特許第5889985号(P5889985)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5889985
(24)【登録日】2016年2月26日
(45)【発行日】2016年3月22日
(54)【発明の名称】熱履歴変化型インジケーター
(51)【国際特許分類】
   G01K 11/06 20060101AFI20160308BHJP
   G01K 11/12 20060101ALI20160308BHJP
   G01K 11/18 20060101ALI20160308BHJP
【FI】
   G01K11/06 C
   G01K11/12 A
   G01K11/18
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-186699(P2014-186699)
(22)【出願日】2014年9月12日
【審査請求日】2015年12月21日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000226976
【氏名又は名称】日清食品ホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】上野 友央
【審査官】 櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−83020(JP,A)
【文献】 特開昭60−190825(JP,A)
【文献】 特表昭58−501920(JP,A)
【文献】 特開昭52−56585(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 11/06
G01K 11/12
G01K 11/18
G04F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可融性物質を含む熱可融性物質層と、
前記熱可融性物質が融解浸透することにより透明または半透明になる片面に彩色が施された浸透層と、
前記熱可融性物質層と前記浸透層との間に配置され、前記熱可融性物質が前記浸透層に浸透するのを阻害する熱可融性物質浸透阻害層と、が積層され、
前記浸透層側が保護層によって覆われる熱履歴変化型インジケーター。
【請求項2】
熱可融性物質を含む熱可融性物質層と、
色紙と、
前記熱可融性物質が融解浸透することにより透明または半透明になる浸透層と、
前記熱可融性物質層と前記色紙との間、又は、前記色紙と前記浸透層との間の少なくともいずれかに配置され、前記熱可融性物質が前記浸透層に浸透するのを阻害する熱可融性物質浸透阻害層と、が積層され、
前記浸透層側が保護層によって覆われる熱履歴変化型インジケーター。
【請求項3】
熱可融性物質を含む熱可融性物質層と、
前記熱可融性物質が融解浸透することにより透明または半透明になる浸透層と、
前記熱可融性物質層と前記浸透層との間に配置され、前記熱可融性物質が前記浸透層に浸透するのを阻害する有色の熱可融性物質浸透阻害層と、が積層され、
前記浸透層側が保護層によって覆われる熱履歴変化型インジケーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱履歴変化型インジケーターに関する。より詳しくは、温度と時間の積算を反映する熱履歴変化型インジケーターに関する。
【背景技術】
【0002】
温度管理を必要とする対象物の中には、単なる時間ごとの温度変化やある瞬間における温度情報だけではなく、対象物が経時的に受ける熱の総量(累積値)が重要となる場合がある。このような対象物としては、機器類や食品類などが挙げられる。
【0003】
例えば、機器類の中には、一定温度以上に加温されると、劣化や誤動作を起こすなどの不都合が生じるものがある。また、食品類の中には、品質保持のために所定温度に一定時間以上晒されないようにしなければならないものがある一方で、安全衛生のために所定温度に一定時間以上晒されることが必要なものもある。さらに、即席カップ麺などの復元(湯戻し)においても、経時的に受ける熱の総量(累積値)が重要となる。
【0004】
このように経時的に受ける熱の総量(累積値)を確認するための示温ラベルとして、いくつか提案がなされている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4064697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、経時的に受ける熱の総量(累積値)を測定するためには、示温ラベルの貼付部位に温度ムラがないことが必要となる。例えば、ワックスの粘度は温度によって変化する。そのため、特許文献1のように長手方向にわたって反応を進行させる場合、貼付部位に温度ムラがあると、示温ラベルの挙動に変化が生じる。その結果、正確な熱の総量(累積値)を測定することができないといった問題が生じる。
【0007】
本発明は上記問題点を鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の課題は、温度ムラの影響を受けにくく、経時的に受ける熱の総量(累積値)を正確に測定することができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、温度ムラの影響を受けにくく、なおかつ経時的に受ける熱の総量(累積値)を正確に測定することができるようにする方法について、鋭意検討を行った。そして、反応の進行方向を垂直方向に変化させることで、貼付部位の温度ムラの影響を受けにくく、しかも視認しやすくできることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
上記課題解決のため、本発明は、熱可融性物質を含む熱可融性物質層と、前記熱可融性物質が融解浸透することにより透明または半透明になる片面に彩色が施された浸透層と、前記熱可融性物質層と前記浸透層との間に配置され、前記熱可融性物質が前記浸透層に浸透するのを阻害する熱可融性物質浸透阻害層と、が積層され、前記浸透層層側が保護層によって覆われる熱履歴変化型インジケーターを提供する。
【0010】
かかる構成によれば、熱可融性物質層と浸透層との間に熱可融性物質浸透阻害層が設けてある。そのため、熱可融性物質は彩色が施された面からは吸収されず、浸透層の端から徐々に吸収されることになる。そして、浸透層の端から熱可融性物質を徐々に吸収させることで、浸透面積を経時的に受ける熱の総量(累積値)として視認化できる。
【0011】
また、本発明は、熱可融性物質を含む熱可融性物質層と、色紙と、前記熱可融性物質が融解浸透することにより透明または半透明になる浸透層と、前記熱可融性物質層と前記色紙との間、又は、前記色紙と前記浸透層との間の少なくともいずれかに配置され、前記熱可融性物質が前記浸透層に浸透するのを阻害する熱可融性物質浸透阻害層と、が積層され、前記浸透層側が保護層によって覆われる熱履歴変化型インジケーターを提供する。
【0012】
かかる構成によれば、色紙と浸透層を別々に設けることができる。これにより、複雑な印刷を施した色紙を使用することができる。また、熱可融性物質層と色紙との間、又は、色紙と浸透層の間の少なくともいずれかに熱可融性物質浸透阻害層を設けることで、浸透層の端から熱可融性物質を徐々に吸収させることができる。そして、浸透層の端から熱可融性物質を徐々に吸収させることで、浸透面積を経時的に受ける熱の総量(累積値)として視認化できる。
【0013】
さらに、本発明は、熱可融性物質を含む熱可融性物質層と、前記熱可融性物質が融解浸透することにより透明または半透明になる浸透層と、前記熱可融性物質層と前記浸透層との間に配置され、前記熱可融性物質が前記浸透層に浸透するのを阻害する有色の熱可融性物質浸透阻害層と、が積層され、前記浸透層側が保護層によって覆われる熱履歴変化型インジケーターを提供する。
【0014】
かかる構成によれば、浸透層が透明または半透明になるにつれて、熱可融性物質侵害阻害層の色が視認できるようになるので、経時的に受ける熱の総量(累積値)を視認化することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、温度ムラの影響を受けにくく、経時的に受ける熱の総量(累積値)を正確に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明にかかる熱履歴変化型インジケーターの概略説明図である。
図2】本発明にかかる熱履歴変化型インジケーターの変色反応の進行状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための好適な形態について適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0018】
≪熱履歴変化型インジケーター1≫
図1は本発明にかかる熱履歴変化型インジケーター1の概略図である。本発明にかかる熱履歴変化型インジケーター1は、大別すると基材10と、熱可融性物質を含む熱可融性物質層20と、熱可融性物質が浸透すると透明または半透明となる片面に彩色が施された浸透層30と、融解した熱可融性物質が浸透層30の彩色面側から浸透するのを阻害するための熱可融性物質浸透阻害層40と、表面全体を覆う保護層50と、から構成される。そして、図1のように、熱可融性物質層20と、熱可融性物質浸透阻害層40と、浸透層30とはこの順に積層され、基材10と保護層50で挟み込まれた積層構造となっている。
【0019】
また、熱可融性物質層20と、浸透層30と、熱可融性物質浸透阻害層40とは同じサイズが好ましい。そして、基材10と保護層50は、これらよりもサイズを大きくすることが好ましい。基材10と保護層50のサイズを大きくすることで、のりしろを作ることができ、熱可融性物質層20、熱可融性物質浸透阻害層40、浸透層30を密封することができる。
【0020】
熱履歴変化型インジケーター1の形状としては特に制限されず、円形や多角形などが挙げられる。このうち、外観上の観点からは、端面から同心円状に熱可融性物質が浸食する円形であることが好ましい。また、生産性の観点からは、カットロスの少ない四角形であることが好ましい。
【0021】
本発明にかかる熱履歴変化型インジケーター1の製造方法は特に限定されないが、例えば、あらかじめ熱可融性物質層20と、熱可融性物質浸透阻害層40と、浸透層30とを積層した積層物を所望の形状に打ち抜く。つぎに、打ち抜いた積層物を基材10上に配置した後、保護層50で被覆し、最後に所望の形状に打ち抜くことで形成することができる。また、あらかじめ所望の形状に打ち抜かれた熱可融性物質層20と、熱可融性物質浸透阻害層40と、浸透層30とを用いて形成することもできる。
【0022】
次に、本発明に係る熱履歴変化型インジケーター1の各構成について説明する。
【0023】
(1)基材10
基材10は、被着体の構成による。熱履歴変化型インジケーターの最下層に位置するものであって、後述する保護層50と共に、熱可融性物質層20と、熱可融性物質浸透阻害層40と、浸透層30とを被覆するためのものである。基材10は、アルミ箔またはプラスチック基材が好ましく、ラベル形態であれば片面に粘着層を兼ね備えていることが好ましい。粘着層を設けることで、即席カップ麺の容器や蓋に貼付できる。
【0024】
基材10は、例えば、剥離紙と粘着剤層と支持体とで構成される。このとき、支持体としては、後述する熱可融性物質が含浸しない機能を有するものであることが好ましい。具体的には、アルミ箔、ポリプロピレン・ポリエステルフィルムなどのプラスチックフィルム、紙に撥油加工を施したものなどが挙げられる。なお、基材10は、少なくとも熱履歴変化型インジケーターを別途接着剤などで容器に組込む場合には、剥離紙と粘着剤層を設ける必要はなく、支持体のみでよい。
【0025】
基材10は、熱伝導性が良いものであることが好ましい。ここで、熱伝導性の良いものとは、温度ロスが少なく、容器内の温度をほぼそのまま熱可融性物質層20に伝えることができる程度のものを意味する。
【0026】
基材10の大きさは、後述する熱可融性物質層20、熱可融性物質浸透阻害層40及び浸透層30よりも大きい方が良い。
【0027】
(2)熱可融性物質層20
熱可融性物質層20は、基材10と後述する浸透層30との間に載置されるものであって、浸透層30を半透明または透明にするための熱可融性物質を含有している。含有している熱可融性物質量は、浸透層30を透明または半透明にするのに必要な量を含有していればよく、特に制限されない。
【0028】
熱可融性物質としては、融点が50℃以上、好ましくは60℃以上の有機化合物を用いることが好ましい。このような化合物としては、例えば、アルコール、エステル、アミド、ケトン、エーテル等の極性基を有する脂肪族化合物、芳香族化合物、複素環化合物などが挙げられる。更に具体的には、エチレンビスステアリン酸アミド、メチロールステアリン酸アミド、ウンデシルアミド、ラウリルアミド、ミリスチルアミド、パルミチルアミド、ステアリルアミド、ドコシルアミドなどのようなアミド化合物、ベベニルアルコール、ステアリルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコールなどのアルコール性化合物、ステアリン酸テトラデシル、ステアリン酸オクタデシル、パルミチン酸ヘキサデシル、ベヘニン酸ベンジル、サリチル酸ステアリル、安息香酸セチル、セバシン酸ジミリスチル、アゼライン酸ジセチル、アジピン酸ジステアリル、セバシン酸ジステアリル、トリステアリン、トリパルミチン、トリミリスチンなどのエステル化合物、ステアロン、ラウロン、ジオクチルケトンなどのケトン化合物、1,2−ジフェノキシエタン、β−ナフトールベンジルエーテルなどのエーテル化合物などが挙げられる。
【0029】
また、食品類に用いる場合には、安全性、透明性、示温性などの観点から、飽和炭化水素または不飽和炭化水素を用いることが好ましい。飽和炭化水素と不飽和炭化水素とは、温度領域と特性により使い分けることができる。
【0030】
飽和炭化水素としては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、サゾールワックス、流動パラフィン等が挙げられる。このうち、化学物質CnH2n+2で表記することができるパラフィンワックスを主成分とすることが特に好ましく、n数は24〜60のものであることが特に好ましい。なお、n数が少ないほど融点は低くなり、逆にn数が多いほど融点は高くなる。
【0031】
不飽和炭化水素としては、ポリエチレンワックス、オレフィン、ポリオレフィンワックス等があげられる。
【0032】
熱可融性物質の分子構造は、直鎖状であるパラフィンワックスが好ましい。分子構造が直鎖状であるほど、重油精製時の単離が容易であり、融点の温度領域が鋭くなるため、示温性に優れる。また、表面張力も低いため、浸透層30への含浸速度が速くなる。
【0033】
本発明において、熱可融性物質は上記以外の物質が可能である。例えば、粘性流体、粘弾性流体およびこれらの混合物からなる群から選択される流体が挙げられる。なお、これに限定されるものではない。
【0034】
熱可融性物質の表面張力は特に限定されないが、例えば、80℃の熱可融性物質の表面張力としては、1.0×10−2〜1.0×10mN/mの範囲が好ましく、1.0×10−1〜5.0×10mN/mの範囲がより好ましく、5.0〜3.0×10mN/mの範囲がさらにより好ましい。
【0035】
また、熱可融性物質の粘度は特に限られないが、例えば、80℃の熱可融性物質の粘度としては、1.0×10−2〜1.0×10mPa・sの範囲が好ましく、1.0×10−1〜6.0×10mPa・sの範囲がより好ましく、1.0〜4.0×10mPa・sの範囲がさらにより好ましい。
【0036】
熱可融性物質の屈折率は特に限定されないが、例えば、23℃の熱可融性物質の屈折率としては、0.8〜2.0の範囲が好ましく、1.0〜1.8の範囲がより好ましく、1.4〜1.6の範囲がさらにより好ましい。後述で述べる浸透層(例えば紙の繊維を構成するセルロースの屈折率は1.49)と同程度の屈折率であれば、浸透後に透明性が増すため好ましい。
【0037】
浸透制御のため熱可融性物質は1種類のみを用いてもよいし、融点・粘度の異なる熱可融性物質を複数組み合わせてもよい。
【0038】
また、熱可融性物質以外に、塗工性と加工後の脆さを改善する補助剤や、必要に応じて、顔料、染料等の着色剤及び香料を混合することもできる。
【0039】
本発明に係る熱可融性物質層20は、融解した熱可融性物質をディスペンサーなどの装置を用いて基材に直接塗布することで作製もできる。また、基材に熱可融性物質を含浸させたシートを作製することでラミネート可能な連続シートとして用いることができる。基材としては、例えば、和紙や不織布などの間隙を有するものが好ましい。熱可融性物質の塗布量は熱可融性物質の染み出し量に起因するため、密度が低く、高い塗布量が可能な基材を用いることがより好ましい。
【0040】
また、製造された熱可融性物質層20は、ロール状であってもよいし、所定の大きさにあらかじめ裁断されたものであってもよい。なお、熱可融性物質層20の形状は、後述する浸透層30と同じ形状であることが好ましい。
【0041】
(3)浸透層30
本発明に係る浸透層30は、融解した熱可融性物質が浸透することによって透明または半透明化するものである。
【0042】
本発明にかかる浸透層30としては、熱可融性物質と同等の屈折率をもつ物質を多孔質化または繊維化したシート状のものが好ましい。例えば、紙、アルミナ繊維・ガラス繊維・レーヨン繊維・ポリビニルアルコール・セルロース繊維・ポリオレフィン繊維(ポリプロピレン・ポリエチレン・ナイロン・ポリエステルを含む)など、複合繊維からなる不織布、発泡プラスチックシート、ウレタンフォームを用いるのが良い。
【0043】
本発明の浸透層30の透明・半透明機構について、紙を例に挙げて説明すると、紙の繊維を構成するセルロースの屈折率は1.49であるのに対して、空気の屈折率は1.00と大きく異なる。紙は体積中に50%前後の空気を含んでいるため、紙層内では微細な空隙が数多く存在する。そのため、無数にある両者の界面で光が複雑に屈折することにより紙が白く不透明に見えている。そこに、セルロースの屈折率に近い熱可融性物質が浸透することにより、空隙が埋められ、一様な屈折率となる。その結果、複雑な界面屈折がなくなるため、透明または半透明化するようになる。
【0044】
本発明にかかる浸透層30の屈折率は、熱可融性物質の屈折率に依存する。例えば、23℃における浸透層30の屈折率としては、熱可融性物質の屈折率±0.3の範囲あることが好ましく、熱可融性物質の屈折率±0.2の範囲にあることがより好ましく、熱可融性物質の屈折率±0.1の範囲にあることがさらにより好ましい。
【0045】
本発明にかかる浸透層30は、熱可融性物質が目的の時間で浸透が完了するよう密度、空隙率、面積形状を適宜変えることで調整が可能である。密度、空隙率、面積形状によって、熱可融性物質の含浸速度に影響が出るためである。また、熱可融性物質が含有しやすい程度の厚みと坪量であることが好ましい。
【0046】
本発明にかかる浸透層としては、生産性とコスト面の観点から片面に彩色が施された片面アート紙を用いることが好ましい。片面アート紙に施された彩色は特に制限されないが、インジケーターとして使用する際に色の変化が視認しやすいものであることが好ましい。
【0047】
また、片面アート紙を用いる場合には、彩色を施した面を下(熱可融性物質層20側)向きに配置することが好ましい。このように配置することで、使用前においては、彩色を施していない面(通常白色)が彩色をマスキングすることができる。そして、熱可融性物質浸透時においては、白色から透明または半透明に変化することで彩色が視認でき、色のコントラスト変化を顕著に認識しやすくすることができる。
【0048】
本発明において、浸透層30は、熱可融性物質層20と同じ大きさで、かつ、基材10と後述する保護層50よりも小さく形成されている。浸透層30が大きすぎると、基材10及び保護層50によって密封空間が形成できないためである。
【0049】
浸透層30の形状としては特に限定されないが、円形であることが好ましい。円形とすることで、円の中心に向かって色が変わっていくため、認識しやすい。また、生産性の観点からは、カットロスの少ない四角形であることが好ましい。
【0050】
(4)熱可融性物質浸透阻害層40
熱可融性物質浸透阻害層40は、熱可融性物質層20と浸透層30との間に設けられる層であって、融解した熱可融性物質が浸透層30の彩色面側から浸透するのを防ぐためのものである。熱可融性物質浸透阻害層40は、浸透層30の彩色を施した面全てを被覆していることが好ましい。これにより、融解した熱可融性物質が浸透層30の端面から徐々に浸み込むよう誘導できる。
【0051】
熱可融性物質浸透阻害層40としては、熱可融性物質が浸透しないものか、撥油性を有するものであれば特に限定されない。熱可融性物質浸透阻害層40の一例としては、オーバープリントニスなどの撥油物質でコーティングされた紙や、PETフィルムなどのプラスチックフィルムなどの撥油部材があげられる。撥油物質を用いる場合には、浸透層30と一体に形成することができる。
【0052】
また、熱可融性物質浸透阻害層として、有色のPETフィルムなどのプラスチックフィルムを用いてもよい。浸透層が透明または半透明になると、有色のプラスチックフィルムの色が視認できるため、浸透層に彩色を施さなくてもインジケーターとして用いることができる。
【0053】
なお、浸透層30として彩色面上にコーティング層が設けられている紙を使用する場合には、コーティング層と印刷とが熱可融性物質浸透阻害層40の役割を果たしてもよい。
【0054】
(4)保護層50
本発明に係る保護層50は、熱履歴変化型インジケーター1の最上層に位置し、基材10と共に熱可融性物質層20と、浸透層30と、熱可融性物質浸透阻害層40と、を被覆し密閉するためのものである。これにより、熱可融性物質層20と、浸透層30と、熱可融性物質浸透阻害層40と、が位置ズレすることを防ぐ。また、湿気や水など外部からの侵入によって浸透層30が半透明または透明になってしまうことを防ぐ。さらに、融解した熱可融性物質がインジケーターの外へ浸み出さずに、保護層50を伝って、浸透層30の端面に到達することができる。
【0055】
保護層50の材質としては透明なものであれば特に限定されず、基材10の支持体と凝集剥離しにくいものが好ましい。保護層50の一例としては、ポリエステル、ポリプロピレンまたはポリエチレンフィルムなどがあげられる。また、保護層50の片面に粘着剤層を設けてもよい。粘着剤層を設けることで、基材10と密閉空間を形成することができる。
【0056】
本発明においては、図1に示すように、保護層50と、熱可融性物質層20および浸透層30との間に若干隙間があることが好ましい。この隙間があることによって、融解した熱可融性物質が浸透層30の端面から浸み込むことができる。なお、浸透層30を熱可融性物質層20よりもわずかに小さくすることで、浸透層30と保護層50との間に隙間を設けてもよい。
【0057】
次に、本発明に係る熱履歴変化型インジケーター1の作用機序について説明する。なお、ここでは、即席カップ麺の蓋に熱履歴変化型インジケーター1を貼り付けた場合を例に説明する。
【0058】
本実施例にかかる熱履歴変化型インジケーター1は、両面粘着層PETフィルムからなる基材10の上に、融点76℃のパラフィンワックスを含浸させた円形の熱可融性物質層20、片面アート紙(坪量:79g/m)の印刷面側にニスで撥油処理した円形の浸透層30、その上から片面粘着ポリエステルフィルムからなる保護層50が積層された構造となっている。なお、ここでは、ニスが熱可融性物質阻害層40の役割を果たす。
【0059】
ここで、即席カップ麺などに用いる熱可融性物質の融点としては、45℃から90℃の範囲であることが好ましく、70℃から85℃の範囲であることがより好ましい。これは、即席カップ麺に100℃の熱湯を注いだとしても、外気温との温度勾配等により即席カップ麺の蓋の温度が100℃となることはないためである。また、蓋は、蓋の中心ほど温度が高く、周縁(特に開封部近辺)に向かうほど温度が下がる。そのため、蓋の位置によっては最大10℃前後温度差が生じる。したがって、熱可融性物質の融点温度が高すぎると変色反応が進行せず、逆に熱可融性物質の融点が低いと保存状況や製品移送時に変色反応が進んでしまうことも考えられるためである。
【0060】
まず、本発明に係る熱履歴変化型インジケーター1を、即席カップ麺の蓋に貼り付ける。続いて、即席カップ麺の蓋を半分まで開けて、容器内に熱湯を注湯し、再度蓋を閉じる。なお、熱履歴変化型インジケーター1は蓋ではなく、即席カップ麺の容器外壁に貼付して用いてもよい。
【0061】
容器内に注湯されると、蓋表面の温度が上昇し、熱可融性物質が融解する。融解した熱可融性物質は浸透層30の端面から浸み込んでいく。そして、浸透層30が半透明または透明になると、彩色が透けて見えるようになる(図2参照)。なお、一度半透明または透明になると再び不透明になることはないので、視認しやすい。
【0062】
例えば、外気温23℃の環境下において、即席カップ麺に100℃のお湯を注湯した当初は、蓋の中心温度が85℃ぐらいにまで到達するため、熱可融性物質の融解が起こる。蓋の温度が高温であるため、熱可融性物質の粘度は低く、浸透層30に早く浸透する。蓋の温度は時間経過とともに次第に下がっていくため、熱可融性物質の粘度は次第に高くなり、浸透層30への浸透が遅くなる。
【0063】
最後に、浸透層30の全面が半透明または透明になる(すなわち印刷が全面で視認できるようになった時点)と、麺の復元が完了したことを意味する。
【0064】
以上説明したように、本発明は、容器内の温度と連動して復元状態が確認できるため、時計などがない屋外、お湯の温度が低い場合などでもメーカ側が意図した復元状態に戻すことができる。また、貼付部位によって温度差があるような箇所においても、反応を垂直方向に進行させることができるため、温度ムラによる影響を受けにくくすることができる。
【0065】
本発明は上記実施例に限られるものではない。
例えば、上記実施例では浸透層30の片面に彩色を施したものについて説明したが、有色の紙(色紙)の上に浸透層を積層した構造としてもよい。この時、色紙に熱可融性物質が含浸しないように、色紙全体を熱可融性物質浸透阻害層によって被覆していることが好ましい。また、色紙にコーティング層を設けてもよい。かかる場合、コーティング層が熱可融性物質浸透阻害層の役割を果たす。さらに、色紙を用いる場合には、熱可融性物質層と色紙の間、または、色紙と浸透層との間の少なくともいずれかに熱可融性物質浸透阻害層を設ければよい。このような場合においても本発明の効果を奏する。
【0066】
また、上記実施例では基材を用いた場合について説明したが、基材を用いずに、直接即席カップ麺の容器や蓋などに熱履歴変化型インジケーターを設けてもよい。この場合、即席カップ麺の容器や蓋上に熱可融性物質層、熱可融性物質浸透阻害層、浸透層を積層し、保護層で被覆密封すればよい。
【0067】
さらに、上記実施例では熱可融性物質を吸収体(紙)に含浸させた場合について説明したが、これに限られるものではなく、紙に含浸させずに固形状の熱可融性物質をそのまま用いてもよい。
【0068】
本発明においては、浸透層の上にさらに視認効果を助けるための部材を設けてもよい。例えば、熱履歴変化型インジケーターを円形にした場合、反応は中心で終息する。そこで、熱可融性物質によって透明または半透明にならない素材で作ったドーナツ型の紙を浸透層上に設けることで、反応の終息をより視認しやすくすることができる。
【符号の説明】
【0069】
1 熱履歴変化型インジケーター
10 基材
20 熱可融性物質層
30 浸透層
40 熱可融性物質浸透阻害層
50 保護層
【要約】
【課題】容器内の温度と連動して即席カップ麺の麺湯戻り復元状態を簡単に視認できる熱履歴変化型インジケーターを提供する。
【解決手段】熱可融性物質を含む熱可融性物質層と、前記熱可融性物質が融解浸透することにより透明または半透明になる浸透層と、前記熱可融性物質層と前記浸透層との間に配置され、前記熱可融性物質が前記浸透層に浸透するのを阻害する熱可融性物質浸透阻害層と、が積層され、前記浸透層側が保護層によって覆われる熱履歴変化型インジケーター。
【選択図】図1
図1
図2