【実施例】
【0022】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこの実施例によって何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で各種の設定調整や設計変更が可能であることは言うまでもない。
【0023】
(実施例1:立方体形又は四角柱形NiOナノ粒子とAuナノ粒子との接合構造体の製造)
(実施例1−1:Ni-5at.%Au合金ペレットを用いた例)
合金ナノ粒子生成装置として、レーザーアブレーション法による生成装置を用いた。装置内へ流入速度0.5L/minでヘリウムガスを導入し、油回転ポンプによって装置内の圧力を1.6kPaの減圧に保った。Ni-5at.%Au合金ペレット(純度99.9%,20 mmφ×5mmt)を原料ターゲットとし、その表面へNd:YAGレーザーの第二高調波(波長:532nm、出力:90mJ/pulse、繰り返し周波数:10Hz)を集光・照射することにより、ターゲット表面を瞬間的に蒸発させ、Ni-Au合金ナノ粒子の凝集体がヘリウムガス中に生成された。生成したNi-Au合金ナノ粒子凝集体はヘリウムガス流に乗って移動しつつ、生成装置内部の予備加熱機構(900℃)で焼結されることによって孤立分散のNi-Au合金ナノ粒子(粒子径約1〜10nm程度)となり、熱酸化処理器の加熱管(石英管、外形18mmφ、内径15mmφ)内へと運ばれた。酸素ガスは、加熱管内部に設置された酸素導入管(外形6mmφ,内径4mmφ)を通じ、加熱管の高温内部へ0.25L/minの流入速度で供給された(混合ガスの酸素濃度は33%)。高温の酸素によってNi-Au合金ナノ粒子は酸化され、Auナノ粒子が接合されたNiOナノ粒子となった。熱酸化処理時間は0.01秒程度である。生成したAuナノ粒子接合NiOナノ粒子は、捕集器内に設置した非晶質炭素膜上に希薄に自然付着させ、TEM観察のための試料となった。
【0024】
図2にNiOナノ粒子とAuナノ粒子との接合構造体のTEM写真を示す。非晶質炭素膜上に四角柱形のNiOナノ粒子が多数確認できる。各々の四角柱形のNiOナノ粒子の表面上に小さなAuナノ粒子が1個付着している像が確認できる。
図3にAu-NiO接合構造体の高分解能TEM写真を示す。この写真の例では、四角柱形のNiOナノ粒子の底面または側面に半球状のAuナノ粒子が接合されている。どちらの場合も、NiO(100)面とAu(111)面が平行にヘテロ接合されている。
【0025】
図16(a)は、
図2の試料の電子回折図形から導出された1次元強度プロファイルである。横軸は、散乱ベクトルs(4πsinθ/λ、2θ:回折角、λ:200kVで加速された電子の波長0.02508Å)である。出現した各ピーク位置は、図中に記入されたミラー指数の通り、岩塩型構造のNiOであることが同定された。なお、
図3で確認された微小なAuナノ粒子からの電子回折ピークについては明瞭に確認できなかった。その理由は、Auの各ピークの出現位置がNiOのピーク位置に非常に近く、さらにAuの割合が相対的に小さく、NiOのピーク強度が相対的に強いことが原因である。
【0026】
図17(a)は、
図2の試料のエネルギー分散型X線分光分析による粒子の組成分析の結果である。データ中の炭素Cは、粒子の捕集と観察のために使用した非晶質炭素膜に因るものである。データ中のCuは、非晶質炭素膜が貼られたCuメッシュに因るものである。これらを除外すると、金属成分はNiとAuのみが検出された。Ni Kα及びAu Lαの積分値から換算した結果、Auの組成は3.8at.%であった。この組成は原料合金ペレットのAuの組成とほぼ一致した。
【0027】
(実施例1−2:Ni-20at.%Au合金ペレットを用いた例)
Ni-20at.%Au合金ペレット(純度99.95%,19mmφ×4mmt)をターゲットとして用いることによって、Auナノ粒子とNiOナノ粒子との接合構造体の生成を試みた。実験条件は合金ペレット以外すべて実施例1−1と同一である。
図4に接合構造体のTEM写真を示す。四角柱形のNiOが主に生成されており、各々の四角柱形の底面を接合面として半球状のAuナノ粒子が1個付着している像が確認できる。
図5に、四角柱形のNiOナノ粒子および立方体形のNiOナノ粒子とAuナノ粒子との接合構造体の高分解能TEM写真を示す。
図3と同様に、NiO(100)面とAu(111)面が平行にヘテロ接合されている。
図16(b)の電子回折の結果から、NiOは岩塩型構造であることが同定された。
図17(b)のエネルギー分散型X線分光分析による粒子の組成分析の結果、金属成分はNiとAuのみが検出され、Auの組成は19.7at.%であった。この組成は原料合金ペレットのAuの組成と一致した。なお、Alが微量に検出されたが、試料ホルダー等からの散乱に因るものである。
【0028】
レーザーアブレーションにおいては、ターゲットの最表面は溶融状態となっており、溶融層の突沸等の過程によって、サブミクロン〜ミクロンサイズの粗大粒子(ドロップレット)が生成することが知られており、実施例1−2において得られた試料中にも、当該プロセスによってドロップレットが酸化されたと考えられる粗大な接合ナノ粒子が存在していた。
図6(a)は、そのような合金ドロップレットの酸化によって生成した粒子のTEM写真であり、長辺の長さが80nmの四角柱形のNiOの表面上に半球状のAuが1個接合した接合構造体となっている。エネルギー分散型X線分光分析によって、この粒子の組成分析を行った結果、金属成分中のAuの組成は33.1at.%であり、原料組成よりもAu組成の増大が見られた。
図6(a)の濃いコントラストを示す半球状部分の先端部(A部分)に、半値強度全幅14nmφの電子ビームを照射し分析した結果、
図6(b)の太線に示す通り、Niは検出されず、Auのみが検出された。また、
図6(a)の薄いコントラストの四角柱部分の端(B部分)を同様に分析した結果、
図6(b)の細線に示す通り、Auは検出されず、Niが検出された。ここで、Cuの信号は非晶質炭素膜が貼られたCuメッシュに因るものである。以上の結果から、このような大きな粒子においても、非常に良好にAuとNiOとの接合構造体が生成していることがわかった。
【0029】
(実施例1−3:Ni-40at.%Au合金ペレットを用いた例)
Ni-40at.%Au合金ペレット(純度99.95%, 19mmφ×4mmt)をターゲットとして用いることによって、Auナノ粒子とNiOナノ粒子との接合構造体の生成を試みた。実験条件は合金ペレット以外ほぼ実施例1−1と同一であるが、凝集体の焼結プロセスに用いた予備加熱機構(900℃)は粒子生成装置の外部に設置された。
図7に接合構造体のTEM写真を示す。四角柱形のNiOが主に生成されており、各々の四角柱形の底面を接合面として半球状のAuナノ粒子が1個付着している像が確認できる。
図8に、四角柱形のNiOナノ粒子および立方体形のNiOナノ粒子とAuナノ粒子との接合構造体の高分解能TEM写真を示す。
図3や
図5と同様に、NiO(100)面とAu(111)面が平行にヘテロ接合されている。エネルギー分散型X線分光分析による粒子の組成分析の結果、成分金属元素中のAuの組成は40.7at.%であった。この組成は原料合金ペレットのAuの組成とほぼ一致した。
【0030】
(実施例1−4:Ni-80at.%Au合金ペレットを用いた例)
Ni-80at.%Au合金ペレット(純度99.95%, 16mmφ×3mmt)をターゲットとして用いることによって、Auナノ粒子とNiOナノ粒子との接合構造体の生成を試みた。実験条件は合金ペレット以外すべて実施例1−3と同一である。
図9に、立方体形のNiOナノ粒子とAuナノ粒子との接合構造体の高分解能TEM写真を示す。エネルギー分散型X線分光分析による粒子の組成分析の結果、成分金属元素中のAuの組成は83.3at.%であった。この組成は原料合金ペレットのAuの組成に近い。
【0031】
(実施例2:立方体形又は四角柱形NiOナノ粒子とPtナノ粒子との接合構造体の製造)
(実施例2−1:Ni-5at.%Pt合金ペレットを用いた例)
Ni-5at.%Pt合金ペレット(純度99.9%,20mmφ×5mmt)をターゲットとして用いることによって、NiOナノ粒子とPtナノ粒子との接合構造体の生成を試みた。実験条件は合金ペレット以外すべて実施例1−1と同一である。
図10に接合構造体のTEM写真を示す。各々の四角柱形や立方体形のNiOナノ粒子の表面上に小さなPtナノ粒子が1個付着している像が確認できる。
図11に接合構造体の高分解能TEM写真を示す。NiOとPtとの格子縞が整列して接合されていることから、両相は良好にヘテロ接合されていることがわかる。
図16(c)の電子回折の結果から、NiOは岩塩型構造であることが同定された。
図17(c)のエネルギー分散型X線分光分析による粒子の組成分析の結果、金属成分はNiとPtのみが検出され、Ptの組成は3.9at.%であった。この組成は原料合金ペレットのPtの組成とほぼ一致した。
【0032】
(実施例2−2:Ni-20at.%Pt合金ペレットを用いた例)
Ni-20at.%Pt合金ペレット(純度99.95%, 17mmφ×4mmt)をターゲットとして用いることによって、Ptナノ粒子とNiOナノ粒子との接合構造体の生成を試みた。実験条件は合金ペレット以外すべて実施例1−3と同一である。
図12に接合構造体のTEM写真を示す。四角柱形のNiOが主に生成されており、夫々にPtナノ粒子が1個付着している像が確認できる。
図13に、四角柱形のNiOナノ粒子とPtナノ粒子との接合構造体の高分解能TEM写真を示す。エネルギー分散型X線分光分析による粒子の組成分析の結果、成分金属元素中のPtの組成は24.1at.%であった。この値は原料合金ペレットのPtの組成よりやや大きい。
【0033】
(実施例3:立方体形又は四角柱形CoOナノ粒子とAuナノ粒子との接合構造体の製造)
Co-5at.%Au合金ペレット(純度99.9%,20mmφ×5mmt)をターゲットとして用いることによって、CoOナノ粒子とAuナノ粒子との接合構造体の生成を試みた。実験条件は合金ペレット以外すべて実施例1−1と同一である。
図14に接合構造体のTEM写真を示す。各々の四角柱形や立方体形のCoOナノ粒子の表面上に小さなAuナノ粒子が1個付着している像が確認できる。
図15に接合構造体の高分解能TEM写真を示す。実施例1と似て、CoO(100)とAu(111)が平行になっており、両相は良好にヘテロ接合されていることがわかる。
図16(d)の電子回折の結果から、CoOは岩塩型構造であることが同定された。
図17(d)のエネルギー分散型X線分光分析による粒子の組成分析の結果、金属成分はCoとAuのみが検出され、Auの組成は2.2at.%であった。この組成は原料合金ペレットのAuの組成よりやや減少していた。