【実施例】
【0060】
本発明の半導体発光素子1の性能を確かめるために以下の実験1〜実験6を行った。
実験1は、本発明の半導体発光素子1において中間層8の材料の条件だけを変えたときに、後記する金属層の剥がれ発生率を測定する実験である。
実験2は、実験1に付随して金属層の剥がれ発生率とは異なる観点から中間層8として適した材料を探索する実験である。
実験3は、本発明の半導体発光素子1において中間層8の膜厚の条件だけを変えたときに、金属層の剥がれ発生率を測定する実験である。
実験4は、実験3に付随して金属層の剥がれ発生率とは異なる観点から中間層8として適した膜厚を探索する実験である。
実験5は、中間層8として、実験1〜4から導かれる特定の膜厚かつ特定の材料を用いた半導体発光素子の金属層の剥がれ発生率を検証する実験である。
実験6は、実験5に付随して、第1金属層の密着力を検証する実験である。
以下、金属層の剥がれ発生率の定義と、実験1〜実験6とについて順次説明する。
【0061】
<金属層の剥がれ発生率>
図2(a)および
図2(b)は、比較例の発光素子100において、金属層の剥がれがないものを示している。一方、
図4(a)および
図4(b)は、この比較例の発光素子100において、金属層の剥がれが発生したものを示している。
【0062】
平面図で比較すると、
図4(a)に平面視で示した発光素子100は、金属層の領域301が露出している点が、
図2(a)に平面視で示した発光素子100と相違している。
【0063】
また、断面図で比較すると、
図4(b)にC−C線矢視における断面で示した発光素子100は、金属層の領域301が露出している点、および、基板の領域302が露出している点が、
図2(b)にB−B線矢視における断面で示した発光素子100と相違している。
【0064】
ここで、金属層の剥がれとは、基板2の全面に形成された金属層4がすべて剥がれ落ちるのではなく、基板裏面において金属層が積層されていない領域302が生じることを意味する。また、金属層の剥がれとは、
図4(b)に示すように、基板2の裏面側に積層された金属層4の位置があたかも水平方向にずれたような状態になることを示す。なお、ウェハを分割したときに、金属層の剥がれがないと、
図2(b)に示すように、基板2の裏面側に積層された金属層4の位置が基板2に面一となる。
【0065】
従来から、半導体発光素子を量産する場合、ウェハ基板を分割する際に、基板裏面側の金属層が剥がれるものが一定の割合で含まれていた。予め定められた個数の集合(1ロット=3600個)の中で、金属層が剥がれ
たものの割合を、以下では金属層の剥がれ発生率と定義する。また、金属層が剥がれた素子を、割断性がよくない不良品と定義し、金属層が剥がれない素子を、割断性がよい良品と定義し、1ロット当たりの割断性がよい良品の割合(歩留まり)を、1−(金属層の剥がれ発生率)で表すこととする。
【0066】
金属層の剥がれ発生率を調べる方法は、ウェハを分割した後で、各素子を整列させて、表側(デバイス面側)から、金属層の剥がれ(引きちぎり)が発生している素子をカウントする。このとき、例えば顕微鏡を用いて目視によって素子を観察して、
図4(a)に示すような、金属層の領域301が露出していれば、金属層の剥がれ(引きちぎり)が発生しているとしてカウントする。なお、金属層の領域301が露出する箇所は、
図4(a)において左右方向に現れるとは限らず、上下方向に金属層の領域301が露出する場合もある。
【0067】
<実験1>
本発明の半導体発光素子1の金属層4において、第2金属層6(光反射層11、密着層12、第1拡散防止層13、第2拡散防止層14)として、基板側から、Ag/Ni/Rh/Auを積層した。そして、金属層4を構成する第1金属層5において、中間層8の材料の条件だけを変えたときの金属層の剥がれ発生率の違いを測定した。ここでは、中間層の材料として、硬度がAuSnより高い金属を用いた。また、第2金属層6として積層した金属ならば、製造工程において、第2金属層6の次に積層する第1金属層5に対して容易に準備できる。よって、密着層12に用いたNiと、第1拡散防止層13に用いたRhと、密着層12に利用できるWとをそれぞれ用意した。そして、材料および膜厚の条件を、以下の実施例1、2、3および比較例1のように変えた。
【0068】
(実施例1)
中間層をNiとし、その膜厚を50nm(500Å)とした。
具体的には、本発明の実施形態に係る半導体発光素子1の第1金属層5として、サファイア基板の裏面に基板側から、AuSn/Ni/AuSn/Ni/AuSnの順番で、それぞれの膜厚[nm]を1100/50/1100/50/1300として積層した。ここで、3層に分けて設けたAuSn層は、膜厚の合計値が3500[nm](3.5μm)である。その後、サファイア基板を分割して1ロットの半導体発光素子を得た。この材料条件および膜厚条件を実施例1とする。なお、Niの硬度は4.0である。測定結果の金属層の剥がれ発生率を表1に示す。なお、表1の回り込み量dについては、実験2で求めたものなので説明を後記する。
【0069】
【表1】
【0070】
(実施例2)
実施例1のNiをRhに置き換えて、同様に1ロットの半導体発光素子を得た。この材料条件および膜厚条件を実施例2とする。なお、Rhの硬度は6.0である。金属層の剥がれ発生率の測定結果を表1に示す。
【0071】
(実施例3)
実施例1のNiをWに置き換えて、同様に1ロットの半導体発光素子を得た。この材料条件および膜厚条件を実施例3とする。なお、Wの硬度は7.5である。金属層の剥がれ発生率の測定結果を表1に示す。
【0072】
(比較例1)
発光素子100として、第1金属層5をAuSnで構成し、その膜厚を3500[nm](3.5μm)とした。その他は、実施例1〜3と同様にして1ロットの半導体発光素子を得た。この材料条件および膜厚条件を比較例1とする。なお、Auの硬度は2.5、Snの硬度は1.5である。AuSn共晶は、Au含有率が80%以上なので、ここでは、AuSnの硬度を2.5と表記したが、実際には2.5よりも小さな値となる。金属層の剥がれ発生率の測定結果を表1に示す。比較例1に中間層はないが、表1においてAuSnの硬度を2.5として示した。
【0073】
表1に示すように、実施例1,2,3において、金属層の剥がれ発生率は、比較例1よりも小さくなった。すなわち、実施例1,2,3の条件によれば、半導体発光素子の基板からの金属層の剥がれを低減し、割断性がよい良品の割合を増加させることができる。
【0074】
<実験2>
前記実施例2の条件として中間層8に用いたRhは、半導体発光素子1の第2金属層6を構成する第1拡散防止層13として用いた材料と同じである。このため、前記実施例2の条件によれば、第1金属層5からAuSnが光反射層11へ拡散することを防止する効果が向上するものと考えられる。そして、実施例1,3の条件においても、中間層8がAuSnの拡散を防止する効果があると期待される。また、AuSnの拡散防止効果と、金属層の剥がれ発生率の低減効果との相関を調べることで、中間層8として適した材料を探索できると考えられる。
【0075】
そこで、実験1により既に金属層の剥がれ発生率の低減効果が分かっている材料を用いて、AuSnの拡散防止効果を確かめた。この目的のため、簡易的な方法で実験を行った。すなわち、ウェハ(サファイア基板)の第1主面に半導体を積層せずに第2主面(裏面)に金属層を積層し、かつ、ウェハを分割しなかった。つまり、半導体発光素子自体は作製しなかったが、半導体発光素子1の製造方法と同様に金属層を積層した。また、比較例の発光素子100の製造方法と同様に金属層を積層した。作製したウェハの模式図を
図5に示す。
【0076】
図5(a)の上側に平面視で示すウェハ400のD−D線矢視における断面を
図5(a)の下側に示す。ウェハ400は、サファイア基板420の第2主面(裏面)に、比較例1のように、第2金属層(光反射層11、密着層12、第1拡散防止層13、第2拡散防止層14)と、単層のAuSn層7が積層されたものである。ウェハ400は、中央に、第2金属層およびAuSn層が積層されていない孔410を有する。仮に、ウェハの第1主面側(
図5(a)の断面図において下側)から顕微鏡で観察したとすると、光反射層11に対応した周辺領域が明るく、中央の円領域が暗くなった画像が観察されることになる。このような画像で観察される形状は、
図5(a)の上側の平面図と同様の形状となる。
【0077】
図5(b)の上側に平面視で示すウェハ500のE−E線矢視における断面を
図5(b)の下側に示す。ウェハ500は、実施例1〜3のように3層のAuSn層7を有する点がウェハ400と相違する。ウェハ500の孔510の径は、ウェハ400の孔410の径と同じである。このウェハ500についても第1主面側(
図5(b)の断面図において下側)から顕微鏡で観察したとすると、光反射層11に対応した周辺領域が明るく、中央の円領域が暗くなった画像が同様に観察されることになる。このウェハ500については、中間層8の材料をNi,Rh,Wとした3種類のウェハを準備した。
【0078】
各ウェハ400,500を以下の工程にて作製した。まず、サファイア基板の裏側を研削研磨する(ステップS101)。そして、薄肉化したサファイア基板420,520の裏側にパターニングを行った(ステップS102)。ここでは、基板裏側全面のうちほぼ中央部をマスクするようにパターニングを行った。次に、パターニングされたサファイア基板420,520の裏側に、第2金属層(光反射層11、密着層12、第1拡散防止層13、第2拡散防止層14)を順次積層する(ステップS103)。次いで、サファイア基板420には、第1金属層として、単層のAuSn層7を積層する(ステップS104a)。一方、サファイア基板520には、第1金属層として、中間層8を介在させながら3層のAuSn層7を積層する(ステップS104b)。続いて、サファイア基板420,520の裏側のリフトオフを行う(ステップS105)。これにより、基板裏側の中央部のマスクと、マスクの上に積層された第1金属層および第2金属層とが取り除かれる。つまり、サファイア基板420,520の裏側の中央部に、金属層が積層されずに基板裏側が露出した孔410,510が形成された。
【0079】
作製したウェハ(400または500、以下同様)を、
図6に示す加熱手段600で加熱した。加熱手段600は、ホットプレート601と、ホットプレート601による加熱を補助する補助手段とを備える。補助手段は、下から順番に、アルミニウム箔602と、アルミニウムプレート603と、SUSプレート604とを備える。
【0080】
アルミニウム箔602は、ホットプレート601とアルミニウムプレート603とを密着させるために設けられている。アルミニウムプレート603の上には、ウェハが、裏面側(第1金属層および第2金属層側)を下にして載置される。アルミニウムプレート603は、ウェハに下から熱を伝わり易くするために設けられている。SUSプレート604は、ウェハをアルミニウムプレート603に密着させるために設けられている。
【0081】
アルミニウムプレート603およびSUSプレート604でウェハを挟んだ状態にて、ホットプレート601で300℃まで加熱し、300℃のまま5分間放置した。加熱後、SUSプレート604を除去し、ウェハを常温まで冷却し、ウェハの第1主面側(表側)から顕微鏡でAuSnの浸食具合(回り込み)を観察した。
【0082】
冷却後のウェハの模式図を
図7に示す。
図7(a)の上側に平面視で示すウェハ400のF−F線矢視における断面を
図7(a)の下側に示す。
図7(a)に示すウェハ400は、
図5(a)に示すウェハ400と比べて、孔410の周縁が広がり、孔410の底面が狭くなっている。ここで、
図7(a)の下側に示す断面形状は、
図5(a)の下側に示す断面図に対応させて第2金属層を区分したが、実際には加熱後に切断した断面では各層が識別できない。
【0083】
このウェハ400の第1主面側(
図7(a)の断面図において下側)から顕微鏡で観察すると、光反射層11に対応した周辺領域が明るく、孔410の底面に対応した小さい方の同心円の領域が暗く、2つの同心円に囲まれた円環領域がやや暗くなった画像が観察された。この画像の形状は、
図7(a)の上側の平面図と同様の形状となる。円環領域がやや暗くなったのは、AuSnが第2金属層を侵食してサファイア基板420側に回り込んで変色したからである。AuSnが第2金属層を侵食すると光反射層11の機能が損なわれるので、発光装置として作製した場合、明るさが低下することとなる。
【0084】
そして、AuSnの浸食具合を定量化するため、図
7(a)に示す回り込み量dを定義した。この回り込み量dは、第2主面側の金属層に孔が設けられたウェハの第1主面側から顕微鏡で観察したときに、変色した領域、すなわち、孔に対応した2つの同心円に囲まれた円環領域の径方向の長さである。
【0085】
図7(b)の上側に平面視で示すウェハ500のG−G線矢視における断面を
図7(b)の下側に示す。
図7(b)に示すウェハ500は、
図5(b)に示すウェハ500と比べて、孔510の周縁がやや広がり、孔510の底面がやや狭くなっている。ここで、
図7(b)の下側に示す断面形状は、
図5(b)の下側に示す断面図に対応させて各層を区分したが、加熱後に切断した断面は、実際のSTM画像によると、AuSn層7および中間層8の各層が識別できないほど一体化している。
【0086】
このウェハ500の第1主面側(
図7(b)の断面図において下側)から顕微鏡で観察すると、光反射層11に対応した周辺領域が明るく、孔510の底面に対応した小さい方の同心円の領域が暗く、2つの同心円に囲まれた円環領域が変色してやや暗くなった画像が観察された。この画像の形状は、
図7(b)の上側の平面図と同様の形状となる。
【0087】
このウェハ500についての回り込み量dは、ウェハ400についての回り込み量dよりも小さくなった。その結果を前記した表1に示す。なお、回り込み量dについては、半導体を積層した素子を作成して測定したものではないが、第1金属層の材料、膜厚、積層構造が同じ条件の実施例等と対応させて並べて表示した。
【0088】
表1の実施例1,2,3のように接合層(第1金属層)に中間層8を設けた場合、すなわち、ウェハ500の構造の場合には、ウェハ400の構造と比較して、AuSnの拡散を大きく防止する顕著な効果がみられた。AuSnの拡散を防止する効果が最も大きかったのは、第1拡散防止層13として用いた材料と同じ材料(Rh)を中間層8に用いた場合であった。
【0089】
比較例1のように第1金属層に中間層8を設けない場合、すなわち、ウェハ400の構造の場合、d=11.53μmとなった。一方、Rhを中間層8に用いた場合には、回り込み量d=4.33μmであった。両者を比較すると、Rhを中間層8に用いた場合、変色(回り込み量)の下降分は7.2μmである。
よって、このときの改善率は、7.2/11.53より、62.4%であった。このように変色の回り込み量が小さくなっている原因として、AuSn溶け出しの際、Rhに引き寄せられる等なんらかの反応があると考えられる。
【0090】
<実験3>
実験2の結果をもとに、中間層8の材料をRhに固定して、この中間層8の膜厚の条件だけを変えたときの金属層の剥がれ発生率の違いを実験1と同様な方法で測定した。このとき、材料および膜厚の条件を、以下の実施例4、5および参考例のように変えた。
【0091】
(実施例4)
前記実施例2のRhの膜厚を10nm(100Å)に置き換えて、同様に1ロットの半導体発光素子を得た。この材料条件および膜厚条件を実施例4とする。金属層の剥がれ発生率の測定結果を表2に示す。
【0092】
【表2】
【0093】
(実施例5)
前記実施例2のRhの膜厚を30nm(300Å)に置き換えて、同様に1ロットの半導体発光素子を得た。この材料条件および膜厚条件を実施例5とする。金属層の剥がれ発生率の測定結果を表2に示す。
【0094】
(参考例)
前記実施例2のRhの膜厚を100nm(1000Å)に置き換えて、同様に1ロットの半導体発光素子を得た。この材料条件および膜厚条件の場合、第1金属層を単独のAuSn層で構成した比較例1よりも、金属層の剥がれ発生率が悪化したので、参考例とした。ただし、回り込み量dについては、比較例1および実施例2,4,5よりもよい結果となった。参考例についての金属層の剥がれ発生率の測定結果を表2に示す。
なお、表1に記載の比較例1および実施例2の測定結果を実施例4,5等と対比させるために、併せて表2に記載した。
【0095】
表2に示すように、実施例4,5も金属層の剥がれ発生率は、比較例1よりも小さくなった。中間層8の材料にRhを用いた場合、膜厚が薄くなるほど、金属層の剥がれ発生率が低下する傾向にあった。参考例のようにRhの膜厚が100nm(1000Å)の場合、金属層の剥がれ発生率が大きくなった。これは、参考例の条件では、第1金属層全体の膜厚が比較例よりも5%以上大きいことも1つの要因と考えられる。
【0096】
<実験4>
実験3の結果をもとに、実施例4,5の条件のように膜厚が薄くなった場合でも、実施例2の条件のときと同程度のAuSnの拡散防止効果があることを確かめるため、実験2と同様な方法で調べた。このとき、ウェハ500について、中間層8の材料をRhとした上で、実施例4,5および参考例の条件に合わせて、膜厚が異なる3種類のウェハを準備した。
【0097】
これらウェハ500についての回り込み量dは、ウェハ400についての回り込み量dよりも小さくなった。その結果を表2に示す。なお、回り込み量dについては、半導体を積層した素子を作成して測定したものではないが、第1金属層の材料、膜厚、積層構造が同じ条件の実施例と対応させて並べて表示した。
【0098】
表2に示すように、中間層8の材料をRhとした場合、中間層8の膜厚が10〜1000nmの範囲では、概ね厚くなるほど、AuSnの拡散防止効果が僅かに増加する傾向にあった。これにより、実施例4,5の場合も、実施例2と同程度のAuSnの拡散防止効果があることを確かめた。
【0099】
<実験5>
実験1の結果、金属層の剥がれ発生率が最も低かったときに中間層8に用いた材料はNiであった。また、実験3の結果、金属層の剥がれ発生率が最も低かったときの中間層8の膜厚は10nmであった。よって、この組み合わせのときに最良の結果が得られると予想されるので、これを検証する実験を行った。
【0100】
(実施例6)
実施例1の材料(Ni)を用いて、膜厚を10nm(100Å)に置き換えて、同様に1ロットの半導体発光素子を得た。この材料条件および膜厚条件を実施例6とする。金属層の剥がれ発生率の測定結果を表3に示す。なお、表2に記載の比較例1および実施例4の測定結果を実施例6と対比させるために、併せて表3に記載した。
【0101】
【表3】
【0102】
表3に示すように、実施例6の条件によれば、金属層の剥がれ発生率は、8.5%であり、予想通り最もよい結果となった。
ここで、1ロット当たりの割断性がよい良品の割合(歩留まり)に置き換える。ここでは、歩留まり[%]=100−(金属層の剥がれ発生率)とする。
この場合、比較例1のとき、77.4%となり、実施例4のとき、84.3%となり、実施例6のとき、91.5%となる。実施例6の歩留まりは、比較例1から14.1%上昇した。よって、このときの増加率は、14.1/77.4により18.2%となった。
【0103】
<実験6>
表3に記載の実施例4および実施例6の条件のように中間層8を設けて作成した素子の密着力を確かめるため、表3に記載の比較例1とのダイシェア強度の比較実験を行った。所定の実装基板へ実装した半導体発光素子のダイシェア時の破壊モードは、基板2と第2金属層6との界面とした。ここで、第2金属層6は、基板2の裏面に基板側から、Ag/Ni/Rh/Auの順番で、それぞれの膜厚[nm]を120/100/200/500として積層した。
なお、ダイシェア強度は、常温および高温で半導体チップを横から水平方向に押し、剥がれたときの荷重として測定されたせん断強度である。この測定には、公知のダイシェア強度試験機が用いられる。なお、ダイシェア強度は、JEITA規格(EIAJ ED4703)やMIL規格(MIL−STD−883C)に定められている。
【0104】
実験の結果、実施例4および実施例6の条件のように中間層8を設けて作成した素子の実装基板への密着力は、約700gfであり、比較例1の条件のように中間層を設けずに作成した素子と同程度であることが確認できた。つまり、基板からの金属層の剥がれを防止する対策(引きちぎれ対策)を行っても密着力は変わらなかった。その理由としては、本実施形態の半導体発光素子1を加熱して実装した後に切断した断面が、実際のSTM画像によると、AuSn層7および中間層8が層ごとにばらばらにはなっていないからであると考えられる。つまり、第1金属層5において、AuSn層7および中間層8が混ざってしまうので、強度自体が維持されている。
【0105】
なお、前記実験では、製造工程において第2金属層6として積層した金属を、中間層の材料として用いて行ったが、中間層の材料は、これに限定されるものではない。中間層の材料として、例えば、硬度3.0のCu、硬度2.75のAl、硬度2.5のAgなどを用いてもよい。なお、金属単体のほか、合金を使ってもよい。