特許第5887412号(P5887412)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5887412
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月16日
(54)【発明の名称】液体クロマトグラフ装置及び送液装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/32 20060101AFI20160303BHJP
   G01N 30/26 20060101ALI20160303BHJP
   G01N 30/34 20060101ALI20160303BHJP
【FI】
   G01N30/32 A
   G01N30/26 M
   G01N30/32 C
   G01N30/34 A
【請求項の数】14
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-531560(P2014-531560)
(86)(22)【出願日】2013年7月29日
(86)【国際出願番号】JP2013070407
(87)【国際公開番号】WO2014030498
(87)【国際公開日】20140227
【審査請求日】2014年10月22日
(31)【優先権主張番号】特願2012-183738(P2012-183738)
(32)【優先日】2012年8月23日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100100310
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 学
(74)【代理人】
【識別番号】100098660
【弁理士】
【氏名又は名称】戸田 裕二
(74)【代理人】
【識別番号】100091720
【弁理士】
【氏名又は名称】岩崎 重美
(72)【発明者】
【氏名】秋枝 大介
(72)【発明者】
【氏名】和田 宏之
(72)【発明者】
【氏名】福田 真人
(72)【発明者】
【氏名】田上 豊明
(72)【発明者】
【氏名】塚田 修大
【審査官】 赤坂 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−077521(JP,A)
【文献】 特開2009−180617(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00−30/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶離液の吸入口と吐出口を有するシリンダと、前記シリンダ内を往復運動するプランジャと、をそれぞれ備える第1のポンプユニットと第2のポンプユニットとを直列または並列に接続し、前記溶離液の吸引、吐出を行う送液ポンプと、
前記送液ポンプが吸引する複数の溶離液の種類を開閉動作によって切り替える弁手段と、
前記送液ポンプの吐出口から吐出される溶離液の圧力を検出する圧力センサと、
当該吐出された溶離液の流路中に液体試料を注入するオートサンプラと、
当該注入された液体試料を成分ごとに分離するカラムと、
当該分離された液体試料を成分ごとに検出する検出器と、
前記弁手段の開閉動作を制御する制御部と、を有する液体クロマトグラフ装置であって、
前記制御部は、
記プランジャによる前記溶離液の圧縮工程および吐出工程において取得される駆動情報に基づいて、
記プランジャが当該複数の溶離液の吸引動作を開始したのち、前記溶離液の吸引が開始されるまでの減圧区間と、
前記減圧区間ののちに、前記溶離液が実際に吸引されている実吸引区間と、を求め、
前記弁手段の開閉動作が、当該求めた実吸引区間内において行われるように制御することを特徴とする液体クロマトグラフ装置。
【請求項2】
請求項1に記載された液体クロマトグラフ装置において、
前記プランジャを駆動するモータを備え、
前記制御部は、
記プランジャによる前記溶離液の圧縮工程における移動距離と、前記プランジャによる前記溶離液の送液工程における移動距離と、に基づいて、
前記モータが、前記減圧区間において前記プランジャの動作に要するパルス数と、前記実吸引区間において前記プランジャの動作に要するパルス数と、を求めることを特徴とする液体クロマトグラフ装置。
【請求項3】
請求項1に記載された液体クロマトグラフ装置において、
前記制御部は、
記プランジャによる前記溶離液の圧縮工程における移動距離と、前記プランジャによる前記溶離液の送液工程における移動距離と、に基づいて、
記プランジャが、前記減圧区間に移動する距離と、前記実吸引区間に移動する距離と、を求めることを特徴とする液体クロマトグラフ装置。
【請求項4】
請求項1に記載された液体クロマトグラフ装置において、
前記制御部は、
前記実吸引区間内において、当該吸引される溶離液の混合比を変化させるように、前記弁手段の開閉動作を制御することを特徴とする液体クロマトグラフ装置。
【請求項5】
請求項1に記載された液体クロマトグラフ装置において、
前記シリンダ内の圧力を検出する圧力センサをさらに備え、
前記制御部は、
前記シリンダ内の圧力を検出する圧力センサから検出される第1の圧力値と、
前記ポンプの吐出口から吐出される溶離液の圧力を検出する圧力センサから検出される第2の圧力値と、に基づいて、当該溶離液の送液を制御することを特徴とする液体クロマトグラフ装置
【請求項6】
請求項5に記載された液体クロマトグラフ装置において、
前記プランジャを駆動するモータを備え、
前記制御部は、
記プランジャによる前記溶離液の圧縮工程における移動距離と、前記プランジャによる前記溶離液の送液工程における移動距離と、に基づいて、
前記モータが、前記減圧区間において前記プランジャの動作に要するパルス数と、前記実吸引区間において前記プランジャの動作に要するパルス数と、を求めることを特徴とする液体クロマトグラフ装置。
【請求項7】
請求項5に記載された液体クロマトグラフ装置において、
前記制御部は、
記プランジャによる前記溶離液の圧縮工程における移動距離と、前記プランジャによる前記溶離液の送液工程における移動距離と、に基づいて、
記プランジャが、前記減圧区間に移動する距離と、前記実吸引区間に移動する距離と、を求めることを特徴とする液体クロマトグラフ装置。
【請求項8】
溶離液の吸入口と吐出口を有するシリンダと、前記シリンダ内を往復運動するプランジャと、をそれぞれ備える第1のポンプユニットと第2のポンプユニットとを直列または並列に接続し、前記溶離液の吸引、吐出を行うポンプ部と、
前記ポンプ部が吸引する複数の溶離液の種類を開閉動作によって切り替える弁手段と、
前記ポンプ部の吐出口から吐出される溶離液の圧力を検出する圧力センサと、
前記弁手段の開閉動作を制御する制御部と、を有する送液装置であって、
前記制御部は、
記プランジャによる前記溶離液の圧縮工程および吐出工程において取得される駆動情報に基づいて、
記プランジャが当該複数の溶離液の吸引動作を開始したのち、前記溶離液の吸引が開始されるまでの減圧区間と、
前記減圧区間ののちに、前記溶離液が実際に吸引されている実吸引区間と、を求め、
前記弁手段の開閉動作が、当該求めた実吸引区間内において行われるように制御することを特徴とする送液装置。
【請求項9】
請求項8に記載された送液装置において、
前記プランジャを駆動するモータを備え、
前記制御部は、
記プランジャによる前記溶離液の圧縮工程における移動距離と、前記プランジャによる前記溶離液の送液工程における移動距離と、に基づいて、
前記モータが、前記減圧区間において前記プランジャの動作に要するパルス数と、前記実吸引区間において前記プランジャの動作に要するパルス数と、を求めることを特徴とする送液装置。
【請求項10】
請求項8に記載された送液装置において、
前記制御部は、
記プランジャによる前記溶離液の圧縮工程における移動距離と、前記プランジャによる前記溶離液の送液工程における移動距離と、に基づいて、
記プランジャが、前記減圧区間に移動する距離と、前記実吸引区間に移動する距離と、を求めることを特徴とする送液装置。
【請求項11】
請求項8に記載された送液装置において、
前記制御部は、
前記実吸引区間内において、当該吸引される溶離液の混合比を変化させるように、前記弁手段の開閉動作を制御することを特徴とする送液装置。
【請求項12】
請求項8に記載された送液装置において、
前記シリンダ内の圧力を検出する圧力センサをさらに備え、
前記制御部は、
前記シリンダ内の圧力を検出する圧力センサから検出される第1の圧力値と、
前記ポンプの吐出口から吐出される溶離液の圧力を検出する圧力センサから検出される第2の圧力値と、に基づいて、当該溶離液の送液を制御することを特徴とする送液装置。
【請求項13】
請求項10に記載された送液装置において、
前記プランジャを駆動するモータを備え、
前記制御部は、
記プランジャによる前記溶離液の圧縮工程における移動距離と、前記プランジャによる前記溶離液の送液工程における移動距離と、に基づいて、
前記モータが、前記減圧区間において前記プランジャの動作に要するパルス数と、前記実吸引区間において前記プランジャの動作に要するパルス数と、を求めることを特徴とする送液装置。
【請求項14】
請求項10に記載された送液装置において、
前記制御部は、
記プランジャによる前記溶離液の圧縮工程における移動距離と、前記プランジャによる前記溶離液の送液工程における移動距離と、に基づいて、
記プランジャが、前記減圧区間に移動する距離と、前記実吸引区間に移動する距離と、を求めることを特徴とする送液装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体クロマトグラフ装置及び送液装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体クロマトグラフは、送液装置により送液される溶媒(溶離液)に分析対象試料を加え、分離カラムで試料の成分分離を行い、異なる時間で送られる各成分を分光計等の検出器で検出して、試料の成分を特定する分析装置である。
【0003】
液体クロマトグラフの送液装置の一例として、シリンダ内で往復運動するプランジャにより溶離液の送液を行う方式が知られている。
【0004】
上記のような装置を用いた液体クロマトグラフの送液においては、複数の溶離液を用いて溶離液の組成を変化させながら送液することで、分析対象試料の分離カラムでの分離度が向上し、分析時間の短縮をはかることができるグラジエント送液システムがある。
【0005】
本システムには、送液を行うシリンダの上流側での大気圧から低圧条件下で複数の溶離液の組成を変化させる低圧グラジエント方式と呼ばれる送液方式がある。低圧グラジエント方式では、送液装置が吸引を開始した際に、送液装置上流側に設置された溶離液の組成を変化させる機構(一般的には各溶離液に接続された開閉弁の開閉時間を調整する)が吸引時間の間に溶離液の組成を変化させ、送液装置に複数の溶離液を吸引させることで実現される。
【0006】
このように、低圧グラジエント方式では送液装置の上流側で溶離液の組成を変更していることから、送液圧力が高くなるにつれて溶離液の混合性能が低下することがある。
【0007】
これは、溶離液の吐出を終了したシリンダ内のプランジャが吸引動作を開始した際、シリンダ内の圧力が大気圧まで減圧されるまでの間は溶離液がシリンダ内に吸引されないことにより、混合比の組成を変化させる時間と実吸引時間に差が出てしまうことが原因である。このような溶離液の混合比の精度は、最終的な分析結果にも影響を及ぼすこととなる。
【0008】
特許文献1では、送液圧力から大気圧まで減圧される時間を予測に基づいて算出し、混合比の組成を変化させる時間を補正する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3172429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
送液する溶離液の種類は多種多様であり、各々の溶離液は、体積弾性係数等の物性値について、異なる値を有する。また、溶離液の温度等といった種々の条件による影響を受け、これらの因子は変化することがある。
【0011】
しかしながら、特許文献1に開示された方法においては、送液圧力の情報にのみ基づいて混合比の補正を行っているため、取り扱う溶離液の種類、及びその性質については何ら考慮されていない。従って本方法では、溶離液の種類や混合比、及びその他の事情によって、その体積弾性係数等の特性に変化が生じた場合には対処することができない。
【0012】
本発明は、溶離液の種類や温度、混合比の組成、送液圧力に関わらず正確かつ高精度な低圧グラジエント方式を有する装置、及び当該装置を用いた方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するための一態様として、溶離液の吸入口と吐出口を有するシリンダと、前記シリンダ内を往復運動するプランジャと、を有し、前記溶離液の吸引、吐出を行うポンプ部と、前記ポンプ部が吸引する複数の溶離液の種類を開閉動作によって切り替える弁手段と、前記ポンプ部の吐出口から吐出される溶離液の圧力を検出する圧力センサと、前記弁手段の開閉動作を制御する制御部と、を有する装置であって、前記制御部は、前記プランジャが当該複数の溶離液の吸引動作を開始したのち、前記溶離液の吸引が開始されるまでの減圧区間と、前記減圧区間ののちに、前記溶離液が実際に吸引されている実吸引区間と、を求め、前記弁手段の開閉動作が、当該求めた実吸引区間内において行われるように制御することを特徴とする装置を提供する。
【発明の効果】
【0014】
上記一態様によれば、溶離液の種類や、その温度、混合比の組成、及び送液圧力等に関わらず、正確かつ高精度な低圧グラジエント方式による送液を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】液体クロマトグラフ装置の構成の概略を示す図。
図2】液体クロマトグラフ装置に搭載される送液装置の構成の一例を示す図。
図3】送液装置の吸引区間の圧力変化の一例を示すグラフ。
図4】本発明の実施の形態に係る制御ユニット(データ処理装置)22の構成の一部を示す図。
図5】本発明の実施の形態に係る送液の手順を示すフローチャート。
図6】本発明の実施の形態に係る操作手順とそれに伴うデータ処理装置110の処理を示すフローチャート。
図7】本発明の実施の形態に係る、第1シリンダの圧力変化の概略図とシリンダの送液状態と逆止弁、開閉弁の状態を示す図。
図8図2に示した実施形態とは異なる送液装置の構成例を示す図。
図9図2図8に示した実施形態とは異なる送液装置の構成例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0016】
図1は、低圧グラジエント方式による送液を行う液体クロマトグラフ装置の構成の概略を示す。
【0017】
本装置では、複数の容器1a〜1dに収納された複数の種類の溶離液が、複数の開閉弁を有する切換装置2により選択され、送液装置3により吸引、吐出される。吐出された溶離液は、切換装置2へ送液される。
【0018】
切換装置2は、容器1a〜1dの溶離液を選択的に切り替えることで、送液装置3から送液される溶離液の混合比を変化させ、溶離液の組成比を変えることができる。
【0019】
試料注入部4は、切換装置2によって切り換えられた溶離液の流路中に、分析対象である液体試料を注入する。
【0020】
注入された液体試料は、分離カラム5にて成分ごとに分離される。分子量や疎水性、電荷等の違いにより、分離カラム5から出てくる時間は各成分において異なる。
【0021】
分離カラム5は、温度を一定に保つためにカラムオーブン内に設置される場合もある。
【0022】
検出器6は、時間差を生じて分離カラム5から出てきた各成分を検出する。
【0023】
図2は、図1に示した送液装置3の構成の一例を示している。
【0024】
本構成では、プランジャとシリンダからなる2つのポンプユニットを直列に接続し、シリーズ方式による送液を採用している。
【0025】
各々のポンプユニットにおいては、カムにより、モータの回転運動をプランジャの往復運動に変換している。
【0026】
モータ21の回転動作は、ベルト18によってカムシャフト17へ伝達され、第1カム15により第1プランジャ13が往復動作し、第2カム16により第2プランジャ14が往復動作する。
【0027】
カムシャフト17の回転数は、制御ユニット22にて認識される。
【0028】
この認識の仕方については種々の方法があるが、例えばカムシャフト17にスリットを設けた円板19を取り付け、センサ20で、光学、静電容量、磁力線などの方法でスリットを検知することで、カムシャフト17の回転数を検知することができる。
【0029】
第2シリンダ11の下流の配管には、配管内の圧力を計測する圧力センサ12が設けられ、この圧力センサ12で計測された配管内の圧力の値が制御ユニット22へ送られる。
【0030】
制御ユニット22は、この配管内の圧力の値に応じて、モータ21の回転数を制御し、カムシャフト17の回転数は前述したセンサ20で計測されて制御ユニット22へ送られ、モータ21の回転数が調整される。
【0031】
複数の溶離液の混合比を時間とともに徐々に変化させる低圧グラジエント方式では、第1シリンダ9の吸引動作区間内の入口側逆止弁8が開放している区間において切換装置2に設置された複数の開閉弁7a〜7dが開閉動作を行う。
【0032】
制御ユニット22は、該当する溶離液に対応する開閉弁7a〜7dの開閉時間とタイミングを調整することにより混合比を変化させ、様々な溶離液の組成比率を実現させる。
【0033】
図4は、本発明の実施の形態に係る制御ユニット(データ処理装置)22の構成図の一部である。なお、ここで図示したもの以外にも、データ処理装置22は、各種プログラムを実行するための演算手段としての演算処理装置(例えば、CPU)と、当該プログラムをはじめ各種データを記憶するための記憶手段としての記憶装置と、各装置へのデータ及び指示等の入出力制御を行うための入出力演算処理装置を備えている。
【0034】
図4において、データ処理装置22は、入力部24と、演算部25と、記憶部26と、送液制御部27と、出力部28を備えている。
【0035】
入力部24は、送液装置3の制御に係る設定条件(例えば、流量、混合比、時間等)のほか、演算部25において、減圧区間のパルス数Soffset、実吸引区間のパルス数SRを取得するために要する各種の情報(例えば、プランジャ移動距離l、シリンダの容積VALL、プランジャの径d、吸引区間のパルス数SS、送液圧力)が外部から入力される部分である。
【0036】
ここで、吸引区間とは第1プランジャ13が吸引動作を行っている区間全体、減圧区間とは第1プランジャ13が吸引動作を開始してからシリンダ内の送液圧力が大気圧まで減圧し、入口側逆止弁8が開放されるまでの区間、実吸引区間とは溶離液が実際に吸引される区間のことである。
【0037】
上記の入力方法としては、例えば、入力装置24による入力のほかに、これらの情報が記憶された記憶メディアを介した入力、他のコンピュータとネットワークを介した通信によるもの等がある。
【0038】
演算部25は、入力部24より入力された情報をもとに、後述する演算式に基づいてそれぞれ演算を行う。具体的には、減圧区間のパルス数Soffset取得部により減圧区間のパルス数Soffsetを、実吸引区間のパルス数SR取得部により実吸引区間のパルス数SRをそれぞれ求める。
【0039】
記憶部26は、入力部24を介して入力された情報、及び演算部25により求められた減圧区間のパルス数Soffset、実吸引区間のパルス数SRが記憶される部分である。
【0040】
送液制御部27は、記憶部26に記憶された減圧区間のパルス数Soffset、実吸引区間のパルス数SRに基づいて、送液装置3の制御を行う部分である。具体的には、ポンプ部23、開閉弁7の動作を制御するように指示を与える。
【0041】
出力装置28は、送液制御部27より取得した指示に基づいて送液装置3へ制御信号を出力する。
【0042】
図3は送液装置の送液工程における吸引区間の圧力変化の一例を示すグラフである。横軸はプランジャの動作に要するモータ21のパルス数(n)、縦軸は圧力センサ12が検出する圧力の値(MPa)を示す。
【0043】
ここで、Ssは吸引区間におけるパルス数、Soffsetは減圧区間おけるパルス数、SRは実吸引区間におけるパルス数をそれぞれ示している。
【0044】
図5は、本発明の実施の形態に係る送液装置3の動作フローである。
【0045】
図7は第1シリンダ9の圧力変化の概略図と送液工程における吸引側逆止弁、吐出側逆止弁と開閉弁の動作状態の一例を示している。また、図7では、図3で示した吸引区間の圧力変化とその時の開閉弁の開閉タイミングの一例についても示している。第1プランジャ13の吸引動作開始と共に開閉弁の開閉制御を開始した場合、第1シリンダ9の減圧区間で開放状態となっている開閉弁に接続された溶媒は、第1シリンダ9が大気圧まで減圧されていない為に吸引されない。
【0046】
図3図5、及び図7に基づいて、本実施の形態に係る送液制御について説明する。
【0047】
まず、第1プランジャ13の吸引動作が開始されると(S501)、それに伴って第1シリンダ9内の送液圧力が大気圧まで減圧され(S502)、入口側逆止弁8が開放される(S503)。これにより、実際に溶離液の吸引が始まる(S504)。
【0048】
第1プランジャ13の吸引動作により、第1シリンダ9内が溶離液で満たされ、充填が完了すると(S505)、次に第1プランジャ13の押し込み動作が開始される(S506)。
【0049】
第1プランジャ13の押し込み動作により生じる流体の動き(や圧力変化)に伴い入口側逆止弁8が閉鎖されると(S507)、第1シリンダ9内の溶離液が圧縮され第1シリンダ9内が加圧される(S508)。
【0050】
第1シリンダ9内の圧力が、第2シリンダ11から吐出される溶離液の圧力に達すると吐出側逆止弁10が開き(S509)、第2シリンダ11の第2プランジャ14が、第1プランジャ13の押し込み動作に同期して吸引動作を行い、第2シリンダ11内を溶離液で満たす(S510)。
【0051】
第2シリンダ11内が溶離液で満たされ、充填が完了すると(S511)、次に第2プランジャ14の押し込み動作が開始される(S512)。
【0052】
第2プランジャ14の押し込み動作により生じる流体の流れにより、吐出側逆止弁10が閉鎖されると(S513)、第2シリンダ11の内部の溶離液が吐出される(S514)。
【0053】
ここで、図6は、本発明の実施の形態に係る操作手順とそれに伴うデータ処理装置110の処理を示すフローチャートである。
【0054】
まず図5に示した吸引工程の終了後に開始される送液工程において、〈1〉入口側逆止弁8が閉鎖し(S503)、〈2〉第1プランジャ13の押し込み動作が開始されてから(S506)、〈3〉第1シリンダ9内の圧力が第2シリンダ11から吐出される溶離液の圧力Pに達し(S508)、〈4〉吐出側逆止弁10が開くまで(S509)に要した第1プランジャ13の移動距離lC計測する(S601)。
【0055】
この時の移動距離lC はデータ処理装置22の入力部24により計測され、例えばステッピングモータを使用している場合はパルス数から求められる。またロータリーエンコーダ等を使用し圧縮工程のプランジャ移動距離をモータの回転数から求めることもできる。
【0056】
ここで吸引開始時に大気圧まで減圧する際の体積の増加量dVは、吸引開始時のシリンダ容量V0、シリンダ1の吐出体積Vd、シリンダ1の圧縮体積dVCを用いて式(1)に基づいて求められる。
【0057】
ここで、dV、Vd、dVCを減圧するまでのプランジャ13の移動距離loffset、圧縮工程のプランジャ13移動距離lC、送液工程のプランジャ13移動距離ldで置換えると式(2)が求められる。
【0058】
Soffsetは上記式とパルス数変換係数kを用いると下記式で表わされる。
【0059】
次に上記式(2)に基づいて求めたパルス数Soffsetと吸引区間におけるパルス数SSから実吸引区間におけるパルス数SRが下記式より求められる。
【0060】
前記制御ユニット22は、上記の演算を行い、ここで求められた実吸引区間におけるパルス数SRにおいて、開閉弁7a〜7dの開閉時間とタイミングを調整することにより(S605)、正確かつ高精度な混合比を実現することが可能になる。
【0061】
図2に示された送液装置3の構成では、第2シリンダ11に接続された圧力センサ12により測定される圧力により制御されている。
【0062】
別の態様として、入口側逆止弁8と吐出側逆止弁10の間に圧力センサを追加した送液装置においても適応することができる。この実施例では追加した圧力センサにより第1シリンダ9内の圧力を直接測定することができるため、第1シリンダ9が大気圧から第2シリンダ11が送液する圧力までより正確に圧縮することにより圧力脈動の小さい送液が可能になる。
【0063】
図2に示された本実施例の送液装置3の概要図では、2つのシリンダを直列に接続したシリーズ型送液装置を示しているが、2つのシリンダを並列に接続したパラレル型送液装置や、各シリンダがそれぞれモータを有しプランジャが独立して駆動することを特徴とする送液装置においても、送液装置の駆動方式に関わらず、低圧グラジエント送液方式について適用可能である。以下にこれらの実施形態について説明する。
【実施例2】
【0064】
図8図2で示した実施例とは異なり、各シリンダが独立した駆動部とモータを有し、プランジャが独立して駆動することを特徴とする送液装置の一例を示している。この例ではモータの回転運動がモータと接続した直動駆動部により直動運動に変換されプランジャを駆動させる。
【0065】
モータ42,43の回転運動は、直動駆動部38,39に伝達され直動駆動部の往復運動によりプランジャ34,35が往復運動する。この直動駆動部として、例えばボールねじが挙げられる。
【0066】
各プランジャの移動方向は接続されたモータの回転方向で決定し、プランジャの移動距離はモータの回転数で認識される。特にステッピングモータを使用した場合はプランジャの移動距離はパルス数としてカウントすることができる。
【0067】
プランジャ34,35の位置は直動駆動部38,39に設けられた検知板36,37と光学、静電容量、磁力線などの方法で検知するセンサ40,41を用いて制御ユニット44により認識される。本実施例で示した検知方法とは異なり、ロータリーエンコーダ等を用いることでプランジャの位置や移動距離を認識することもできる。
【0068】
第2シリンダ32の下流の配管には、配管内の圧力を計測する圧力センサ33が設けられ、この圧力センサ33で計測された配管内の圧力の値が制御ユニット44へ送られる。
【0069】
制御ユニット44は、この配管内の圧力の値や送液流量に応じて、各モータの回転数を制御し、プランジャの移動距離と移動速度を調整する。
【0070】
図8に示した送液装置の低圧グラジエント方式においても、第1シリンダの吸引動作区間内の入口側逆止弁が開放している区間において切換装置2に設置された複数の開閉弁7a〜7dが開閉動作を行う。本方式に関しても、本発明を適用することで混合比精度の改善が期待される。
【実施例3】
【0071】
図9図2で示した実施例とは異なり、各シリンダを並列に接続した事を特徴とする送液装置の一例を示している。
【0072】
図9で示した送液装置にて低圧グラジエントを適用する場合、第1シリンダ47、第2シリンダ50へ溶媒を供給する分岐点45よりも上流側に切換え弁7a〜7dを有する切換装置2を設置する必要がある。
【0073】
各シリンダをパラレル(並列)方式に接続した送液装置では、接続された各シリンダが溶媒の吸引、圧縮、吐出工程を有することを特徴とする。
【0074】
第1シリンダ47の溶媒吸引から吸引した溶媒の圧縮工程を終えるまでは、第2シリンダ50が単独で下流のシステムへ吐出を行い、第2シリンダ50が溶媒吸引から吸引した溶媒の圧縮工程を終えるまでは、第1シリンダ47が単独で下流のシステムへ吐出を行う。
【0075】
第1シリンダ47の吸引工程では第1プランジャ53の引き込み動作により第1シリンダ47内の圧力が大気圧まで減圧され、入口側逆止弁46が開放されると同時に溶媒の充填が開始される。入口側逆止弁46が開放している区間において、制御ユニット62は開放弁7a〜7dの開閉時間とタイミングを調整し、混合比を変化させることで溶離液の組成比を変化させる。
【0076】
第1シリンダ47内が溶媒で充填された後に、第1プランジャ53の押し込み動作が開始され発生した流体流れにより入口側逆止弁46が閉鎖し、第1シリンダ47内の溶離液が圧縮される。
【0077】
第1シリンダ47内の圧力が、圧力センサ52で検知される第2シリンダ50が送液する圧力まで圧縮されると、吐出側逆止弁48が開放され第1シリンダ47による送液が開始される。
【0078】
また送液を続けている第2シリンダ50は送液流量が一定になるように、圧力変動が発生しないように、第1シリンダ47の吐出を補償しながら減速する。
【0079】
この時、入口側逆止弁46が閉鎖してから、第1シリンダ47内が第2シリンダ50の吐出圧力まで圧縮され吐出側逆止弁48が開放されるまでの第1プランジャ53の移動距離l1を計測し、上記式(1)、(2)に基づいて第1シリンダ47の減圧区間におけるパルス数S1offsetと実吸引区間におけるパルス数S1Rを算出する。
【0080】
算出されたS1R、S1offsetを用いて、第1シリンダ47の次の吸引工程において開閉弁7a〜7dの開閉動作を調整する。
【0081】
第2シリンダ50の第2プランジャ54が停止すると、第2シリンダ50の吐出側逆止弁51は第1シリンダ47からの吐出により生じる流体流れにより閉鎖し、第1シリンダ47による単独吐出へと移行する。第1シリンダ47の吐出区間において、第2シリンダ50は吸引動作による溶媒の吸引と、吸引した溶媒の送液圧力までの圧縮を行う。
【0082】
第2シリンダ50内の圧力が、圧力センサ52で検知される第1シリンダ47が送液する圧力まで圧縮されると、吐出側逆止弁51が開放され第2シリンダ50による送液が開始される。
【0083】
また送液を続けている第1シリンダ47は送液流量が一定になるように、圧力変動が発生しないように、第2シリンダ50の吐出を補償しながら減速する。
【0084】
この時、第1シリンダ同様に第2シリンダ50の圧縮率V2Pを算出する。
【0085】
入口側逆止弁49が閉鎖してから、第2シリンダ50内が第1シリンダの吐出圧力まで圧縮され吐出側逆止弁51が開放されるまでの第2プランジャ54の移動距離l2を計測し、上記式(1)、(2)に基づいて第2シリンダ50の減圧区間におけるパルス数S2offsetと実吸引区間におけるパルス数S2Rを算出する。
【0086】
算出された圧縮率V2Pと式(2)及び(3)から算出されるS2R、S2offsetを用いて、第2シリンダ50の次の吸引工程において開閉弁7a〜7dの開閉動作を調整する。
【0087】
各シリンダを並列に接続した送液装置では上記駆動サイクルを繰り返すことで、圧力変動の小さい送液を実現する。
各シリンダの圧縮工程で制御ユニットより算出されるプランジャ移動距離lと、プランジャ移動距離lから算出される減圧区間と実吸引区間に基づいて各シリンダの吸引工程時の切換え弁の切換時間を調整することで本発明を適応することができる。
【0088】
なお、上記の実施形態においては、吸引区間、減圧区間、実吸引区間のそれぞれにおけるプランジャのパルス数を用いて開閉弁の制御を行う場合について説明したが、本発明の適用対象はこれに限られず、例えば、プランジャの移動速度を考慮して、時間(sec)を基準とした制御を行うことも可能である。
【符号の説明】
【0089】
1 容器(溶離液)
2 切換装置
3 送液装置
4 試料注入部
5 分離カラム
6 検出器
7 開閉弁
8、29、46、49 入口側逆止弁
9、30、47 第1シリンダ
10、31、48、51 吐出側逆止弁
11、32、50 第2シリンダ
12、33、52 圧力センサ
13、34、53 第1プランジャ
14、35、54 第2プランジャ
15、55 第1カム
16、56 第2カム
17、57 カムシャフト
18、58 ベルト
19、59 円板
20、60 センサ
21、61 モータ
22、44、62 制御ユニット(データ処理装置)
23 ポンプ部
24 入力部
25 演算部
26 記憶部
27 送液制御部
28 出力部
36、37 検知板
38 第1直動駆動部
39 第2直動駆動部
40 第1センサ
41 第2センサ
42 第1モータ
43 第2モータ
45 分岐部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9