(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
生体では放射線、紫外線等の外的要因又は低酸素状態、炎症等の内的要因により活性酸素が生成される。従って体内における活性酸素等のフリーラジカルを正確に計測することは、抗酸化医薬品等の評価・創出等国民の健康福祉にとって重要である。
【0003】
特許文献1には、動物体内のフリーラジカルについての情報を取得するために必要な計測を行う計測装置が記載されている。該計測装置は、直線方向に移動するコイルに対し、ESR(Electron Spin Resonance)励起用の第1の外部磁場発生装置及びMRI(Magnetic Resonance Imaging system)励起用の第2の外部磁場発生装置が磁場を印加する。ESRは、電子スピン共鳴により生じる信号を計測し、コイル内に収容された生体のフリーラジカルの情報を取得する。一方、MRIは、核磁気共鳴により生じる信号を計測し、生体の形態の情報を取得する。これにより計測装置は、ESRで得られたフリーラジカルの機能的な情報をMRIで得られた情報により補完し、動物体内のフリーラジカルについての情報を取得する。また、特許文献1の計測装置はオーバーハウザー効果により生体内の電子スピンを遷移させ、核スピンにエネルギー遷移を生じさせて、生体内部の各部位における機能的画像及び形態的画像を表示する核・電子多重磁気共鳴計測装置としても用いられる。
【0004】
加えて、特許文献2には回転テーブルに載置された移動コイルに対しESR測定用の第1磁場及びMRI測定用の第2磁場を印加する技術を開示している。
【0005】
計測装置がESRの測定を高感度に行うためには、均一の磁場をある程度長時間印加し、生体内における電子スピンを十分に励起することが望まれる。ただし、電子スピン励起後の緩和時間を考慮すると、ESR励起後にMRI励起は短い時間間隔で行う方が望ましいため、回転テーブルの回転速度は下げることができない。従って、均一磁場空間を広くする必要があり、第1の外部磁場発生装置は、円板状の磁石を複数個並置して設けている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献2に記載の電子スピンを励起する第1の外部磁場発生装置は円板状の磁石を用いるため、均一磁場空間は、第1の外部磁場発生装置夫々の中央付近の平面視円状の空間に限られる。従って第1の外部磁場発生装置が形成する均一磁場空間は、十分に電子スピンを励起するためにはなお狭く、そのため第1の外部磁場発生装置が磁場を印加する時間が不十分であるという問題があった。
【0008】
本発明は斯かる問題点に基づいてなされたものであり、磁場を対象物に対して十分な時間印加することができる磁気回路の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る磁気回路は、対向配置される弧状の2つの磁石と、該2つの磁石を介在させて該2つの磁石と同方向に対向配置される弧状の2つのヨークと
、前記2つの磁石間にて、該2つの磁石と同方向に配置される弧状の2つの磁極片と、各磁極片の外周に設けられ、他方の磁極片に向けて突出する突出片とを備えることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、磁石が弧状であるので、磁場を対象物に対して十分な時間印加することができる。
【0011】
本発明に係る磁気回路は、前記2つの磁石は、大径の弧部、小径の弧部及び前記2つの弧部の端部を結ぶ連結部に沿って複数の小磁石を配置してなることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、磁石が大径の弧部、小径の弧部及び前記2つの弧部の端部を結ぶ連結部を含んで形成されているので、広い空間で磁場を均一にすることができる。
【0014】
本発明によれば、磁極片が弧状であるので、磁場を対象物に対して十分な時間印加することができる。
【0015】
本発明に係る磁気回路は、前記突出片は、前記磁極片の大径側に位置する大径側突出片と、前記磁極片の小径側に位置する小径側突出片とを備えることを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、突出片が磁極片に設けられているので、広い空間で磁場を均一にすることができる。
【0017】
本発明に係る磁気回路は、前記ヨークは、前記磁石の外周に相似する相似弧に沿う複数の孔部を備えることを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、孔部に適宜螺子を螺合させる等により、部分的に磁場強度を調整することができる。
【0019】
本発明に係る磁気回路は、前記2つのヨークを連結する板状の補助ヨークを備えることを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、補助ヨークを設けることにより、磁束を有効に活用することができる。
【0021】
本発明に係る磁気回路は、前記補助ヨークは、前記2つのヨークの大径側外周に沿って設けられており、長手方向の一端側が他端側より厚いことを特徴とする。
【0022】
本発明によれば、補助ヨークにおける長手方向の一端側が他端側より厚くすることにより、一端側に別の磁気回路が設けられた場合に、該別の磁気回路から漏れる磁場の影響を抑えることができる。
【0023】
本発明に係る磁気回路は、前記磁石に取り付けられる補助磁石を備えることを特徴とする。
【0024】
本発明によれば、補助磁石を備えることにより、部分的に磁場強度を調整することができる。
【0025】
本発明に係る磁気回路は、前記補助磁石は、前記連結部の内側であって前記一端側に固定されていることを特徴とする。
【0026】
本発明によれば、一端側に別の磁気回路が設けられた場合に、補助磁石を前記連結弧部の内側であって前記一端側に固定することにより、該別の磁気回路から漏れる磁場の影響を抑えることができる。
【0027】
本発明に係る磁気回路は、前記磁石と、該磁石に対面する前記ヨークとの間に非磁性板を配置したことを特徴とする。
【0028】
本発明によれば、非磁性板により、磁気回路全体の磁場強度を調整することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば磁気回路を構成する磁石が弧状をなすので、磁場を測定物に対して十分な時間印加することができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
第1の実施の形態
本発明における第1の実施の形態について説明する。
図1及び
図2は磁場印加装置を示す模式的平面図及び模式的側面図である。磁場印加装置は、コイル5と、モータ41と、機台42と、回転軸43と、回転台44と、第1磁気回路10と、第2磁気回路30とを含む。第1磁気回路10は、第1磁極1と、第2磁極2と、第3ヨークであるバックヨーク3と、載置台4と、支柱6とを含む。第2磁気回路30は、磁極31、32と、バックヨーク33と、載置台34とを含む。
【0032】
回転装置における機台42は円筒形をなし、内部にモータ41が埋設されている。機台42からは、鉛直方向に延びた回転軸43が突出している。回転軸43の上端には円板状であり、回転軸43に同軸をなして固定された回転台44が設けられている。モータ41が作動することにより回転軸43が時計回りに回転する。制御部8はモータ41と接続されており、モータ41の作動及び停止を制御し、又回転軸43の回転角度についての情報を取得する。
【0033】
回転台44における上面の周縁には円筒形をなすコイル5が、横向きに固定されている。コイル5内は空洞であり、測定対象物であるマウス又はラット等の生体7が収容されている。なお生体7は一例であり、例えば構造又は機能を解析するため半導体装置等を測定対象物としてもよい。コイル5は、制御部8と接続されており、制御部8はコイル5に所定周波数の信号を送信する。生体7内で電子スピン共鳴が生じた際には、電子スピン共鳴信号が生じる。生体7内で核磁気共鳴が生じた際には、核磁気共鳴信号が生じる。コイル5は、斯かる電子スピン共鳴信号及び核磁気共鳴信号を検出し、制御部8に送信する。制御部8は電子スピン共鳴信号及び核磁気共鳴信号を画像化して表示部9に表示させる。表示部9は、例えば、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ又は有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等である。
【0034】
第1磁気回路10は、例えばESR又はOMRI(Overhauser Magnetic Resonance Imaging system)等における電子スピン励起装置等として用いられる。第1磁気回路10における第1磁極1は、回転台44の外縁に沿って平面視弧状をなし、載置台4に載置されている。第2磁極2は第1磁極1と面対称な形状をなし、第1磁極1と間隙を置いて上下方向に対向配置されている。なお、以下では第1磁極1から第2磁極2に向かう方向を上方向とする。ただし斯かる方向は一例であり、特に限定されない。従って第1磁極1及び第2磁極2は弧状をなしていれば、平面視弧状でなくともよい。
【0035】
第1磁極1と第2磁極2とは、夫々が備える後述する第1ヨーク11と第2ヨーク21とが磁束を有効に活用するため設けられているバックヨーク3を介して連結されている。第2磁極2はバックヨーク3に沿って設けられた支柱6に支持されている。第1磁極1と第2磁極2とは、間隙内に磁場を発生させる。回転台44は、一部が第1磁極1と第2磁極2との間隙を通るよう配置されている。回転軸43を中心として回転台44が回転することによりコイル5が間隙を通過する。
【0036】
回転台44の外縁に沿って第1磁気回路10から時計回り方向に隔離した位置には、第2磁気回路30が設けられている。第2磁気回路30は、MRI又はOMRI等における核スピン励起装置等として用いられる。第2磁気回路30は、円板状の磁石を備える2つの磁極31、32が間隙を置いて対向配置されている。これにより第2磁気回路30は、間隙内に磁場を発生させる。回転軸43が回転することにより、コイル5は磁極31と磁極32との間隙を通過する。
【0037】
磁場印加装置の動作について説明する。生体7は、生体内のレドックス代謝に感受性が高いニトロキシルラジカルを誘導体化したプローブ剤が注入されている。制御部8は、動作の開始を指示する信号をモータ41に送信する。モータ41は制御部8から信号を受信し、回転軸43を回転する。回転速度は例えば1秒で1回転である。なお、本実施の形態で示す数値は一例であり、これに限るものではない。
【0038】
制御部8は、回転軸43の回転角度についての情報に基づき、コイル5が第1磁気回路10における間隙に入る直前に、電子スピン共鳴を生じさせる所定周波数の信号をコイル5に送信する。コイル5が所定周波数の信号を受信して第1磁気回路10を通過することにより、コイル5に磁場が印加され、生体7内では電子スピン共鳴が生じる。生体7内で電子スピン共鳴により生じる電子スピン共鳴信号をコイル5が検出する。制御部8はコイル5が検出した電子スピン共鳴信号を受信する。
【0039】
制御部8はコイル5が第1磁気回路10の間隙を通過し終えた時点で、電子スピン共鳴を生じさせる所定周波数の信号の送信を停止する。また、制御部8は、コイル5が第2磁気回路30における間隙に入る直前に核磁気共鳴を生じさせる所定周波数の信号をコイル5に送信する。
【0040】
コイル5が所定周波数の信号を受信して第2磁気回路30における間隙を通過することにより、コイル5に磁場が印加され、生体7内では核磁気共鳴が生じる。コイル5は核磁気共鳴により生じる核磁気共鳴信号を検出する。制御部8はコイル5が検出した核磁気共鳴信号を受信する。コイル5が第2磁気回路30の間隙を通過し終えた時点で、制御部8は核磁気共鳴を生じさせる所定周波数の信号の送信を停止する。制御部8は、動作の停止を指示する信号をモータ41に送信する。モータ41は制御部8から信号を受信し、回転軸43の回転を停止する。
【0041】
制御部8は、受信した電子スピン共鳴信号より生体7のフリーラジカルを画像化する処理を行う。また、制御部8は、受信した核磁気共鳴信号より、生体7の外形を画像化する処理を行う。最後に制御部8は2つの画像を合成する処理を行い、合成した画像を表示部9に表示させる。
【0042】
第1磁気回路10についてさらに説明する。
図3は第1磁気回路10について示す模式的斜視図であり、
図4は第1磁極1の分解斜視図である。第1磁極1は、第1ヨーク11と、第1非磁性板12と、第1磁石13と、第1樹脂板14と、第1磁極片15と、第1小径側突出片161と、第1大径側突出片162とを備える。
【0043】
第1磁極1の第1ヨーク11には例えばケイ素鋼板又は鉄等が用いられており、該第1ヨーク11の下面は、水平面をなす載置台4の上面と接触している。第1ヨーク11は平面視弧状の板状をなすが、大径側の外縁は一部が複数の線分が互いに鈍角をなして連続した形状をなしている。第1ヨーク11の形状は、第1磁石13より大きければ特に制限はなく、例えば大径側の外縁が弧状であってもよい。
【0044】
図5は第1ヨーク11、バックヨーク3及び支柱6について示す模式的斜視図である。第1ヨーク11の側部における複数の線分は、複数の平板が長手方向に連結して構成されたバックヨーク3の小径側の下側面と夫々連結されている。バックヨーク3の小径側の上側面は、後述する第2ヨーク21と連結されている。
【0045】
第1ヨーク11における大径側の上面には、水平断面が凸形状をなし、上端が第2ヨーク21を支える支柱6、6、…がバックヨーク3に沿って複数設けられている。第1ヨーク11における小径側の上面は第1非磁性板12の下面と接触している。
【0046】
第1非磁性板12は外形が平面視弧状の板状をなし、例えばオーステナイト系ステンレス又はアルミニウム等の非磁性体が用いられている。
【0047】
第1非磁性板12の上面は、外形が第1非磁性板12と同様の平面視弧状をなす板状である第1磁石13の下面と接触している。
図6は第1磁石13の模式的平面図である。第1磁石13は、第1小径側弧部131と、第1大径側弧部132と、第1一端側連結弧部133と、第1他端側連結弧部134とを含む。
【0048】
第1小径側弧部131と第1大径側弧部132とは、例えば夫々110度の同心円の円弧である。第1一端側連結弧部133は、例えば半円弧状をなし、第1小径側弧部131及び第1大径側弧部132夫々の第2磁気回路側30に近い端を連結する。第1他端側連結弧部134は、例えば半円弧状をなし、第1小径側弧部131及び第1大径側弧部132夫々の第2磁気回路側30に遠い端を連結する。第1一端側連結弧部133及び第1他端側連結弧部134は、必ずしも円弧状でなくともよい。例えば直線状をなして第1小径側弧部131及び第1大径側弧部132を結んでもよく、V字形状であってもよい。
【0049】
第1磁石13は、夫々複数のブロック状をなすフェライト又はネオジム等が用いられた第1小磁石13a、13a、…が配列されて形成されている。従って、第1磁石13は平面視円弧環状をなし、内側面より内側には磁石が設けられていない。第1磁石13は、斯かる構成により間隙内の磁場の強弱差を抑えることができる。
【0050】
第1磁石13の上面は、第1非磁性板12と同様の平面視弧状をなす板状であり、例えばフッ素樹脂又はフェノール樹脂等が用いられた第1樹脂板14の下面と接触している。また、第1樹脂板14の上面は、第1非磁性板12と同様の平面視弧状をなす板状をなし、例えばケイ素鋼板又は鉄等が用いられた第1磁極片15の下面と接触している。
【0051】
図7は第1磁極片15の模式的平面図である。第1磁極片15は第1中央部151と、第1一端側端部152と、第1他端側端部153とを含む。第1中央部は例えば110°の弧状をなす部分である、一方、第1一端側端部152は第2磁気回路側30に近い端を含む半円状の部分であり、第1他端側端部153は、第2磁気回路側30と遠い端を含む半円状の部分である。
【0052】
第1中央部151の小径側の外縁には第1小径側突出片161が固定されており、第1中央部151の大径側の外縁には第1大径側突出片162が夫々固定されている。例えばケイ素鋼板又は鉄等が用いられた第1小径側突出片161及び第1大径側突出片162は、上方に突出している。第1磁石13の形状及びバックヨーク3の影響等により、小径側と大径側とでは磁場強度に差が生じる。小径側と大径側との磁場強度の差を小さくするため、第1小径側突出片161は第1大径側突出片162より突出量が多い。なお、第1小径側突出片161は第1磁極片15における内周側の一部に設けられ、第1大径側突出片162は第1磁極片15における大径側の一部に設けられていればよい。例えば第1小径側突出片161は第1中央部151の小径側の一部のみに設けられていてもよく、又一部が第1一端側端部152又は第1他端側端部153に設けられていてもよい。第1大径側突出片162も同様である。
【0053】
上記した通り、第1非磁性板12、第1磁石13、第1樹脂板14及び第1磁極片15は外形が略同形をなし、第1ヨーク11と比較して上面及び下面の面積が小さい。なお、第1ヨーク11は第1非磁性板12、第1磁石13、第1樹脂板14及び第1磁極片15より上面及び下面の面積が大きければ形状は問わない。
【0054】
第1ヨーク11には第1小径側弧部131、第1大径側弧部132、第1一端側連結弧部133及び第1他端側連結弧部134により規定される第1磁石13の配列と相似する位置に貫通した第1螺子孔11a、11a、…が設けられている。第1螺子孔11a、11a、…は例えば第1磁石13の内側面より小さい相似弧に沿って設けられている。
【0055】
第1螺子孔11aに鉄、ニッケル等が用いられた強磁性体の螺子17が螺合することにより、該第1螺子孔11a付近の磁場強度が変化する。第1磁極1は、使用環境又は第1磁石13の歪み等の影響により、部分的に設計時に予定した磁場強度とは異なる強度となる場合がある。この場合に、適宜一又は複数の第1螺子孔11aに螺子17を第1ヨーク11の下面側から螺合させることにより、磁場強度が部分的に調整される。
【0056】
螺子17及び各第1螺子孔11aの形状については特に限定はない。また、第1螺子孔11aは螺子が切られていない孔であってもよく、この場合は螺子17の代わりに強磁性体が用いられた棒状の物体を孔に挿入する。また、螺子孔の代わりに貫通していない穴が設けられていてもよい。第1螺子孔11a、11a、…がなす相似弧は第1磁石13の内側面より大きくてもよい。
【0057】
図8は第2磁極2の分解斜視図である。第2磁極2は、第2ヨーク21と、第2非磁性板22と、第2磁石23と、第2樹脂板24と、第2磁極片25と、第2小径側突出片261と、第2大径側突出片262とを備える。
【0058】
第1ヨーク11と面対称の形状をなす例えばケイ素鋼板又は鉄等が用いられた第2ヨーク21は、下面が支柱6、6、…に支持されている。第2ヨーク21の側部における複数の線分は、複数の平板が長手方向に連結して構成されたバックヨーク3の小径側の上側面と夫々連結されている。
【0059】
第2ヨーク21の下面は、第1非磁性板12と面対称の形状をなし、例えばアルミニウム又はオーステナイト系ステンレス等の非磁性体が用いられた第2非磁性板22の上面と接触している。
【0060】
第2非磁性板22の下面は、第1磁石13と面対称の形状をなす第2磁石23の上面と接触している。第2磁石23は、第2小径側弧部231と、第2大径側弧部232と、第2一端側連結弧部233と、第2他端側連結弧部234とを含む。第2小径側弧部231と第2大径側弧部232とは、例えば夫々110度の同心円の円弧である。第2一端側連結弧部233は、例えば半円弧状をなし、第2小径側弧部231及び第2大径側弧部232夫々の第2磁気回路30に近い端を連結する。第2他端側連結弧部234は、例えば半円弧状をなし、第2小径側弧部231及び第2大径側弧部232夫々の第2磁気回路30に遠い端を連結する。第2一端側連結弧部233及び第2他端側連結弧部234は必ずしも弧状である必要はなく、例えば直線状をなして第2小径側弧部231及び第2大径側弧部232を結んでもよく、V字形状であってもよい。第2磁石23は、第1磁石13と同様に、夫々複数のブロック状をなすフェライト又はネオジム等が用いられた小磁石が配列されて形成されている。
【0061】
第2磁石23の下面は、第1樹脂板14と面対称の形状をなす樹脂製の第2樹脂板24の上面と接触している。また、第2樹脂板24の下面は、第1磁極片15と面対称の形状をなす例えばケイ素鋼板又は鉄等が用いられた第2磁極片25の上面と接触している。
【0062】
第2中央部251の小径側の外縁には第2小径側突出片261が固定されており、第2中央部251の大径側の外縁には第2大径側突出片262が夫々固定されている。第2小径側突出片261及び第2大径側突出片262はケイ素鋼板又は鉄等が用いられており、第1磁極1が配置されている下方に突出している。第2小径側突出片261は第2大径側突出片262より突出量が多い。一方、第2一端側端部252及び第2他端側端部253には突出片は設けられていない。第1小径側突出片161は第2小径側突出片261と、第1大径側突出片162は第2大径側突出片262と間隙を置いて夫々対向している。なお、第2小径側突出片261は第2磁極片25における内周側の一部に設けられ、第2大径側突出片262は第2磁極片25における大径側の一部に設けられていればよい。例えば第2小径側突出片261は第2中央部251の小径側の一部のみに設けられていてもよく、又一部が第2一端側端部252又は第2他端側端部253に設けられていてもよい。第2大径側突出片262も同様である。
【0063】
上記した通り、第2非磁性板22、第2磁石23、第2樹脂板24及び第2磁極片25は外形が略同形をなし、第2ヨーク21より上面及び下面の面積が小さい。なお、第2ヨーク21は第2非磁性板22、第2磁石23、第2樹脂板24及び第2磁極片25より上面及び下面の面積が大きければ形状は問わない。
【0064】
第2ヨーク21には第2小径側弧部231、第2大径側弧部232、第2一端側連結弧部233及び第2他端側連結弧部234により規定される第2磁石23の配列と相似する位置に貫通した第2螺子孔21a、21a、…が設けられている。第2螺子孔21a、21a、…は例えば第2磁石23の内側面より小さい相似弧に沿って設けられている。
【0065】
第1小径側突出片161、第1大径側突出片162、第2小径側突出片261及び第2大径側突出片262は、周縁付近の磁場強度を上昇させ均一な磁場空間を広くするために設けられているが、周縁全体に設けられると逆に磁場が不均一になる原因となる。
図9は第1磁気回路10における磁場強度を示すグラフである。横軸は回転軸43の所定の位置からの回転角度(°)であり、縦軸は磁場強度(mT)を示している。破線は第1磁極片15及び第2磁極片25の周縁の全てに突出片が設けられている場合の磁場強度を示している。この場合、第1小径側突出片161と第1大径側突出片162とが第1磁極片15の周縁で連結し、又第2小径側突出片261と第2大径側突出片262とが第2磁極片25の周縁で連結している。一方、実線は本実施の形態の場合における磁場強度を示している。この場合、第1小径側突出片161及び第1大径側突出片162が第1中央部151にのみ設けられ、第2小径側突出片261及び第2大径側突出片262が第2中央部251にのみ設けられている。
【0066】
図9に示されるように、前者の場合は、磁場強度が非常に大きくなる箇所が145°付近と280°付近の2箇所存在する。これら2箇所は第1一端側連結弧部133と第2一端側連結弧部233との間付近の箇所、及び第1他端側連結弧部134と第2他端側連結弧部234との間付近の箇所に夫々対応する。一方後者の場合は、磁場強度が非常に大きくなる箇所はなく、均一磁場空間が広く保たれている。
【0067】
従って第1小径側突出片161及び第1大径側突出片162は第1中央部151の周縁にのみ設け、第2小径側突出片261及び第2大径側突出片262は第2中央部251の周縁にのみ設けることにより、均一磁場空間を広くすることができる。
【0068】
第1磁気回路10の磁場強度を調整するために、第1非磁性板12及び第2非磁性板22の一方又は両方は、厚さが異なる非磁性板に置換可能である。
【0069】
本実施の形態によれば、第1磁気回路10を構成する第1磁石13及び第2磁石23が平面視弧状をなすので、第1磁気回路10が長時間磁場を印加することができる。
【0070】
第2の実施の形態
第2の実施の形態について説明する。本実施の形態は、バックヨーク3の厚さが位置によって異なる形態に関する。
図10はバックヨーク3について示した模式的斜視図である。本実施の形態に係るバックヨーク3は、第2磁気回路30に近い側である一端側の厚さが、他端側より厚い。バックヨーク3を構成する平板3a〜3dは第2磁気回路30に近い程厚さが増すように構成されている。即ちバックヨーク3を構成する各平板は、平板3a、3b、3c、3dの順に厚みが増す。
【0071】
核磁気共鳴を生じさせるためには、電子スピン共鳴を生じさせるよりも強い磁場が必要である。従って第2磁気回路30により生じる磁場は第1磁気回路10により生じる磁場より強い。ただし、そのため第1磁気回路10における第2磁気回路30側の端付近では、第2磁気回路30から漏れる磁場の影響により、第1磁気回路10の形成した均一磁場空間が損なわれることがある。
【0072】
本実施の形態によれば、バックヨーク3における、一端側の端を厚くすることにより、第2磁気回路30から漏れる磁場の影響を抑えることができる。なお、バックヨーク3は、一又は複数の曲板により構成してもよい。
図11はバックヨーク3の他の例を示す模式的斜視図である。斯かる例ではバックヨーク3が1枚の曲板により構成されており、第2磁気回路30に近くなるほどバックヨーク3が厚くなるよう構成されている。
【0073】
第3の実施の形態
第3の実施の形態について説明する。本実施の形態は、さらに磁石を追加する形態に関する。
図12は第1磁石13に第1補助磁石13bを設けた例について示す模式的平面図である。
図12に示すように第1補助磁石13bは第1一端側連結弧部133の内側に固定されている。これにより、第1補助磁石13bは第1磁気回路10における第2磁気回路30側の端の磁場強度を上昇させ、所定空間における磁場の均一化を補助する役割を果たす。同様に第2磁石23に第2一端側連結弧部233に固定される補助磁石を設けてもよい。また、
図13は第1磁石13に第1補助磁石13bを設けた他の例について示す模式的斜視図である。第1補助磁石13bは第1一端側連結弧部133に固定される必要はなく、例えば一端側の第1非磁性板12に載置される形で第1磁石13に取り付けられていてもよい。
【0074】
本実施の形態によれば、第1補助磁石13bが、第2磁気回路30側の端における磁場強度を上昇させることができるので、上述した第2磁気回路30による磁場の影響を抑えることができる。
【0075】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものでは無いと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味では無く、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。