特許第5890288号(P5890288)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 信越化学工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5890288-新規有機珪素化合物の製造方法 図000045
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5890288
(24)【登録日】2016年2月26日
(45)【発行日】2016年3月22日
(54)【発明の名称】新規有機珪素化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 7/08 20060101AFI20160308BHJP
【FI】
   C07F7/08 S
   C07F7/08 F
【請求項の数】2
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-206865(P2012-206865)
(22)【出願日】2012年9月20日
(65)【公開番号】特開2014-62055(P2014-62055A)
(43)【公開日】2014年4月10日
【審査請求日】2014年8月26日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】上野 方也
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 秀好
【審査官】 緒形 友美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−094115(JP,A)
【文献】 特開2007−204635(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 7/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(2)で示される、末端にフェノール性水酸基とアリル基を有するフルオレン骨格を有する有機珪素化合物とエピクロルヒドリンとを反応させ、下記一般式(1)で示される、末端にエポキシ基とアリル基を有するフルオレン骨格を有する有機珪素化合物を得ることを特徴とする有機珪素化合物の製造方法。
【化1】
(式中、R1は水素原子又はメチル基を示す。R2〜R5は独立して水素原子又は炭素数1〜10の一価炭化水素基を表す。R6は炭素数1〜10の二価炭化水素を示す。)
【化2】
(式中、R1は水素原子又はメチル基を示す。R2〜R5は独立して水素原子又は炭素数1〜10の一価炭化水素基を表す。R6は炭素数1〜10の二価炭化水素を示す。)
【請求項2】
前記R6を炭素数1〜10のアルキレン基とすることを特徴とする請求項に記載の有機珪素化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分子末端にエポキシ基とアリル基を有するフルオレン化合物を有する新規な有機珪素化合物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、アリル基とエポキシ基を有するフルオレン化合物としては、特許文献1で開示されているような下記一般式(X)で表される化合物が機能性エポキシ樹脂として知られているが、この化合物は、分子内に二価炭化水素単位がないため、硬化した際、樹脂の可撓性が不十分であり、硬化後にクラックが生じることが予想された。
【化1】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4873223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
両末端にフェノール基やエポキシ基を持った珪素化合物は知られていたが、両末端にアリル基とエポキシ基を持つフルオレン基を持った有機珪素化合物は知られていなかった。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みなされたものであって、反応性、耐熱性に優れ、容易にポリマー化が可能な分子末端にアリル基とエポキシ基を有するフルオレン化合物を有する有機珪素化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明では、下記一般式(1)で示される、末端にエポキシ基とアリル基を有するフルオレン化合物を有する有機珪素化合物を提供する。
【化2】
(式中、R1は水素原子又はメチル基を示す。R2〜R5は独立して水素原子又は炭素数1〜10の一価炭化水素基を示す。R6は炭素数1〜10の二価炭化水素を示す。)
【0007】
このような、末端にエポキシ基とアリル基を有するフルオレン化合物を有する有機珪素化合物であれば、分子内に珪素及び二価炭化水素を含むため硬化物の可撓性も良好で、高耐熱性樹脂となることが期待できる。
【0008】
また、下記一般式(2)で示される、末端にフェノール性水酸基とアリル基を有するフルオレン化合物を有する有機珪素化合物を提供する。
【化3】
(式中、R1は水素原子又はメチル基を示す。R2〜R5は独立して水素原子又は炭素数1〜10の一価炭化水素基を表す。R6は炭素数1〜10の二価炭化水素を示す。
【0009】
このような、末端にフェノール性水酸基とアリル基を有するフルオレン化合物を有する有機珪素化合物とエピクロルヒドリンを反応させることで、末端にエポキシ基とアリル基を有するフルオレン基を有する新規な有機珪素化合物を得ることができる。
【0010】
また、前記のR2〜R5がメチル基であることが好ましい。
【0011】
このように、メチル基であれば、容易に原料を入手できる。
【0012】
また、本発明では、下記一般式(2)で示される、末端にフェノール性水酸基とアリル基を有するフルオレン化合物を有する有機珪素化合物とエピクロルヒドリンとを反応させ、下記一般式(1)で示される、末端にエポキシ基とアリル基を有するフルオレン化合物を有する有機珪素化合物を得ることを特徴とする有機珪素化合物の製造方法を提供する。
【化4】
(式中、R1は水素原子又はメチル基を示す。R2〜R5は独立して水素原子又は炭素数1〜10の一価炭化水素基を表す。R6は炭素数1〜10の二価炭化水素を示す。)
【化5】
(式中、R1は水素原子又はメチル基を示す。R2〜R5は独立して水素原子又は炭素数1〜10の一価炭化水素基を表す。R6は炭素数1〜10の二価炭化水素を示す。)
【0013】
このような製造方法であれば、一般式(1)で示される、末端にエポキシ基とアリル基を有するフルオレン化合物を有する有機珪素化合物が得られるとともに、この有機珪素化合物は、反応性、耐熱性に優れ、容易にポリマー化が可能である。
また、得られたポリマーは、耐熱性、耐水性、耐候性、電気特性等に優れた樹脂を与えることができる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、実施例1の化合物は、末端にエポキシ基とアリル基を有するフルオレン化合物を有する有機珪素化合物であり、その為、反応性、耐熱性に優れ、容易にポリマー化が可能であり、得られたポリマーは、耐熱性、耐水性、耐候性、電気特性等に優れた樹脂となることが期待される。また、本化合物は、分子内に珪素及び二価炭化水素を含むため硬化物の可撓性も良好で、高耐熱性樹脂となることが期待できる。また、このようなポリマーは、末端にフェノール性水酸基とアリル基を有するフルオレン化合物を有する有機珪素化合物から合成して製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、実施例1の化合物のH−NMRチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明についてより詳細に説明する。
前述のように、末端にエポキシ基とアリル基を有するフルオレン化合物を有する有機珪素化合物及びその製造方法の開発が望まれていた。
【0017】
そこで、本発明者らは、上記目的を達成するため、鋭意検討を重ねた結果、下記一般式(2)
【化6】
で表され末端にフェノール性水酸基とアリル基を有するフルオレン化合物を有する有機珪素化合物にエピクロルヒドリンを反応させることで、下記一般式(1)で表される
【化7】
末端にエポキシ基とアリル基を有するフルオレン化合物を有する有機珪素化合物が得られるとともに、この化合物が、反応性、耐熱性に優れ、容易にポリマー化が可能であり、得られたポリマーは、耐熱性、耐水性、耐候性、電気特性等に優れた樹脂として使用可能であることを知見し、本発明をなすに至った。
【0018】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明の有機珪素化合物は、下記一般式(1)で示される、末端にエポキシ基とアリル基を有するフルオレン化合物を有する有機珪素化合物である。
【化8】
【0019】
上記一般式(1)において、R1は水素原子又はメチル基を示している。R2〜R5は独立して水素原子または炭素数1〜10の一価炭化水素基を表す。一価炭化水素基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、オクチル基、シクロヘキシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、ナフチル基等のアリール基が挙げられる。これらの中でも原料入手の点からメチル基が好ましい。R6は炭素数1〜10の二価炭化水素を表す。二価炭化水素としてはメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、シクロヘキシレン基、ヘプテレン基、オクチレン基、ノナニレン基、デカニレン基等のアルキレン基、フェニレン基、トリレン基、ナフチレン基等のアリール基が挙げられる。この中でも原料入手の点からフェニレン基が好ましい。
【0020】
このような一般式(1)で示される化合物としては、下記の化合物を代表例として例示することができる。
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【0021】
このような本発明の有機珪素化合物は、上述したように下記一般式(2)で表される末端にフェノール性水酸基とアリル基を有するフルオレン化合物を有する有機珪素化合物にエピクロルヒドリンを反応させて得られるものである。
【化13】
【0022】
上記一般式(2)において、R1は水素原子又はメチル基を、R2〜R5は独立して水素原子または炭素数1〜10の一価炭化水素基を、R6は炭素数1〜10の二価炭化水素を表しており、下記の化合物を代表例として例示することができる。
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【0023】
この上記一般式(2)で示される化合物は、当該分野で知られている方法により調製することができる。例えば、下記一般式(3)
【化18】
で示される化合物と下記一般式(4)
【化19】
で示される両末端にSi−Hを含有する有機珪素化合物を、遷移金属触媒存在下で反応させることで得られる。
【0024】
上記一般式(3)においてR1は水素原子又はメチル基を示しており、以下の化合物が例示される。
【化20】
【化21】
【0025】
上記一般式(4)においてR2〜R5は独立して水素原子または炭素数1〜10の一価炭化水素基を表しており、R6は炭素数1〜10の二価炭化水素を表しており、以下化合物が例示される。
【化22】
【0026】
この反応の際の、一般式(3)の化合物と一般式(4)の化合物とのモル比は、一般式(4)の化合物1.0molに対し、2.0mol以上とすればよい。
【0027】
また、本発明における一般式(2)の化合物を得る際、一般式(3)の二つの不飽和結合と一般式(4)の二つのSi−Hが反応し、連鎖となる成分も含まれているが、この成分が本発明を妨げるものではない。
【0028】
この一般式(2)の化合物を得るために用いる遷移金属触媒としては、特に限定されないが、白金、ロジウム、パラジウム、ルテニウム化合物が好適であり、特に白金化合物が好ましい。
これを例示すれば、白金ジビニルシロキサン、白金環状ビニルメチルシロキサン、トリス(ジベンジリデンアセトン)二白金、塩化白金酸、ビス(エチレン)テトラクロロ二白金、シクロオクタジエンジクロロ白金、ビス(シクロオクタジエン)白金、ビス(ジメチルフェニルホスフィン)ジクロロ白金、テトラキス(トリフェニルホスフィン)白金、白金カーボン等があげられる。
【0029】
この一般式(2)の化合物を得る際の反応温度は任意であるが、50〜150℃程度でよく、好ましくは60〜100℃である。反応時間も任意であり、原料の一般式(4)の両末端にSi−Hを含有する珪素化合物がほぼ消失するまで行えばよいが、通常30分〜10時間程度であり、好ましくは1〜5時間程度である。
【0030】
この一般式(2)の化合物を得る際、溶媒の使用は任意であり、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類、メタノール、エタノール等のアルコール類、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル等のエステル類、ジメチルホルムアミド等のアミド類、アセトニトリルなどニトリル類などが挙げられる。特に、ベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素を使用することが、好ましい。
【0031】
また、この一般式(2)の化合物を得る反応を行う際、酸化防止剤や重合禁止剤の使用は任意である。
【0032】
反応終了後、そのまま一般式(1)の化合物を得る反応を行っても良いが、常圧、或いは減圧にて溶媒を留去しても良い。留去する際の温度は任意であるが、60〜150℃程度でよく、好ましくは60〜100℃である。
【0033】
次いで、本発明の一般式(1)の化合物を得るためには、前述したように得られた一般式(2)の化合物とエピクロルヒドリンとを反応することで、得ることが出来る。一般式(2)の化合物とエピクロルヒドリンとの反応における反応温度は、任意であるが、通常50〜120℃にて行えばよく、反応時間は、3〜30時間程度である。
【0034】
一般式(2)の化合物とエピクロルヒドリンとのモル比は任意であるが、一般式(2)に対してエピクロルヒドリンを大過剰に使用することで、本発明の一般式(1)の化合物が得られ、一般式(2)に対してエピクロルヒドリンの使用量を下げるとエポキシ基と一般式(2)の化合物におけるフェノール基とが反応し、連鎖となる成分も含まれるが、この成分は本発明を妨げるものではない。
【0035】
一般式(2)に対するエピクロルヒドリンの使用量は、通常1.0〜30モル、好ましくは2.0〜20モル、より好ましくは3.0〜15モルである。
【0036】
一般式(1)の化合物を得る反応の際、触媒の使用は任意であり、通常は、アルカリ金属水酸化物が使用される。アルカリ金属水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。アルカリ金属水酸化物の添加方法は、固形物として添加しても良く、また、水溶液として添加しても良い。アルカリ金属水酸化物の使用量としては、フェノール性水酸基1当量に対して0.01〜0.2モルが好ましい。
【0037】
アルカリ金属水酸化物の固形物を使用する際、これらは1種のみ又は組み合わせて用いることが出来、分割または連続的に系内に添加すればよい。また、アルカリ金属水酸化物の水溶液を用いる際は、アルカリ金属水酸化物の水溶液から持ち込まれる水が多くなるため、反応中、系内から水を除去する必要がある。
【0038】
反応する際、溶媒としては、エピクロルヒドリンを大過剰に加え、反応溶媒として使用することも可能であるが、さらに他の溶媒の使用も任意であり、その際は、非プロトン性極性溶媒の使用が好ましい。非プロトン性極性溶媒としては、ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,4−ジオキサン等が挙げられる。非プロトン性極性溶媒の使用量はエピクロルヒドリンの重量に対し通常5〜200重量%、好ましくは10〜150重量%である。
【0039】
また、反応に際してテトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、トリメチルベンジルアンモニウムクロライドなどの第四級アンモニウム塩を触媒として使用することもできる。この場合の第四級アンモニウム塩の使用量は一般式(2)の化合物の水酸基1当量に対して通常0.001〜0.2モル、好ましくは0.05〜0.1モルである。
【0040】
これらの反応生成物は水洗後、または水洗無しに加熱減圧下過剰のエピクロルヒドリンや、その他使用した溶媒等を除去することで本発明の化合物を得ることが出来る。また、加熱減圧下過剰のエピクロルヒドリンや、その他使用した溶媒等を除去した後、トルエン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン等の溶媒に溶解し、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液を加えて再び反応を行うことにより全ハロゲン量の低いエポキシ樹脂を得ることが出来る。反応終了後、副生した塩をろ過、水洗などにより除去し、さらに加熱減圧下トルエン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン等の溶媒を留去することにより本発明の化合物を得ることができる。
【0041】
本発明の化合物は、末端にエポキシ基とアリル基を有するフルオレン化合物を有する有機珪素化合物であり、アリル基の反応性を使用し、他のシロキサン化合物とヒドロシリル化反応を行いポリマー化すれば、エポキシ官能基を持った高分子シリコーン材料を得ることができ、エポキシ基の反応性を使用し、硬化性材料として使用することもできる。それらの基を利用してポリマー化した後、残りの官能基を用いて架橋、硬化することも可能である。また、得られたポリマーは、耐熱性、耐候性、耐水性が良好となることが期待される。したがって、本発明の化合物は、耐熱性樹脂材料用マクロモノマーとして有用な化合物である。
【実施例】
【0042】
以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1]
窒素ガス導入管、温度計、ジムロート型コンデンサー及び滴下漏斗を備えた1リットルのセパラブルフラスコに、下記構造式(a)
【化23】
で表される不飽和基含有化合物215g(0.5mol)、トルエン500g、白金換算濃度で2重量%であるトリス(1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチル−ジシロキサン)−二白金(0)(Karstedt触媒)0.05gを仕込み、75℃にて下記構造式(b)
【化24】
で表される1,4−ビス(ジメチルシリル)ベンゼン48.5g(0.25mol)をゆっくり滴下した。この滴下には10分を要した。滴下終了後、75℃にて10時間熟成を続けた。
【0043】
熟成終了後、ガスクロマトグラフ分析を行い、1,4−ビス(ジメチルシリル)ベンゼン残存量が2%以下となったことを確認した。
このものをロータリーエバポレーターで、80℃/0.6kPaにて減圧濃縮したところ、褐色固体250gが得られた。このものの赤外線吸収スペクトル分析及び、1H核磁気共鳴スペクトル分析を行い、下記構造式(c)に示すような末端にフェノール性水酸基とアリル基を有するフルオレン化合物を有する有機珪素化合物(c)が得られたことを確認した。
【化25】
【0044】
下記に得られた有機珪素化合物(c)のH―NMRチャートを表1及び図1に示す。
【化26】
【表1】
【0045】
[実施例2]
実施例1における下記構造式(a)
【化27】
で表される不飽和基含有化合物のかわりに下記構造式(d)
【化28】
で表される不飽和基含有化合物229g(0.5mol)とした他は同様に反応を行い、後処理を行ったところ、褐色固体264gが得られた。このものの赤外線吸収スペクトル分析及び、1H核磁気共鳴スペクトル分析を行い、下記構造式(e)で示されるような末端にフェノール性水酸基とアリル基を有するフルオレン化合物を有する有機珪素化合物が得られたことを確認した。
【化29】
【0046】
[実施例3]
実施例1における下記構造式(b)
【化30】
で表される1,4−ビス(ジメチルシリル)ベンゼンのかわりに下記構造式(f)
【化31】
で表される1,4−ビス(ジメチルシリル)ヘキサン50.5g(0.25mol)とした他は同様に反応を行い、後処理を行ったところ、褐色固体252gが得られた。このものの赤外線吸収スペクトル分析及び、1H核磁気共鳴スペクトル分析を行い、下記構造式(g)で示されるような末端にフェノール性水酸基とアリル基を有するフルオレン化合物を有する有機珪素化合物が得られたことを確認した。
【化32】
【0047】
[実施例4]
窒素ガス導入管、温度計、ジムロート型コンデンサー及び滴下漏斗を備えた1リットルのセパラブルフラスコに、実施例1で得られた下記構造式(c)
【化33】
で表される末端にフェノール性水酸基とアリル基を有するフルオレン化合物を有する有機珪素化合物210.8g(0.2mol)をエピクロルヒドリン278g(3.0mol)に溶解し、さらにテトラメチルアンモニウムクロライド0.44gを加え、100℃にて5時間攪拌した。次に、減圧下(20kPa)、70℃にて40%水酸化ナトリウム水溶液44gを3時間かけて滴下した。その間、生成する水をエピクロルヒドリンとの共沸により系外に除き、留出したエピクロルヒドリンは系内に戻した。滴下終了後、さらに30分間反応を継続した。
【0048】
その後、濾過により生成した塩を取り除き、さらに水洗した後、エピクロルヒドリンを留去したところ、褐色固体180gを得た。このものの赤外線吸収スペクトル分析及び、1H核磁気共鳴スペクトル分析を行い、下記構造式(h)で示されるような末端にアリル基とエポキシ基を有するフルオレン化合物を有する有機珪素化合物であることを確認した。
【化34】
【0049】
[実施例5]
実施例4における下記構造式(c)
【化35】
で表される不飽和基含有化合物のかわりに、実施例2で合成した下記構造式(e)
【化36】
で表される不飽和基含有化合物216.8g(0.2mol)とした他は同様に反応を行い、後処理を行ったところ、褐色固体184gが得られた。このものの赤外線吸収スペクトル分析及び、1H核磁気共鳴スペクトル分析を行い、下記構造式(i)示すような末端にエポキシ基とアリル基を有するフルオレン化合物を有する有機珪素化合物が得られたことを確認した。
【化37】
【0050】
[実施例6]
実施例4における下記構造式(c)
【化38】
で表される不飽和基含有化合物のかわりに、実施例3で合成した下記構造式(g)
【化39】
で表される不飽和基含有化合物212.2g(0.2mol)とした他は同様に反応を行い、後処理を行ったところ、褐色固体184gが得られた。このものの赤外線吸収スペクトル分析及び、1H核磁気共鳴スペクトル分析を行い、下記構造式(j)で示される末端にエポキシ基とアリル基を有するフルオレン化合物を有する有機珪素化合物が得られたことを確認した。
【化40】
【0051】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
図1