(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
支持基板とその片面に固定された樹脂層とを有し前記樹脂層の露出表面が易剥離性を示す樹脂層付き支持基板の前記樹脂層の露出表面と、第1主面および第2主面を有する板厚0.3mm以下のガラス基板の前記第1主面とを積層面として、前記樹脂層付き支持基板とガラス基板とを密着積層して、ガラス積層体を得る積層工程と、
前記ガラス積層体中の前記ガラス基板の第2主面を研磨する研磨工程と、
前記ガラス基板の研磨された前記第2主面上に電子デバイス用部材を形成する部材形成工程と、
前記電子デバイス用部材が積層した前記ガラス基板と、前記樹脂層付き支持基板とを分離して、前記ガラス基板と前記電子デバイス用部材を含む電子デバイスを得る分離工程とを備え、
前記樹脂層の露出表面における表面うねりが、ろ波中心線うねり(WCA)で0.100μm以下であり、
前記樹脂層の厚さが15μm以下である、電子デバイスの製造方法。
支持基板とその片面に固定された樹脂層とを有し、前記樹脂層の露出表面が易剥離性を示す樹脂層付き支持基板の前記樹脂層の露出表面と、第1主面および第2主面を有する板厚0.3mm以下のガラス基板の前記第1主面とを積層面として、前記樹脂層付き支持基板とガラス基板とを密着積層して、ガラス積層体を得る積層工程と、
前記ガラス積層体中の前記ガラス基板の第2主面を研磨する研磨工程と、
前記樹脂層表面における表面うねりが、ろ波中心線うねり(WCA)で0.100μm以下であり、前記樹脂層の厚さが15μm以下である、研磨されたガラス基板を含むガラス積層体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明するが、本発明は、以下の実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、以下の実施形態に種々の変形および置換を加えることができる。
なお、本発明において、支持基板の層と樹脂層の界面の剥離強度が樹脂層とガラス基板の層の界面の剥離強度よりも高いことを、以下、樹脂層とガラス基板とは剥離可能に密着し、支持基板と樹脂層とは固定されているという。
【0020】
本発明者らは、従来技術(特許文献1の発明)で使用される積層体中のガラス基板の表面にうねりがある原因として、ガラス基板自体の表面のうねりと共に、ガラス基板が接する樹脂層表面のうねりが挙げられ、特に、後者の要因が大きいことを見出した。そこで、まず、
図4を用いて、樹脂層表面のうねりと従来技術の問題点との関係性について説明する。
図4(a)を示すように、従来のガラス積層体100においては、支持基板112上の樹脂層114表面にうねりのような表面凹凸がある場合、その表面に接して配置されるガラス基板116の板厚が薄いために、樹脂層114表面の表面うねりに追従する形でガラス基板116が変形してしまう(
図4(a)参照)。その後に、研磨工程を実施することにより、ガラス基板116の露出している第1主面116aは一時的に平坦化される。しかし、ガラス基板116と樹脂層114とを剥離すると、ガラス基板116の元来平坦であった第2主面116bが平坦に戻る力が働き平坦化されると共に、その代わりに研磨工程時に平坦であった第1主面116aに応力がかかり再び表面うねりが現れる。つまり、樹脂層114の表面うねりがガラス基板の表面に転写される。このようなガラス基板116剥離後の表面うねりの発生は、ガラス基板116の第1主面116aに電子デバイス用部材を形成した後であっても生じる。そのため、単に研磨工程を設けるだけでは、所望の効果を得ることができない。
【0021】
そこで、本発明者らは、樹脂層表面のうねりを所定値以下にすると共に、研磨工程を設けることにより、上記課題が解決できることを見出している。樹脂層表面のうねりを小さくすることにより、その上に積層されるガラス基板の変形を小さくすることができ、後述する分離工程後においても樹脂層表面のうねりがガラス基板の表面に転写されることを抑制することができる。さらに、研磨工程によって、ガラス基板自体の表面うねりや表面の微小な疵を除去できる。特に、樹脂層の露出表面における表面うねりがろ波中心線うねり(W
CA)で0.100μm以下であれば、その上に積層されるガラス基板の表面うねりもそれ以下となり、上述した特許文献2で述べた電子デバイスの歩留まりの低下や信頼性の確保が達成される。
以下に、電子デバイスおよび積層体の製造方法について、各工程順に説明する。
【0022】
図1は、本発明の電子デバイスの製造方法の一実施形態における製造工程を示すフローチャートである。
図1に示すように、電子デバイスの製造方法は、積層工程(S102)、研磨工程(S104)、部材形成工程(S106)および、分離工程(S108)を備える。
以下に、各工程で使用される材料およびその手順について詳述する。まず、積層工程(S102)について詳述する。
【0023】
[積層工程]
積層工程S102は、樹脂層付き支持基板の樹脂層の露出表面と、第1主面および第2主面を有する所定の板厚のガラス基板の第1主面とを積層面として、樹脂層付き支持基板の樹脂層とガラス基板とを密着積層し、ガラス積層体を得る工程である。該工程S102を実施することにより、後述する研磨工程S104および部材形成工程S106で使用されるガラス積層体が得られる。
【0024】
図2は、本発明に係るガラス積層体の一例の模式的断面図である。
図2に示すように、ガラス積層体10は、支持基板12の層とガラス基板16の層とそれらの間に樹脂層14が存在する積層体である。樹脂層14は、その一方の面が支持基板12の層に固定されると共に、その他方の面がガラス基板16の第1主面16aに接し、樹脂層14とガラス基板16との界面は剥離可能に密着されている。言い換えると、樹脂層14はガラス基板16の第1主面16aに対して易剥離性を具備している。
支持基板12の層および樹脂層14からなる2層部分は、液晶パネルなどの電子デバイス用部材を製造する部材形成工程S106において、ガラス基板16を補強する。なお、ガラス積層体10の支持基板12の層および樹脂層14からなる2層部分がガラス積層体10から独立したものを樹脂層付き支持基板18という。樹脂層付き支持基板18において、樹脂層14は支持基板12に固定されている。
【0025】
このガラス積層体10は、部材形成工程S106まで使用される。即ち、このガラス積層体10は、そのガラス基板16の第2主面16b表面上に液晶表示装置などの電子デバイス用部材が形成されるまで使用される。その後、樹脂層付き支持基板18の層は、ガラス基板16の層との界面で剥離され、樹脂層付き支持基板18の層は電子デバイスを構成する部分とはならない。分離された樹脂層付き支持基板18は新たなガラス基板16と積層され、ガラス積層体10として再利用することができる。
【0026】
以下で、まず、ガラス積層体を構成する各層(支持基板、樹脂層、ガラス基板)について詳述し、その後該工程S102の手順について詳述する。
【0027】
(支持基板)
支持基板12は、樹脂層14と協働して、ガラス基板16を支持して補強し、後述する部材形成工程S106(電子デバイス用部材の製造工程)において電子デバイス用部材の製造の際にガラス基板16の変形、傷付き、破損などを防止する。また、従来よりも厚さが薄いガラス基板を使用する場合、従来のガラス基板と同じ厚さのガラス積層体10とすることにより、部材形成工程S106において、従来の厚さのガラス基板に適合した製造技術や製造設備を使用可能にすることも、支持基板12を使用する目的の1つである。
【0028】
支持基板12としては、例えば、ガラス板、プラスチック板、SUS板、セラミック板などの金属板などが用いられる。支持基板12は、部材形成工程S106が熱処理を伴う場合、ガラス基板16との線膨張係数の差の小さい材料で形成されることが好ましく、ガラス基板16と同一材料で形成されることがより好ましく、支持基板12はガラス板であることが好ましい。特に、支持基板12は、ガラス基板16と同じガラス材料からなるガラス板であることが好ましい。
【0029】
支持基板12の後述する樹脂層14が積層される表面の表面うねりが、ろ波中心線うねり(W
CA)で0.100μm以下であることが好ましい。ここで、「表面うねり」は、公知の触針式の表面形状測定装置を用いて、JIS B−0610(1987)に記載のW
CA(ろ波中心線うねり)を測定した値である。なお、本発明において、ろ波うねり曲線のカットオフ値は0.8mmとし、測定長さは40mmとする。表面うねりが上記範囲内であれば、後述する樹脂層14のガラス基板16と接触する表面(易剥離性表面)14aの表面うねりが小さくなり、結果として後述する分離工程S108後においても、電子デバイス用部材が形成されたガラス基板16の第2主面の表面うねりが小さく、電子デバイス用部材の位置ずれの発生が抑制される。なかでも、上記効果がより優れる点で、ろ波中心線うねりは0.070μm以下であることが好ましく、0.030μm以下であることがより好ましい。なお、下限は特に制限されないが、0μmであることが好ましい。
なお、支持基板12表面の表面うねりを低減する方法としては、公知の研磨方法(例えば、公知の物理研摩または化学研磨。より具体的には、CMPなど)を使用することができる。
【0030】
支持基板12の厚さは、ガラス基板16よりも厚くてもよいし、薄くてもよい。好ましくは、ガラス基板16の厚さ、樹脂層14の厚さ、およびガラス積層体10の厚さに基づいて、支持基板12の厚さが選択される。例えば、現行の部材形成工程が厚さ0.5mmの基板を処理するように設計されたものであって、ガラス基板16の厚さと樹脂層14の厚さとの和が0.1mmの場合、支持基板12の厚さを0.4mmとする。支持基板12の厚さは、通常の場合、0.2〜5.0mmであることが好ましい。
【0031】
支持基板12がガラス板の場合、ガラス板の厚さは、扱いやすく、割れにくいなどの理由から、0.08mm以上であることが好ましい。また、ガラス板の厚さは、電子デバイス用部材形成後に剥離する際に、割れずに適度に撓むような剛性が望まれる理由から、1.0mm以下であることが好ましい。
【0032】
ガラス基板16と支持基板12との25〜300℃における平均線膨張係数(以下、単に「平均線膨張係数」という)の差は、好ましくは500×10
-7/℃以下であり、より好ましくは300×10
-7/℃以下であり、さらに好ましくは200×10
-7/℃以下である。差が大き過ぎると、部材形成工程S106における加熱冷却時に、ガラス積層体10が激しく反ったり、ガラス基板16と樹脂層付き支持基板18とが剥離したりする可能性がある。ガラス基板16の材料と支持基板12の材料が同じ場合、このような問題が生じるのを抑制することができる。
【0033】
(樹脂層)
樹脂層14は、支持基板12の少なくとも片面上に固定されており、また、ガラス基板16と剥離可能に密着する。樹脂層14は、ガラス基板16と支持基板12とを分離する操作が行われるまでガラス基板16の位置ずれを防止すると共に、分離操作によってガラス基板16から容易に剥離し、ガラス基板16などが分離操作によって破損するのを防止する。また、樹脂層14は支持基板12に固定されており、分離操作において樹脂層14と支持基板12は剥離せず、分離操作によって樹脂層付き支持基板18が得られる。なお、分離操作により、樹脂層14とガラス基板16の界面が剥離しやすいように、分離操作を始めるにあたり、その界面に剥離起点を設けて剥離を行うことが好ましい。
樹脂層14のガラス基板16と接する表面14aは、ガラス基板16の第1主面16aに剥離可能に密着する。本発明では、この樹脂層表面14aの容易に剥離できる性質を易剥離性(剥離性)という。
【0034】
本発明において、上記固定と(剥離可能な)密着は剥離強度(すなわち、剥離に要する応力)に違いがあり、固定は密着に対し剥離強度が大きいことを意味する。また、剥離可能な密着とは、剥離可能であると同時に、固定されている面の剥離を生じさせることなく剥離可能であることも意味する。具体的には、本発明のガラス積層体10において、ガラス基板16と支持基板12とを分離する操作を行った場合、密着された面で剥離し、固定された面では剥離しないことを意味する。したがって、ガラス積層体10をガラス基板16と支持基板12とに分離する操作を行うと、ガラス積層体10はガラス基板16と樹脂層付き支持基板18の2つに分離される。
【0035】
樹脂層14は、接着力や粘着力などの強い結合力で支持基板12表面に固定されていることが好ましい。例えば、反応硬化性樹脂を支持基板12表面で反応硬化させることにより、硬化した樹脂は支持基板12表面に接着する。また、支持基板12表面と樹脂層14間に強い結合力を生じさせる処理(例えば、カップリング剤を使用した処理)を施して支持基板12表面と樹脂層14間の結合力を高めることができる。
一方、樹脂層14はガラス基板16の第1主面16aに弱い結合力で結合させ、例えば固体分子間におけるファンデルワールス力に起因する結合力で結合させることが好ましい。ガラス基板16に接する前の樹脂層表面14aは、易剥離性の表面であることが好ましく、この易剥離性の樹脂層表面14aとガラス基板16の第1主面16aとを接触させることにより、両表面を弱い結合力で結合させることができる。すなわち、樹脂層表面14aが易剥離性であるとガラス基板16の第1主面16aとの界面における剥離性がより良好なものとなる。両表面は隙間なく接触し、この状態を本発明では密着という。
【0036】
なお、通常の意味で易剥離性ではない樹脂層の表面に易剥離性を付与する表面処理によっても樹脂層表面を易剥離性とすることができる。また、通常の意味で易剥離性ではない樹脂層であっても、上記固定における結合力に対して充分低い結合力で密着しうる樹脂であれば(かつ、ガラス基板や支持基板の破損、などを生じることなく剥離可能であれば)、表面処理を施すことなく樹脂層の材料として使用できる。
特に、ガラス基板に接する樹脂層表面が易剥離性である場合は、剥離の際に樹脂層表面の破損でその一部がガラス基板表面に残ることが少ない。
【0037】
上記のように、樹脂層14の支持基板12の表面に対する結合力は、樹脂層14のガラス基板の第1主面16aに対する結合力よりも相対的に高い。このため、樹脂層14と支持基板12との間の剥離強度は、樹脂層14とガラス基板16との間の剥離強度よりも高くなっている。樹脂層14と支持基板12との間は、粘着や接着で結合していることが好ましい。ただしこれに限られるものではなく、樹脂層14のガラス基板16に対する結合力よりも相対的に高い限り、樹脂層14と支持基板12との間は、他の結合力に起因する力によって結合していてもよい。
【0038】
樹脂層14の表面14a(ガラス基板16と接する表面)における表面うねりが、ろ波中心線うねり(W
CA)で0.100μm以下である。「表面うねり」は、公知の触針式の表面形状測定装置を用いて、JIS B−0610(1987)に記載のW
CA(ろ波中心線うねり)を測定した値である。なお、本発明において、ろ波うねり曲線のカットオフ値は0.8mmとし、測定長さは40mmとする。表面うねりが上記範囲内であれば、後述する分離工程S108後においても、電子デバイス用部材が形成されたガラス基板16の第2主面上への表面うねりの発生が抑制される。結果として、電子デバイス用部材の位置ずれの発生が抑制される。本効果がより優れる点で、0.070μm以下が好ましく、0.030μm以下がより好ましい。下限は特に制限されないが、0μmであることが好ましい。
なお、樹脂層14表面の表面うねりを低減する方法としては、表面うねりの小さい支持基板12を使用する方法や、樹脂層14を形成する際に使用される樹脂層形成用組成物を用いて樹脂層形成用組成物の層(以後、樹脂層形成用組成物層とも表記)を支持基板12上に形成後で硬化前に、樹脂層形成用組成物層を備える支持基板12を静置する方法、樹脂層14の表面に平坦な表面(ろ波中心線うねり(W
CA)で0.100μm以下である表面)を有する平坦部材を(好ましくは、加熱環境下で)押圧して平坦性を転写させる方法や、樹脂層14の表面をエッチングする方法などが挙げられる。
【0039】
樹脂層14の大きさは、特に限定されない。樹脂層14の大きさは、ガラス基板16や支持基板12よりも大きくてもよいし、小さくてもよい。
【0040】
樹脂層14の厚さは特に限定されないが、表面うねりを小さくできる点で、15μm以下であることが好ましく、2〜15μmであることがより好ましく、2〜10μmであることがさらに好ましい。樹脂層14の厚さがこのような範囲であると、樹脂層14とガラス基板16との密着が十分になるからである。また、樹脂層14とガラス基板16との間に気泡や異物が介在することがあっても、ガラス基板16のゆがみ欠陥の発生を抑制することができるからである。また、樹脂層14の厚さが厚すぎると、形成するのに時間および材料を要するため経済的ではなく、表面うねりが大きくなりやすい。
【0041】
なお、樹脂層14は2層以上からなっていてもよい。この場合「樹脂層14の厚さ」は全ての層の合計の厚さを意味するものとする。
また、樹脂層14が2層以上からなる場合は、各々の層を形成する樹脂の種類が異なってもよい。
【0042】
樹脂層14は、ガラス転移点が室温(25℃程度)よりも低い、またはガラス転移点を有しない材料からなることが好ましい。より容易にガラス基板16と剥離することができ、同時にガラス基板16との密着も十分になるからである。
【0043】
また、樹脂層14は、部材形成工程S106において加熱処理されることが多いので、耐熱性を有していることが好ましい。
【0044】
また、樹脂層14の弾性率が高すぎるとガラス基板16との密着性が低くなる傾向にある。一方、樹脂層14の弾性率が低すぎると剥離性が低くなる。
【0045】
樹脂層14を形成する樹脂の種類は、特に限定されない。例えば、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、またはシリコーン樹脂が挙げられる。いくつかの種類の樹脂を混合して用いることもできる。中でもシリコーン樹脂が好ましい。シリコーン樹脂は、耐熱性や剥離性に優れるためである。また、支持基板12がガラス板である場合、ガラス板表面のシラノール基との縮合反応によって、ガラス板に固定し易いからである。シリコーン樹脂層は、支持基板12とガラス基板16との間に介装されている状態では、例えば大気中200℃程度で1時間程度処理しても、剥離性がほぼ劣化しない点も好ましい。
【0046】
樹脂層14は、シリコーン樹脂の中でも剥離紙用に使用されるシリコーン樹脂(硬化物)からなることが好ましい。剥離紙の剥離層のシリコーン樹脂は、剥離紙にコートした硬化性シリコーン樹脂組成物の層を硬化させて形成される。この硬化性シリコーン樹脂組成物を使用し、この硬化性シリコーン樹脂組成物を支持基板12の表面で硬化させて形成した硬化シリコーン樹脂からなる樹脂層は、支持基板12表面に接着するとともにその自由表面は優れた易剥離性を有するので好ましい。また、柔軟性が高いので、樹脂層14とガラス基板16との間へ気泡や塵介などの異物が混入してもガラス基板16のゆがみ欠陥の発生を抑制することができる。
【0047】
このような樹脂層14を形成するために使用される硬化性シリコーン樹脂組成物は、その硬化機構により縮合反応型シリコーン樹脂組成物、付加反応型シリコーン樹脂組成物、紫外線硬化型シリコーン樹脂組成物および電子線硬化型シリコーン樹脂組成物に分類されるが、いずれも使用することができる。これらの中でも付加反応型シリコーン樹脂組成物が好ましい。これは、硬化反応のしやすさ、硬化後の樹脂層表面14aの易剥離性の程度が良好で、耐熱性も高いからである。
【0048】
付加反応型シリコーン樹脂組成物は、主剤および架橋剤を含み、白金系触媒などの触媒の存在下で硬化する硬化性の組成物である。付加反応型シリコーン樹脂組成物の硬化は、加熱処理により促進される。付加反応型シリコーン樹脂組成物中の主剤は、ケイ素原子に結合したアルケニル基(ビニル基など)を有するオルガノポリシロキサン(すなわち、オルガノアルケニルポリシロキサン。なお、直鎖状が好ましい)であることが好ましく、アルケニル基などが架橋点となる。付加反応型シリコーン樹脂組成物中の架橋剤は、ケイ素原子に結合した水素原子(ハイドロシリル基)を有するオルガノポリシロキサン(すなわち、オルガノハイドロジェンポリシロキサン。なお、直鎖状が好ましい)であることが好ましく、ハイドロシリル基などが架橋点となる。
付加反応型シリコーン樹脂組成物は、主剤と架橋剤の架橋点が付加反応をすることにより硬化する。
【0049】
また、硬化性シリコーン樹脂組成物は形態的に溶剤型、エマルジョン型および無溶剤型があり、いずれの型も使用可能である。これらの中でも無溶剤型が好ましい。生産性、安全性、環境特性の面が優れるからである。また、樹脂層14を形成する際の硬化時、すなわち、加熱硬化、紫外線硬化または電子線硬化の時に発泡を生じる溶剤を含まないため、樹脂層14中に気泡が残留しにくいからである。
【0050】
また、硬化性シリコーン樹脂組成物として、具体的には市販されている商品名または型番としてKNS−320A、KS−847(いずれも信越シリコーン社製)、TPR6700(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)、ビニルシリコーン「8500」(荒川化学工業社製)とメチルハイドロジェンポリシロキサン「12031」(荒川化学工業社製)との組み合わせ、ビニルシリコーン「11364」(荒川化学工業社製)とメチルハイドロジェンポリシロキサン「12031」(荒川化学工業社製)との組み合わせ、ビニルシリコーン「11365」(荒川化学工業社製)とメチルハイドロジェンポリシロキサン「12031」(荒川化学工業社製)との組み合わせなどが挙げられる。
【0051】
なお、KNS−320A、KS−847およびTPR6700は、あらかじめ主剤と架橋剤とを含有している硬化性シリコーン樹脂組成物である。
【0052】
また、樹脂層14を形成するシリコーン樹脂(上記硬化性シリコーン樹脂組成物の硬化物)は、シリコーン樹脂層中の低分子量のシリコーン等の成分がガラス基板16に移行しにくい性質、すなわち低シリコーン移行性を有することが好ましい。
【0053】
(樹脂層の製造方法)
樹脂層14を支持基板12上に固定する方法は、特に限定されない。
例えば、積層工程S102の前に、支持基板12上に易剥離性を有する樹脂層14を形成し固定する樹脂層形成工程を実施してもよい。例えば、樹脂層形成用組成物(硬化性樹脂組成物)を支持基板12上に塗布して樹脂層14を形成する樹脂層形成工程を実施してもよい。より具体的には、支持基板12表面上に樹脂層14となる樹脂層形成用組成物層を形成し、次いで、該樹脂層形成用組成物を硬化して支持基板12上に固定された樹脂層14を形成する方法が好ましい。
また、例えば、フィルム状の樹脂を支持基板12の表面に固定する方法で樹脂層14を形成することもできる。具体的には、支持基板12の表面に、フィルムの表面に対する高い固定力(高い剥離強度)を付与するために、支持基板12の表面に表面改質処理(プライミング処理)を行い、支持基板12上に固定する方法が挙げられる。例えば、シランカップリング剤のような化学的に固定力を向上させる化学的方法(プライマー処理)、フレーム(火炎)処理のように表面活性基を増加させる物理的方法、サンドブラスト処理のように表面の粗度を増加させることにより引っかかりを増加させる機械的処理方法などが例示される。
【0054】
支持基板12表面上に樹脂層14となる樹脂層形成用組成物層を形成し、次いで、該樹脂層形成用組成物層を硬化して樹脂層14を形成する方法において、支持基板12表面上に樹脂層形成用組成物層を形成する方法としては、例えば、樹脂層形成用組成物を支持基板12上にコートする方法が挙げられる。コートする方法としては、スプレーコート法、ダイコート法、スピンコート法、ディップコート法、ロールコート法、バーコート法、スクリーン印刷法、グラビアコート法などが挙げられる。このような方法の中から、樹脂組成物の種類に応じて適宜選択することができる。
【0055】
また、樹脂層14となる樹脂層形成用組成物を支持基板12上にコートする場合、その塗布量は1〜100g/m
2であることが好ましく、5〜20g/m
2であることがより好ましい。
【0056】
樹脂層形成用組成物に溶媒および樹脂が含まれる場合、上述した所定の表面うねりを示す表面を備える樹脂層14を製造するためには、樹脂層形成用組成物中の溶媒の含有量を、組成物全量に対して、70質量%以下にすることが好ましく、なかでも60質量%以下にすることがより好ましく、50質量%以下にすることがさらに好ましい。溶媒量を上記範囲内に調整することにより、形成された組成物の層から溶媒が揮発する量が抑えられ、結果として表面うねりの少ない樹脂層14を得ることができる。なお、溶媒量の下限に関しては、樹脂層形成用組成物が塗布可能であれば特に制限されないが、取扱い性などの点から、30質量%以上であることが好ましい。
【0057】
樹脂層形成用組成物で使用される溶媒の種類は特に制限されないが、得られる樹脂層14の表面うねりの発生がより抑制される点で、沸点が100℃以下の溶媒を使用することが好ましい。
また、樹脂層形成用組成物の粘度は、より表面うねりの少ない樹脂層14を形成できる点から、40mPas以下であることが好ましく、20mPas以下であることがより好ましい。なお、下限は特に制限されないが、組成物の成膜性の点から、3mPas以上であることが好ましい。
【0058】
なお、樹脂層形成用組成物に含まれる樹脂としては、上述した樹脂層を形成しうる樹脂が挙げられ、なかでも硬化性シリコーンが好ましく挙げられる。
【0059】
例えば、付加反応型シリコーン樹脂組成物から樹脂層14を形成する場合、オルガノアルケニルポリシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンと触媒との混合物からなる樹脂層形成用組成物Xを、上記のスプレーコート法などの公知の方法により支持基板12上に塗布し、その後に加熱硬化させる。
加熱硬化条件は、触媒の配合量によっても異なるが、大気中で50℃〜250℃、好ましくは100℃〜200℃で反応させる。また、この場合の反応時間は5〜60分間、好ましくは10〜30分間とする。
【0060】
樹脂層形成用組成物Xを加熱硬化させることによって、硬化反応の際にシリコーン樹脂が支持基板12と化学的に結合し、また、アンカー効果によってシリコーン樹脂層が支持基板12と結合して、接着する。これらの作用によって、シリコーン樹脂層が支持基板12に強固に固定される。なお、シリコーン樹脂以外の樹脂からなる樹脂層を樹脂層形成用組成物から形成する場合も、上記と同様の方法で支持基板12に固定された樹脂層14を形成することができる。
【0061】
なお、支持基板12表面上に樹脂層14となる樹脂層形成用組成物層を形成し、次いで、該樹脂層形成用組成物層を硬化して支持基板12上に固定された樹脂層14を形成する方法において、形成される樹脂層14の平坦性がより優れる点で、樹脂層形成用組成物層を形成後で硬化前に、樹脂層形成用組成物層を備える支持基板12を静置することが好ましい。所定時間静置することにより、樹脂層形成用組成物層の表面の平坦性が向上すると共に、樹脂層形成用組成物層に含まれる揮発成分が除去され硬化の際に樹脂層14の表面が荒れることをより抑制することができる。
静置する際の温度は特に制限されず、硬化の際の加熱条件の温度のよりも低い温度で静置すればよく、0〜100℃であることが好ましく、0〜室温(25℃程度)がより好ましい。
静置時間は特に制限されず、樹脂層14の平坦性および生産性の両者のバランスがより優れる点で、30秒〜1時間が好ましく、1分〜10分がより好ましい。
また、必要に応じて、減圧下で静置を行ってもよい。減圧の条件は特に制限されないが、樹脂層14の平坦性および操作の効率性の両者のバランスがより優れる点で、1〜1000Paが好ましく、10〜1000Paがより好ましい。
【0062】
(ガラス基板)
ガラス基板16は、第1主面16aが樹脂層と密着し、樹脂層14側とは反対側の第2主面16bに電子デバイス用部材が設けられる。
ガラス基板16の種類は、一般的なものであってよく、例えば、LCD、OLEDといった表示装置用のガラス基板などが挙げられる。ガラス基板16は耐薬品性、耐透湿性に優れ、且つ、熱収縮率が低い。熱収縮率の指標としては、JIS R 3102(1995年改正)に規定されている線膨張係数が用いられる。
【0063】
ガラス基板16の線膨張係数が大きいと、部材形成工程S106は加熱処理を伴うことが多いので、様々な不都合が生じやすい。例えば、ガラス基板16上にTFTを形成する場合、加熱下でTFTが形成されたガラス基板16を冷却すると、ガラス基板16の熱収縮によって、TFTの位置ずれが過大になるおそれがある。
【0064】
ガラス基板16は、ガラス原料を溶融し、溶融ガラスを板状に成形して得られる。このような成形方法は、一般的なものであってよく、例えば、フロート法、フュージョン法、スロットダウンドロー法、フルコール法、ラバース法などが用いられる。また、特に厚さが薄いガラス基板16は、いったん板状に成形したガラスを成形可能温度に加熱し、延伸などの手段で引き伸ばして薄くする方法(リドロー法)で成形して得られる。
【0065】
ガラス基板16のガラスは、特に限定されないが、無アルカリホウケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、ソーダライムガラス、高シリカガラス、その他の酸化ケイ素を主な成分とする酸化物系ガラスが好ましい。酸化物系ガラスとしては、酸化物換算による酸化ケイ素の含有量が40〜90質量%のガラスが好ましい。
【0066】
ガラス基板16のガラスとしては、電子デバイス用部材の種類やその製造工程に適したガラスが採用される。例えば、液晶パネル用のガラス基板は、アルカリ金属成分の溶出が液晶に影響を与えやすいことから、アルカリ金属成分を実質的に含まないガラス(無アルカリガラス)からなる(ただし、通常アルカリ土類金属成分は含まれる)。このように、ガラス基板のガラスは、適用されるデバイスの種類およびその製造工程に基づいて適宜選択される。
【0067】
ガラス基板16のガラスとしては、熱膨張率が小さい点で、酸化物基準の質量百分率表示において、下記を含有する無アルカリガラスが好ましく挙げられる。
SiO
2:50〜66%
Al
2O
3:10.5〜24%
B
2O
3:0〜12%
MgO:0〜8%
CaO:0〜14.5%
SrO:0〜24%
BaO:0〜13.5%
MgO+CaO+SrO+BaO:9〜29.5%
ZrO
2:0〜5%
【0068】
また、ガラス基板16のガラスとしては、熱膨張率が小さい点で、酸化物基準の質量百分率表示において、下記を含有する無アルカリガラスも好ましく挙げられる。
SiO
2:58〜66%
Al
2O
3:15〜22%
B
2O
3:5〜12%
MgO:0〜8%
CaO:0〜9%
SrO:3〜12.5%
BaO:0〜2%
MgO+CaO+SrO+BaO:9〜18%
【0069】
ガラス基板16の厚さは、ガラス基板16の薄型化および/または軽量化の観点から、0.3mm以下であり、さらに好ましくは0.15mm以下である。0.3mm超の場合、ガラス基板16の薄型化および/または軽量化の要求を満たせない。0.3mm以下の場合、ガラス基板16に良好なフレキシブル性を与えることが可能である。0.15mm以下の場合、ガラス基板16をロール状に巻き取ることが可能である。
また、ガラス基板16の厚さは、ガラス基板16の製造が容易であること、ガラス基板16の取り扱いが容易であることなどの理由から、0.03mm以上であることが好ましい。
【0070】
なお、ガラス基板16は2層以上からなっていてもよく、この場合、各々の層を形成する材料は同種材料であってもよいし、異種材料であってもよい。また、この場合、「ガラス基板16の厚さ」は全ての層の合計の厚さを意味するものとする。
【0071】
(工程の手順)
本工程S102では、上述した樹脂層付き支持基板18とガラス基板16とを用意し、上記樹脂層付き支持基板18の樹脂層表面14aとガラス基板16の第1主面16aとを積層面として両者を密着積層する。樹脂層14の積層面が易剥離性を有しており、通常の重ね合わせと加圧により、容易に剥離可能に密着させることができる。
具体的には、例えば、常圧環境下で易剥離性の樹脂層14の表面14aにガラス基板16を重ねた後、ロールやプレスを用いて樹脂層14とガラス基板16とを圧着させる方法が挙げられる。ロールやプレスで圧着することにより樹脂層14とガラス基板16とがより密着するので好ましい。また、ロールまたはプレスによる圧着により、樹脂層14とガラス基板16との間に混入している気泡が比較的容易に除去されるので好ましい。
【0072】
真空ラミネート法や真空プレス法により圧着すると、気泡の混入の抑制や良好な密着の確保が行われるのでより好ましい。真空下で圧着することにより、微小な気泡が残存した場合でも、加熱により気泡が成長することがなく、ガラス基板16のゆがみ欠陥につながりにくいという利点もある。
【0073】
樹脂層14をガラス基板16の第1主面16aに剥離可能に密着させる際には、樹脂層14およびガラス基板16の互いに接触する側の面を十分に洗浄し、クリーン度の高い環境で積層することが好ましい。樹脂層14とガラス基板16との間に異物が混入しても、樹脂層14が変形するのでガラス基板16の表面の平坦性に影響を与えることはないが、クリーン度が高いほどその平坦性は良好となるので好ましい。
【0074】
上記積層工程S102により形成されたガラス積層体10は、種々の用途に使用することができ、例えば、後述する表示装置用パネル、PV、薄膜2次電池、表面に回路が形成された半導体ウェハ等の電子部品を製造する用途などが挙げられる。なお、該用途では、ガラス積層体10が高温条件(例えば、320℃以上)で曝される(例えば、1時間以上)場合が多い。
ここで、表示装置用パネルとは、LCD、OLED、電子ペーパー、プラズマディスプレイパネル、フィールドエミッションパネル、量子ドットLEDパネル、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)シャッターパネル等が含まれる。
【0075】
[研磨工程]
研磨工程S104は、積層工程S102で得られたガラス積層体10中のガラス基板16の第2主面16bを研磨する工程である。本工程S104を設けることにより、ガラス基板16の第2主面16bの微小な凹凸および疵を除去することができ、電子デバイス用部材が形成される面の平坦性を向上することができる。よって、製品である電子デバイスの信頼性を高めることができる。この効果は、本発明で使用される厚みが0.3mm以下のガラス基板に対して顕著である。厚み0.3mm以下のガラス基板は、単独で研磨することが難しく、ガラス積層体10にする前に予め研磨することが難しいからである。
【0076】
研磨の方法は特に制限されず、公知の方法を採用することができ、メカニカルな研磨(物理研磨)または化学的な研磨(化学研磨)を使用することができる。メカニカルな研磨としては、セラミック砥粒を吹き付けて研削するサンドブラスト方法、ラッピングシートや砥石を用いた研磨、砥粒と化学溶媒を併用した化学的機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)法等を用いることができる。
また、化学研磨(ウェットエッチングと呼ぶこともある)としては、薬液を使用してガラス基板の表面を研磨する方法を用いることができる。
なかでも、研磨後のガラス基板16の第2主面16bの平坦性および清浄度がより高い点で、化学的機械研磨が好ましい。なお、化学的機械研磨で使用される砥粒としては、酸化セリウムなどの公知の砥粒を使用することができる。
【0077】
上記積層工程S102および研磨工程S104を経ることによって、研磨されたガラス基板を含むガラス積層体を製造することができる。
【0078】
[部材形成工程]
部材形成工程S106は、上記研磨工程S104において研磨されたガラス基板16の第2主面16b上に電子デバイス用部材を形成する工程である。
図3は、本工程S106で得られる電子デバイス用部材付き積層体の一例の模式的断面図である。電子デバイス用部材付き積層体20は、上記ガラス積層体10と、電子デバイス用部材22から構成される。
まず、本工程S106で使用される電子デバイス用部材について詳述し、その後工程S106の手順について詳述する。
【0079】
(電子デバイス用部材(機能性素子))
電子デバイス用部材22は、ガラス積層体10中のガラス基板16の第2主面16b上に形成され電子デバイスの少なくとも一部を構成する部材である。より具体的には、電子デバイス用部材22としては、表示装置用パネル、太陽電池、薄膜2次電池、表面に回路が形成された半導体ウェハ等の電子部品などに用いられる部材が挙げられる。表示装置用パネルとしては、有機ELパネル、プラズマディスプレイパネル、フィールドエミッションパネル等が含まれる。
【0080】
例えば、太陽電池用部材としては、シリコン型では、正極の酸化スズなど透明電極、p層/i層/n層で表されるシリコン層、および負極の金属等が挙げられ、その他に、化合物型、色素増感型、量子ドット型などに対応する各種部材等を挙げることができる。
また、薄膜2次電池用部材としては、リチウムイオン型では、正極および負極の金属または金属酸化物等の透明電極、電解質層のリチウム化合物、集電層の金属、封止層としての樹脂等が挙げられ、その他に、ニッケル水素型、ポリマー型、セラミックス電解質型などに対応する各種部材等を挙げることができる。
また、電子部品用部材としては、CCDやCMOSでは、導電部の金属、絶縁部の酸化ケイ素や窒化珪素等が挙げられ、その他に圧力センサ・加速度センサなど各種センサやリジッドプリント基板、フレキシブルプリント基板、リジッドフレキシブルプリント基板などに対応する各種部材等を挙げることができる。
【0081】
(工程の手順)
上述した電子デバイス用部材付き積層体20の製造方法は特に限定されず、電子デバイス用部材の構成部材の種類に応じて従来公知の方法にて、積層体10のガラス基板16の第2主面16b表面上に、電子デバイス用部材22を形成する。
なお、電子デバイス用部材22は、ガラス基板16の第2主面16bに最終的に形成される部材の全部(以下、「全部材」という)ではなく、全部材の一部(以下、「部分部材」という)であってもよい。樹脂層14から剥離された部分部材付きガラス基板を、その後の工程で全部材付きガラス基板(後述する電子デバイスに相当)とすることもできる。
また、樹脂層14から剥離された、全部材付きガラス基板には、その剥離面(第1主面16a)に他の電子デバイス用部材が形成されてもよい。また、全部材付き積層体を組み立て、その後、全部材付き積層体から樹脂層付き支持基板を剥離して、電子デバイスを製造することもできる。さらに、全部材付き積層体を2枚用いて電子デバイスを組み立て、その後、全部材付き積層体から2枚の樹脂層付き支持基板を剥離して、電子デバイスを製造することもできる。
【0082】
例えば、OLEDを製造する場合を例にとると、ガラス積層体10のガラス基板16の樹脂層14側とは反対側の表面上(ガラス基板16の第2主面16bに該当)に有機EL構造体を形成するために、透明電極を形成する、さらに透明電極を形成した面上にホール注入層・ホール輸送層・発光層・電子輸送層等を蒸着する、裏面電極を形成する、封止板を用いて封止する、等の各種の層形成や処理が行われる。これらの層形成や処理として、具体的には、例えば、成膜処理、蒸着処理、封止板の接着処理等が挙げられる。
【0083】
また、例えば、TFT−LCDの製造方法は、平面化後のガラス積層体10のガラス基板16の第2主面16b上に、レジスト液を用いて、CVD法およびスパッター法など、一般的な成膜法により形成される金属膜および金属酸化膜等にパターン形成して薄膜トランジスタ(TFT)を形成するTFT形成工程と、別の平面化後のガラス積層体10のガラス基板16の第2主面16b上に、レジスト液をパターン形成に用いてカラーフィルタ(CF)を形成するCF形成工程と、TFT付きデバイス基板とCF付きデバイス基板とを積層する貼り合わせ工程等の各種工程を有する。
【0084】
TFT形成工程やCF形成工程では、周知のフォトリソグラフィ技術やエッチング技術等を用いて、ガラス基板16の第2主面16bにTFTやCFを形成する。この際、パターン形成用のコーティング液としてレジスト液が用いられる。
なお、TFTやCFを形成する前に、必要に応じて、ガラス基板16の第2主面16bを洗浄してもよい。洗浄方法としては、周知のドライ洗浄やウェット洗浄を用いることができる。
【0085】
貼り合わせ工程では、TFT付き積層体と、CF付き積層体との間に液晶材を注入して積層する。液晶材を注入する方法としては、例えば、減圧注入法、滴下注入法がある。
【0086】
[分離工程]
分離工程S108は、上記部材形成工程S106で得られた電子デバイス用部材付き積層体20から、電子デバイス用部材22が積層したガラス基板16と、樹脂層付き支持基板18とを分離して、電子デバイス用部材22およびガラス基板16を含む電子デバイス24(電子デバイス用部材付きガラス基板)を得る工程である。
剥離時のガラス基板16上の電子デバイス用部材22が必要な全構成部材の形成の一部である場合には、分離後、残りの構成部材をガラス基板16上に形成することもできる。
【0087】
ガラス基板16の第1主面16aと樹脂層14の表面14aとを剥離する方法は、特に限定されない。具体的には、例えば、ガラス基板16と樹脂層14との界面に鋭利な刃物状のものを差し込み、剥離のきっかけを与えた上で、水と圧縮空気との混合流体を吹き付けたりして剥離することができる。好ましくは、電子デバイス用部材付き積層体20の支持基板12が上側、電子デバイス用部材22側が下側となるように定盤上に設置し、電子デバイス用部材22側を定盤上に真空吸着し(両面に支持基板が積層されている場合は順次行う)、この状態でまず刃物をガラス基板16−樹脂層14界面に刃物を侵入させる。そして、その後に支持基板12側を複数の真空吸着パッドで吸着し、刃物を差し込んだ箇所付近から順に真空吸着パッドを上昇させる。そうすると樹脂層14とガラス基板16との界面へ空気層が形成され、その空気層が界面の全面に広がり、支持基板12を容易に剥離することができる。
【0088】
上述した製造方法は、携帯電話やPDAのようなモバイル端末に使用される小型の表示装置の製造に好適である。表示装置は主としてLCDまたはOLEDであり、LCDとしては、TN型、STN型、FE型、TFT型、MIM型、IPS型、VA型等を含む。基本的にパッシブ駆動型、アクティブ駆動型のいずれの表示装置の場合でも適用することができる。
【実施例】
【0089】
以下に、実施例等により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0090】
<実施例1>
縦350mm、横300mm、板厚0.5mmのガラス基板(「AN100」、線膨張係数38×10
-7/℃の無アルカリガラス板:旭硝子株式会社製)を支持基板として用意し、純水洗浄、UV洗浄して表面を浄化して、表面を清浄化した支持基板を得た。
次に、成分(A)として直鎖状ビニルメチルポリシロキサン(「VDT−127」、25℃における粘度700−800cP(センチポアズ):アズマックス製、オルガノポリシロキサン1molにおけるビニル基のmol%:0.325)と、成分(B)として直鎖状メチルヒドロポリシロキサン(「HMS−301」、25℃における粘度25−35cP(センチポアズ):アズマックス製、1分子内におけるケイ素原子に結合した水素原子の数:8個)とを、全ビニル基と全ケイ素原子に結合した水素原子とのモル比(水素原子/ビニル基)が0.9となるように混合し、このシロキサン混合物100重量部に対して、成分(C)として下記式(1)で示されるアセチレン系不飽和基を有するケイ素化合物1質量部を混合した。
HC≡C−C(CH
3)
2−O−Si(CH
3)
3 式(1)
次いで成分(A)と成分(B)と成分(C)との合計量に対して、白金換算で白金金属濃度が100ppmとなるように白金系触媒(信越シリコーン株式会社製、CAT−PL−56)を加えオルガノポリシロキサン組成物の混合液を得た。
得られた混合液を、先に清浄化した支持基板の第1主面上にダイコーターにより塗工した(速度5mm/s、GAP150μm、塗布圧95kPa)。その後、支持基板上に塗工した混合物(樹脂層形成用組成物層)を室温で10分間静置した後に、大気中で180℃、60分間加熱硬化させ、支持基板上に縦350mm×横300mm、厚さ15μmの硬化シリコーン樹脂層を形成して支持体A(樹脂層付き支持基板)を得た。なお、硬化シリコーン樹脂層の露出表面のろ波中心線うねり(W
CA)は、0.090μmであった。
【0091】
一方、縦350mm、横300mm、板厚0.2mmのガラス基板(「AN100」、線膨張係数38×10
-7/℃の無アルカリガラス板:旭硝子株式会社製)を純水洗浄、UV洗浄し、ガラス基板の表面を清浄化した。
その後、支持体Aとガラス基板とを位置合わせしたうえで、真空プレス装置を用いて、室温下で、ガラス基板の第1主面と、支持体Aの硬化シリコーン樹脂層の剥離性表面とを密着させガラス積層体を得た。
次に、オスカー型研磨機を用いて、得られたガラス積層体のガラス基板の第2主面(露出表面)の研磨を行った。研磨液としては、シリカ粒子の平均粒子径が0.08μmであり、シリカ粒子の含有量が10質量%であるコロイダルシリカ研磨溶液を用いた。研磨パッドとしては、スウェード素材を用いた。研磨条件は、研磨液の供給量が30ml/分であり、研磨圧力が20000Paであり、下定盤の回転数が80rpmであり、研磨時間は、600秒であった。
研磨終了後、研磨処理が施されたガラス積層体におけるガラス基板の第2主面を定盤に真空吸着させたうえで、ガラス基板の4箇所のコーナー部のうち1箇所のコーナー部におけるガラス基板とシリコーン樹脂層との界面に、厚さ0.1mmのステンレス製刃物を差し込み、ガラス基板とシリコーン樹脂層の界面に剥離のきっかけを与えた。そして、支持基板を24個の真空吸着パッドで吸着した上で、刃物を差し込んだコーナー部に近い吸着パッドから順に上昇させた。ここで刃物の差し込みは、イオナイザ(キーエンス社製)から除電性流体を当該界面に吹き付けながら行った。次に、形成した空隙へ向けて、イオナイザからは引き続き除電性流体を吹き付けながら真空吸着パッドを引き上げた。その結果、定盤上に研磨処理が施されたガラス基板をガラス積層体から分離することができた。得られたガラス基板の第2主面のろ波中心線うねり(W
CA)は、0.090μmであった。該結果より、ガラス積層体のガラス基板に研磨処理を施した後に分離されたガラス基板は、優れた表面平坦性を有することが確認された。結果を表1にまとめて示す。
【0092】
<実施例2>
実施例1と同様の手順で得られたオルガノポリシロキサン組成物の混合液100重量部に対してヘプタンを43重量部加え混合溶液を調製し、得られた混合溶液をダイコーター(塗布速度40mm/s、GAP140μm、塗布圧50kPa)にて支持基板上に塗布し、室温で10分静置した後に大気中で180℃、60分間加熱硬化させて15μmの硬化シリコーン樹脂層を形成した以外は、実施例1と同様の手順に従って、ガラス積層体を作製して研磨処理を行い、研磨処理が施されたガラス基板の分離を行った。各種結果を表1にまとめて示す。なお、ガラス積層体から分離されたガラス基板の第2主面のろ波中心線うねり(W
CA)は、樹脂層のろ波中心線うねりと同程度であり、0.100μm以下であった。
【0093】
<実施例3>
混合溶液をダイコーターにて支持基板上に塗布後、室温で30分間静置した後に大気中で180℃、60分間加熱硬化させて15μmの硬化シリコーン樹脂層を形成した以外は、実施例2と同様の手順に従って、ガラス積層体を作製して研磨処理を行い、研磨処理が施されたガラス基板の分離を行った。各種結果を表1にまとめて示す。なお、ガラス積層体から分離されたガラス基板の第2主面のろ波中心線うねり(W
CA)は、樹脂層のろ波中心線うねりと同程度であり、0.100μm以下であった。
【0094】
<実施例4>
実施例1と同様の手順で得られたオルガノポリシロキサン組成物の混合液100重量部に対してヘプタンを100重量部加え混合溶液を調製し、得られた混合溶液をダイコーター(塗布速度40mm/s、GAP100μm、塗布圧28kPa)にて支持基板上に塗布し、室温で30秒静置した後に大気中で180℃、60分間加熱硬化させて15μmの硬化シリコーン樹脂層を形成した以外は、実施例1と同様の手順に従って、ガラス積層体を作製して研磨処理を行い、研磨処理が施されたガラス基板の分離を行った。各種結果を表1にまとめて示す。なお、ガラス積層体から分離されたガラス基板の第2主面のろ波中心線うねり(W
CA)は、樹脂層のろ波中心線うねりと同程度であり、0.100μm以下であった。
【0095】
<実施例5>
混合溶液をダイコーターにて支持基板上に塗布後、室温で10分間静置した後に大気中で180℃、60分間加熱硬化させて15μmの硬化シリコーン樹脂層を形成した以外は実施例4と同様の手順に従って、ガラス積層体を作製して研磨処理を行い、研磨処理が施されたガラス基板の分離を行った。各種結果を表1にまとめて示す。なお、ガラス積層体から分離されたガラス基板の第2主面のろ波中心線うねり(W
CA)は、樹脂層のろ波中心線うねりと同程度であり、0.100μm以下であった。
【0096】
<実施例6>
ダイコーターの塗布速度を40mm/sから80mm/sに変更して、8μmの硬化シリコーン樹脂層を形成した以外は、実施例4と同様の手順に従って、ガラス積層体を作製して研磨処理を行い、研磨処理が施されたガラス基板の分離を行った。各種結果を表1にまとめて示す。なお、ガラス積層体から分離されたガラス基板の第2主面のろ波中心線うねり(W
CA)は、樹脂層のろ波中心線うねりと同程度であり、0.100μm以下であった。
【0097】
<実施例7>
混合溶液をダイコーターにて支持基板上に塗布後、室温で10分間静置した後に大気中で180℃、60分間加熱硬化させて8μmの硬化シリコーン樹脂層を形成した以外は、実施例6と同様の手順に従って、ガラス積層体を作製して研磨処理を行い、研磨処理が施されたガラス基板の分離を行った。各種結果を表1にまとめて示す。なお、ガラス積層体から分離されたガラス基板の第2主面のろ波中心線うねり(W
CA)は、樹脂層のろ波中心線うねりと同程度であり、0.100μm以下であった。
【0098】
<実施例8>
実施例1と同様の手順で得られたオルガノポリシロキサン組成物の混合液100重量部に対してヘプタンを150重量部加え混合溶液を調製し、得られた混合溶液をダイコーター(塗布速度40mm/s、GAP100μm、塗布圧20kPa)にて支持基板上に塗布し、室温で30秒静置した後に大気中で180℃、60分間加熱硬化させて15μmの硬化シリコーン樹脂層を形成した以外は、実施例1と同様の手順に従って、ガラス積層体を作製して研磨処理を行い、研磨処理が施されたガラス基板の分離を行った。各種結果を表1にまとめて示す。なお、ガラス積層体から分離されたガラス基板の第2主面のろ波中心線うねり(W
CA)は、樹脂層のろ波中心線うねりと同程度であり、0.100μm以下であった。
【0099】
<実施例9>
混合溶液をダイコーターにて支持基板上に塗布後、室温で10分間静置した後に大気中で180℃、60分間加熱硬化させて8μmの硬化シリコーン樹脂層を形成した以外は、実施例8と同様の手順に従って、ガラス積層体を作製して研磨処理を行い、研磨処理が施されたガラス基板の分離を行った。各種結果を表1にまとめて示す。なお、ガラス積層体から分離されたガラス基板の第2主面のろ波中心線うねり(W
CA)は、樹脂層のろ波中心線うねりと同程度であり、0.100μm以下であった。
【0100】
<実施例10>
実施例1と同様の手順で得られたオルガノポリシロキサン組成物の混合液100重量部に対してヘプタンを233重量部加え混合溶液を調製し、得られた混合溶液をダイコーター(塗布速度40mm/s、GAP70μm、塗布圧15kPa)にて支持基板上に塗布し、室温で30秒静置した後に大気中で180℃、60分間加熱硬化させて15μmの硬化シリコーン樹脂層を形成した以外は、実施例1と同様の手順に従って、ガラス積層体を作製して研磨処理を行い、研磨処理が施されたガラス基板の分離を行った。各種結果を表1にまとめて示す。なお、ガラス積層体から分離されたガラス基板の第2主面のろ波中心線うねり(W
CA)は、樹脂層のろ波中心線うねりと同程度であり、0.100μm以下であった。
【0101】
<実施例11>
混合溶液をダイコーターで支持基板上に塗布後、室温で10分間静置した後に大気中で180℃、60分間加熱硬化させて15μmの硬化シリコーン樹脂層を形成した以外は、実施例10と同様の手順に従って、ガラス積層体を作製して研磨処理を行い、研磨処理が施されたガラス基板の分離を行った。各種結果を表1にまとめて示す。なお、ガラス積層体から分離されたガラス基板の第2主面のろ波中心線うねり(W
CA)は、樹脂層のろ波中心線うねりと同程度であり、0.100μm以下であった。
【0102】
<実施例12>
混合溶液をダイコーターで支持基板上に塗布後、室温で30分間静置した後に大気中で180℃、60分間加熱硬化させて15μmの硬化シリコーン樹脂層を形成した以外は、実施例10と同様の手順に従って、ガラス積層体を作製して研磨処理を行い、研磨処理が施されたガラス基板の分離を行った。各種結果を表1にまとめて示す。なお、ガラス積層体から分離されたガラス基板の第2主面のろ波中心線うねり(W
CA)は、樹脂層のろ波中心線うねりと同程度であり、0.100μm以下であった。
【0103】
<比較例1>
混合溶液をダイコーターで支持基板上に塗布後、静置せずに大気中で180℃、60分間加熱硬化させて15μmの硬化シリコーン樹脂層を形成した以外は、実施例1と同様の手順に従って、ガラス積層体を作製して研磨処理を行い、研磨処理が施されたガラス基板の分離を行った。各種結果を表1にまとめて示す。なお、ガラス積層体から分離されたガラス基板の第2主面のろ波中心線うねり(W
CA)は、樹脂層のろ波中心線うねりと同程度であり、0.100μm超であった。
【0104】
<比較例2>
混合溶液をダイコーターで支持基板上に塗布後、静置せずに大気中で180℃、60分間加熱硬化させて15μmの硬化シリコーン樹脂層を形成した以外は、実施例2と同様の手順に従って、ガラス積層体を作製して研磨処理を行い、研磨処理が施されたガラス基板の分離を行った。各種結果を表1にまとめて示す。なお、ガラス積層体から分離されたガラス基板の第2主面のろ波中心線うねり(W
CA)は、樹脂層のろ波中心線うねりと同程度であり、0.100μm超であった。
【0105】
以下の表1中、固形分濃度は、オルガノポリシロキサン組成物の混合液中の固形分濃度(溶媒以外の濃度)を意味し、樹脂層W
CAはガラス基板を積層前の樹脂層付き支持基板中の樹脂層の露出表面のろ波中心線うねりを意味する。なお、ろ波中心線うねりはJIS B−0610(1987)に従って測定した。なお、ろ波うねり曲線のカットオフ値は0.8mmとし、測定長さは40mmとした。
【0106】
【表1】
【0107】
上記表1に示すように、樹脂層のろ波中心線うねりが0.100μm以下の実施例においては、得られるガラス基板の研磨処理面のろ波中心線うねりも樹脂層の値とほぼ同程度であり、0.100μm以下となった。この結果より、本製造方法で得られるガラス基板の表面はうねりが小さく、該ガラス基板上に回路電極などのデバイスを作製した場合、特許文献2で述べられたような回路電極の断線、ショートなどの問題の発生がより抑制されることが確認された。
また、実施例2と3との比較などより、静置時間が長い方が樹脂層の平坦性がより優れることが確認された。
一方、比較例1および2は、特許文献1で具体的に記載されるように静置時間をおくことなく、樹脂層を製造した態様である。これらの比較例においては、樹脂層のろ波中心線うねりが0.100μm超となっており、結果として得られるガラス基板の研磨処理面のろ波中心線うねりも0.100μm超となり、電子デバイス製造用のガラス基板としては不適であることが確認された。
【0108】
<実施例13>
本例では、実施例1で製造された、研磨処理が施されたガラス積層体を用いてOLEDを作製した。
より具体的には、ガラス積層体における研磨処理を施したガラス基板の第2主面上に、スパッタリング法によりモリブデンを成膜し、フォトリソグラフィ法を用いたエッチングによりゲート電極を形成した。次に、プラズマCVD法により、ゲート電極を設けたガラス基板の第2主面側に、さらに窒化シリコン、真性アモルファスシリコン、n型アモルファスシリコンの順に成膜し、続いてスパッタリング法によりモリブデンを成膜し、フォトリソグラフィ法を用いたエッチングにより、ゲート絶縁膜、半導体素子部およびソース/ドレイン電極を形成した。次に、プラズマCVD法により、ガラス基板の第2主面側に、さらに窒化シリコンを成膜してパッシベーション層を形成した後に、スパッタリング法により酸化インジウム錫を成膜して、フォトリソグラフィ法を用いたエッチングにより、画素電極を形成した。
続いて、ガラス基板の第2主面側に、さらに蒸着法により正孔注入層として4,4’,4”−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン、正孔輸送層としてビス[(N−ナフチル)−N−フェニル]ベンジジン、発光層として8−キノリノールアルミニウム錯体(Alq
3)に2,6−ビス[4−[N−(4−メトキシフェニル)−N−フェニル]アミノスチリル]ナフタレン−1,5−ジカルボニトリル(BSN−BCN)を40体積%混合したもの、電子輸送層としてAlq
3をこの順に成膜した。次に、ガラス基板の第2主面側にスパッタリング法によりアルミニウムを成膜し、フォトリソグラフィ法を用いたエッチングにより対向電極を形成した。次に、対向電極を形成したガラス基板の第2主面上に、紫外線硬化型の接着層を介してもう一枚のガラス基板を貼り合わせて封止した。上記手順によって得られた、ガラス基板上に有機EL構造体を有するガラス積層体は、電子デバイス用部材付き積層体に該当する。
続いて、得られたガラス積層体の封止体側を定盤に真空吸着させたうえで、ガラス積層体のコーナー部のガラス基板とシリコーン樹脂層との界面に、厚さ0.1mmのステンレス製刃物を差し込み、ガラス積層体から樹脂層付き支持基板を分離して、OLEDパネル(電子デバイスに該当。以下パネルAという)を得た。作製したパネルAにICドライバを接続し、常温常圧下で駆動させたところ、駆動領域内において表示ムラは認められなかった。また、高温高湿環境(80℃、80%RH)下で駆動させた場合も、表示ムラは認められなかった。
【0109】
<実施例14>
本例では、実施例1で製造された、研磨処理が施されたガラス積層体を用いてLCDを作製した。
ガラス積層体を2枚用意し、まず、片方のガラス積層体における研磨処理が施されたガラス基板の第2主面上に、スパッタリング法によりモリブデンを成膜し、フォトリソグラフィ法を用いたエッチングによりゲート電極を形成した。次に、プラズマCVD法により、ゲート電極を設けたガラス基板の第2主面側に、さらに窒化シリコン、真性アモルファスシリコン、n型アモルファスシリコンの順に成膜し、続いてスパッタリング法によりモリブデンを成膜し、フォトリソグラフィ法を用いたエッチングにより、ゲート絶縁膜、半導体素子部およびソース/ドレイン電極を形成した。次に、プラズマCVD法により、ガラス基板の第2主面側に、さらに窒化シリコンを成膜してパッシベーション層を形成した後に、スパッタリング法により酸化インジウム錫を成膜し、フォトリソグラフィ法を用いたエッチングにより、画素電極を形成した。次に、画素電極を形成したガラス基板の第2主面上に、ロールコート法によりポリイミド樹脂液を塗布し、熱硬化により配向層を形成し、ラビングを行った。得られたガラス積層体を、ガラス積層体A1と呼ぶ。
次に、もう片方のガラス積層体における研磨処理が施されたガラス基板の第2主面上に、スパッタリング法によりクロムを成膜し、フォトリソグラフィ法を用いたエッチングにより遮光層を形成した。次に、遮光層を設けたガラス基板の第2主面側に、さらにダイコート法によりカラーレジストを塗布し、フォトリソグラフィ法および熱硬化によりカラーフィルタ層を形成した。次に、ガラス基板の第2主面側に、さらにスパッタリング法により酸化インジウム錫を成膜し、対向電極を形成した。次に、対向電極を設けたガラス基板の第2主面上に、ダイコート法により紫外線硬化樹脂液を塗布し、フォトリソグラフィ法および熱硬化により柱状スペーサを形成した。次に、柱状スペーサを形成したガラス基板の第2主面上に、ロールコート法によりポリイミド樹脂液を塗布し、熱硬化により配向層を形成し、ラビングを行った。次に、ガラス基板の第2主面側に、ディスペンサ法によりシール用樹脂液を枠状に描画し、枠内にディスペンサ法により液晶を滴下した後に、上述したガラス積層体A1を用いて、2枚のガラス積層体のガラス基板の第2主面側同士を貼り合わせ、紫外線硬化および熱硬化によりLCDパネルを有する積層体を得た。ここでのLCDパネルを有する積層体を以下、パネル付き積層体B2という。
次に、実施例1と同様にパネル付き積層体B2から両面の樹脂層付き支持基板を剥離し、TFTアレイを形成した基板およびカラーフィルタを形成した基板からなるLCDパネルB(電子デバイスに該当)を得た。
作製したLCDパネルBにICドライバを接続し、常温常圧下で駆動させたところ、駆動領域内において表示ムラは認められなかった。また、高温高湿環境(80℃、80%RH)下で駆動させた場合も、表示ムラは認められなかった。
【0110】
<比較例3>
比較例1の手順に従って、研磨処理が施されたガラス積層体を製造した。
次に、得られたガラス積層体を使用して、実施例13と同様手の手順に従って、OLEDパネルを作製した。
作製したパネルにICドライバを接続し、常温常圧下で駆動させたところ、駆動領域内において表示ムラは認められなかったが、高温高湿環境(80℃、80%RH)下で長時間接続し続けると一部表示ムラが現れた。