(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
下部電極と、該下部電極と対向して配置される上部電極との間の処理空間においてプラズマを生じさせて前記下部電極に載置された基板にプラズマ処理を施すプラズマ処理装置において、
前記上部電極に関して前記処理空間とは反対側に配置される複数の磁石列を備え、
前記複数の磁石列の各々は前記上部電極の前記処理空間とは反対側の面において環状に配置され、且つ前記複数の磁石列の各々は平面視において1つ内側に配置された前記磁石列を囲むように配置され、
前記複数の磁石列は、隣接する2つの前記磁石列からなる少なくとも1つの磁力線生成ユニットに分けられ、前記少なくとも1つの磁力線生成ユニットでは、前記隣接する2つの前記磁石列の前記処理空間側とは反対側の各端部が互いに磁界的に接続され、
前記少なくとも1つの磁力線生成ユニットは、前記隣接する2つの前記磁石列の前記処理空間側の各端部の間において前記処理空間に進入する磁力線を生じさせ、さらに、前記処理空間において前記磁力線に起因する磁界の磁束密度を変化させ、
前記上部電極には高周波電源が接続されるとともに内部にバッファ室が設けられ、
前記バッファ室に供給された処理ガスが前記上部電極に設けられたガス孔を介して前記処理空間へ導入され、
前記上部電極において、前記高周波電源が接続された箇所とは別の箇所に追加の負の直流電源又は追加の高周波電源が接続され、
前記下部電極及び前記上部電極は円筒状のチャンバの下部及び上部に設けられ、
前記円筒状のチャンバの側壁部に導電体又は半導電体からなる円環状の側壁電極を設け、該側壁電極の前記処理空間とは反対側の側面を取り囲むように前記磁力線生成ユニットを設けることを特徴とするプラズマ処理装置。
前記少なくとも1つの磁力線生成ユニットが含む隣接する2つの磁石列のうち1つの磁石列が独立して前記処理空間に対して近接及び離脱自在であることを特徴とする請求項1記載のプラズマ処理装置。
少なくとも1つの前記環状に配置された磁石列が、当該磁石列の中心を中心として前記上部電極の面に沿って旋回することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
前記少なくとも1つの磁力線生成ユニットにおいて、前記隣接する2つの前記磁石列のうち少なくとも一方を電磁石によって構成することを特徴とする請求項1記載のプラズマ処理装置。
前記磁力線生成ユニットは、1つの前記磁石列と、一端が該磁石列の前記処理空間側とは反対側の端部と接続し且つ他端が前記処理空間を指向するヨークとからなることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
前記磁力線生成ユニットは、前記処理空間側が開放された断面逆U字状の永久磁石の列からなることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
前記磁力線生成ユニットでは、前記隣接する2つの前記磁石列の前記処理空間側とは反対側の各端部が空間を介することなく互いに磁界的に接続されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
前記磁力線生成ユニットでは、前記隣接する2つの前記磁石列の前記処理空間側とは反対側の各端部が空間を介して互いに磁界的に接続されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、円環状のプラズマの密度や発生位置は各永久磁石列112〜114が生じる磁力線116,117に起因する磁界の磁束密度や配置場所によって決定されてしまうため、処理空間におけるプラズマ密度分布の制御幅がさほど大きくないという問題もある。
【0009】
本発明の目的は、処理空間におけるプラズマ密度分布の制御幅を大きくすることができるプラズマ処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1記載のプラズマ処理装置は、下部電極と、該下部電極と対向して配置される上部電極との間の処理空間においてプラズマを生じさせて前記下部電極に載置された基板にプラズマ処理を施すプラズマ処理装置において、前記上部電極に関して前記処理空間とは反対側に配置される複数の磁石列を備え、前記複数の磁石列の各々は前記上部電極の前記処理空間とは反対側の面において環状に配置され、且つ前記複数の磁石列の各々は平面視において1つ内側に配置された前記磁石列を囲むように配置され、前記複数の磁石列は、隣接する2つの前記磁石列からなる少なくとも1つの磁力線生成ユニットに分けられ、前記少なくとも1つの磁力線生成ユニットでは、前記隣接する2つの前記磁石列の前記処理空間側とは反対側の各端部が互いに磁界的に接続され、前記少なくとも1つの磁力線生成ユニットは、前記隣接する2つの前記磁石列の前記処理空間側の各端部の間において前記処理空間に進入する磁力線を生じさせ、さらに、前記処理空間において前記磁力線に起因する磁界の磁束密度を変化させ、前記上部電極には高周波電源が接続されるとともに内部にバッファ室が設けられ、前記バッファ室に供給された処理ガスが前記上部電極に設けられたガス孔を介して前記処理空間へ導入され、前記上部電極において、前記高周波電源が接続された箇所とは別の箇所に追加の負の直流電源又は追加の高周波電源が接続され
、前記下部電極及び前記上部電極は円筒状のチャンバの下部及び上部に設けられ、前記円筒状のチャンバの側壁部に導電体又は半導電体からなる円環状の側壁電極を設け、該側壁電極の前記処理空間とは反対側の側面を取り囲むように前記磁力線生成ユニットを設けることを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の基板処理装置は、請求項1記載のプラズマ処理装置において、前記少なくとも1つの磁力線生成ユニットが前記処理空間に対して近接及び離脱自在であることを特徴とする。
【0012】
請求項3記載の基板処理装置は、請求項1記載のプラズマ処理装置において、前記少なくとも1つの磁力線生成ユニットが含む隣接する2つの磁石列のうち1つの磁石列が独立して前記処理空間に対して近接及び離脱自在であることを特徴とする。
【0013】
請求項4記載の
プラズマ処理装置は、請求項1記載のプラズマ処理装置において、前記少なくとも1つの磁力線生成ユニットにおいて、
前記隣接する2つの前記磁石列の前記処理空間側とは反対側の各端部がヨークによって互いに接続され、前記ヨークが、前記隣接する2つの前記磁石列の前記処理空間側とは反対側の各端部の少なくとも1つと当接及び離脱自在であることを特徴とする。
【0014】
請求項5記載の基板処理装置は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置において、少なくとも1つの前記環状に配置された磁石列が、当該磁石列の中心を中心として前記上部電極の面に沿って旋回することを特徴とする。
【0015】
請求項6記載の基板処理装置は、請求項1記載のプラズマ処理装置において、前記少なくとも1つの磁力線生成ユニットにおいて、前記隣接する2つの前記磁石列のうち少なくとも一方を電磁石によって構成することを特徴とする。
【0017】
請求項
7記載の基板処理装置は、請求項1乃至
6のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置において、前記磁力線生成ユニットは、1つの前記磁石列と、一端が該磁石列の前記処理空間側とは反対側の端部と接続し且つ他端が前記処理空間を指向するヨークとからなることを特徴とする。
【0018】
請求項
8記載の基板処理装置は、請求項1乃至
6のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置において、前記磁力線生成ユニットは、前記処理空間側が開放された断面逆U字状の永久磁石の列からなることを特徴とする。
【0019】
請求項
9記載の基板処理装置は、請求項1乃至
6のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置において、前記磁力線生成ユニットでは、前記隣接する2つの前記磁石列の前記処理空間側とは反対側の各端部が空間を介することなく互いに磁界的に接続されることを特徴とする。
【0020】
請求項
10記載の基板処理装置は、請求項1乃至
6のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置において、前記磁力線生成ユニットでは、前記隣接する2つの前記磁石列の前記処理空間側とは反対側の各端部が空間を介して互いに磁界的に接続されることを特徴とする。
【0021】
請求項
11記載の基板処理装置は、請求項
10記載のプラズマ処理装置において、前記磁力線生成ユニットは前記空間の大きさを変化させることを特徴とする。
【0022】
請求項12記載のプラズマ処理装置は、請求項5記載のプラズマ処理装置において、前記少なくとも1つの磁石列の中心が前記上部電極の面に沿う所定の領域内を移動可能に構成されていることを特徴とす
る。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、少なくとも1つの磁力線生成ユニットは、隣接する2つの磁石列の処理空間側の各端部の間に生じて処理空間に進入する磁力線に起因する磁界の磁束密度を変化させるので、処理空間においてローレンツ力によってドリフトする電子の量を調整することができ、もって、ドリフトして旋回する電子に起因して生成される環状のプラズマの密度を変化させることができる。その結果、処理空間におけるプラズマ密度分布の制御幅を大きくすることができる。
また、上部電極において、高周波電源が接続された箇所とは別の箇所に追加の負の直流電源又は追加の高周波電源が接続されるので、処理空間における電界の強さを大きくすることができ、その結果、処理空間におけるプラズマ全体の密度分布の制御に環状のプラズマを確実に寄与させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0026】
まず、本発明の第1の実施の形態に係るプラズマ処理装置について説明する。
【0027】
図1は、本実施の形態に係るプラズマ処理装置の構成を概略的に示す断面図である。本プラズマ処理装置は、基板としての半導体デバイス用のウエハ(以下、単に「ウエハ」という。)にプラズマエッチング処理を施す。
【0028】
図1において、プラズマ処理装置10は、例えば、直径が300mmのウエハWを収容する円筒状のチャンバ11を有し、該チャンバ11内にはウエハWを載置する円柱状のサセプタ12と、サセプタ12に対向して配置されるシャワーヘッド13とが配置されている。サセプタ12及びシャワーヘッド13は間に処理空間Sを構成する。
【0029】
プラズマ処理装置10では、処理空間Sにおいてプラズマを生じさせて該プラズマによってサセプタ12に載置されたウエハWにプラズマエッチング処理を施す。また、チャンバ11にはチャンバ11内のガスを排出する排気管14が接続される。該排気管14にはTMP(Turbo Molecular Pump)及びDP(Dry Pump)(ともに図示しない)が接続され、これらのポンプはチャンバ11内を真空引きして減圧する。なお、チャンバ11内の圧力はAPCバルブ(図示しない)によって制御される。
【0030】
チャンバ11内のサセプタ12には第1の高周波電源15が第1の整合器16を介して接続され、シャワーヘッド13には第2の高周波電源17が第2の整合器18を介して接続されており、第1の高周波電源15は比較的低い周波数、例えば、2MHzのイオン引き込み用の高周波電力をサセプタ12に印加し、第2の高周波電源17は比較的高い周波数、例えば、60MHzのプラズマ生成用の高周波電力をシャワーヘッド13に印加する。これにより、サセプタ12は下部電極として機能し、シャワーヘッド13は上部電極として機能する。また、第1の整合器16及び第2の整合器18はインピーダンスを調整して高周波電力のサセプタ12やシャワーヘッド13への印加効率を最大にする。
【0031】
サセプタ12の上部周縁部には、該サセプタ12の中央部分が図中上方へ向けて突出するように、段差が形成される。該サセプタ12の中央部分の先端には静電電極板19を内部に有するセラミックスからなる静電チャック20が配置されている。静電電極板19には第1の直流電源21が接続されており、静電電極板19に正の直流電圧が印加されると、クーロン力又はジョンソン・ラーベック力により、ウエハWは静電チャック20に吸着保持される。
【0032】
サセプタ12は内部に冷媒流路からなる冷却機構(図示しない)を有し、該冷却機構はプラズマと接触して温度が上昇するウエハWの熱を吸収することによってウエハWの温度が所望の温度以上になるのを防止する。また、サセプタ12の上部には、静電チャック20に吸着保持されたウエハWを囲うように、フォーカスリング22がサセプタ12の段差へ載置される。フォーカスリング22は珪素(Si)又は炭化珪素(SiC)からなり、プラズマの分布域をウエハW上だけでなく該フォーカスリング22上まで拡大してウエハWの周縁部上におけるプラズマの密度を該ウエハWの中央部上におけるプラズマの密度と同程度に維持する。
【0033】
サセプタ12と処理空間Sを挟んで対向するシャワーヘッド13は、上部電極板23と、該上部電極板23を着脱可能に釣支するクーリングプレート24とを主に有する。上部電極板23は、導電体又は半導電体の一枚の円板状部材からなり、厚み方向に貫通する多数のガス孔25を有する。また、クーリングプレート24の内部にはバッファ室26が設けられ、このバッファ室26には処理ガス導入管(図示しない)が接続されている。
【0034】
プラズマ処理装置10では、処理ガス導入管からバッファ室26へ供給された処理ガスがガス孔25を介して処理空間Sへ導入され、該導入された処理ガスは、第2の高周波電源17からシャワーヘッド13を介して処理空間Sへ印加されたプラズマ生成用の高周波電力によって励起されてプラズマとなる。該プラズマ中の正イオンは、第1の高周波電源15がサセプタ12に印加するイオン引き込み用の高周波電力によってウエハWに向けて引きこまれ、該ウエハWにプラズマエッチング処理を施す。
【0035】
本実施の形態に係るプラズマ処理装置10は、シャワーヘッド13に関して処理空間Sとは反対側に配置される複数の磁石列27a,27b,28a,28b,29a,29b,30a,30bをさらに備える。磁石列27a〜30bの各々は円環状に配置された複数の永久磁石板からなり、各磁石列27a〜30bはシャワーヘッド13の処理空間Sとは反対側の上面13aにおいて、平面視で一の磁石列が1つ内側に配置された磁石列を囲むように、具体的には、上部電極板23の中心と同心円状に配置される。なお、各磁石列は、
図1の上下方向に関して高さが揃う必要はない。
【0036】
また、磁石列27a〜30bの各々では各永久磁石板の同磁極が同じ側に位置するように各永久磁石板が配置される。例えば、磁石列27a,28b,29a,30bでは、S極が処理空間S側に位置するように各永久磁石板が配置され、磁石列27b,28a,29b,30aでは、N極が処理空間S側に位置するように各永久磁石板が配置される。
【0037】
プラズマ処理装置10では、磁石列27a〜30bが、処理空間S側に位置する磁極が異なる、隣接する2つの磁石列からなる磁力線生成ユニット27,28,29,30に分けられる。具体的に、磁力線生成ユニット27は磁石列27a,27bから構成され、磁力線生成ユニット28は磁石列28a,28bから構成され、磁力線生成ユニット29は磁石列29a,29bから構成され、磁力線生成ユニット30は磁石列30a,30bから構成される。
【0038】
各磁力線生成ユニット27〜30において、磁石列27a及び磁石列27bの処理空間Sとは反対側の各端部は鉄等のヨーク27cによって互いに接続され、磁石列28a及び磁石列28bの処理空間Sとは反対側の各端部は鉄等のヨーク28cによって互いに接続され、磁石列29a及び磁石列29bの処理空間Sとは反対側の各端部は鉄等のヨーク29cによって互いに接続され、磁石列30a及び磁石列30bの処理空間Sとは反対側の各端部は鉄等のヨーク30cによって互いに接続される。
【0039】
したがって、例えば、磁力線生成ユニット27では、磁石列27a及び磁石列27bの処理空間S側の各端部はヨークによって接続されずに開放され、且つ互いの磁極が異なるので、当該端部間において磁力線27dが生じる。該磁力線27dは磁石列27a,27bの磁力の大きさによって強さが左右されるが、本実施の形態では、磁力線生成ユニット27がシャワーヘッド13の上面13aに当接している場合、磁力線27dは処理空間Sの上部に進入する。
【0040】
一方、処理空間Sではシャワーヘッド13に印加されたプラズマ生成用の高周波電力に起因して上部電極板23に生じるセルフバイアス電位により、上部電極板23の近傍においてシース(図示しない)が生じ、該シースに対応した処理空間Sから上部電極板23へ向かう電界Eが発生する。すなわち、上部電極板23の近傍では電界Eと磁力線27dに起因する磁界が交差する領域が発生する。当該領域においてはプラズマ中の電子が電界E及び磁界に起因するローレンツ力を受けてドリフトする。
【0041】
図2は、
図1のプラズマ処理装置における各磁力線生成ユニットを処理空間から眺めた底面図であり、
図2においてシャワーヘッド13は省略されている。
【0042】
図2において、磁力線生成ユニット27に対向する領域では、磁石列27bから磁石列27aへ向かい、磁力線生成ユニット27の中心から放射状に分布する磁力線27d(図中破線矢印参照)に起因する磁界が発生する。また、
図2において手前から奥へ向かう電界Eが発生している。したがって、磁力線生成ユニット27に対向する領域では、電子が図中反時計回りのローレンツ力を受けて旋回する(図中実線矢印参照)。このとき、旋回する電子は処理空間S中の処理ガスの分子や原子と衝突してプラズマを生成する。その結果、磁力線生成ユニット27に沿って円環状のプラズマが発生する。
【0043】
同様に、磁力線生成ユニット28に対向する領域では、磁石列28aから磁石列28bへ向かい、磁力線生成ユニット28の中心から放射状に分布する磁力線28d(図中破線矢印参照)に起因する磁界が発生するので、電子は図中時計回りのローレンツ力を受けて旋回し(図中矢印参照)、その結果、磁力線生成ユニット28に沿って円環状のプラズマが発生する。また、磁力線生成ユニット29に対向する領域では、磁石列29bから磁石列29aへ向かい、磁力線生成ユニット29の中心から放射状に分布する磁力線29d(図中破線矢印参照)に起因する磁界が発生するので、電子は図中反時計回りのローレンツ力を受けて旋回し(図中矢印参照)、その結果、磁力線生成ユニット29に沿って円環状のプラズマが発生する。さらに、磁力線生成ユニット30に対向する領域では、磁石列30aから磁石列30bへ向かい、磁力線生成ユニット30の中心から放射状に分布する磁界30d(図中破線矢印参照)に起因する磁界が発生するので、電子は図中時計回りのローレンツ力を受けて旋回し(図中矢印参照)、その結果、磁力線生成ユニット30に沿って円環状のプラズマが発生する。
【0044】
本実施の形態に係るプラズマ処理装置10では、各磁力線生成ユニット27〜30に沿って処理空間Sに発生する円環状のプラズマの密度を変化させることにより、処理空間Sにおけるプラズマ全体の密度分布を制御可能とされる。具体的に、プラズマ処理装置10では各磁力線生成ユニット27〜30が処理空間Sに対して近接及び離脱自在に構成される。換言すれば、各磁力線生成ユニット27〜30は、不図示の移動機構によって
図1中上下方向に移動自在に構成される。
【0045】
図3は、
図1のプラズマ処理装置において2つの磁力線生成ユニットが移動した場合を説明するための断面図である。
【0046】
図3において、磁力線生成ユニット28が上方へ移動し、さらに磁力線生成ユニット27が磁力線生成ユニット28よりも上方へ移動して処理空間Sから遠ざかるので、磁力線生成ユニット28によって生じる磁力線28dや磁力線生成ユニット27によって生じる磁力線27dが処理空間Sへ殆ど進入しない。これにより、磁力線生成ユニット28や磁力線生成ユニット27に対向する領域において磁界が弱まり、電子に作用するローレンツ力が低下するため、電子と処理ガスの分子や原子との衝突回数が減って生成されるプラズマが減る。その結果、磁力線生成ユニット28や磁力線生成ユニット27に沿う円環状のプラズマの密度が低下する。特に、磁力線生成ユニット27は磁力線生成ユニット28よりも処理空間Sから遠ざかるため、磁力線生成ユニット27に対向する領域における磁界は磁力線生成ユニット28に対向する領域における磁界よりも弱まり、磁力線生成ユニット27に沿う円環状のプラズマの密度は磁力線生成ユニット28に沿う円環状のプラズマの密度よりも低下する。このように、プラズマ処理装置10では各磁力線生成ユニット27〜30を個別に処理空間Sから遠ざけることによって各磁力線生成ユニット27〜30に沿う円環状のプラズマの密度を低下させることができ、さらに、各磁力線生成ユニット27〜30が処理空間Sから遠ざかる度合いを調整することによって各磁力線生成ユニット27〜30に沿う円環状のプラズマの密度の低下度合いを調整することができる。
【0047】
本実施の形態に係るプラズマ処理装置10によれば、シャワーヘッド13の上部電極板23は一枚の平板状部材からなるので、シャワーヘッド13の構造を単純化することができ、プラズマ処理装置10の製造コストの上昇を防止できるとともに、上部電極板23においてデポが貯まる隙間が生じることがなく、もって、パーティクルの発生を防止してウエハWへのパーティクルの付着を防止することができる。
【0048】
また、本実施の形態に係るプラズマ処理装置10によれば、各磁力線生成ユニット27〜30が処理空間Sに対して近接及び離脱自在に構成されるので、各磁力線生成ユニット27〜30に対向する領域において生じる磁力線27d〜30dに起因する磁界の磁束密度を変化させることができる。これにより、ローレンツ力を変化させて当該ローレンツ力によってドリフトする電子とガス分子やガス原子とが衝突する回数を変化させることができ、もって、ドリフトして旋回する電子に起因して生成される円環状のプラズマの密度を変化させることができる。その結果、処理空間Sにおけるプラズマ密度分布の制御幅を大きくすることができる。例えば、各磁力線生成ユニット27〜30に対向する領域における磁界の磁束密度が高くなり、結果としてプラズマの密度が必要以上に高くなる場合には、ウエハWへプラズマによるダメージが加えられる可能性がある。本実施の形態に係るプラズマ処理装置10では、これに対応して各磁力線生成ユニット27〜30に対向する領域における磁界の磁束密度を低下させてプラズマの密度を低下させ、もって、ウエハWへのプラズマによるダメージの付与を防止することができる。
【0049】
さらに、磁力線生成ユニット27〜30の各々を個別に処理空間Sから遠ざけることによって各円環状プラズマの密度を個別に変化させることができる。すなわち、処理空間Sにおいて局所的にプラズマを調整することができるので、処理空間Sにおける電界の強度を部分的に異ならせるために上部電極板23を分割する必要を無くすことができる。
【0050】
また、処理空間Sにおいてプラズマの密度が必要以上に高くなり、ウエハWへプラズマによるダメージが加えられる可能性がある場合には、各磁力線生成ユニット27〜30を処理空間Sから一斉に離脱させ(図中上方へ一斉に移動させ)、処理空間Sにおけるプラズマの密度を低下させてウエハWへのプラズマによるダメージの付与を防止することができる。
【0051】
上述したプラズマ処理装置10では、各磁力線生成ユニット27〜30が処理空間Sに対して近接及び離脱自在に構成されたが、全ての磁力線生成ユニット27〜30が近接及び離脱自在に構成される必要はなく、プラズマエッチング処理の内容やプラズマ処理装置10の仕様に応じて近接及び離脱自在に構成される磁力線生成ユニットが設定されてもよい。
【0052】
さらに、上述したプラズマ処理装置10では、磁力線生成ユニット27〜30の各々が一体となって2つの磁石列及びヨークの相対的な位置関係を変化させることなく移動するが、磁力線生成ユニット27〜30の各々が含む2つの磁石列の一方のみが処理空間Sに対して近接及び離脱自在に構成されてもよい。
【0053】
図4は、
図1のプラズマ処理装置の第1の変形例の構成を概略的に示す断面図である。
【0054】
図4において、磁力線生成ユニット28の磁石列28aが上方へ移動し、さらに磁力線生成ユニット27の磁石列27aが磁石列28aよりも上方へ移動して処理空間Sから遠ざかるので、磁力線生成ユニット28によって生じる磁力線28dや磁力線生成ユニット27によって生じる磁力線27dが処理空間Sへ余り進入しない。これにより、磁力線生成ユニット28や磁力線生成ユニット27に対向する領域において磁界が弱まり、その結果、磁力線生成ユニット28や磁力線生成ユニット27に沿う円環状のプラズマの密度が低下する。特に、磁石列27aは磁石列28aよりも処理空間Sから遠ざかるため、磁力線生成ユニット27に対向する領域における磁界は磁力線生成ユニット28に対向する領域における磁界よりも弱まり、その結果、磁力線生成ユニット27に沿う円環状のプラズマの密度は磁力線生成ユニット28に沿う円環状のプラズマの密度よりも低下する。このように、各磁石列27a〜30dを個別に処理空間Sから遠ざけることによって各磁力線生成ユニット27〜30に沿う円環状のプラズマの密度を低下させることができ、さらに、各磁石列27a〜30dが処理空間Sから遠ざかる度合いを調整することによって各磁力線生成ユニット27〜30に沿う円環状のプラズマの密度の低下度合いを調整することができる。
【0055】
ところで、磁石列27a〜30dの各々において円環状に配列された永久磁石板の磁力は全て同じとは限らず、各永久磁石板の磁力がばらついている虞がある。各永久磁石板の磁力がばらついていると、各磁力線生成ユニット27〜30に対向する領域における磁界の磁束密度が各磁力線生成ユニット27〜30の周方向に関してばらつく虞がある。
【0056】
図5は、
図1のプラズマ処理装置の第2の変形例における各磁力線生成ユニットを処理空間から眺めた底面図であり、
図5においてシャワーヘッド13は省略されている。
【0057】
図5において、磁力線生成ユニット27及び磁力線生成ユニット29はシャワーヘッド13の上面13aに沿って各磁力線生成ユニット27,29の中心を中心として旋回可能、具体的には、図中時計回りに旋回可能に構成され、磁力線生成ユニット28及び磁力線生成ユニット30はシャワーヘッド13の上面13aに沿って各磁力線生成ユニット28,30の中心を中心として旋回可能、具体的には、図中反時計回りに旋回可能に構成されている。
【0058】
処理空間Sに関して或る部位に対向する磁石列における永久磁石板の磁力が他の永久磁石板の磁力に比べて極端に弱い、若しくは極端に強い場合、当該部位における磁界の磁束密度が他の部位における磁界の磁束密度と極端に異なることになるが、当該部位に対向する磁力線生成ユニットが旋回すると、当該部位に対向する永久磁石板が次々と入れ替わる。この永久磁石板の入れ替わりは、同じ磁力線生成ユニットに対向する他の部位においても同様に行われるため、同じ磁力線生成ユニットに対向する全ての部位における磁界の磁束密度が時間的に平均化される。その結果、各磁力線生成ユニット27〜30に沿う各円環状のプラズマの密度を平均化することができる。
【0059】
上述した第2の変形例では、全ての磁力線生成ユニット27〜30が旋回可能に構成されているが、磁力線生成ユニット27〜30のうち任意の幾つかのみを旋回可能に構成してもよい。
【0060】
また、上述した第2の変形例では、各磁力線生成ユニット27〜30は上下方向の移動運動及び旋回運動のみが可能であり、他の運動は行わないが、例えば、各磁力線生成ユニット27〜30がシャワーヘッド13の上面13aに沿って移動可能に構成されてもよい。具体的には、各磁力線生成ユニット27〜30の中心がシャワーヘッド13の上面13aに沿う50mm四方の領域内を移動可能なように構成されてもよい。これにより、処理空間Sにおけるプラズマ密度分布の制御幅をより大きくすることができる。
【0061】
次に、本発明の第2の実施の形態に係るプラズマ処理装置について説明する。
【0062】
本実施の形態は、その構成、作用が上述した第1の実施の形態と基本的に同じであるので、重複した構成、作用については説明を省略し、以下に異なる構成、作用についての説明を行う。
【0063】
図6は、本実施の形態に係るプラズマ処理装置の構成を概略的に示す断面図である。
【0064】
図6において、プラズマ処理装置31は、シャワーヘッド13に関して処理空間Sとは反対側に配置される複数の円環状の磁力線生成ユニット32〜35を備える。磁力線生成ユニット32〜35はシャワーヘッド13の上面13aにおいて、平面視で一の磁力線生成ユニットが1つ内側に配置された磁力線生成ユニットを囲むように、具体的には、上部電極板23の中心と同心円状に配置される。なお、図示されていないが、シャワーヘッド13には、プラズマ処理装置10と同様に、第2の高周波電源17が第2の整合器18を介して接続されている。
【0065】
磁力線生成ユニット32は、磁石列27a,27b並びに磁石列27a及び磁石列27bの処理空間Sとは反対側の各端部を互いに接続するヨーク32aからなり、磁力線生成ユニット33は、磁石列28a,28b並びに磁石列28a及び磁石列28bの処理空間Sとは反対側の各端部を互いに接続するヨーク33aからなり、磁力線生成ユニット34は、磁石列29a,29b並びに磁石列29a及び磁石列29bの処理空間Sとは反対側の各端部を互いに接続するヨーク34aからなり、磁力線生成ユニット35は、磁石列30a,30b並びに磁石列30a及び磁石列30bの処理空間Sとは反対側の各端部を互いに接続するヨーク35aからなる。なお、磁石列27a〜30bは第1の実施の形態の磁石列27a〜30bと同じである。
【0066】
また、磁力線生成ユニット32においてヨーク32aは断面がT字状であり、図中上方へ移動自在に構成され、ヨーク32aが図中上方に移動した際、当該ヨーク32aは磁石列27aから離間する一方、磁石列27bとの当接を維持する。以下同様に、磁力線生成ユニット33において断面T字状のヨーク33aが図中上方に移動した際、当該ヨーク33aは磁石列28aから離間する一方、磁石列28bとの当接を維持し、磁力線生成ユニット34において断面T字状のヨーク34aが図中上方に移動した際、当該ヨーク34aは磁石列29aから離間する一方、磁石列29bとの当接を維持し、磁力線生成ユニット35において断面T字状のヨーク35aが図中上方に移動した際、当該ヨーク35aは磁石列30aから離間する一方、磁石列30bとの当接を維持する。
【0067】
例えば、磁力線生成ユニット32においてヨーク32aが磁石列27aから離間した場合、磁石列27aの両端部は開放されるため、磁石列27aの両端部間において生じる磁力線(図示しない)や磁石列27bの処理空間S側の端部とヨーク32aの端部との間において生じる磁力線(図示しない)が強くなり、相対的に磁力線27dが弱くなるので、磁力線27dは処理空間Sへ殆ど進入しない。これにより、磁力線生成ユニット32に対向する領域において磁界が弱まり、電子に作用するローレンツ力が低下するため、電子と処理ガスの分子や原子との衝突回数が減って生成されるプラズマが減る。その結果、磁力線生成ユニット32に沿う円環状のプラズマの密度が低下する。磁力線生成ユニット33においてヨーク33aが磁石列28aから離間した場合、磁力線生成ユニット34においてヨーク34aが磁石列29aから離間した場合、及び磁力線生成ユニット35においてヨーク35aが磁石列30aから離間した場合も、同様に、各磁力線生成ユニット33〜35に沿う円環状のプラズマの密度が低下する。このように、プラズマ処理装置31では各磁力線生成ユニット32〜35において個別に各ヨーク32a〜35bを各磁石列27a〜30aから離間させることによって各磁力線生成ユニット32〜35に沿う円環状のプラズマの密度を低下させることができ、これにより、処理空間Sにおけるプラズマ密度分布の制御幅を大きくすることができる。
【0068】
また、各磁力線生成ユニット32〜35では全てのヨーク32a〜35bを各磁石列27a〜30aから離間させる必要はなく、例えば、磁力線生成ユニット32において、ヨーク32aの一部のみを対応する磁石列27aの一部から離間させてもよく、これにより、ヨーク32aの一部に対応する領域におけるプラズマの密度のみを変化させることができる。さらに、例えば、磁力線生成ユニット32では、磁石列27aの処理空間S側とは反対側の端部とヨーク32aの端部とが空間を介して互いに磁界的に接続されるが、磁石列27aの処理空間S側とは反対側の端部とヨーク32aの端部との距離を変化させることにより、磁力線27dの強さを変化させることができ、もって、磁力線生成ユニット32に対向する領域のプラズマの密度を変化させることができる。
【0069】
なお、本実施の形態では、全ての磁力線生成ユニット32〜35においてヨークが磁石列から離間可能に構成されているが、磁力線生成ユニット32〜35のうち任意の幾つかにおいてのみ、ヨークが磁石列から離間可能に構成されてもよい。また、2つの磁石列の間に介在するヨークの透磁率を変化させる手段、例えば、該ヨークに他の磁束を通過させる手段を設け、透磁率を変化させることにより、2つの磁石列の間に発生する磁界の強度を変更させてもよい。
【0070】
次に、本発明の第3の実施の形態に係るプラズマ処理装置について説明する。
【0071】
本実施の形態は、その構成、作用が上述した第1の実施の形態と基本的に同じであるので、重複した構成、作用については説明を省略し、以下に異なる構成、作用についての説明を行う。
【0072】
図7は、本実施の形態に係るプラズマ処理装置の構成を概略的に示す断面図である。
【0073】
図7において、プラズマ処理装置36は、シャワーヘッド13に関して処理空間Sとは反対側に配置される複数の円環状の磁力線生成ユニット29,30,37,38を備える。磁力線生成ユニット29,30,37,38はシャワーヘッド13の上面13aにおいて、平面視で一の磁力線生成ユニットが1つ内側に配置された磁力線生成ユニットを囲むように、具体的には、上部電極板23の中心と同心円状に配置される。なお、図示されていないが、シャワーヘッド13には、プラズマ処理装置10と同様に、第2の高周波電源17が第2の整合器18を介して接続されている。
【0074】
磁力線生成ユニット37は、磁石列27b及び断面逆L字状のコアにコイルが巻回された複数の電磁石からなる電磁石列37aからなる。ここで、電磁石列37aでは複数の電磁石が円環状に配置され、磁力線生成ユニット37では、磁石列27bが電磁石列37aを囲むように、具体的には、互いに同心円状に配置される。また、磁力線生成ユニット38は、磁石列28a及び断面逆L字状のコアにコイルが巻回された複数の電磁石からなる電磁石列38aからなる。ここで、電磁石列38aでは複数の電磁石が円環状に配置され、磁力線生成ユニット38では、電磁石列38aが磁石列28aを囲むように、具体的には、互いに同心円状に配置される。なお、磁石列27b,28aは第1の実施の形態の磁石列27b,28aと同じであり、磁力線生成ユニット29,30は第1の実施の形態の磁力線生成ユニット29,30と同じである。
【0075】
磁力線生成ユニット37では、磁石列27b及び電磁石列37aの処理空間Sとは反対側の各端部が互いに接続される一方、磁石列27b及び電磁石列37aの処理空間S側の各端部が開放されるため、巻回されたコイルに電圧を印加して電磁石列37aに磁性を帯びさせた場合、当該処理空間S側の各端部間において磁力線37bが生じる。また、磁力線生成ユニット38でも、巻回されたコイルに電圧を印加して電磁石列38aに磁性を帯びさせた場合、磁石列28a及び電磁石列38aの処理空間S側の各端部間において磁力線38bが生じる。
【0076】
磁力線37bや磁力線38bは電磁石列37aや電磁石列38aが帯びる磁性によって強さが左右されるため、電磁石列37aや電磁石列38aが帯びる磁性を低下させることにより、磁力線37bや磁力線38bを処理空間Sへ殆ど進入させず、磁力線生成ユニット37や磁力線生成ユニット38に対向する領域における磁界を弱めることができる。その結果、磁力線生成ユニット37や磁力線生成ユニット38に沿う円環状のプラズマの密度を低下させることができる。一方、電磁石列37aや電磁石列38aが帯びる磁性を上昇させることにより、磁力線生成ユニット37や磁力線生成ユニット38に沿う円環状のプラズマの密度を上昇させることができる。これにより、処理空間Sにおけるプラズマ密度分布の制御幅を大きくすることができる。
【0077】
なお、本実施の形態では、磁力線生成ユニット37及び磁力線生成ユニット38が電磁石列を含むが、いずれの磁力線生成ユニットが電磁石列を含んでもよい。
【0078】
以上、本発明について、上記各実施の形態を用いて説明したが、本発明は上記各実施の形態に限定されるものではない。
【0079】
上記各実施の形態は、半導体デバイス用のウエハWにプラズマエッチング処理を施すプラズマ処理装置10だけでなく、LCD(Liquid Crystal Display)を含むFPD(Flat Panel Display)等に用いる各種基板や、フォトマスク、CD基板、プリント基板等へ所定のプラズマ処理を施すプラズマ処理装置にも適用することができる。例えば、上記各実施の形態では、上部電極板23が円板状を呈するが、FPDを処理するプラズマ処理装置では、上部電極板が矩形を呈する。この場合、各磁石列や各磁力線生成ユニットは多重の矩形を描くように配置されるのが好ましい。すなわち、各磁石列や各磁力線生成ユニットは上部電極板の外形と同じ形状を呈するように配置されるのが好ましい。
【0080】
また、上述した各実施の形態や変形例は互いに組み合わせて用いることもできる。例えば、磁力線生成ユニット27を処理空間Sに対して近接及び離脱自在に構成するとともに、磁石列27aが単独で処理空間Sに対して近接及び離脱自在に構成されてもよい。
【0081】
上述した各実施の形態では、サセプタ12にイオン引き込み用の高周波電力が印加され、シャワーヘッド13にプラズマ生成用の高周波電力が印加されるが、シャワーヘッド13にいずれの高周波電力も印加せず、サセプタ12へイオン引き込み用の高周波電力及びプラズマ生成用の高周波電力を印加してもよい。
【0082】
上述した各実施の形態では、シャワーヘッド13に印加されたプラズマ生成用の高周波電力に起因して上部電極板23に生じるセルフバイアス電位により、上部電極板23の近傍において処理空間Sから上部電極板23へ向かう電界Eが発生するが、印加される高周波電力の大きさが小さいと電界Eの強さが小さくなる。このとき、電子が受けるローレンツ力が低下するため、電子と処理ガスの分子や原子との衝突回数が減り、各磁力線生成ユニットに沿う円環状のプラズマの密度がさほど上昇せず、結果として処理空間Sにおけるプラズマ全体の密度分布の制御に円環状のプラズマが寄与できない虞がある。
【0083】
このような虞がある場合には、シャワーヘッド13の上部電極板23へ負の直流電圧を印加する第2の直流電源39を追加するか(
図8)、若しくは、シャワーヘッド13へプラズマ生成用の高周波電力とは別の高周波電力を印加する第3の高周波電源40を追加するのが好ましい(
図9)。これにより、処理空間Sにおける電界Eの強さを大きくすることができ、その結果、処理空間Sにおけるプラズマ全体の密度分布の制御に円環状のプラズマを確実に寄与させることができる。
【0084】
さらに、上述した各実施の形態では、シャワーヘッド13の上面13aに4重の磁力線生成ユニットが配置されたが、磁力線生成ユニットの数は特に限られず、ウエハWの大きさや実行されるプラズマエッチング処理の特性に応じて磁力線生成ユニットの数を任意に設定してもよい。また、上述した各実施の形態では、各磁力線生成ユニットが平面視で同心円状に配置されたが、一の磁力線生成ユニットが1つ内側に配置された磁力線生成ユニットを囲むならば、各磁力線生成ユニットが同心円状に配置されていなくてもよい。
【0085】
また、上述した各実施の形態では、全ての磁力線生成ユニットがシャワーヘッド13の上面13aに配置されたが、処理空間Sに対向可能な場所であれば、いずれの場所に磁力線生成ユニットを配置してもよい。例えば、
図10に示すように、円筒状のチャンバ11の側壁部に導電体又は半導電体からなる円環状の側壁電極41を設け、該側壁電極41の処理空間Sとは反対側の側面41aを取り囲むように磁力線生成ユニット42を設けてもよい。この磁力線生成ユニット42は処理空間Sに対して近接及び離脱自在に構成される。
【0086】
磁力線生成ユニット42は、側壁電極41の側面41aを取り囲むように配置された複数の永久磁石板からなる磁石列42aと、同様に配置された複数の永久磁石板からなる磁石列42bと、磁石列42a及び磁石列42bの処理空間S側とは反対側の各端部を互いに接続するヨーク42cとからなる。磁石列42a及び磁石列42bは、図中上下方向に関し、重ねられるように配置され、磁石列42aではS極が処理空間S側に位置するように各永久磁石板が配置され、磁石列42bではN極が処理空間S側に位置するように各永久磁石板が配置されるので、磁石列42a及び磁石列42bの処理空間S側の各端部間において磁力線42dが生じる。
【0087】
また、側壁電極41には第3の直流電源43から負の直流電圧が印加されるため、処理空間Sにおける側壁電極41の近傍には電界E’ が生じる。
【0088】
したがって、側壁電極41の近傍では電界E’と磁力線42dに起因する磁界とが交差する領域が発生する。当該領域においてはプラズマ中の電子が電界及び磁界に起因するローレンツ力を受けてドリフトする。その結果、処理空間Sにおいて磁力線生成ユニット42に沿う円環状のプラズマが発生する。
【0089】
ここで、磁力線生成ユニット42は処理空間Sに対して近接及び離脱自在に構成されるので、磁力線生成ユニット42が処理空間Sから遠ざかる度合いを調整することによって磁力線生成ユニット42に沿う円環状のプラズマの密度の低下度合いを調整することができる。
【0090】
図1のプラズマ処理装置の第2の変形例では、各磁石列が旋回したが、旋回によって磁界の磁束密度を時間的に平均化する場合、例えば、
図12に示すように、1つの磁石44a、44b、45a、45b、46a、46b、47a、47bを上部電極板23の中心回りに旋回させてもよい。
【0091】
上述した各実施の形態において隣接する2つの磁力線生成ユニットでは、各磁石列の処理空間S側の端部の磁極の配列が交互配列、例えば、S極、N極、S極、N極の配列となっていないが、
図13に示すように、各磁石列の処理空間S側の端部の磁極の配列が交互配列となってもよい。
【0092】
また、
図14に示すように、各磁力線生成ユニット50〜53を磁石列(27a、28b、29a、30b)と断面逆L字状のヨークの列(50a、51a、52a、53a)とで構成してもよく、さらに、
図15に示すように、各磁力線生成ユニット54〜57を断面逆U字状の永久磁石の列で構成してもよい。