特許第5890238号(P5890238)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5890238直流単極電動機、及び、直流/交流変換システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5890238
(24)【登録日】2016年2月26日
(45)【発行日】2016年3月22日
(54)【発明の名称】直流単極電動機、及び、直流/交流変換システム
(51)【国際特許分類】
   H02K 23/40 20060101AFI20160308BHJP
   H02K 55/06 20060101ALI20160308BHJP
【FI】
   H02K23/40
   H02K55/06
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-93911(P2012-93911)
(22)【出願日】2012年4月17日
(65)【公開番号】特開2013-223353(P2013-223353A)
(43)【公開日】2013年10月28日
【審査請求日】2015年3月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000148357
【氏名又は名称】株式会社前川製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】玉田 紀治
(72)【発明者】
【氏名】川村 邦明
(72)【発明者】
【氏名】服部 敏朗
(72)【発明者】
【氏名】町田 明登
(72)【発明者】
【氏名】前田 良一
【審査官】 宮地 将斗
(56)【参考文献】
【文献】 実開平2−107278(JP,U)
【文献】 特開2010−136508(JP,A)
【文献】 米国特許第5144179(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 23/40
H02K 55/00−55/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の配線を介して供給された直流電力によって回転軸を駆動することにより、電気エネルギーを機械エネルギーに変換する直流単極電動機であって、
前記回転軸に大径に形成され、第2の配線が巻回された回転構造体と、
前記回転軸の周りに設けられ、該回転軸の回転駆動時に、前記第1の配線の先端に設けられたブラシと擦動することにより、前記第1の配線を前記第2の配線に電気的に接続するスリップリングと、
前記回転構造体に巻回された第2の配線に対して所定の磁界を印加するための超電導マグネットと
を備えたことを特徴とする直流単極電動機。
【請求項2】
前記第2の配線は、前記回転構造体の径方向外側表面における電流方向が揃うようにトロイド状に巻回されていることを特徴とする請求項1に記載の直流単極電動機。
【請求項3】
前記回転軸の内部には寒剤を導入するための冷却通路が前記回転軸の延在方向に沿って同心に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の直流単極電動機。
【請求項4】
超電導マグネットは前記回転軸に対して所定のオフセットを隔てて同軸配置されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の直流単極電動機。
【請求項5】
前記回転構造体の外側周縁部に対向するように配置され、前記超電導マグネットと共に磁気回路を形成する磁気ヨークを備えたことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の直流単極電動機。
【請求項6】
前記超電導マグネットはスプリットマグネットとして構成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の直流単極電動機。
【請求項7】
前記第1及び第2の配線は超電導線であることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の直流単極電動機。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の直流単極電動機と、
前記直流単極電動機の回転軸に磁気カップリングを介して接続されることにより、回転軸を回転させて交流電力を発生させる超電導同期電動機と
を備えたことを特徴とする直流/交流変換システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、整流子を用いることなく直流電力で回転軸を駆動可能な直流単極電動機、及び、該直流単極電動機を利用して同期発電機を駆動することにより直流電力を交流電力に変換して出力可能な直流/交流変換システムの技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、極低温度領域において電気抵抗値が略ゼロとなる超電導体を、様々な技術分野に適用することが試みられている。ここで、超電導体は直流電力に対しては電気抵抗値が略ゼロであるために優れた伝送効率を達成することができるが、交流電力を送電する際には損失が大きくなる。そのため、超電導体を利用した機器(以下、適宜「超電導機器」と称する)では、主に直流電力が用いられている。
【0003】
一方、このような超電導体を利用する場合においても、電力の供給源は、50Hz又は60Hzの周波数を有する商用の交流電力が用いられることが多い。そのため、商用の交流電力を常温で直流変換した後、電流リードを介して極低温状態にある超電導機器に送電することが一般的に行われている。しかしながら、このように常温側と極低温側とを接続する態様では、大型の電源設備や電流リードが不可欠であり、設備のサイズやコストが増加してしまう。特に電流リードは常温側から極低温側に膨大な熱侵入を招くため、大型の冷凍システムが要求され、超電導機器の普及を阻害する一因になっている。
【0004】
このように常温側と極低温側との間において、熱損失を防止しつつ、直接的に直流/交流変換を行うことは難易度が高く、実現は容易ではない。この問題を解決する一策として、直流電気エネルギーを一旦、機械エネルギーを経て、交流電気エネルギーに変換することが考えられる。
【0005】
電気エネルギーを機械エネルギーに変換するための装置の一種として、電動モータのような電動機が知られており、特に直流電力によって回転駆動する電動機として直流モータが知られている。一般的な直流モータは回転周期に応じて電流の向きを反転させるための整流子を備えている。しかしながら、整流子は電流を反転させる際に、瞬間的にブラシとの間に非接触状態が生じる。そのため、送電回路のように大電圧が印加される場合、非接触状態において生じる整流子とブラシとの間の隙間に放電(スパーク)が生じてしまうという問題がある。
【0006】
そこで、直流モータのなかでも整流子を有さない直流単極モータを利用することが考えられる。図6は従来の直流単極モータ1の構成を概略的に示す模式図である。図6(a)に示すように、直流単極モータ1は、直流電力を蓄えた電池2を動力源として備えており、該電池2から出力された直流電力は、一対の配線3の先端に設けられた導電性のブラシ4を回転軸5の周りに回転可能に取り付けられた銅円板6に擦動させるスリップリング7を介して、銅円板6の回転中心部と周縁部との間に供給されるようになっている。回転軸5には永久磁石であるラジアル磁石8が配置されており、該ラジアル磁石8は銅円板6と同心に回転可能に支持されている。
尚、ラジアル磁石8は、図6(b)のように回転軸5に対して固定されることにより、回転軸5と共に回転するように構成されていてもよい。
【0007】
この種の直流単極モータに関する技術として、例えば特許文献1及び2がある。特許文献1及び2では、上述したように整流器を用いることなく、直流電力で動作可能な電動機として直流単極モータを提案している。特に、特許文献1では、永久磁石を用いた2つの直流単極モータを導電体で連結する構成を基本ユニットとしつつ、この基本ユニットを複数連結することにより、大出力にも対応可能とした例が開示されている。特許文献2では、特許文献1とは別の構成からなる直流単極モータであるが、各種構成要素(例えば、ヨーク、電気子コア、界磁磁石など)の配置レイアウトパターンを工夫することにより、効率改善を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−5465号公報
【特許文献2】特開2003−319692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図6に示す単極直流モータ1は構造が簡単だが、電池2から供給された直流電流は、電気抵抗値の小さい銅からなる銅円板6の回転中心部と周縁部との間の比較的短い距離を伝達するのみであるため、電圧降下が非常に小さい。そのため、低電圧・大電流には対応可能であるものの、高電圧への対応が不能であり、出力を増大させることが難しいという問題点がある。
【0010】
特許文献1(特に特許文献1の図3を参照)では、低電圧・大電流対応可能な直流単極モータを、軸を介して複数連結することにより、高電圧(高出力化)への対応を図っている。しかしながら、このように複数の直流単極モータを複数連結した構成は、部品填数が非常に多くなり、構造の複雑化やコスト増といった問題が生じ、実現は容易ではない。
【0011】
特許文献2では、界磁磁石として永久磁石が用いられており、直流単極モータを組み立てる際に、界磁磁石間に生じる磁気反発力の影響を受けてしまう。特に効率のよい直流単極モータには強力な永久磁石が必要となるため、磁気反発力はより一層大きなものとなり、組立は容易ではない。
【0012】
本発明は上記問題点に鑑みなされたものであり、簡易な構成で高出力化が可能であり、且つ、組立性にも優れた構造を有する直流単極電動機、及び、該直流単極電動機を利用することにより極低温環境下でも良好に動作可能な直流/交流変換システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る直流単極電動機は上記課題を解決するために、第1の配線を介して供給された直流電力によって回転軸を駆動することにより、電気エネルギーを機械エネルギーに変換する直流単極電動機であって、前記回転軸に大径に形成され、第2の配線が巻回された回転構造体と、前記回転軸の周りに設けられ、該回転軸の回転駆動時に、前記第1の配線の先端に設けられたブラシと擦動することにより、前記第1の配線を前記第2の配線に電気的に接続するスリップリングと、前記回転構造体に巻回された第2の配線に対して所定の磁界を印加するための超電導マグネットとを備えたことを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、回転構造体に直流電流が流れる第2の配線を巻回すると共に、該第2の配線に対して超電導マグネットからの磁力線が直交するように配置することにより、ローレンツ力を作用させて、直流単極電動機を回転駆動できる。当該電動機の出力は回転構造体に対する第2の配線の巻数に依存するため、当該巻数を調整することで、周辺構成の複雑化を伴うことなく、簡易な構成で高出力化にも対応することができる。また、磁場の発生源として超電導マグネットを使用することにより、通常のマグネットに比べて強力な磁場を発生させることができ、良好な出力効率を有する直流単極電動機を提供することができる。超電導マグネットは極低温状態に維持する必要があるが、当該電動機は整流子を使用していないため、このような極低温状態下においても良好に動作することができる。また、磁場の発生源として永久磁石を用いたときのように磁気反発力によって組み立てが困難になることもない。
【0015】
前記第2の配線は、前記回転構造体の径方向外側表面における電流方向が揃うようにトロイド状に巻回されていてもよい。直流単極電動機の動力源であるローレンツ力は、第2の配線の巻回数に依存する。この態様では、回転構造体の径方向外側表面における電流方向が揃うようにトロイド状に巻回することによって、少ない占有容積において超電導マグネットによる磁力線が実質的に多くの本数の第2の配線を横切るように配置することができる。その結果、より大きなローレンツ力を得ることができ、高出力化にも対応可能な直流単極電動機を実現することができる。
【0016】
前記回転軸の内部には寒剤を導入するための冷却通路が前記回転軸の延在方向に沿って同心に形成されていてもよい。このように超電導単極電動機の系全体の中心に対応する回転軸の内部に冷却通路を形成し、寒剤を導入することによって、系全体を簡易な構成で且つ効率的に冷却することができる。
【0017】
超電導マグネットは前記回転軸に対して所定のオフセットを隔てて同軸配置されていてもよい。回転構造体に巻回された第2の配線を横切る磁力線が適切な本数になるように超電導マグネットを配置することによって、効率よく電気エネルギーを機械エネルギーに変換することができる。また上述したように、永久磁石のように、組立時に磁気反発力を考慮する必要が無いので、オフセットを精度よく設定することもできる。
【0018】
前記回転構造体の外側周縁部に対向するように配置され、前記超電導マグネットと共に磁気回路を形成する磁気ヨークを備えてもよい。この場合、磁気ヨークによって、超電導マグネットからの磁力線が回転構造体に巻回された第2の配線に直交するように、磁力線を誘導することができる。その結果、より効率のよい直流単極電動機を実現できる。
【0019】
前記超電導マグネットはスプリットマグネットとして構成されていてもよい。この場合、超電導マグネットとしてスプリットマグネットを用いることにより、電動機内の省スペース化を図ることにより装置の大型化を防止すると共に、省熱容量化を図ることにより効率的な冷却が可能となる。
【0020】
前記第1及び第2の配線は超電導線であってもよい。これによれば、第1及び第2の配線に流れる直流電流の減衰を防止又は抑制することで、直流単極電動機の動力源となるローレンツ力に直接的に影響を与える、回転構造体に巻回された第2の配線を流れる直流電流を良好に維持することができる。そのため、より効率のよい直流単極電動機を実現できる。この場合、超電導線である第1及び第2の配線は極低温状態に維持する必要があるが、当該電動機は整流子を使用していないため、このような極低温状態下においても良好に動作することができる。
【0021】
本発明に係る直流/交流変換システムは上記課題を解決するために、上述の直流単極電動機(上記各種態様を含む)と、前記超電導単極電動機の回転軸に磁気カップリングを介して接続されることにより、回転軸を回転させて交流電力を発生させる超電導同期電動機とを備えたことを特徴とする。
【0022】
直流単極電動機の回転軸を磁気カップリングを介して超電導同期発電機に接続することにより、超電導同期発電機にて交流電力を発電して出力することができる。このようなシステムによれば、極低温で動作可能な直流電動機が用いられているので、電流リードのような多くの熱侵入を伴うデバイスを用いることなく、直流電気エネルギーを一旦機械エネルギーに変換した後、機械エネルギーを交流発電機で交流電気エネルギーに変換することができる。
【0023】
特に、直流単極電動機と同期発電機のそれぞれの回転軸を磁気カップリングを介して接続することにより、機械エネルギーの伝達を可能にしつつ、互いの熱侵入をゼロに維持することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る直流単極電動機によれば、回転構造体に直流電流が流れる第2の配線を巻回すると共に、該第2の配線に対して超電導マグネットからの磁力線が直交するように配置することにより、ローレンツ力を作用させて、直流単極電動機を回転駆動できる。当該電動機の出力は回転構造体に対する第2の配線の巻数に依存するため、当該巻数を調整することで、周辺構成の複雑化を伴うことなく、簡易な構成で高出力化にも対応することができる。また、磁場の発生源として超電導マグネットを使用することにより、通常のマグネットに比べて強力な磁場を発生させることができ、良好な出力効率を有する直流単極電動機を提供することができる。超電導マグネットは極低温状態に維持する必要があるが、当該電動機は整流子を使用していないため、このような極低温状態下においても良好に動作することができる。また、磁場の発生源として永久磁石を用いたときのように磁気反発力によって組み立てが困難になることもない。
【0025】
本発明に係る直流/交流変換システムによれば、電流リードのような多くの熱侵入を伴うデバイスを用いることなく、直流電気エネルギーを一旦機械エネルギーに変換した後、機械エネルギーを交流発電機で交流電気エネルギーに変換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】第1実施形態に係る直流単極電動機の構成を透過的に示す側面図である。
図2図1において回転構造体に巻回された第2の配線の巻線パターンの一例を示したものである。
図3】回転構造体に巻回された第2の配線を拡大して示す断面図である。
図4】第2実施形態に係る直流単極電動機の構成を透過的に示す側面図である。
図5】直流/交流変換システムの全体構成を模式的に示したものである。
図6】従来の単極電動機の構成を概略的に示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0028】
(直流単極電動機)
図1は第1実施形態に係る直流単極電動機10(以下、適宜「電動機10」と称する)の構成を透過的に示す側面図である。電動機10は固定設置されたベース9に立設された支柱12に回転可能に支持された回転軸13を有している。該回転軸13には部分的に大径になるように形成された回転構造体14が設けられており、回転軸13と一体的に形成されている。回転構造体14には、後述するように第2の配線15が巻回されているが、これに対して所定の磁界を印加するための超電導マグネット16が回転軸13を囲むように設けられている。そして、回転構造体14及び超電導マグネット16を外側から囲むように磁気ヨーク17が設けられている。
【0029】
電動機10の動作時には、回転軸13及び回転構造体14はいわゆる回転子として機能し、磁気ヨーク17はベース11に固定されているため、いわゆる固定子として機能する。尚、超電導マグネット16は本実施例では固定子の一部として、回転軸13から所定のオフセットを隔てて固定配置されているが、回転子の一部として回転軸13と共に回転するように固定配置されていてもよい。
【0030】
本実施形態では特に、磁気エネルギーの供給源として永久磁石ではなく、超電導マグネット16を使用している。仮に永久磁石を使用した場合、永久磁石が有する反発力に対向しながら部材を組み立てる必要がある。特に、電動機10の容量を大きくするためには強力な磁場が必要となり、その組立性が困難となってしまう。その点、超電導マグネット16を使用すると、その通電状態に応じて磁場のON/OFFが可能となるので、このような組立時の困難性を解消することができる。
【0031】
図1の左側は直流電力が供給される入力側を示しており、超電導線である一対の第1の配線11a及び11bによって、不図示の直流電力源(超電導送電ケーブルなど)から直流電力を導入している。一対の第1の配線11a及び11bは、回転軸11のうち回転構造体14に比べて入力側に設けられたスリップリング18を介して、回転構造体14に巻回された第2の配線15に対して電気的に接続されている。
【0032】
スリップリング18は回転軸13の一部を周方向に沿って囲むように、擦動性に優れた導電性材料(例えば、銅や銀など)で形成されている。一対の第1の配線11a及び11bのそれぞれの端部には耐摩耗性に優れた導電性材料(例えば、カーボンなど)によってブラシ部19a及び19bが設けられている。スリップリング18は電動機10の動作時には回転軸13や回転構造体14と共に回転するが、スリップリング18にブラシ部19が当接しながら擦動することで、静止側にある一対の第1の配線11a及び11bとの間での電気的な接続を維持することができるようになっている。
【0033】
回転軸13は内部に寒剤を導入するための冷却通路20が形成された中空構造(円筒形状)を有しており、外部に用意された冷凍機等(図5を参照)から寒剤を供給することによって、回転軸13の周囲に配置された冷却対象物(第1の配線11、第2の配線15、超電導マグネット16など)を冷却できるようになっている。寒剤としては液体窒素や液体ヘリウムがあるが、液体に限られず気体であってもよい。また、より良好な冷却性能を得るために、回転軸13の内部に設けられた冷却通路20だけでなく、寒剤である液体又は気体を、電動機10の内部及び周辺を満たすように充填させてもよい。回転構造体14に巻回された第2の配線15や超電導マグネット16を冷却する際には、これらの冷却対象物の周囲を寒剤が充填されたケース等で囲み、当該ケース内に寒剤をポンプを循環させてもよい。この際、ケースの内外を真空断熱すると、より好ましい。
【0034】
図2図1において回転構造体14に巻回された第2の配線15の巻線パターンの一例を示したものである。図2(a)は斜視図であり、図2(b)は軸方向側から見た正面図である。
【0035】
この例では、第2の配線15は、回転軸13の軸方向から見たときに径方向に延在するようにトロイド状に巻回されている。回転軸13と回転構造体14との境界付近には、第2の配線14を誘導するために回転構造体14の内部を軸方向に沿って貫通するように形成された通路22の出入口が形成されている。該通路22は、第2の配線15の回転構造体14への巻回数に応じた数だけ径方向に沿って複数設けられている(好ましくは、等間隔で配列されているとよい)。
【0036】
第2の配線15は一本の超電導線からなっており、このようにトロイド状に回転構造体に巻回することによって、大きな長さを有する第2の配線15をコンパクトな構造で収納することができるようになっている。特に、第2の配線15に電流を印加した場合に、回転構造体14の内側及び外側におけるそれぞれの電流の向きが揃うように巻回されている。当該電動機10の出力は回転構造体14に対する第2の配線15の巻数に依存するため、当該巻数を調整することで、周辺構成の複雑化を伴うことなく、簡易な構成で高出力化にも対応することができるようになっている。
【0037】
超電導マグネット16によって発生される磁力線は回転軸13、回転構造体14及び磁気ヨーク17からなる磁気回路によって、図1に矢印a、bで示す分布を形成する。この例では、回転構造体14も磁気ヨーク17と同様に磁性材料から形成されており、回転軸13に対応する中心側から磁気ヨーク17が配置された外側に向かって磁力線分布が形成されている。その結果、磁力線は回転構造体14に巻回された第2の配線15の各々と直交し、駆動力が発生する。
【0038】
ここで発生する駆動力の大きさFは、磁気回路によって印加される磁場の強さをB、第2の配線15のコイルターン数をN、第2の配線15に流れる電流値をIとすると、次式
F=B×N×I (1)
で求められる。そして、電動機10の出力Pは、回転構造体14の半径をr、回転数をωとすると、次式
P=r×F×ω (2)
で求められる。
【0039】
このように第1実施形態に係る電動機10によれば、回転構造体14に直流電流が流れる第2の配線15を巻回すると共に、該第2の配線15に対して超電導マグネット16からの磁場を直交させることにより、ローレンツ力を生じさせ、直流単極電動機10を回転駆動する。特に、磁場の発生源として超電導マグネット16を使用することにより、通常のマグネットに比べて強力な磁場を発生させることができ、良好な出力効率を有する直流単極電動機10を提供することができる。また、磁場の発生源として永久磁石を用いたときのように磁気反発力によって組み立てが困難になることもない。
【0040】
図3は回転構造体14に巻回された第2の配線15を拡大して示す断面図である。この例では第2の配線15はテープ状の超電導線からなっており、略長方形状の断面を有している。
直流単極電動機10を回転するためのローレンツ力を大きくするという観点からは、第2の配線10の巻数は極力多いことが好ましい。一方、第2の配線15が図3に示すように超電導線、特に所定幅を有するテープ形状を有する場合には、隣り合う第2の配線15間に磁力線が通ることができる隙間21ができるように、巻回するとよい。すなわち、超電導体は磁力線を遮断する性質を有しているので、仮に隣り合う第2の配線15同士が隙間なく巻回されていると、ローレンツ力を発生させるために必要な磁力線が遮断されて、回転構造体14に巻回された第2の配線15と直交しなくなってしまう。そのため、ローレンツ力が大きくなるように第2の配線15の回転構造体14への巻回数を多くしつつ、隣り合う第2の配線15間に磁力線が通過できるだけの隙間が残るように、第2の配線15の回転構造体14への巻回数を決定するとよい。
【0041】
続いて図4を参照して、第2実施形態に係る電動機30について説明する。尚、電動機30は第1実施形態に係る電動機10と少なからず共通する構成を有しており、共通箇所には共通の符号を付して、重複する説明は適宜省略することとする。
【0042】
図4は第2実施形態に係る電動機30の構成を透過的に示す側面図である。この実施形態では、第1実施形態の超電導マグネット16に代えてスプリットマグネット36a、36bを用いている。これにより、電動機30内の省スペース化を図ることにより装置の大型化を防止すると共に、省熱容量化を図ることにより効率的な冷却が可能となっている。
【0043】
また、このようにスプリットマグネット36a、36bを配置することによって、図4において示す磁力線分布が形成される。このようにスプリットマグネット36a、37bを用いることによって、回転構造体14に巻回された第2の配線15と、多くの磁力線が直交するように構成することができる。その結果、上式(1)(2)に示したように、より優れた出力効率を有する電動機を実現することができる。
【0044】
また、スプリットマグネット36a、37bを回転軸14のうち回転構造体14の両側にそれぞれ配置している。これにより、第2の配線15が巻回されている回転構造体14を基準に対称的に電磁力が作用することになり、電動機30の動作時に、回転軸13にねじりや振動や歪み等を生じにくくすることもできる。
【0045】
第1実施形態では一対の第1の配線11a及び11bが擦動するスリップリング18は共に回転構造体14より入力側に設けられていた。一方、第2実施形態では、第1の配線11a及び11bに対応するスリップリング18a、18bを、回転軸14のうち回転構造体14の両側にそれぞれ配置している。これにより、スリップリングについても回転構造体14に対して対称的な配置とすることによって、回転軸13にねじりや振動や歪み等をより生じにくくすることができる。
【0046】
(直流/交流変換システム)
続いて、上記説明した直流単極電動機を適用した直流/交流変換システム100について説明する。図5は直流/交流変換システム100の全体構成を模式的に示したものである。
【0047】
直流/交流変換システム100は直流電力の送電を行う超電導送電ケーブル110を電力供給源として備えている。該超電導送電ケーブル110には、直流電動機120(上述の各種実施形態を含む)の入力側に設けられた第1の配線が接続されており、供給される直流電力によって直流電動機120が駆動される。これにより、直流電気エネルギーは直流電動機120の回転軸の回転運動として機械エネルギーに変換される。
【0048】
直流電動機120の回転軸は、磁気カップリング130を介して超電導同期発電機140の入力軸に接続されている。これにより、超電導同期発電機140は直流電動機120側から伝達された機械エネルギーによって駆動され、3相交流電力を発電する。このようなシステム100によれば、極低温で動作可能な直流電動機が用いられているので、電流リードのような多くの熱侵入を伴うデバイスを用いることなく、超電導送電ケーブル110からの直流電気エネルギーを機械エネルギーに変換し、機械エネルギーを交流圧電気で交流変換することができる。
【0049】
この実施形態では特に、直流電動機120と同期発電機140のそれぞれの回転軸を磁気カップリング130を介して接続することにより、機械エネルギーの伝達を可能にしつつ、互いの熱侵入をゼロに維持することができる。
【0050】
尚、超電導ケーブル110、直流電動機120及び同期発電機140における冷却は、本システム100に備えられた冷凍機150から供給される寒剤によって行われている。冷却手法はこのパターンに限られないが、複数の超電導を利用したユニットにおける冷却を冷凍機150でまとめて行うことで、システム100の複雑化によるコストや規模の増大を効果的に抑制することができる。
尚、超電導同期発電機は既知のものを使用してもよい。
【0051】
以上説明したように、本実施形態に係る直流/交流変換システム100によれば、直流単極電動機の回転軸を磁気カップリング130を介して超電導同期発電機140に接続することにより、超電導同期発電機140にて交流電力を発電して出力することができる。このようなシステムによれば、極低温で動作可能な直流電動機120が用いられているので、電流リードのような多くの熱侵入を伴うデバイスを用いることなく、直流電気エネルギーを一旦機械エネルギーに変換した後、機械エネルギーを交流発電機で交流電気エネルギーに変換することができる。
特に、直流単極電動機120と同期発電機140のそれぞれの回転軸を磁気カップリング130を介して接続することにより、機械エネルギーの伝達を可能にしつつ、互いの熱侵入をゼロに維持することができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、整流子を用いることなく直流電力で回転軸を駆動可能な直流単極電動機、及び、該直流単極電動機を利用して同期発電機を駆動することにより交流電力を出力可能な直流/交流変換システムに利用可能である。
【符号の説明】
【0053】
10 直流単極電動機(第1実施形態)
11 第1の配線
13 回転軸
14 回転構造体
15 第2の配線
16 超電導マグネット
17 磁気ヨーク
18 スリップリング
19 ブラシ
20 冷却通路
30 直流単極電動機(第2実施形態)
36 スプリットマグネット
100 直流/交流変換システム
110 超電導送電ケーブル
120 直流単極電動機
130 磁気カップリング
140 超電導同期発電機
150 冷凍機
図1
図2
図3
図4
図5
図6