特許第5891840号(P5891840)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5891840
(24)【登録日】2016年3月4日
(45)【発行日】2016年3月23日
(54)【発明の名称】撮影装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/28 20060101AFI20160310BHJP
   G02B 7/36 20060101ALI20160310BHJP
   G03B 13/36 20060101ALI20160310BHJP
   H04N 5/232 20060101ALI20160310BHJP
【FI】
   G02B7/28 N
   G02B7/36
   G03B13/36
   H04N5/232 A
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-37284(P2012-37284)
(22)【出願日】2012年2月23日
(65)【公開番号】特開2013-171279(P2013-171279A)
(43)【公開日】2013年9月2日
【審査請求日】2015年1月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100092576
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 久男
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 高広
【審査官】 野村 伸雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−329079(JP,A)
【文献】 特開2010−063162(JP,A)
【文献】 特開2011−133700(JP,A)
【文献】 特開2007−256977(JP,A)
【文献】 特開2009−175552(JP,A)
【文献】 特開2011−193185(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/28
G02B 7/36
G03B 13/36
H04N 5/232
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動画撮影可能な撮影装置であって、
合焦レンズと、
合焦レンズを駆動する駆動部と、
動画撮影中の音を集音する集音部と、
動画撮影中に、前記合焦レンズをウォブリング動作させる制御部と、を備え、
前記制御部は、前記集音部により集音された音のレベルが所定値未満のとき、前記音のレベルが前記所定値以上のときよりも、前記ウォブリング動作の周期を長くすること、
を特徴とする撮影装置。
【請求項2】
請求項1に記載の撮影装置であって、
前記撮影装置は、静音優先モードとオートフォーカス速度優先モードとのいずれかを選択可能な選択部を備え、
前記制御部は、前記静音優先モードが選択されているとき、前記オートフォーカス速度優先モードが選択されているときよりも、前記ウォブリング動作の周期を長くする場合に前記周期を変更すること、
を特徴とする撮影装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の撮影装置であって、
前記制御部は、動画撮影中の被写界深度が所定値以上のとき、前記被写界深度が前記所定値未満のときよりも、前記ウォブリング動作の周期を長くすること、
を特徴とする撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一眼レフカメラタイプのデジタルカメラ等の撮像装置において、動画撮影機能を有するものがある。動画撮影では、被写体の動きに合わせて合焦レンズの位置を追従させることが望まれる。このため、合焦レンズを前後に細かく移動させ、画像のコントラストの変化から合焦状態を検出して、被写体への合焦を維持する、いわゆるウォブリング動作が行われている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−151081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ウォブリング動作の際、合焦レンズの駆動源は駆動/停止を繰り返す。駆動源は、この駆動/停止の際に作動音を発生するため、この作動音がマイクに伝達して記録(録音)され、耳障りとなる。
【0005】
本発明の課題は、ウォブリングによる駆動音の発生頻度を調整可能な撮装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下のような解決手段により前記課題を解決する。
【0007】
本発明の撮影装置は、動画撮影可能な撮影装置であって、合焦レンズと、合焦レンズを駆動する駆動部と、動画撮影中の音を集音する集音部と、動画撮影中に、前記合焦レンズをウォブリング動作させる制御部と、を備え、前記制御部は、前記集音部により集音された音のレベルが所定値未満のとき、前記音のレベルが前記所定値以上のときよりも、前記ウォブリング動作の周期を長くする構成とした
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ウォブリングによる駆動音の発生頻度を調整可能な撮装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態のカメラを説明する概念図である。
図2】カメラのウォブリング動作を示すイメージ図である。
図3】本実施形態の動作を示すフローチャートである。
図4】音声レベルと、1ウォブリング動作の周期との関係を示した図である。
図5】ウォブリングサイクルが変更された場合と、AF優先モードの場合のデフォルト周期の場合との、ウォブリング動作を示すイメージ図である。
図6】音声レベルに応じて、1ウォブリングの周期Tを段階的に変化させる変形形態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面等を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明における一実施形態のカメラ1を説明する概念図である。本実施形態におけるカメラ1は、動画撮影機能を有するカメラ1である。
カメラ1は、カメラボディ10と、レンズ鏡筒20とを備えている。レンズ鏡筒20は、カメラボディ10に着脱可能な交換レンズである。なお、本実施形態では、レンズ鏡筒20が交換可能な例を示したが、これに限らず、例えば、カメラボディとレンズ鏡筒が一体型のカメラであってもよい。
【0011】
カメラボディ10は、撮像素子11、制御装置12、集音マイク13、記録部14、操作部15、表示部16、およびボディ側接点17を備えている。
撮像素子11は、レンズ鏡筒20を通過した被写体像を撮像する光電変換素子であり、被写体光を露光して電気的な画像信号に変換するCCDやCMOS等の素子である。
集音マイク13は、動画撮影時に、音声を集音するためのものである。
記録部14は、撮像された画像データ、録音データを記録するための媒体であり、SDカードやCFカード等が用いられる。
【0012】
操作部15は、撮影者が、撮影条件や再生条件の選択、静止画撮影モードと動画撮影モードとのいずれかの選択を行う部分である。さらに操作部15を介して撮影者は、後述するウォブリング動作のモードである静音優先モードと通常モード(AF優先モード)とのいずれかの選択が可能である。
表示部16は、カメラボディ10の背面に設けられ、撮像素子11で撮像した被写体像(再生画像やライブビュー画像)や操作に関連した情報(メニュー)などを表示する液晶ディスプレィである。
ボディ側接点17は、レンズ鏡筒20に設けられたレンズ側接点25と接続して、レンズ鏡筒20とカメラボディ10との通信を行う。
【0013】
制御装置12は、当該カメラ1全体を統括的に制御する制御部である。制御装置12は、被写界深度演算部12A、音声レベル判定部12B、1ウォブリング動作の周期を決定するウォブリング周期決定部12C、焦点調整情報を検出する焦点情報検出部12D、および超音波モータ30の駆動電力を形成する駆動回路12E等を備えている。
【0014】
被写界深度演算部12Aは、レンズ鏡筒20の焦点距離、絞り値、撮影距離等より、被写界深度を求める。その情報はウォブリング周期決定部12Cによるウォブリングの周期Tの決定に用いられる。
音声レベル判定部12Bは、マイク13において集音された音声のレベルを判定する。
【0015】
ウォブリング周期決定部12Cは、操作部15を通じて選択されたウォブリングモードと、被写界深度演算部12Aによって演算された被写界深度と、音声レベル判定部12Bによって判定された音声レベルと、によって、ウォブリング動作の1周期である周期Tを決定する。
なお、ウォブリングとは、動画撮像やプレビュー撮像時において、合焦レンズ21を常に動かし続けて被写体付近に常にフォーカスを合わせる動作である。
【0016】
焦点情報検出部12Dは、動画撮影時において、撮像素子11が撮像した画像のコントラストの変化から合焦状態の変化を検出する。
駆動回路12Eは、後述する超音波モータ30を駆動する駆動電力を形成する。駆動回路12Eは、その出力する駆動電力の周波数を変更することにより、超音波モータ30の速度を可変となっている。
【0017】
そして、制御装置12は、焦点情報検出部12Dによる焦点検出情報に基づいて駆動回路12Eを制御し、超音波モータ30を駆動して後述するレンズ鏡筒20における合焦レンズ21を移動させ、被写体の合焦状態を維持するように制御する。
この際、制御装置12は、ウォブリング周期決定部12Cによって決定された周期でウォブリング動作を行う。
【0018】
レンズ鏡筒20は、合焦レンズ21、カム筒22、アイドルギア23、超音波モータ30、及びこれらを包囲する外筒24、ボディ側接点17に接続されるレンズ側接点25等を備えている。
本実施形態では、超音波モータ30は、カム筒22と外筒24の間の円環状の隙間に配置されている。超音波モータ30は、カメラ1の合焦動作時に合焦レンズ21を駆動する駆動源である。超音波モータ30は、後述する出力ギア33が噛合するアイドルギア23を介してカム筒22を回転操作する。
【0019】
超音波モータ30は、振動子31と、振動子31に圧接配置された回転体32と、回転体32に結合された出力ギア33と、を備えている。
振動子31は、弾性体31Aと、弾性体31Aに接合された圧電体31Bと、により構成されている。振動子31は、図示しないフレキシブルプリント基板を介して制御装置12(駆動回路12E)から所定の電圧および周波数の駆動信号が供給され、これによって圧電体31Bが伸縮して弾性体31Aの駆動面に進行波を生ずる。
【0020】
そして、超音波モータ30は、振動子31の進行波によって回転体32が回転駆動され、出力ギア33が回転力を出力する。回転体32(出力ギア33)の速度(回転数)は、駆動信号の周波数に応じて変化する。つまり、超音波モータ30は、制御装置12による駆動回路12Eの駆動信号の周波数制御によって、回転数が制御されるようになっている。
【0021】
カム筒22は、超音波モータ30によって回転操作されると、外筒24内を光軸OAと平行する方向(Z軸方向)に移動可能に設けられている。
合焦レンズ21は、カム筒22に保持されている。そして、超音波モータ30の駆動によるカム筒22の移動によって、光軸OA方向に移動して焦点調節を行う。
なお、レンズ鏡筒20は、合焦レンズ21の他に、図示しないが複数のレンズ群を備えている。
【0022】
そして、カメラ1は、合焦レンズ21とレンズ鏡筒20内に設けられた図示しないレンズ群とによって、撮像素子11の撮像面に被写体像が結像される。撮像素子11は、結像された被写体像を電気信号に変換する。その電気信号は、A/D変換されて、画像データとされる。これらカメラ1における撮影に係る一連の動作は、制御装置12によって制御される。
【0023】
ここで、前述したように、カメラ1は、動画撮影機能を有している。動画撮影時には、制御装置12は合焦レンズ21にウォブリング動作を行わせる。すなわち、動画撮影時において、制御装置12は、合焦レンズ21を前後に細かく移動させ、撮像素子11が撮像した画像のコントラストの変化に伴って焦点情報検出部12Dが検出した合焦状態の変化情報に基づいて、駆動回路12Eを制御して合焦調整を行う。
【0024】
図2は、カメラのウォブリング動作を示すイメージ図である。
たとえば、カメラが動画モードに切り替えられると、図中のウォブリング1の動作が開始される。ウォブリングは、超音波モータ30によりフォーカスレンズ群5の光軸前方と後方への微動を行う動作である。ウォブリングは最低1サイクル行う。なお、図2においては1サイクルの例を示すが、実際には3〜5回/sec程度行う。ウォブリングの1サイクルとは、超音波モータ30の一方向への駆動、停止、逆方向への移動、停止(次の一方向への駆動まで)を含む、図中Tで示す期間である。
【0025】
ウォブリング1が終了すると、撮像素子3のボケの程度に応じて、フォーカス範囲(方向と距離)Fを算出する。
そして、図2の期間Tafに示すように、超音波モータ30によって、フォーカスレンズ群5をフォーカス位置まで駆動する。
【0026】
その後、さらに、次のウォブリング2が行われる。ウォブリング2は、焦点が合っているか否かの確認のために行うものであり、動画撮影中は、被写体を追いかけるので、フォーカス範囲F内に合焦点がある限り、ウォブリングは連続して行われる。この際のウォブリング2の周期もウォブリング1と同様のTである。
【0027】
このように超音波モータ30が駆動すると、起動時の突発音a(a1〜a6),駆動音b(b1〜b6),停止時の突発音c(c1〜c6)が発生する。
起動時又は停止時の突発音a,cは、電流の流れる又は切れることにより、発生する音であり、駆動音bは、超音波モータ30が回転しているときの振動子31と回転体32の摺動音やベアリングの回転するメカ的な音である。なお、a5,b5,c5は、反転時の音である。
超音波モータ30の起動時の突発音a,駆動音b,停止時の突発音cを含んだ動画撮影時の音は、集音マイク13で集音される。1ウォブリング動作の周期Tについて突発音aが2回,駆動音bが1回,停止時の突発音cが2回含まれる。
【0028】
以下、本実施形態の動作について説明する。
本実施形態においては、操作部15において、撮影者が、AF優先モードか、静音優先モードのいずれかを選択可能となっている。
AF優先モードとは、デフォルトモードであり、合焦速度を優先し、マイク13の集音レベルによらず、1ウォブリング動作の周期Tを一定(T0)とするモードである。
静音優先モードとは、撮影者が選択によりAF優先モードから変更可能なモードである。マイク13の集音レベルに応じて、集音レベルが低いほど(静かなほど)、1ウォブリング動作の周期Tを長くするものである。
【0029】
図3は本実施形態の動作を示すフローチャートである。
動画がスタートすると、制御装置12は、カメラ1の現在のモードを判断する(ステップS11)。
AF優先モードのときは、S16へ進む。静音優先モードのときは、被写界深度を所定の閾値と比較する(ステップS12)。
被写界深度が閾値より小さい場合(S12,NO)、すなわち被写界深度が浅いときは、合焦レンズ21が合焦位置からわずかにずれても、ぼけが目立つ状態となる。したがって、ウォブリング動作をこまめに行い、合焦状態を頻繁に確認することが必要である。このため、1ウォブリング動作の周期の変更は行わず、S16へ進みデフォルト設定の周期T0でウォブリングを行う(ステップS15)。
【0030】
被写界深度が閾値以上の場合(S12,YES)、すなわち被写界深度が深いので、合焦レンズ21が合焦位置からわずかにずれていても、ぼけは比較的目立たない。したがって、1ウォブリングの周期を長くすることが可能であるので、次のステップS13へ進む。
S13では、マイク13より集音された音声レベルSの判断を、音声レベル判定部12Bで行う。
【0031】
図4は、音声レベルSと、1ウォブリング動作の周期Tとの関係を示したものである。S14では、S13で判定された音声レベルSに基づいて1ウォブリング動作の周期Tを決定する。
図示するように、音声レベルSが低いとき(Sq:静かなシーン)には、ウォブリング動作の周期Tを長くし(Tl)、音声レベルSが高い(Sn:騒々しいシーン)では、ウォブリング動作の周期Tを短くする(T0)。
【0032】
ここで、本実施形態では、ウォブリング動作の周期TはT0≦T≦Tlである。Tlはウォブリング動作として機能しうる最長時間であり、T0は、本実施形態においてデフォルトの周期T0である。
そしてS15において決定された周期Tでウォブリング動作を行う。
【0033】
図5は、ウォブリングサイクルTが変更された場合と、AF優先モードの場合のデフォルト周期T0の場合との、ウォブリング動作を示すイメージ図である。
図中点線で示すグラフNはウォブリングの周期がT0の場合であり、実線で示すグラフQはウォブリングの周期がTと長くなった場合である。
【0034】
このように1ウォブリング動作の周期がT0からTに変更されて長くなると、超音波モータ30の回転速度が遅くなる。すなわち、単位時間当たりの起動音発生回数が減少する。たとえば図5に示す時間tの区間について、AF優先モード(点線N)の場合、駆動音は9回発生するが、静音優先モード(実線Q)の場合5回となる。これによって単位時間当たりのノイズが減少し、静音化が図られる。
【0035】
(変形形態)
以上、説明した実施形態に限定されることなく、以下に示すような種々の変形や変更が可能であり、それらも本発明の範囲内である。
(1)本実施形態では、被写界深度を所定の閾値以上かどうかで、1ウォブリングの周期Tを変更するかどうかを判定しているが、これに限定されない。たとえば、被写界深度によって、図4のグラフの傾きを変えても良い。たとえば、被写界深度が浅いとき、Tlを小さくし、図4の傾きの絶対値を小さくし、被写界深度が深いときはTlを大きくし、図4の傾きの絶対値が大きくすることができる。
【0036】
(2)本実施形態では、音声レベルによって、1ウォブリングの周期Tを線形に変化させる例について説明したが、本発明はこれに限定されない。たとえば図6に示すように、音声レベルSに応じて、1ウォブリングの周期Tを段階的に変化させても良い。
【0037】
(3)本実施形態では、デジタル一眼レフカメラについて説明したが、本発明はこれに限定されず、コンパクトカメラや携帯電話などにも適用可能である。
(4)超音波モータは、円環型の例で説明したが、小型の出力軸を持ったものでもよい。この場合には、固定筒のモールドに取り付ければよい。また、固定筒に穴を形成して、埋め込むようにしてもよい。
【符号の説明】
【0038】
1:カメラ、10:カメラボディ、11:撮像素子、12:制御装置、12A:被写界深度演算部、12B:音声レベル判定部、12C:ウォブリング周期決定部、12D:焦点情報検出部、12E:駆動回路、13:マイク、15:操作部、20:レンズ鏡筒、21:合焦レンズ、30:超音波モータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6