(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5888576
(24)【登録日】2016年2月26日
(45)【発行日】2016年3月22日
(54)【発明の名称】インプリント用硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20160308BHJP
B29C 59/02 20060101ALI20160308BHJP
C08F 220/20 20060101ALI20160308BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20160308BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
B29C59/02 Z
C08F220/20
H01L21/302 105A
【請求項の数】8
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-521385(P2015-521385)
(86)(22)【出願日】2014年5月23日
(86)【国際出願番号】JP2014063693
(87)【国際公開番号】WO2014196381
(87)【国際公開日】20141211
【審査請求日】2015年10月1日
(31)【優先権主張番号】特願2013-119772(P2013-119772)
(32)【優先日】2013年6月6日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2014-9455(P2014-9455)
(32)【優先日】2014年1月22日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124970
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 通洋
(72)【発明者】
【氏名】山口 純司
(72)【発明者】
【氏名】谷本 尚志
(72)【発明者】
【氏名】伊部 武史
(72)【発明者】
【氏名】矢田 真
(72)【発明者】
【氏名】矢木 直人
【審査官】
新井 重雄
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−77748(JP,A)
【文献】
特開2012−15324(JP,A)
【文献】
特開2011−222732(JP,A)
【文献】
特開2011−11310(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/125335(WO,A1)
【文献】
特開2001−226432(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
B29C 59/02
C08F 220/20
H01L 21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性化合物を含有するインプリント用硬化性組成物であって、
(a)上記重合性化合物の重合性基濃度が4.3〜7.5mmol/gであって、
(b)大西パラメーターが3.5以下、リングパラメーターが0.35以上である重合性化合物Xを全重合性化合物に対して40〜95質量%の範囲で含有し、
(c)更に、重合性基を3つ以上有する重合性化合物Cを全重合性化合物に対して2〜20質量%の範囲で含有し
(d)組成物の25℃における粘度が溶剤を含まない状態で3〜8000mPa・sの範囲であることを特徴とする、インプリント用硬化性組成物。
(但し、ここでいう大西パラメーターとは、重合性化合物中の全原子数をN、全炭素数をNC、全酸素数NOとしたとき、N/(NC−NO)で表され、リングパラメーターとは、重合性化合物中における環状構造中の炭素原子の合計原子量をMCYCLO、化合物の分子量Mとしたとき、MCYCLO/Mで表される。)
【請求項2】
上記重合性化合物Xとして、芳香環と重合性基を有する重合性化合物Aと、下記式(1)または(2)または(3)で表される重合性化合物Bを含有し、
該重合性化合物Aと重合性化合物Bの合計を100質量部としたとき、A/B=95/5〜55/45の重量比である、請求項1に記載のインプリント用硬化性組成物。
【化1】
・・・(1)
(式中、R
1、R
2、R
3およびR
4はそれぞれ独立してHまたはCH
3を表し、X
1およびX
2はそれぞれ独立して炭素数2以上の炭化水素基を表し、mおよびnはそれぞれ独立して0ないし1から5の整数を表す。)
【化2】
・・・(2)
(式中、R
5およびR
6はそれぞれ独立してHまたはCH
3を表し、m
1およびn
1はともに0ないし1を表し、p
1およびq
1はp
1+q
1=1又は2を満たす整数を表す。)
【化3】
・・・(3)
(式中、R
7およびR
8はそれぞれ独立してHまたはCH
3を表し、m
2およびn
2はともに0ないし1を表し、p
2およびq
2はp
2+q
2=1又は2を満たす整数を表す。)
【請求項3】
前記重合性化合物Aが、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基のうち少なくとも一つを有するものである、請求項2に記載のインプリント用硬化性組成物。
【請求項4】
ドライエッチング用である、請求項1〜3に記載のインプリント用硬化性組成物。
【請求項5】
請求項1〜4に記載の硬化性組成物を硬化してなる硬化物。
【請求項6】
インプリントパターンが形成されたものである、請求項5に記載の硬化物。
【請求項7】
請求項6に記載のパターンが形成された硬化物を基材上に形成する工程と、
パターンが形成された硬化物をマスクとして基材をエッチングする工程とを有することを特徴とする、基材へのパターン形成方法。
【請求項8】
エッチング工程が、ドライエッチングである、請求項7に記載の基材へのパターン形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインプリント用硬化性組成物およびそれを用いたパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノインプリント(NIL)法は、光ディスク作製ではよく知られているエンボス技術を発展させ、凹凸のパターンを形成したモールドを、レジストにプレスして力学的に変形させて微細パターンを精密に転写する技術である。そのうち光ナノインプリント法は、透明モールドや透明基材を通して光を照射し、光硬化性組成物を光硬化させて転写する技術であり、室温でのインプリントが可能になることから、寸法安定性の向上及びスループットの向上が期待されている。モールドを一度作製すれば、十〜数百nmレベルのナノ構造体が簡単に繰り返して成型できるため経済的であるとともに、有害な廃棄・排出物が少ないナノ加工技術であるため、近年、様々な分野への応用が期待されている。
【0003】
光ナノインプリント用レジストの要求特性として、エッチング耐性、離型性、モールドへの充填性、基板への塗布性などが挙げられる。LED用途においては、LED基板上にモスアイ構造を形成するためのマスクとして使用されるため、パターン形成性とドライエッチング耐性が要求される。ハードディスクドライブ(HDD)分野においては、十〜数十nmの周期パターンがメディア全体に刻まれたパターンドメディアの作製への応用が期待されており、パターン形成性とドライエッチング耐性に加えて充填性(低粘度化)が要求されている。また半導体分野においては十〜数十nmのデバイスパターン形成法としてEUV(極端紫外線露光)と共にナノインプリント法が挙げられている。本用途においてもパターン形成性とドライエッチング耐性に加えて充填性(低粘度化)、無溶剤化が要求されている。
【0004】
インプリント用の重合性化合物としてフルオレン骨格を有する化合物が知られている。例えば特許文献1ではビスアリールフルオレン骨格を有する化合物と分子内に少なくとも1個の重合性基を有する化合物と光重合開始剤からなるインプリント材料が報告されている。しかし、分子内に少なくとも1個の重合性基を有する化合物についてネオペンチルグリコールジアクリレートを取り上げているが、該化合物はドライエッチング耐性に劣ることから好ましくない。また、ビスアリールフルオレン骨格を有する化合物が50〜95質量部含有するため、組成物が高粘度となりパターン形成に劣る。さらに、この文献ではドライエッチング耐性については言及していない。
【0005】
他にも、特許文献2ではフルオレン骨格を有する2官能(メタ)アクリレートを含む光硬化性組成物が報告されている。しかし、この文献においてフルオレン骨格を有する(メタ)アクリレートは硬化性、耐傷性、剛性、透明性を付与するために用いられており、ドライエッチング耐性については言及していない。
【0006】
特許文献3では分子内に5個以上の重合性基を有する化合物と分子内に2個の重合性基を有する化合物と光ラジカル発生剤からなる高硬度膜を形成するインプリント材料が報告されている。しかしながら、いずれもドライエッチング耐性に劣る化合物を用いている。また、この文献ではドライエッチング耐性について言及していない。
【0007】
特許文献4では1次皮膚刺激性(PII値)が4.0以下の重合性化合物からなり、25℃における粘度が3〜18mPa・sの範囲である光ナノインプリントリソグラフィ用光硬化性組成物が報告されているが、いずれもドライエッチング耐性に劣る化合物を用いている。また、この文献でのエッチング耐性はウェットエッチングでありドライエッチングではない。
【0008】
特許文献5では環状構造を含む(メタ)アクリレートモノマー及び/またはそのオリゴマーと光重合開始剤を含む組成物からなる光硬化型ナノインプリント用レジスト材が報告されているが、いずれもドライエッチング耐性に劣る化合物を用いている。
【0009】
特許文献6では芳香族基を有する(メタ)アクリレートと光重合開始剤を含有するインプリント用硬化性組成物が報告されているが、従来の(メタ)アクリレートと比較してドライエッチング耐性に優れるものの、まだ十分とは言えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】WO2010/146983公報
【特許文献2】特開2010−31240公報
【特許文献3】WO2011/24673公報
【特許文献4】特許第5117002号公報
【特許文献5】特許第4929722号公報
【特許文献6】特開2010−186979公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述の通り、パターン形成性に優れる組成物およびドライエッチング耐性の高い組成物が検討されてきた。しかしながら、パターン形成性とドライエッチング耐性の両方に優れる組成物は得られていなかった。本発明が解決しようとする課題は、パターン形成性とドライエッチング耐性の両方に優れるインプリント用光硬化性組成物を提供することにある。
【0012】
また、上記インプリント用光硬化性組成物から成る硬化物、該硬化物をマスクとして基材をエッチングすることで形成されるパターンを有する基材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、鋭意検討の結果、大西パラメーター、リングパラメーターが特定の範囲にある重合性化合物から成る光硬化性組成物が、上記課題を解決することを見出した。
【0014】
すなわち本発明は
重合性化合物を含有するインプリント用硬化性組成物であって、
(a)上記重合性化合物の重合性基濃度が4.3〜7.5mmol/gであって、
(b)大西パラメーターが3.5以下、リングパラメーターが0.35以上である重合性化合物Xを全重合性化合物に対して40〜95質量%の範囲で含有し、
(c)更に、重合性基を3つ以上有する重合性化合物Cを全重合性化合物に対して5〜20質量%の範囲で含有し
(d)組成物の25℃における粘度が溶剤を含まない状態で3〜8000mPa・sの範囲であることを特徴とする、インプリント用硬化性組成物を提供する。
(但し、ここでいう大西パラメーターとは、重合性化合物中の全原子数をN、全炭素数をN
C、全酸素数N
Oとしたとき、N/(N
C−N
O)で表され、リングパラメーターとは、重合性化合物中における環状構造中の炭素原子の合計原子量をM
CYCLO、化合物の分子量Mとしたとき、M
CYCLO/Mで表される。)
【0015】
また本発明は、上記インプリント用硬化性組成物の硬化物、及び、該硬化物をマスクとして基材をエッチングする工程とを有することを特徴とする、基材へのパターン形成方法、および該パターン形成方法によって得られるパターンが形成された基材を提供することで、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の光硬化性組成物を用いることにより、良好なパターン形成が可能となる。また、ドライエッチング耐性に優れることから、基材を高精度に加工することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含むことを表す。
【0018】
本明細書中において、(メタ)アクリレートはアクリレート及びメタクリレートを表し、(メタ)アクリルはアクリル及びメタクリルを表し、(メタ)アクリロイルはアクリロイル及びメタクリロイルを表す。
また、本明細書中でいうインプリントは、1nm〜1mmのサイズのパターン転写を言い、好ましくは5nm〜200μmのサイズのパターン転写を言い、より好ましくは、10nm〜100μmのサイズのパターン転写を言う。
【0019】
本発明のインプリント用硬化性組成物は
重合性化合物を含有する硬化性組成物であって、
(a)上記重合性化合物の重合性基濃度が4.3〜7.5mmol/gであって、
(b)大西パラメーターが3.5以下、リングパラメーターが0.35以上である重合性化合物Xを全重合性化合物に対して40〜95質量%の範囲で含有し、
(c)更に、重合性基を3つ以上有する重合性化合物Cを全重合性化合物に対して2〜20質量%の範囲で含有し
(d)組成物の25℃における粘度が溶剤を含まない状態で3〜8000mPa・sの範囲であることを特徴とする。
【0020】
本発明における重合性化合物とは、重合性基を有する化合物であり、重合性基とは(メタ)アクリロイル基、ビニル基及びアリル基からなる群から選ばれる少なくとも1種類の有機基のことを指す。
【0021】
本発明における重合性基濃度とは、下記式(A)で求められる重合性化合物1gあたりの重合性基の濃度(f)(mmol/g)である。
(f)=(a
0×c
0/M
0)+(a
1×c
1/M
1)+・・・(a
nxc
n/M
n)
・・・(A)
(式中、a
0、a
1、・・・a
nは硬化性組成物を構成する重合性化合物各成分(以下各成分と略記)の重量%、c
0、c
1、・・・c
nは各成分の重合性基の数、M
0、M
1、・・・M
nは各成分の分子量を表す。)
式中、(f)は4.3〜7.5mmol/gであり、好ましくは4.3〜7.0mmol/gである。(f)が4.3未満では硬化性が悪くなり、7.5を超えると硬化収縮が大きくなり、基材との密着性が悪化するため好ましくない。
【0022】
大西パラメーターとは、重合性化合物中の全原子数をN、全炭素数をN
C、全酸素数N
Oとしたとき、N/(N
C−N
O)で表され、リングパラメーターとは、重合性化合物中における環状構造中の炭素原子の合計原子量をM
CYCLO、化合物の分子量Mとしたとき、M
CYCLO/Mで表されるドライエッチング耐性の指標となるパラメーターである。一般的に大西パラメーターが小さいほど、リングパラメーターが大きいほどドライエッチング耐性が良好であることが知られている。
大西パラメーターが好ましくは3.5以下、さらに好ましくは3.0以下、特に好ましくは2.6以下であるとドライエッチング耐性が良好となり好ましい。また、リングパラメーターは好ましくは0.35以上、さらに好ましくは0.40以上、特に好ましくは0.45以上であるとドライエッチング耐性が良好となり好ましい。本発明のインプリント組成物においては、大西パラメーターが3.5以下、リングパラメーターが0.35以上である重合性化合物Xを、全重合性化合物に対して40〜95質量%の範囲で含有することで、パターン形成性とドライエッチング耐性が両立可能となる。
【0023】
また、本発明のインプリント用硬化性組成物は、重合性基を3つ以上有する重合性化合物Cを含有する。該重合性化合物Cを含有することでパターン形成性、硬化性が良好となる。含有量は全重合性化合物に対して2〜20質量%であり、2質量%から15質量%であることがさらに好ましい。20質量を超える場合は、硬化収縮が大きくなり、パターン形成性が悪化する。また、2質量%未満の場合は、硬化物の凝集力が小さく、モールド離型時に凝集破壊が起こりやすくなる。
【0024】
本発明のインプリント用硬化性組成物は、25℃における粘度が溶剤を含まない状態で3〜8000mPa・sの範囲であり、3〜2000mPa・sの範囲であることが好ましく、3〜500mPa・sの範囲であることが特に好ましい。該範囲にあることで優れた塗布性が得られ、粘度調整時に使用する溶剤量を低減できる。
【0025】
本発明のインプリント用硬化性組成物は特定の範囲の重合性基濃度、大西パラメーター、リングパラメーターを満足するものであれば特に限定されるものではないが、大西パラメーターが3.5以下、リングパラメーターが0.35以上である重合性化合物Xとして、芳香環と重合性基を有する重合性化合物Aと、下記式(1)または(2)または(3)で表される重合性化合物Bを含有することが好ましい。
【0026】
【化1】
・・・(1)
【0027】
(式中、R
1、R
2、R
3およびR
4はそれぞれ独立してHまたはCH
3を表し、X
1およびX
2はそれぞれ独立して炭素数2以上の炭化水素基を表し、mおよびnはそれぞれ独立して0ないし1から5の整数を表す。)
【0028】
【化2】
・・・(2)
【0029】
(式中、R
5およびR
6はそれぞれ独立してHまたはCH
3を表し、m
1およびn
1はともに0ないし1を表し、p
1およびq
1はp
1+q
1=1又は2を満たす整数を表す。)
【0030】
【化3】
・・・(3)
【0031】
(式中、R
7およびR
8はそれぞれ独立してHまたはCH
3を表し、m
2およびn
2はともに0ないし1を表し、p
2およびq
2はp
2+q
2=1又は2を満たす整数を表す。)
【0032】
重合性化合物Aは単独または2種類以上を併用して使用することができる。
また、重合性化合物Bも単独または2種類以上を併用して使用することができる。
【0033】
芳香環と重合性基を有する重合性化合物Aと、式(1)または/および(2)で表される重合性化合物Bとを含有することで、インプリント用硬化性組成物のパターン形成性とドライエッチング耐性が良好となるため好ましい。
【0034】
芳香環と重合性基を有する重合性化合物Aとしては下記式(4)〜(8)で表される化合物が好ましい。
【0035】
【化4】
【0036】
【化5】
・・・(5)
【0037】
【化6】
・・・(6)
【0038】
【化7】
・・・(7)
【0039】
【化8】
・・・(8)
【0040】
(式(4)〜(8)において、R
a1及びR
a2はそれぞれ独立してHまたはCH
3を表し、X
aは炭素数2以上の炭化水素基を表し、Y
aは酸素原子または硫黄原子を表し、nは0ないし1〜5の整数を表す。)
【0041】
式(4)〜(8)で表される化合物はフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基を有することでドライエッチング耐性に優れると共に低粘度であるため、高粘度のB成分と併用することで硬化性組成物の低粘度化が可能となる。特に式(5)〜(8)で表されるビフェニル基、ナフチル基を有する化合物は、式(4)で表されるフェニル基を有する化合物よりもドライエッチング耐性に優れる。
式(4)〜(8)で表される化合物は25℃における粘度が200mPa・s以下であることが好ましい。また、式(4)〜(8)で表される化合物は単独または2種類以上を併用して使用することができる。
【0042】
式(1)で表されるビスアリールフルオレン骨格を有する化合物は、市販品として入手可能であり、オグソール(登録商標)EA−0200、同EA−F5003、同EA−F5503、同EA−F5510(以上、大阪ガスケミカル株式会社)、NKエステル A−BPEF(新中村化学工業株式会社)等が挙げられる。
【0043】
式(2)で表されるトリシクロデカン骨格を有する化合物は、市販品として入手可能であり、NKエステル(登録商標)A−DCP(新中村化学工業株式会社)、ミラマーM−260(美源商事株式会社)、ファンクリルFA−513AS、同FA−513M(以上、日立化成株式会社)等が挙げられる。
式(3)で表されるアダマンタン骨格を有する化合物は、市販品として入手可能であり、アダマンテート(登録商標)DMODA(出光興産株式会社)、アダマンテートDA(出光興産株式会社)等が挙げられる。
【0044】
該重合性化合物Aの含有量は、A及び重合性化合物Bの合計を100質量部としたとき、A/B=95/5〜55/45の重量比であることが好ましい。Aがこの割合よりであると、組成物の粘度が十分低いためパターン形成性に優れる。
【0045】
本発明のインプリント用硬化性組成物は、上記重合性化合物Xのほかに、分子内に3個以上の重合性基を有する重合性化合物Cを含有する。重合性化合物Cとしては、具体的には、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド変性グリセリントリ(メタ)アクリレート、等が挙げられる。
【0046】
上記重合性化合物Cは、市販品として入手可能であり、KAYARAD(登録商標)DPHA、同DPCA−20、同DPCA−30、同DPCA−60(以上、日本化薬株式会社製)、アロニックス(登録商標)M−403、同M−400、同M−306、同M−303、同M−408、同M−309、同M−310、同M−350、同M−315、同M−460(以上、東亞合成株式会社製)、NKエステル(登録商標)A−DPH、A−TMMT、AD−TMP、A−TMPT、A−GLY−9E、A−9300(以上、新中村化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0047】
中でもジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートが好ましい。含有量は全重合性化合物に対して2〜20質量%であり、2質量%から15質量%であることがさらに好ましい。20質量%以上の場合は、硬化収縮が大きくなり、基材密着性、パターン形成性が悪化する。また、2質量%未満の場合は、硬化物の凝集力が小さく、モールド離型時に凝集破壊が起こりやすくなる。
【0048】
本発明のインプリント用硬化性組成物は、光重合開始剤を含有してもよい。例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド等が挙げられるが、光硬化時に使用する光源に吸収をもつものであれば、特に限定されるものではない。
【0049】
上記化合物は、市販品として入手可能であり、IRGACURE(登録商標)651、同184、同2959、同907、同369、同819、同127、同OXE01、DAROCUR(登録商標)1173、同MBF、同TPO(以上、BASFジャパン株式会社製)、ESACURE(登録商標)KIP150、同TZT、同KTO46、同1001M、同KB1、同KS300、同KL200、同TPO、同ITX、同EDB(以上、日本シイベルヘグナー株式会社製)などが挙げられる。
【0050】
上記、光重合開始剤は、単独または2種類以上を併用して使用することができる。
【0051】
本発明のインプリント用硬化性組成物における光重合開始剤の含有量は全重合性化合物に対して0.5〜20質量%であることが好ましく、1質量%から10質量%であることがさらに好ましい。0.5質量%以上であれば、硬化性が高まり、パターン形成性に優れる。
【0052】
本発明のインプリント用硬化性組成物は溶剤を含有してもよい。
溶剤を含有することで、硬化性組成物の粘度を調整することができる。溶剤としては、例えば、n−へキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、シクロヘキサン、シクロペンタン等の脂肪族系または脂環族系の炭化水素類;トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;メタノール、エタノール、n−ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等のポリアルキレングリコールジアルキルエーテル類;1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドを単独または2種類以上を併用して使用することができる。
【0053】
溶剤を使用する場合の溶剤含有量は、必要に応じて硬化性組成物中の溶剤以外の成分の含有量が0.1〜100質量%の範囲で調整できる。
【0054】
本発明のインプリント用硬化性組成物は必要に応じて上記重合性化合物X、C以外の重合性基を有する化合物を含有してもよい。例えば、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−へキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノールEO変性(メタ)アクリレート、ノニルフェノールEO変性(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、3−エチル−3−オキセタニルメチル(メタ)アクリレート、1−アダマンチル(メタ)アクリレート、γ−ブチロン(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0055】
上記化合物は、市販品として入手可能であり、アロニックス(登録商標)M−208、同M−211B、同M−220、同M−225、同M−240、同M−101A、同M−113(以上、東亞合成株式会社製)、NKエステル(登録商標)A−200、A−BPE−4、A−HD−N、A−NOD−N、APG−100、APG−200、AMP−20GY(以上、新中村化学工業株式会社製)、ビスコート#195、同230、同260、同310HP、同335HP、同700、同155、同160、同192、同150、同190、IBXA、OXE−10、1−ADA、GBLA、LA(以上、大阪有機化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0056】
本発明のインプリント用硬化性組成物は必要に応じて光増感剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、界面活性剤、密着補助剤、無機フィラー、有機フィラー、顔料等を含有してもよい。
【0057】
上記界面活性剤としては、公知のフッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、アクリル重合系界面活性剤等が挙げられる。界面活性剤の含有量は全重合性化合物に対して0.001〜10質量%であり、好ましくは0.01〜8質量%であり、さらに好ましくは0.1〜5質量%である。2種類以上の界面活性剤を用いる場合は、その合計量が前記範囲となる。界面活性剤が前記範囲にあると、塗布の均一性に優れ、モールド転写性も良好となる。
【0058】
本発明のインプリント用硬化性組成物を用いたパターン形成方法について説明する。本発明のインプリント用硬化性組成物を基材上に塗布しパターン形成層を形成する工程と、前記パターン形成層に光を照射する工程を経てパターンを形成することができる。
【0059】
本発明のインプリント用硬化性組成物を基材上に塗布する方法としては、スプレー法、スピンコート法、ディップ法、ロールコート法、ブレードコート法、ドクターロール法、ドクターブレード法、カーテンコート法、スリットコート法、スクリーン印刷法、インクジェット法等が挙げられる。
【0060】
本発明のインプリント用硬化性組成物を塗布する基材としては、種々の用途によって選択可能であり、例えば、石英、サファイア、ガラス、光学フィルム、セラミック材料、蒸着膜(CVD、PVD、スパッタ)、磁性膜、反射膜、Ni,Cu,Cr,Fe,ステンレス等の金属基板、紙、SOG(Spin On Glass)、SOC(Spin On Carbon)、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム等のポリマー基板、TFTアレイ基板、PDPの電極板、ITOや金属等の導電性基材、絶縁性基材、シリコン、窒化シリコン、ポリシリコン、酸化シリコン、アモルファスシリコンなどの半導体作製基板等が挙げられる。
また、基材の形状も特に制限はなく、平板、シート状、あるいは3次元形状全面にまたは一部に曲率を有するもの等目的に応じた任意の形状であってよい。また、基材の硬度、厚み等にも制限はない。
【0061】
モールドを用いたパターン形成の場合、前記方法にて作製した膜に、予めパターンが形成されたモールドを押し付け、接触した状態で硬化させることにより、パターンが形成された硬化膜が得られる。本発明のインプリント用硬化性組成物は、特に100nm以下のパターン形成にも好適に使用することが可能である。
【0062】
インプリント用モールドの材質としては、光を透過する材質として、石英、紫外線透過ガラス、サファイア、ダイヤモンド、ポリジメチルシロキサン等のシリコン材料、フッ素樹脂、その他光を透過する樹脂材等が挙げられる。また、使用する基材が光を透過する材質であれば、インプリント用モールドは光を透過しない材質でもよい。光を透過しない材質としては、金属、SiC、マイカ等が挙げられる。
インプリント用モールドは平面状、ベルト状、ロール状、ロールベルト状等の任意の形状のものを選択できる。
【0063】
インプリント用モールドは、硬化性組成物とモールド表面のとの離型性を向上させるため離型処理を行ったものを用いても良い。離型処理としては、シリコン系やフッ素系のシランカップリング剤による処理等が挙げられる。
【0064】
硬化性組成物の硬化の方法は、モールドが光を透過する材質の場合はモールド側から光を照射する方法、基材が光を透過する材質の場合は基材側から光を照射する方法が挙げられる。光照射に用いる光としては、光重合開始剤が反応する光であればよく、中でも光重合開始剤が容易に反応し、より低温で硬化させることができる面から、450nm以下の波長の光(紫外線、X線、γ線等の活性エネルギー線)が好ましい。
【0065】
また、形成するパターンの追従性に不具合があれば、光照射時に十分な流動性が得られる温度まで加熱させてもよい。加熱する場合の温度は、0〜300℃が好ましく、0〜200℃がより好ましく、0〜150℃がさらに好ましく、25〜80℃が特に好ましい。前記温度範囲において、硬化性組成物から形成されるパターン形状が精度よく保持される。
【0066】
硬化後、モールドを離型することにより、モールドの凹凸パターンを転写した凸凹パターンが形成された硬化膜が得られる。基材の反り等の変形を抑えたり、凹凸パターンの精度を高めるため、剥離工程としては、硬化膜の温度が常温(25℃)付近まで低下した後に実施する方法が好ましい。
【0067】
上記方法によりパターンが形成された硬化膜を有する積層体をドライエッチングすることで、パターンを基材に良好に形成することが可能であり、ドライエッチングによりパターンが形成されたパターン形成物が得られる。
本発明のインプリント用硬化性組成物からなる硬化膜は、ドライエッチング耐性に優れるため、ドライエッチングの際にもパターン等の崩れがなく、微細なエッチングパターンを供することができる。
【0068】
ドライエッチングに使用するガスとしては、公知のものを用いればよく、例えば、酸素、一酸化炭素、二酸化炭素などの酸素原子含有ガス、ヘリウム、窒素、アルゴン等の不活性ガス、塩素、塩化ホウ素などの塩素系ガス、フッ素ガス、水素ガス、アンモニアガス等を使用することができ、これらのガスは単独でも、適宜混合して用いてもかまわない。
これらのエッチングガスを用いてエッチングすることにより、基材上に所望のパターンを形成することできる。
【実施例】
【0069】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0070】
合成例1 化合物A−1の合成
<クロロ中間体の合成>
撹拌機、冷却管、温度計、塩素ガス導入装置を備えた5L4口フラスコに、ジフェニル709g、パラホルムアルデヒド276g、酢酸1381g、濃塩酸958gを仕込み、80℃まで昇温した。仕込み溶液が80℃であることを確認後、木下式ガラスボールフィルターを使って塩化水素ガスを20g/hrの速度で仕込み溶液に導入した。仕込み溶液への塩化水素ガスの溶解が飽和であることを確認後、リン酸1061gを1時間かけて滴下し、更に、30時間反応を行った。反応終了後、直ちに反応溶液から下層を取り除き、有機層にトルエン2.3kgを添加し、有機層を400gの12.5%水酸化ナトリウム水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、蒸留水で洗浄した。有機層を留去後、クロロ中間体を白色固体として900g得た。
<アクリロイル化>
上記中間体908gを反応溶媒であるジメチルホルムアミド(DMF)1603gに溶解し炭酸カリウム372gおよびメトキノンを全量に対して300ppmになるように添加した。中間体溶液を40℃に昇温後、アクリル酸323gを1.5時間かけて中間体溶液に滴下した。滴下終了後、2時間かけて80℃まで昇温し、80℃にて3時間加熱撹拌した。得られた溶液に水3.4kgおよびトルエン1.8kgを添加し抽出を行った後、有機層を中性になるまで洗浄した。有機層を濃縮して化合物A−1を995g得た。化合物A−1は25℃において液状であった。
【0071】
上記で得られた化合物A−1を次の条件でガスクロマトグラフィー分析を行った。
装置:Agilent社製「6850Series」
カラム:Agilent DB−1
キャリアガス:He、流速1mL/min
注入温度:300℃
検出温度:300℃
プログラム:50〜325℃(昇温速度25℃/min)
【0072】
ガスクロマトグラムにて組成比を求めたところ、単官能アクリレート(式(5)にてR
a1=H、オルト体/パラ体/メタ体=20/79/1)が71.0%、2官能アクリレート(式(6)にてR
a1=R
a2=H)が20.2%、その他が8.8%であった。
【0073】
<実施例1〜18、比較例1〜10>
後述する表1〜3に示す配合表に基づいて硬化性組成物を得た。
【0074】
<組成物粘度の測定方法>
粘度の測定は、25±0.2℃にてE型粘度計(東機産業(株)社製「TV−20形」コーンプレートタイプを使用して測定した。
【0075】
<光インプリント方法>
光インプリントは、SCIVAX社製ナノインプリント装置X300を用いた。実施例1〜15及び比較例1〜10に示す組成物をスピンコーターを用いてサファイア基材上に膜厚150nmに塗布し、表面に幅200nm、ピッチ400nm、高さ200nmのラインアンドスペース構造を有する石英ガラス製の平板状のモールドを押し付けて、ピーク波長365±5nmのLED光源により、この状態でモールド側から1000mJ/cm
2の光量で光照射して硬化させ、その後モールドとサファイア基材を剥離し、ラインアンドスペース状のパターンを有する硬化物であるレジスト膜を得た。
【0076】
また、実施例16〜18に示す組成物をインクジェットディスペンサーPQ512/15(富士フイルム株式会社社製)を用いて、サファイア基材上に15pLの液滴を液滴間隔340μmとなるよう三方配列に形成した。次いで表面に幅200nm、ピッチ400nm、高さ200nmのラインアンドスペース構造を有する石英ガラス製の平板状のモールドを押し付けて、ピーク波長365±5nmのLED光源により、この状態でモールド側から1000mJ/cm
2の光量で光照射して硬化させ、その後モールドとサファイア基材を剥離し、ラインアンドスペース状のパターンを有する硬化物であるレジスト膜を得た。
【0077】
<インプリント適性評価方法及び評価基準>
(パターン形成の評価)
得られたレジスト膜のパターンを、走査顕微鏡(日本電子(株)製:JSM−7500F)にて10万倍の倍率で観察し、以下のように評価した。
(形状)
◎:ライン形状の高さが190nm以上
○:ライン形状の高さが180nm以上190nm未満
×:ライン形状の高さが180nm未満
(離型性)
◎:パターンの欠損または倒れが無いこと
○:パターンの一部のみが基板とレジストの界面で剥離している
×:パターンの大部分または全面で、基板とレジスト界面での剥離または欠損または倒れている。
【0078】
<ドライエッチング耐性評価方法>
(レジスト膜の作製)
実施例1〜18及び比較例1〜10に示す組成物をシリコンウエハ基材上にスピンコートで膜厚1μmになるよう塗布し、ピーク波長365±5nmのLED光源により樹脂組成物側から1000mJ/cm
2の光量で光照射して硬化させ、レジスト膜を得た。
同様に実施例1〜13及び比較例1〜10に示す組成物をサファイア基材上に塗布しピーク波長365nm±5のLED光源により樹脂組成物側から1000mJ/cm
2の光量で光照射して硬化させ、硬化膜であるレジスト膜を得た。
【0079】
(ドライエッチング方法)
得られたレジスト膜に対し株式会社ユーテック社製デスクトップシリーズ Plasma Etchingを用いてCF
4/0
2の混合系ガスをそれぞれ40sccm及び10sccmの流量で供給し、0.8Paの真空下で1分間プラズマドライエッチングを行った後、レジスト膜の残存膜厚を測定し、1分間当たりのエッチング速度を算出した。
同じく得られたレジスト膜に対し、SAMCO株式会社製RIE−101iPHを用いてBCl
3/Cl
2/Arの混合系をそれぞれ20sccm、15sccm及び20sccmの流量で供給し、0.7Paの真空下で1分間プラズマエッチングを行った後、残存膜厚を測定し、1分間当たりのエッチング速度を算出した。
(評価方法基準)
得られたエッチング速度を比較例5の値が1となるように規格化した。規格値が小さい程、ドライエッチング耐性に優れていることを示しており、以下のように評価した。
◎:規格化したエッチング速度が0.8未満
○:規格化したエッチング速度が0.8以上1未満
×:規格化したエッチング速度が1以上
【0080】
【表1】
【0081】
【表2】
【0082】
【表3】
【0083】
<重合性化合物A>
A−1:合成例1記載の化合物
A−2:o―フェニルフェノールエチレンオキサイド変性アクリレート(アロニックスM−106、東亞合成株式会社製)
A−3:2−(ナフタレン−2−イルチオ)エチルアクリレート(エレクトロマーHRI−02、DAELIM社製)
A−4:ベンジルアクリレート(ビスコート#160、大阪有機化学工業株式会社製)
<重合性化合物B>
FDA:9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン(オグソールEA−0200、大阪ガスケミカル株式会社製)
TCDDA:トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(ミラマーM−260、美源商事株式会社製)
ADMODA:アダマンタンジメタノールジアクリレート(アダマンテートDMODA、出光興産株式会社製)
<光重合開始剤>
IRGACURE 184:1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(BASFジャパン株式会社製)
IRGACURE 907:2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン(BASFジャパン株式会社製)
DAROCUR TPO:2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド(BASFジャパン株式会社製)
IRGACURE OXE01:1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)](BASFジャパン株式会社製)
<重合性化合物C:分子内に3個以上の重合性基を有する化合物>
DPHA:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとジペンタエリスリトールペンタアクリレートの混合物(LUMICURE DPC−620C、東亞合成株式会社製)
EO−TMPTA:エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート(SR−454、サートマー社製)
【0084】
<その他の重合性化合物>
NPGDA:ネオペンチルグリコールジアクリレート(ライトアクリレートNP−A、共栄社化学株式会社製)
TPGDA:トリプロピレングリコールジアクリレート(アロニックスM−220、東亞合成株式会社製)
<溶剤>
PGMAc:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
<界面活性剤>
UV−3500:シリコン系界面活性剤(ビックケミー・ジャパン株式会社製)
F−554:フッ素系界面活性剤(DIC株式会社製)
R−08:フッ素系界面活性剤(DIC株式会社製)
【0085】
<比較例1、比較例2>
インプリント適性およびドライエッチング耐性について評価した。ドライエッチング耐性には優れるものの、組成物の粘度が高いためモールドへの充填性が悪く、パターン形成性に劣るものであった。
【0086】
<比較例3、比較例4>
インプリント適性およびドライエッチング耐性について評価した。組成物の粘度は低いためモールドへの充填性に問題はないが、組成物の重合性基の濃度が好ましい範囲よりも高いため、基板との密着性に劣りパターンの剥がれが確認された。また、重合性化合物A及びBを含有しないためドライエッチング耐性に劣るものであった。
【0087】
<比較例5>
インプリント適性およびドライエッチング耐性について評価した。重合性化合物Cを含有しないため、硬化物の凝集力が低く、離型時にパターンの欠損、倒れが確認された。
【0088】
<比較例6>
インプリント適性およびドライエッチング耐性について評価した。パターン形成性には優れるものの、重合性化合物A及びBの割合が少ないため、実施例と比較してドライエッチング耐性に劣るものであった。
【0089】
<比較例7>
インプリント適性およびドライエッチング耐性について評価した。組成物の重合性基の濃度が好ましい範囲よりも高いため、基板との密着性に劣りパターンの剥がれが確認された。また、重合性化合物A及びBの割合が少ないため、実施例と比較してドライエッチング耐性に劣るものであった。
【0090】
<比較例8>
インプリント適性およびドライエッチング耐性について評価した。組成物の重合性基の濃度が好ましい範囲よりも低く、重合性化合物Cを含有しないため、硬化物の凝集力が低く、離型時にパターンの欠損、倒れが確認された。
【0091】
<比較例9>
インプリント適性およびドライエッチング耐性について評価した。組成物の粘度は低いためモールドへの充填性に問題はないが、重合性基を3つ以上有する重合性化合物の濃度が高いため、基板との密着性に劣りパターンの剥がれが確認された。
【0092】
<比較例10>
インプリント適性およびドライエッチング耐性について評価した。組成物の粘度は低いためモールドへの充填性に問題はないが、組成物の重合性基の濃度が低いため、離型時にパターンの欠損、倒れが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明のインプリント用硬化性組成物は、種々のインプリント技術に用いることができるが、特に、ナノサイズの微細パターンの形成のための硬化性組成物として好ましく用いることができる。具体的には、半導体集積回路、マイクロ電気機械システム(MEMS)、センサ素子、光ディスク、高密度メモリーディスク等の磁気記録媒体、回折格子やレリーフホログラム等の光学部品、ナノデバイス、光学デバイス、フラットパネルディスプレイ作製のための光学フィルムや偏光素子、液晶ディスプレイの薄膜トランジスタ、有機トランジスタ、カラーフィルタ、オーバーコート層、マイクロレンズアレイ、免疫分析チップ、DNA分離チップ、マイクロリアクター、ナノバイオデバイス、光導波路、光学フィルター、フォトニック液晶等の作製に用いることができる。