(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記押圧機構は、前記処理部による処理位置において前記シート基板を保持する前記保持板が前記パッド部材に向けて押圧されるように、前記無端状の支持部材の対応する部分を押圧する、
請求項3に記載の基板処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1実施形態]
以下、図面を参照して、本発明に係る第1実施形態を説明する。
(有機EL素子)
図1Aは、有機EL素子の構成を示す平面図である。
図1Bは、
図1Aにおけるb−b断面図である。
図1Cは、
図1Aにおけるc−c断面図である。
【0012】
図1A〜
図1Cに示すように、有機EL素子50は、シート基板FBにゲート電極G及びゲート絶縁層Iが形成され、さらにソース電極S、ドレイン電極D及び画素電極Pが形成された後、有機半導体層OSが形成されたボトムコンタクト型である。
【0013】
図1Bに示すように、ゲート電極G上にゲート絶縁層Iが形成されている。ゲート絶縁層I上にはソースバスラインSBLのソース電極Sが形成されると共に、画素電極Pと接続したドレイン電極Dが形成されている。ソース電極Sとドレイン電極Dとの間には有機半導体層OSが形成されている。これで電界効果型トランジスタが完成することになる。また、画素電極Pの上には、
図1B及び
図1Cに示すように、発光層IRが形成され、その発光層IRには透明電極ITOが形成される。
【0014】
図1B及び
図1Cに示されるように、例えば、シート基板FBには隔壁BA(バンク層)が形成されている。そして
図1Cに示すようにソースバスラインSBLが隔壁BA間に形成されている。このように、隔壁BAが存在することにより、ソースバスラインSBLが高精度に形成されると共に、画素電極P及び発光層IRも正確に形成されている。なお、
図1B及び
図1Cでは示されていないが、ゲートバスラインGBLもソースバスラインSBLと同様に隔壁BA間に形成されている。
【0015】
この有機EL素子50は、例えばディスプレイ装置などの表示装置をはじめ、電子機器の表示部などにも好適に用いられる。この場合、例えば有機EL素子50をパネル状に形成したものが用いられる。このような有機EL素子50の製造においては、薄膜トランジスタ(TFT)、画素電極が形成された基板を形成する必要がある。その基板上の画素電極上に発光層を含む1以上の有機化合物層(発光素子層)を精度良く形成するために、画素電極の境界領域に隔壁BA(バンク層)を容易に精度良く形成することが望ましい。
【0016】
(基板処理装置)
図2は、可撓性を有するシート基板FBを用いて処理を行う基板処理装置100の構成を示す概略図である。
基板処理装置100は、帯状のシート基板FBを用いて
図1A〜
図1Cに示す有機EL素子50を形成する装置である。
図2に示すように、基板処理装置100は、基板供給部101、基板処理部102、基板回収部103及び制御部104を有している。シート基板FBは、基板供給部101から基板処理部102を経て基板回収部103へと搬送されるようになっている。制御部104は、基板処理装置100の動作を統括的に制御する。
【0017】
以下の説明においては、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明する。水平面内のうちシート基板FBの搬送方向をX軸方向、水平面内においてX軸方向と直交する方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向のそれぞれと直交する方向(すなわち鉛直方向)をZ軸方向とする。また、X軸、Y軸、及びZ軸まわりの回転(傾斜)方向をそれぞれ、θX、θY、及びθZ方向とする。
【0018】
シート基板FBとしては、例えば耐熱性の樹脂フィルム、ステンレス鋼などを用いることができる。例えば、樹脂フィルムは、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、エチレンビニル共重合体樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、などの材料を用いることができる。シート基板FBのY方向の寸法は例えば1m〜2m程度に形成されており、X方向の寸法は例えば10m以上に形成されている。勿論、この寸法は一例に過ぎず、これに限られることは無い。例えばシート基板FBのY方向の寸法が50cm以下であっても構わないし、2m以上であっても構わない。また、シート基板FBのX方向の寸法が10m以下であっても構わない。なお、本実施形態における可撓性とは、例えば基板に少なくとも自重程度の所定の力を加えても線断や破断することがなく、該基板を撓めることが可能な性質をいう。また、上記可撓性は、該基板の材質、大きさ、厚さ、又は温度などの環境、等に応じて変わる。
【0019】
シート基板FBは、例えば200℃程度の熱を受けても寸法が変わらないように熱膨張係数が小さい方が好ましい。例えば、無機フィラーを樹脂フィルムに混合して熱膨張係数を小さくすることができる。無機フィラーの例としては、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、酸化ケイ素などが挙げられる。
【0020】
基板供給部101は、基板処理部102に設けられる供給側接続部102Aに接続されている。基板供給部101は、例えばロール状に巻かれたシート基板FBを基板処理部102へ供給する。基板回収部103は、基板処理部102において処理された後のシート基板FBを回収する。なお、基板供給部101においては、シート基板FBがロール状に巻かれた状態で収容されている構成に限られず、例えばシート基板FBが幾重にも畳まれた状態で収容されている構成であっても構わない。なお、当該畳まれた状態には、折り目がつかず、基板に少なくとも自重程度の所定の力を加えても線断や破断することない状態も含まれる。
【0021】
図3は、基板処理部102の構成を示す図である。
図3に示すように、基板処理部102は、搬送部105、素子形成部106、アライメント部107及び基板切断部108を有している。基板処理部102は、基板供給部101から供給されるシート基板FBを搬送しつつ、当該シート基板FBに上記の有機EL素子50の各構成要素を形成し、有機EL素子50が形成されたシート基板FBを基板回収部103へと送り出す部分である。
【0022】
素子形成部106は、隔壁形成部91、電極形成部92及び発光層形成部93を有している。隔壁形成部91、電極形成部92及び発光層形成部93は、シート基板FBの搬送方向の上流側から下流側にかけて、隔壁形成部91、電極形成部92及び発光層形成部93の順に配置されている。以下、素子形成部106の各構成を説明する。
【0023】
隔壁形成部91は、インプリントローラ110及び熱転写ローラ115を有している。隔壁形成部91は、基板供給部101から送り出されたシート基板FBに対して隔壁BAを形成する。隔壁形成部91では、インプリントローラ110でシート基板FBを押圧するとともに、押圧した隔壁BAが形状を保つように熱転写ローラ115でシート基板FBをガラス転移点以上に熱する。このため、インプリントローラ110のローラ表面に形成された型形状がシート基板FBに転写されるようになっている。シート基板FBは、熱転写ローラ115によって例えば200℃程度に加熱されるようになっている。
【0024】
インプリントローラ110のローラ表面は鏡面仕上げされており、そのローラ表面にSiC、Taなどの材料で構成された微細インプリント用モールド111が取り付けられている。微細インプリント用モールド111は、薄膜トランジスタの配線用のスタンパー及びカラーフィルタ用のスタンパーを形成している。
【0025】
インプリントローラ110は、微細インプリント用モールド111を用いて、シート基板FBにアライメントマークAMを形成する。シート基板FBの幅方向であるY軸方向の両側にアライメントマークAMを形成するため、微細インプリント用モールド111は、アライメントマークAM用のスタンパーを有している。
【0026】
電極形成部92は、隔壁形成部91の+X側に設けられており、例えば有機半導体を用いた薄膜トランジスタを形成する。具体的には、
図1A〜
図1Cで示すようなゲート電極G、ゲート絶縁層I、ソース電極S、ドレイン電極D及び画素電極Pを形成した後、有機半導体層OSを形成する。
【0027】
薄膜トランジスタ(TFT)としては、無機半導体系のものでも有機半導体を用いたものでも良い。無機半導体の薄膜トランジスタは、アモルファスシリコン系のものが知られているが、有機半導体を用いた薄膜トランジスタであってもよい。この有機半導体を用いて薄膜トランジスタを構成すれば、印刷技術や液滴塗布法技術を活用して薄膜トランジスタを形成できる。また、有機半導体を用いた薄膜トランジスタの内、
図1A〜
図1Cで示したような電界効果型トランジスタ(FET)が特に好ましい。
【0028】
電極形成部92は、液滴塗布装置120や熱処理装置BK、切断装置130などを有している。
本実施形態では、液滴塗布装置120として、例えばゲート電極Gを形成する際に用いられる液滴塗布装置120G、ゲート絶縁層Iを形成する際に用いられる液滴塗布装置120I、ソース電極S、ドレイン電極D及び画素電極Pを形成する際に用いられる液滴塗布装置120SD、有機半導体OSを形成する際に用いられる液滴塗布装置120OSなどが用いられている。
【0029】
図4は、液滴塗布装置120の構成を示す平面図である。
図4では、液滴塗布装置120を+Z側から見たときの構成を示している。液滴塗布装置120は、Y軸方向に長く形成されている。液滴塗布装置120には不図示の駆動装置が設けられている。液滴塗布装置120は、当該駆動装置により、例えばX方向、Y方向及びθZ方向に移動可能になっている。
【0030】
液滴塗布装置120には、複数のノズル122が形成されている。ノズル122は、液滴塗布装置120のうちシート基板FBとの対向面に設けられている。ノズル122は、例えばY軸方向に沿って配列されており、当該ノズル122の列(ノズル列)が例えば2列形成されている。制御部104は、全ノズル122に一括して液滴を塗布させることもできるし、各ノズル122について液滴を塗布させるタイミングを個別に調整することもできるようになっている。
【0031】
液滴塗布装置120としては、例えばインクジェット方式やディスペンサー方式などを採用することができる。インクジェット方式としては、帯電制御方式、加圧振動方式、電気機械変換式、電気熱変換方式、静電吸引方式などが挙げられる。液滴塗布法は、材料の使用に無駄が少なく、しかも所望の位置に所望の量の材料を的確に配置できる。なお、液滴塗布法により塗布されるメタルインクの一滴の量は、例えば1〜300ナノグラムである。
【0032】
図3に戻って、液滴塗布装置120Gは、ゲートバスラインGBLの隔壁BA内にメタルインクを塗布する。液滴塗布装置120Iは、スイッチング部にポリイミド系樹脂又はウレタン系樹脂の電気絶縁性インクを塗布する。液滴塗布装置120SDは、ソースバスラインSBLの隔壁BA内及び画素電極Pの隔壁BA内にメタルインクを塗布する。液滴塗布装置120OSは、ソース電極Sとドレイン電極Dとの間のスイッチング部に有機半導体インクを塗布する。
【0033】
メタルインクは、粒子径が約5nmほどの導電体が室温の溶媒中で安定して分散をする液体であり、導電体として、カーボン、銀(Ag)又は金(Au)などが用いられる。有機半導体インクを形成する化合物は、単結晶材科でもアモルファス材料でもよく、低分子でも高分子でもよい。有機半導体インクを形成する化合物のうち特に好ましいものとしては、ペンタセンやトリフェニレン、アントラセン等に代表される縮環系芳香族炭化水素化合物の単結晶又はπ共役系高分子などが挙げられる。
【0034】
熱処理装置BKは、各液滴塗布装置120の+X側(基板搬送方向下流側)にそれぞれ配置されている。熱処理装置BKは、シート基板FBに対して例えば熱風や遠赤外線などを放射可能になっている。熱処理装置BKは、これらの放射熱を用いて、シート基板FBに塗布された液滴を乾燥又は焼成(ベーキング)し硬化させる。
【0035】
切断装置130は、液滴塗布装置120SDの+X側であって液滴塗布装置120OSの上流側に設けられている。切断装置130は、例えばレーザ光などを用いて、液滴塗布装置120SDによって形成されるソース電極Sとドレイン電極Dとを切断する。切断装置130は、不図示の光源と、当該光源からのレーザ光をシート基板FB上に照射させるガルバノミラー131とを有している。
【0036】
レーザ光の種類としては、切断する金属膜に対し、吸収する波長のレーザが好ましく、波長変換レーザで、YAGなどの2,3,4倍高調波がよい。またパルス型レーザを用いることで熱拡散を防止し、切断部以外の損傷を低減することができる。材料がアルミの場合、760nm波長のフェムト秒レーザが好ましい。
【0037】
本実施形態では、例えば光源としてチタンサファイアレーザを使ったフェムト秒レーザ照射部を用いている。当該フェムト秒レーザ照射部は、レーザ光LLを例えば10KHzから40KHzのパルスで照射するようになっている。
【0038】
本実施形態ではフェムト秒レーザを使用するため、サブミクロンオーダの加工が可能であり、電界効果型トランジスタの性能を決めるソース電極Sとドレイン電極Dと間隔を正確に切断することができるようになっている。ソース電極Sとドレイン電極Dと間隔は、例えば3μm程度から30μm程度である。
【0039】
上述したフェムト秒レーザ以外にも、例えば炭酸ガスレーザ又はグリーンレーザなどを使用することも可能である。また、レーザ以外にもダイシングソーなどで機械的に切断する構成としてもよい。
【0040】
ガルバノミラー131は、レーザ光LLの光路に配置されている。ガルバノミラー131は、光源からのレーザ光LLをシート基板FB上に反射させる。ガルバノミラー131は、例えばθX方向、θY方向及びθZ方向に回転可能に設けられている。ガルバノミラー131が回転することにより、レーザ光LLの照射位置が変化するようになっている。
【0041】
上記の隔壁形成部91及び電極形成部92の両方を用いることにより、いわゆるフォトリソグラフィ工程を使用しなくても、印刷技術や液滴塗布法技術を活用して薄膜トランジスタ等を形成できるようになっている。例えば印刷技術や液滴塗布法技術などが用いられる電極形成部92のみを用いた場合、インクのにじみや広がりのため精度よく薄膜トランジスタ等ができない場合がある。
【0042】
これに対して、隔壁形成部91を用いることで隔壁BAが形成されるため、インクのにじみや広がりが防止されるようになっている。また薄膜トランジスタの性能を決めるソース電極Sとドレイン電極Dとの間隔は、レーザ加工又は機械加工により形成されるようになっている。
【0043】
発光層形成部93は、電極形成部92の+X側に配置されている。発光層形成部93は、電極が形成されたシート基板FB上に、例えば有機EL装置の構成要素である発光層IRや画素電極ITOなどを形成する。発光層形成部93は、液滴塗布装置140及び熱処理装置BKを有している。
【0044】
発光層形成部93で形成される発光層IRは、ホスト化合物とリン光性化合物(リン光発光性化合物ともいう)が含有される。ホスト化合物とは、発光層に含有される化合物である。リン光性化合物は、励起三重項からの発光が観測される化合物であり、室温においてリン光発光する。
【0045】
本実施形態では、液滴塗布装置140として、例えば赤色発光層を形成する液滴塗布装置140Re、緑色発光層を形成する液滴塗布装置140Gr、青色発光層を形成する液滴塗布装置140Bl、絶縁層を形成する液滴塗布装置140I及び画素電極ITOを形成する液滴塗布装置140ITなどが用いられている。
【0046】
液滴塗布装置140としては、上記の液滴塗布装置120と同様、インクジェット方式又はディスペンサー方式を採用することができる。有機EL素子50の構成要素として例えば正孔輸送層及び電子輸送層などを設ける場合には、これらの層を形成する装置(例えば、液滴塗布装置など)を別途設けるようにする。
【0047】
液滴塗布装置140Reは、R溶液を画素電極P上に塗布する。液滴塗布装置140Reは、乾燥後の膜厚が100nmになるようにR溶液の吐出量が調整されるようになっている。R溶液としては、例えばホスト材のポリビニルカルバゾール(PVK)に赤ドーパント材を1、2−ジクロロエタン中に溶解した溶液が用いられる。
【0048】
液滴塗布装置140Grは、G溶液を画素電極P上に塗布する。G溶液としては、例えばホスト材PVKに緑ドーパント材を1、2−ジクロロエタン中に溶解した溶液が用いられる。
【0049】
液滴塗布装置140Blは、B溶液を画素電極P上に塗布する。B溶液としては、例えばホスト材PVKに青ドーパント材を1、2−ジクロロエタン中に溶解した溶液が用いられる。
【0050】
液滴塗布装置120Iは、ゲートバスラインGBL又はソースバスラインSBLの一部に電気絶縁性インクを塗布する。電気絶縁性インクとしては、例えばポリイミド系樹脂又はウレタン系樹脂のインクが用いられる。
【0051】
液滴塗布装置120ITは、赤色、緑色及び青色発光層の上にITO(Indium Tin Oxide:インジウムスズ酸化物)インクを塗布する。ITOインクとしては、酸化インジウム(In
2O
3)に数%の酸化スズ(SnO
2)を添加した化合物などが用いられる。また、IDIXO(In
2O
3−ZnO)等非晶質で透明導電膜を作製可能な材料を用いてもよい。透明導電膜は、透過率が90%以上であることが好ましい。
【0052】
熱処理装置BKは、各液滴塗布装置140の+X側(基板搬送方向下流側)にそれぞれ配置されている。熱処理装置BKは、電極形成部92で用いられる熱処理装置BKと同様、シート基板FBに対して例えば熱風や遠赤外線などを放射可能になっている。熱処理装置BKは、これらの放射熱を用いて、シート基板FBに塗布された液滴を乾燥又は焼成(ベーキング)し硬化させる。
【0053】
搬送部105は、X方向に沿った位置に配置される複数のローラRR及び搬送機構TRを有している。ローラRRが回転することにより、シート基板FBがX軸方向に搬送されるようになっている。ローラRRはシート基板FBを両面から挟み込むゴムローラであってもよいし、シート基板FBがパーフォレーションを有するものであればラチェット付きのローラRRであってもよい。複数のローラRRのうち一部のローラRRは搬送方向と直交するY軸方向に移動可能である。搬送機構TRは、X方向上において、素子形成部106のうち電極形成部92及び発光層形成部93に対応する位置に配置されている。
【0054】
アライメント部107は、X方向に沿って設けられた複数のアライメントカメラCA(CA1〜CA8)を有している。アライメントカメラCAは、可視光照明下でCCD又はCMOSで撮像し、その撮像画像を処理してアライメントマークAMの位置を検出してもよいし、レーザ光をアライメントマークAMに照射して、その散乱光を受光してもアライメントマークAMの位置を検出しても良い。
【0055】
アライメントカメラCA1は、熱転写ローラ115の+X側に配置されている。アライメントカメラCA1は、シート基板FB上に熱転写ローラ115によって形成されるアライメントマークAMの位置を検出する。アライメントカメラCA2〜CA8は、それぞれ熱処理装置BKの+X側に配置されている。アライメントカメラCA2〜CA8は、熱処理装置BKを経たシート基板FBのアライメントマークAMの位置を検出する。
【0056】
熱転写ローラ115及び熱処理装置BKを経ることにより、シート基板FBがX軸方向及びY軸方向に伸縮したりする場合がある。このように熱処理を行う熱転写ローラ115の+X側や、熱処理装置BKの+X側にアライメントカメラCAを配置することにより、熱変形などによるシート基板FBの位置ずれを検出することができるようになっている。
【0057】
アライメントカメラCA1〜CA8による検出結果は、制御部104に送信されるようになっている。制御部104は、アライメントカメラCA1〜CA8の検出結果に基づいて、例えば液滴塗布装置120や液滴塗布装置140のインクの塗布位置とタイミングの調整、基板供給部101からのシート基板FBの供給速度やローラRRの搬送速度の調整、ローラRRによるY方向への移動の調整、切断装置130の切断位置やタイミングなどの調整が行われるようになっている。
【0058】
(搬送機構)
次に、上記基板処理部102に設けられた搬送機構TRの構成を説明する。
図5は、搬送機構TRの構成を示す図である。上記
図3において示される複数の搬送機構TRは、それぞれ同様の構成となっている。このため、
図5においては、当該複数の搬送機構TRのうち液滴塗布装置120に対応して配置された搬送機構TRを例に挙げて説明する。
【0059】
図5に示すように、搬送機構TRは、ベルト機構10、ベルト駆動機構20及びエアパッド機構40を有している。ベルト機構10及びベルト駆動機構20は、シート基板FBに対して−Z側に配置されている。また、エアパッド機構40は、シート基板FBに対して+Z側に配置されている。
【0060】
ベルト機構10は、ベルト駆動機構20の回りにθY方向に沿って配置されている。ベルト機構10は、回転部11及び吸着保持板(基板保持部)12を有している。回転部11は、複数の支持部材13が無端状に接続されて構成されている。具体的には、θY方向に隣接する支持部材13同士が、1つの共通の軸部材14によって回動可能に連結されている。この構成がθY方向に連続して設けられており、回転部11は無端状に形成されている。ベルト機構10は、ベルト駆動機構20によってθY方向に回転可能に設けられている。
【0061】
吸着保持板12は、各支持部材13の外周面上に設けられている。吸着保持板12は、例えば矩形に形成された板状部材である。吸着保持板12は、シート基板FBを吸着して保持する吸着保持面12aを有している。吸着保持面12aは、ベルト機構10の外側に設けられている。
【0062】
図6は、搬送機構TRを+Z側から見たときの図である。
図6に示すように、吸着保持板12は、シート基板FBに対してY方向にはみ出すように形成されている。また、
図5及び
図6に示すように、搬送機構TRは、X方向で中央の4つの吸着保持板12(S)によってシート基板FBを保持している。
【0063】
図7及び
図8は、1つの吸着保持板12の構成を示す図である。
図7は吸着保持板12を+Z側から見たときの図であり、
図8は
図7におけるA−A´断面の構成を示す図である。
【0064】
図7及び
図8に示すように、吸着保持板12は、保持部材15及び吸着パッド16が支持板17上にそれぞれ配置された構成となっている。保持部材15は、支持板17のY方向のほぼ中央に配置されており、
図7に示すシート基板FBの被処理部分FBAをY方向にカバーする寸法で形成されている。したがって、シート基板FBのうち少なくとも被処理部分FBAは保持部材15によって保持されるようになっている。
【0065】
図7及び
図8における保持部材15の+Z側の面は、シート基板FBを保持する保持面15aとなっている。保持部材15は、この保持面15aが平坦になるように形成されている。このため、保持面15aに保持されるシート基板FBの被処理部分FBAは、保持面15aによって平坦に保持される。
【0066】
吸着パッド16は、保持部材15に対してY方向の両端側に1つずつ配置されている。吸着パッド16は、シート基板FBのうち被処理部分FBAからY方向の端辺側に外れた位置(例、シート基板FBのうち被処理部分FBA以外の位置)を吸着するようになっている。
【0067】
吸着パッド16は、パッド支持部材17bによって保持されており、
図7及び
図8における+Z側の吸着面16aにおいて負圧になるように構成されている。吸着パッド16は、当該吸着面16aでシート基板FBを真空吸着するようになっている。一例として、吸着パッド16の−Z側は、パッド支持部材17b及び支持板17内に形成された配管16bに接続されており、当該配管16bは支持板17の外部の配管17cに接続されている。配管17cは、
図9に示すポンプ機構18に接続されており、当該ポンプ機構18によって吸着面16aが負圧に形成されるようになっている。
【0068】
この吸着面16aは、保持部材15の保持面15aとの間で面一状態となるように形成されている。したがって、吸着保持板12による吸着保持面12aは、互いに面一状態に形成された保持面15aと吸着面16aとによって形成される。シート基板FBは、吸着保持面12aのうちY方向の両端に設けられた吸着面16aにおいて吸着され、Y方向の中央の保持面15aにおいて吸着されない構成となっている。
【0069】
パッド支持部材17bは、Y方向用アクチュエータ17aによってY方向に移動可能に設けられている。この構成により、吸着パッド16のY方向の位置をY方向に移動させることができるようになっている。
【0070】
この構成により、例えば2つの吸着パッド16においてシート基板FBを吸着した状態とし、+Y側の吸着パッド16を+Y方向に移動させ、−Y側の吸着パッド16を−Y方向に移動させることで、保持面15aでの保持状態を維持したままシート基板FBに対してY方向にテンションを加えることができる。
【0071】
図9は、吸着パッド16に接続されるポンプ機構18の構成を示す断面図である。
図9に示すように、ポンプ機構18は、固定円筒軸30、回転シリンダ31及び吸引ポンプ32を有している。
【0072】
固定円筒軸30は、Y方向視で円筒状に形成されており、位置が固定された状態で保持されている。固定円筒軸30は、凸部30a、吸引供給口30b及び大気解放口30cを有している。凸部30aは、固定円筒軸30の外面のうち+Z側に2箇所設けられている。凸部30aは、固定円筒軸30のY方向の両端部間に亘ってそれぞれY方向に沿って設けられている。
【0073】
吸引供給口30bは、固定円筒軸30の内部にY方向に沿って形成された開口部であり、吸引ポンプ32に接続されている。吸引供給口30bには、図中+Z方向に形成された分岐部30dが設けられている。当該分岐部30dは、上記の2つの凸部30aの間に接続されるように形成されている。このため、吸引ポンプ32の吸引作用は、吸引供給口30b、分岐部30dを介して2つの凸部30aの間に及ぶようになっている。大気解放口30cは、固定円筒軸30のY方向の両端部間に亘って形成されており、当該両端部において大気に接続されている。大気解放口30cは、分岐部30eを有している。分岐部30eは、上記2つの凸部30aの間から外れた位置に接続されている。
【0074】
回転シリンダ31は、固定円筒軸30を囲うように設けられている。回転シリンダ31は、例えばY方向の両端部などに設けられるスペーサ33を介して固定円筒軸30との間に一定の隙間を空けて配置されている。回転シリンダ31の内面は、スペーサ33を介して、固定円筒軸30の2つの凸部30aに隙間無く接触するようになっている。このため、固定円筒軸30の外面と回転シリンダ31の内面との間の空間は、2つの凸部30aによって空間S1と空間S2とに分割された状態になっている。このうち、空間S1は上記の吸引ポンプ32によって吸引された状態になっており、空間S2は常に大気解放された状態になっている。
【0075】
回転シリンダ31は、θY方向に沿って複数の開口部31aが設けられている。各開口部31aは、上記の配管16cにそれぞれ接続されている。複数の開口部31aのうち空間S1に接続される開口部31aは、上記の吸引ポンプ32によって、内側部分が吸引されるようになっている。また、回転シリンダ31は、不図示の回転機構によってベルト機構10の回転速度に合わせて回転するようになっており、吸引される開口部31aが回転と共に切り替わるようになっている。本実施形態では、シート基板FBを支持する4つの回転部11に接続される開口部31aに対して吸引作用が及ぶ。
【0076】
また、シート基板FBの受け渡しをスムーズにするため、このポンプ機構18は、4つの吸着保持板12のうち最も−θY側の吸着保持板12がシート基板FBを保持する位置に到達する前に吸引が開始され、最も+Y側の吸着保持板12がシート基板FBを保持する位置から外れると同時に吸引が解除(大気解放)されるように形成されていることが好ましい。
【0077】
図5に戻って、ベルト駆動機構20は、基部21、ベルト押圧部22及びベルト押圧アクチュエータ23を有している。基部21は、基板処理部102の他の部分(例えば床部や定盤部など)に対して固定されており、位置が変動しないようになっている。ベルト押圧部22は、基部21に対してθY方向に沿って複数配置されており、ベルト機構10の各吸着保持板12に対応する回転部11を回転経路(例、回転部11の回転経路や回転するベルト機構10の外周など)の外側に押圧するように設けられている。ベルト機構10は、この複数のベルト押圧部22によって支持されている。ベルト押圧部22の先端は、θY方向に回転可能なローラを介してベルト機構10に当接されている。
【0078】
ベルト押圧部22は、ベルト機構10の回転方向に沿って複数設けられている。複数のベルト押圧部22は、吸着保持板12のピッチに合わせて配置されている。一例として、ベルト押圧部22は、シート基板FBを保持する4つの吸着保持板12に対して1つずつ押圧するように基部21の+Z側に4つ配置されている。更に、ベルト押圧部22は、ベルト機構10が撓まないように基部21の+X側及び−X側に4つずつ配置されている。複数のベルト押圧部22のうち、例えば基部21の+Z側に配置される4つのベルト押圧部22は、それぞれベルト押圧アクチュエータ23に接続されている。これらのベルト押圧部22は、ベルト押圧アクチュエータ23によって図中Z方向に移動可能に設けられている。このため、基部21の+Z側に配置される4つの吸着保持板12は、+Z側に押圧されるようになっている。なお、当該4つの吸着保持板12は、液滴塗布装置120によって処理される位置及びその近傍に配置されている。このため、少なくとも液滴塗布装置120の処理位置において、吸着保持板12はベルト押圧部22によって押圧される。また、基部21の+X側及び−X側に配置された8つのベルト押圧部22は、基部21に対してそれぞれ固定されている。なお、一例として、ベルト押圧部22は、高い剛性を有する部材で構成されてもよいし、バネのような弾性部材で構成されてもよい。
【0079】
エアパッド機構40(気体層形成部)は、パッド部材41、気流調整機構42及び配管43を有している。パッド部材41は、例えば液滴塗布装置120の上流側(+X側)及び下流側(−X側)に1つずつ設けられている。各パッド部材41は、−Z側に気体(例、空気、窒素などの不活性ガス、等)を噴出する気体噴出口41aと、気体を吸引する気体吸引口41bとがそれぞれ複数設けられている。気体噴出口41a及び気体吸引口41bは、配管43を介して気流調整機構42にそれぞれ接続されている。気流調整機構42は、気体噴出口41aの噴出量と気体吸引口41bの吸引量とを調整する。気流調整機構42によって当該噴出量及び吸引量が調整されることにより、パッド部材41の−Z側には、Z方向に一定の層厚で気体の層(気体層又は受部)が形成されるようになっている。
【0080】
なお、
図3に示すように、発光層形成部93において、搬送機構TRは液滴塗布装置140R、140G及び140Bに跨って配置されているが、この構成に限られることは無く、例えば搬送機構TRは、各液滴塗布装置140R、140G及び140Bに対して個別に設けられている構成としても構わないし、3つの液滴塗布装置140のうち2つに跨って配置された構成としても構わない。
【0081】
また、
図3の電極形成部92において、搬送機構TRは、液滴塗布装置120G、120I及び120SDに対して個別に設けられているが、この構成に限られることは無く、例えば搬送機構TRは、これら液滴塗布装置120G、120I及び120SDに跨って配置された構成としても構わないし、3つの液滴塗布装置120のうち2つに跨って配置された構成としても構わない。
【0082】
(基板処理装置の動作)
次に、上記のように構成された基板処理装置100の動作を説明する。
基板処理装置100は、
図2に示すように、基板供給部101から基板処理部102に対してシート基板FBを供給しつつ、基板処理部102において当該シート基板FB上に素子を形成していく。基板処理部102では、
図3に示すように、ローラRR及び搬送機構TRによってシート基板FBを搬送する。
【0083】
制御部104は、基板供給部101から供給されるシート基板FBの供給速度に合わせて、基板処理部102内の各ローラRRの回転速度や、搬送機構TRのベルト機構10の回転速度などを調整する。また、制御部104は、ローラRRがY軸方向にずれているか否かを検出し、ずれている場合にはローラRRを移動させて位置を補正する。また、制御部104は、ローラRRを移動させることによりシート基板FBの位置補正を併せて行わせる。
【0084】
基板供給部101から基板処理部102に供給されたシート基板FBは、まず隔壁形成部91に搬送される。隔壁形成部91において、シート基板FBはインプリントローラ110と熱転写ローラ115とに挟まれて押圧され、熱転写によってシート基板に隔壁BA及びアライメントマークAMが形成される。
【0085】
図10は、シート基板FBに隔壁BA及びアライメントマークAMが形成された状態を示す図である。
図11は、
図10の一部を拡大して示した図である。
図12は、
図11におけるD−D´断面に沿った構成を示す図である。
図10及び
図11は、シート基板FBを+Z側から見たときの様子を示している。
【0086】
図10に示すように、隔壁BAは、シート基板FBのY方向中央部の素子形成領域60に形成される。
図11に示すように、隔壁BAを形成することにより、素子形成領域60には、ゲートバスラインGBL及びゲート電極Gを形成する領域(ゲート形成領域52)とソースバスラインSBL、ソース電極S、ドレイン電極D及び陽極Pを形成する領域(ソースドレイン形成領域53)とが区画されることになる。
図12に示すように、ゲート形成領域52は、断面視で台形状に形成されている。図示を省略するが、ソースドレイン形成領域53についても同様の形状となっている。隔壁BA内の幅W(μm)は、ゲートバスラインGBLの線幅となる。この幅Wとしては、液滴塗布装置120Gから塗布される液滴直径d(μm)に対して2倍〜4倍程度とすることが好ましい。
【0087】
なお、ゲート形成領域52及びソースドレイン形成領域53の断面形状は、微細インプリント用モールド111がシート基板FBを押圧した後にシート基板FBが剥離しやすいように、断面視でV字形状又はU字形状とすること好ましい。この他の形状として、例えば断面視で矩形形状としても構わない。
【0088】
一方、
図10に示すように、アライメントマークAMは、シート基板FBのY方向両端部の縁領域61に一対形成される。隔壁BA及びアライメントマークAMは、相互の位置関係が重要であるため同時に形成される。
図11に示すように、Y軸方向には、アライメントマークAMとゲート形成領域52との間の所定距離PYが規定されており、X軸方向には、アライメントマークAMとソースドレイン形成領域53との間の所定距離PXが規定されている。このため、一対のアライメントマークAMの位置に基づいて、シート基板FBのX軸方向のずれ、Y軸方向のずれ及びθ回転が検出可能となる。
【0089】
図10及び
図11では、アライメントマークAMが、X軸方向の複数行の隔壁BAごとに一対設けられているが、これに限られることは無く、例えば隔壁BA1行ごとにアライメントマークAMを設けるようにしても良い。また、シート基板FBにスペースがあれば、シート基板FBの縁領域61だけでなく素子形成領域60にアライメントマークAMを設けても良い。また、
図10及び
図11では、アライメントマークAMは十字形状を示したが、円形マーク、斜めの直線マークなど他のマーク形状であってもよい。
【0090】
続いてシート基板FBは、搬送ローラRRによって電極形成部92に搬送される。電極形成部92では、各液滴塗布装置120による液滴の塗布が行われ、シート基板FB上に電極が形成される。
【0091】
制御部104は、シート基板FBが搬送機構TRに搬送される前に、搬送機構TRのエアパッド機構40を作動させると共に、ポンプ機構18を作動させる。この動作により、パッド部材41の−Z側に一定の厚さの空気の層AR(
図20参照)が形成されると共に、回転部11の吸着パッド16における吸引動作が開始される。
【0092】
この状態でシート基板FBが搬送機構TRに搬送されると、シート基板FBは吸着パッド16によって吸着面16aに吸着されると共に保持部材15の保持面15a上に保持される。したがって、シート基板FBは、吸着保持面12aによって保持されることになる。制御部104は、必要に応じて、パッド支持部材17bをY方向に移動させることにより、シート基板FBにテンションを加えて、シート基板FBの平坦度を高めるようにする。
【0093】
制御部104は、シート基板FBにテンションを加えた後、
図20に示すように、ベルト押圧部22を+Z側に移動させ、パッド部材41の−Z側に形成された気体層ARにシート基板FBを押し付ける。この動作においては、反作用によってパッド部材41側においてもシート基板FBを−Z側に押圧する。このように気体層ARの−Z側の面ARcを基準面とし、当該気体層ARと吸着保持面12aとでシート基板FBを挟持することにより、シート基板FBの被処理面FBcにおける平坦性が維持されることになる。制御部104は、シート基板FBの被処理面FBcにおける平坦性を維持しつつ、ベルト機構10を回転させることで、シート基板FBを+X方向に搬送させる。以下、制御部104は、基板処理部102の下流側の搬送機構TRにおいても同様の動作を行わせる。
【0094】
このようにシート基板FBの被処理面FBcの平坦性を維持した状態で、制御部104は、液滴塗布装置120の動作を開始させる。例えば、最初に、シート基板FB上には、液滴塗布装置120GによってゲートバスラインGBL及びゲート電極Gが形成される。
図13A及び
図13Bは、液滴塗布装置120Gによって液滴塗布が行われるシート基板FBの様子を示す図である。
【0095】
図13Aに示すように、液滴塗布装置120Gは、隔壁BAが形成されたシート基板FBのゲート形成領域52に例えば1〜9の順序でメタルインクを塗布する。この順序は、例えばメタルインク同士の張力で直線状に塗布される順序である。
図13Bは、例えば1滴のメタルインクが塗布された状態を示す図である。
図13Bに示すように、隔壁BAが設けられているため、ゲート形成領域52に塗布されたメタルインクは拡散せずに保持されることになる。このようにして、液滴塗布装置120Gはゲート形成領域52の全体にメタルインクを塗布する。
【0096】
ゲート形成領域52にメタルインクが塗布された後、シート基板FBは当該メタルインクの塗布された部分が熱処理装置BKの−Z側に位置するように搬送される。熱処理装置BKは、シート基板FB上に塗布されたメタルインクに熱処理を行い、当該メタルインク乾燥させる。
図14Aは、メタルインクを乾燥させた後のゲート形成領域52の状態を示す図である。
図14Aに示すように、メタルインクを乾燥させることにより、メタルインクに含まれる導電体が薄膜状に積層されることになる。このような薄膜状の導電体がゲート形成領域52の全体に形成され、
図14Bに示すように、シート基板FB上にゲートバスラインGBL及びゲート電極Gが形成されることになる。
【0097】
次に、シート基板FBは、液滴塗布装置120Iの−Z側に搬送される。液滴塗布装置120Iではシート基板FBに電気絶縁性インクが塗布される。液滴塗布装置120Iでは、例えば
図15に示すように、ソースドレイン形成領域53を通過するゲートバスラインGBL上及びゲート電極G上に電気絶縁性インクが塗布される。
【0098】
電気絶縁性インクが塗布された後、シート基板FBは熱処理装置BKの−Z側に搬送され、熱処理装置BKによって当該電気絶縁性インクに熱処理が施される。この熱処理によって電気絶縁性インクが乾燥し、ゲート絶縁層Iが形成される。
図15では、ゲート絶縁層Iが隔壁BA上に跨るように円形状に形成された状態を示しているが、特に隔壁BAを越えて形成する必要は無い。
【0099】
ゲート絶縁層Iが形成された後、シート基板FBは液滴塗布装置120SDの−Z側に搬送される。液滴塗布装置120SDでは、シート基板FBのソースドレイン形成領域53にメタルインクが塗布される。ソースドレイン形成領域53のうちゲート絶縁層Iを跨ぐ部分については、例えば
図16に示す1〜9の順序でメタルインクが吐出される。
【0100】
メタルインクの吐出後、シート基板FBは熱処理装置BKの−Z側に搬送され、メタルインクの乾燥処理が行われる。当該乾燥処理後、メタルインクに含まれる導電体が薄膜状に積層され、ソースバスラインSBL、ソース電極S、ドレイン電極D及び陽極Pが形成される。ただし、この段階では、ソース電極Sとドレイン電極Dとの間が接続された状態になっている。
【0101】
次に、シート基板FBは、切断装置130の−Z側に搬送される。シート基板FBは、切断装置130において、ソース電極Sとドレイン電極Dとの間が切断される。
図17は、ソース電極Sとドレイン電極Dとの間隔を切断装置130で切断した状態を示す図である。切断装置130では、ガルバノミラー131を用いてレーザ光LLのシート基板FBへの照射位置を調整しながら切断を行う。
【0102】
ソース電極Sとドレイン電極Dとの間が切断された後、シート基板FBは、液滴塗布装置OSの−Z側に搬送される。液滴塗布装置OSでは、シート基板FB上に有機半導体層OSが形成される。シート基板FB上のうちゲート電極Gに重なる領域には、ソース電極S及びドレイン電極Dに跨るように有機半導体インクが吐出される。
【0103】
有機半導体インクの吐出後、シート基板FBは熱処理装置BKの−Z側に搬送され、有機半導体インクの乾燥処理が行われる。当該乾燥処理後、有機半導体インクに含まれる半導体が薄膜状に積層され、
図18に示すように、有機半導体OSが形成される。以上の工程により、シート基板FB上に電界効果型トランジスタ及び接続配線が形成されることになる。
【0104】
続いてシート基板FBは、搬送ローラRRによって発光層形成部93に搬送される(
図3参照)。発光層形成部93では、液滴塗布装置140Re、液滴塗布装置140Gr、液滴塗布装置140Bl及び熱処理装置BKによって赤色、緑色、青色の発光層IRがそれぞれ形成される。シート基板FB上には隔壁BAが形成されているため、赤色、緑色及び青色の発光層IRを熱処理装置BKで熱処理することなく続けて塗布する場合であっても、隣接する画素領域へ溶液が溢れることにより、混色が生じることがない。
【0105】
発光層IRの形成後、シート基板FBは液滴塗布装置140I及び熱処理装置BKを経て絶縁層Iが形成され、液滴塗布装置140IT及び熱処理装置BKを経て透明電極ITが形成される。このような工程を経て、シート基板FB上には
図1A〜
図1Cで示した有機EL素子50が形成される。
【0106】
素子形成動作では、上記のようにシート基板FBを搬送させながら有機EL素子50を形成する過程で、シート基板FBがX方向、Y方向及びθZ方向にずれてしまうのを防ぐため、アライメント動作を行っている。以下、
図19を参照して、アライメント動作を説明する。
【0107】
アライメント動作においては、各部に設けられた複数のアライメントカメラCA(CA1〜CA8)が適宜シート基板FBに形成されたアライメントマークAMを検出し、制御部104に検出結果を送信する。制御部104では、送信された検出結果に基づいて、アライメント動作を行わせる。
【0108】
例えば、制御部104は、アライメントカメラCA(CA1〜CA8)が検出するアライメントマークAMの撮像間隔などに基づいてシート基板FBの送り速度を検出し、ローラRRが例えば所定速度で回転しているか否かを判断する。ローラRRが所定速度で回転していないと判断した場合、制御部104は、ローラRRの回転速度の調整の指令を出しフィードバックをかける。
【0109】
また、例えば制御部104は、アライメントマークAMの撮像結果に基づき、アライメントマークAMのY軸方向の位置がずれているか否かを検出し、シート基板FBのY軸方向の位置ずれの有無を検出する。位置ずれが検出された場合、制御部104は、シート基板FBを搬送させた状態で位置ずれがどの程度の時間継続しているかを検出する。
【0110】
位置ずれの時間が短時間であれば、液滴塗布装置120の複数のノズル122のうち液滴を塗布するノズル122を切り替えることによって対応する。シート基板FBのY軸方向のずれが長時間続くようであれば、ローラRRの移動によってシート基板FBのY軸方向の位置補正を行う。
【0111】
また、例えば制御部104は、アライメントカメラCAが検出するアライメントマークAMのX軸及びY軸方向の位置に基づき、シート基板FBがθZ方向にずれているか否かを検出する。位置ずれが検出された場合、制御部104は、Y軸方向の位置ずれの検出時と同様、シート基板FBを搬送させた状態で位置ずれがどの程度の時間継続しているかを検出する。
位置ずれの時間が短時間であれば、液滴塗布装置120の複数のノズル122のうち液滴を塗布するノズル122を切り替えることによって対応する。ずれが長時間続くようであれば、当該ズレを検出したアライメントカメラCAを挟む位置に設けられる2つのローラRRをX方向又はY方向に移動させ、シート基板FBのθZ方向の位置補正を行う。
【0112】
なお、本実施形態において、制御部104がエアパッド機構40を制御する際には、例えば気体層ARを均一の厚さの層になるように制御すると共に、アライメント動作や電極形成動作や発光層形成動作、シート基板FBの切断動作など、上記実施形態における基板処理部102の処理に応じて、層厚や気体層ARの形成範囲、パッド部材41からの気体の供給速度又は供給量などを制御することが好ましい。
【0113】
以上のように、本実施形態における基板処理装置100は、シート基板FBに対して所定の処理を行う液滴塗布装置120及び140と、当該液滴塗布装置120及び140に対して移動すると共に、シート基板FBの被処理面FBcを形成させつつ当該シート基板FBを保持する吸着保持板12とを備える。また、本実施形態の基板処理装置100によれば、シート基板FBの被処理面FBcにおける平坦性を確保しつつシート基板FBに処理を行うことができる。これにより、可撓性を有する基板に対して高精度なパターンを形成できる基板処理装置100を提供することができる。
【0114】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
【0115】
例えば、上記実施形態においては、搬送機構TRを基板処理装置100の床部に対して搬送方向(X方向)に長手とし搬送方向の垂直方向(Z方向)に短手となるように構成したが、これに限られることは無く、例えば
図21に示すようにZ方向に長手となるように構成しても構わない。この場合、シート基板FBがZ方向に沿って搬送されることになり、当該シート基板FBに対する処理はX方向又はY方向に行われることとなる。
【0116】
また、上記実施形態においては、搬送機構TRのうち基部21の+Z側の吸着保持板12のみを用いて搬送及び被処理面FBcの形成を行う構成としたが、これに限られることは無く、例えば
図21に示すように基部21の−Z側の吸着保持板12を用いて搬送及び被処理面FBcの形成を行う構成であっても構わない。この場合、例えば、電極形成部92の液滴塗布装置120は基部21の+Z側の吸着保持板12を用いてシート基板FBに対して上述の処理を行い、発光層形成部93の液滴塗布装置140は基部21の−Z側の吸着保持板12を用いてシート基板FBに対して上述の処理を行う。これにより、基板処理装置100の装置自体の大きさが小さくなり、基板処理装置100を配置するスペースが省スペース化される。
【0117】
また、上記実施形態において、搬送機構TRは液滴塗布装置120、140に対応する位置のみに設けるようにしたが、搬送機構TRは他の位置に配置しても構わない。