【実施例】
【0048】
以下、本実施形態に係る接眼レンズの各実施例について、図面に基づいて説明する。以
下に、表1〜表3を示すが、これらは本発明に係る接眼レンズの第1〜第3実施例におけ
る各レンズの諸元の表である。
【0049】
表中、[レンズデータ]において、面番号は焦点板Fに形成される焦点面を1として光
線の進行する方向に沿った物体側からの光学面の順序を、rは各光学面の曲率半径を、d
は各光学面から次の光学面までの光軸上の距離である面間隔を、n(d)はd線(波長58
7.6nm)に対する屈折率を、νdはd線を基準とするアッベ数を示す。なお、レンズ面が
非球面である場合には、面番号に*印を付し、曲率半径rの欄には近軸曲率半径を示す。
また、曲率半径の「∞」は平面を、EPはアイポイントを示す。また、空気の屈折率「1.
00000」の記載は省略する。[可変間隔データ]において、fは接眼レンズ全系の焦点距
離を、di(但し、iは整数)は第i面の可変の面間隔を示す。[条件式]には、上記の
条件式(1)〜(4)に対応する値を示す。
【0050】
また、表中の[非球面データ]には、[レンズデータ]において*印が付された非球面
について、その形状を次式(a)で示す。すなわち、光軸に垂直な方向の高さをyとし、
非球面の頂点における接平面から高さyにおける非球面上の位置までの光軸に沿った距離
(サグ量)をS(y)とし、基準球面の曲率半径(近軸曲率半径)をrとし、円錐係数を
κとし、n次の非球面係数をAnとしたとき、以下の式(a)で示している。また、E-n
は、×10
-nを表す。例えば、1.234E-05=1.234×10
-5である。
【0051】
S(y)=(y
2/r)/{1+(1−κ・y
2/r
2)
1/2}
+A4×y
4+A6×y
6+A8×y
8 …(a)
【0052】
なお、表中の焦点距離f、曲率半径r、面間隔d、その他の長さの単位は「mm」である
。但し、光学系は、比例拡大又は比例縮小しても同等の光学性能が得られるので、単位は
「mm」に限定されることなく、他の適当な単位を用いることが可能である。
【0053】
また、表中の視度の単位は[1/m]である。例えば、視度X[1/m]とは、接眼レ
ンズによる像がアイポイントEPから光軸上に1/X[m(メートル)]の位置にできる
状態を示している。なおこのとき、符号は、像がアイポイントEPより物体側にできた場
合を負とする。
【0054】
(第1実施例)
第1実施例について、
図1、
図2及び表1を用いて説明する。
図1は、第1実施例に係
る接眼レンズEL(EL1)のレンズ構成図(視度−1[1/m]時)である。なお、図
1では、ペンタプリズムPは厚い平行平面板に展開した状態で示され、焦点板Fは該焦点
板Fに形成される焦点面Iのみが示されている。
【0055】
第1実施例に係る接眼レンズEL1は、光軸に沿って物体側から順に並んだ、負の屈折
力を有する第1レンズ群G1と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2と、負の屈折力を
有する第3レンズ群G3とを備え、第2レンズ群G2を光軸に沿って移動させることによ
り視度調節を可能としている。第1レンズ群G1は物体側に凸面を向けたメニスカスレン
ズL1を有し、第2レンズ群G2は両凸レンズL2を有し、第3レンズ群G3は物体側に
凸面を向けたメニスカスレンズL3を有して構成されている。
【0056】
本実施例では、焦点面Iと第1レンズ群G1との間に、不図示の対物レンズの実像面す
なわち焦点面I側から順に、光軸に沿って、焦点面I近傍に配置されたコンデンサレンズ
Cと、ペンタプリズムPとが配置されている。
【0057】
上記構成を有する第1実施例に係る接眼レンズEL1では、(不図示の対物レンズによ
り結像された)焦点面I上の像を、コンデンサレンズC、ペンタプリズムPを順に介して
正立像とした後に、第1レンズ群G1〜第3レンズ群G3で構成された接眼レンズEL1
により拡大し、アイポイントEPにて観察するようになっている。
【0058】
以下の表1に、第1実施例に係る接眼レンズEL1の諸元値を掲げる。なお、表1にお
ける面番号1〜11は、
図1に示す面1〜11に対応している。
【0059】
(表1)
[レンズデータ]
面番号 r d n(d) νd
1 ∞ 2.10
2 ∞ 4.70 1.56883 56.34
3 -65.035 1.30
4 0.000 110.53 1.51680 64.10
5 0.000 0.35
6 501.286 1.10 1.84666 23.78
7 44.978 d7(可変)
8* 26.575 5.40 1.77387 47.25
9 -115.804 d9(可変)
10 27.617 5.00 1.90366 31.27
11 19.001 d11(可変)
EP
[非球面データ]
第8面
κ=1.0000 , A4=-7.4129E-06 , A6=-7.2215E-09, A8=1.6391E-12
[可変間隔データ]
視度 -1 -3 +1
f 72.8 70.0 76.2
d7 0.6 2.8 5.3
d9 5.3 3.1 0.6
d11 20.6 23.6 25.6
[条件式]
条件式(1)Nn(ABE)=1.875
条件式(2)ν(ABE)=27.5
条件式(3)ν2=47.3
条件式(4)S3=5.42
【0060】
表1に示す諸元の表から、第1実施例に係る接眼レンズEL1は、上記条件式(1)〜
(4)を満たすことが分かる。
【0061】
図2は、第1実施例に係る接眼レンズEL1の諸収差図(紙面左から、球面収差、非点
収差、コマ収差及び歪曲収差)であり、(a)は視度−1[1/m]時の諸収差図、(b
)は視度−3[1/m]時の諸収差図、(c)は視度+1[1/m]時の諸収差図をそれ
ぞれ示す。
【0062】
各収差図において、Y1はペンタプリズムPへの光線の入射高さを、Y0は焦点面I上
での物体高を示す。非点収差図では、実線はサジタル像面を、破線はメリディオナル像面
を示す。コマ収差図では、「min」は角度単位の「分」を示す。球面収差図および非点
収差図では、それぞれ横軸の単位は[1/m]であり、図中では「D」で表す。また、C
はC線(波長656.3nm)、Dはd線(波長587.6nm)、FはF線(波長486.1nm)、Gはg
線(波長435.8nm)における収差曲線を示す。以上、収差図の説明は他の実施例において
も同様とし、その説明を省略する。
【0063】
第1実施例は、各収差図から明らかなように、ファインダー光学系VFの光路長が長く
視度調節が可能であるにもかかわらず、各視度での光学系の諸収差が良好に補正されてい
ることが分かる。また、第1実施例は、各収差図はアイポイントEPの瞳径をφ10mmと
した場合の収差を示しているが、このような大きな瞳径において、コマ収差、球面収差、
および歪曲収差が良好に補正されていることも分かる。
【0064】
その結果、第1実施例に係る接眼レンズEL1によれば、ペンタプリズムPを利用する
一眼レフカメラCAMのファインダー光学系VFにおいて、焦点板Fから接眼レンズEL
1までの距離が非常に長いにもかかわらず、視度調節が可能で大きな瞳径を有しながら、
比較的高い視野の観察倍率が確保された接眼レンズEL1を得ることができる。また、こ
のような接眼レンズEL1を備えたファインダー光学系VFおよび一眼レフカメラCAM
(
図7参照)によれば、焦点板Fから接眼レンズEL1までの距離が非常に長いにもかか
わらず、視度調節が可能で大きな瞳径を有しながら、比較的高い視野の観察倍率を確保す
ることができる。
【0065】
(第2実施例)
第2実施例について、
図3、
図4及び表2を用いて説明する。
図3は、第2実施例に係
る接眼レンズEL(EL2)のレンズ構成図(視度−1[1/m]時)である。なお、図
3では、ペンタプリズムPは厚い平行平面板に展開した状態で示され、焦点板Fは該焦点
板Fに形成される焦点面Iのみが示されている。
【0066】
第2実施例に係る接眼レンズEL2は、光軸に沿って物体側から順に並んだ、負の屈折
力を有する第1レンズ群G1と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2と、負の屈折力を
有する第3レンズ群G3とを備え、第2レンズ群G2を光軸に沿って移動させることによ
り視度調節を行うことができるようになっている。第1レンズ群G1は物体側に凸面を向
けたメニスカスレンズL1を有し、第2レンズ群G2は両凸レンズL2を有し、第3レン
ズ群G3は物体側に凸面を向けたメニスカスレンズL3を有して構成されている。
【0067】
本実施例では、焦点面Iと第1レンズ群G1との間に、不図示の対物レンズの実像面す
なわち焦点面I側から順に、光軸に沿って、焦点面I近傍に配置されたコンデンサレンズ
Cと、ペンタプリズムPとが配置されている。
【0068】
上記構成を有する第2実施例に係る接眼レンズEL2では、(不図示の対物レンズによ
り結像された)焦点面I上の像を、コンデンサレンズC、ペンタプリズムPを順に介して
正立像とした後に、第1レンズ群G1〜第3レンズ群G3で構成された接眼レンズEL2
により拡大し、アイポイントEPにて観察するようになっている。
【0069】
以下の表2に、第2実施例に係る接眼レンズEL2の諸元値を掲げる。なお、表2にお
ける面番号1〜11は、
図3に示す面1〜11に対応している。
【0070】
(表2)
[レンズデータ]
面番号 r d n(d) νd
1 ∞ 2.00
2 ∞ 4.70 1.56883 56.34
3 -65.035 1.30
4 0.000 110.53 1.51680 64.10
5 0.000 0.25
6 1159.197 2.82 2.00069 25.45
7 56.134 d7(可変)
8* 27.121 5.40 1.75550 55.10
9 -104.236 d9(可変)
10 25.552 4.93 1.90366 31.27
11 18.069 d11(可変)
EP
[非球面データ]
第8面
κ=0.4984 , A4=-4.6337E-06 , A6=-5.1922E-09, A8=1.1396E-11
[可変間隔データ]
視度 -1 -3 +1
f 73.4 70.7 76.6
d7 2.7 0.5 5.1
d9 2.8 5.0 0.4
d11 2.8 5.0 0.4
[条件式]
条件式(1)Nn(ABE)=1.952
条件式(2)ν(ABE)=28.4
条件式(3)ν2=55.1
条件式(4)S3=5.83
【0071】
表2に示す諸元の表から、第2実施例に係る接眼レンズEL2は、上記条件式(1)〜
(4)を満たすことが分かる。
【0072】
図4は、第2実施例に係る接眼レンズEL2の諸収差図(紙面左から、球面収差、非点
収差、コマ収差及び歪曲収差)であり、(a)は視度−1[1/m]時の諸収差図、(b
)は視度−3[1/m]時の諸収差図、(c)は視度+1[1/m]時の諸収差図をそれ
ぞれ示す。各収差図から明らかなように、第2実施例は、ファインダー光学系VFの光路
長が長く視度調節が可能であるにもかかわらず、各視度での光学系の諸収差が良好に補正
されていることが分かる。また、第2実施例は、各収差図はアイポイントEPの瞳径をφ
10mmとした場合の収差を示しているが、このような大きな瞳径において、コマ収差、球
面収差、および歪曲収差が良好に補正されていることも分かる。
【0073】
その結果、第2実施例に係る接眼レンズEL2によれば、ペンタプリズムPを利用する
一眼レフカメラCAMのファインダー光学系VFにおいて、焦点板Fから接眼レンズEL
2までの距離が非常に長いにもかかわらず、視度調節が可能で大きな瞳径を有しながら、
比較的高い視野の観察倍率が確保された接眼レンズEL2を得ることができる。また、こ
のような接眼レンズEL2を備えたファインダー光学系VFおよび一眼レフカメラCAM
(
図7参照)によれば、焦点板Fから接眼レンズEL2までの距離が非常に長いにもかか
わらず、視度調節が可能で大きな瞳径を有しながら、比較的高い視野の観察倍率を確保す
ることができる。
【0074】
(第3実施例)
第3実施例について、
図5、
図6及び表3を用いて説明する。
図5は、第3実施例に係
る接眼レンズEL(EL3)のレンズ構成図(視度−1[1/m]時)である。なお、図
5では、ペンタプリズムPは厚い平行平面板に展開した状態で示され、焦点板Fは該焦点
板Fに形成される焦点面Iのみが示されている。
【0075】
第3実施例に係る接眼レンズEL3は、光軸に沿って物体側から順に並んだ、負の屈折
力を有する第1レンズ群G1と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2と、負の屈折力を
有する第3レンズ群G3とを備え、第2レンズ群G2を光軸に沿って移動させることによ
り視度調節を行い、第1レンズ群G1は物体側に凸面を向けたメニスカスレンズL1を有
し、第2レンズ群G2は両凸レンズL2を有し、第3レンズ群G3は物体側に凸面を向け
たメニスカスレンズL3を有して構成されている。
【0076】
本実施例では、焦点面Iと第1レンズ群G1との間に、不図示の対物レンズの実像面す
なわち焦点面I側から順に、光軸に沿って、焦点面I近傍に配置されたコンデンサレンズ
Cと、ペンタプリズムPとが配置されている。
【0077】
上記構成を有する第1実施例に係る接眼レンズEL3では、(不図示の対物レンズによ
り結像された)焦点面I上の像を、コンデンサレンズC、ペンタプリズムPを順に介して
正立像とした後に、第1レンズ群G1〜第3レンズ群G3で構成された接眼レンズEL3
により拡大し、アイポイントEPにて観察するようになっている。
【0078】
以下の表3に、第3実施例に係る接眼レンズEL3の諸元値を掲げる。なお、表3にお
ける面番号1〜11は、
図5に示す面1〜11に対応している。
【0079】
(表3)
[レンズデータ]
面番号 r d n(d) νd
1 ∞ 2.10
2 ∞ 4.70 1.56883 56.34
3 -65.035 1.30
4 0.000 110.53 1.51680 64.10
5 0.000 0.25
6 3941.586 1.10 2.00069 25.45
7 57.369 d7(可変)
8* 28.042 5.32 1.77250 49.61
9 -104.701 d9(可変)
10 25.668 4.90 2.00069 25.45
11 18.606 d11(可変)
EP
[非球面データ]
第8面
κ=-0.1749 , A4=-5.2054E-07 , A6=-4.5613E-09, A8=1.2666E-11
[可変間隔データ]
視度 -1 -3 +1
f 70.4 72.9 75.9
d7 0.6 2.8 5.2
d9 5.2 3.0 0.6
d11 24.0 26.0 28.0
[条件式]
条件式(1)Nn(ABE)=2.001
条件式(2)ν(ABE)=25.5
条件式(3)ν2=49.6
条件式(4)S3=6.27
【0080】
表3に示す諸元の表から、第3実施例に係る接眼レンズEL3は、上記条件式(1)〜
(4)を満たすことが分かる。
【0081】
図6は、第3実施例に係る接眼レンズEL3の諸収差図(紙面左から、球面収差、非点
収差、コマ収差及び歪曲収差)であり、(a)は視度−1[1/m]時の諸収差図、(b
)は視度−3[1/m]時の諸収差図、(c)は視度+1[1/m]時の諸収差図をそれ
ぞれ示す。各収差図から明らかなように、第3実施例は、ファインダー光学系VFの光路
長が長く視度調節が可能であるにもかかわらず、各視度での光学系の諸収差が良好に補正
されていることが分かる。また、第3実施例は、各収差図はアイポイントEPの瞳径をφ
10mmとした場合の収差を示しているが、このような大きな瞳径において、コマ収差、球
面収差、および歪曲収差が良好に補正されていることも分かる。
【0082】
その結果、第3実施例に係る接眼レンズEL3によれば、ペンタプリズムPを利用する
一眼レフカメラCAMのファインダー光学系VFにおいて、焦点板Fから接眼レンズEL
3までの距離が非常に長いにもかかわらず、視度調節が可能で大きな瞳径を有しながら、
比較的高い視野の観察倍率が確保された接眼レンズEL3を得ることができる。また、こ
のような接眼レンズEL3を備えたファインダー光学系VFおよび一眼レフカメラCAM
(
図7参照)によれば、焦点板Fから接眼レンズEL3までの距離が非常に長いにもかか
わらず、視度調節が可能で大きな瞳径を有しながら、比較的高い視野の観察倍率を確保す
ることができる。
【0083】
なお、本発明を分かりやすくするために、実施形態の構成要件を付して説明したが、本
発明がこれに限定されるものではないことは言うまでもない。
【0084】
例えば、本実施形態に係る接眼レンズELは、
図7に示すような一眼レフカメラのファ
インダー光学系VFに用いられる接眼レンズに限らず、広く実像光学系のファインダー光
学系の接眼レンズとして利用することも可能である。
【0085】
また、上記実施形態においては、第2レンズ群G2を光軸に沿って移動させることによ
り視度調節を行うことができるように構成されているが、これに限られものではない。例
えば、第1レンズ群G1を移動させたり、第1レンズ群G1および第2レンズ群G2を2
つとも移動させたりするなど、第1レンズ群G1、第2レンズ群G2および第3レンズ群
G3のうち少なくとも1つを光軸に沿って移動させることにより、視度調節を行うことが
できるように構成されていればよい。