(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造においては、例えばプラズマの作用により、半導体ウェハ(以下、「ウェハ」という)などの被処理体上にエッチングや成膜等の微細加工を施すプラズマ処理装置が用いられている。
【0003】
上述のプラズマ処理装置の処理容器内には、ウェハなどの被処理体を載置する載置台が設置されている。従来、この載置台は、下部電極として機能するサセプタと、サセプタの上面に設けられるウェハを載置する静電チャックと、静電チャックの外周部に設けられた、例えばシリコンよりなるフォーカスリングにより構成されている。そして、静電チャックに載置されたウェハをプラズマ処理するにあたっては、サセプタに高周波電力を印加して処理容器内にプラズマを発生させる。この際、発生したプラズマはフォーカスリングの作用によりウェハ上に収束し、ウェハに均一なプラズマ処理が施される。
【0004】
ところで、このフォーカスリングの温度は、ウェハの外周部のエッチング特性に影響を与える。そのため、通常はサセプタ内に冷媒を流通させてサセプタを冷却し、当該サセプタ上面に設けられている静電チャックからの伝熱により、フォーカスリングの冷却を行なっている。この際、フォーカスリングを均一に冷却する必要がある。
【0005】
そのため、例えば特許文献1には、例えば
図5に示すように、載置台200のフォーカスリング201と静電チャック202との間に、熱伝達媒体203を介在させ、さらにフォーカスリング201を静電チャック202に対して押圧して固定する押圧手段210を設けることが提案されている。
【0006】
押圧手段210は、例えばフォーカスリング201の外周部上面201aを下方に押圧する押圧部材211と、押圧部材211を静電チャック202に締結するネジ部材212とにより構成されている。押圧部材211は例えばアルミナにより構成され、プラズマにより当該押圧部材211がスパッタされることを防止するための、例えば石英製のカバー213により被覆されている。これにより、押圧部材211へのプラズマによるダメージを防止しつつ、フォーカスリング201と静電チャック202との間の熱伝達を均一にすることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、フォーカスリング201の上方はプラズマが発生する領域である。そのため、フォーカスリング201を押さえる押圧部材211を被覆するカバー213の、特にフォーカスリング201寄りの部分がプラズマによりスパッタされてしまう。そうすると、押圧部材211が露出することでインピーダンスが変化し、電極としての静電チャック202の見かけ上の面積が増加してしまう。その結果、処理容器内のプラズマの分布が経時的に変化してしまうという問題が生じる。その場合、被処理体を面内均一に処理することが困難である。
【0009】
このような問題を避けるためには、押圧部材211を極力フォーカスリング201の外周端部近傍に配置することで、カバー213をプラズマ領域から遠ざけることが考えられる。しかしながら、フォーカスリング201の外周端部に設けた外周部上面201aに押圧する力を集中させると、フォーカスリング101にモーメントが掛かってしまう。その結果、フォーカスリング201が歪んで静電チャック202の中心側の部分が浮き上がり、静電チャック202との熱伝達が均一でなくなるため、そのような手法を用いることも困難である。
【0010】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、プラズマ分布の経時的な変化を抑制し、被処理体を面内均一に処理できる被処理体の載置台及び処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明は、被処理体の処理装置であって、処理空間を画成する処理容器と、前記処理空間内に配置された載置台と、を備え、前記載置台は、被処理体を載置する静電チャックと、当該静電チャックの外周部に設けられたフォーカスリングを備え、前記フォーカスリングを前記静電チャックに対して押圧する円環状の押圧部材と、前記押圧部材を前記静電チャックに固定する固定部材と、を備え、前記フォーカスリングには、外側面の全周にわたって当該フォーカスリングの中心方向に向かって凹に窪む係止部が形成され、前記押圧部材は、
複数の円弧部材を環状に組み合わせて形成され、前記フォーカスリングの係止部に係止して前記フォーカスリングを前記静電チャックに対して押圧する接触部と、当該接触部から下方に延伸し、前記固定部材により前記静電チャックに固定される設置部とを備え、前記フォーカスリングの外周端部の上面には、平面視において前記押圧部材の接触部が視野に入らないように覆う庇部が形成されていることを特徴としている。
【0012】
本発明によれば、押圧部材の接触部がフォーカスリングの係止部に係止して当該フォーカスリングを静電チャックに対して押圧し、フォーカスリングの外周端部であって係止部より上方には、平面視において接触部が視野に入らないように覆う庇部が形成されている。そのため、接触部がプラズマ領域側に露出することがない。そのため、従来のように押圧部材を覆うカバーがスパッタされて押圧部材が露出することでインピーダンスが経時的に変化するということがないので、処理容器内のプラズマの分布の経時的な変化を抑制することができる。また、フォーカスリングの係止部は当該フォーカスリングの中心方向に向かって凹に窪むように形成されているので、従来のフォーカスリングの外周端部を押さえる場合と比較して、フォーカスリングの直径方向の静電チャックの中心側を押圧することができる。そのため、フォーカスリングがモーメントにより歪み、フォーカスリングの温度分布がばらつくことを抑制することができる。
【0014】
前記押圧部材の設置部は、石英からなる被覆部材により覆われていてもよい。
【0015】
前記被覆部材は、前記フォーカスリングの庇部の外周端部と当接して設けられ、
前記被覆部材と前記設置部との間には、平面視において前記フォーカスリングの庇部と前記被覆部材との境界から前記設置部が視野に入らないように覆う遮蔽部材が設けられていてもよい。
【0016】
前記静電チャックと前記フォーカスリングの間には、伝熱部材が介在していてもよい。
【0017】
前記押圧部材は、セラミックスにより形成されていてもよい。
【0018】
別の観点による本発明は、被処理体を載置する静電チャックと、当該静電チャックの外周部に設けられたフォーカスリングを備える、プラズマ処理容器内に配置される被処理体の載置台であって、前記フォーカスリングを前記静電チャックに対して押圧する円環状の押圧部材と、前記押圧部材を前記静電チャックに固定する固定部材と、を備え、前記フォーカスリングには、外側面の全周にわたって当該フォーカスリングの中心方向に向かって凹に窪む係止部が形成され、前記押圧部材は、
複数の円弧部材を環状に組み合わせて形成され、前記フォーカスリングの係止部に係止して前記フォーカスリングを前記静電チャックに対して押圧する接触部と、当該接触部から下方に延伸し、前記固定部材により前記静電チャックに固定される設置部とを備え、前記フォーカスリングの外周端部の上面には、平面視において前記押圧部材の接触部が視野に入らないように覆う庇部が形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、プラズマ分布の経時的な変化を抑制し、被処理体を面内均一に処理できる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態の一例について、図を参照して説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る処理装置1の概略の構成を示す縦断面図である。
図1に示す処理装置1は、並行平板型のプラズマ処理装置である。
【0022】
プラズマ処理装置1は、被処理体としてのシリコン基板であるウェハWを載置する載置台2が設けられた略円筒状の処理容器16を有している。処理容器16は、接地線17により電気的に接続されて接地されている。また、処理容器16の内壁は、表面に耐プラズマ性の材料からなる溶射皮膜が形成されたライナ(図示せず)により覆われている。
【0023】
載置台2は、略円盤状の静電チャック11と、略円環状のフォーカスリング10と、フォーカスリング10を静電チャックに対して押圧する押圧部材12を備えている。静電チャック11は、略円板状の部材であり、例えば一対のセラミックの間に静電チャック用の電極を挟みこんで形成されている。
【0024】
静電チャック11は、その下面を下部電極としてのサセプタ13により支持されている。サセプタ13は、例えばアルミニウム等の金属により略円盤状に形成されている。処理容器16の底部には、絶縁板14を介して支持台15が設けられ、サセプタ13はこの支持台15の上面に支持されている。静電チャック11の内部には電極(図示せず)が設けられており、当該電極に直流電圧を印加することにより生じる静電気力でウェハWを吸着保持することができるように構成されている。
【0025】
プラズマ処理の均一性を向上させるためのフォーカスリング10は、例えばシリコンからなる導電性のシリコンにより形成されており、サセプタ13の上面であって静電チャック11の外周部に配置されている。フォーカスリング10を静電チャック11へ押圧するための押圧部材12はフォーカスリング10の下側に設けられている。サセプタ13及び支持台15は、例えば石英からなる円筒部材51によりその外側面が覆われている。これらのフォーカスリング10近傍の詳細については後述する。
【0026】
支持台15の内部には、冷媒が流れる冷媒流路15aが例えば円環状に設けられており、当該冷媒流路15aの供給する冷媒の温度を制御することにより、静電チャック11で保持されるウェハWの温度を制御することができる。また、静電チャック11と当該静電チャック11で保持されたウェハWとの間に、伝熱ガスとして例えばヘリウムガスを供給する伝熱ガス管22が、例えば処理容器16の底部、サセプタ13、支持台15及び絶縁板14を貫通して設けられている。
【0027】
サセプタ13には、当該サセプタ13に高周波電力を供給してプラズマを生成するための第1の高周波電源30が、第1の整合器31を介して電気的に接続されている。第1の高周波電源30は、例えば27〜100MHzの周波数、本実施の形態では例えば100MHzの高周波電力を出力するように構成されている。第1の整合器31は、第1の高周波電源30の内部インピーダンスと負荷インピーダンスをマッチングさせるものであり、処理容器16内にプラズマが生成されているときに、第1の高周波電源30の内部インピーダンスと負荷インピーダンとが見かけ上一致するように作用する。
【0028】
また、サセプタ13には、当該サセプタ13に高周波電力を供給してウェハWにバイアスを印加することでウェハWにイオンを引き込むための第2の高周波電源40が、第2の整合器41を介して電気的に接続されている。第2の高周波電源40は、例えば400kHz〜13.56MHzの周波数、本実施の形態では例えば3.2MHzの高周波電力を出力するように構成されている。第2の整合器41は、第1の整合器31と同様に、第2の高周波電源40の内部インピーダンスと負荷インピーダンスをマッチングさせるものである。
【0029】
これら第1の高周波電源30、第1の整合器31、第2の高周波電源40、第2の整合器41は、後述する制御部150に接続されており、これらの動作は制御部150により制御される。
【0030】
下部電極であるサセプタ13の上方には、上部電極42がサセプタ13に対向して平行に設けられている。上部電極42は、導電性の保持部材58を介して処理容器16の上部に支持されている。したがって上部電極42は、処理容器16と同様に接地電位となっている。
【0031】
上部電極42は、静電チャック11に保持されたウェハWと対向面を形成する電極板56と、当該電極板56を上方から支持する電極支持体57とにより構成されている。電極板56には、処理容器16の内部に処理ガスを供給する複数のガス供給口53が当該電極板56を貫通して形成されている。電極板56には、例えばジュール熱の少ない低抵抗の導電体または半導体により構成され、本実施の形態においては例えばシリコンが用いられる。また、電極支持板57は導電体により構成され、本実施の形態においては例えばアルミニウムが用いられる。
【0032】
電極支持体57内部の中央部には、略円盤状に形成されたガス拡散室54が設けられている。また、電極支持体57の下部には、ガス拡散室54から下方に伸びるガス孔55が複数形成され、ガス供給口53は当該ガス孔55を介してガス拡散室54に接続されている。
【0033】
ガス拡散室54には、ガス供給管72が接続されている。ガス供給管72には、
図1に示すように処理ガス供給源73が接続されており、処理ガス供給源73から供給された処理ガスは、ガス供給管72を介してガス拡散室54に供給される。ガス拡散室54に供給された処理ガスは、ガス孔55とガス供給口53を通じて処理容器16内に導入される。すなわち、上部電極42は、処理容器16内に処理ガスを供給するシャワーヘッドとして機能する。
【0034】
本実施の形態におけるガス供給源73は、エッチング処理用の処理ガスを供給するエッチングガス供給部73aを備えている。また、ガス供給源73は、ガス供給部32aとガス拡散室54との間に設けられたバルブ74と、流量調整機構75を備えている。ガス拡散室54に供給されるガスの流量は、流量調整機構75によって制御される。
【0035】
エッチング処理用のエッチングガスとしては、例えばCF4ガスや酸素ガスなどが使用される。
【0036】
処理容器16の底部には、処理容器16の内壁と円筒部材51の外側面とによって、処理容器16内の雰囲気を当該処理容器16の外部へ排出するための流路として機能する排気流路85が形成されている。処理容器16の底面には排気口90が設けられている。排気口90の下方には、排気室91が形成されており、当該排気室91には排気管92を介して排気装置93が接続されている。したがって、排気装置93を駆動することにより、排気流路85及び排気口90を介して処理容器16内の雰囲気を排気し、処理容器内を所定の真空度まで減圧することができる。
【0037】
また、処理容器16の周囲には、当該処理容器16と同心円状にリング磁石100が配置されている。リング磁石100により、静電チャック11と上部電極42との間の空間に磁場を印加することができる。このリング磁石100は、図示しない回転機構により回転自在に構成されている。
【0038】
以上のプラズマ処理装置1には、既述のように制御部150が設けられている。制御部150は、例えばコンピュータであり、プログラム格納部(図示せず)を有している。プログラム格納部には、各電源30、40や各整合器31、41及び各流量調整機構74aを制御して、プラズマ処理装置120を動作させるためのプログラムも格納されている。
【0039】
なお、上記のプログラムは、例えばコンピュータ読み取り可能なハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルデスク(MO)、メモリーカードなどのコンピュータに読み取り可能な記憶媒体に記録されていたものであって、その記憶媒体から制御部150にインストールされたものであってもよい。
【0040】
次に、載置台1におけるフォーカスリング10近傍の構成について詳述する。
図2に示すように、静電チャック11上面の外周縁部11aは、静電チャック11のウェハWを載置する面よりも階段状に一段低く形成されている。この階段状の外周縁部11aの上面には円環状の伝熱部材80が配置されており、フォーカスリング10はこの伝熱部材80の上面に配置されている。伝熱部材80は例えばシリコンゴム等の可撓性のある耐熱部材により形成されている。
【0041】
フォーカスリング10の外側面には、フォーカスリング10の中心方向に向かって凹に窪んだ係止部10aが、当該フォーカスリング10の厚み方向の中心近傍の領域の全周にわたって形成されている。また、係止部10aは、概ねフォーカスリング10の幅方向の中心近傍に位置している。フォーカスリング10の静電チャック11側の端部は、静電チャック11の上面よりわずかに低くなっている。静電チャック11上のウェハWの外周縁部は、この低くなっている部分に張り出している。また、フォーカスリング10の上面は静電チャック11の外周側に向かって徐々に高くなっている。静電チャック11の上面より高くなっている部分はフォーカスリング10の直径方向の外方に向かって延伸し、平面視において静電チャック11の外周端部より外側に張り出す庇部10bとして形成されている。フォーカスリング10の下面側は、庇部10bよりもフォーカスリング10の中心側より、即ち庇部10bよりも短く形成されている。
【0042】
押圧部材12は、
図2に示すように、フォーカスリング10の係止部10aに係止する接触部12aと、接触部12aから下方に延伸する設置部12bを備えている。押圧部材12は例えばセラミックスにより形成されている。設置部12bの下面には、例えばセラミックスにより形成された環状の支持部材50が配置されている。支持部材50の下方であって静電チャック11及びサセプタ13の外側面には、例えば石英からなる円筒部材51が設けられている。押圧部材12や支持部材50としては、例えばアルミナなどを用いることができる。
【0043】
接触部12aの上端部は、静電チャック11の中心方向に向かって水平に延伸している。そして、この接触部12aのフォーカスリング10側の先端部が、フォーカスリング10の係止部10aに嵌ることで、接触部12aがフォーカスリング10の係止部10aに係止される。また、接触部12aの上面は、フォーカスリング10の庇部10bにより覆われており、フォーカスリング10上方からの平面視において、当該接触部12aが視野にはいらないようになっている。
【0044】
設置部12bの上面は、例えばフォーカスリング10の係止部10aよりも低くなっている。この設置部12bには貫通孔が形成されており、この貫通孔を貫通して設けられた固定部材としての例えばネジ52により、押圧部材12が支持部材50に固定されている。そして、このネジ52により押圧部材12を円筒部材51側に押し込むことで、接触部12aと係止するフォーカスリング10が静電チャック11側に押し込まれる。また、フォーカスリング10が静電チャック11側に押し込まれることで、フォーカスリング10が外周縁部11aの上面に設けられた伝熱部材80と密着し、フォーカスリング10と静電チャック11との熱伝達性が向上する。
【0045】
押圧部材12は、例えば
図3に示すように、円弧状の2つの円弧部材60を環状に組み合わせて形成されている。そして、接触部12aとフォーカスリング10の係止部10aを係止させる際には、分割された押圧部材12、即ち円弧部材60の接触部12aを係止部10aの外側から係止部10aに嵌め合せる。フォーカスリング10に嵌め合わせた押圧部材12の設置部12bは、既述のとおりネジ52により支持部材50に固定される。なお、
図3では、押圧部材12を2つの円弧部材60から構成した場合を描図しているが、押圧部材12を何分割するかについては本実施の形態に限定されるものではなく、任意に設定が可能である。また、
図3では支持部材50は一体の環状に形成されている状態を描図しているが、支持部材50は例えば2つ以上に分割されていてもよい。
【0046】
設置部12a及びネジ52の上面には、例えば石英からなる遮蔽部材61が設けられている。この遮蔽部材61も、複数に分割された部材を円環状に組み合わされて形成されている。設置部12a及びネジ52は、遮蔽部材61により覆われることで、平面視において遮蔽部材61の上方から視認できないようになっている。また、遮蔽部材61の内周面、換言すれば静電チャック11側の端部は、フォーカスリング10の庇部10bの下方に位置している。
【0047】
遮蔽部材61の上面にはさらに、例えば石英からなる円環状の被覆部材70が設けられている。被覆部材70は、その内周面が
図2に示すようにフォーカスリング10の庇部10bの外周端部と当接して設けられている。これにより、被覆部材70と庇部10bとの境界からは、平面視において遮蔽部材61が視野に入るのみであり、押圧部材12やネジ52は視野に入らないようになっている。これにより、被覆部材70と庇部10bとの境界から侵入したプラズマによりネジ52や押圧部材12がダメージを受けることを防止できる。
【0048】
被覆部材70の下面であって押圧部材12の外周には、その上面が外周部に向かって階段状に下がる段状部材71が配置されている。被覆部材70の下面は、この段状部材71の上面に沿って外周方向に向かって下がる階段状に形成されている。段状部材71は、円筒部材51の上面に支持されている。これにより、被覆部材70と段状部材71との間には所定の隙間が階段状に形成され、この隙間がラビリンスシールとして機能する。したがって、この隙間にプラズマが侵入しにくくなり、遮蔽部材61や押圧部材12の境界面がプラズマから受けるダメージが抑制される。
【0049】
本実施の形態にかかるプラズマ処理装置1及び載置台2は以上のように構成されており、次に例えばプラズマエッチング処理におけるこの処理装置1及び載置台2の作用について説明する。
【0050】
プラズマエッチング処理にあたっては、先ず静電チャック11にウェハWが載置されて保持される。次いで、ガス供給源72から処理容器16内にエッチング処理用の処理ガスが供給される。その後、第1の高周波電源30と第2の高周波電源40により、下部電極であるサセプタ13に高周波電力が連続的に印加され、上部電極42と静電チャック11との間において、高周波電界が形成される。これにより、処理容器内16にプラズマが発生し、処理ガスに含まれる元素のラジカル(例えば、酸素ラジカルやフッ素ラジカル)により、被処理体のエッチングが行われる。
【0051】
処理容器1内のプラズマは、静電チャック11上のフォーカスリング10によりウェハWの上方に収束し、ウェハWの表面に所定の処理が施される。この際、ウェハWとフォーカスリング10はプラズマの影響により温度が上昇するものの、支持台15の冷媒流路15aを流れる冷媒により冷却される。また、フォーカスリング10は押圧部材12により押圧され、静電チャック11の外周縁部11aに配置された伝熱部材80と密着しているので、効率よく冷却されると共に温度むら無く均一に冷却される。
【0052】
また、フォーカスリング10は係止部10aに係止した押圧部材12の接触部12aによって押圧されているので、例えばフォーカスリング10の幅方向の中心近傍の位置にこの押圧する力が作用する。その場合、
図5に示す従来のフォーカスリング101のように外周端部を押圧する場合と比較して、フォーカスリング10にかかるモーメントが極めて小さくなる。そのため、フォーカスリング10の歪みが抑制され、静電チャック11との間の熱伝達がより均一となる。その結果、フォーカスリング10の温度がより均一となり、安定したプラズマ処理が行われる。
【0053】
そして、このプラズマ処理を連続して繰り返すと、被覆部材70がプラズマによりスパッタされてダメージを受ける。しかしながら、押圧部材12の接触部12aはフォーカスリング10の庇部10bにより覆われているので、被覆部材70がダメージを受けた場合でも、接触部12aがプラズマ領域に露出することがない。また、押圧部材12の設置部12bも遮蔽部材61により覆われているため、設置部12bのプラズマ領域への露出も防ぐことができる。その結果、被覆部材70がダメージを受けてもインピーダンスが変化することがないので、経時的にプラズマの分布が変動することなく、安定してプラズマ処理を行うことができる。
【0054】
以上の実施の形態によれば、押圧部材12の接触部12aがフォーカスリング10の係止部10aに係止し、さらに接触部12aは係止部10aより上方に形成された庇部10bにより覆われているので、被覆部材70がプラズマによりダメージを受けた場合であっても、接触部12aがプラズマ領域に露出することがない。また、押圧部材12の設置部12bも遮蔽部材61により覆われているため、設置部12bがプラズマ領域への露出することを防ぐことができる。そのため、被覆部材70がダメージを受けた際のインピーダンスの変化を抑制することができ、経時的なプラズマの分布の変動を最小限とすることができる。その結果、プラズマ分布の経過時的な変化を抑制し、被処理体を面内均一に処理できる。さらには、押圧部材12のプラズマ領域への露出を防ぐことにより、押圧部材12の寿命が延長される。なお、設置部12bは接触部12aより下方に位置するため、設置部12bが万が一プラズマ領域へ露出した場合であっても、インピーダンスの変化に与える影響を小さなものとすることができる。
【0055】
また、フォーカスリング10は凹に窪んだ係止部10aを押圧部材12によって静電チャック11方向に押圧されているので、従来のようにフォーカスリング101の外周端部を押圧する場合と比較して、フォーカスリング10にかかるモーメントが極めて小さくなる。そのため、フォーカスリング10の歪みが抑制され、静電チャック11との熱伝達がより均一となる。その結果、フォーカスリング10の温度がより均一となり、安定したプラズマ処理を行うことができる。なお、押圧部材12でフォーカスリング10を静電チャック11方向に押圧する際に当該フォーカスリング10にかかるモーメントを小さくするには、係止部10aをフォーカスリング10の幅方向の中心近傍、またはそれよりも静電チャック11の中心側の位置に形成することが好ましい。
【0056】
また、以上の実施の形態によれば、被覆部材70の内周面がフォーカスリング10の庇部10bの外周端部と当接して設けられ、被覆部材70と庇部10bとの境界の下方に遮蔽部材61が設けられると共に、被覆部材70の下面に段状部材71が配置されているので、被覆部材70と遮蔽部材61や段状部材71との間にラビリンスシールが形成される。したがって、このラビリンスシールにより各部材の隙間にプラズマが侵入しにくくなり、遮蔽部材61や押圧部材12の境界面がプラズマから受けるダメージを抑制することができる。
【0057】
以上の実施の形態では、押圧部材12を複数の円弧部材60により構成しているため、押圧部材12の交換を容易に行なうことができる。
【0058】
なお、以上の実施の形態では、庇部10bの先端は静電チャック11の外周端部より外側に張り出したものとしていたが、庇部10bの形状は本実施の形態に限定されない。庇部10bの形状は、押圧部材12の接触部12aとの関係において、接触部12aが平面視において庇部10bにより覆われるようになっていればよく、静電チャック11の外周縁部11aの形状や接触部12aの形状によっては、庇部10bの先端は外周縁部11aの上方に位置するようになっていてもよい。
【0059】
また、以上の実施の形態では、係止部10aは静電チャック11の中心方向に向かって凹に窪んだ形状としていたが、係止部10aの形状は、接触部12aが係止部10aと係止した状態で平面視において庇部10bにより覆われるようになっていればよく、本実施の形状に限定されるものではない。他の係止部10aの一例としては、例えば
図4に示すように、フォーカスリング10の下面に、上方に凹に窪ませ、さらにこの窪みをフォーカスリング10の外側方向に向けて延伸させると共に、押圧部材12の接触部12aの先端部をフォーカスリング10の外側方向に折り返して略U字上に形成することで、この折り返し部分を利用して、接触部12aと係止部10aを係止させるようにしてもよい。
【0060】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。