(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5893857
(24)【登録日】2016年3月4日
(45)【発行日】2016年3月23日
(54)【発明の名称】スケールの目盛保護構造
(51)【国際特許分類】
G01D 5/245 20060101AFI20160310BHJP
G01D 5/347 20060101ALI20160310BHJP
【FI】
G01D5/245 110J
G01D5/347 110A
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2011-141010(P2011-141010)
(22)【出願日】2011年6月24日
(65)【公開番号】特開2013-7675(P2013-7675A)
(43)【公開日】2013年1月10日
【審査請求日】2014年5月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100080458
【弁理士】
【氏名又は名称】高矢 諭
(74)【代理人】
【識別番号】100076129
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 圭佑
(74)【代理人】
【識別番号】100089015
【弁理士】
【氏名又は名称】牧野 剛博
(72)【発明者】
【氏名】川田 洋明
【審査官】
吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭61−6681(JP,A)
【文献】
特開昭58−75023(JP,A)
【文献】
特開2005−214969(JP,A)
【文献】
特開平3−140823(JP,A)
【文献】
特開2007−232509(JP,A)
【文献】
特開2008−249646(JP,A)
【文献】
特開2000−30857(JP,A)
【文献】
特開2008−292406(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00−5/38
G01B 5/00−5/30
H05B 33/00−33/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スケール基板上に形成された目盛部が、その上面側に配されたスケールカバーで保護されたスケールの目盛保護構造において、
前記目盛部の上面側と前記スケールカバーの間に、粉末材料を含まない接着剤のみで上部接着層が形成され、
前記スケール基板と前記スケールカバーの間の前記目盛部の側方全周囲が、前記上部接着層とは異なる、目盛劣化成分の浸透を阻害する粉末材料が混合された接着剤で構成される周囲接着層により封止されていることを特徴とするスケールの目盛保護構造。
【請求項2】
前記粉末材料が、スケール基板と同種のガラスであることを特徴とする請求項1に記載のスケールの目盛保護構造。
【請求項3】
前記上部接着層が、前記粉末材料を含まない接着剤のみで構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のスケールの目盛保護構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スケールの目盛保護構造に係り、特にリニアエンコーダ、円弧エンコーダ及びロータリーエンコーダ等に用いられるスケールの経時的劣化を防止する際に適用して好適なスケールの目盛保護構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばリニアエンコーダは、
図1にその概要を示すように、スケール10と、これに対向配置された検出器20とを備えており、該スケール10を両矢印で示す測定方向に移動させることによりスケール10と検出器20の相対変位を検出している。
【0003】
このようなエンコーダを構成する従来のスケール10は、ガラス製のスケール基板12の一主面に成膜技術により目盛部14がパターン形成されている。
【0004】
このように、主にガラスでできたスケール10に検出器20を対面させて使用するエンコーダには、スケール10上の目盛部14をキズや汚れから保護するために、図示されているようにカバーガラス16を、該スケール10に接着して一体化したものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−318137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記のようにカバーガラス16をスケール10に接着して一体化させるために、該スケール10を
図2に模式的に示すように、目盛部14の上面部とカバーガラス16との間に上部接着層18を介在させる場合には、通常の接着剤が主にアクリル製やエポキシ製であるため、周辺の大気中から水分やガス分等の目盛劣化成分を吸収しやすいことから、目盛部14が経時的に劣化することになる。特に、目盛部14が金属で形成されている場合にはその表面が曇るためにコントラストが低くなり、感光材で形成されている場合にはその性質が変化することから、いずれの場合も検出精度が低下する可能性がある。
【0007】
この問題は、図示されているように、目盛部14の上面部とカバーガラス16との間の上部接着層18だけでなく、目盛部14の側方全周囲のスケール基板12とカバーガラス16との間を、例えば同種の接着剤からなる周囲接着層18Aで封止する構造にしたとしても、同様に存在する。
【0008】
なお、特許文献1には、基板上にパターン形成したスケール電極(目盛部)の上にコーティング層を形成することにより、有害なクーラントや油等がスケール電極側へ浸入することを防止する技術が開示されているが、このスケール構造でも接着剤を使用しているため、同様の問題が存在する。
【0009】
本発明は、前記従来の問題点を解決するべくなされたもので、スケール基板上に形成された目盛部が、その上面側に配されたスケールカバーで保護されたスケールの目盛保護構造において、目盛部が水分等の目盛劣化成分により経時的に劣化することを抑制することができるスケールの目盛保護構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、スケール基板上に形成された目盛部が、その上面側に配されたスケールカバーで保護されたスケールの目盛保護構造において、前記目盛部の上面側と前記スケールカバーの間に
、粉末材料を含まない接着剤のみで上部接着層を形成
し、前記スケール基板と前記スケールカバーの間の前記目盛部の側方全周囲を、前記上部接着層とは異なる、目盛劣化成分の浸透を阻害する粉末材料が混合された接着剤で構成される周囲接着層により封止
することにより、前記課題を解決したものである。
【0011】
ここで、前記粉末材料を、
スケール基板と同種のガラ
スとすることができる。
又、前記上部接着層を、前記粉末材料を含まない接着剤のみで構成することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、
目盛部の上面側とスケールカバーの間に上部接着層を形成した後、スケール基板と、その上の目盛部の上面側に配設されたスケールカバーとの間であって、前記目盛部の側方全周囲を、
前記上部接着層とは異なる、水分等の目盛劣化成分の浸透を阻害する粉末材料が混合された接着剤で
構成される周囲接着層により封止するようにしたので、前記目盛部に目盛劣化成分が浸透することを確実に阻害できることから、該目盛部の経時的な劣化を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】従来のエンコーダに使用されるスケール構造を模式的に示す横断面図
【
図3】本発明に係る一実施形態のスケール構造を模式的に示す横断面図
【
図4】前記実施形態のスケール構造を模式的に示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0015】
図3は、本発明に係る一実施形態のスケール構造を模式的に示す横断面図であり、
図4に示すその平面図におけるA−A断面図に相当する。
【0016】
本実施形態のスケール10は、前記
図2に示した従来のものと同様に、ガラス製のスケール基板12上にスパッタリングやめっき等の通常の成膜技術によりパターン形成された目盛部14と、該目盛部14を保護するためにその上面(表面)側に配設されたカバーガラス(スケールカバー)16とを備えており、これら目盛部14及びカバーガラス16は、該目盛部14の上面部周囲(検出使用領域の外側)に付された上部接着層18を介して接合されている。なお、
図4に示される破線は上部接着層18の境界を表している。
【0017】
本実施形態においては、前記スケール基板12と前記カバーガラス16の間の前記目盛部14の側方全周囲を、予め形成した前記上部接着層18とは異なる目盛劣化成分の浸透を阻害する機能を有する周囲接着層30により封止してある。
【0018】
この周囲接着層30は、従来と同様のアクリル製やエポキシ製等の接着剤に、使用環境周辺に存在する水分やガス分等の目盛劣化成分の浸透を阻害する粉末材料としてガラス粉末32が混合された接着剤を、前記目盛部14の側方全周囲のスケール基板12とカバーガラス16の間の空間にディスペンサを使って充填することにより、該空間位置を隙間なく封止して形成したものである。
【0019】
ここで使用するガラス粉末としては、スケール基板12と同種のガラスとすることが温度履歴に悪影響を与えないようにするためには好ましいが、これに限定されず、セラミックや金属の粉末であってもよく、同様の機能を有していれば透明や不透明のプラスチック粉末でもよい。粉末材料が不透明の場合は、接着剤が透明であっても外乱光の侵入を抑制することができる。又、その形状も、図示されているような球形に限らず、ランダムに砕いた不定形であってもよい。更に、適切な粒径としては、目盛部の厚さにより異なるが、例えば数nm〜数μmを挙げることができる。
【0020】
本実施形態のスケール10の具体例としては、スケール基板12の厚さが0.8〜10mmであるものを挙げることができる。また、適用するエンコーダの特性により異なるが、目盛部14の厚さは100nm〜30μm、カバーガラス16の厚さは0.2〜0.5mmであるものを挙げることができる。
【0021】
以上詳述した本実施形態によれば、目盛部14の上面(表面)部とカバーガラス16の間には従来と同様の接着剤のみで予め上部接着層18を形成し、その後水分等の目盛劣化成分を吸収する可能性が高い目盛部14の周辺部(側方全周囲)に、ガラス粉末32を混ぜ合わせた周囲接着層30を配置して封止するようにしたので、該ガラス粉末32により周辺の水分等を吸収しにくくできるため、目盛部14の経時的な劣化を大幅に低減することができる。なお、目盛部14に形成した上部接着層18は、前記のように上面部の周囲のみに限らず、必要に応じて全面に形成してもよい。
【0022】
特に、近年、高精度が要求される回折格子では、高アスペクト比を確保できるように目盛部14が、例えば700〜800nmの高さに形成され、従って接着層も厚くなっているため、このようなスケールに本発明を適用する場合には極めて有効である。
【0023】
なお、前記実施形態では、目盛部14が直線的な移動を検出するリニアエンコーダ用のスケールを例に説明したが、これに限定されず、円弧上の移動を検出する円弧エンコーダ用、回転の移動を検出するロータリーエンコーダ用のいずれの目盛部が形成されているスケールであってもよい。また、光透過型の光電式スケールのみではなく、反射型であってもよく、更には静電容量式や磁気式、電磁誘導式などの各種スケールにも適用できることはいうまでもない。
【0024】
従って、スケール基板12は、ガラス製に限定されず、樹脂製であってもよく、反射型の場合には金属製であってもよい。
【0025】
又、スケールカバーも前記カバーガラスに限らず、樹脂シート(フィルム)であってもよい。
【符号の説明】
【0026】
10…スケール
12…スケール基板
14…目盛部
16…カバーガラス(スケールカバー)
18…上部接着層
18A、30…周囲接着層
20…検出器
32…ガラス粉末(粉末材料)