(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0006】
電気的制御複屈折率の原理、ECB(electrically controlled birefringence)効果、またはDAP(deformation of aligned phases)効果は、1971年に最初に記載された(M.F.SchieckelおよびK.Fahrenschon、「Deformation of nematic liquid crystals with vertical orientation in electrical fields」、Appl.Phys.Lett.19(1971)、3912;非特許文献1)。その後、J.F.Kahn(Appl.Phys.Lett.20(1972)、1193;非特許文献2)およびG.LabrunieおよびJ.Robert(J.Appl.Phys.44(1973)、4869;非特許文献3)による報文が発行された。
【0007】
J.RobertおよびF.Clerc(SID 80 Digest Techn.Papers(1980)、30;非特許文献4)、J.Duchene(Displays 7(1986)、3;非特許文献5)およびH.Schad(SID 82 Digest Techn.Papers(1982)、244;非特許文献6)の報文では、ECB効果に基づく高情報量のディスプレイ素子中での使用に適するものとするためには、液晶相が、高い値の弾性定数比K
3/K
1、高い値の光学異方性Δn、−0.5以下の値の誘電異方性Δεを有していなければならないことが示された。ECB効果に基づく電気光学的ディスプレイ素子はホメオトロピックなエッジ配向を有している(VA技術、即ちvertically aligned)。誘電的に負の液晶媒体も、所謂IPS効果を利用するディスプレイ中で使用できる。
【0008】
ECB効果を利用するディスプレイは、所謂VAN(
vertically
aligned
nematic)ディスプレイとして、MVA(
multi−domain
vertical
alignment、例えば:Yoshide、H.ら、論文3.1:「MVA LCD for Notebook or Mobile PCs(以下省略)」SID 2004 International Symposium、Digest of Technical Papers、XXXV、Book I、第6〜9頁(非特許文献7)およびLiu、C.T.ら、論文15.1:「A 46−inch TFT−LCD HDTV Technology(以下省略)」、SID 2004 International Symposium、Digest of Technical Papers、XXXV、Book II、第750〜753頁(非特許文献8)))およびPVA(
patterned
vertical
alignment、例えば:Kim、Sang Soo、論文15.4:「Super PVA Sets New State−of−the−Art for LCD−TV」、SID 2004 International Symposium、Digest of Technical Papers、XXXV、Book II、第760〜763頁(非特許文献9))デザイン、加えてASV(
advanced
super
view、例えば:Shigeta、MitzuhiroおよびFukuoka、Hirofumi、論文15.2:「Development of High Quality LCDTV」、SID 2004 International Symposium、Digest of Technical Papers、XXXV、Book II、第754〜757頁(非特許文献10))ディスプレイおよびIPS(
in−
plane
switching)ディスプレイ(例えば:Yeo、S.D.、論文15.3:「A LC Display for the TV Application」、SID 2004 International Symposium、Digest of Technical Papers、XXXV、Book II、第758および759頁(非特許文献11))、加えて長く知られており、特にテレビ用途向けのTN(
twisted
nematic)ディスプレイに加えて、現在のところ最も重要である液晶ディスプレイの3種類のより最近の型の1つとして確立されてきた。それらの技術は、例えばSouk、Jun、SIDセミナー2004、セミナーM−6:「Recent Advances in LCD Technology」、セミナー講義ノート、M−6/1〜M−6/26(非特許文献12)およびMiller、Ian、SIDセミナー 2004、セミナーM−7:「LCD−Television」、セミナー講義ノート、M−7/1〜M−7/32(非特許文献13)において一般的な形で比較されている。例えば:Kim、Hyeon Kyeongら、論文9.1:「A57−in.Wide UXGA TFT−LCD for HDTV Application」、SID 2004 International Symposium、Digest of Technical Papers、XXXV、Book I、第106〜109頁(非特許文献14)にあるように、オーバードライブによる方法を検討することにより、近年のECBディスプレイの応答時間は既に著しく改良されてきたが、ビデオに対応できる応答時間を達成することは、特にグレーレベルのスイッチングにおいて、依然として満足いくほどには未だ解決されていない問題である。
【0009】
この効果を電気光学的ディスプレイ素子中で工業的に応用するには、多数の要求を満足するLC相が必要となる。ここで特に重要なものは、水分、空気、および熱、赤外線、可視および紫外領域の放射、直流および交流電界などの物理的影響に対する化学的安定性である。
【0010】
さらに、工業的に使用できるLC相は、適切な温度範囲で液晶中間相および低粘度を有することが要求される。
【0011】
現在までに開示された液晶中間相を有する一連の化合物には、単一の化合物でこれら全ての要求を見たすものはなかった。従って、LC相として使用できる材料を得るためには、一般に、2〜25種類、好ましくは3〜18種類の化合物の混合物を調製する。しかしながら、著しく負の誘電異方性および適切な長期安定性を有する液晶材料がこれまで入手できなかったため、化合物を混合しても理想的な相を生産することは容易ではなかった。
【0012】
マトリックス液晶ディスプレイ(MLCディスプレイ)は既知である。個々のピクセルをそれぞれスイッチングするために使用することができる非線形素子は、例えば、アクティブ素子(即ち、トランジスター)である。そして「アクティブマトリックス」との用語が使用され、2つの型に区別できる。
【0013】
1.基体としてのシリコンウエハー上のMOS(金属酸化物半導体)トランジスター。
【0014】
2.基体としてのガラス板上の薄膜トランジスター(TFT)。
【0015】
第1の型の場合、使用される電気光学的効果は、通常、動的散乱またはゲスト−ホスト効果である。基板材料として単結晶シリコンを使用すると、色々な部品ディスプレイのモジュール組み立て品の場合であっても接続部での問題が生じるため、ディスプレイの大きさが制限される。
【0016】
好適であってより有望な第2の型の場合、使用される電気光学的効果は、通常、TN効果である。
【0017】
区別される2つの技術がある。即ち、例えばCdSeのように化合物半導体を含むTFT、または多結晶またはアモルファスシリコンに基づいたTFTである。後者の技術について、世界的に集中した研究がなされている。
【0018】
TFTマトリックスは、ディスプレイの1つのガラス板の内面に形成され、もう一方のガラス板は、内面に透明な対向電極を有する。ピクセル電極の大きさと比較して、TFTは非常に小さく、事実上、画像に対する悪影響はない。この技術は、フルカラーが可能なディスプレイにも適用でき、フィルター素子がスイッチング可能なピクセルの各々に対向するように、赤、緑および青のフィルターのモザイクを配置する。
【0019】
これまでに開示されたTFTディスプレイは、通常、透過光に対して直交した偏光板を備えるTNセルとして動作させ、バックライトで照らされる。
【0020】
ここで用語「MLCディスプレイ」は、集積非線形素子を備える任意のマトリックスディスプレイを含む。即ち、アクティブマトリックスに加えて、バリスターまたはダイオード(MIM、即ち、metal−insulator−metal)のような受動型素子を備えたディスプレイも含む。
【0021】
この型のMLCディスプレイは、特にテレビ用途(例えばポケットテレビ)、または自動車または航空機内での高度情報ディスプレイに適している。コントラストの角度依存性と応答時間の問題に加えて、MLCディスプレイにおいては、液晶混合物の比抵抗が十分に高くないことに起因する問題がある[TOGASHI,S.、SEKIGUCHI,K.、TANABE,H.、YAMAMOTO,E.、SORIMACHI,K.、TAJIMA,E.、WATANABE,H.およびSHIMIZU,H.、Proc.Eurodisplay、第84巻、1984年9月、第A210〜288号、「Matrix LCD Controlled by Double Stage Diode Rings」、第141ff頁、パリ(非特許文献15);STROMER,M.、Proc.Eurodisplay、第84巻、1984年9月、「Design of Thin Film Transistors for Matrix Addressing of Television Liquid Crystal Displays」、第145ff頁、パリ(非特許文献16)]。抵抗の低下に伴い、MLCディスプレイのコントラストが劣化する。液晶混合物の比抵抗は、ディスプレイの内部表面との相互作用のために、一般に、MLCディスプレイの寿命に全体に渡って低下するので、許容される抵抗値を長期の動作期間で有するディスプレイのためには、高い(初期)抵抗が非常に重要である。
【0022】
これまでに開示されたMLC−TNディスプレイの不具合は、それらの比較的低いコントラスト、比較的大きい視野角依存性、およびこれらのディスプレイ中でグレーシェイドを生じさせることが困難なことである。
【0023】
したがって、非常に高い比抵抗を有すると同時に、広い動作温度範囲、短い応答時間および低い閾電圧を有しており、これらのおかげで各種のグレーシェイドを生じさせることができるMLCディスプレイが引き続き強く要求されている。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の混合物の好ましい実施形態の幾つかを以下に示す。
【0031】
a)式I中のR
11は、好ましくはアルキルまたはアルケニル、特にはエチル、プロピル、ブチル、ビニル、1E−アルケニルまたは3E−アルケニルを表す。
【0032】
R
12は、好ましくはビニル、1E−アルケニルまたは3E−アルケニル、好ましくはCH
2=CHを表す。
【0033】
b)式Iの1種類、2種類、3種類または4種類以上、好ましくは1種類、2種類または3種類の化合物を含む液晶媒体。
【0034】
c)混合物全体における式Iの化合物の割合は、少なくとも30重量%以上、好ましくは少なくとも35重量%、特に好ましくは38重量%以上である液晶媒体。
【0035】
d)好ましくは25重量%以下の量で、以下の式の化合物を付加的に含む液晶媒体。
【0036】
【化5】
e)式IIAおよび/またはIIBの1種類以上の化合物を付加的に含む液晶媒体。
【0037】
【化6】
式中、
R
2は、H、15個までの炭素原子を有するアルキルまたはアルケニル基を表し、該基は置換されていないか、CNまたはCF
3によって1置換されているか、またはハロゲンによって少なくとも1置換されており、ただし加えて、これらの基の中の1個以上のCH
2基は、酸素原子が互いに直接結合しないようにして、−O−、−S−、
【0038】
【化7】
−C≡C−、−CF
2O−、−OCF
2−、−OC−O−または−O−CO−で置き換えられていてもよく、
pは、1または2を表し、および
vは、1〜6を表す。
【0039】
f)式IIIの1種類以上の化合物を付加的に含む液晶媒体。
【0040】
【化8】
式中、
R
31およびR
32は、それぞれ互いに独立に、12個までの炭素原子を有する直鎖状のアルキル、アルコキシアルキルまたはアルコキシ基を表し、および
【0041】
【化9】
Zは、単結合、−CH
2CH
2−、−CH=CH−、−CF
2O−、−OCF
2−、−CH
2O−、−OCH
2−、−COO−、−OCO−、−C
2F
4−または−CF=CF−を表す。
【0042】
g)混合物の全体中の式IIAおよび/またはIIBの化合物の割合は、少なくとも20重量%である液晶媒体。
【0043】
h)混合物の全体中の式IIIの化合物の割合は、少なくとも5重量%である液晶媒体。
【0044】
i)補助式I1〜I9から選択される少なくとも1種類の化合物を含む液晶媒体。
【0046】
【化10.2】
本発明の特に好ましい媒体は、以下の式の化合物を含み、
【0047】
【化11】
好ましくは30〜60重量%の量、特には35〜60重量%の量で、および/または以下の式の化合物を含み、
【0048】
【化12】
好ましくは30〜40重量%の量、特には35〜40重量%の量である。本発明の混合物が、以下の式の化合物
【0050】
【化14】
の両者を含む場合、混合物中のこれらの2種類の化合物の総濃度は40重量%以上、好ましくは45重量%以上、特には50重量%以上である。
【0051】
j)以下の群からの少なくとも1種類以上の化合物を含む液晶媒体。
【0052】
【化15】
k)式IIIa〜IIIhより選択される1種類以上の化合物を付加的に含む液晶媒体。
【0054】
【化16.2】
式中、
alkylおよびalkyl
*は、それぞれ互いに独立に、1〜6個の炭素原子を有する直鎖状のアルキル基を表す。
【0055】
本発明の媒体は、好ましくは、式IIIa、式IIIbおよび/または式IIIdの化合物を少なくとも1種類含む。
【0056】
l)30〜80重量%の1種類以上の式Iの化合物と、
20〜70重量%の1種類以上の式IIAおよび/またはIIBの化合物と
を含むか、これらより成り、
ただし、式IおよびIIAおよび/またはIIBの化合物の総量は100重量%以下である液晶媒体。
【0057】
m)以下の式の1種類以上の4環化合物を付加的に含む液晶媒体。
【0059】
【化17.2】
式中、
R
7およびR
8は、それぞれ互いに独立に、式IIAおよび式IIBのR
2で示される意味の1つを有し、および
wおよびxは、それぞれ互いに独立に、1〜6を表す。
【0060】
n)式Y−1〜Y−11の1種類以上の化合物を付加的に含む液晶媒体。
【0062】
【化18.2】
式中、R
13〜R
20は、それぞれ互いに独立に、R
2で示されるのと同じ意味を有し、およびzおよびmは、それぞれ互いに独立に、1〜6を表す。R
Eは、H、CH
3、C
2H
5またはn−C
3H
7を表す。Xは、0、1、2または3を表す。
【0063】
本発明の媒体は、特に好ましくは、アルケニル側鎖を有する式Y−2、Y−3および/またはY−11の1種類以上の化合物を、好ましくは5重量%以上の量で含む。
【0064】
o)以下の式の1種類以上の化合物を付加的に含む液晶媒体。
【0065】
【化19】
好ましくは3重量%より多い量で、特に5重量%以上で、非常に特に好ましくは5〜25重量%で、
ただし、R
21はR
2で示される意味を有し、mは1〜6を表す。
【0066】
p)式T−1〜T−22の1種類以上のフッ素化されたターフェニル類を付加的に含む液晶媒体。
【0069】
【化20.3】
式中、
Rは、R
2に示される意味を有し、
Rは、好ましくは、それぞれの場合で1〜6個の炭素原子を有する直鎖状のアルキル、アルコキシまたはアルコキシアルキル、2〜6個の炭素原子を有するアルケニルまたはアルケニルオキシである。Rは、好ましくは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシまたはペントキシを表す。
【0070】
本発明の媒体は、好ましくは、式T−1〜T−22のターフェニル類を2〜30重量%の量で、特には5〜20重量%で含む。
【0071】
式T−1、T−2、T−3およびT−22の化合物が特に好ましい。これらの化合物の中で、Rは、好ましくは、それぞれの場合で1〜5個の炭素原子を有するアルキル、更にはアルコキシを表す。
【0072】
ターフェニル類は、好ましくは、0.10以上のΔnを有する混合物中で、式I、IIA、IIBおよびIIIの化合物と組み合わせて使用される。好ましい混合物は、ターフェニル化合物類を2〜20重量%と、式IIAおよび/またはIIBの化合物を5〜60重量%とを含む。
【0073】
q)式B−1〜B−4の1種類以上のビフェニル類を付加的に含む液晶媒体。
【0074】
【化21】
式中、
alkylおよびalkyl
*は、それぞれ互いに独立に、1〜6個の炭素原子を有する直鎖状のアルキルを表し、および
alkenylおよびalkenyl
*は、それぞれ互いに独立に、2〜6個の炭素原子を有する直鎖状のアルケニル基を表す。
【0075】
混合物全体における式B−1〜B−4のビフェニル類の割合は、好ましくは少なくとも3重量%、特には5重量%以上である。
【0076】
式B−1〜B−4の化合物のうち、式B−1およびB−4の化合物が特に好ましい。
【0077】
特に好ましいビフェニル類は、以下である。
【0079】
【化22.2】
式中、Rは、1または2〜6個の炭素原子を有するアルキル、アルケニル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルケニルオキシを表し、alkenylは、上で示される意味を有する。本発明の媒体は、特に好ましくは、式B−1aおよび/またはB−2cの1種類以上の化合物を含む。
【0080】
r)以下の式の1種類以上の化合物を付加的に含む液晶媒体。
【0081】
【化23】
好ましくは3重量%より多い量で、特には5重量%以上、非常に特に好ましくは5〜25重量%である。
【0082】
ただし、R
22〜23はR
11で示される意味を有し、R
24はCH
3、C
2H
5またはn−C
3H
7を表し、qは1または2を表す。
【0083】
s)式Z−1〜Z−22の少なくとも1種類の化合物を含む液晶媒体。
【0087】
【化24.4】
式中、Rおよびalkylは上で示される意味を有し、およびpは1または2である。
【0088】
好ましくは5重量%以上の量であり、特には10重量%以上である。
【0089】
式Z−1〜Z−9の1種類または2種類以上の化合物および付加的に式IIの1種類または2種類以上の化合物を含む媒体が特に好ましい。この型の混合物は、好ましくは10重量%以上の式IIの化合物を含む。
【0090】
t)式O−1〜O−12の少なくとも1種類の化合物を含む液晶媒体。
【0092】
【化25.2】
式中、R
1およびR
2はR
2で示される意味を有し、R
1およびR
2は、それぞれは互いに独立に、好ましくは、直鎖状のアルキル、さらにアルケニルを表す。
【0093】
u)本発明の好ましい液晶媒体は、例えば式N−1〜N−5の化合物のようなテトラヒドロナフチルまたはナフチル単位を含む1種類以上の物質を含む。
【0094】
【化26】
式中、R
1NおよびR
2Nは、それぞれ互いに独立にR
2で示される意味を有し、好ましくは直鎖状のアルキル、直鎖状のアルコキシまたは直鎖状のアルケニルを表し、およびZ、Z
1およびZ
2は、それぞれ互いに独立に、−C
2H
4−、−CH=CH−、−(CH
2)
4−、−(CH
2)
3O−、−O(CH
2)
3−、−CH=CHCH
2CH
2−、−CH
2CH
2CH=CH−、−CH
2O−、−OCH
2−、−COO−、−OCO−、−C
2F
4−、−CF=CF−、−CF=CH−、−CH=CF−、−CF
2O−、−OCF
2−、−CH
2−または単結合を表す。
【0095】
v)好ましい混合物は、式BCの1種類以上のジフルオロジベンゾクロマン化合物類を含む。
【0096】
【化27】
式中、
R
B1およびR
B2は、それぞれ互いに独立にR
2の意味を有し、好ましくは3〜20重量%の量で、特には3〜15重量%の量である。
【0097】
式BCの特に好ましい化合物は、化合物BC−1〜BC−7である。
【0099】
【化28.2】
式中、
alkylおよびalkyl
*は、それぞれ互いに独立に、1〜6個の炭素原子を有する直鎖状のアルキル基を表し、
alkenylおよびalkenyl
*は、それぞれ互いに独立に、2〜6個の炭素原子を有する直鎖状のアルケニル基を表す。
【0100】
式BC−2の1種類、2種類または3種類の化合物を含む混合物が非常に特に好ましい。
【0101】
本発明は、更に、ECB効果に基づいてアドレスするアクティブマトリックスを備える電気光学的ディスプレイに関し、上および下で説明する液晶媒体を誘電体として備えることを特徴とする。
【0102】
本発明の液晶媒体は、好ましくは20℃以下〜70℃以上まででネマチック相を有し、特に好ましくは30℃以下〜80℃以上、非常に特に好ましくは40℃以下〜90℃以上である。
【0103】
ここで用語「ネマチック相を有する」は、一方でスメクチック相および結晶化が対応する温度の低温で確認されないことを意味し、他方でネマチック相から加熱しても透明化しないことを意味する。低温における検査は対応する温度において流動粘度計により行なわれ、電気光学的用途に対応する層厚みを有する試験用セルに少なくとも100時間保存して検査される。
【0104】
対応する試験用セル中における−20℃での保存安定性が1000時間以上の場合、媒体はこの温度において安定であると言われる。−30℃および−40℃の温度において、対応する時間は、それぞれ500時間および250時間である。高温においては、毛細管中での従来法により、透明点が測定される。
【0105】
液晶混合物は、好ましくは、少なくとも60Kのネマチック相範囲と、20℃において最大で30mm
2・s
−1の流動粘度ν
20を有する。
【0106】
本発明の液晶混合物は、−0.5〜−8.0、特には−3.0〜−6.0のΔεを有し、ただしΔεは誘電異方性を表す。回転粘度γ
1は、好ましくは200mPa・sより低く、特には170mPa・sより低い。
【0107】
液晶混合物中における複屈折率Δnの値は一般に0.07および0.16の間であり、好ましくは0.08および0.12の間である。
【0108】
本発明の液晶媒体は負の誘電異方性を有しており、比較的高い絶対値の誘電異方性(|Δε|)を有しており、好ましくは2.7以上から5.3以上の範囲である。
【0109】
本発明の液晶媒体は比較的低い値の閾電圧(V
0)を有している。それは、好ましくは1.7V〜2.5Vの範囲、特に好ましくは2.3V以下、非常に特に好ましくは2.2V以下である。
【0110】
加えて、本発明の液晶媒体は、液晶セル中において高い電圧保持率の値を有する。20℃で新たに充填されたセル中においては、電圧保持率は95%以上、好ましくは97%以上、非常に特に好ましくは99%以上であり、100℃のオーブン中の5分後におけるセル中においては、電圧保持率は90%以上、好ましくは93%以上、非常に特に好ましくは98%以上である。
【0111】
一般に、低いアドレス電圧または閾電圧を有する液晶媒体は、高いアドレス電圧または閾電圧を有する液晶媒体よりも低い電圧保持率を有し、逆もそうである。
【0112】
本発明において、用語「誘電的に正の化合物」は△ε>1.5の化合物を表し、用語「誘電的に中性の化合物」は−1.5≦△ε≦1.5の化合物を表し、用語「誘電的に負の化合物」は△ε<−1.5の化合物を表す。ここで、化合物の誘電異方性は10%の化合物を液晶ホストに溶解して決定され、それぞれの場合で20μmの厚みでホメオトロピックな表面配向の少なくとも1つの試験用セル中で1kHzにより得られた混合物の容量を決定する。測定電圧は典型的には0.5V〜1.0Vであるが、検討されるそれぞれの液晶混合物の容量閾値よりはいつも低くされる。
【0113】
誘電的に正および誘電的に中性の化合物に使用されるホスト混合物はZLI−4792で、誘電的に負の化合物に使用されるホスト混合物はZLI−2857で、いずれも独国のメルク社製である。検討される化合物を添加後にホスト化合物の誘電率の変化より検討される個々の化合物の値が得られ、これを使用される化合物が100%の場合に外挿する。検討される化合物は、ホスト混合物に10%の量で溶解される。材料の溶解度が低すぎてこれが行なえない場合、所望の温度で検討できるようになるまで濃度を段階的に半分にしていく。
【0114】
本発明で示される全ての温度の値は℃で示されている。
【0115】
本発明においては、用語「閾電圧」は、他に明言しない限り、フレデリックス閾値としても知られる容量閾値(V
0)に関する。例においては、一般的な慣習により、10%相対コントラストでの光学的閾値(V
10)も決定され引用される。
【0116】
電気光学的特性、例えば閾電圧(V
0)(容量測定)および光学的閾値(V
10)は、スイッチング挙動と同様にメルク社によって製造された試験用セル中で決定される。測定用セルはソーダ石灰ガラス基体を備え、ECBまたはVAの構成で互いに直交してラビングされたポリイミド配向層(SE−1211、希釈剤
**26と共に(混合比1:1)、いずれも日本国日産化学社製)で製造される。透明で実質的に正方形のITO電極の面積は1cm
2である。使用される試験用セルの層厚みは、検討される液晶混合物の複屈折に従い光学遅延が(0.33±0.01)μmとなるよう選択される。偏光子は、一方がセルの前面に配置され他方が背面に配置され、それらの吸収軸が互いに90°の角度をなし、ラビングの方向に平行な軸を有するそれらのそれぞれの隣り合う基体上にある。層厚みは、通常、約4.0μmである。セルは大気圧下で毛細管の作用により充填され、非密封の状態で検討される。他に示さない限り、使用される液晶混合物にキラルドーパントは添加されないが、この型のドーピングが必要な用途においても液晶混合物は特に好適である。
【0117】
試験用セルの電気光学的特性および応答時間は、ドイツ国KarlsruheのAutronic−Melchers社製DMS301測定装置中において20℃の温度で決定される。使用されるアドレス波形は、60Hzの周波数を有する矩形波である。電圧はV
rms(二乗平均平方根)として引用される。応答時間の測定中、電圧を0Vから光学的閾値の2倍の値(2V
10)まで増加させ、元に戻す。引用される応答時間は、電圧が変化する時点から光度のそれぞれの総変化が90%となるまで、即ち、τ
on≡t(0%〜90%より大きい)までに経過する時間全体に適用され、およびτ
off≡t(100%〜10%より大きい)、即ち、それぞれの遅延時間も含む。個々の応答時間はアドレス電圧に依存するため、2つの個々の応答時間の和(Σ=τ
on+τ
off)または平均応答時間(τ
av.=(τ
on+τ
off)/2)も、結果をより良く比較できるようにするため引用される。
【0118】
電圧保持率は、メルク社で製造された試験用セル中で決定される。測定用セルはソーダ石灰ガラス基体を有し、層厚み50nmで互いに直交してラビングされたポリイミド配向層(AL−3046、日本国日本合成ゴム社製)で製造される。層厚みは均一に6.0μmである。透明ITO電極の面積は1cm
2である。
【0119】
本発明の混合物は、例えばVAN、MVA、(S)−PVAおよびASVのような全てのVA−TFT用途に適する。更に、Δεが負であるIPS(
in−
plane
switching)、FFS(
fringe
field
switching)およびPALCの用途に適する。
【0120】
本発明のディスプレイ中のネマチック液晶混合物は一般に2種類の成分AおよびBを含んでおり、これらの成分自身は1種類以上の個々の化合物より成る。
【0121】
成分Aは著しい負の誘電異方性を有しており、−0.5以下の誘電異方性のネマチック相を与える。成分Aは、好ましくは、式I、IIA、IIBおよび/またはIIIの化合物を含む。
【0122】
成分Aの割合は好ましくは45および100%の間であり、特には60および100%の間である。
【0123】
成分Aのためには、−0.8以下の値のΔεを有する1種類以上の個々の化合物を好ましくは選択する。混合物全体におけるAの割合が低いほど、Δεの値をより負としなければならない。
【0124】
成分Bは明瞭なネマトゲン性を有しており、20℃において30mm
2・s
−1以下の流動粘度を有しており、好ましくは25mm
2・s
−1以下である。
【0125】
成分B中の特に好ましい個々の化合物は非常に低い粘度のネマチック液晶で、20℃において18mm
2・s
−1以下の流動粘度を有しており、好ましくは12mm
2・s
−1以下である。
【0126】
成分Bはモノトロピックまたはエナンチオトロピックネマチックであり、スメクチック相を有さず、そして、液晶混合物において極めて低い温度までスメクチック相の発生を予防することができる。例えば、高いネマトゲン性の各種材料をスメクチック液晶混合物に加えた場合、これらの材料のネマトゲン性は、達成されたスメクチック相の抑制程度により比較できる。
【0127】
多数の好適な材料が、文献により当業者に知られている。式IIIの化合物が特に好ましい。
【0128】
加えて、これらの液晶相も18種類より多い成分を含む場合があり、好ましくは18〜25種類の成分である。
【0129】
その相は、好ましくは、式I、IIAおよび/またはIIBを含み、およびIIIも含んでよい、4〜15種類、特には5〜12種類、特に好ましくは10種類より少ない化合物を含む。
【0130】
式I、IIAおよび/またはIIBおよびIIIの化合物に加え、他の構成成分も存在してよく、例えば混合物全体の45%までの量、好ましくは35%まで、特には10%までである。
【0131】
他の構成成分は、好ましくは、ネマチックまたはネマトゲン性の物質より選択され、特には、アゾキシベンゼン類、ベンジリデンアニリン類、ビフェニル類、ターフェニル類、フェニルまたはシクロヘキシル安息香酸エステル類、フェニルまたはシクロヘキシルシクロヘキサンカルボン酸エステル類、フェニルシクロヘキサン類、シクロヘキシルビフェニル類、シクロヘキシルシクロヘキサン類、シクロヘキシルナフタレン類、1,4−ビスシクロヘキシルビフェニル類またはシクロヘキシルピリミジン類、フェニルまたはシクロヘキシルジオキサン類、ハロゲン化されていてもよいスチルベン類、ベンジルフェニルエーテル類、トラン類および置換された桂皮酸エステル類に分類される既知の物質である。
【0132】
この型の液晶相の構成成分として適する最も重要な化合物は、式IVで特徴付けることができる。
【0133】
R
9−L−G−E−R
10 IV
式中、LおよびEは、それぞれ、1,4−二置換ベンゼンおよびシクロヘキサン環、4,4’−二置換ビフェニル、フェニルシクロヘキサンおよびシクロへキシルシクロヘキサン構造、2,5−二置換ピリミジンおよび1,3−ジオキサン環、2,6−二置換ナフタレン、ジ−およびテトラヒドロナフタレン、キナゾリンおよびテトラヒドロキナゾリンから成る群より選択される炭素環構造またはヘテロ環構造である。
【0134】
Gは、−CH=CH−、−N(O)=N−、−CH=CQ−、−CH=N(O)−、−C≡C−、−CH
2−CH
2−、−CO−O−、−CH
2−O−、−CO−S−、−CH
2−S−、−CH=N−、−COO−Phe−COO−、−CF
2O−、−CF=CF−、−OCF
2−、−OCH
2−、−(CH
2)
4−、−(CH
2)
3O−またはC−C単結合であり、Qはハロゲン、好ましくは塩素、または−CNであり、そしてR
9およびR
10は、それぞれ18個までの、好ましくは8個までの炭素原子を有するアルキル、アルケニル、アルコキシ、アルカノイルオキシまたはアルコキシカルボニルオキシであり、または代わりに、これらの基の1つは、CN、NC、NO
2、NCS、CF
3、SF
5、OCF
3、F、ClまたはBrを表す。
【0135】
これらの化合物の殆どにおいて、R
9およびR
10は互いに異なっており、これらの基の1つは、通常、アルキルまたはアルコキシ基である。提案された置換基の他に変わったものもまた一般的である。このような物質またはそれらの混合物もまた、商業的に入手できる。全てのこれらの物質は、文献から知られる方法により調製することができる。
【0136】
当業者には言うまでもなく、本発明のVA、IPS、FFSまたはPALC混合物は、例えばH、N、O、ClおよびFが対応する同位体で置き換えられた化合物も含むことができる。
【0137】
本発明の液晶ディスプレイの構造は、例えばEP−A 0 240 379に記載されているような通常の構成に対応する。
【0138】
以下の例は、制限することなく、本発明を説明するものである。上および下において、パーセンテージのデータは重量パーセントである。温度はすべて摂氏で示される。
【0139】
式Iの化合物に加え、本発明の混合物は、好ましくは以下に示す1種類以上の化合物を含む。
【0140】
以下の略称を使用する(n、mおよびzは、それぞれ互いに独立に、1、2、3、4、5または6である)。
【0150】
【化29.10】
本発明で使用できる液晶混合物は、それ自体従来の方法で調製される。一般に、より少ない量で使用される成分の所望の量を、主要な組成を構成する成分中で、好ましくは加温して溶解する。例えば、アセトン、クロロホルムまたはメタノールの有機溶媒中で成分溶液を混合し、完全に混合後、例えば蒸留によって溶媒を再び除去することも可能である。
【0151】
誘電体は、例えばUV吸収剤、抗酸化剤、ナノ微粒子およびフリーラジカル補足剤のような当業者に既知で文献に記載されている更なる添加剤を含むこともできる。例えば、0〜15%の多色性色素、安定化剤またはキラルドーパントを加えることができる。
【0152】
例えば、0〜15%の多色性、さらに導電性塩、好ましくは4−ヒドロキシ安息香酸エチルジメチルドデシルアンモニウム、テトラフェニルボラン酸テトラブチルアンモニウムまたはクラウンエーテル類の錯塩(例えば、Hallerら、Mol.Cryst.Liq.Cryst.第24巻、第249〜258頁(1973年)参照)を、導電性を改良するために添加することができ、誘電異方性、粘度および/またはネマチック相の配向を改変するために物質を加えることもできる。この型の物質は、例えばDE−A 22 09 127、22 40 864、23 21 632、23 38 281、24 50 088、26 37 430および28 53 728に記載されている。
【0153】
表Aに、本発明による混合物に添加できる使用可能なドーパントを示す。混合物がドーパントを含む場合、0.01〜4重量%の量、好ましくは0.1〜1.0重量%の量で使用する。
【0155】
【表1.2】
例えば本発明の混合物に添加することができる安定剤を以下の表Bに示す。
【実施例】
【0160】
以下の例は、制限することなく、本発明を説明するものである。上および下において、
V
0は20℃における容量閾電圧(V)を表し、
Δnは20℃および589nmで測定される光学異方性を表し、
Δεは20℃および1kHzでの誘電異方性を表し、
cl.p.は透明点(℃)を表し、
K
1は20℃における「スプレイ」変形に対する弾性定数(pN)を表し、
K
3は20℃における「ベンド」変形に対する弾性定数(pN)を表し、
γ
1は20℃で測定される回転粘度(mPa・s)を表し、
LTSは試験セル中で決定される低温安定性(ネマチック相)を表す。
【0161】
閾電圧の測定用に使用されるディスプレイは20μmの間隔で離れている2枚の平行な外板と、その外板の内側上のSE−1211(日産化学製)の配向層が覆っている電極層とを有しており、液晶のホメオトロピック配向に効果がある。
【0162】
<混合物例>
<例1>
【0163】
【表3】
<例2>
【0164】
【表4】
<例3>
【0165】
【表5】
<例4>
【0166】
【表6】
<例5>
【0167】
【表7】
<例6>
【0168】
【表8】
<例7>
【0169】
【表9】
<例8>
【0170】
【表10】