(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年モバイル機器は全世界的に広く普及し、これに伴い、それらのモバイル機器に付属して流通しているACアダプタの廃棄物量が地球規模での環境問題を惹起するに到っている。これは、モバイル機器本体側とACアダプタ側との接触部の適合性が極めて限定されていることもその一因である。この場合、非接触で給受電を行う方式を適用すれば、接触部の適合性に関する問題は一応緩和される。しかしながら、この場合でも後述するような巻き線型のコイルにおける問題は残る。
【0003】
一方、地球環境に配慮した排ガス等の低減のための技術として、電気自動車などの開発が著しい進展を見せている。
電気自動車の充電のための電力供給方法として、最も一般的であるのは、ケーブルおよびコネクタ等によって直接電源に繋ぐコンセント式である。
他方、近年、種々の電気機器や装置等において、給受電を行う際の使い勝手を向上させるためにワイヤレスでの給受電技術の開発が行われている。
【0004】
ワイヤレス給受電における一つの方式として、2つのコイルの電磁誘導を利用する方式がある。電磁誘導を利用する方式は電動シェーバー等の一部の家電製品について既に普及を見ている。しかしながら、電磁誘導を利用する方式は、給受電が有効に機能する距離が極めて短いため、応用範囲は極めて限定的である。
ワイヤレス給受電における他の方式として、磁場の共振現象を利用する方式が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1における提案は、磁場共振型のワイヤレス給電技術における給電コイルへの電力伝送効率、特に、高周波数帯における電力伝送効率を高めることを主眼とするものである。
しかしながら、特許文献1の技術において適用されているような巻線型のコイルでは、配線の位置変化を完全に抑止できるような技術は未だ確立していない。このため、高周波での配線容量が十分に安定した薄型のコイルを形成することは難しい。またプリント基板を用いてコイルを形成する方式では、一定の厚さの製品において配線抵抗が高くなり易く、給受電の容量を大きくする場合の損失が大きくなり、給受電の効率が低下する傾向が顕著である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施例につき詳述することにより本発明を明らかにする。
【実施例1】
【0015】
図1および
図2は本発明の第1実施例としてのワイヤレス給電又は受電用コイルを構成する上層および下層の各コイル層を平面視で表す図である。
本例では、
図1のコイル層は、外部接続端子を有する上層のコイル層である。また、
図2のコイル層は、
図1のコイル層と上下の対を成すコイル層であって、外部接続端子を有しない下層のコイル層である。そして、
図1のコイル層と
図2のコイル層とを積層して第1実施例としてのワイヤレス給電又は受電用コイルを構成する。
【0016】
図1のコイル層(上層コイル層)10aでは、一以上(本例では7つ)のコイル導体エレメント121a、122a、123a、124a、125a、126a、127aで成る複数ターン(本例では7ターン)のコイルを基板11aに形成している。
図1では、上述の7つのコイル導体エレメント121a、122a、123a、124a、125a、126a、127aの集合に対して符号120aを附している。
【0017】
同様に、
図2のコイル層(下層コイル層)10bでは、
図1のコイル導体エレメント120aの各個のエレメントに対応して、平面視で略沿った配置の一以上(本例では7つ)のコイル導体エレメント121b、122b、123b、124b、125b、126b、127bで成る複数ターン(本例では7ターン)のコイルを基板11bに形成している。
図2では、上述の7つのコイル導体エレメント121b、122b、123b、124b、125b、126b、127bの集合に対して符号120bを附している。
【0018】
そして、
図2のコイル層10bにおけるコイル導体エレメント121b、122b、123b、124b、125b、126b、127bは
図1のコイル層10aのコイル導体エレメント121a、122a、123a、124a、125a、126a、127aに平面視で略沿った配置をとっている。
更に、コイル層10aのコイル導体エレメント120aのそれぞれとコイル層10bのコイル導体エレメント120bのそれぞれとは、各対応するエレメント同士で、コイルの始端または終端から1ターン以内の巻回区間内において(1周以内の区間において)既定の導通用導体であるスルーホール導体130,130,…によって導通を得る構成を採っている。この様子を
図3に概念図として示す。
【0019】
また、コイル層10aには、特に、接続用導体141の一端部が相対的に幅広の第1の外部接続導体部142を成している。更に、接続用導体143の一端部が相対的に幅広の第2の外部接続導体部144を成している。コイル層10aが上述のように外部接続端子を有するのに対し、コイル層10bは外部接続端子を有しない。但し、外部接続端子は必ずしも上層コイル層にのみ設ける態様に限られるものではない。
【0020】
そして、コイル層10aとコイル層10bとの積層によるワイヤレス給電又は受電用コイルでは、両コイル層10aと10bとがスルーホール導体130を通して接続されていることによって外部との接続は専らコイル層10aの第1および第2の外部接続端子142、144(何れかが入力又は出力端子)を通して行われる。
尚、コイル層10a、10bの断面構造は、
図9(b)に示されている通りである。
【0021】
図3を参照して概要が容易に理解されるとおり、ワイヤレス給電又は受電用コイルの第1および第2の外部接続端子142、144間でのコイル導体エレメント120a(その下に沿って位置するコイル導体エレメント120b)を通しての電流路は、コイルを成す環状部の略1ターン毎にコイル導体エレメント120aおよび120bを交互に渡って一方の外部接続端子から他方の外部接続端子に至る形をとる。
【0022】
従って、上層のコイル導体エレメント120aと下層のコイル導体エレメント120bとの各対応するエレメント間の、抵抗による電圧降下に起因する電位差は、最大でも略1ターン分の電圧降下を下回る値となる。
このため、絶縁体を挟んで対向するコイル導体エレメントの持つ容量(それによる蓄積電荷)が、一般的なワイヤレス給電又は受電用コイルにおけるよりも大幅に低減され、高周波での大電力の給受電によく適合する。
【0023】
尚、言うまでもなく、
図1および
図2により具体的に示した実施例1では、コイル導体エレメント120aおよび120bを交互に渡る部分の電流路はスルーホール導体130,130,…によって構成される。
以上、
図1ないし
図3を参照して説明したワイヤレス給電又は受電用コイルは、換言すれば、次のような構成を有する。即ち、一以上のコイル導体エレメント120a(120b)で成る複数ターンのコイルを基板11aに形成したコイル層10a(10b)を複数積層して構成したワイヤレス給電又は受電用コイルである。該コイルは、入力と出力の外部接続端子142、144を有し、複数のコイル層(10a、10b)のうち少なくとも隣接する上層コイル層10aと下層コイル層10bとは電気的に接続し、入力外部接続端子142は上層コイル層10aの第一のコイル導体エレメント121aの始端に接続し、その終端は下層コイル層の第一のコイル導体エレメント121bの始端に接続し、その終端は上層コイル層の第二のコイル導体エレメント122aの始端に接続し、その終端は下層コイル層の第二のコイル導体エレメント122bの始端に接続することを出力外部接続端子まで全てのコイル導体エレメントで繰り返し、上層コイル層10aのコイル導体エレメントと下層コイル層10bのコイル導体エレメントとは、上下で同じ位置(平面視で略沿った配置)に配置され、コイル導体エレメント120a(120b)は、メッキにより造られている。
【0024】
比較例として、一般的なワイヤレス給電又は受電用コイルでは、第1および第2の外部接続端子でのコイル導体エレメントを通しての電流路は、一方の外部接続端子から一方のコイル層のコイルを成す導体の全延長を通って後に、他方のコイル層に渡って、他方のコイルを成す導体の全延長を通ってから外部接続端子に至る形をとる。
従って、上層のコイル導体エレメントと下層のコイル導体エレメントとの各対応するエレメント間の、抵抗による電圧降下に起因する電位差は、一方のコイル層のコイルを成す導体の全延長分の抵抗による電圧降下に相応したものとなる。
【0025】
具体的な諸特性を次の表1に示す。
【0026】
【表1】
【0027】
比較の為、コイルは同じ導体高さ、同じサイズで設計しているが、コイル容量Cp値が48pF→6.6pFと激減しており、その為に自己共振周波数SRF値が8.9→23.5MHzと高周波側にシフトし、高周波での使用に適したものである事がわかる。
【実施例2】
【0028】
図4および
図5は、本発明の第2実施例としてのワイヤレス給電又は受電用コイルを構成する上層および下層の各コイル層を平面視で表す図である。
本例では、
図4のコイル層は、外部接続端子を有する上層のコイル層である。また、
図5のコイル層は、
図4のコイル層と上下の対を成すコイル層であって、外部接続端子を有しない下層のコイル層である。そして、
図4のコイル層と
図5のコイル層とを積層して第2の実施例としてのワイヤレス給電又は受電用コイルを構成する。
【0029】
図4のコイル層20aでは、基板21aに、一つの一連のコイル導体エレメント22aで成る複数ターンのコイルを形成している。
同様に、
図5のコイル層20bでは、
図4のコイル導体エレメント20aに対応して、基板21bに、平面視で略沿った配置の一つのコイル導体エレメント22bで成るコイルを形成している。
【0030】
更に、コイル層(上層コイル層)20aのコイル導体エレメント22aとコイル層(下層コイル層)20bのコイル導体エレメント22bのそれぞれとは、両エレメント同士で、コイルの始端または終端から1ターン以内の巻回区間内において(1周以内の区間において)既定の導通用導体である第1スルーホール導体23−1、第2スルーホール導体23−2によって導通を得る構成を採っている。
【0031】
また、コイル層20aには、特に、基板21aの周縁に臨む位置に第1端子部24−1を設けている。更に、基板21aの中心近傍位置に第2端子部24−2を設けている。コイル層20aが上述のように外部接続端子を有するのに対し、コイル層10bは外部接続端子を有しない。但し、外部接続端子は必ずしも上層コイル層にのみ設ける態様に限られるものではない。
【0032】
そして、コイル層20aとコイル層20bとの積層によるワイヤレス給電又は受電用コイルでは、両コイル層20aと20bとが第2スルーホール導体23−2を通して接続されていることによって外部との接続は専らコイル層20aの第1および第2の外部接続端子24−1、24−2を通して行われる。
尚、コイル層20a、20bの断面構造は、
図9(b)に示されている通りである。
【0033】
上述のような構成の第2実施例のワイヤレス給電又は受電用コイルでは、コイルの巻回の始端、終端に実質的に対応する第1端子部24−1、第2端子部24−2から1ターン以内の巻回区間内である直近の位置で、既定の導通用導体であるスルーホール導体23−1、23−2により両コイル導体エレメント22a、22b間の導通を得るように構成している。この様子を概念図として
図6に示す。
【0034】
従って、上層のコイル導体エレメント22aと下層のコイル導体エレメント22bとの各対応するエレメント間の、抵抗による電圧降下に起因する電位差は、極めて小さな値(略零と見做せる値)となる。
更に、スルーホール導体23−1および23−2によって、コイル導体エレメント22aと下層のコイル導体エレメント22bとが電気的には並列接続の関係になるため、この並列接続によって実効的に単位長さ当りの抵抗値が1/2になる上、直列接続の場合に比し、コイル導体エレメントとしての総延長が1/2になるような作用を生じる。このため、双方の作用の結果、直列接続された場合に比し、直流抵抗値が1/4になる。
【0035】
具体的な諸特性を次の表2に示す。
【0036】
【表2】
【0037】
コイル容量は実施例1よりも更に低下し、比較となる単線が48pFであるのに対し、2.9pFと非常に低い値となった。実施例1と同様に、それに伴って自己共振周波数SRF値が43.1MHzまで、更に高くなったことがわかる。
【0038】
以上、
図5ないし
図6を参照して説明したワイヤレス給電又は受電用コイルは、換言すれば、次のような構成を有する。即ち、一以上のコイル導体エレメント22a(22b)で成る複数ターンのコイルを基板21a(21b)に形成したコイル層20a(20b)を複数積層して構成したワイヤレス給電又は受電用コイルである。複数のコイル層20a(20b)のうち少なくとも隣接する上層コイル層20aと下層コイル20bとは電気的に接続し、コイル導体エレメント22a(22b)は始端と終端とを有し、上層コイル層の第一のコイル導体エレメント22aは、始端から並列に二つに分岐し、一つは下層コイル層20bの第一のコイル導体エレメント22bの終端まで延長し、他の一つは上層コイル層20aの第一のコイル導体エレメント22aの終端まで延長し、上層コイル層20aの第一のコイル導体エレメント22aと下層コイル層20bの第一のコイル導体エレメント22bとは、上下で同じ位置(平面視で略沿った配置)に配置され、コイル導体エレメント22a、22bは、メッキにより造られている。
【実施例3】
【0039】
(表皮効果に関する考察)
図7は、既述のようなワイヤレス給電又は受電用コイルのコイル導体エレメントにおいても生じる表皮効果について説明するための図である。
周知のとおり、表皮効果は、高周波電流が導体を流れる時、電流密度が当該導体の表面で高く、表面から深部に向かう程低くなる現象である。周波数が高くなるほど電流が表面へ集中するので、導体の交流抵抗は高くなる。
【0040】
断面が円形の導体を仮定し、電流が表皮電流の1/e≒0.37になる深さである表皮深さδを破線図示してある。
更に表皮効果の影響を低減するための解決手段を検討し、次のような方途を見出した。即ち、ワイヤレス給電又は受電用コイルのコイル導体エレメントを、略全延長に亘って複数に分割して相互間を絶縁した分割導体を成すようにし、且つ、両端部において既定の終端導体で接続するという構成を採るというものである。
【0041】
(表皮効果の影響を低減する構成)
図8は、上述の解決手段における表皮効果の影響を低減するための分割導体を表す概念図である。
図8(a)は分割導体を表す概念図であり、
図8(b)は、
図8(a)との対照のために分割しない導体を表す概念図である。
図8(a)を
図8(b)と対照して容易に理解されるとおり、この分割導体は、各個の一般的導体について、その導体幅を既定の配線分割数に従って分割し各別の分割導体間を絶縁した構成を採る。
【0042】
図9(a)は分割導体を適用したワイヤレス給電又は受電用コイルの断面を表す概念図である。
図9(b)は、
図9(a)との対照のために分割しない一般的導体を適用したワイヤレス給電又は受電用コイルの断面を表す概念図である。
図9(a)のワイヤレス給電又は受電用コイルでは、上層側のコイル層は、ソルダレジスト層1−1にフォトレジスト1−1fの上下に形成された複数の分割導体1−1cが
メッキで形成されている。また、ワイヤレス給電又は受電用コイルの、下層側のコイル層は、ソルダレジスト層1−2にフォトレジスト1−2fの上下に形成された複数の分割導体1−2cがメッキで形成されている。そして、上層側のコイル層と下層側のコイル層とをエポキシ樹脂等の絶縁層1−3を挟んで積層してワイヤレス給電又は受電用コイルを構成している。
【0043】
図9(a)のワイヤレス給電又は受電用コイルでは、コイルを成すコイル導体エレメント(分割導体)がそれぞれ断面が小さいものであるため、表皮効果の影響が抑制される。そして、これら断面が小さい分割導体を、後述するように、それらの端部で既定の終端導体で接続するため、電流路として並列に機能し、それらの断面積の総和が電流路として有効に作用する。
【0044】
図9(b)のような、分割しない一般的導体を適用したワイヤレス給電又は受電用コイルでは、上層側のコイル層は、ソルダレジスト層2−1にフォトレジスト2−1fの上下に形成された分割されない導体2−1cがメッキで形成されている。また、ワイヤレス給電又は受電用コイルの、下層側のコイル層は、ソルダレジスト層2−2にフォトレジスト2−2fの上下に形成された分割されない導体2−2cがメッキで形成されている。そして、上層側のコイル層と下層側のコイル層とをエポキシ樹脂等の絶縁層2−3を挟んで積層してワイヤレス給電又は受電用コイルを構成している。
【0045】
図
9(b)の構成では、各導体2−1c、2−2cでは、それらに生起する表皮効果によって、各断面の破線図示の内側では電流路として有効に機能し難く、高周波で用いる場合に損失が大きい。
上述のような分割導体を適用する場合の具体的な効果を次の表3に示す。
【0046】
【表3】
【0047】
(表皮効果を回避した実施例)
図10および
図11は本発明の第4実施例としてのワイヤレス給電又は受電用コイルを構成する上層および下層の各コイル層を平面視で表す図である。
この第4実施例は既述の第1実施例における各コイル導体エレメント120aおよび120bに替えて既述のような分割導体を適用している。
【実施例4】
【0048】
本例では、
図10のコイル層は、外部接続端子を有する上層のコイル層である。また、
図11のコイル層は、
図10のコイル層と上下の対を成すコイル層であって、外部接続端子を有しない下層のコイル層である。そして、
図10のコイル層と
図11のコイル層とを積層して第4実施例としてのワイヤレス給電又は受電用コイルを構成する。
図10のコイル層40aでは、既述のような分割導体であるコイル導体エレメント421a、422a、423a、424a、425a、426a、427aで成る複数ターンのコイルを基板41aに形成している。
【0049】
同様に、
図11のコイル層40bでは、
図10のコイル導体エレメント421a、422a、423a、424a、425a、426a、427aにそれぞれ対応して、平面視で略沿った配置のコイル導体エレメント421b、422b、423b、424b、425b、426b、427bで成るコイルを基板41bに形成している。これらコイル導体エレメント421b、422b、423b、424b、425b、426b、427bも、既述のような分割導体である。
【0050】
そして、
図11のコイル層40bにおけるコイル導体エレメント421b、422b、423b、424b、425b、426b、427bは
図11のコイル層40aのコイル導体エレメント421a、422a、423a、424a、425a、426a、427aに平面視で略沿った配置をとっている。
更に、コイル層40aのコイル導体エレメント421a、422a、423a、424a、425a、426a、427aのそれぞれとコイル層40bのコイル導体エレメント421b、422b、423b、424b、425b、426b、427bのそれぞれとは、各対応するエレメント同士で、コイルの始端または終端から1ターン以内の巻回区間内において(1周以内の区間において)既定の導通用導体であるスルーホール導体430,430,…によって導通を得る構成を採っている。即ち、スルーホール導体によって両コイル層40aおよび40bの各コイル導体エレメント間の導通を得る構成については既述の第1実施例と同様である。
【0051】
また、コイル層40aには、特に、接続用導体441の一端部が相対的に幅広の第1の外部接続導体部442を成している。更に、接続用導体143の一端部が相対的に幅広の第2の外部接続導体部444を成している。コイル層40aが上述のように外部接続端子を有するのに対し、コイル層40bは外部接続端子を有しない。但し、外部接続端子は必ずしも上層コイル層にのみ設ける態様に限られるものではない。
【0052】
そして、コイル層40aとコイル層40bとの積層によるワイヤレス給電又は受電用コイルでは、両コイル層40aと40bとがスルーホール導体430を通して接続されていることによって外部との接続は専らコイル層40aの第1および第2の外部接続端子442、444を通して行われる。
尚、コイル層40a、40bの断面構造は、
図9(a)に示される通りである。
【0053】
この第4実施例は、第1実施例における各コイル導体エレメント120aおよび120bに替えて既述のような分割導体を適用した構成を採っている。
このため、第1実施例における作用効果に加えて、表皮効果による影響を低減でき、一層高周波大電流用途に適する。
第4実施例における具体的な効果を次の表4に示す。
【0054】
【表4】
【実施例5】
【0055】
図12および
図13は、本発明の第5実施例としてのワイヤレス給電又は受電用コイルを構成する上層および下層の各コイル層を平面視で表す図である。
この第5実施例は既述の第2実施例における各コイル導体エレメント22aおよび22bに替えて既述のような分割導体を適用している。
本例では、
図12のコイル層は、外部接続端子を有する上層のコイル層である。また、
図13のコイル層は、
図12のコイル層と上下の対を成すコイル層であって、外部接続端子を有しない下層のコイル層である。そして、
図12のコイル層と
図13のコイル層とを積層して第5の実施例としてのワイヤレス給電又は受電用コイルを構成する。
【0056】
図12のコイル層50aでは、基板51aに、既述のような分割導体である一連のコイル導体エレメント52aで成る複数ターンのコイルを形成している。
同様に、
図13のコイル層50bでは、
図12のコイル導体エレメント50aに対応して、基板51bに、既述のような分割導体である一連のコイル導体エレメント52bで成るコイルを形成している。
【0057】
更に、コイル層50aのコイル導体エレメント52aとコイル層50bのコイル導体エレメント52bのそれぞれとは、両エレメント同士で、コイルの始端または終端から1ターン以内の巻回区間内において(1周以内の区間において)既定の導通用導体である第1スルーホール導体53−1、53−2によって導通を得る構成を採っている。即ち、スルーホール導体によって両コイル層50aおよび50bの各コイル導体エレメント間の導通を得る構成については既述の第2実施例と同様である。
【0058】
また、コイル層50aには、特に、基板51aの周縁に臨む位置に第1端子部54−1を設けている。更に、基板51aの中心近傍位置に第2端子部54−2を設けている。コイル層50aが上述のように外部接続端子を有するのに対し、コイル層50bは外部接続端子を有しない。但し、外部接続端子は必ずしも上層コイル層にのみ設ける態様に限られるものではない。
【0059】
そして、コイル層50aとコイル層50bとの積層によるワイヤレス給電又は受電用コイルでは、両コイル層50aと50bとが第2スルーホール導体53−2を通して接続されていることによって外部との接続は専らコイル層50aの第1および第2の外部接続端子54−1、54−2を通して行われる。
尚、コイル層50a、50bの断面構造は、
図9(a)に示される通りである。
【0060】
上述のような構成の第5実施例のワイヤレス給電又は受電用コイルでは、コイルの巻回の始端、終端に実質的に対応する第1端子部54−1、第2端子部54−2から1ターン以内の巻回区間内である直近の位置で、既定の導通用導体であるスルーホール導体53−1、53−2により両コイル導体エレメント22a、22b間の導通を得るように構成している。
【0061】
従って、上層のコイル導体エレメント52aと下層のコイル導体エレメント52bとの各対応するエレメント間の、抵抗による電圧降下に起因する電位差は、極めて小さな値(略零と見做せる値)となる。
このため、絶縁体を挟んで対向するコイル導体エレメントの持つ容量(それによる蓄積電荷)が極めて小さく、高周波での大電力の給受電によく適合する。
【0062】
この第5実施例は、第2実施例における各コイル導体エレメント22aおよび22bに替えて既述のような分割導体のコイル導体エレメント52aおよび52bを適用した構成を採っている。
このため、第2実施例における作用効果に加えて、表皮効果による影響を低減でき、一層高周波大電流用途に適する。
【0063】
表5に実施例5の効果をまとめた特性を、表6に無線充電コイルとして使用した時の単層リッツ線コイルとの通信距離を比較したデータを記す。F/Q値が高まり、SRFも十分に高い特性である事から、単層リッツ線と比較してより長い高効率での通信距離が得られる。
【0064】
【表5】
【0065】
【表6】
【0066】
上掲の第1実施例ないし第5実施例は、既述のように高周波特性に優れるため、第1実施例ないし第5実施例のようなワイヤレス給電又は受電用コイルと、該コイルからの電流を処理する処理回路と、該回路からの信号を出力する端子と、を備えて給電又は受電ユニットを構成することは推奨できる。
【0067】
本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらすすべての実施形態をも含む。さらに、本発明の範囲は、請求項1により画される発明の特徴の組み合わせに限定されるものではなく、全ての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画され得る。
【符号の説明】
【0068】
10a、10b…………………………コイル層
11a、11b…………………………基板
120a、120b……………………コイル導体エレメント
130……………………………………スルーホール導体
142……………………………………第1の外部接続導体部
144……………………………………第2の外部接続導体部
20a、20b…………………………コイル層
21a、21b…………………………基板
22a、22b…………………………コイル導体エレメント
23−1…………………………………第1スルーホール導体
23−2…………………………………第2スルーホール導体
1−1、1−2…………………………ソルダレジスト層
1−1c、1−2c……………………分割導体
1−1f、1−2f……………………フォトレジスト
1−3……………………………………絶縁層
40a、40b…………………………コイル層
41a、41b…………………………基板
421a、422a、…、427a…コイル導体エレメント
421b、422b、…、427b…コイル導体エレメント
430……………………………………スルーホール導体
442……………………………………第1の外部接続導体部
444……………………………………第2の外部接続導体部
50a、50b…………………………コイル層
51a、51b…………………………基板
52a、52b…………………………コイル導体エレメント
53−1…………………………………第1スルーホール導体
53−2…………………………………第2スルーホール導体