特許第5887922号(P5887922)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5887922
(24)【登録日】2016年2月26日
(45)【発行日】2016年3月16日
(54)【発明の名称】複層ガラス窓の組立方法
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/06 20060101AFI20160303BHJP
   C03C 17/36 20060101ALI20160303BHJP
   E06B 3/64 20060101ALI20160303BHJP
【FI】
   C03C27/06 101Z
   C03C17/36
   C03C27/06 101H
   E06B3/64
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2011-285915(P2011-285915)
(22)【出願日】2011年12月27日
(65)【公開番号】特開2012-148966(P2012-148966A)
(43)【公開日】2012年8月9日
【審査請求日】2014年8月4日
(31)【優先権主張番号】特願2010-292635(P2010-292635)
(32)【優先日】2010年12月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】旭硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】小島 浩士
(72)【発明者】
【氏名】福田 光夫
(72)【発明者】
【氏名】林 真行
【審査官】 相田 悟
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−029991(JP,A)
【文献】 特開2001−003647(JP,A)
【文献】 特開昭60−129387(JP,A)
【文献】 国際公開第01/016046(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 27/00〜29/00
E06B 3/64
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス板の一方の面の周辺部よりも内側に空気抜き用の貫通孔が設けられたスペーサの一方の側面が第1のブチルゴムを介して接着されるとともに、前記スペーサの他方の側面に第2のブチルゴムが接着され、該第2のブチルゴムに保護シートが着脱自在に接着されてなるスペーサ付きガラス板を現場に準備する工程と、
前記現場にて既存のガラス窓に取り付ける直前に前記保護シートを取り外した前記スペーサ付きガラス板を、前記既存のガラス窓に前記第2のブチルゴムを圧縮して接着する接着工程と、
前記スペーサ付きガラス板と前記ガラス窓の周辺部をシール材で封着する封着工程と、
を備えたことを特徴とする複層ガラス窓の組立方法。
【請求項2】
前記ガラス板の前記一方の面に熱線遮蔽膜が形成されている請求項1に記載の複層ガラス窓の組立方法。
【請求項3】
前記熱線遮蔽膜は、第1の酸化物膜、Ag膜、第2の酸化物膜がこの順に積層された熱線遮蔽膜であり、前記保護シートは、前記ガラス板の一方の面の略全面を覆うように前記第2のブチルゴムに着脱自在に接着されてなる請求項2に記載の複層ガラス窓の組立方法。
【請求項4】
前記ガラス板の一方の面と前記保護シートと前記スペーサとによって密閉される空間に乾燥剤が封入されている請求項3に記載の複層ガラス窓の組立方法。
【請求項5】
前記スペーサは中空の型材によって構成されるとともに、その内部空間に乾燥剤が封入され、前記ガラス板の4辺に沿って配置された前記スペーサ同士の対向する面に吸湿窓が形成され、該吸湿窓がテープによって封止され、前記テープは、施工現場にて前記スペーサ付きガラス板を前記ガラス窓に組み付ける直前に前記スペーサから取り外される請求項1〜4のいずれか1項に記載の複層ガラス窓の組立方法。
【請求項6】
前記ガラス板の板厚は、該ガラス板が取り付けられる既存のガラス窓の板厚に対して75%以上である請求項1〜5のいずれか1項に記載の複層ガラス窓の組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スペーサ付きガラス板及び複層ガラス窓の組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
断熱性や防音性の観点から、ガラス窓として複層ガラスが多用されている。複層ガラスは、少なくとも2枚のガラス板とスペーサとを備えており、その2枚のガラス板をスペーサによって隔置するとともに、スペーサの両側面を一次シール材によって2枚のガラス板に接着し、2枚のガラス板の間の端縁部を二次シール材によって封着することにより構成される。
【0003】
ところで、特許文献1には、建物に施工されている既存の単板構成のガラス窓に、新規のガラス板を並設することによって、前記ガラス窓を複層ガラス窓に改築することが提案されている。既存のガラス窓を複層ガラス窓の一部として利用することにより、施工費を削減することができるとともに、施工期間の短縮、既存のガラス窓の廃棄が不要、及びサッシの交換が不要という利点がある。
【0004】
新規のガラス板を既存のガラス窓に取り付ける施工方法は、まず、乾燥剤が封入されたスペーサの一方の側面をガラス窓の周縁部にブチルゴム(一次シール材)によって接着する。次に、前記スペーサの他方の側面に新規のガラス板をブチルゴム(一次シール材)によって接着する。次いで、既存のガラス窓と新規のガラス板との間の端縁部の隙間に形状保持のためのシール材(二次シール材)を打設する。この施工手順に従って、複層ガラス窓を施工していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4003908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来の複層ガラス窓の組立方法では、既存のガラス窓に新規のガラス板を取り付ける際に、一次シール材であるブチルゴムを既存のガラス窓と新規のガラス板の双方に施工現場にて接着するため、施工現場での複層ガラス窓の組立作業に手間がかかるという問題があった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、複層ガラス窓を施工現場にて容易に組み立てることができるスペーサ付きガラス板及び複層ガラス窓の組立方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記目的を達成するために、ガラス板の一方の面の周辺部よりも内側に空気抜き用の貫通孔が設けられたスペーサの一方の側面が第1のブチルゴムを介して接着されるとともに、前記スペーサの他方の側面に第2のブチルゴムが接着され、該第2のブチルゴムに保護シートが着脱自在に接着されてなるスペーサ付きガラス板を現場に準備する工程と、前記現場にて既存のガラス窓に取り付ける直前に前記保護シートを取り外した前記スペーサ付きガラス板を、前記既存のガラス窓に前記第2のブチルゴムを圧縮して接着する接着工程と、前記スペーサ付きガラス板と前記ガラス窓の周辺部をシール材で封着する封着工程と、を備えたことを特徴とする複層ガラス窓の組立方法を提供する。
【0009】
本発明によれば、新規のガラス板に対し、工場にてスペーサを非透湿性の第1のブチルゴムによって予め接着するとともに、スペーサに非透湿性の第2のブチルゴムを予め接着し、この第2のブチルゴムに保護シートを着脱自在に接着することで、スペーサ付きガラス板を製造する。このスペーサ付きガラス板を工場から施工現場へ搬入して複層ガラス窓を組み立てる際には、前記保護シートを第2のブチルゴムから取り外し、第2のブチルゴムを既存のガラス窓に接着するだけでよい。したがって、本発明のスペーサ付きガラス板を使用することにより、ブチルゴムによる接着品質の問題を改善できるとともに、施工現場での組立作業性も改善できるので、品質のよい複層ガラス窓を施工現場にて容易に組み立てることができる。なお、保護シートは、第2のブチルゴムを覆うだけの大きさでもよいが、新規のガラス板全体を覆う大きさであってもよい。
【0010】
本発明の複層ガラス窓の組立方法は、前記ガラス板の前記一方の面に熱線遮蔽膜が形成されていることが好ましい。
【0011】
本発明によれば、複層ガラス窓の断熱性、及び遮熱性の向上のために、その表面に熱線遮蔽膜(Low Emissivity:Low−E膜)が形成されたガラス板を用いることができる。現場に施工されている既存のガラス窓に対し、熱線遮蔽膜が形成された新規のスペーサ付きガラス板を現場に搬入し、現場にて既存のガラス窓に取り付けることにより、外装はそのままの状態で断熱性、遮熱性の優れた複層ガラス窓を組み立てることができる。熱線遮蔽膜としては、第1の酸化物膜、Ag膜、第2の酸化物膜がこの順に積層された熱線遮蔽膜の他、熱線遮蔽膜自身が酸化物や窒化物であるタイプの熱線遮蔽膜を適用できる。
【0012】
本発明の前記熱線遮蔽膜は、第1の酸化物膜、Ag膜、第2の酸化物膜がこの順に積層された熱線遮蔽膜であり、前記保護シートは、前記ガラス板の一方の面の略全面を覆うように前記第2のブチルゴムに着脱自在に接着されてなることが好ましい。
【0013】
第1の酸化物膜、Ag膜、第2の酸化物膜がこの順に積層された熱線遮蔽膜は、スパッタリング法によってガラス板の一方面に形成される。この積層タイプの熱線遮蔽膜は、熱線遮蔽膜自身が酸化物や窒化物であるタイプの熱線遮蔽膜よりも遮熱性能が優れるという利点があるが、熱線遮蔽膜自身が酸化物や窒化物であるタイプの熱線遮蔽膜よりも傷付き易いという特性を有する。このため、工場でスペーサが予め取り付けられたスペーサ付きガラス板に対し、出荷前の段階で、積層タイプの熱線遮蔽膜が形成されたガラス板の一方の面の全面を覆うように保護シートを第2のブチルゴムに着脱自在に接着する。本発明のスペーサ付きガラス板によれば、施工現場でスペーサ付きガラス板を組み付ける直前に保護シートを取り外す。これにより、積層タイプの熱線遮蔽膜を傷付けることなく工場から施工現場にスペーサ付きガラス板を搬入できる。
【0014】
本発明の複層ガラス窓の組立方法は、前記ガラス板の一方の面と前記保護シートと前記スペーサとによって密閉される空間に乾燥剤が封入されていることが好ましい。乾燥剤は、熱線遮蔽膜に接しないように前記保護シートに接着されていることが好ましい。
【0015】
酸化物膜、Ag膜、第2の酸化物膜の積層タイプの熱線遮蔽膜は、水分(湿気)に弱いAg膜を有するため、大気に晒しておくと劣化を生じる。そこで本発明では、ガラス板の一方の面と保護シートとスペーサとによって密閉される空間に乾燥剤を封入したので、熱線遮蔽膜を湿気から保護することができ、熱線遮蔽膜付き複層ガラス窓の性能、品質を保持することができる。
【0016】
ところで、一般的にガラスは小口を下にしてパレットと呼ばれる容器に、立てた状態で重ねて保存、輸送されるので、保護シートがブチル面だけの場合であっても、先に積み込まれたガラスと、前記スペーサとの間で密閉される空間が形成されることになる。密閉される空間に乾燥剤が封入されない保護シートがブチル面だけの場合であっても、パレットに重ねた状態で保存されるために、酸化物膜、Ag膜、第2の酸化物膜の積層タイプの熱線遮蔽膜を大気に晒す時間が少なくなる。
【0017】
本発明の複層ガラス窓の組立方法の前記スペーサは、中空の型材によって構成されるとともに、その内部空間に乾燥剤が封入され、前記ガラス板の4辺に沿って配置された前記スペーサ同士の対向する面に吸湿窓が形成され、該吸湿窓がテープによって封止され、前記テープは、施工現場にて前記スペーサ付きガラス板を前記ガラス窓に組み付ける直前に前記スペーサから取り外されることが好ましい。
【0018】
スペーサに封入された乾燥剤がスペーサ付きガラス板の搬送中に外気に晒されると、乾燥剤が湿気を吸収し、乾燥剤の耐久性が悪化する。そこで本発明では、スペーサの吸湿窓をテープによって封止し、スペーサ付きガラス板を既存のガラス窓に取り付ける直前にテープをスペーサから剥がすようにした。これにより、乾燥剤を新鮮な状態で保つことができ、複層ガラス窓の耐久性を高めることができる。
【0019】
本発明によれば、前記ガラス板の板厚は、該ガラス板が取り付けられる既存のガラス窓の板厚に対して75%以上であることが好ましい。
【0021】
本発明によれば、品質のよい複層ガラス窓を施工現場にて容易に組み立てることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明のスペーサ付きガラス板及び複層ガラス窓の組立方法によれば、複層ガラス窓を施工現場にて容易に組み立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】第1の実施の形態のスペーサ付きガラス板の斜視図
図2図1に示したスペーサ付きガラス板の製造工程を示した要部拡大側面図
図3】ガラス窓にスペーサ付きガラス板を組み付ける直前状態を示した斜視図
図4】スペーサを隅部において接続するコーナーキーを示した斜視図
図5】第2の実施の形態のスペーサ付きガラス板の斜視図
図6図3に示したスペーサ付きガラス板の要部拡大断面図
図7】框にスポンジゴムとセッティングブロックが取り付けられた説明図
図8】既存のガラス窓にスペーサ付きガラス板を取り付ける直前の側面図
図9】スペーサ付きガラス板をガラス窓にローラーを用いて押し付ける説明図
図10】複層ガラス窓を室内側から見た正面図
図11】複層ガラス窓の下部縦断面図
図12】複層ガラス窓の上部縦断面図
図13】従来の二次シールの打設位置を示した複層ガラス窓の縦断面図
図14】二次シール材の打設形態を変更した複層ガラス窓の断面図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面に従って本発明に係るスペーサ付きガラス板及び複層ガラス窓の組立方法の好ましい実施の形態を詳説する。
【0025】
図1は、第1の実施の形態のスペーサ付きガラス板10の全体斜視図である。図2は、スペーサ付きガラス板10の製造過程を(A)〜(D)の順に示した要部拡大側面図である。
【0026】
スペーサ付きガラス板10は、図3の斜視図の如く建物のガラス窓用框12に嵌め込まれて固定された既存のガラス窓14の室内側開口部側に、現場にて取り付けられることにより、ガラス窓14と共に複層ガラス窓を構成する新規のガラス板である。複層ガラス窓の組立方法については後述する。また、スペーサ付きガラス板10は、ガラス窓14の室外側開口部側に取り付けてもよい。
【0027】
スペーサ付きガラス板10は図2(D)の如く、矩形状のガラス板16、非透湿性のブチルゴム(第1のブチルゴム)18、スペーサ20、非透湿性のブチルゴム(第2のブチルゴム)22、及び離型紙テープ(保護シート)24から構成される。また、ガラス板16は、図3に示したガラス窓14のガラス板よりも小サイズのものである。
【0028】
スペーサ付きガラス板10の製造方法は、まず、図2(A)、(B)に示すように、ガラス板16の一方の面16Aの周辺部よりも内側、ガラス板16の外周に沿って状に組み立てられたスペーサ20の一方の側面20Aを、ブチルゴム18によって接着する。次に、図2(C)、(D)に示すようにスペーサ20の他方の側面20Bにブチルゴム22を接着し、このブチルゴム22とガラス窓14のガラスが接触することになる面に離型紙テープ24を接着する。この離型紙テープ24は、スペーサ付きガラス板10をガラス窓14(図5参照)に取り付ける直前にブチルゴム22から取り外される。これにより、ブチルゴム22は、スペーサ付きガラス板10をガラス窓14に取り付ける直前まで、その接着力が保持される。
【0029】
このような製造過程を経ることによって、図1に示したスペーサ付きガラス板10が工場にて製造される。なお、離型紙テープ24としては、PET製のフィルムを挙げることができる。また、スペーサ20としては意匠性の観点から黒色のものが好ましい。
【0030】
一方、ガラス板16の一方の面16Aの、枠状に組み立てられたスペーサ20より内側の領域には、複層ガラス窓の断熱性、及び遮熱性の向上のために、Low−E膜26が形成されている。Low−E膜26としては、第1の酸化物膜、Ag膜、第2の酸化物膜がこの順に積層されたものの他、熱線遮蔽膜自身が酸化物や窒化物であるタイプのものも適用できる。なお、Low−E膜26を保護するために、離型紙テープ24の代わりにLow−E膜26全体を覆い保護する矩形状の保護シートをブチルゴム22に接着してもよい。
【0031】
スペーサ20は、アルミニウム製の中空型材によって構成され、その内部空間に粒状のシリカゲル(乾燥剤)28が封入されている。また、ガラス板16の4辺に沿って配置された4本のスペーサ20、20…同士の対向する面には吸湿窓30が開口されている。更に、吸湿窓30が接着テープ32によって封止されている。この接着テープ32は、施工現場にてスペーサ付きガラス板10をガラス窓14に組み付ける直前にスペーサ20から取り外される。これにより、シリカゲル28は、スペーサ付きガラス板10がガラス窓14に組み付けられるまで、大気に晒されることなく新鮮な状態に保持される。
【0032】
なお、図2(A)では、ブチルゴム18をガラス板16側に接着しているが、スペーサ20の一方の側面20Aにブチルゴム18を接着してスペーサ20をガラス板16に接着してもよい。更に、スペーサ20の両側にはじめからブチルゴム18、22を接着しておいても良い。また、実施の形態では、ガラス板16として単板構成の普通板ガラスを例示するが、合わせガラス、強化ガラス、倍強度ガラス、網入りガラス、熱線吸収ガラス、又は熱線反射ガラス等であってもよい。更に、ガラス板16の取り扱い中にガラス板16を破損させないために、ガラス板16の隅部を面取り加工(例えばC面取り等)するとともに、小口面のエッジも面取り加工しておくことが好ましい。
【0033】
スペーサ20は、各々の隅部において図4に示すL字形状のコーナーキー(スペーサ接合部材)34によって接続される。コーナーキー34は、本体ブロック34Aと、本体ブロック34Aから直角方向に延設された嵌合部34B、34Bとを有し、嵌合部34B、34Bの鋸歯部を隣接する2本のスペーサ20、20の内部空間に嵌挿することにより、隣接する2本のスペーサ20、20がコーナーキー34を介して直角方向に接続される。
【0034】
また、本体ブロック34Aには、貫通孔34Cが開口されている。この貫通孔34Cは、本体ブロック34Aの外側端面34Dから内側端面34Eにかけて形成されており、図3に示したガラス窓14にスペーサ付きガラス板10を接着する際の空気抜き用孔として利用される。つまり、ガラス窓14とスペーサ付きガラス板10との間には空気層が存在するが、ガラス窓14にスペーサ付きガラス板10を接着していく過程で生じた余分な空気が空気層から貫通孔34Cを介して外部に排気される。これにより、前記空気層の内圧が大気圧となり、施工時にブチルゴムを十分にガラス面に密着させることが可能となる。
【0035】
図4の如く貫通孔34Cは、ガラス窓14にスペーサ付きガラス板10が接着された後、キャップ36が嵌合されることにより閉塞される。キャップ36は、円錐形状の本体部36Aとツマミ部36Bとから構成され、ツマミ部36Bを作業者が摘んで本体部36Aを貫通孔34Cに嵌挿する。この際、前記空気層の非透湿性を高める観点から、本体部36Aを非透湿性のある樹脂製とし、かつ本体部36Aの周部にブチルゴム38を塗布しておくことが好ましい。また、本体部36Aを貫通孔34Cに嵌挿した後、後述する二次シールを複層ガラス窓の周部に打設する前に、ツマミ部36Bを本体部36Aから切断しておくことが好ましい。更に、貫通孔34Cは、スペーサ20の隅部に配置された4個のコーナーキー34の全てに備える必要はなく、1個又は2個のコーナーキー34のみにあればよい。
【0036】
図5は、第2の実施の形態のスペーサ付きガラス板40の斜視図である。図6は、スペーサ付きガラス板40の要部拡大断面である。なお、スペーサ付きガラス板40について、図1図2に示したスペーサ付きガラス板10と同一又は類似の部材については同一の符号を付して説明は省略する。
【0037】
このスペーサ付きガラス板40のガラス板16の一方の面16Aに形成されているLow−E膜42は、第1の酸化物膜、Ag膜、第2の酸化物膜がこの順に積層された熱線遮蔽積層膜である。また、このスペーサ付きガラス板40では、ガラス板16の一方の面16Aを覆うように、すなわち、Low−E膜42の全面を覆うように保護シート44がブチルゴム22に着脱自在に接着されている。
【0038】
Low−E膜42は、スパッタリング法によってガラス板16の一方の面16Aの全面に形成されるが、ブチルゴム18が接着されるガラス板16の外周部に形成された部分がトリミングされて除去される。また、積層タイプのLow−E膜42は、熱線遮蔽膜自身が酸化物や窒化物であるタイプのLow−E膜よりも遮熱性能が優れるという利点があるが、熱線遮蔽膜自身が酸化物や窒化物であるタイプのLow−E膜よりも傷付き易いという特性を有する。
【0039】
そこでLow−E膜42の傷付きを防止するために、工場にてスペーサ20が予め取り付けられたスペーサ付きガラス板40に対し、出荷前の段階で、Low−E膜42の全面を覆うように矩形の保護シート44をブチルゴム22に着脱自在に接着する(図5参照)。この保護シート44は、施工現場にてスペーサ付きガラス板40を、ガラス窓14に組み付ける直前にブチルゴム22から取り外される。これにより、Low−E膜42を傷付けることなくスペーサ付きガラス板40を工場から施工現場まで搬送できる。
【0040】
ところで、スペーサ付きガラス板40では、ガラス板16の一方の面16Aと保護シート44とスペーサ20とによって密閉される空間46に乾燥剤48を封入してもよい。
【0041】
積層タイプのLow−E膜42は、水分(湿気)に弱いAg膜を有する。このため、Low−E膜42を大気に晒しておくと膜が劣化する。この理由から、前記空間46に乾燥剤48を封入したので、Low−E膜42を湿気から保護することができ、Low−E膜42が形成された複層ガラス窓の耐久性を高めることができる。また、乾燥剤48は、Low−E膜42に接しないように保護シート44に接着されていることがより好ましい。
【0042】
なお、工場にてスペーサ付きガラス板40を製造した後、スペーサ付きガラス板40を工場にて長期間保管する場合には、乾燥剤48の封入量を多めにする。すなわち、乾燥剤48の封入量は、スペーサ付きガラス板40の納期に応じて調整すればよい。
【0043】
以上説明したスペーサ付きガラス板10、40は、新規のガラス板16に対し、工場にてスペーサ20をブチルゴム18によって予め接着するとともに、スペーサ20にブチルゴム22を予め接着し、このブチルゴム22に離型紙テープ24、保護シート44を着脱自在に接着することで製造される。
【0044】
このスペーサ付きガラス板10、40を工場から、図3に示した施工現場へ搬入して複層ガラス窓を組み立てる際には、離型紙テープ24、保護シート44をブチルゴム22から取り外し、ブチルゴム22を既存のガラス窓14に接着するだけでよい。したがって、実施の形態のスペーサ付きガラス板10、40を使用することにより、接着品質の問題、すなわち、施工品質が改善されるとともに、施工現場での手間も低減できるので、品質のよい複層ガラス窓を施工現場にて容易に組み立てることができる。
【0045】
次に、スペーサ付きガラス板10、40を使用した複層ガラス窓の組立方法の一例を説明する。なお、ここでは、スペーサ付きガラス板10を例示して説明し、スペーサ付きガラス板40については、スペーサ付きガラス板10による複層ガラス窓の組立方法と略同一なのでその説明は省略する。
【0046】
まず、図3図7に示すように、縦框、横框12に沿って角柱状のスポンジゴム50、50…を取り付けるとともに底部側の横框12に、スペーサ付きガラス板10の自重を受けるセッティングブロック52、52を取り付ける。なお、セッティングブロック52は、1つでも複数個でも構わない。また、頂部の横框12に打設されているシーラント材54に溝56を切り込み形成し、この溝56に必要に応じて倒れ止め板58の上片58Aを嵌め込んで固定する。
【0047】
次に、図3の如くスペーサ付きガラス板10から離型紙テープ24を剥がし、図8の側面図の如くブチルゴム22を露出させるとともに、図2に示した接着テープ32をスペーサ20から剥がす。そして、このスペーサ付きガラス板10の底部をセッティングブロック52、52上に載置するとともに、スペーサ付きガラス板10の上部を図3に示した倒れ止め板58の係合片58Bに係合させる。この後、スペーサ付きガラス板10をガラス窓14に向けて押し付けて、スペーサ付きガラス板10をブチルゴム22によってガラス窓14に接着する。
【0048】
次いでブチルゴム22のガラス面への密着性を確保するために図9の如く、ローラー60によってガラス板16をガラス窓14に押し付けることにより、ブチルゴム22を圧縮してガラス窓14に圧着させる。
【0049】
前記圧着時において、従来では、既存のガラス窓と新規のガラス板との間の空気層内の空気は完全に密封された状態である。これにより、新規のガラス板を取り付けた後、ブチルゴムを所定のつぶれ量だけ圧縮(圧着)させるためには、その分、前記空気層に閉じ込められた空気を圧縮する必要があり、その圧着に要する力は大きいものとなっていた。また、施工現場で作業する場合にはプレス機などの機器の使用が困難であるため、現場施工では十分な圧着力を加えることができず、ブチルゴムの防湿性能を十分に発揮させることができないという懸念があった。更に、仮に初期に十分な圧着が可能であった場合でも、圧着時の加圧により既存のガラス窓、又は新規のガラス板の変形(膨張)や、それによる封着部、防湿部の剥離の懸念が生じていた。
【0050】
そこで実施の形態のスペーサ付きガラス板10においては、図4に示したようにスペーサ20の一部であるコーナーキー34に空気抜き用の貫通孔34C(空気弁でもよい)が設けられている。これにより、ガラス窓14にスペーサ付きガラス板10を取り付ける際に、スペーサ付きガラス板10をガラス窓14に圧着しても、前記空気層内の空気が貫通孔34Cを介して外部に排気されるので、圧着時の加圧に対して前記空気層内の圧力を外気圧と同等とすることが可能となる。したがって、現場施工においてもブチルゴム22を十分なつぶし代を持って圧着させることができると同時に、ガラス窓14、スペーサ付きガラス板10に変形を持たせずに良好な施工ができ、かつ封着部、防湿部の剥離の懸念を解消することができる。
【0051】
また、貫通孔34C(空気弁)をスペーサ20に複数箇所に備えることで、スペーサ付きガラス板10をガラス窓14に取り付けた後の前記空気層に、貫通孔34C(空気弁)を介して乾燥空気やガスの封入が可能となる。更に、後に複層ガラス窓に内部結露が生じた場合にも、貫通孔34C(空気弁)を介して乾燥空気を入れ換えることができる。
【0052】
なお、特許第1627298号公報に開示されたように複層ガラスのガラス板に孔を開け、前記孔をキャップで封止してもよい。しかしながら、ガラス板の加工コスト、及び意匠的な観点から、実施の形態の如くスペーサ20の一部、特にコーナーキー34に貫通孔34Cを形成し、この貫通孔34Cをキャップ36で封止することが好ましい。
【0053】
ローラー60によるブチルゴム22の圧着が終了すると、貫通孔34Cをキャップ36の本体部36Aによって封止し、本体部36Aからツマミ部36Bを切断する。
【0054】
次に、ガラス窓14とスペーサ付きガラス板10の4辺の周部に、図10の平面図の如く二次シール材62を打設して、スペーサ付きガラス板10とスポンジゴム50との間の空隙を封止する。これによって、複層ガラス窓64が組み立てられる。二次シール材62としては、ガラスに対する接着性が高いポリサルファイド系シーラント、又はシリコーン系シーラントが使用される。
【0055】
二次シール材62の打設形態は、図11図12に示すように、スペーサ20の外周面とスポンジゴム50との間の空間を空隙とせず、その空間に二次シール材62を充填し、かつスペーサ付きガラス板10の小口とスポンジゴム50との間の空間にも二次シール材62を充填する。これにより、既存のガラス窓14の内側面、新規のガラス板16の内側面と小口面、及びスペーサ20の外周面の4面に二次シール材62が接着するので、複層ガラス窓64の耐久性が向上する。
【0056】
図13の如く、既存の単板構成のガラス窓1に対し、現場にてスペーサ2と新規のガラス板3とを取り付けて複層ガラス窓4とする従来の組立方法は、新規のガラス板3を、スペーサ2を介して既存のガラス窓1にブチルゴム5によって接着し、その後、新規のガラス板3の小口部周辺部と框6との間の隙間に二次シール材7を打設する。
【0057】
従来の組立方法では、二次シール材7による耐湿性能については単純に二次シール材7の厚さ分しかない。このため、二次シール材7による耐湿効果が不十分であると同時に、複層ガラス窓4としての形状保持性能に不十分な点があった。
【0058】
そこで、実施の形態の複層ガラス窓64の組立方法では、図11図12に示したように、スペーサ20の外周面とスポンジゴム50との間の空間を空隙とせず、その空間に二次シール材62を充填し、かつスペーサ付きガラス板10の小口とスポンジゴム50との間の空間にも二次シール材62を充填した。これにより、既存のガラス窓14の内側面、新規のガラス板16の内側面と小口面、及びスペーサ20の外周面の4面に二次シール材62が接着するので、耐久性の優れた品質のよい複層ガラス窓64を施工現場にて組み立てることができる。
【0059】
また、図14に示す複層ガラス窓64の形態は、図11に示した複層ガラス窓64の形態に対して、二次シール材62を打設する際の打設の仕方を変えたものである。図14によれば、既存のガラス窓14の内側面と新規のガラス板16とで挟まれる空間と、スペーサ20の外周面との間に、二次シール材62を打設し、更に、前記打設した二次シール材62の一部63を既存のガラス窓14の内側面に沿って薄片状に打設している。このように二次シール材62を打設することで、スペーサ20の下面から既存のガラス窓14の下部の框12に打設されているシーラント材54まで、二次シール材62が存在しているので、複層ガラス窓64を室外側から見た際の複層ガラス窓64の意匠性が向上する。つまり、図11の複層ガラス窓64では、二次シール材62とスポンジゴム50との境界線が、複層ガラス窓64を室外側から見た際に見えるが、図14の複層ガラス窓64は、前記境界線が見えないので、意匠性が向上する。
【0060】
なお、図14の複層ガラス窓64では、分解時の作業性を良くするために、二次シール材62と既存のガラス窓14のシーラント材54が直接接しないように、二次シール材62とシーラント材54との間にボンドブレーカー65を設置するのが好ましい。ボンドブレーカー65の材質としてはポリエチレンテープが好ましい。ボンドブレーカー65があることで、分解時に既存のガラス窓14のシーラント材54から二次シール材62を剥ぎ取る作業が不要になる。
【0061】
また、図11図12図14によれば、一次シール材であるブチルゴム18、22と二次シール材62とが接触するため、ガラス窓14及びガラス板16の変形が抑えられ、かつ二次シール材62がブチルゴム18、22を保護するため、複層ガラスの耐久性がより高められる。
【0062】
また、実施の形態の複層ガラス窓64は、二次シール材62の周囲であって、スペーサ付きガラス板10と框12との間にスポンジゴム50等の弾性部材を配置している。このため、地震時に複層ガラス窓に層間変形が生じた場合にもスペーサ付きガラス板10のロッキングによる動きを前記弾性部材によって吸収できるため、層間変形追従性能上において望ましい構成となる。
【0063】
また、従来の構成では、新規のガラス板は二次シール材のみによってその自重が支持されていた。そのため二次シール材には長期の荷重が作用し、二次シール材の耐久性を考慮した場合に望ましい構成ではなかった。
【0064】
この問題を解消するために、実施の形態の複層ガラス窓64では、スペーサ付きガラス板10の下辺小口部にセッティングブロック52、52を設置することで、二次シール材62に対してスペーサ付きガラス板10の自重による長期荷重を作用させない構成としている。セッティングブロック52によってスペーサ付きガラス板10の自重を二次シール材62に支持させる必要がないため、厚板ガラス、大板ガラスへの対応も可能となる。
【0065】
更に、スペーサ付きガラス板10の上部に、スペーサ付きガラス板10の倒れを阻止する倒れ止め板58を設けることで、二次シール材62が硬化するまでの間、確実にスペーサ付きガラス板10を望ましい位置に固定することができる。
【0066】
一方、ガラス板16の板厚は、既存のガラス窓14の板厚に対して75%以上であることが好ましい。
【0067】
スペーサ付きガラス板10、40を追加する以前のガラス窓14と同等の耐風圧強度を持たせるためには、ガラス板16の板厚をガラス窓14のガラス厚さの板厚の75%以上とすればよい。ただし、ガラス窓14の耐風圧設計時点で余裕を持った強度設計をしている場合にはこの限りではない。
【符号の説明】
【0068】
10…スペーサ付きガラス板、12…框、14…ガラス窓、16…ガラス板、18…ブチルゴム、20…スペーサ、22…ブチルゴム、24…離型紙テープ、26…Low−E膜、28…シリカゲル、30…吸湿窓、32…接着テープ、34…コーナーキー、36…キャップ、38…ブチルゴム、40…スペーサ付きガラス板、42…Low−E膜、44…保護シート、46…空間、48…乾燥剤、50…スポンジゴム、52…セッティングブロック、54…シーラント材、56…溝、58…倒れ止め板、60…ローラー、62…二次シール材、64…複層ガラス窓、65…ボンドブレーカー
図1
図2
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図10
図11
図12
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図14