特許第5890175号(P5890175)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5890175血中移行性の高いコラーゲンペプチド組成物及びこれを含有する飲食品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5890175
(24)【登録日】2016年2月26日
(45)【発行日】2016年3月22日
(54)【発明の名称】血中移行性の高いコラーゲンペプチド組成物及びこれを含有する飲食品
(51)【国際特許分類】
   C12P 21/06 20060101AFI20160308BHJP
   A23L 33/17 20160101ALI20160308BHJP
   C07K 1/12 20060101ALI20160308BHJP
   C07K 4/12 20060101ALI20160308BHJP
   C07K 14/78 20060101ALI20160308BHJP
【FI】
   C12P21/06
   A23L1/305
   C07K1/12
   C07K4/12
   C07K14/78
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2011-511363(P2011-511363)
(86)(22)【出願日】2010年4月13日
(86)【国際出願番号】JP2010056596
(87)【国際公開番号】WO2010125910
(87)【国際公開日】20101104
【審査請求日】2011年9月30日
【審判番号】不服2014-10409(P2014-10409/J1)
【審判請求日】2014年6月4日
(31)【優先権主張番号】特願2009-109171(P2009-109171)
(32)【優先日】2009年4月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006138
【氏名又は名称】株式会社明治
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100120905
【弁理士】
【氏名又は名称】深見 伸子
(72)【発明者】
【氏名】大原 浩樹
(72)【発明者】
【氏名】松本 均
(72)【発明者】
【氏名】羽多 正隆
(72)【発明者】
【氏名】寺内 晃一
(72)【発明者】
【氏名】西澤 英寿
【合議体】
【審判長】 田村 明照
【審判官】 ▲高▼ 美葉子
【審判官】 高堀 栄二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−220208(JP,A)
【文献】 特開2006−151847(JP,A)
【文献】 特開2005−314265(JP,A)
【文献】 国際公開第01/84943(WO,A1)
【文献】 特表2002−51734(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/059927(WO,A1)
【文献】 天野エンザイム株式会社「食品工業用酵素」パパインW−40,p.1−2
【文献】 朝倉富子,種実由来のプロテアーゼを用いた高齢者向け多機能食品の開発,浦上財団研究報告書(2009),Vol.17,p.1−6
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00−19/00
C12N 21/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚鱗由来のコラーゲン原料を酸処理する工程と、酸処理されたコラーゲンを、比活性が400〜5000U/gの精製パパイン、または、該精製パパインとニュ−トラーゼ、プロテアーゼP、およびプロテアーゼNからなる群から選択される1種または2種以上の中性プロテアーゼとの混合酵素によって30〜80℃で0.5〜4時間酵素処理する工程と、酵素処理液からコラーゲンペプチドを固液分離処理により精製する工程を含む、コラーゲンペプチド組成物の製造方法であって、
(a)当該組成物中のペプチドのN末端から2残基目のアミノ酸においてハイドロキシプロリンの占める割合が2モル%以上10モル%以下であり、かつN末端から3残基目のアミノ酸においてグリシンの占める割合が30モル%以上45モル%以下であること、および
(b)当該組成物の平均分子量が1000以上1500以下であること、
を特徴とする、上記コラーゲンペプチド組成物の製造方法。
【請求項2】
精製パパインのコラーゲン100gに対する酵素の総活性が400〜5000Uであることを特徴とする、請求項1に記載のコラーゲンペプチド組成物の製造方法。
【請求項3】
酵素処理が、pH5.5で行われる、請求項1または2に記載のコラーゲンペプチド組成物の製造方法。
【請求項4】
酸処理が、無機酸に0.5〜48時間浸漬することにより行われる、請求項1〜3のいずれか1項に記載のコラーゲンペプチド組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血中移行性の高いコラーゲンペプチド組成物及び当該コラーゲンペプチド組成物を含有する飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
コラーゲンは、真皮、靱帯、腱、骨、軟骨などを構成するタンパク質のひとつで、多細胞動物の細胞外基質(細胞外マトリクス)の主成分である。コラーゲンは皮膚、血管、内臓、骨組織などいたるところに存在し、体を構成するタンパク質の約30%を占めている。皮膚では真皮の70%がコラーゲンからできており、個々の筋肉を包む筋膜もコラーゲンからできている。
【0003】
近年、コラーゲンには骨粗鬆症の予防・改善に結びつく骨強化作用(特許文献1)、加齢に伴う生体組織の機能の低下を改善させる生体組織の新陳代謝促進作用(特許文献2)、皮膚代謝促進作用、皮膚賦活作用(特許文献3)、シワの予防・改善を目的とする皮膚の老化防止作用(特許文献4)などの生理作用や薬理作用が見出されるようになり、化粧品及び食品向けの原材料や医薬品向けの生体機能性材料として幅広く利用されている。
【0004】
コラーゲンを加熱変性させたゼラチンは、分子量が高いため、消化吸収の点から実際上利用されるのはゼラチンを加水分解し、低分子化したコラーゲンペプチドである。コラーゲンペプチドは、経口摂取をした場合、消化され、アミノ酸、ジペプチド又はトリペプチドなどの形で吸収されることがわかっている。しかしながら、コラーゲンペプチドが、上記のような生理作用や薬理作用を体内で十分に発揮させるためには大量摂取が必要である。また、コラーゲンペプチドを経口摂取した場合に乾燥肌改善作用を示すためのヒト1日当たりの有効摂取量は、魚鱗コラーゲンペプチドでは5〜10gであり、豚皮コラーゲンペプチドでは10g以上であることが報告されている(非特許文献1)。しかしながら、通常の食事に加えて特定のタンパク質だけをこのように長期間大量摂取することは難しく、また栄養学上好ましいものではない。
【0005】
そこで、コラーゲンペプチドを少ない摂取量でも有効にその効果を発揮させるために、その活性本体の研究が進められてきた。例えば、谷口らは、コラーゲン分解物(ペプチド混合物またはペプチド体)と、同じ比率のアミノ酸混合物についてそれぞれラットにおける皮膚コラーゲンの合成促進効果を比較検討した結果、アミノ酸混合物では効果が見られず、コラーゲン分解物にのみ効果が見られたことを報告した(非特許文献2)。コラーゲン分解物は、消化吸収される過程で、アミノ酸、ジペプチドまたはトリペプチドに分解されることが知られており、谷口の報告から、アミノ酸ではなく、ジペプチドまたはトリペプチドに効果があることが示唆された。また、コラーゲンペプチド由来のハイドロキシプロリンを含むジペプチドの一つであるPro-Hypは、皮膚線維芽細胞に作用させた場合にその細胞増殖を活性化し、さらにヒアルロン酸合成酵素の転写を促進することによってヒアルロン酸産生を促進することが報告されている(非特許文献3)。また、アミノ酸配列がGly-X-Yのトリペプチドを含むコラーゲン分解物はコラーゲン合成促進活性を有することが報告されている(特許文献5及び6)。
【0006】
上記のように、特定の組成のジペプチドまたはトリペプチドが、コラーゲン分解物(コラーゲンペプチド)の活性本体であることがわかってきた。しかしながら、このような活性本体となるジペプチドまたはトリペプチドを血中に効率的に移行させるのに有効なコラーゲンペプチドの組成に関する研究は少ない。例えば、特許文献7には、特定の分子量分布を有するコラーゲンペプチド組成物が、皮膚用の化粧品や医薬品に配合した場合に皮膚への優れた使用感と浸透性を発揮することが記載されているが、経口摂取した場合の血中移行性の評価については何ら検討されていない。これに対し、本発明者らは、特定の分子量分布を有し、かつそのペプチドのN末端アミノ酸においてグリシンの占める割合が特定範囲となるコラーゲンペプチド組成物が優れた血中移行性を有することを報告している(特許文献8)。しかしながら、このコラーゲンペプチド組成物であっても大量の摂取が必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−255588号公報
【特許文献2】特開平7-278012号公報
【特許文献3】特開平9-67262号公報
【特許文献4】特開2005-314265号公報
【特許文献5】特開2001-131084号公報
【特許文献6】特開2003-137807号公報
【特許文献7】特開2006-151847号公報
【特許文献8】WO2008-059927号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】日本食品科学工学会誌, 2009年3月, 第56巻, 第3号、p.144〜152
【非特許文献2】日本獣医学会学術集会講演要旨集,2001年9月7日,第132巻, p126, PS-5014
【非特許文献3】ジャーナル・オブ・ダーマトロジカル・サイエンス(Journal of Dermatological Science), 2007年7月, 第47巻, p.102, 179
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ペプチドが血中へ移行するのは、小腸上皮のペプチドトランスポーターによるものと、タイトジャンクションを通過する2つの経路が考えられている。しかし、これらの経路を通過するペプチドは、ジペプチドと、トリペプチドがほとんどである。
【0010】
また、蛋白質であるコラーゲンペプチドは胃や腸などの消化管内で、胃酸やプロテアーゼなどの酵素で分解される。そのため、ジペプチドまたはトリペプチドをそのまま経口摂取しても、酵素等で分解されるため好ましくない。従って、本発明の課題は、コラーゲンの活性本体となるジペプチドまたはトリペプチドを生成するために最適で、かつ血中に移行させるのに有効なコラーゲンペプチドを見出し、必要な摂取量を減少させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは上記課題を解決すべく、コラーゲンペプチドを経口摂取した後に消化管を経て、活性型のジペプチドまたはトリペプチドを血中に移行させるのに有効なコラーゲンペプチドについて鋭意研究を重ねた結果、N末端から2残基目にハイドロキシプロリン(Hyp)、3残基目にグリシン(Gly)が存在するX-Hyp-Gly-Yのペプチド(但し、Xは任意のアミノ酸1残基を示し、Yは任意のアミノ酸1残基または2以上の残基を示す)が好適であることを見出した。
【0012】
本発明者らは、さらに上記知見をもとに、N末端から2残基目にハイドロキシプロリン(Hyp)、3残基目にグリシン(Gly)が存在するペプチド(X-Hyp-Gly-Y)を効率的に摂取するためのコラーゲンペプチド組成物を検討したところ、該組成物中のペプチドのN末端から2残基目のアミノ酸においてハイドロキシプロリンが占める割合、N末端から3残基目のアミノ酸においてグリシンが占める割合、および該組成物の平均分子量を所定の範囲とすることが有効であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
すなわち、本発明は以下の発明を包含する。
【0014】
(1) コラーゲンまたはゼラチンをプロテアーゼにより分解して得られるコラーゲンペプチド組成物であって、
(a)当該組成物中のペプチドのN末端から2残基目のアミノ酸においてハイドロキシプロリンの占める割合が2モル%以上20モル%以下であり、かつN末端から3残基目のアミノ酸においてグリシンの占める割合が20モル%以上50モル%以下であること、および
(b)平均分子量が500以上2000以下であること、
を特徴とする、上記コラーゲンペプチド組成物。
【0015】
(2) プロテアーゼが、パパイン単独、または、パパインと1種又は2種以上の他のプロテアーゼとの混合酵素であることを特徴とする、(1) に記載のコラーゲンペプチド組成物。
【0016】
(3) コラーゲンまたはゼラチンが魚鱗由来または豚皮由来のものである、(1)または(2)に記載のコラーゲンペプチド組成物。
【0017】
(4) コラーゲンまたはゼラチンが酸処理したものであることを特徴とする、(1)〜(3)のいずれかに記載のコラーゲンペプチド組成物。
【0018】
(5) (1)〜(4)のいずれかに記載のコラーゲンペプチド組成物を含有する飲食品。
【0019】
本願は、2009年4月28日に出願された日本国特許出願2009-109171号の優先権を主張するものであり、該特許出願の明細書に記載される内容を包含する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、従来のコラーゲンペプチドに比べて活性本体となるジまたはトリペプチドをより効率的に血中に移行させることのできるコラーゲンペプチド組成物が提供される。その血中移行性は従来品の魚鱗コラーゲンペプチドの1.7〜1.9倍であり、有効摂取量は従来品の約半分に減らすことが可能である。従って、本発明のコラーゲンペプチド組成物を飲食品に配合し、これを経口摂取することにより、従来品と比べて少量で効率的にその生理作用や薬理作用を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明のコラーゲンペプチド組成物1の分子量分布を示す。
図2】本発明のコラーゲンペプチド組成物2の分子量分布を示す。
図3】本発明のコラーゲンペプチド組成物3の分子量分布を示す。
図4】本発明のコラーゲンペプチド組成物4の分子量分布を示す。
図5】本発明のコラーゲンペプチド組成物5の分子量分布を示す。
図6】本発明のコラーゲンペプチド組成物6の分子量分布を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、本発明について詳細に述べる。
【0023】
1.コラーゲンペプチド組成物
本発明のコラーゲンペプチド組成物は、コラーゲンまたはゼラチンをプロテアーゼにより分解して得られるコラーゲンペプチド組成物であって、(a)当該組成物中のペプチドのN末端から2残基目のアミノ酸においてハイドロキシプロリンの占める割合が2モル%以上20モル%以下であり、かつN末端から3残基目のアミノ酸においてグリシンの占める割合が20モル%以上50モル%以下であること、および(b)平均分子量が500以上2000以下であることを特徴とする。
【0024】
ここで、「N末端から2残基目のアミノ酸においてハイドロキシプロリンが占める割合」とは、コラーゲンペプチド組成物中の各ペプチドのN末端から数えて2残基目のアミノ酸を分析し、検出されたN末端から数えて2残基目のアミノ酸の全モル数に対してハイドロキシプロリンのモル数が占める割合をモル百分率で示したものをいう。また、「N末端から3残基目のアミノ酸においてグリシンが占める割合」とは、コラーゲンペプチド組成物中の各ペプチドのN末端から数えて3残基目のアミノ酸を分析し、検出されたN末端から数えて3残基目のアミノ酸の全モル数に対してグリシンのモル数が占める割合をモル百分率で示したものをいう。上記アミノ酸の分析は、エドマン法を自動化したアミノ酸配列分析装置を用いて行えばよい。
【0025】
上記組成物中のペプチドのN末端から2残基目のアミノ酸においてハイドロキシプロリンの占める割合は、2モル%以上20モル%以下、好ましくは2モル%以上10モル%以下である。また、上記組組成物中のペプチドのN末端から3残基目のアミノ酸においてグリシンの占める割合は20モル%以上50モル%以下、好ましくは30モル%以上45モル%以下である。
【0026】
本発明のコラーゲンペプチド組成物の平均分子量は、500以上2000以下、好ましくは1000以上1500以下である。分子量が2000を越える場合には消化に時間がかかり、消化管内のエキソ型酵素への暴露時間が長くなり、アミノ酸の生成量が増加してコラーゲンペプチドの生理活性が消失してしまう。また、500未満であるとエンド型酵素がN末端から2残基目にエキソ型酵素として働いてコラーゲンペプチド組成物はアミノ酸にまで分解されてしまうため、アミノ酸の生成量が増加してコラーゲンペプチドの生理活性が消失してしまう。平均分子量の測定は、ゲル濾過高速液体クロマトグラフィーを用いて行えばよい。平均分子量は、重量平均分子量として算出する。
【0027】
本発明のコラーゲンペプチド組成物は、ジペプチドまたはトリペプチドとしての血中移行性(吸収性)が高いことを特徴とする。ここで、「ジペプチド」としては、Pro−Hyp、Ile-Hyp、Leu−Hyp、Phe−Hypなどがあり、「トリペプチド」としては、Pro−Hyp−Gly、Ala−Hyp−Gly、Ser−Hyp−Glyなどが挙げられる。
【0028】
本発明に用いる「コラーゲンペプチド組成物」(以下、本明細書において単に「コラーゲンペプチド」と記載する場合もある)は、コラーゲン又はゼラチンを加水分解して得られるペプチドの集合物(混合物)である。
【0029】
本発明に用いる「コラーゲンペプチド組成物」の原料となるコラーゲンまたはゼラチンは、牛、豚などの哺乳動物由来、鶏などの鳥類由来、または鮫などの魚類由来のいずれでもよく、限定はされない。
【0030】
コラーゲンは、前記哺乳動物の骨、皮部分や魚類の骨、皮、鱗部分などから得ることができ、骨などの各種材料に、脱脂処理、抽出処理など従来公知の処理を施せばよい。魚鱗の場合は魚鱗に付着した汚れや夾雑物を除去するために、事前に数回水洗などの洗浄工程を行って汚れや夾雑物を除去し、脱脂処理を行って油脂分を除去し、脱灰処理でリンやカルシウムなどの無機物を除去しておくことが好ましい。
【0031】
また、コラーゲンを原料とする場合、一度ゼラチン化することが好ましい。ゼラチンは、コラーゲンを熱変性し、可溶化したものであり、ゼラチン化は、コラーゲン原料を酸またはアルカリ、好ましくは酸で前処理した後、加熱抽出することによって行う。酸処理は、例えばコラーゲン原料を塩酸や硫酸などの無機酸に0.5〜48時間浸漬することによって行い、好ましくは1〜4時間浸漬することによって行う。また、前処理の終わった原料は水洗して過剰な酸を除去したのち、40〜80℃の温水で1回目の抽出を行い、続いて1回目の抽出より高い温度で2回目以降の抽出を行うのが一般的である。
【0032】
2.コラーゲンペプチド組成物の製造
本発明に用いる「コラーゲンペプチド組成物」の製造は、例えば以下のようにして行う。コラーゲンまたは上記の処理にてコラーゲンから得られたゼラチンに、プロテアーゼ処理を行い、コラーゲンの分子をペプチド段階まで分解させる。プロテアーゼとしては、N末端から2残基目のアミノ酸においてハイドロキシプロリンが占める割合、N末端から3残基目のアミノ酸においてグリシンが占める割合とコラーゲンペプチド組成物の平均分子量がそれぞれ上記の所定の範囲となるために、パパイン単独、または、パパインと1種又は2種以上の他のプロテアーゼとの混合酵素を用いる。但し、パパインは、パパイヤ(Carica Papaya L)の果実の乳汁から抽出されるプロテアーゼであって、酵素活性の高い精製パパインを用いることが好ましい。本発明において用いる「精製パパイン」とは、比活性が、400〜5000U/g、好ましくは、700〜1000U/gのものをいう。このような精製パパインとして、具体的には、市販品である精製パパイン(商品名:三菱化学フーズ社製)、パパイン30000ES(商品名:ジェネンコア社製)などが挙げられる。
【0033】
また、他のプロテアーゼとしては、中性プロテアーゼまたはアルカリ性プロテアーゼを用いることができるが、中性プロテアーゼが好ましく、アスペルギルス(Aspergillus)属菌由来またはバチルス(Bacillus)属菌由来またはリゾプス(Rhizopus)属菌由来の中性プロテアーゼがより好ましい。具体的には、ニュートラーゼ(商品名:ノボザイムズジャパン社製)、プロテアーゼP「アマノ」3G(商品名:天野エンザイム社製)、プロテアーゼA「アマノ」G(商品名:天野エンザイム社製)、プロテアーゼN「アマノ」G(商品名:天野エンザイム社製)、プロテアーゼS「アマノ」G(商品名:天野エンザイム社製)、スミチームFP(商品名:新日本化学工業社製)、スミチームLP(商品名:新日本化学工業社製)、プロチンPC10F(商品名:大和化成社製)、デナチームAP(商品名:ナガゼケムテックス社製)、ペプチダーゼR(商品名:天野エンザイム社製)などが挙げられる。
【0034】
酵素処理は、例えば、精製パパインを使用する場合には、コラーゲンまたはゼラチン100gに対する酵素の総活性が、400〜5000U、好ましくは400〜2000Uになるように酵素を添加して行う。ここで、酵素の総活性(U)とは酵素比活性(U/g)と使用した酵素重量(g)の積をいう。また、酵素処理は、例えば、30〜80℃で、0.5〜24時間、好ましくは0.5〜15時間、より好ましくは0.5〜4時間行う。上記酵素の活性単位Uはカゼインを基質とした測定法(第7版食品添加物公定書、p.378-379、1999)にて求めることができる。前記処理温度、処理時間はあくまで例示であって、目的の平均分子量とN末端から2番目および3番目における特定のアミノ酸の占める割合が所定の範囲のものであるコラーゲンペプチド組成物を得るために、酵素の機能が十分に発揮されるように適宜調整すればよい。
【0035】
上記の酵素処理後、80〜100℃で加熱処理して酵素を失活させる。過剰に高温処理すると風味が悪くなってしまう恐れがあるので好ましくない。
【0036】
上記の酵素処理を終えた段階では、コラーゲンペプチド組成物は酵素処理液中に溶解または分散した状態である。コラーゲンペプチド組成物を酵素溶液から精製するには通常採用される各種の精製手段で行えばよい。精製手段としては、特に限定されないが、例えば、活性炭を添加することによって、非常に簡便に色調、風味の改良及び不純物除去を行うことができる。またろ過や遠心分離などの従来公知の固液分離処理を施すことによっても、不純物の除去が可能である。前記処理を施したコラーゲンペプチド溶液は、噴霧乾燥やドラムドライヤーなどの方法で乾燥を行い、粉末化することができる。
【0037】
3.コラーゲンペプチド組成物を含有する飲食品
上記コラーゲンペプチド組成物は、ジペプチドまたはトリペプチドとしての血中移行性が良いことから、日常摂取する飲食品として提供できる。コラーゲンペプチド組成物の飲食品における態様には、コラーゲンペプチド組成物が飲食品そのものである場合と、飲食品を製造する際の原料あるいは中間製品である場合とが含まれる。
【0038】
本発明において、飲食品とは、健康食品、機能性食品、特定保健用食品、病者用食品、介護用食品を含む意味で用いられる。さらに、本発明の飲食品をヒト以外の哺乳動物、鳥類、魚類を対象として使用される場合には、飼料を含む意味で用いることができる。
【0039】
上記コラーゲンペプチド組成物を配合する飲食品の形態は固形状であっても液状であってもよい。飲食品の種類としては、具体的には、清涼飲料、炭酸飲料、栄養飲料、果実飲料、乳飲料など飲料(これらの飲料の濃縮原液及び調整用粉末を含む);アイスクリーム、アイスシャーベット、かき氷等の冷菓;そば、うどん、はるさめ、ぎょうざの皮、しゅうまいの皮、中華麺、即席麺等の麺類;チューインガム、キャンディー、グミ、キャラメル、チョコレート、錠菓、スナック菓子、ビスケット等の焼き菓子、ゼリー、ジャム、クリーム等の菓子類;かまぼこ、ハンバーグ、ハム、ソーセージ等の水産・畜産加工食品;加工乳、発酵乳、ヨーグルト、バター、チーズ等の乳製品;サラダ油、てんぷら油、マーガリン、マヨネーズ、ショートニング、ホイップクリーム、ドレッシング等の油脂及び油脂加工食品;ソース、たれ等の調味料;スープ、シチュー、カレー、パン、ジャム、サラダ、惣菜、漬物などが挙げられるが、正常人の飲食品以外に、介護用食品、病人用の流動食も含み、これらに限定はされない。
【0040】
本発明の飲食品には、上記のコラーゲンペプチド組成物以外の他の成分を配合することもできる。例えば、酸味料、糖類、アミノ酸類、各種生理活性物質、ビタミン類、食物繊維、多糖類、アルコール類、油脂類等が挙げられる。
【0041】
酸味料としては、例えば、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、酢酸等の有機酸が挙げられる。糖類としては特に種類を問わず、例えばショ糖、麦芽糖、果糖、ブドウ糖、転化糖、粉末水飴類、デキストリン、オリゴ糖などが挙げられる。また、アスパルテーム、ステビア、スクラロース、アセスルファムカリウムといった高甘味度甘味料も使用できる。アミノ酸類は、バリン、ロイシン、イソロイシン等の分岐鎖アミノ酸、システイン、メチオニン等の含硫アミノ酸、その他各種アミノ酸が挙げられる。
【0042】
各種生理活性物質としては、イソフラボン、アントシアニン、ルチン、ヘスペリジン、ナリンジン、クロロゲン酸、没食子酸、エラグ酸、タンニン、カテキン等のポリフェノール類、サポニン、リコペン、セサミン、セラミド、植物ステロール、γ−アミノ酪酸、コエンザイムQ10、ラクトフェリン、DHA、βカロチンなどが例示できる。ビタミン類の種類も特に制限されず、例えばアスコルビン酸(ビタミンC)、リボフラビン、パントテン酸、葉酸、ビタミンB群、その他ビタミンA,D,E,K,Pなどの各種ビタミン類がある。
【0043】
また、ペプチドよりも分子量が大きい、水溶性コラーゲンやゼラチンなどを組み合わせることもできる。複数のコラーゲン成分を組み合わせることで、上記のコラーゲンペプチド組成物だけでは得られない機能や特性を発揮できることが期待される。また、特に、ヒアルロン酸を含む鶏冠抽出物、牛、豚、又は人の胎盤抽出物、牛又は豚のエラスチン及びその加水分解物(酸、アルカリ、酵素等)又はそれらの水溶性エラスチン誘導体、ケラチン及びその加水分解物又はそれらの誘導体、シルク蛋白及びその加水分解物又はそれらの誘導体、豚又は牛血球蛋白加水分解物(グロビンペプチド)、牛又は豚へモグロビン分解物(ヘミン、ヘマチン、ヘム、プロトヘム、ヘム鉄等)、牛乳、カゼイン及びその加水分解物、又はそれらの誘導体、脱脂粉乳及びその加水分解物又はそれらの誘導体、ラクトフェリン及びその加水分解物、鶏卵成分、魚肉分解物、核酸関連物質(リボ核酸、デオキシリボ核酸)等を加えることも可能である。また、植物性のペプチド、例えば大豆ペプチドなども添加できる。
【0044】
さらに、賦形剤、結合剤、希釈剤、香料、緩衝剤、増粘剤、ゲル化剤、着色剤、安定剤、乳化剤、分散剤、懸濁化剤、防腐剤等も添加できる。
【0045】
本発明の飲食品におけるコラーゲンペプチド組成物の配合量は、その生理作用や薬理作用が発揮できる量であればよいが、対象飲食品の一般的な摂取量を考慮して、通常、成人1日当たりの摂取量が100〜10,000mg、好ましくは500〜6,000mg、より好ましくは1,000〜3,000mgとなる量とすればよい。例えば、固形状食品の場合には1〜90重量%、飲料等の液状食品の場合には0.1〜20重量%が好ましい。
【0046】
具体的に代表的な飲食品の配合例を以下に示すがこれらに限定はされない。
【0047】
果汁飲料:コラーゲンペプチド組成物0.5〜30重量部、果汁1〜50重量部、異性化液糖5〜20重量部、酸味料(クエン酸など)0.01〜1.0重量部、香料0.1〜1.0重量部、水30〜95重量部。
【0048】
フルーツゼリー・ゼリー飲料:コラーゲンペプチド組成物0.5〜20重量部、果汁1〜40重量部、グラニュー糖5〜20重量部、酸味料(クエン酸など)0.01〜1.0重量部、ゲル化剤(ゼラチンなど)0.5〜10.0重量部、香料0.1〜1.0重量部、水15〜95重量部。
【0049】
粉末食品:コラーゲンペプチド組成物0.5〜80重量部、マルトデキストリン5〜20重量部、増粘剤(ゼラチンなど)0.1〜5.0重量部、乳化剤(シュガーエステルなど)0.1〜5.0重量部、甘味料(アスパルテームなど)0.01〜1重量部。
【0050】
錠剤(タブレット)形態食品:コラーゲンペプチド組成物0.5〜80重量部、マルトデキストリン5〜20重量部、増粘剤(ゼラチンなど)0.1〜5.0重量部、乳化剤(シュガーエステルなど)0.1〜5.0重量部、甘味料(アスパルテームなど)0.01〜1重量部を配合した粉末を打錠。
【0051】
本発明の飲食品を経口摂取することにより、例えば、関節疾患(変形性関節症、慢性関節リウマチ)の治癒、骨粗鬆症の軽減、動脈硬化・高血圧の防止、傷口の治癒促進、皮膚疾患(湿疹、肌荒れ、アトピー性皮膚炎、色素沈着、床擦れ)の治癒皮膚の保湿性向上、皮膚老化(しわ、しみ、くすみ、たるみ、角質化など)の改善、髪老化(白髪、抜け毛、薄毛など)の防止、抗潰瘍効果、など多様な生理効果、薬理効果が発揮される。
【実施例】
【0052】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0053】
(実施例1)本発明のコラーゲンペプチド組成物の調製(1)
脱灰処理をしたテラピアの鱗を8倍量の水に投入し、硫酸を加えてpH2.0に調整し、3時間保持することによって酸処理を行い、その後、水洗して過剰な酸を除去した。酸処理後の鱗に温水を投入し、温度が40〜90℃の間で撹拌しながら段階的にゼラチン液を採取し、精製、殺菌、乾燥することによって、魚鱗ゼラチンを調製した。調製された魚鱗ゼラチン1.0kgを75℃の温水2.0kgに溶解した。
【0054】
得られたゼラチン溶液に、ゼラチン1kgに対して精製パパイン(商品名:三菱化学フーズ社製)(比活性:820U/g)20gを添加し、pHを5.5に調整して60℃にて2時間酵素反応を行った。反応終了後、溶液を85℃以上に10分間加熱して酵素を失活させ、微粉活性炭20gを添加し、ろ布ろ過、メンブレンフィルターを用いた精密ろ過を行った後、噴霧乾燥して粉末状のコラーゲンペプチド組成物1を得た。
【0055】
得られたコラーゲンペプチド組成物1の平均分子量は、下記の条件にてゲル濾過高速液体クロマトグラフィー(GF-HPLC)を行うことによって測定し、マルチステーションGPC-8020ソフトウェアVer4.0(東ソー社製)にてデータ処理した。分子量307から17800の分子量マーカー(グルタチオン:分子量 307, オキシトシン:分子量 1007, インシュリン チェイン B :分子量 3400, アプロチニン:分子量 6500, ミオグロビン:分子量17800)の保持時間から別途作成した検量線を用い、当該コラーゲンペプチド組成物の平均保持時間から平均分子量を算出した。
【0056】
(分析条件)
カラム:TSK-GEL 2500PWXL(東ソー社製、300×7.8mm)
溶離液:45%アセトニトリル(0.1%トリフルオロ酢酸含有)
流速:0.8ml/min
検出波長:214nm
本発明のコラーゲンペプチド組成物1の分子量分布を図1に示す。当該コラーゲンペプチド組成物1の平均分子量は1300であった。
【0057】
(実施例2)本発明のコラーゲンペプチド組成物の調製(2)
実施例1で得られたゼラチン溶液に、精製パパイン(商品名:三菱化学フーズ社製)と他のプロテアーゼ[ニュートラーゼ(商品名:ノボザイムズジャパン社製)、プロテアーゼP「アマノ」3G(商品名:天野エンザイム社製)、プロテアーゼN「アマノ」G(商品名:天野エンザイム社製)]の混合酵素を加え、下記表1に示す条件にて酵素反応、酵素失活、精製処理を行い、粉末状の本発明のコラーゲンペプチド組成物2、3、4を得た。
【表1】
【0058】
本発明のコラーゲンペプチド組成物2、3、4の分子量分布は図2、3、4に示す通りである。得られたコラーゲンペプチド組成物2、3、4の平均分子量は、実施例1と同様の方法で測定したところ、それぞれ1130、1120、1080であった。
【0059】
(実施例3)本発明のコラーゲンペプチド組成物の調製(3)
豚皮ゼラチン(ルスロ社製、豚皮由来)1.0kgを75℃の温水2.0kgに溶解した。得られたゼラチン溶液に、精製パパイン(商品名:三菱化学フーズ社製)または精製パパイン(同上)とニュートラーゼ(商品名:ノボザイムズジャパン社製)の混合酵素を加え、下記表2に示す条件にて酵素反応、酵素失活、精製処理を行い、粉末状の本発明のコラーゲンペプチド組成物5、6を得た。
【表2】
【0060】
本発明のコラーゲンペプチド組成物5、6の分子量分布はそれぞれ図5、6に示す通りである。得られたコラーゲンペプチド組成物5、6の平均分子量は、実施例1と同様の方法で測定したところ、それぞれ1431、1313であった。
【0061】
(試験例1)血中への移行性試験(1)
前記実施例で得られた本発明のコラーゲンペプチド組成物1〜6について血中移行性を調べた。比較品として市販のコラーゲンペプチド組成物A(イクオス HDL-50F、商品名:新田ゼラチン社製、魚鱗由来、平均分子量5000)およびコラーゲンペプチド組成物E(WO2008/059927の実施例1に記載のコラーゲンペプチド、魚鱗由来、平均分子量2000)を用いた。
【0062】
血中移行性試験は、Hartley系雄性モルモット7週齢を用いて行った。被験試料の投与量は3g/10mL/kg体重とし、蒸留水に溶解して経口投与した。モルモットは試験前日夕方より絶食し、投与前及び投与後0.5,1,2,6時間後にジエチルエーテル麻酔下で、頸静脈より経時的に採血した。採血した採血管は数回転倒混和し、約15分間氷中で放置した後、遠心分離(3000rpm、15min、4℃)をして血漿を得た。血漿300μLにエタノール900μLを加え、ボルテックスで15秒間攪拌し、遠心分離(12,000rpm、10min、4℃)し、上清を得た。各被験試料投与モルモットから採取した血漿は分析まで-80℃で凍結保存した。
【0063】
血漿中のハイドロキシプロリンを含むペプチド量は、血漿中の総ハイドロキシプロリン量と遊離のハイドロキシプロリン量の差とする。総ハイドロキシプロリン量を、佐藤ら(Sato K. et al., J. Agric. Food Chem. 1992, 40, 806-810)の方法に準じ、血漿サンプルを6N塩酸で加水分解後、フェニルイソチオシアネート(PITC)処理し、PITC誘導体とし、下記の条件でHPLCを行うことによって測定した。また、血漿中の遊離のハイドロキシプロリン量も除蛋白した血漿サンプルについて総ハイドロキシプロリンと同様にして測定した。
【0064】
(分析条件)
カラム:TSK80TsQA(東ソー社製、250×2.0mm)
溶離液:(A液) 50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH6)
(B液) アセトニトリル
溶出条件:B液 5-10% (0-8min)、B液 70% (8-11min)、B液 5% (11min)
流速:0.18mL/min
検出波長:254nm
各血漿サンプルについて算出したハイドロキシプロリンを含むペプチドの血中濃度‐時間曲線下面積AUC0-7量(hr・nmol/ml)の平均値±S.E.を下記表3に示す。
【表3】
【0065】
表3に示すように、AUCを比較すると本発明のコラーゲンペプチド組成物の血中移行性は市販のコラーゲンペプチド組成物Aの1.7〜1.9倍、また、コラーゲンペプチド組成物Eの1.6〜1.85倍と有意に増大した。
【0066】
(試験例2)血中への移行性試験(2)
前記実施例で得られた本発明のコラーゲンペプチド組成物1と2について血中移行性をを調べた。比較として市販のコラーゲンペプチド組成物B(HACP 、商品名:ゼライス社製、豚皮由来、平均分子量1500)を用いた。
【0067】
試験は、岩井らの報告(Agric.Food Chem.,2005,Vol.53,No.16,p6531-6536)に基づいて行った。ヒトボランティア6名に対して6日間以上のwash out期間をおき、被験者一人につき、上記のコラーゲンペプチド組成物の3種を被験試料とし、それぞれ単回摂取させるクロスオーバー試験とした。被験者は12時間の絶食後、摂取前採血を行い、各被験試料を摂取させた。被験試料の摂取量は一人につき5gとした。摂取0,0.5,1,2,4,7時間後にそれぞれ5mL採血し、試験例1と同様の方法により血漿中のハイドロキシプロリンを含むペプチド量を求めた。各血漿サンプルについて算出したハイドロキシプロリンを含むペプチドの血中濃度−時間曲線下面積AUC0-7量 (hr・nmol/ml:平均値±S.E.)を下記表4に示す。
【表4】
【0068】
表4に示すように、AUCを比較すると本発明のコラーゲンペプチド組成物1及び2の血中移行性は市販のコラーゲンペプチド組成物Bの1.46〜1.53倍と有意に増大した。
【0069】
(試験例3)コラーゲンペプチド組成物のN末端アミノ酸の決定
本発明のコラーゲンペプチド組成物1〜6、および比較品として下記のコラーゲンペプチド組成物A〜Fのアミノ酸の配列と特定のアミノ酸の量を調べた。
【0070】
コラーゲンペプチド組成物A:イクオス HDL-50F(商品名:新田ゼラチン社製、魚鱗由来、平均分子量5000)
コラーゲンペプチド組成物B:HACP (商品名:ゼライス社製、豚皮由来、平均分子量1500)
コラーゲンペプチド組成物C:ニッピペプタイドFCP (商品名:ニッピ社製、魚皮由来、平均分子量5000)
コラーゲンペプチド組成物D:ニッピペプタイドFCP-A(商品名:ニッピ社製、魚皮由来、平均分子量5000)
コラーゲンペプチド組成物E:WO2008/059927の実施例1(魚鱗由来、平均分子量2000)、
コラーゲンペプチド組成物F:マリンコラーゲンMS5(商品名:ラビジェ社製、魚鱗由来、平均分子量8000)
各コラーゲンペプチドに含まれるペプチドのアミノ酸配列の決定は、各ペプチドを水に溶解してPVDF膜へ滴下後、エドマン法を自動化したアミノ酸分析装置である、プロテインシークエンサー(PPSQ)(島津製作所社製)を用いて行った。組成物中のペプチドのN末端から2残基目のアミノ酸においてハイドロキシプロリンの占める割合とN末端から3残基目のアミノ酸においてグリシンの占める割合を下記表5に示す。
【表5】
【0071】
表5に示すように本発明のコラーゲン組成物1〜6のN末端から2残基目のアミノ酸においてハイドロキシプロリンの占める割合は、3.8〜8.7モル%であるのに対し、比較品のコラーゲンペプチド組成物A〜Fのそれは、0.5〜1.8モル%である。また、本発明のコラーゲン組成物1〜6のN末端から3残基目のアミノ酸においてグリシンの占める割合は、35.2〜43.9モル%であるのに対し、比較品のコラーゲンペプチド組成物A〜Fのそれは、1.3〜19.0モル%である。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、機能性食品やサプリメントなどの飲食品の製造分野において利用できる。
【0073】
本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願をそのまま参考として本明細書に組み入れるものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6