特許第5892016号(P5892016)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5892016酸化亜鉛スパッタリングターゲットとその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5892016
(24)【登録日】2016年3月4日
(45)【発行日】2016年3月23日
(54)【発明の名称】酸化亜鉛スパッタリングターゲットとその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/34 20060101AFI20160310BHJP
   C04B 35/453 20060101ALI20160310BHJP
【FI】
   C23C14/34 A
   C04B35/00 P
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-205753(P2012-205753)
(22)【出願日】2012年9月19日
(65)【公開番号】特開2014-58731(P2014-58731A)
(43)【公開日】2014年4月3日
【審査請求日】2014年11月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095223
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 章三
(72)【発明者】
【氏名】橋口 敢
【審査官】 伊藤 光貴
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−020911(JP,A)
【文献】 特開2012−092003(JP,A)
【文献】 特開2013−189669(JP,A)
【文献】 特開2010−219084(JP,A)
【文献】 特開2011−063866(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/108157(WO,A1)
【文献】 特開2011−111642(JP,A)
【文献】 特開昭62−132380(JP,A)
【文献】 特開2012−136417(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00−14/58
C04B 35/453
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化亜鉛を主成分とし、0.05質量%以上0.10質量%以下の酸化アルミニウムを含有する酸化物焼結体で構成され、かつ、酸化物焼結体の相対密度が95%以上であることを特徴とする酸化亜鉛スパッタリングターゲット。
【請求項2】
請求項1に記載の酸化亜鉛スパッタリングターゲットを製造する方法において、
酸化亜鉛粉末と酸化アルミニウム粉末を、純水、有機バインダー、分散剤と混合してスラリーを調製し、かつ、得られたスラリーを、乾燥、造粒する第一工程と、
第一工程で得られた造粒粉を、加圧成形して成形体を得る第二工程と、
第二工程で得られた成形体を焼成し、酸化物焼結体を得る第三工程と、
を備え、
上記第三工程における焼結温度を900〜1150℃の範囲とし、40〜60時間焼成することを特徴とする酸化亜鉛スパッタリングターゲットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池等を構成する透明導電膜をスパッタリング法にて形成する際に用いられる酸化亜鉛スパッタリングターゲットに係り、特に、CIGS系太陽電池のバッファ層に用いられる高抵抗膜(酸化物透明半導体膜)をスパッタリング法により効率良く成膜できる酸化亜鉛スパッタリングターゲットの改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
酸化物透明導電膜(酸化物透明導体膜若しくは半導体膜)は、導電性と可視光領域での高い透過率を有するため、太陽電池や液晶表示素子、その他各種受光素子の電極等に利用され、更に、近赤外線領域の波長での反射吸収特性を生かして、自動車や建築物の窓ガラス若しくはフィルム等に用いる熱線反射膜や各種の帯電防止膜、冷凍ショーケース等の防曇用の透明発熱体としても利用されている。
【0003】
これ等酸化物透明導電膜(酸化物透明導体膜若しくは半導体膜)が利用される分野の中で、CIGS系太陽電池に用いられる酸化物透明導電膜の中には適度な絶縁抵抗が求められる用途がある。これは、CIGS系太陽電池の発電層から電気を取り出す導電膜層(透明電極層)との間に、電荷の移動(漏れ出し)を妨げる層(バッファ層)を設けることにより発電効率を向上させるためである。当初はCdSやZnSが上記バッファ層に用いられていたが、薄膜太陽電池の表面電極には一般的に酸化亜鉛系の透明電極が用いられており、環境面、積層のし易さ等から、バッファ層においても酸化亜鉛系の透明導電膜(酸化物透明半導体膜)が用いられるようになっている。
【0004】
これ等酸化物透明導電膜の形成方法としては、真空中で蒸発源を加熱し、蒸発した原料を基板上に堆積させて形成する真空蒸着法、ターゲットにアルゴンイオンを衝突させてターゲットを構成する物質をたたき出し、対向する基板に堆積させて形成するスパッタリング法、および、透明導電層形成用塗液を塗布して形成する方法等が用いられている。この中で、真空蒸着法やスパッタリング法は、蒸気圧の低い材料を使用する際や精密な膜厚制御を必要とする際に有効な手法であり、かつ、操作が非常に簡便であるため工業的に広く利用されており、特に、スパッタリング法は、短時間に効率良く薄膜を形成できることから最も広く利用されている。
【0005】
このスパッタリングターゲット材(焼結体)には、長時間安定したスパッタリング成膜が行なえるようにするため、相対密度で、少なくとも90%を越える高い密度が求められる。ここで、上記「相対密度」とは、ターゲット材の出発原料である各混合粉末の真密度から求めた計算真密度に対する焼結体(ターゲット材)の密度の比率(%)のことで、(上記焼結体の密度/計算真密度)×100=焼結体の相対密度(%)という式により求められる値である。尚、計算真密度は、AZO(アルミニウムをドーパントとして含む酸化亜鉛系のターゲット材)であれば、計算真密度=100/[(酸化亜鉛の配合比(質量%)/酸化亜鉛の真密度)+(酸化アルミニウムの配合比(質量%)/酸化アルミニウムの真密度)]で計算される。
【0006】
相対密度の高い焼結体を得るためには、ホットプレス法や熱間静水圧プレス法等が試みられているが、生産性の点から常圧焼結法が多く採用されている。常圧焼結を行なうための成形体を得る方法として、原料粉をスラリーにして鋳込む方式と、粉体をプレスして成形を行なう方式が取られるが、平板形状のターゲットを作製するにはプレス成形での生産が適している。
【0007】
また、スパッタリング方式には様々な駆動方式があるが、最も量産性に優れるのはDCマグネトロンスパッタ方式であり、これに適用可能なスパッタリングターゲットには、一定程度以上の導電性が必要である。しかし、ドーパント量が少ない(例えば、ドーパントの添加量が0.01〜0.1質量%)酸化亜鉛系ターゲットでは、導電性を高めるためにドーパントの添加量を増加するに従い焼結体の密度が低下するという問題があった(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−279754号公報(段落0035の表1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
すなわち、0.1質量%以下の酸化アルミニウムを含有する(すなわち、ドーパント量の少ない)酸化亜鉛系ターゲットでは、特許文献1の表1(段落0035)に記載されているように、上記ドーパント(Al23)の添加量を増加する(0.00質量%〜0.10質量%)に従い、密度が5.30〜5.02g/cm3と低下している。酸化亜鉛の真密度は5.78g/cm3、酸化アルミニウムの真密度は3.99g/cm3であるので、酸化アルミニウムが0.00質量%〜0.10質量%のときの計算真密度は、上述の計算式から約5.78g/cm3となり、相対密度は92%以下のものしか得られていない。
【0010】
他方、透明電極等に広く用いられている2〜5質量%の酸化アルミを含有する(すなわち、ドーパント量の多い)酸化亜鉛系ターゲットでは、特許文献1に引用された特開平7−258836号公報の段落0025と段落0035に記載されているように、酸化アルミニウムの含有量が2質量%で密度が5.61g/cm3以上、すなわち、相対密度が98%以上と高いものが得られ、市販されている。
【0011】
このため、CIGS系太陽電池のバッファ層にドーパント量の少ない酸化亜鉛系ターゲット(相対密度が92%以下)を適用し、かつ、CIGS系太陽電池の導電膜層(透明電極層)にドーパント量の多い酸化亜鉛系ターゲット(相対密度が98%以上)を適用した場合、形成される導電膜層(透明電極層)とバッファ層との間に大きな密度差が生じてしまうため、生産効率を大きく損ねてしまう課題(問題点)が存在した。
【0012】
本発明はこのような問題点に着目してなされたもので、その課題とするところは、ドーパントである酸化アルミニウムの添加量が0.10質量%以下と少量にも拘らず、相対密度が95%以上である酸化亜鉛スパッタリングターゲットとその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
すなわち、請求項1に係る発明は、
酸化亜鉛スパッタリングターゲットにおいて、
酸化亜鉛を主成分とし、0.05質量%以上0.10質量%以下の酸化アルミニウムを含有する酸化物焼結体で構成され、かつ、酸化物焼結体の相対密度が95%以上であることを特徴とする。
【0014】
また、請求項に係る発明は、
請求項1に記載の酸化亜鉛スパッタリングターゲットを製造する方法において、
酸化亜鉛粉末と酸化アルミニウム粉末を、純水、有機バインダー、分散剤と混合してスラリーを調製し、かつ、得られたスラリーを、乾燥、造粒する第一工程と、
第一工程で得られた造粒粉を、加圧成形して成形体を得る第二工程と、
第二工程で得られた成形体を焼成し、酸化物焼結体を得る第三工程と、
を備え、
上記第三工程における焼結温度を900〜1150℃の範囲とし、40〜60時間焼成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る酸化亜鉛スパッタリングターゲットによれば、ドーパントである酸化アルミニウムの添加量が0.05質量%以上0.10質量%以下と少量であるにも拘らず、酸化アルミニウムの添加量が2〜5質量%と多量である市販の酸化亜鉛スパッタリングターゲットと同様にその相対密度が95%以上の高い値になっている。
【0016】
このため、本発明に係る酸化亜鉛スパッタリングターゲットを例えばCIGS系太陽電池のバッファ層に適用した場合、酸化アルミニウムの添加量が2〜5質量%と多量である市販の酸化亜鉛スパッタリングターゲットを用いて形成された導電膜層(透明電極層)との間に大きな密度差が生じないことから、積層効率が著しく向上して大幅な生産性の向上が図れる効果を有している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0018】
本発明に係る酸化亜鉛スパッタリングターゲットは、酸化亜鉛粉末を主とし、0.05質量%以上0.10質量%以下の酸化アルミニウム粉末を含有する金属酸化物粉末に、水と有機バインダーと分散剤とを混合してスラリーを調製し、かつ、得られたスラリーを噴霧し、乾燥させて造粒粉を得る第一工程と、得られた造粒粉を加圧成形して成形体を得る第二工程と、得られた成形体を焼成して焼結体を得る第三工程と、得られた焼結体を機械加工してスパッタリングターゲットを得る工程を経て製造される。
【0019】
出発原料として、BET比表面積が4m2/gである酸化亜鉛粉末に、BET比表面積が6m2/gである酸化アルミニウム粉末を添加し、分散剤として、分散能力に優れるアクリル酸メタクリル酸共重合体アンモニア中和物を用いると、酸化亜鉛粉末の凝集が効果的に抑えられ、均一なスラリーを得ることができるため好ましい。上記分散剤の添加量は、酸化アルミニウム粉末を含む金属酸化物粉末の合計質量に対して0.3〜3質量%とすることが好ましい。添加量を0.3〜3質量%とすることにより、スラリーの濃度が70質量%程度であっても、スラリーの粘度は100cps未満となり、噴霧、乾燥工程における噴霧が容易となる。また、上記分散剤の添加により、金属酸化粉末の沈降も抑えられるため、噴霧、乾燥工程における効率が著しく向上することとなる。上記分散剤の添加量を0.3質量%未満にすると、分散能力が不十分となる可能性がある。上記分散剤を使用しない場合には、濃度が30〜35質量%程度のスラリーであっても、粘度が100cps以上になってしまい、噴霧、乾燥工程における噴霧が行い難くなる。一方、上記分散剤の添加量が3質量%を越えると、焼結時に揮発分が多くなるため、焼結時に製品が割れる確率が高くなってしまう。
【0020】
分散剤としてアクリル酸メタクリル酸共重合体アンモニア中和物を用いた場合には分散能力が非常に高くなるので、加える有機バインダーはポリビニルアルコール(PVA)で十分であり、成形体は十分な強度が得られる。用いるPVAは、ケン化度90〜97mol%、重合度400〜1000のものが適している。この範囲のケン化度と重合度のPVAを用いることにより、得られる造粒粉は適度に軟質なものとなり、成形時のつぶれ性が向上する。この結果、成形体中の空孔が減少し、成形体強度が向上し、焼成して得られるスパッタリングターゲットの密度が向上する。ケン化度が97mol%を越えるか、重合度が1000を越えるPVAを用いると、成形時の造粒粉のつぶれ性が悪くなり、成形体中の空孔が増加し、成形体強度が減少する。また、焼結後に得られるスパッタリングターゲットの密度も向上しない。一方、ケン化度が90mol%未満であるか、重合度が400未満であるPVAを用いると、成形体が軟質となり過ぎ、作業効率が悪くなる。尚、本発明においては、有機バインダーとしてPVAを用いれば十分であるが、PVAの他、アクリル系バインダー等を用いることも可能である。有機バインダーの量は、通常、1.0質量%以上を加えることにより成形体強度を確保するが、本発明で得ようとする焼結体の厚みが10mm以上であることから、有機バインダーを1.0質量%以下としても成形体強度の低下は顕著に現れず、成形以後の工程で割れる確率が高くなることはない。このため、酸化アルミニウム粉末を含む金属酸化物粉末の合計質量に対して0.5〜1.5質量%とすることが好ましい。また、ジルコニアボールを用いたボールミルまたはビーズミルを行うことにより、金属酸化物粉末を充分に混合しておくことが望ましい。
【0021】
酸化亜鉛粉末、酸化アルミニウム粉末、アクリル酸メタクリル酸共重合体アンモニア中和物およびPVAを水に加え、充分に混合させて得たスラリーを、噴霧し、乾燥させて造粒粉を作製する場合、乾燥温度を130〜200℃にすることが好ましい。乾燥温度を130℃未満にすると、造粒粉の水分量が多くなり、成形体強度が低くなる。一方、乾燥温度が200℃を越えると、造粒粉が硬質となり、成形時に空孔が生じ易くなり、スパッタリングターゲットの密度が向上し難くなる。
【0022】
平板状の成形体を得るには、例えば、特開2006−193797号に記載されているような耐久性に優れたアメゴムから成る筒状ゴム型と、成形体が食い込み難く、滑りが良いシリコンゴムから成る2枚の板状ゴム型とで構成される成形型を用い、この成形型内に、造粒粉を充填し、冷間静水圧プレスを行なって、上記成形体を得ることができる。
【0023】
冷間静水圧プレスの成形圧力は、100〜300MPaとすることが好ましい。成形圧力を100MPa未満にすると、成形体密度および成形体強度が低下し、製品歩留りが悪くなる。一方、成形圧力が300MPaを越えても、成形体密度および成形体強度に対する効果はほとんど変化しない。
【0024】
上記成形体を焼結する際の焼結温度は、酸化亜鉛粉末の粒成長が期待できる900℃以上とすることが好ましい。しかし、焼結温度が1150℃を越えると、空孔が内部に取り残されるため好ましくない。また、焼結時間が15時間を越えると揮発や表面の反応が進むため好ましくないとされていたが、焼結最高温度を1150℃以下に抑えることにより40時間を越える焼結時間を行うことができる。
【実施例】
【0025】
以下、本発明の実施例について具体的に説明する。
【0026】
[実施例1]
平均粒径が1μm以下の酸化亜鉛粉末と、平均粒径が1μm以下の酸化アルミニウム粉末を、酸化アルミニウム粉末の含有量が0.05質量%となるように混合した原料粉末に、水、1質量%のPVAバインダー、0.5質量%のアクリル酸メタクリル酸共重合体アンモニア中和物から成る分散剤を添加し、ビーズミル(アシザワ・ファインテック株式会社製:LMZ型)にて混合してスラリーを調製した。
【0027】
得られたスラリーを、スプレードライヤー(大川原化工機株式会社製:ODL−20型)を用い、供給速度140ml/min、熱風温度140℃、熱風量8Nm/minの条件で乾燥造粒して、酸化アルミニウムの含有量が0.05質量%である酸化亜鉛と酸化アルミニウムから成る造粒粉を得た。
【0028】
次に、上述した筒状ゴム型と2枚の板状ゴム型とで構成される成形型に上記造粒粉を充填し、冷間静水圧プレス(株式会社神戸製鋼製)にて300MPaで成形し、長さ250mm、幅150mm、厚さ10mmの成形体を得た。
【0029】
得られた成形体を、焼結炉(丸祥電器株式会社製)に入れ、大気中にて0.5℃/分の速度で600℃まで昇温し、0.3℃/分の速度で600〜1000℃の温度範囲を昇温した。その後、1000℃にて40時間、焼結した後、室温まで冷却し、長さ217mm、幅130mm、厚み9mmの焼結体を得た。
【0030】
そして、焼結体の上下面、側面の加工を行い、210mm×125mm×7mmの酸化亜鉛スパッタリングターゲット材を得た。
【0031】
更に、長さ、幅をノギスで測定し、厚みをマイクロメーターで測定し、電子天秤で重量を測定して密度計算を行い、相対密度に換算した。
【0032】
すなわち、実測値から求めた焼結体の密度は5.56g/cm3、計算真密度は5.78g/cm3であり、相対密度は96.2%であった。
【0033】
この結果を表1に示す。
【0034】
[実施例2〜3]
焼結保持温度が1150℃である点を除き実施例1と同様にして(実施例2)、また、焼結保持温度が900℃かつ焼結保持時間が60時間である点を除き実施例1と同様にして(実施例3)、実施例2〜3に係る酸化亜鉛スパッタリングターゲット材を得た。
【0035】
更に、実施例1と同様の方法により実施例2〜3に係る酸化亜鉛スパッタリングターゲット材の相対密度を求めた。
【0036】
この結果も表1に示す。
【0037】
参考例4〜6]
酸化アルミニウムの配合量(含有量)が0質量%である点を除き実施例1〜3と同様にして参考例4〜6に係る酸化亜鉛スパッタリングターゲット材を得た。
【0038】
更に、実施例1と同様の方法により参考例4〜6に係る酸化亜鉛スパッタリングターゲット材の相対密度を求めた。
【0039】
この結果も表1に示す。
【0040】
[実施例7〜9]
酸化アルミニウムの配合量(含有量)が0.10質量%である点を除き実施例1〜3と同様にして実施例7〜9に係る酸化亜鉛スパッタリングターゲット材を得た。
【0041】
更に、実施例1と同様の方法により実施例7〜9に係る酸化亜鉛スパッタリングターゲット材の相対密度を求めた。
【0042】
この結果も表1に示す。
【0043】
[比較例1〜3]
焼結保持温度が1200℃である点を除き実施例1と同様にして(比較例1)、また、焼結保持温度が1200℃かつ焼結保持時間が20時間である点を除き実施例1と同様にして(比較例2)、更に、焼結保持温度が800℃かつ焼結保持時間が60時間である点を除き実施例1と同様にして(比較例3)、比較例1〜3に係る酸化亜鉛スパッタリングターゲット材を得た。
【0044】
更に、実施例1と同様の方法により比較例1〜3に係る酸化亜鉛スパッタリングターゲット材の相対密度を求めた。
【0045】
この結果も表1に示す。
【0046】
[比較例4〜6]
酸化アルミニウムの配合量(含有量)が0質量%で焼結保持温度が1200℃である点を除き実施例1と同様にして(比較例4)、また、酸化アルミニウムの配合量(含有量)が0質量%で焼結保持温度が1200℃かつ焼結保持時間が20時間である点を除き実施例1と同様にして(比較例5)、更に、酸化アルミニウムの配合量(含有量)が0質量%で焼結保持温度が800℃かつ焼結保持時間が60時間である点を除き実施例1と同様にして(比較例6)、比較例4〜6に係る酸化亜鉛スパッタリングターゲット材を得た。
【0047】
更に、実施例1と同様の方法により比較例4〜6に係る酸化亜鉛スパッタリングターゲット材の相対密度を求めた。
【0048】
この結果も表1に示す。
【0049】
[比較例7〜9]
酸化アルミニウムの配合量(含有量)が0.10質量%で焼結保持温度が1200℃である点を除き実施例1と同様にして(比較例7)、酸化アルミニウムの配合量(含有量)が0.10質量%で焼結保持温度が1200℃かつ焼結保持時間が20時間である点を除き実施例1と同様にして(比較例8)、酸化アルミニウムの配合量(含有量)が0.10質量%で焼結保持温度が800℃かつ焼結保持時間が60時間である点を除き実施例1と同様にして(比較例9)、比較例7〜9に係る酸化亜鉛スパッタリングターゲット材を得た。
【0050】
更に、実施例1と同様の方法により比較例7〜9に係る酸化亜鉛スパッタリングターゲット材の相対密度を求めた。
【0051】
この結果も表1に示す。
【0052】
[比較例10]
焼結保持時間が30時間である点を除き実施例8と同様にして、比較例10に係る酸化亜鉛スパッタリングターゲット材を得た。
【0053】
更に、実施例1と同様の方法により比較例10に係る酸化亜鉛スパッタリングターゲット材の相対密度を求めた。
【0054】
この結果も表1に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
「確 認」
(1)酸化亜鉛を主成分とし、0.10質量%以下の酸化アルミニウムを含有する酸化亜鉛スパッタリングターゲット材を製造する際、第三工程の焼結温度(焼結保持温度)が900〜1150℃、焼成時間(保持時間)が40〜60時間の常圧焼結条件を満たすことにより、相対密度95%以上の酸化亜鉛スパッタリングターゲット材を製造できることが実施例1〜3、参考例4〜6、および、実施例7〜9により確認される。
【0057】
(2)他方、上記酸化亜鉛スパッタリングターゲット材を製造する際、第三工程の焼結温度(焼結保持温度)が800℃以下または1200℃以上の場合(すなわち、900〜1150℃の条件を満たさない場合)は、焼成時間(保持時間)が40〜60時間の常圧焼結条件を満たしたとしても、相対密度95%以上の酸化亜鉛スパッタリングターゲット材が得られないことが比較例1〜9により確認される。
【0058】
(3)更に、上記酸化亜鉛スパッタリングターゲット材を製造する際、第三工程における焼結温度(焼結保持温度)の条件(900〜1150℃)を満たしたとしても、焼成時間(保持時間)の条件(40〜60時間)を満たさない場合には、相対密度95%以上の酸化亜鉛スパッタリングターゲット材が得られないことが比較例10により確認される。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明に係る酸化亜鉛スパッタリングターゲットによれば、ドーパントである酸化アルミニウムの添加量が0.10質量%以下と少量にも拘らず相対密度が95%以上の高い値になっているため、CIGS系太陽電池におけるバッファ層の形成に適用できる産業上の利用可能性を有している。