度3N)、In(純度3N)
【0025】
(付着量の測定)
得られた電磁波シールド用金属箔を50mm×50mmに切り出し、表面の皮膜をHNO
3(2重量%)とHCl(5重量%)を混合した溶液に溶解した。そして、溶液中の金属濃度をICP発光分光分析装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製、SFC−3100)にて定量し、単位面積当たりの金属重量から付着量(μmol/dm
2)を算出した。
(層構成の判定)
得られた電磁波シールド用金属箔について、STEM(走査透過型電子顕微鏡、日本電子株式会社製JEM−2100F)による線分析を行い、層構成を判定した。分析した指定元素は、A元素群、B元素群、C元素群、C、S及びOである。また、上記した指定元素の合計を100%として、各元素の濃度(
質量%)を分析した(加速電圧:200kV、測定間隔:2nm)。
A元素群の元素の合計、及びB元素群の元素の合計を、それぞれ5
質量%以上含む層を合金層2とした。例えば、A元素群としてSn,Agの2元素を含む場合、SnとAgの濃度の合計値を採用する。
合金層2よりも表層側に位置し、A元素群の元素の合計を5
質量%以上含むと共に、B元素群の元素の合計が5
質量%未満の層を第2層5とした。
合金層2よりも下層側に位置し、B元素群の元素の合計を5
質量%以上含むと共に、A元素群の元素の合計が5
質量%未満の層を第1層3とした。
又、
図5に例示するチャートから、上記合金層として定義される深さ領域のC元素群の元素の面積と、他のすべての元素の合計の面積とをそれぞれ計算し、合金層中のC元素群の合計含有率を求めた。
【0026】
又、得られた電磁波シールド用金属箔の合金層側の面について、それぞれ耐食性試験(塩水噴霧試験、及びガス腐食試験)を行ったのち、合金層側の最表面の接触抵抗を測定した。
接触抵抗の測定は山崎精機株式会社製の電気接点シミュレーターCRS−1を使用して四端子法で測定した。プローブ:金プローブ、接触荷重:20gf、バイアス電流:10mA、摺動距離:1mm
塩水噴霧試験は、JIS−Z2371(温度:35℃、塩水成分:塩化ナトリウム、塩水濃度:5
質量%、噴霧圧力:98±10kPa、噴霧時間:48h)に従った。
○:接触抵抗が100mΩ以下
×:接触抵抗が100mΩ以上
塩水噴霧試験の評価が○であれば実用上、問題はない。
ガス腐食試験は、IEC60512−11−7の試験方法4(温度:25℃、湿度:75%、H2S濃度:10ppb、NO2濃度:200ppb、Cl2濃度:10ppb、SO2濃度:200ppb、試験時間:7日間または21日間)に従った。
○:21日間後も接触抵抗が100mΩ以下
△:21日間後は接触抵抗が100mΩ以上であったが、7日間後は接触抵抗が100mΩ以下
×:7日間後も接触抵抗が100mΩ以上
ガス腐食試験の評価が○又は△であれば実用上、問題はない。
【0027】
得られた結果を表1、及び
図4〜
図5に示す。
【0028】
【表1】
【0029】
表1から明らかなように、A元素群とB元素群(さらに、必要に応じてC元素群)からなる合金層を有する各実施例の場合、耐食性に優れていた。
なお、実施例6は、熱処理を行っていないが、SnとNiが拡散しやすい元素であるので、常温で合金層が形成された。又、実施例6は、熱処理を行っていないため、Snめっき層とNiめっき層のうち、合金層とならずにそれぞれSnとNiが残った第1及び第2層が形成された。実施例2〜5は、熱処理を行ったが、もとのSn層及びNi層の付着量を多くしたので、これら層の一部が合金化せずに残存し、第1又は第2層が形成された。他の実施例も同様である。
特に、A元素群の総付着量が10μmol/dm
2以上、かつB元素群の総付着量が40μmol/dm
2以上である実施例1〜20の場合、A元素群又はB元素群の総付着量が上記範囲未満である
参考例21、22に比べて耐食性がさらに優れていた。
なお、
図4、5は、それぞれ実施例4の試料のSTEMによる断面像、及びSTEMによる線分析の結果を示す。断面像におけるX層、Y層は、線分析の結果から、それぞれNi−Sn合金層、Ni層であることがわかる。
又、線分析の結果からわかるようにY層(合金層)のSnとNiの質量比が、Ni/Sn=3/7程度となっており、この値と、Sn−Ni状態図より合金層がNi
3Sn
4であると考えられる。なお、
図5の横軸の距離0.00μmが、銅箔基材の厚み方向の任意の位置であり、
図5の右側が表層側である。
【0030】
一方、合金層を形成せず、Ni、又はNiCo層を形成した比較例1、4、5の場合、塩水噴霧試験及びガス腐食試験の評価が劣り、耐食性が大幅に劣った。
B元素群としてCuを用いて合金層を形成した比較例2、6の場合、ガス腐食試験の評価が劣り、耐食性が劣った。これは、Cuが合金層に耐食性を付与しないためと考えられる。
又、A元素群としてZnを用いて合金層を形成した比較例3の場合も、ガス腐食試験の評価が劣り、耐食性が劣った。これは、Znが合金層に耐食性を付与しないためと考えられる。