(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この観察画像において、単位画素が小さいほど画質が高くなるが、通常、単位画素は、電子線の直径の1/2程度より大きなサイズとされる。例えば、直径100nmの電子線を用いる場合は、単位画素のサイズは50nm以上とされる。例えば、単位画素のサイズが50nmであって、1画素を3nsで走査する場合には、1cm
2の面積の中には50nm四方の単位画素が4×10
10個含まれるので、1cm
2を走査するのに120秒必要になる。したがって、例えば直径300mmのウェハの表面全体を走査するのには、90時間以上かかることになる。ウェハやマスクの大型化に伴って、観察に要する時間も長時間化しており、これが生産速度の歩留まりの要因の一つとなっている。
【0006】
観察所要時間を短くするために、走査速度を速くするということが考えられる。ここで、観察画像の画質は2次電子等の量によるので、画質を落とさずに走査速度を速くするためには、単位時間当たりに検出する2次電子等の量を多くしなければならず、そのために照射する電子線の量を多くする(電流を大きくする)必要がある。
【0007】
しかしながら、電子線には、同一空間に多くの電子があると、それらの負電荷によるクーロン効果によって電子同士が互いに反発しあい、電子線が広がってしまうという性質(空間電荷効果)がある。また、この電子線の広がりは、加速電圧が低いほど大きくなる。よって、分解能(即ち電子線の径)を決めると、電流の最大値が原理的に限定され、それによって最高走査速度も限定されてしまい、それ以上走査速度を上げることはできないことになる。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、電子線を走査して試料を観察するにあたって、高い分解能を有するとともに、電子線の走査に要する時間を短くできる試料観察装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記従来の課題を解決するために、本発明の試料観察装置は、ステージに載置された試料に電子線を照射して試料からの電子線を検出することにより、前記試料を観察する試料観察装置であって、前記試料に電子線を照射して、前記試料からの電子線を検出するための1つの電子コラムを備え、前記1つの電子コラムは、それぞれ前記試料に照射される電子線及び試料からの電子線が通る電子線路を形成する複数の電子線照射検出系 を有し、前記複数の電子線照射検出系を同時に用いることで、複数の電子線を同時に前記試料に照射して、前記試料を観察する構成を有している。
【0010】
この構成により、試料観察装置は、1つの電子コラムの中に複数の電子線照射検出系を有し、それらの複数の電子線照射検出系を同時に用いて複数の電子線を同時に試料に照射して試料を観察するので、試料を観察するための電子線の走査に要する時間を短縮することができる。また、複数の電子線を同時に試料に照射するために、1つの電子線照射検出系を有する従来の電子コラムを複数用いるのではなく、1つの電子コラムの中に複数の電子線照射検出系を構成したので、隣り合う電子線の間隔を短くすることができ、これにより、試料に対して同時に照射できる電子線の数を多くすることができる。ここで、電子線照射検出系とは、電子銃から放出された電子線を集束、偏向して試料に照射するための電子線路を形成するとともに、その電子線路を通ってきた試料からの電子線を検出するシステムをいう。上記の試料観察装置では、このようなシステムが1つの電子コラムに複数形成される。
【0011】
上記の試料観察装置において、前記電子コラムは、1つの筒体と、前記筒体に被せられる電子銃ハウジングとを有し、さらに、前記電子線照射検出系ごとに、前記筒体内で積層されるレンズ、デフレクタ、及び検出器を含む複数の部品と、前記電子銃ハウジング内に収容されて、前記各電子線路に電子線を照射するための複数の電子銃とを有していてよい。この構成により、1つの電子コラムに、複数の電子線照射検出系に対応する複数セットの複数の部品及び電子銃が設けられるので、装置の小型化を実現できる。
【0012】
上記の試料観察装置において、前記レンズは静電レンズであり、前記デフレクタは静電デフレクタであってよい。一般的には、電子線照射検出系のレンズ及びデフレクタとしては、静電方式のレンズ及びデフレクタのほか、磁場方式のレンズ及びデフレクタを採用することも考えられる。しかしながら、本発明の試料観察装置は、上述のように、1つの電子コラムの中に複数の電子線照射検出系が形成されており、隣り合う電子線照射検出系の距離が近い。この場合に、磁場方式のレンズ及びデフレクタを用いると、磁場漏れによる隣の電子線照射検出系への影響が顕著となる。これに対して、本発明の試料観察装置では、静電方式のレンズ及びデフレクタを用いているので、隣り合う距離が近い複数の電子線照射検出系が形成された電子コラムにおいても、磁場漏れによる影響を回避できる。また、磁場方式のレンズ及びデフレクタは、コイル及びその周りに巻かれたヨークを必要とし、大型化してしまう。上記の試料観察装置は、レンズ及びデフレクタを静電方式にしているので、磁場方式にした場合の装置の大型化を回避できる。このように、レンズ及びデフレクタに静電方式を採用することで、1つの電子コラムの中により多くの電子線照射検出系を構成することができ、試料に対して同時に照射できる電子線の数を多くすることができる。
【0013】
上記の試料観察装置において、前記筒体内にて積層される複数の部品の各々の間には、それぞれ、抵抗10
9〜10
12Ωcmの導電性のセラミックからなるスペーサが配設されてよい。この構成により、電子コラムの熱膨張を抑え、組み立て精度を高くできる。
【0014】
上記の試料観察装置において、複数の前記スペーサは、同じ材料で構成されてよい。この構成により、すべてのスペーサの熱膨張率を同じにすることができ、電子コラム全体として熱膨張による影響を小さくできる。
【0015】
上記の試料観察装置において、前記筒体は、前記スペーサと同じ材料で構成されてよい。この構成により、電子コラムの組み立て精度をより高くできる。
【0016】
上記の試料観察装置において、前記スペーサは、前記電子線路に対して露出していてよい。この構成により、スペーサを電子線路から隠す構成と比べて、電子コラムを小型化できる。
【0017】
上記の試料観察装置において、前記電子コラムは、さらに、前記筒体の外周面に沿って設けられ、かつ外部電源を前記部品に接続するための導電線が配線された配線フィルムを有し、前記筒体及び前記配線フィルムにおける、前記部品の端子に対応する位置に配線孔が設けられ、前記配線孔に挿入されるコンタクトピンによって、前記部品の端子と前記配線フィルムの導電線とが電気的に接続されてよい。この構成により、筒体内の各部品と外部電源との電気的な接続を実現できる。
【0018】
上記の試料観察装置において、前記筒体の配線孔と前記コンタクトピントが螺合することにより、前記コンタクトピンが保持されてよい。この構成により、特別な保持部材を必要とすることなく、コンタクトピンを筒体に保持できる。
【0019】
上記の試料観察装置において、前記配線フィルムは、前記導電線となる金属層と前記金属層の両面を挟む絶縁層とで構成され、前記配線フィルムの配線孔には前記導電線のフランジが形成され、前記フランジに前記コンタクトピンの頭部が当接することで、前記コンタクトピンと前記導電線とが電気的に接続されてよい。この構成により、コンタクトピンと配線フィルム内の導電線との接触面積を大きくすることができ、接続不良の可能性を低減できる。
【0020】
上記の試料観察装置において、前記配線フィルムと前記筒体との間に、さらに接地コーディングが介在してよい。この構成により、配線フィルムと筒体との間に隙間があった場合にも、その隙間で放電されることを防止できる。
【0021】
前記デフレクタは、互いに対向する2つの電極を含む複数の電極を有し、前記互いに対向する2つの電極のうちの、一方からその端子への導電線はデフレクタの表面に配線され、他方からその端子への導電線はデフレクタの裏面に配線されてよい。このように配線をすることで、1つの電子コラムに複数の電子線照射検出系を形成することによって必要となる平面内の多くの導電線を互いに干渉することなく形成できる。
【0022】
前記電子銃は、レーザ光を発射するレーザ光源と、前記レーザ光源から発射されたレーザ光によるプラズマ小空間を形成するためのガス封入管と、前記ガス封入管から放出される不可視光線を伝搬するファイバと、前記ファイバの先端に設けられ、前記ガス封入管から放出されて前記ファイバを伝搬してきた不可視光線を受けて電子を放出する光電材料と、前記光電材料から放出された電子を引き出すアノードとを備えたものであってよい。この構成により、電子銃ハウジングには、少なくともファイバの先端部分、そこに設けられた光電材料、及びアノードのみを収容すればよく、他の構成要素は大気中に配置することが可能であるので、電子銃から照射する電子線同士の間隔を小さくすることができ、1つの電子コラムの中により多くの電子線照射検出系を構成することができ、試料に対して同時に照射できる電子線の数を多くすることができる。また、出力を上げた場合にも、確実にファイバの先端のみから電子を放出することが可能であり、照射ビームが望まない軌道を通ることによる観察画像のぼけを防止ないしは軽減して、観察画像の解像度を向上できる。
【0023】
前記電子銃は、レーザ光を発射するレーザ光源と、前記レーザ光源から発射されたレーザ光によるプラズマ小空間を形成するためのガス封入管と、前記ガス封入管から放出される不可視光線の一部を通過させるアパーチャと、前記アパーチャが入力面に設けられ、前記アパーチャを通過した不可視光線を伝搬する基材と、前記基材の出力面に設けられ、前記基材を伝搬してきた不可視光線を受けて電子を放出する光電材料と、前記光電材料から放出された電子を引き出すアノードとを備えたものであってよい。この構成により、電子銃ハウジングには、少なくともアパーチャ、基材及び光電材料からなる電子放出素子とアノードのみを収容すればよく、他の構成要素は大気中に配置することが可能であるので、電子銃から照射する電子線同士の間隔を小さくすることができ、1つの電子コラムの中により多くの電子線照射検出系を構成することができ、試料に対して同時に照射できる電子線の数を多くすることができる。また、出力を上げた場合にも、確実に光電材料のみから電子を放出することが可能であり、照射ビームが望まない軌道を通ることによる観察画像のぼけを防止ないしは軽減して、観察画像の解像度を向上できる。さらに、この構成により、エネルギー幅の狭い電子線をより多く放出できる。また、構造が簡単であるのでコストを抑えることもできる。さらに、この構成により、ウェネルトが必要ないので、ビームが広がりを抑えて透過率を向上できる。
【0024】
上記の試料観察装置において、前記検出器は、前記試料から前記電子線路を通って戻ってくる電子線を曲げて電子を捕集して、捕集した電子を増幅させる電子増幅器と、前記電子増幅器にて増幅されて前記電子増幅器から放出された電子を吸収するアノードとを備え、前記アノードで吸収した電子の量に基づいて、前記試料からの電子の量を測定してよい。この構成により、照射のための電子線路と検出のための電子線路とを別々に用意する必要はなく、1つの電子線路で照射及び検出を行なうことができるので、1つの電子線照射検出系を小型化でき、1つの電子コラムの中に形成する電子線照射検出系の数を増やすことができる。
【0025】
上記の試料観察装置において、前記検出器は、前記試料の表面から、前記電子線照射検出系の走査幅の200倍以上離れた距離に設置されてよい。この構成により、試料からの電子線を高効率で捕集できる。
【0026】
上記の試料観察装置において、前記検出器は、前記試料から前記電子線路を通って戻ってくる電子線を曲げて電子を捕集して、捕集した電子を、その電子の量に応じた強度の光に変換するシンチレータと、前記シンチレータから入射された前記光を伝達するライトガイドと、前記ライトガイドによって伝達されて入射された前記光の強度に応じた信号を出力する光電子増倍管とを備え、前記信号に基づいて、前記試料からの電子の量を測定してよい。この構成によっても、照射のための電子線路と検出のための電子線路とを別々に用意する必要はなく、1つの電子線路で照射及び検出を行なうことができるので、1つの電子線照射検出系を小型化でき、1つの電子コラムの中に形成する電子線照射検出系の数を増やすことができる。
【0027】
上記の試料観察装置において、前記検出器は、複数の前記シンチレータを備え、前記複数のシンチレータにおける電子の捕集率の分布に応じて、補正を行なってよい。この構成により、補集できる電子の量を増加できるとともに、場所による補集率の分布に基づいて、試料からの電子を均等に補集し、補集位置が偏らないように補正することもできる。
【0028】
上記の試料観察装置において、前記シンチレータは、入射した電子を前記光電子倍増管に向けて反射する斜ミラーを内蔵していてよい。この構成により、光電子倍増管に効率よく光を伝達できる。
【0029】
上記の試料観察装置において、前記電子銃ハウジングは、前記複数の電子銃にそれぞれ対応する複数のハウジング孔を備え、前記電子線観察装置は、さらに、バルブを備え、前記バルブは、前記複数のハウジング孔をそれぞれ囲う複数のOリングと、前記複数のハウジング孔にそれぞれ対応する複数のバルブ孔とを備え、前記複数のOリングが囲う領域と前記複数のバルブ孔とは位置がずれて前記バルブに設けられており、前記バルブが前記電子銃ハウジングに対して移動することにより、前記Oリングで前記ハウジング孔を塞ぎ、又は、前記電子銃からの電子線を前記バルブ孔に通過させてよい。この構成により、バルブの位置を僅かに移動させるという簡単な操作で電子銃からの電子線を通過させたり、電子銃ハウジングを密閉したりできる。
【0030】
上記の試料観察装置において、前記筒体は、下端部に、前記複数の電子線照射検出系にそれぞれ対応する複数の筒体孔を備え、前記電子線観察装置は、さらに、バルブを備え、前記バルブは、前記複数の筒体孔をそれぞれ囲う複数のOリングと、前記複数の筒体孔にそれぞれ対応する複数の筒体孔とを備え、前記複数のOリングが囲う領域と前記複数のバルブ孔とは位置がずれて前記バルブに設けられており、前記バルブが前記筒体に対して移動することにより、前記Oリングで前記筒体孔を塞ぎ、又は、前記電子銃からの電子線を前記バルブ孔に通過させてよい。この構成によっても、バルブの位置を僅かに移動させるという簡単な操作で電子銃からの電子線を通過させたり、電子銃ハウジング及び筒体からなる空間を密閉したりできる。
【0031】
上記の試料観察装置において、前記デフレクタは、マクロ走査を行うために第1の交流電圧が印加される上側電極と、ミクロ走査を行うために第1の交流電圧よりも振幅が小さく周波数が高い第2の交流電圧が印加される下側電極とを有していてよい。この構成により、ミクロ走査では照射する電子線を高周波で偏向できるので、走査速度が速くなり、試料の検査時間を短縮できる。
【0032】
上記の試料観察装置において、前記複数の電子線照射検出系の各々の前記上側電極は、電源を共有してよい。この構成により、コストを削減できるとともに、電子コラムを小型化できる。
【0033】
本発明の別の態様は、上記のいずれかの試料観察装置を用いて行う試料観察方法であって、前記複数の電子線照射検出系を同時に用いて、複数の電子線により前記試料を観察し、それらの観察結果を合成して観察画像を生成する構成を有している。この構成により、複数の電子線照射検出系を同時に用いて複数の電子線を同時に試料に照射して試料を観察するので、試料を観察するための電子線の走査に要する時間を短縮することができる。
【0034】
上記の試料観察方法において、前記複数の電子線照射検出系の各々電子線の照射位置特性を予め取得して、かつ記憶しておき、前記電子線照射検出系より得られた各々の結果を前記照射位置特性に応じて較正してよい。
【0035】
本発明の試料観察方法では、複数の電子線照射検出系を1つの電子コラム内に有する試料観察装置を用いて試料の観察を行っているので、各電子線照射検出系から照射される電子線の位置を正確に検知しておかなければ、各電子線照射検出系における観察結果を合成する際に、誤差ができてしまい、観察画像が不連続になってしまう。上記の試料観察方法によれば、各電子線照射検出系における観察結果が、各電子線照射検出系の照射位置特性に応じて較正されるので、合成によって連続した観察画像が得られる。
【0036】
上記の試料観察方法において、前記複数の電子線照射検出系の各々における基準の電子線を用いて、テストマークを検出し、前記テストマークを検出したときのステージとの相対的な位置関係に基づいて、前記複数の電子線照射検出系の各々の前記照射位置特性を取得してよい。この構成によれば、テストマークを利用して容易に各電子線検出系の照射位置特性を取得できる。
【0037】
上記の試料観察方法において、前記複数の電子線照射検出系の各々の前記照射位置特性は、前記電子線照射検出系の複数の倍率について取得してよい。この構成によれば、電子線照射検出系の各倍率に応じて、照射位置特性が得られ、より正確な較正を行うことができる。
【0038】
上記の試料観察方法において、前記ステージに載置された試料の複数の点について、フォーカス調整値を予め取得して、かつ記憶しておき、前記複数の電子線照射検出系により前記試料を観察するときに、前記試料の観察位置に応じて、前記フォーカス調整値に応じて前記複数の電子線照射検出系のフォーカス調整を行ってよい。この構成によれば、ステージの傾き、試料の傾き、及び/又は電子コラムの傾き等による観察画像の画質低下(ピンボケ)を軽減できる。
【0039】
上記の試料観察方法において、前記試料は、同一パターンの複数のダイがマトリクス状に配置されたものであり、前記複数のダイ同士を比較することにより、ダイの欠陥を観察してよい。この構成により、複数の電子線照射検出系を1つの電子コラム内に有する試料観察装置を用いて試料のダイ/ダイ比較によるダイの欠陥検査を行うことができる。
【0040】
上記の試料観察方法において、前記複数の電子線照射検出系の各々がそれぞれの担当するダイを観察し、前記電子線照射検出系における観察結果同士を比較することにより、前記ダイの欠陥を観察してよい。この構成によれば、各電子線照射検出系からの検査結果を比較することで、ダイ/ダイ比較を行うことができる。
【0041】
上記の試料観察方法において、前記複数の電子線照射検出系の各々において、前記担当するダイが観察できる位置にないときに観察を停止してよい。この構成によれば、ダイのピッチと電子線照射検出系の配列ピッチとが合わない場合にも、各電子線照射検出系からの検査結果を比較することで、ダイ/ダイ比較を行うことができる。
【0042】
上記の試料観察方法において、前記複数の電子線照射検出系の各々において、照射される電子線の前記電子線照射検出系による偏向とステージの移動とを繰り返すことで、複数のダイにおける互いに対応する一部分の観察を終了した後に、当該一部分について観察結果同士を比較してよい。この構成によれば、電子線の偏向可能範囲よりも大幅にサイズの大きいダイについて、電子線照射検出系ごとのダイ/ダイ比較を行なう事ができるとともに、比較可能な部分のデータが得られた段階で比較を行なうので、必要とされるメモリ容量を抑える事ができる。
【発明の効果】
【0043】
本発明によれば、試料観察装置は、1つの電子コラムの中に複数の電子線照射検出系を有し、それらの複数の電子線照射検出系を同時に用いて複数の電子線を同時に試料に照射して試料を観察するので、分解能を低下させることなく、試料を観察するための電子線の走査に要する時間を短縮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。以下では、電子線を用いて試料を観察する試料観察装置として、ウェハやマスクの欠陥を検査するための電子線検査装置を説明する。
【0046】
1.全体構成
図2は、電子線検査装置1000の全体構成を示す図である。
図2に示すように、電子線検査装置1000は、試料キャリア(ロードポート)901と、ミニエンバイロメント902と、ロードロック903と、トランスファチャンバ904と、メインチャンバ905と、除振台906と、電子コラム907と、画像処理ユニット908と、制御ユニット909とを備えている。電子コラム907は、メインチャンバ905の上部に取り付けられる。
【0047】
試料キャリア901には、検査対象となる試料が収納されている。ミニエンバイロメント902には、図示しない大気中の搬送ロボット、試料アライメント装置、クリーンエアー供給機構等が設けられる。試料キャリア901内の試料は、ミニエンバイロメント902内に搬送され、その中で、試料アライメント装置によってアライメント作業が行なわれる。試料は、大気中の搬送ロボットにより、ロードロック903に搬送される。
【0048】
ロードロック903は、大気から真空状態へと、真空ポンプにより排気される。圧力が一定値(例えば1Pa)以下になると、トランスファチャンバ904に配置された図示しない真空中の搬送ロボットにより、メインチャンバ905に搬送される。このように、常に真空状態であるトランスファチャンバ904にロボットが配置されるので、圧力変動によるパーティクル等の発生を最小限に抑制することが可能である。
【0049】
メインチャンバ905には、x方向、y方向、及びθ(回転)方向に移動するステージ910が設けられ、ステージ910の上に静電チャックが設置される。静電チャックには試料そのものが設置される。あるいは、試料は、パレットや治具に設置された状態で静電チャックに保持される。メインチャンバ905は、図示しない真空制御系により、真空状態が維持されるよう制御される。また、メインチャンバ905、トランスファチャンバ904及びロードロック903は、除振台906上に載置され、床からの振動が伝達されないように構成されている。
【0050】
また、メインチャンバ905には1つの電子コラム907が設置されている。この電子コラム907からの検出信号は画像処理ユニット908に送られて処理される。制御ユニット909は、画像処理ユニット908等を制御する。画像処理ユニット908は、この制御により、オンタイムの信号処理及びオフタイムの信号処理の両方が可能である。オンタイムの信号処理は、検査を行なっている間に行なわれる。オフタイムの信号処理を行う場合、画像のみが取得され、後に信号処理が行われる。
【0051】
画像処理ユニット909で処理されたデータは、ハードディスクやメモリなどの記録媒体に保存される。また、必要に応じて、コンソールのモニタにデータを表示することが可能である。表示されるデータは、例えば、観察画像、検査領域、異物数マップ、異物サイズ分布/マップ、異物分類、パッチ画像等である。
【0052】
2.マルチSEM構造
次に、電子コラム907について説明する。本実施の形態の電子コラム907は、1つの筒体内に複数の電子銃および各電子銃からの電子線が通過する電子線路を備え、電子線照射検出系が複数形成されたマルチSEMである。
図1は、電子コラム907の構成を示す図である。電子コラム907のハウジングは、筒体50と電子銃ハウジング60によって構成される。筒体50には、後述する各種の部品10〜19が収納される。筒体50は、円筒形状であり、電子銃ハウジング60は筒体の上部開口に被せられ、上部が密閉された円筒状の部品である。なお、筒体50は、中空の四角柱であってもよい。
【0053】
筒体50内には、上から第1デフレクタ(アライナ)10、集束レンズ11、第2デフレクタ(アライナ)12、アパーチャ13、検出器14、第3デフレクタ(アライナ)15、対物レンズ16、第4デフレクタ(アライナ)17、第5デフレクタ(アライナ)18、電極19の各部品が、それぞれの間にスペーサ20〜28を介在させて、この順に積層される。上記の各部品は、上下方向に対応する部分に孔を有し、これらの孔によって電子線路EPが形成される。
【0054】
図3は、本実施の形態の筒体50の平面図である。
図3は、筒体50が円筒形状である例を示している。筒体50の中には、二列に並んだ合計8つの電子線路EPが形成されている。
図4は、本実施の形態の筒体50の他の例の平面図である。
図4は、筒体50が四角柱形状である例を示している。この場合にも、筒体50の中には、二列に並んだ合計8つの電子線路EPが形成されている。
【0055】
図1に戻って、電子銃ハウジング60内には、電子銃30、30と、真空ポンプ40が収納される。電子銃30、30は、TFE(Thermal Field Emission)電子銃(熱電界放出電子銃)やFE(Field Emission)電子銃(電界放出電子銃)であってよい。また、真空ポンプ40は、イオンポンプであってよく、ゲッタポンプであってもよい。
【0056】
複数の電子線を同時に試料に照射して走査を行う場合には、電子線路同士の間隔を小さくして、試料に同時に照射できる電子線の本数(電子線照射検出系の個数)を多くすることが有利である。電子コラムが大型化して電子線同士の間隔が大きくなると、同時に走査できる電子線の本数が少なくなり、マルチSEMのメリットが減少してしまう。例えば、幅200mmの試料に対して、各電子線照射検出系の間の最小間隔が100mmであれば、幅方向に2つより多い電子線を同時に照射することはできない。
【0057】
ここで、1つの試料に同時に複数の電子線を照射するための構成としては、例えば、1つの電子線照射検出系が設けられた筒体からなる電子コラムを複数並べた構成を採用することもできる。これに対して、本実施の形態では、1つの筒体内に複数の電子線照射検出系を形成しているので、1つの電子線照射検出系が設けられた筒体からなる電子コラムを複数並べる場合と比較して、各電子線間の距離を小さくでき、試料に対して同時に照射できる(走査できる)電子線の本数を多くすることができる。
【0058】
3.電子銃
上述のように、電子銃30には、従来のTFE電子銃やFE電子銃を用いることができるが、以下に説明する他の形態の電子銃を用いてもよい。
【0059】
3−1.TFE電子銃
まず、TFE電子銃を説明する。
図5は、TFE電子銃の構成を示す図である。TFE電子銃31は、先端が尖ったカソードチップ311と、ウェネルト312と、アノード313を備える。TFE電子銃31の幅方向のサイズは20mm程度であり、従って、2つのTFE電子銃31を最大限に近づけると、照射される電子線のピッチは20mm程度となる。なお、上記の構成において、カソードチップ311、ウェネルト312、及びアノード313のほかに、ヒータ用電源314及びウェネルト用電源316が、電子銃ハウジング60に収容される。
【0060】
カソードチップ311には、ヒータ用電源314からヒータ用電圧が印加され、カソード用電源315から−50〜−10kV程度のカソード用電圧が印加される。また、ウェネルト312には、ウェネルト用電源316から可変電圧が印加される。
【0061】
カソードチップ311は、ヒータ用電圧を印加されることで、温度が上昇して電子が放出され易い状態になる。カソードチップ311は、さらにカソード用電圧を印加されることで、その先端付近から電子を放出する。アノード313は、カソードチップ311の先端付近から放出された電子を引き出して、電子線を電子線路に導く。
【0062】
3−2.他の形態の電子銃(1)
図6は、他の形態の電子銃の構成を示す図である。この電子銃32は、レーザダイオード321、第1レンズ322、磁場コイル323、ガス封入管324、第2レンズ325、及び電子放出ファイバ326を備えており、電子放出ファイバ326の先端から電子を放出する。また、電子放出ファイバ326の先端の先には、ウェネルト327、アノード328が備えられており、電子銃32はこれらの構成によって、電子放出ファイバ326の先端から放出された電子を引き出して、電子線を電子線路に導く。
【0063】
レーザダイオード321は、レーザ光源として、レーザ光を発射する。第1レンズ322は、レーザダイオード321から発射されたレーザ光を集光する。第1レンズ322は、ガス封入管324内でレーザ光を集束させるように、設計、配置される。ガス封入管324内では、集光されたレーザ光によってプラズマ小空間(スポットプラズマ)が形成される。このとき、磁場コイル323が誘導磁場を形成することで、プラズマ状態ができやすくなり、また、プラズマの形状をコントロールする(例えば、丸くする等)ことができる。
【0064】
ガス封入管324内におけるプラズマ小空間の発生によって、DUV(深紫外線)、UV(紫外線)、X線等の電磁波(不可視光線)が発生し、これが第2レンズ325によって集光されて、電子放出ファイバ326の入力端(
図6の左端)に入力される。
【0065】
図7は、電子放出ファイバ326の先端部分の拡大図である。電子放出ファイバ326は、コア3261と、クラッド3262と、CrやCrN等のメタルコート3263と、光電材料3264からなる。電子放出ファイバ326として、例えばガラス材料からなるファイバや石英ガラスからなるファイバを用いることが可能である。電子放出ファイバ326の先端付近は、テーパー形状になっており、先端では、コア3261の端部が直径0.5〜50nmの大きさに形成されている。クラッド3252はコア3261の周りに形成されている。光電材料3264は、この先端に設けられており、コア3261とクラッド3262の先端にコーティングされている。なお、光電材料3264は、コア3261の先端にのみコーティングされてもよい。光電材料3264は、Au又はRuからなり、その厚さは10〜20nmである。光電材料3264は、光が当たるとその光量に応じた量の電子を発生する。
【0066】
メタルコート3263は、クラッド3262の外側と光電材料3264の周辺部(光電材料3264がクラッド3262の先端をコーティングしている部分)に形成される。メタルコート3263は、0〜−10kVの電源に接続される。メタルコート3263は、光電材料3264の周辺部に重なることで、光電材料3264とも電気的に接続される。また、メタルコート3263が光電材料3264の周辺部に重なることで、コア3261から染み出たDUVによる光電子発生部の広がりを抑えることが可能となる。メタルコート3263は、このような構成によって、電源と光電材料3264とを電気的に接続する導電線として機能し、電源の電圧を光電材料3264に印加する。
【0067】
このような構成の電子放出ファイバ326の入力端からコア3261内に入射されたDUV、UV、X線等の不可視光線は、コア3261とクラッド3262との境界での全反射を繰り返して、出力端(
図6の右端)に向かって進む。コア3261を伝搬してきたDUV、UV、X線等の不可視光線は、電子放出ファイバ326の先端部分で、光電材料3264に入射される。光電材料3264は、この入射されたDUV、UV、X線等の不可視光線の強度に応じた電子を放出する。
【0068】
電子放出ファイバ326の先端、即ち光電材料3264から放出された電子は、ウェネルト327及びアノード328によって引き出されて、第1デフレクタ10等によって形成される電子線路に導かれる。
【0069】
このような電子銃32の構成要素のうち、真空中、すなわち電子銃ハウジング60内に収容しなければならないのは、電子放出ファイバ326の先端部分、ウェネルト327及びアノード328のみであり、他の構成要素は大気中に配置することが可能である。このため、電子銃32は、1つの電子コラム907に複数の電子線照射検出系を構成するマルチSEM構造において、電子線同士の間隔を小さくすることができ、電子コラム907内の限られた範囲内により多くの電子線照射検出系を形成できるという点で有利である。
【0070】
また、上述のTFE電子銃31では、出力を上げると、カソードチップの先端だけではなく、先端の周りからも電子が放出されるようになり、電子線は余計な軌道を通り、チャージアップを引き起こすおそれがある。これに対して、電子銃32では、確実に電子放出ファイバ326の先端のみから電子を放出することが可能であり、照射する電子線(以下、「照射ビーム」ともいう。)が望まない軌道を通ることによる観察画像のぼけを防止ないしは軽減し、TFE電子銃31と比較して観察画像の解像度を向上できる。
【0071】
さらに、電子銃32から照射される電子線のエネルギー幅は0.05〜0.5eV程度と狭く、電子銃32は、TFE電子銃31と比較して、均一なエネルギーをもった電子をより多く放出できる。
【0072】
3−3.他の形態の電子銃(2)
図8は、他の形態の電子銃の構成を示す図である。この電子銃33は、電子銃32と同様に、レーザダイオード331、第1レンズ332、磁場コイル333、ガス封入管334、及び第2レンズ335を備えている。電子銃33は、電子銃32の電子放出ファイバ326の代わりに、電子放出素子336を備えており、電子放出素子336の電子放出面(出力面)から電子を放出する。また、電子放出素子336の電子放出面の先には、ウェネルト337、アノード338が備えられており、これらによって、電子放出素子336の電子放出面から放出された電子を引き出して、電子線を電子線路に導く。
【0073】
レーザダイオード331は、レーザ光源として、レーザ光を発射する。第1レンズ332は、レーザダイオード331から発射されたレーザ光を集光する。第1レンズ332は、ガス封入管334内でレーザ光を集束させるように、設計、配置される。ガス封入管334内では、集光されたレーザ光によってプラズマ小空間(スポットプラズマ)が形成される。このとき、磁場コイル333が誘導磁場を形成することで、プラズマ状態ができやすくなり、また、プラズマの形状をコントロールする(例えば、丸くする等)ことができる。
【0074】
ガス封入管334内におけるプラズマ小空間の発生によって、DUV、UV、X線等の不可視光線が発生し、これが第2レンズ335によって集光されて、電子放出素子336の入力面(
図8の左側面)に入力される。
【0075】
電子放出素子336は、石英からなる基材3361と、基材3361の入力面側に形成されたアパーチャ3362と、メタルコート3363と、基材3361の出力面側に設けられた光電材料3364とからなる。光電材料3364は、Au又はRuからなり、その厚さは10〜20nmである。光電材料3264は、光が当たるとその光量に応じた量の電子を発生する。
【0076】
メタルコート3363は、基材3361の出力面側に形成される。メタルコート3363は、0〜−10kVの電源に接続される。メタルコート3363は、光電材料3364の周辺部に重なることで、光電材料3364とも電気的に接続される。メタルコート3363は、このような構成によって、電源と光電材料3364とを電気的に接続する導電線として機能し、電源の電圧を光電材料3364に印加する。
【0077】
このような構成の電子放出素子336の入力面からアパーチャ3362を通って基材3361内に入射されたDUV、UV、X線等の不可視光線は、出力面(
図8の右端)に向かって進む。基材3361を伝搬してきたDUV、UV、X線等の不可視光線は、基材3361の出力面側で、光電材料3364に入射される。光電材料3364は、この入射されたDUV、UV、X線等の不可視光線の強度に応じた電子を放出する。
【0078】
電子放出素子336の出力面、即ち光電材料3364から放出された電子は、アノード338によって引き出されて、第1デフレクタ10等によって形成される電子線路に導かれる。
【0079】
このような電子銃33の構成要素のうち、真空中、すなわち電子銃ハウジング60内に収容しなければならないのは、電子放出素子336及びアノード338のみであり、他の構成要素は大気中に配置することが可能である。このため、電子銃33は、1つの電子コラム907に複数の電子線照射検出系を構成するマルチSEM構造において、電子線同士の間隔を短くすることができ、電子コラム907内の限られた範囲内により多くの電子線照射検出系を形成できるという点で有利である。
【0080】
また、電子銃33では、確実に電子放出素子336の光電材料3364のみから電子を放出することが可能であり、照射ビームが望まない軌道を通ることによる観察画像のぼけを防止ないしは軽減し、TFE電子銃31と比較して観察画像の解像度を向上できる。さらに、電子銃33から照射される電子線のエネルギー幅は0.05〜0.5eV程度と狭く、電子銃33は、TFE電子銃31と比較して、均一なエネルギーをもった電子をより多く放出できる。また、電子銃33は、TFE電子銃31と比較して、ウェネルトが不要であるという点でも有利である。また、電子銃33は、簡単な構造であるので、安価に製造でき、そのコストは従来のTFE電子銃の1/3〜1/5程度でよい。
【0081】
さらに、電子銃33では、ウェネルトを用いないことで、発生した電子線の透過率を高くできるというメリットもある。即ち、ウェネルトがあると、1stクロスオーバーのサイズ及び位置が、電子のエネルギー、ウェネルト電圧、アノード電圧により変化して、照射ビームが広がり、その結果透過率が悪くなることがある。これに対して、電子銃33では、ウェネルトを用いないので、光電材料3364を実質的な光源として、発生した電子線の透過率を高くできる。
【0082】
4.静電レンズ
集束レンズ11及び対物レンズ16は、静電レンズである。一般的には、集束レンズ11及び対物レンズ16を磁場レンズとすることも可能であるが、磁場レンズは、コイルの周りにヨークを巻く構成であるので、電子コラムが大型化してしまう。本実施の形態では、上述のように、電子コラム907はマルチSEMとして構成され、1つの筒体50内に複数の電子線照射検出系が形成される。本実施の形態では、静電レンズを採用しているので、磁場レンズのように電子コラム907が大型化することはなく、限られた範囲の中により多くの電子線照射検出系を設けることができ、それによって、試料に同時に照射可能な(試料を同時に走査可能な)電子線の本数を多くできる。
【0083】
また、磁場レンズの場合には、磁場が外に漏れて、近くの他の電子線照射検出系に干渉してしまうことがある。1つの筒体50内に複数の電子線照射検出系を有するマルチSEMでは、隣り合う電子線照射検出系の間の距離が比較的近くなるため(例えば、10〜30mm)、磁場漏れの影響が顕著になる。これに対して、本実施の形態では、マルチSEMの電子コラム907において、静電レンズを採用することで、そのような磁場漏れによる他の電子線照射検出系への影響を回避できる。このように静電レンズを採用した場合には、磁場レンズを採用した場合と比べて、S/N比が5〜30倍に改善され、100〜200電子/画素で検査が可能になる。これは、電流値を大きくしたときでもエネルギー分散を小さくできること、及び、1次ビームレンズ系の透過率を高くできること、及び、磁場レンズによる漏れ磁場のノイズ発生要因がないこと等が大きな要因である。
【0084】
なお、1つのビーム照射を行う1つのSEMの場合には、組立後や、真空装置等への取付後、SEM動作を行うまでの立上げ時間が短い。磁場方式は、電磁コイル及び周囲のヨーク等の温度変化と抵抗変化に影響されやすいため、安定するまでに時間がかかる。静電式では、定電圧電源であるので、安定した設定電圧がすぐに印加可能である。このような、ロスタイムの低減は、磁場方式の場合と比較して、1/50〜1/120程度になる。また、磁場方式では、電子線のエネルギーやレンズ磁場の変化に伴い、照射ビームが回転するため、偏向器による偏向方向に変化が生じるので、都度、偏向方向の補正を行う調整が必要となる。これに対して、静電方式では、照射ビームの回転がなく偏向方向の変動がなく、x、y方向に安定した偏向を行うことができる。また、上述したように、静電方式は、小型が可能であり、安定した動作ができる。よって、複数の光学系を並べたときに、単位領域に多くの光学系を設置することが可能となる。つまり、照射ビーム間の距離が短いマルチSEMが可能となる。
【0085】
また、同様の理由により、第1デフレクタ10、第2デフレクタ12、ア第3デフレクタ15、第4デフレクタ17、及び第5デフレクタ18もそれぞれ静電デフレクタとしている。これにより、上記と同様に装置の小型化を可能とし、かつ磁場漏れによる影響を回避できる。
【0086】
5.スペーサ
上述のように、筒体50内には、上下方向に隣接する各部品の間の距離が所定の距離となるように、各部品の間にスペーサ20〜28が配設されている。スペーサ20〜28は、導電性を有するセラミックで構成される。スペーサ20〜28の抵抗は、10
9〜10
12Ωcmである。好ましくは、スペーサ20〜28の抵抗は、10
10〜10
11Ωcmである。また、筒体50もスペーサ20〜28と同じ材料で構成される。このように、スペーサ20〜28や筒体50をセラミックで構成することにより、熱膨張を小さく抑えることができる。また、すべてのスペーサ20〜28をセラミックで構成することにより、すべてのスペーサ20〜28について熱膨張率を同じにすることができ、電子コラム907全体として熱膨張による影響を小さくできる。また、筒体50や各部品10〜19も同じ材料とすることで、電子コラム907全体としての熱膨張による影響をより小さくできる。
【0087】
また、セラミックは、サブミクロンレベルの高精度を実現できるので、すべてのスペーサ20〜28を同一材料のセラミックで構成することで、金属の精度に影響されずに、電子コラム907の組み立てにおける同軸度等の精度をスペーサ20〜28の精度と同レベル(サブミクロンレベル)にできる。さらに、筒体50及び各部品10〜19もスペーサ20〜28と同じ材料で構成することで、電子コラム907の組み立て精度をより向上できる。
【0088】
さらに、スペーサを上記のように高抵抗とすることで、電子コラムの小型化にも寄与する。
図9は、従来のスペーサ配置構造を示す図である。
図9の従来の構造において、上側部品851と下側部品852との間には、スペーサ853が設けられているが、スペーサを照射ビームIBから隠す位置に配置されており、このために、電子コラムが大型化していた。これに対して、本実施の形態では、上記のように高抵抗のセラミックのスペーサを採用したことで、スペーサ20〜28を照射ビームに対して露出させることができ、
図1に示すように平板状の各部品の間に直接スペーサを配置させることができるので、省スペース化が可能となる。
【0089】
6.配線構造
次に、電子コラム907における各部品10〜19の配線構造について説明する。各部品10〜19には、電源との電気的な接続をするための導電線を筒体50の外部に引き出す必要がある。
【0090】
6−1.配線の縦断面構造
以下、集束レンズ11を例に、本実施の形態の電子コラムにおける配線の縦断面構造を説明する。
【0091】
6−1−1.集束レンズ11が金属で構成されている場合
図10は、集束レンズ11の周縁部の拡大縦断面図である。
図10の例は、集束レンズ11が金属で構成されている場合の配線構造を示している。筒体50には、その外周面に沿って外周面を覆うように、配線フィルムとしてのフレキシブルプリントケーブル(FPC)70が設けられている。
図11は、FPC70の一部領域を示す図である。FPC70は、ポリイミド樹脂層71、導電形成層72、ポリイミド樹脂層73の3層構造を有する。導電形成層72には銅からなる導電線ELが形成される。
【0092】
FPC70及び筒体50には、集束レンズ11の端子に対応する位置に配線孔74、51が設けられており、この配線孔74、51に導電性のコンタクトピン80が挿入される。コンタクトピン80の軸部には、ねじ山が形成されており、筒体50の配線孔51にはねじ溝が形成されており、コンタクトピン80と筒体50とが螺合することで、コンタクトピン80が筒体50に保持される。
【0093】
配線孔74は、ポリイミド樹脂層71においては、コンタクトピン80の頭部の径と同じ又はそれより大きいサイズを有し、導電形成層72及びポリイミド樹脂層73においては、コンタクトピン80の軸部の径と同じ又はそれより大きい(頭部の径よりは小さい)サイズを有し、導電形成層72の外側表面にフランジ部741が形成されている。コンタクトピン80が筒体50に螺合して、コンタクトピン80の頭部がFPC70のフランジ部741に当接することにより、コンタクトピン80と導電線ELとが電気的に接続されるとともに、コンタクトピン80の筒体50の厚さ方向の位置決めがなされる。
【0094】
集束レンズ11は、金属でできており、それ自体が電極とされる。集束レンズ11には、配線孔74、51に対応する位置に、端子としてのコンタクト孔111が形成されており、その内面にはねじ溝が形成されている。コンタクトピン80は、配線孔51のねじ溝に螺合して、さらにその先でコンタクト孔111に螺合し、その先端がコンタクト孔111の底に当接することで、金属の集束レンズ11とコンタクトピン80とが電気的に接続する。
【0095】
以上の構成により、導電線ELと集束レンズ11とがコンタクトピン80を介して電気的に接続される。導電線ELは、
図11に示すようにFPC70内部の導電形成層72に形成されており、適当な箇所で、さらに外部の配線を介して電源と接続される。即ち、導電形成層72に形成された導電線ELは、外部電源を、コンタクトピン80を介して電子コラム907の部品に接続する。
【0096】
また、筒体50の表面及び/又はFPC70の裏面には、配線孔74、51の部分を除いて、金属の接地コーティング90が施されている。上記の配線構造によって供給される電圧は100Vから大きい場合には1万V程度にもなるので、筒体50とFPC70との間に僅かな隙間が形成されると、そこにスパークが発生してしまい、各部品やFPC70に損傷をきたすことがある。この接地コーティング90は、筒体50とFPC70との隙間にかかる高電圧をグランドに放電することで、そのようなスパークの発生を防止することができる。
【0097】
6−1−2.集束レンズ11が金属めっきされている場合
図12は、集束レンズ11の周縁部の拡大縦断面図である。
図12の例は、集束レンズ11が金属めっきされている場合の配線構造を示している。筒体50には、その外周面に沿って外周面を覆うように、
図11で示した配線フィルムとしてのフレキシブルプリントケーブル(FPC)70が設けられている。
【0098】
FPC70及び筒体50には、集束レンズ11に対応する位置に配線孔74、51が設けられており、この配線孔74、51に導電性のコンタクトピン80が挿入される。コンタクトピン80の軸部には、ねじ山が形成されており、筒体50の配線孔51にはねじ溝が形成されており、コンタクトピン80と筒体50とが螺合することで、コンタクトピン80が筒体50に保持される。
【0099】
コンタクトピン80が筒体50に螺合して、コンタクトピン80の頭部がFPC70のフランジ部741に当接することにより、コンタクトピン80と導電線ELとが電気的に接続されるとともに、コンタクトピン80の筒体50の厚さ方向の位置決めがなされる。
【0100】
集束レンズ11は、絶縁体(具体的にはセラミック)の本体112の表面に導電線となる金属めっき113がされた構造を有する。集束レンズ11には、配線孔74、51に対応する位置に、端子となるコンタクト孔111が形成されている。コンタクト孔111内には、内周面にねじ溝が形成された筒状のメタルブッシュ114が圧入されている。コンタクト孔111の底には、金属めっき113に電気的に接続されるビア115が形成されている。ビア115は、本体112の表面に、コンタクト孔111に連通するビア孔を形成するとともに、そのビア孔に金属を注入することで形成される。ビア115は、ビア孔から注入されて、コンタクト孔111の底にまで達する。金属めっき113は、このようにビア115が形成された後の本体112の表面に形成されて、金属めっき112とビア115とが電気的に接続される。
【0101】
以上の構成により、導電線ELと集束レンズ11の金属めっき113とがコンタクトピン80及びビア115を介して電気的に接続される。導電線ELは、
図11に示すようにFPC70内部の導電形成層72に形成されており、適当な箇所で、さらに外部の配線を介して電源と接続される。即ち、導電形成層72に形成された導電線ELは、外部電源を、コンタクトピン80を介して電子コラム907の部品に接続する。
【0102】
また、筒体50の表面及び/又はFPC70の裏面には、配線孔74、51の部分を除いて、金属の接地コーティング90が施されている。上記の配線構造によって供給される電圧は100Vから大きい場合には1万V程度にもなるので、筒体50とFPC70との間に僅かな隙間が形成されると、そこにスパークが発生してしまい、各部品やFPC70に損傷をきたすことがある。この接地コーティング90は、筒体50とFPC70との隙間にかかる高電圧をグランドに放電することで、そのようなスパークの発生を防止することができる。
【0103】
上記の構成によれば、集束レンズ11の本体112がセラミックで構成されるので、上述したように、その熱膨張による変形量は小さく、サブミクロンレベルの高精度を実現できる。また、集束レンズ11の本体112をセラミックで構成し、スペーサ20〜28や筒体50もセラミックで構成することにより、それらの部品の熱膨張率を同じにすることができ、電子コラム907の組み立てにおける同軸度等の精度をサブミクロンレベルにできる。
【0104】
6−2.配線の横断面構造
次に、電子コラム907における各部品10〜19への配線の横断面構造について説明する。
【0105】
6−2−1.集束レンズ
まず、集束レンズ11の配線の横断面構造を説明する。以下では、1つの電子コラムに2つの電子線照射検出系が形成されている場合を説明する。
図13は、集束レンズの配線の断面構造を示す図である。
図13に示すように、電子コラム907の筒体50の内部には、2つの電子線照射検出系が並んで形成されている。
【0106】
集束レンズ11の上側及び下側にそれぞれ配置されるスペーサ20、21は、筒体50の内周に合致する外周形状を有する。スペーサ20、21には、電子線照射検出系の電子線路EPに対応して円形の孔201、211が形成されている。スペーサ20、21の間には、集束レンズ11が設けられる。
図13の例では、集束レンズ11はセラミックからなる本体112に金属めっき113が被覆されることで構成されている。集束レンズ11の本体112は、筒体50の内周に合致する外周形状を有する。
【0107】
集束レンズ11の本体112には、スペーサ20、21の孔201、211にそれぞれ対応する位置に、スペーサ20、21の孔201、211より大きい範囲の金属めっき113が被覆されている。これらの金属めっき113は、各集束レンズ11の電極となる。2つの集束レンズ11におけるそれぞれの電極は電気的に分離されている。
【0108】
集束レンズ11の本体112には、スペーサ20、21の孔201、211にそれぞれ対応する位置に、スペーサ20、21の孔201、211より小さい円形の孔116が形成されている。これらの孔201、116、211によって、電子線路EPが形成される。スペーサ20、21に形成された孔201、211からは、孔116が形成された集束レンズ11(の金属めっき113部分、即ち電極)が露出している。
【0109】
集束レンズ11の電極は1極であり、電極への配線も各集束レンズ11につき1本である。この電極への配線は、
図13に示すように、集束レンズ11における筒体50に最も近い箇所から、筒対50の外側に引き出すことができる。なお、
図13では、筐体50の外周に設けられるFPC70は図示を省略している。
図13の例では、
図10にて説明したように、集束レンズ11に対してコンタクトピン801を直接ねじ込んで、集束レンズ11内にて電極とコンタクトピン801との電気的接触を実現する。
【0110】
なお、上記の形態については、変形が可能である。例えば、2つの集束レンズ11の電極からそれぞれ導電線を引き出してそれらの導電線を筒体50内で合流させた後に、1つのコンタクトピン801を用いて筒体50外に引き出すようにしてもよい。この場合に、1つのコンタクトピン801は例えば2つの電子線照射検出系の中間の位置から筒体50にねじ込むことができる。また、各集束レンズ11の電極を接触させて、一方の電極とコンタクトピン801とを電気的に接続してもよい。
【0111】
また、上記の形態では、セラミックからなる本体112に対して、2つの電子線照射検出系にそれぞれ対応する位置に金属めっき113を被覆することで2つの集束レンズ11を構成した。本体を金属で構成する場合には、金属で構成された本体に対して、1つのコンタクトピン801を接続すればよい。
【0112】
6−2−2.デフレクタ
次に、デフレクタの配線の横断面構造を説明する。
【0113】
6−2−2−1.1つの電子コラムに1つの電子線照射検出系が形成される場合
まず、1つの電子コラム907に1つの電子線照射検出系が形成される場合のデフレクタの配線構造について説明する。
【0114】
6−2−2−1−1.デフレクタが金属で構成されている場合
図14は、デフレクタ自体が金属からなる場合の配線構造を示す図である。
図15は、デフレクタとその下のスペーサを示す分解斜視図である。この例のデフレクタ100は、4極の電極を有する。デフレクタ100は各々扇形形状を有する4つの電極101に分かれている。各電極101の外周は、筒体50の内周に合致する。各電極101が、それぞれ間隙102を空けて、外周を筒体50の内周に当接させて配置されると、中央部には、電子線路EPとなる円形の孔が形成される。
【0115】
デフレクタ100の下に設けられるスペーサ200は、下の部品とのスペースを確保するためのドーナツ状の縦方向スペーサ部分201と隣り合う電極同士の間のスペースを確保するために縦方向スペーサ部分201から起立した4つの周方向スペーサ部分202からなる。デフレクタ100の各電極101は、スペーサ200の縦方向スペーサ部分201を介して下の部品の上に配置されるとともに、スペーサ200の周方向スペーサ部分202を介して互いに間隙102を空けて配置される。
【0116】
各電極101に対しては、筒体50の外部からそれぞれコンタクトピン802がねじ込まれて、各コンタクトピン802と各電極101との電気的な接続が確保される。電極101とコンタクトピン802との接続構造は、
図10にて説明した通りである。なお、
図14においても、FPC70は図示を省略している。
【0117】
6−2−2−1−2.デフレクタが金属めっきされている場合
図16は、デフレクタ110がセラミックからなる本体103とその表面に形成された金属めっき106とからなる場合の配線構造を示す図である。この例においても、デフレクタ110には4極の電極が形成されている。デフレクタ110の本体103は、中央に円形の孔が明けられたドーナツ形状であり、その孔から四方に切欠き105が切られている。隣り合う切欠き105同士の間が電極104となる。円形の孔の周りには金属めっき106が被覆されている。金属めっき106は、切欠き105によって分離しており、これによって4つの電極104が構成されている。
【0118】
デフレクタ110の下に配置されるスペーサ210は、内側にデフレクタ110の孔よりも大きな孔を有するドーナツ形状である。
【0119】
各電極104に対しては、筒体50の外部からそれぞれコンタクトピン803がねじ込まれて、各コンタクトピン803と各電極104との電気的な接続が確保される。電極104の金属めっき106とコンタクトピン803との接続構造は、
図12にて説明した通りである。なお、
図16においても、FPC70は図示を省略している。
【0120】
6−2−2−2.1つの電子コラムに複数の電子線照射検出系が形成される場合
次に、1つの電子コラムに複数の電子線照射検出系が形成される場合のデフレクタの配線構造を、第1デフレクタ10を例にして説明する。
図14及び16にて説明したように、1つの電子コラムに1つの電子線照射検出系が形成される場合には、コンタクトピンを電極に直接接続することができた。即ち、上の電極については、コンタクトピンを上から筒体50を貫通させて、電極に到達させ、右の電極については、コンタクトピンを右から筒体50を貫通させて、電極に到達させ、下の電極については、コンタクトピンをしたから筒体50を貫通させて、電極に到達させ、左の電極については、コンタクトピンを左から筒体50を貫通させて、電極に到達させ、このようにして各電極から放射状にコンタクトピンを配置して筒体50の外部に配線を引き出すことができた。しかしながら、1つの筒体50内に複数の電子線照射検出系が形成される場合には、デフレクタも複数存在することになり、各電極から放射線状にコンタクトピンを設けて配線を筒体50の外部に引き出すことはできない。そこで、本実施の形態においては、配線を以下に説明する構造とする。
【0121】
まず、デフレクタの電極について説明する。
図17は、第1デフレクタ10が8極の電極を有する場合の印加電圧の関係を説明するための図である。第1デフレクタ10では、電子線路EPを挟んで対向する電極にはそれぞれ大きさが等しく正負が互いに逆である電圧を印加する。
図17の例では、電極(1)と電極(a)とは、電子線路EPを挟んで対極の位置にあるので、これらの間には大きさが等しく正負が互いに反転した電圧が印加される。例えば、電極(1)には30V、電極(a)には−30Vの電圧が印加される。同様に電極(2)と電極(b)、電極(3)と電極(c)、及び電極(4)と電極(d)についても、同様に大きさが等しく正負が互いに反転した電圧が印加される。
【0122】
そして、これらの大きさが等しく正負が互いに反転した電圧が印加される、対向する電極からの導電線は、互いに近い位置から筒体50の外部に引き出すことが望ましい。本実施の形態では、このことを考慮して、配線構造を工夫する。
【0123】
図18は、1つの電子コラムに2つの電子線照射検出系が形成されている場合の第1デフレクタ10の配線構造を示す図である。
図18において、筒体50内には、2つの第1デフレクタ10が形成されるが、両者は配線構造を含めて左右対称であるため、図の簡略化のため、左側の第1デフレクタ10についてのみ、配線の構造を図示し、かつ符号を付して、説明する。
【0124】
図18の例では、2つの第1デフレクタ10は各々4極の電極を有する。
図18の例では2つの第1デフレクタ10が各々4極の電極を有するが、1つの電子コラムには、例えば
図3で示したように8つの第1デフレクタ10が構成されることがあり、かつ、
図17で示したように、1つの第1デフレクタ10が8つの電極を有することもある。この場合には、電極は全部で64個となる。このように電極の数が多くなると、それらの電極から筒体50の外部への導電線は、互いに干渉することなく、かつ、上述のように対向配置され印加電圧が正負反転した電極への導電線の筒体50外への取り出し位置が近くなるように構成する必要がある。
【0125】
そこで、本実施の形態では、互いに対向する2つの電極の導電線について、一方は本体103の上面を利用して配線し、他方は本体103の下面を利用して配線する。
図19は、
図18のA−A断面図である。以下、
図18及び
図19を参照して、配線の構造を説明する。
【0126】
図18の例では、電極1041と電極1043とが対向し、電極1042と電極1044とが対向する。電極1041については、金属めっきの電極部分1061aから、本体103の上面を利用して、金属めっきの配線部分1061bが引き出され、本体103の上面から下に向かってビア1061cが形成されている。電極1041と対向配置される電極1043については、金属めっきの電極部分1063aから、本体103の下面を利用して、金属めっきの配線部分1063bが引き出され、本体103の下面から上に向かってビア1063cが形成されている。
【0127】
電極1041のビア1061cと電極1043のビア1063cとは近接して形成される。ビア1061cに対応する部分にコンタクトピン8041がねじ込まれ、ビア1063cに対応する部分にコンタクトピン8043がねじ込まれる。コンタクトピン8041、8043とビア1061c、1063cとの接続方法は、
図12で示した通りである。
【0128】
同様に、電極1044については、金属めっきの電極部分1064aから、本体103の上面を利用して、金属めっきの配線部分1064bが引き出され、本体103の上面から下に向かってビア1064cが形成されている。電極1042については、金属めっきの電極部分1062aから、本体103の下面を利用して、金属めっきの配線部分1062bが引き出され、本体103の下面から上に向かってビア1062cが形成されている。
【0129】
電極1044のビア1064cと電極1042のビア1062cとは近接して形成される。ビア1064cに対応する部分にコンタクトピン8044がねじ込まれ、ビア1062cに対応する部分にコンタクトピン8042がねじ込まれる。コンタクトピン8044、8042とビア1064c、1062cとの接続方法は、
図12で示した通りである。
【0130】
このよう配線構造とすることで、1つの電子コラム907に複数の電子線照射検出系を形成することによって必要となる平面内の多くの配線を互いに干渉することなく形成できる。
【0131】
7.検出器
上述のように、電子コラム907は、電子線照射検出系の中に検出器14を備えている。電子線は、電子銃30から放出されて電子線路を通って試料に照射される。試料に電子線が照射されると、その部分から2次電子等が発生する。2次電子等は、引き上げ電界によって、電子線照射検出系を通って、照射ビームIBの方向とは逆方向に進む。検出器14は、このようにして試料から逆行してくる2次電子等を捕集して検出する。以下では、検出器の具体的構成として、2つの実施の形態を説明する。
【0132】
7−1.MCP+アノード型
図20は、本実施の形態のMCP+アノード型の検出器の構成を示す図である。検出器(MCP+アノード型)141は、電子銃30からの照射ビームIBを中心として、それを取り囲むように管1414を有する。管1414は、基準電位(通常はGND電位)を維持している。検出器141は、さらに、絶縁性のセラミック1411、アノード1412、電子増幅器としてのマイクロチャンネルプレート(MCP)1413を備えている。
【0133】
セラミック1411は、支持体として、管1414、アノード1412、及びMCP1413を支持する。セラミック1411の中央には支持孔が設けられており、この支持孔で管1414の外周面を支持する。セラミック1411の上面には、セラミック1411が帯電しないように導電膜1415がコーティングされている。なお、導電膜1415のコーティングに代えて、導電材料部品が設置されてもよく、もしくは、セラミック1411に対してその表面層の抵抗を低下させる処理がなされてもよい。
【0134】
アノード1412及びMCP1413には、管1414を通すための孔が設けられている。アノード1412及びMCP1413は、管1414とは接触せずに、管1414の周囲を取り囲んでいる。MCP1413はアノード1412の下側に設けられ、アノード1412はセラミック1411の下側に設けられる。MCP1413及びアノード1412は、いずれも支持体としてのセラミック1411に支持される。
【0135】
照射ビームIBは、管1414を通過した後、対物レンズ、デフレクタ等を通過して、試料SMに照射される。照射ビームIBによって試料から放出された2次電子等SEは、引き上げ電界によって、電子線路の中心付近を通過して上流方向に引き上げられ、MCP1413に近づくと、中心付近から外れて、MCP1413に入射する。その軌道は、
図20に示すように、MCP1413の前で外側に向けて湾曲する。このような軌道を容易に形成するため、即ちMCP1413への2次電子等SEの引き込み量を増加させるために、MCP1413の入力面には、正電圧が印加される。例えば、MCP1413の入力面に0〜500V程度の電圧を印加することで引き込み量を増加させることができる。
【0136】
MCP1413には、2次電子等SEのMCP入力端(MCPin)1416とMCP出力端(MCPout)1417が設けられている。MCP出力端1417には、通常300〜2000V程度の高い正電圧が印加されている。これにより、MCP入力端1416に入射した電子が、MCP1413の微細チューブ内で電子増幅を繰り返し、MCP出力端1417より放出されて、アノード1412に吸収される。このとき、アノード1412には、通常、MCP出力端1417よりも300〜3000V高い電圧が印加されている。よって、電子量を増幅してMCP出力端1417から放出された電子は、アノード1412方向に引き出されて、アノード1412に衝突して吸収される。
【0137】
アノード1412の電流値を直接測定し、又は、アノード1412の電流値を電圧に変換して測定することにより、試料からの2次電子等SEの放出量を測定することができる。また、照射ビームIBをデフレクタ等により走査しながら試料からの2次電子等SEの量を取得して、その時刻を区切りながら電子量の強度を2次元的に示すと検査画像としての2次電子像を得ることができる。この場合、時間区切りと場所とが対応することになる。
【0138】
従来の方式では、部品自体の大きさ耐電圧のために、小型化が困難であり、また、小型化できたとしても、2次電子等の捕集率が低かった。本実施の形態によれば、静電レンズにより1つの筒体に複数の電子線照射検出系を設けたマルチSEMを小型化できる。そして、捕集率を低下させないための工夫として以下の構成を有している。即ち、試料表面での走査幅が例えば1〜200μmであるときに、試料表面から走査幅の200倍以上離れた距離に検出器14が設置されている。試料表面から検出器14までの距離が近すぎると、検出器14の外周部にて試料表面からの2次電子等を捕集する効率を上げることが困難になる。本実施の形態では、上記の構成としたことにより、40〜80%の捕集率を達成できる。
【0139】
このように、本実施の形態は、1つの筒体に複数の電子線照射検出系を設けたマルチSEMにおける小型化と高い補集効率とを両立させることができ、200〜2000MPPSのデータレートを実現できる。
【0140】
7−2.シンチレータ+ライトガイド+PMT型
図21は、本実施の形態のシンチレータ+ライトガイド+PMT型の検出器の構成を示す図である。検出器148は、電子銃30からの電子ビームIBを中心として、それを取り囲むように管1414を有する。管1414は、基準電位(通常はGND電位)を維持している。検出器141は、さらに、絶縁性のセラミック1411、シンチレータ1419、ライトガイド1420、光電子増倍管としてのフォトマルチプライヤチューブ(PMT)1421を備えている。
【0141】
セラミック1411の中央には支持孔が設けられており、この支持孔で管1414の外周面を支持する。セラミック1411の上面には、セラミック1411が帯電しないように導電膜1415がコーティングされている。なお、導電膜1415のコーティングに代えて、導電材料部品が設置されてもよく、もしくは、セラミック1411に対してその表面層の抵抗を低下させる処理がなされてもよい。
【0142】
シンチレータ1419、ライトガイド1420、及びPMT1421は、同一平面に設けられている。照射ビームIBを基準として、シンチレータ1419は最も内側に設けられ、その外側にライトガイド1420が設けられ、さらにその外側にPMT1421が設けられる。シンチレータ1419は、棒状であり、管1414の周囲に8本設けられる。シンチレータ1419は、長手方向が照射ビームIBを中心とする円の半径方向に向くように配置される。
【0143】
照射ビームIBは、管1414を通過した後、対物レンズ、デフレクタ等を通過して、試料SMに照射される。照射ビームIBによって試料SMから放出された2次電子等SEは、引き上げ電界によって、電子線路の中心付近を通過して上流方向に引き上げられ、シンチレータ1419に近づくと、中心付近から外れて、シンチレータ1419に入射する。その軌道は、
図21に示すように、シンチレータ1419の前で外側に向けて湾曲する。このような軌道を容易に形成するため、即ちシンチレータ1419への2次電子等SEの引き込み量を増加させるために、シンチレータ1419の入力面には、正電圧が印加される。例えば、シンチレータ1419の入力面に0〜500V程度の電圧を印加することで引き込み量を増加させることができる。
【0144】
シンチレータ1419は、入射された電子を、その電子の量に応じた強度の光に変換する。シンチレータ1419には、正電圧を印加可能とするとともに、電子から光に変換されたときに透過率を低減させないように、その表面(上面又は底面)に、電極として透明導電膜が被覆される。このようにして、シンチレータ1419に入射した電子は光に変換されて、その光はライトガイド1420に入射する。光はライトガイド1420を伝達して、PMT1421に入射する。PMT1421は、入射された光を電子に変換し、さらにその電子に対して電子増幅を行ない、電子信号として出力する。この電子信号は、PMT1421に入射した光の強度に対応している。
【0145】
なお、シンチレータ1419の本数は8本に限られず、2本、4本、12本、16本、又は他の本数であってもよい。また、シンチレータ1419は複数本でなく、1本であってもよい。複数本のシンチレータ1419を用いることで、補集できる2次電子等の量を増加できる。また、複数本のシンチレータ1419を用いることで、検出器14の場所による補集率の分布を測定して、2次電子等を均等に補集できているか、2次電子等の補集位置が偏っているかを検知することができる。
【0146】
そして、2次電子等の補集位置が偏っている場合には、その補正を直ちに行なうことが可能である。捕集位置が偏っていると、ダメージの進行が場所によって異なることになるので、位置変動が起こったときに、異なる電流量(輝度)になる。このような場合には、その都度校正を行う必要が生じるので装置としてはロスタイムが多くなる。2次電子等を均一に捕集できている場合には、状態変動時においても直ちには輝度変動がない状態で動作できるので、捕集位置の偏りの検知とその補正を直ちに行なうことにより、正常状態に戻すことができる。
【0147】
また、シンチレータの中に斜ミラーを内蔵してもよい。この場合、電子がシンチレータの表面で光に変換された後、その光はミラーによってPMT1421に向けて反射されるので、光は効率よくPMT1421に伝達される。さらに、斜ミラー表面に電子/光変換膜がコーティングされてもよい。この場合には、ミラー表面で電子/光変換が行われるので、変換後直ちにPMT方向に反射されて、効率よくPMTに光を伝達できる。
【0148】
8.バルブ機構
上述のように、電子銃ハウジング60内は、真空ポンプ40によって真空状態にされる。電子線検出装置100には定期的なメンテナンスが必要とされるが、メンテナンスの際に、電子銃ハウジング60の真空状態を保持するために、バルブ構造が用いられる。すなわち、電子銃ハウジング60をバルブによって密閉空間とすることで、メンテナンスの際にも電子銃ハウジング60を真空状態に保つことができる。
【0149】
図22は、本実施の形態のバルブ構造を示す図である。上述のように、電子銃ハウジング60内には、電子銃30、30が備えられており、真空ポンプ40によって真空状態とされている。メンテナンスの際には、この電子銃ハウジング60を含む電子コラム907が大気中に晒されることになるが、この場合に、バルブ61を閉めて電子銃ハウジング60を密閉する。
【0150】
電子銃ハウジング60には、照射ビームIBを通過させる位置にハウジング孔62が設けられている。電子銃ハウジング60の下方にはバルブ61が設けられる。バルブ61には、電子銃ハウジング60に対応する位置にバルブ孔612が設けられる。そして、バルブ61における電子銃ハウジング60に対向する面(上面)には、Oリング613、614が設けられる。
【0151】
電子線検査装置1000の使用時には、バルブ61は、B位置に位置する。B位置では、バルブ61のバルブ孔612と電子銃ハウジング60のハウジング孔62とが一致する。A位置では、Oリング613、614がそれぞれ電子銃ハウジング60のハウジング孔62を囲う。メンテナンスの際に電子銃ハウジング60を閉じる際には、バルブ61は、B位置からA位置に移動して、A位置からさらに上方に移動することで、Oリング613、614によって、電子銃ハウジング60のハウジング孔62を閉じて、電子銃ハウジング60を密閉状態とする。なお、バルブ61のB位置からA位置への移動、及びA位置からB位置への移動において、横方向の移動と縦方向の移動を任意に組み合わせてよく、斜めに移動してもよい。
【0152】
このように、本実施の形態においては、バルブ61に照射ビームIBを通過させるバルブ孔612と電子銃ハウジング60を密閉するためのOリング613、614とを形成し、バルブ61を横方向にずらすことで、バルブ61のハウジング孔62が電子銃ハウジング60のハウジング孔62と一致させたり、Oリング613、614が電子銃ハウジング60のハウジング孔62を囲ったりできるので、簡単な操作で電子銃ハウジング60からの照射ビームIBを通過させたり、電子銃ハウジング60を密閉したりできる。
【0153】
図23は、本実施の形態のバルブ機構の他の例を示す図である。上述のようなバルブ機構は、
図23に示すように、筒体50の下端部に設けてもよい。筒体50の下端部には、照射ビームIBを通過させる位置に筒体孔52が設けられている。電子線検査装置1000の使用時には、バルブ61は、B位置に位置する。B位置では、筒体50の筒体孔52とバルブ61のバルブ孔612とが一致する。A位置では、Oリング613、614がそれぞれ筒体50の筒体孔52を囲う。
【0154】
メンテナンスの際に電子銃ハウジング60及び筒体50を閉じる際には、バルブ61は、B位置からA位置に移動して、A位置からさらに上方に移動することで、Oリング613、614によって、筒体50の筒体孔52を閉じて、電子銃ハウジング60及び筒体51で構成される空間を密閉状態とする。なお、バルブ61のB位置からA位置への移動、及びA位置からB位置への移動において、横方向の移動と縦方向の移動を任意に組み合わせてよく、斜めに移動してもよい。
【0155】
この実施の形態においても、バルブ61に、照射ビームIBを通過させるバルブ孔612と電子銃ハウジング60及び筒体50で構成される空間を密閉するためのOリング613、614とを形成し、バルブ61横方向にずらすことで、バルブ61のバルブ孔612を筒体50の筒体孔52と一致させたり、Oリング613、614が筒体50の筒体孔52を囲ったりできるので、簡単な操作で電子銃ハウジング60からの照射ビームIBを通過させたり、電子銃ハウジング60及び筒体50で構成される空間を密閉したりできる。
【0156】
9.デフレクタ
デフレクタは、電子銃30から照射される照射ビームIBを走査のために偏向する。
図24は、従来のデフレクタの構成を示す図である。デフレクタ170は、単一の板材の電極からなり、電子線路に孔が形成されている。デフレクタ170の孔を通過する照射ビームIBは、電圧の大きさに応じた角度だけ変更される。デフレクタ170には、±60Vの交流電圧が印加される。デフレクタ170に交流電圧を印加することにより、その電圧振幅に従って照射ビームIBが偏向されて、照射ビームIBによる試料の走査が行われる。この従来の構成によれば、デフレクタ170に印加する±60Vの交流電圧の周波数を上げようとしても限界があり、それによって照射ビームIBの走査の周波数も制限されることになる。
【0157】
図25は、本実施の形態のデフレクタの構成を示す図である。本実施の形態のデフレクタ180は、2枚の板状の電極181及び182からなる。両電極181及び182には、それぞれ、電子線路に孔が形成されている。この孔を通過した照射ビームIBは、各電極181及び182に印加された電圧に応じた角度だけ偏向する。本実施の形態では、上側電極181には±55Vの交流電圧を印加し、下側電極182には、±5Vの交流電圧を印加する。
【0158】
デフレクタ180では、上記の構成によって、上側電極181に印加する交流電圧を用いてマクロ走査を行い、下側電極182に印加する交流電圧を用いてミクロ走査を行なう。マクロ走査を行なうために上側電極181に印加される交流電圧の周波数は、ミクロ走査を行なうために下側電極182に印加される交流電圧の周波数よりも大きい。上側電極181によってある基準方向に偏向されている照射ビームIBに対して、下側電極182に印加された電圧を振幅させることで、当該基準方向を基準とする小さな範囲で照射ビームIBがさらに偏向されて、試料を走査する(ミクロ走査)。この範囲内で可能な主走査及び副走査を行うと、上側電極181に印加される電圧が変更されて、基準方向が偏向される(マクロ走査)。
【0159】
そして、新たな基準方向を基準として、下側電極182に印加された電圧を振幅させることで、当該基準方向を基準とする小さな範囲で照射ビームIBがさらに偏向されて、試料を走査する(ミクロ走査)。このように、マクロ走査とミクロ走査を繰り返すことで、マクロ走査によって偏向可能な範囲内の走査が終了すると、ステージが移動して、次の新たな領域について、上記と同様のミクロ走査及びマクロ走査が行われる。
【0160】
ミクロ走査では、±5Vという低電圧で照射ビームIBを偏向するので、周波数の高い電源を使用することができ、これにより、走査速度を速くして、試料の検査時間を短縮できる。
【0161】
なお、上記では、1つのデフレクタ180のみを説明したが、上述のように、本実施の形態の電子コラム907では、1つの筒体に複数の電子線照射検出系が設けられるので、上記で説明したデフレクタ180が水平方向に複数設けられることになる。このとき、複数の上側電極181及び複数の下側電極182のそれぞれに電源を設けてもよいし、複数の上側電極181については、共通の電源を用いることもできる。この場合には、下側電極182には、−4.5V〜5.5Vというオフセットされた交流電極を印加する。このように、並列に設けた複数のデフレクタが電源を共有することで、コストを削減できるだけでなく、電子コラム907の小型化にも寄与する。
【0162】
上記の電子線検査装置1000を用いて試料の検査を行なう方法を説明する。以下では、方形の半導体集積回路のダイがマトリクス状に配列して形成されて、同一パターンが繰り返して形成された試料として、その試料の検査方法を説明する。本実施の形態の検査方法では、複数のダイの同一のパターン同士を比較してその違いを欠陥として検出するダイ/ダイ比較を行なう。
【0163】
10.キャリブレーション
上述のように、本実施の形態の電子線検査装置1000では、電子コラム907に複数(8つ)の電子線照射検出系が設けられている。検査の際には、これらの複数の電子線照射検出系を同時に用いて、複数の電子線により検査を行ない、それらの検査結果を合成して検査画像を生成する。このとき、複数の電子線照射検出系の倍率及び電子線の照射位置がずれていると、複数の電子線照射検出系によりそれぞれ得られた検査結果を合成しても正確に合成された検査画像が得られない。そこで、各電子線照射検出系の倍率及び電子線の照射位置の特性(キャリブレーション情報)を予め取得して記憶しておき、各電子線照射検出系より得られた検査結果をそれらの特性に応じて較正する。
【0164】
この較正のために、まず、各電子線照射検出系のデフレクタを作動させないで、各電子銃から電子線を直線的に照射した状態で(このときの電子線を「基準ビーム」という。)、ステージを移動させながら、各電子線照射検出系で順にテスト試料の表面に印刷されたテストマークを検出し、各電子線照射検出系について、そのテストマークを検出したときの倍率及びステージの移動距離(即ち、基準ビームの照射位置座標)を求める。
【0165】
図26は、各電子線照射検出系の基準ビームRBの位置関係を示す図である。本実施の形態では、
図26に示すように、縦2列に並んだ第1〜第8の8つの電子線照射検出系から第1〜第8の基準ビームRB1〜RB8が照射される。
【0167】
表1及び表2は、第1電子線照射検出系を基準の電子線照射検出系として、100倍(表1)及び1000倍(表2)の倍率でテスト試料のテストマークを観察したときの他の電子線照射検出系の倍率比及び座標位置(キャリブレーション情報)を取得した結果を示す表である。理想的には、基準となる第1電子線照射検出系の倍率に対する他の電子線照射検出系の倍率の比はすべて1.000(第1電子線照射検出系と同じ倍率)となり、各電子照射系の座標は、
図26に示す距離に従うことになる。
【0168】
しかしながら、現実には誤差によって、理想通りとはならず、各電子線照射検出系にて検出された結果の連続性を確保するためには、キャリブレーション情報を用いて、検出結果を較正する必要がある。これらのキャリブレーション情報を予め取得して画像処理装置160に記憶しておき、各電子線照射検出系からの検査結果に基づいて検査画像を合成する際に、これらのキャリブレーション情報に基づいて各電子線照射検出系からの検査結果に対して較正を行なう。
【0169】
上記の構成によれば、複数の電子線照射検出系を同時に用いて試料の検査を行なうにあたって、各電子線照射検出系の本来の位置からの僅かなズレを補正して、正確に合成された検査画像を取得することができる。
【0170】
11.フォーカスマップの作成
試料の検査を行なう際には、試料がステージ110に載せられる。ステージ100に載せられた試料と複数の電子線照射検出系を備えた電子コラム907とは、理想的には垂直になる。しかしながら、ステージ110の傾き、試料の傾き、及び/又は電子コラム907の傾きによって、試料の表面と電子コラム907とが正確に垂直にならないことがある。この場合に試料を電子コラム907で走査すると、試料の場所によって電子コラム907と試料の表面との距離が変化し、各電子線照射検出系におけるピントが合わないことになる。そこで、本実施の形態の電子線検査装置1000では、検査対象である試料がステージに載置された後に、試料表面の複数の点についてフォーカス調整を行なってフォーカス調整値を取得して、フォーカスマップを生成する。
【0171】
図27は、本実施の形態のフォーカスマップ作成のための試料の測定点の例を示す図である。これらの測定点1〜13において、フォーカス調整を行い、合焦するフォーカス調整値(ないしは、試料表面の高さ情報)を記憶しておく。測定点以外の箇所については、周辺の測定点におけるフォーカス調整値から補完してフォーカス調整値を求める。検査の際には、記憶されたフォーカスマップに従って自動的にフォーカス調整を行う。
【0172】
このように、ステージに載置された試料の複数の測定点についてフォーカス調整値を取得して、フォーカスマップを作成しておくことで、検査の際には試料中の位置に応じて適切にフォーカス調整を行なうことができる。
【0173】
12.ダイ/ダイ比較
上述のように、本実施の形態の電子線検査装置1000は、ダイ/ダイ比較によってダイの検査を行なう。試料には、矩形状の同一パターンを有するダイが繰り返し形成されているので、各電子線照射検出系が異なるダイを検査することで、相違があるところを欠陥として検出するダイ/ダイ比較を行なうことができる。
【0174】
本実施の形態では、複数の電子線照射検出系の各々がそれぞれの担当するダイを検査し、各電子線照射検出系における検査結果同士を比較することにより、ダイ/ダイ比較を行う。しかしながら、試料上のパターンの繰り返しピッチ(ダイのピッチ)と電子線照射検出系の配列ピッチ(即ち、隣り合う電子線照射検出系の間の距離)とは必ずしも一致しない。電子線照射検出系のピッチが検査対象のパターンのピッチより大きい場合もあれば、小さい場合もある。
【0175】
図28(a)〜(c)は、照射ビームIB1〜8のピッチ(すなわち、電子線照射検出系のピッチ)とダイのピッチとの関係を示す図であり、
図28(a)は、電子線照射検出系のピッチがダイのピッチより大きい場合の照射ビームIB1〜8とダイとの関係を示す図であり、
図28(b)は、電子線照射検出系のピッチとダイのピッチとが同じである場合の照射ビームIB1〜8とダイとの関係を示す図であり、
図28(c)は、電子線照射検出系のピッチがダイのピッチより小さい場合の照射ビームIB1〜8とダイとの関係を示す図である。
【0176】
12−1.ダイが照射ビームの偏向可能範囲より小さい場合
12−1−1.電子線照射検出系のピッチがダイのピッチより大きい場合
図29(a)〜(e)は、
図28(a)に示すように、電子線照射検出系のピッチがダイのピッチより大きい場合に、照射ビームIB1及びIB2によってそれぞれダイD1及びD2を走査する手順を示す図である。なお、
図29では、マクロ走査のみを図示しており、以下の説明もマクロ走査の手順について説明する。
図29において、照射ビームは、左から右に主走査を行い、上から下に副走査を行う。また、
図29において、各ダイD1、D2は、主走査を4回行うことで走査される。この主走査は、照射ビームを偏向することで行われる。
【0177】
図29(a)の段階では、照射ビームIB1及び照射ビームIB2によって、同時にそれぞれダイD1及びダイD2を走査する。
図29の例では、電子線照射検出系のピッチがダイのピッチより大きいので、照射ビームIB2は、ダイD2の第3ラインから走査を始めることになる。照射ビームIB1及びIB2の走査によって、2ラインの主走査が終わって、
図29(b)の段階にくると、照射ビームIB2は、ダイD2の最終ラインの走査が終わったことになる。よって、この後は照射ビームIB2による走査は停止するとともに、照射ビームIB1による走査はその後も続ける。
図29(c)の段階にくると、照射ビームIB1によるダイD1の走査が完了する。
【0178】
その後、ステージを移動させることによって、
図29(d)に示すように、照射ビームIB2をダイD2の左上に位置させて、照射ビームIB2によるダイD2の上2ラインの走査を行う。このとき、照射ビームIB1による走査は停止する。照射ビームIB2によるダイD2の上2ラインの走査が終わると、
図29(e)に示すように、照射ビームIB1によるダイD1の走査及び照射ビームIB2によるダイD2の走査が完了する。
【0179】
以上の走査手順によって、電子線照射検出系のピッチがダイのピッチより大きい場合にも、第1電子線照射検出系によるダイD1の検出結果と第2電子線照射検出系によるダイD2の検出結果とを比較して、ダイ/ダイ比較による試料の検査を行うことができる。
【0180】
12−1−2.電子線照射検出系のピッチがダイのピッチより小さい場合
図30(a)〜(d)は、
図28(c)に示すように、電子線照射検出系のピッチがダイのピッチより小さい場合に、照射ビームIB1及びIB2によってそれぞれダイD1及びダイD2を走査する手順を示す図である。
図30においても、マクロ走査のみを図示している。
図30において、各ダイD1、D2は、主走査を8回行うことで走査される。
【0181】
図30(a)の段階では、照射ビームIB2によってダイD2を走査することはできないので、照射ビームIB1によってダイD1を走査するのみで、照射ビームIB2による操作は停止する。
図30(b)の段階になると、照射ビームIB2がダイD2の上端に達したので、照射ビームIB1によるダイD1の走査と、照射ビームIB2によるダイD2の走査とを同時に並行して行う。
【0182】
照射ビームIB1及びIB2の走査によって、8ラインの主走査が終わって、
図30(c)の段階にくると、照射ビームIB1は、ダイD1の最終ラインの走査が終わったことになる。よって、この後は照射ビームIB1による走査は停止するとともに、照射ビームIB2による走査はその後も続ける。
図30(d)の段階にくると、照射ビームIB2によるダイD2の走査も完了する。
【0183】
以上の走査手順によって、電子線照射検出系のピッチがダイのピッチより小さい場合にも、第1電子線照射検出系によるダイD1の検出結果と第2電子線照射検出系によるダイD2の検出結果とを比較して、ダイ/ダイ比較による試料の検査を行うことができる。
【0184】
12−2.ダイが照射ビームの偏向可能範囲より大きい場合
上記の実施の形態では、1つのダイの大きさが、デフレクタによって照射ビームを偏向できる範囲より小さかった。よって、
図29に示すダイD1のように、ダイの角から捜査を開始すれば、そのダイについては、ステージを移動させることなく、照射ビームの偏向のみで、ダイの操作を完了することができた。以下では、照射ビームの偏向可能範囲よりも1つのダイの大きさがはるかに大きい場合の照射ビームIB1及びIB2によってそれぞれダイD1及びダイD2を走査する手順を説明する。
【0185】
図31は、照射ビームの偏向可能範囲よりも1つのダイの大きさがはるかに大きい場合の試料と照射ビームと照射ビームの偏向可能範囲との関係を示す図である。
図31において、斜線で示した単位走査範囲saは、照射ビームIB1を偏向することで走査できる範囲であり、他の照射ビームについても単位走査範囲の大きさは同じである。
図31では、照射ビームのピッチがダイのピッチより大きい場合を示している。また、
図31では、縦2列に並んだ6つの照射ビームIB1〜6を示している。
【0186】
この場合に、照射ビームIB1とダイD1との関係を考えると、以下の手順で照射ビームIB1によってダイD1を走査することができる。
図32は、照射ビームIB1によってダイD1を走査する手順を示す図である。なお、
図32では、単位走査範囲sa1について、マクロ走査のみを図示している。
図32において、照射ビームは、左から右に主走査を行い、上から下に副走査を行う。
【0187】
また、
図32の例では、ダイD1の縦方向の長さは、単位走査範囲の縦方向の長さの7倍であり、縦方向7回ステージ移動をすることにより、縦方向の走査を完了できる。また、ダイD1の縦方向の長さは、単位走査範囲の縦方向の長さの7倍であり、縦方向7回ステージ移動をすることにより、縦方向の走査を完了できる。ダイD1の縦方向の長さは、単位走査範囲の縦方向の長さの7倍であり、縦方向7回ステージ移動をすることにより、縦方向の走査を完了できる。ダイD1の横方向の長さも、単位走査範囲の横方向の長さの7倍であり、横方向7回ステージ移動をすることにより、横方向の走査を完了できる。各単位走査範囲の走査は、照射ビームを偏向することで行われる。
【0188】
照射ビームIB1は、ダイD1の左上から走査を開始する。まず、ステージを固定した状態で照射ビームIB1を偏向することで、単位走査範囲sa11を走査する。単位走査範囲sa11の走査が完了すると、照射ビームIB1が単位走査範囲sa12に位置するように、単位走査範囲の高さ分だけステージを上に移動させる。そして、その位置でステージを固定して、照射ビームIB1を偏向することで、単位走査範囲sa12を走査する。
【0189】
このような照射ビームIB1の偏向による走査及び単位走査範囲分のステージの移動を繰り返して(以下、「ステップ&リピート走査」という。)、単位走査範囲sa17、即ちダイD1の最下の単位走査範囲の操作を終えると、照射ビームIB1が単位走査範囲sa21に位置するように、ステージを移動させる。ステップ&リピート走査を続けていって、単位走査範囲sa77を走査し終わると、ダイD1のすべての面の走査が完了する。
【0190】
図33(a)〜(f)は、
図33(a)に示すように、電子線照射検出系のピッチがダイのピッチより大きい場合に、照射ビームIB1及びIB2によってそれぞれダイD1及びD2を走査する手順を示す図である。なお、
図33では、走査が完了した単位走査範囲を斜線で示してある。
【0191】
図33(a)の段階では、照射ビームIB1によるダイD1の走査と照射ビームIB2によるダイD2の走査が同時に開始される。
図33の例では、電子線照射検出系のピッチがダイのピッチより大きいので、照射ビームIB1は、ダイD1の左上の単位走査範囲sa111から走査を開始するが、照射ビームIB2は、ダイD2の最左の列の上から4番目の単位走査範囲から走査を始めることになる。
【0192】
照射ビームIB1及びIB2によるステップ&リピート走査によって、4セットの単位走査範囲の走査及びステージ移動が行われて、
図33(b)の段階にくると、照射ビームIB2は、ダイD2の左下の単位走査範囲sa217の走査の走査を完了する。よって、この後は照射ビームIB2による走査は停止するとともに、照射ビームIB1によるステップ&リピート走査はその後も続ける。
図33(c)の段階にくると、照射ビームIB1は、ダイD1の左下の単位走査範囲sa117の走査の走査を完了する。
【0193】
次に、
図33(d)に示すように、照射ビームIB2がダイD2の左上の単位走査範囲sa211に位置するように、ステージを上に移動させる。そして、照射ビームIB2のみによって3セットの単位走査範囲の走査及びステージ移動を行う。この間、照射ビームIB1による走査は停止する。3セットの単位走査範囲の走査及びステージ移動が終わって、照射ビームIB2がダイD2の単位走査範囲sa213の操作を終えると、
図33(e)に示すように、ダイD1及びダイD2の左端の列の走査が完了する。この時点でダイD1とダイD2について、対応する位置のダイ/ダイ比較を行なうことができる。
【0194】
次に、
図33(f)に示すように、照射ビームIB1がダイD1の左から2番目の列の最上の単位走査範囲sa121に位置するように、ステージを上に移動させる。以下、同様にして、ダイD1及びダイD2のそれぞれの左から2番目の列の走査をすべて完了させて、左から2番目の列についてダイ/ダイ比較を行なう。このようにして右端の列の走査及びダイ/ダイ比較が終わると、ダイD1とダイD2の全面についてダイ/ダイ比較が完了する。
【0195】
以上の走査手順によって、ダイが照射ビームの偏向可能範囲より大きい場合にも、第1電子線照射検出系によるダイD1の検出結果と第2電子線照射検出系によるダイD2の検出結果とを比較して、ダイ/ダイ比較による試料の検査を行うことができる。
【0196】
なお、
図31〜33を参照して説明した実施の形態では、照射ビームを偏向することで単位走査範囲の走査をした後にステージを移動させて、新たな単位走査範囲を照射ビームの変更により走査するというステップ&リピート走査を行ったが、ステージ移動を連続的に行なってもよい。
【0197】
以上説明したように、電子線検査装置1000は、ステージ110に載置された試料SMに電子線を照射して、試料SMからの電子線を検出することにより、試料SMを観察する試料観察装置であって、試料SMに電子線を照射して、試料SMから放出される2次電子等SEを検出するための1つの電子コラム907を備え、この電子コラム907には、それぞれ照射ビームIB及び試料SMからの2次電子等SEが通る電子線路を形成する複数の電子線照射検出系を有している。電子線検査装置1000は、複数の電子線照射検出系を同時に用いることで、複数の電子線を同時に試料SMに照射して、試料SMを検査する。
【0198】
このように、本実施の形態の電子線検査装置1000は、1つの電子コラム907の中に複数の電子線照射検出系を有し、それらの複数の電子線照射検出系を同時に用いて複数の電子線で同時に試料を操作するので、分解能を低下させることなく、試料を走査するのに要する時間を短縮することができる。また、1つの電子コラムの中に複数の電子線照射検出系を形成したので、複数の電子線を同時に試料に照射するために1つの電子線照射検出系を有する従来の電子コラムを複数用いる場合と比較して、隣り合う電子線の間隔を短くすることができ、これにより、試料に対して同時に照射できる電子線の数を多くすることができる。