(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記端末装置から受信するウエイトチャネル情報は、前記端末装置側で推定したウエイトチャネル行列のうちフィードバックを要求された所定の数のベクトルで表される情報であり、
前記トレーニングウエイト生成回路は、
前記所定の数の変更を前記端末装置に要求する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の送信装置。
【背景技術】
【0002】
近年、2.4GHz帯または5GHz帯を用いた高速無線アクセスシステムとして、IEEE802.11g規格、IEEE802.11a規格などの普及が目覚しい。これらのシステムでは、マルチパスフェージング環境での特性を安定化させるための技術である直交周波数分割多重(OFDM: Orthogonal Frequency Division Multiplexing)変調方式を用い、最大で54Mbpsの物理層伝送速度を実現している。
これらのシステムでの伝送速度とは物理レイヤ上での伝送速度であり、実際にはMAC(Medium Access Control)レイヤでの伝送効率が50〜70%程度であるため、実際のスループットの上限値は30Mbps程度であり、情報を必要とする通信相手が増えればこの特性は更に低下する。一方、有線LANの世界ではEthernet(登録商標)の100Base−Tインタフェースをはじめ、各家庭にも光ファイバを用いたFTTH(Fiber to the home)の普及から、100Mbpsの高速回線の提供が普及しており、無線LANの世界においても更なる伝送速度の高速化が求められている。
高速化の技術として、IEEE802.11nにおいて空間多重送信技術としてMIMO(Multiple input multiple output)技術が導入され、オプションで4素子のアンテナ数までサポートされた。さらに、IEEE802.11acでは、マルチユーザMIMO(MU(Multi User)−MIMO)通信方法が検討され、サポートするアンテナ素子数は8素子まで増やされている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
例えば、この技術を用いたシステムの一例として、
図6に示すような無線通信システムがある。
図6に示す無線通信システムは、基地局装置1aと端末装置2a−1〜2a−iを備える。基地局装置1aは、N本の送受信アンテナ1a−4−1〜1a−4−Nを有しており、各端末装置2a−i(i=1〜K)は、それぞれM
i本の送受信アンテナ2a−i−1−1〜2a−i−1−M
iを有している。ここで、M
iは、i番目の端末装置の送受信アンテナ数であり、1≦i≦Kである。Kは、端末装置の数である。
【0004】
基地局装置1aから端末装置2a−iへの送信処理について説明する。まず、最初に基地局装置1aは、通信を行う対象となる各端末装置2a−iを送信方法選択回路1a−7により決定する。通信を行う対象は、データ選択出力回路から得られるデータを送る相手となる端末装置の情報、送信を行うデータの種類や優先度、端末装置に対する信号対雑音電力比の情報、などから決定することができる。基地局装置1aは、データの送信を行う前に、各端末装置2a−iの送受信アンテナ2a−i−1−1〜2a−i−1−M
iとの間の伝搬環境の情報を示すチャネル情報を収集する。送信信号生成回路1a−2は、各端末装置2a−iの送受信アンテナとの間のチャネル情報を推定するためトレーニングシンボルを生成し、生成したトレーニングシンボルにガードインターバルや制御信号の付加を行い信号を生成する。無線信号送受信回路1a−3は、生成された信号を搬送波周波数へアップコンバートして送受信アンテナ1a−4−1〜1a−4−Nを介して送信を行う。
【0005】
端末装置2a−iの無線信号送受信回路2a−i−2は、基地局装置1aが送信した信号を送受信アンテナ2a−i−1−1〜2a−i−1−M
iを介して受信する。受信信号復調回路2a−i−3は、無線信号送受信回路2a−i−2が受信した信号に対して同期、復調を行う。チャネル推定回路2a−i−4は、復調された信号に対してチャネル推定を行い、チャネル推定したチャネル情報を送信信号生成回路2a−i−5に出力する。送信信号生成回路2a−i−5は、チャネル情報を含めた送信信号を生成し、予め定められたタイミングで、無線信号送受信回路2a−i−2に出力する。無線信号送受信回路2a−i−2は、送信信号生成回路2a−i−5が出力したチャネル情報を含む送信信号を送受信アンテナ2a−i−1−1〜2a−i−1−M
iの少なくとも1つを介して送信する。 なお、チャネル推定回路2a−i−4は、送信信号生成回路2a−i−5に対してチャネル情報を出力するのではなく、チャネル情報を圧縮するなどの処理をして生成したチャネル関連情報を出力するようにしてもよい。
【0006】
基地局装置1aの無線信号送受信回路1a−3は、送受信アンテナ1a−4−1〜1a−4−Nのうち少なくとも1つを介して端末装置2a−iから送信された信号を受信する。無線信号送受信回路1a−3は、受信した信号をダウンコンバートしデジタルデータに変換し、受信信号復調回路1a−5に出力する。受信信号復調回路1a−5は、受信信号を復調するとともに、受信信号に含まれるチャネル情報またはチャネル関連情報を読み出し、チャネル情報記憶回路1a−6に書き込んで記憶させる。
【0007】
次に、基地局装置1aのデータ選択出力回路1a−1は、通信相手となる端末装置2a−iのチャネル情報がチャネル情報記憶回路1a−6に記憶されると、データを送信するため、選択した通信相手となる端末装置2a−iの情報を送信方法選択回路1a−7に出力し、送信するデータを送信信号生成回路1a−2に出力する。送信方法選択回路1a−7は、チャネル情報記憶回路1a−6に記憶されたチャネル情報から送信ウエイトを算出し、空間ストリーム数、変調方式、符号化率からなる送信モードと算出した送信ウエイトを送信信号生成回路1a−2に出力する。送信信号生成回路1a−2は、通信を行う端末装置2a−iに送信する送信信号に対して、出力された送信モードに従って変調、及び符号化を行い、送信ウエイトを乗算し、信号検出や通信情報伝達に用いるパイロット信号を挿入して無線信号送受信回路1a−3に出力する。無線信号送受信回路1a−3は、送信信号生成回路1a−2が出力した信号を搬送波周波数にアップコンバートし、送受信アンテナ1a−4−1〜1a−4−Nを介して送信する。
【0008】
データ選択出力回路1a−1において通信相手を選択する手法としては、送信を行うデータがメモリに記憶されており、その中から送信を行う準備ができている端末装置2a−iを選択する手法や、記憶されている複数のデータのうち最も古いデータに対応する端末装置2a−iから選択する手法がある。また、端末装置2a−iを利用するユーザに割り当てられているQoS(Quality of service)に基づいて選択したり、予めグループIDで決められたユーザに対応する端末装置2a−iの組み合わせを選択したり、チャネル情報の相関が低い端末装置2−iの組み合わせを選択したりする手法もある。
【0009】
上記の通信手順は、基地局装置1aと複数の端末装置2a−iとの間の全体的な送信処理の流れであり、以下、空間多重方式を用いて通信を行う一例として、ブロック直交化(BD:Block Diagonalization)指向性制御法を用いた例について説明する(例えば、非特許文献2、3参照)。
基地局装置1aは、端末装置2a−1〜2a−Kの送受信アンテナに対するチャネル情報を取得するため、送信信号生成回路1a−2が、チャネル推定用のトレーニングシンボルを生成する。
図7は、トレーニングシンボルの構成例を示した図である。
図7の四角いブロックLT(1,1)〜LT(N,N)は、チャネル推定のためのOFDMシンボルを表しており、ガードインターバル(GI:Guard Interval)が付与されたものとなっている。LT(j,k)は、トレーニングシンボルブロックのうち、k番目のタイミングにおいてj番目の送受信アンテナ1a−4−jから送信されるOFDMシンボルに対応する。LT(j,k)の生成は、周波数チャネルにおける既知信号s
1〜s
Fを逆フーリエ変換してGIを付与することによって行われる。LT(1,1)〜LT(N,N)のn番目の周波数チャネルの送信信号x
j,k,nからなる送信信号行列X
nは、以下の式(1)として表される。
【0010】
【数1】
【0011】
式(1)において、x
j,k,nは、LT(j,k)のn番目の周波数チャネルに対応する送信信号を表し、行列Aは、トレーニングシンボル用の符号行列であり送信側と受信側の両側で既知の行列が用いられる。行列Aとして、単位行列Iを用いれば、各送受信アンテナからそれぞれ異なるタイミングで、s
nを送信することができる。また、行列AとしてA
HA=Iとなるような直交行列を用いることもできる。
端末装置2a−iが、基地局装置1aからの信号を受信すると、受信信号復調回路2a−i−3は、受信信号に対し同期を行う。チャネル推定回路2a−i−4は、LT(1,1)〜LT(N,N)に対応する受信信号から、チャネル情報である基地局装置1aと端末装置2a−iの送受信アンテナ間の伝搬係数からなるチャネル行列を推定して送信信号生成回路2a−i−5に出力する。j番目のトレーニングシンボルに対応する受信信号において、送受信アンテナ2a−i−1−1〜2a−i−1−M
iで受信されたn番目の周波数チャネルに対応する受信信号y
1,j,i,n〜y
Mi,j,i,n からなる受信信号ベクトルy
j,i,nは、以下の式(2)として表される。
【0012】
【数2】
【0013】
式(2)において、行列H
i,nは、端末装置2a−iのn番目の周波数チャネルに対するチャネル情報を表すチャネル行列(M
i×N行列)である。チャネル行列H
i,nのp列q行目の要素は、基地局装置1aのp番目の送信アンテナ(送受信アンテナ1a−4−p)から、端末装置2a−iのq番目の受信アンテナ(送受信アンテナ2a−i―1−q)間の伝搬係数を表す。ベクトルn
j,i,nは、j番目のトレーニングシンボルの受信タイミングで、送受信アンテナ2a−i−1−1〜2a−i−1−M
iが受信した端末装置2a−iのn番目の周波数チャネルにおける熱雑音ベクトルを表す。したがって、端末装置2a−iの第nの周波数チャネルにおける1〜N番目のトレーニングシンボルに対応する受信信号行列Y
i,nは、以下の式(3)として表すことができる。
【0014】
【数3】
【0015】
式(3)において、行列N
i,nは、端末装置2a−iのn番目の周波数チャネルおいて、送受信アンテナ2a−i−1−1〜2a−i−1−M
iが1〜N番目の受信タイミングで受信した信号に対する熱雑音行列を表す。端末装置2a−iにおいて、行列Aとs
nは既知であるため、X
nは既知である。したがって、チャネル行列H’
i,nは、受信信号行列Y
i,nから、以下の式(4)によって求められる。
【0016】
【数4】
【0017】
端末装置2a−iは、式(4)によって算出されたチャネル行列H’
i,nをそのまま基地局装置1aへのフィードバック情報とすることもできるし、行列H’
i,nの中からL
i個の行ベクトルを選択してフィードバックすることもできる。また、行列H’
i,nに対して特異値分解を行って式(5)のように表し、信号空間に対応する右特異行列V
(s)i,n(N×M
i行列)のうちL
i個の列ベクトルを選択してフィードバックすることもできる。
【0018】
【数5】
【0019】
式(5)において、行列U
i,nは、左特異行列である。行列Σ
i,nは、特異値を対角要素とし、非対角項が0のM
i×Nの対角行列である。行列V
(n)i,n(N×(N−M
i)行列)は、右特異行列のうち特異値に対応しないベクトルの集まりを表す。上記の説明では、基地局装置1aの送受信アンテナ数Nが、端末装置2a−iの送受信アンテナ数M
iより多いことを前提としていた。これに対して、端末装置2a−iの送受信アンテナ数M
iの方がNよりも多い場合には、右特異行列V
(s)i,n(N×N行列)の列ベクトルの全てが特異値と対応するため右特異行列V
(s)i,nのうちL
i個の列ベクトルを選択してフィードバックすることができる。また、H’
i,nのエルミート行列の行ベクトルにグラムシュミットの直交化法を用いて得られる基底ベクトルのうち、L
i個の列ベクトルを選択してフィードバックしてもよい。また、直交化法による基底ベクトルは、式(6)のようにQR分解によっても得ることができる。
【0020】
【数6】
【0021】
式(6)により得られた直交行列(Q
(s)i,n Q
(n)i,n)のうちM
i×M
iの三角行列R
i,nに対応するQ
(s)i,nのうちL
i個の列ベクトルをフィードバックするようにしてもよい。
【0022】
上記において、L
iは、基地局装置1aが、端末装置2a−iにフィードバックを要求するチャネルの次元であり、実際に基地局装置1aが端末装置2a−iに送信を行う空間ストリーム数L’
iはL
i以下に設定される。行列Q
(s)i,nや行列V
(s)i,nは、ユニタリ行列の一部となっており、以下、チャネル情報から得られるこれらの行列を信号空間行列G
i,n、または信号空間情報と定義する。
【0023】
端末装置2a−1〜2a−Kの送信信号生成回路2a−1−5〜2a−K−5は、信号空間行列G
i,nの情報を含んだ送信信号を生成する。無線信号送受信回路2a−1−2〜2a−K−2が、生成された送信信号を無線信号送受信回路2a−1−2〜2a−K−2を介して基地局装置1aに送信する。このとき空間相関や周波数相関やユニタリ行列の特徴等を用いて再生可能な形にL
i個のベクトルを圧縮することもできる。
基地局装置1aの無線信号送受信回路1a−3は、送受信アンテナ1a−4−1〜1a−4−Nを介して端末装置2a−1〜2a−Kからの信号を受信し、受信信号復調回路1a−5は、受信した信号からそれぞれチャネル情報、もしくはチャネル情報から算出された信号空間情報を読み出してチャネル情報記憶回路1a−6に書き込んで記憶させる。
【0024】
基地局装置1aにおいて、端末装置2a−1〜2a−Kに対して送信を行う際には、送信方法選択回路1a−7が、フィードバックされたL
i個のベクトルの情報をチャネル情報記憶回路1a−6から読み出す。端末装置2a−iに対して、第n番目の周波数チャネルに対応して得られたL
i個のベクトルからなるN×L
iの行列をG
i,nと定義する。行列G
i,nは、推定したチャネル行列のうちのL
i個の行ベクトルの複素共役転置行列でもよい。また、行列G
i,nは、L
i個のデータストリームに対する受信ウエイト行列α
i,nを端末装置2a−iにおいて予め定義して式(7)としてもよい。
【0025】
【数7】
【0026】
また、行列G
i,nは、特異値分解により得られた右特異行列V
(s)i,nやQR分解により得られたQ
(s)により、式(8)、式(9)とすることもできる。
【0027】
【数8】
【0028】
【数9】
【0029】
式(8)、(9)において、[A]
Lは、N×M行列AからL個の列ベクトルを選択してN×Lの行列を得る関数である。端末装置2a−iにおける受信ウエイト行列α
i,nとしては、H’
i,nをQR分解して得られるM
i×M
iのユニタリ行列のうち、対応する三角行列の対角成分が大きいものからL
i個のベクトルをM
i×M
iのユニタリ行列の中から選択して得られるM
i×L
iの行列にエルミート共役をとることで得られるL
i×M
iの行列を用いたり、H’
i,nに対し特異値分解で得られる左特異行列のうち、大きい特異値に対応するL
i個のベクトルを選択し得られるM
i×L
i行列に対し、エルミート共役をとることで得られるL
i×M
iの行列などを用いることができる。
【0030】
次に、マルチユーザMIMOの通信方法の例として、BD法による送信ウエイトを算出する手法について説明する。ここで、Kユーザ(端末装置2a−1〜2a−K)に対し、通信を行うことを考える。i番目の端末装置2a−iに対する送信ウエイトの算出方法を示す。まず、端末装置2a−i以外の端末装置に対応する集合信号空間行列G
+i,nを、式(10)として定義する。
【0031】
【数10】
【0032】
このG
+i,jに対し、特異値分解を行うと、式(11)として表される。
【0033】
【数11】
【0034】
式(11)において、行列V
(s)+i,nは、固有値Σ
+i,nに対応する信号空間ベクトルであり、行列V
(n)+i,nは、固有値がない、または固有値0に対応するヌル空間ベクトルである。ここで、行列V
(n)+i,nで表せるヌル空間に対して送信を行うと、端末装置2a−i以外の端末装置の受信ウエイトに対して干渉を生じない。したがって、複数の端末装置に空間多重方式を用いて通信するには、n番目の周波数チャネルに用いる送信ウエイトとして、ここで得られたV
(n)+i,nに線形演算を行って得られる値を用いればよいことになる。
例えば、端末装置2a−iに対応する信号空間行列G
i,nのエルミート行列G
i,nHに、行列V
(n)+i,nを乗算してG
i,nHV
(n)+i,nを得る。得られたG
i,nHV
(n)+i,nの行ベクトルに対して直交化法を用いて得られる基底ベクトルのエルミート行列をV
(n)+i,nに乗算することにより得られる値を送信ウエイトとすることができる。また、得られたG
i,nHV
(n)+i,nに特異値分解を行って得られる右特異ベクトルをV
(n)+i,nに乗算することにより得られる値を送信ウエイトとすることもできる。G
i,nHV
(n)+i,nから得られた行列をD
i,nとすると、送信ウエイトW
i,nは、[V
(n)+i,nD
i,n]
L’iとして表される。
【0035】
以上、BD法に基づくMU−MIMO送信法について説明したが、Zero Forcing法や、MMSE(Minimum Mean Square Error)法、Successive optimization法、Tomlinson Harashima Precoding、Dirty paper codingなどを用いて送信ウエイトW
i,nを演算することもできる。
また、ユーザ数が1(K=1)の場合には、信号空間行列G
i,nを送信ウエイトとして用いることができ、また信号空間行列G
i,nの右特異行列を送信ウエイトとして用いることもできる。
【0036】
このように各端末装置2a−iに対してそれぞれ送信ウエイトを算出することができ、得られた端末装置2a−1〜2a−Kに対するn番目の周波数チャネルに対する送信ウエイトW
nは、式(12)として表される。
【0037】
【数12】
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下、本発明の一実施形態による無線通信システムおよび基地局装置1について図面を参照して説明する。
図1に本発明の一実施形態による無線通信システムを表す概略ブロック図を示す。
図1において、無線通信システムは、指向性制御によるビームを前提としたシステムであり、基地局装置1と、複数の端末装置2−1〜2−i〜2−Kを備える。ここで、Kは、端末装置の数であり、1≦i≦Kである。基地局装置1は、N本の送受信アンテナ1−4−1〜1−4−N、データ選択出力回路1−1、送信信号生成回路1−2、無線信号送受信回路1−3、受信信号復調回路1−5、ウエイトチャネル情報記憶回路1−6、送信方法選択回路1−7、及びトレーニングウエイト生成回路1−8を備える。各端末装置2−iは、それぞれM
i本の送受信アンテナ2−i−1−1〜2−i−1−M
i、無線信号送受信回路2−i−2、受信信号復調回路2−i−3、チャネル推定回路2−i−4、及び送信信号生成回路2−i−5を備える。ここで、M
iはi番目の端末装置の送受信アンテナ数である。なお、端末装置2−iと記載した場合は、いずれか1つの端末装置を代表して表す場合と、各々の端末装置を表す場合があり、端末装置が備える各機能ブロックについても同様とする。
【0053】
基地局装置1から端末装置2−iへの送信処理について説明する。基地局装置1はデータの送信を行う前に、各端末装置2−iのアンテナとの間の伝搬環境の情報を示すチャネル情報を収集する。本実施形態の基地局装置1では、チャネル情報を収集するためのトレーニングシンボルに重みづけをするトレーニングウエイトを用いて、新たなトレーニングシンボルを生成する。トレーニングウエイト生成回路1−8は、ランダムウエイトから選択してトレーニングウエイトを生成する。また、トレーニングウエイト生成回路1−8は、各端末装置2−iのウエイトチャネル情報と、ランダムウエイトと、既に生成したトレーニングウエイトに基づいて新たなトレーニングウエイトを生成してトレーニングウエイトの更新を行う。ランダムウエイト及び生成されたトレーニングウエイトは、トレーニングウエイト生成回路1−8が内部に備える記憶領域に記憶される。ウエイトチャネル情報記憶回路1−6は、各端末装置2−iのウエイトチャネル情報を記憶する。
【0054】
送信信号生成回路1−2は、トレーニングウエイト生成回路1−8から供給されたトレーニングウエイトを用いて、各端末装置2−iのアンテナとの間のチャネル情報を推定するための、トレーニングウエイトを用いたトレーニングシンボル(以下、ウエイトトレーニングシンボルという)を生成する。送信信号生成回路1−2は、ウエイトトレーニングシンボルに対し、ガードインターバルや、制御信号の付加を行い信号を生成する。無線信号送受信回路1−3は、送信信号生成回路1−2が生成した信号を搬送波周波数へアップコンバートし、送受信アンテナ1−4−1〜1−4−Nを介して送信を行う。
【0055】
各端末装置2−iの無線信号送受信回路2−i−2は、基地局装置1が送信した信号を送受信アンテナ2−i−1−M
iを介して受信する。受信信号復調回路2−i−3は、無線信号送受信回路2−i−2が受信した信号に対して同期、復調を行う。チャネル推定回路2−i−4は、復調された信号に対してチャネル推定を行い、トレーニングウエイト込みの信号に対するチャネル情報(以下、ウエイトチャネル情報という)、を、送信信号生成回路2−i−5へ出力する。送信信号生成回路2−i−5は、ウエイトチャネル情報を含めた送信信号を生成し、予め定められたタイミングで、無線信号送受信回路2−i−2へ出力する。無線信号送受信回路は、送信信号生成回路2−i−5が出力したウエイトチャネル情報を含む信号を送受信アンテナ2−i−1−1〜2−i−1−M
iの少なくとも1つを介して送信する。なお、チャネル推定回路2−i−4は、送信信号生成回路2−i−5に対して推定したウエイトチャネル情報をそのまま出力するのではなく、圧縮するなどの処理をして生成した情報をウエイトチャネル情報として出力するようにしてもよい。
【0056】
基地局装置1の無線信号送受信回路1−3は、送受信アンテナ1−4−1〜1−4−Nのうち少なくとも一つを介して端末装置2−iから送信された信号を受信する。無線信号送受信回路1−3は、受信した信号をダウンコンバートしデジタルデータに変換し、受信信号復調回路1−5へ出力する。受信信号復調回路1−5は、受信信号を復調するとともに、受信信号に含まれるウエイトチャネル情報を抽出し、ウエイトチャネル情報記憶回路1−6に書き込んで記憶させる。
【0057】
基地局装置1のデータ選択出力回路1−1は、通信相手となる端末装置2−iのウエイトチャネル情報がウエイトチャネル情報記憶回路1−6に記憶されると、選択した通信相手となる端末装置2−iの情報を送信方法選択回路1−7に出力し、送信するデータを送信信号生成回路1−2に出力する。送信方法選択回路1−7は、ウエイトチャネル情報記憶回路1−6に記憶されたウエイトチャネル情報と、トレーニングウエイト生成回路1−8の内部の記憶領域に記憶されているトレーニングウエイトから、送信ウエイトを算出し、空間ストリーム数、変調方式、符号化率からなる送信モードと算出した送信ウエイトを送信信号生成回路1−2に出力する。送信信号生成回路1−2は、通信を行う端末装置2−iに対し、送信信号に対して送信方法選択回路1−7から出力された送信モードに従い変調・符号化を行い、送信ウエイトを乗算し、信号検出や通信情報伝達に用いるパイロット信号を挿入し、無線信号送受信回路1−3へ出力する。無線信号送受信回路1−3は、送信信号生成回路1−2が出力した信号を搬送波周波数にアップコンバートし、送受信アンテナ1−4−1〜1−4−Nを介して送信する。
【0058】
データ選択出力回路1−1において通信相手となる端末装置2−iを選択する手法としては、送信を行うデータがメモリに記憶されており、その中から送信を行う準備ができている端末装置2−iを選択する手法や、記憶されている複数のデータのうち最も古いデータに対応する端末装置2−iから選択する手法がある。また、端末装置2−iを利用するユーザに割り当てられているQoS(Quality of service)に基づいて選択したり、予めグループIDで決められたユーザに対応する端末装置2−iの組み合わせを選択したり、チャネル情報の相関が低い端末装置2−iの組み合わせを選択したりする手法もある。
【0059】
次に、
図2を参照しつつトレーニングウエイト生成回路1−8におけるトレーニングウエイトの生成処理の流れについて説明する。まず、最初に基地局装置1は、通信を行う対象となる各端末装置2−iを送信方法選択回路1−7により決定する。通信を行う対象は、データ選択出力回路から得られるデータを送る相手となる端末装置の情報、送信を行うデータの種類や優先度、端末装置に対する信号対雑音電力比の情報、などから決定することができる。基地局装置1は、各端末装置2−iのアンテナとの間の伝搬環境の情報を示すチャネル情報を収集する。通信相手となる端末装置が決定されると、送信信号生成回路1−2は、トレーニングウエイト生成回路1−8にトレーニングウエイトを要求する(ステップS101)。トレーニングウエイト生成回路1−8は、送信信号生成回路1−2からの要求を受けると、ウエイトチャネル情報記憶回路1−6に端末装置2−iのウエイトチャネル情報が記憶されていない場合、またはウエイトチャネル情報が、予め定めた時間T
fよりも古い情報である場合、内部の記憶領域に記憶しているランダムウエイトW
R,nのみを用いてトレーニングウエイトとし、更新回数vに1(v=1)を設定する(ステップS102)。
【0060】
ランダムウエイトW
R,nは、n番目の周波数チャネルに対するランダムウエイトであり、初期値としては、全て同じW
Rとして設定しておくこともできる(W
R,1=W
R,2=・・・=W
R,F=W
R)。また、各周波数チャネルにおけるランダムウエイトは後述するように通信により更新されるため、全周波数チャネルに対し共通に用いることのできる共通ランダムウエイトW
Rを各周波数チャネルに記憶するランダムウエイトW
R,nとは別に記憶しておくこともできる。各周波数チャネルのランダムウエイトW
R,nとしては、通信相手となる当該端末装置の組み合わせが新たに決まった時点で、W
Rに初期化してもよいし、または、前回の通信終了時に記憶していた各周波数チャネルに対するW
R,nをそのまま用いることもできる。ランダムウエイトW
R,nは、N×Nのユニタリ行列であり、対角要素1、非対角要素0とした行列、N×Nのウォルシュの直交符号行列を用いることができる。また、N×Nのフーリエ変換、逆フーリエ変換行列を用いてもよく、またランダム行列に対してQR分解や特異値分解を適用することにより得られたユニタリ行列を用いるようにしてもよい。端末装置2−iのウエイトチャネル情報がない場合には、n番目の周波数チャネルのトレーニングウエイトW’
nは、式(13)として表される。
【0062】
式(13)において、関数[A]
a,b は、行列Aのa番目の列行列からb番目の列行列まで(b−a)+1の列ベクトルを選択する関数である。L
Aは、トレーニング信号の数であり、式(14)として表すことができる。
【0064】
式(14)において、L
iはi番目の端末装置2−iに対してチャネル情報を推定する空間多重数であり、後述するように、端末装置2−iが基地局装置1にフィードバックするチャネルの次元である。端末装置2−iに対するフィードバックの要求は、例えば、基地局装置1の送信方法選択回路1−7が、端末装置との通信環境(信号対雑音費、送信ビット数、伝送品質、スループット、データの種類、優先度、バッファに残るデータビット数)からL
iを決定し、各端末装置2−iに対して送信することになる。L
iは端末装置2−iの受信アンテナ数M
iとすることで最大のチャネル情報量を得る。通信環境に応じ、L
iをM
iより少ない数とすることもできる。また、端末装置側において、基地局装置1に指定されたL
i個のベクトルをフィードバックできず、(L
i−γ)個のベクトルをフィードバックした場合には、以降の通信においてL
i=L
i−γとして、チャネル推定を行うこともできる。このようにして、端末装置2−iがL
iを間接的に決定することもできる。L
0は、付加トレーニングウエイトに含まれる列ベクトルの数である。L
iは各端末装置に対してデータを送信する際の空間多重数と同数、またはそれより多い数に設定できる。式(14)において、L
Aを小さく設定するほど、MACサブレイヤにおける伝送効率の低下を小さくすることができ、またフィードバック量を小さくすることができる一方、スループットの収束時間は長くなる。
トレーニングウエイトは、逐次的に更新されるため、v回目の更新で得られるトレーニングウエイトをW’
n(v)と定義する。したがって、式(13)によって生成されたトレーニングウエイトはv=1ととらえることができ、式(15)のように表すことができる。
【0066】
このようにして、トレーニングウエイト生成回路1−8は、更新回数v=1においてランダムウエイトからL
A個を選択してトレーニングウエイトとし、送信信号生成回路1−2に出力する(ステップS103)。送信信号生成回路1−2は、トレーニングウエイト生成回路1−8が出力したトレーニングウエイトを用いてウエイトチャネル推定用のウエイトトレーニングシンボルを生成して各端末装置2−iに送信する(ステップS104)。
【0067】
図3にトレーニングシンボルの構成例を示す。
図3の四角いブロックWLT(1,1)〜WLT(N,L
A)は、チャネル推定のためのOFDMシンボルを表しており、ガードインターバル(GI)が付与されたものとなっている。WLT(j,k)は、ウエイトトレーニングシンボルブロックのうち、k番目のタイミングにおいてj番目のアンテナから送信されるOFDMシンボルに対応する。WLT(j,k)の生成は、周波数チャネルにおける既知信号s
1〜s
FとトレーニングウエイトW’
1 〜 W’
Fに基づく信号に逆フーリエ変換を行い、GIを付与することによって行われる。WLT(1,1)〜WLT(N,L
A)のn番目の周波数チャネルの送信信号x
j,k,nからなる送信信号行列X
nは、式(16)として表される。
【0069】
式(16)において、x
j,k,nは、WLT(j,k)のn番目の周波数チャネルに対応する送信信号を表す。行列W’
n(v)は、n番目の周波数チャネルに対応するトレーニングウエイトである。行列Aは、トレーニングシンボル用の符号行列であり、送信側と受信側の両側で既知の行列が用いられる。行列Aは、本実施形態では、L
A×L
Aの行列として定義される。行列Aとして、単位行列Iを用いれば、それぞれ異なるタイミングでトレーニングウエイトにしたがってs
nを送信することができる。また、行列Aとして任意の行列やA
HA=Iとなるような直交行列を用いることもできる。
【0070】
次に、端末装置2−iの無線信号送受信回路2−i−2が、送受信アンテナ2−i―1−1〜2−i−1−M
iを介して基地局装置1からの信号を受信すると、受信信号復調回路2−i−3は、受信信号に対し同期を行う。チャネル推定回路2−i−4が、WLT(1,1)〜WLT(N,L
A)に対応する受信信号から、チャネル情報、すなわち基地局装置1と端末装置2−iのアンテナ間の伝搬係数からなるトレーニングウエイト込みのチャネル行列(以下、ウエイトチャネル行列という)を推定する。j番目のトレーニングシンボルに対応する受信信号において、送受信アンテナ2−i−1−1〜2−i−1−M
iで受信されたn番目の周波数チャネルに対応する受信信号y
1,j,i,n〜y
Mi,j,i,n からなる受信信号ベクトルy
j,i,nは、以下の式(17)として表される。
【0072】
式(17)において、行列H
i,nは、端末装置2−iのn番目の周波数チャネルに対するチャネル情報を表すチャネル行列(M
i×N行列)である。チャネル行列H
i,nのp列q行目の要素は、基地局装置1のp番目の送信アンテナ(送受信アンテナ1−4−p)から、端末装置2−iのq番目の受信アンテナ(送受信アンテナ2−i―1−q)間の伝搬係数を表す。ベクトルn
j,i,nは、j番目のトレーニングシンボルの受信タイミングで、送受信アンテナ2−i−1−1〜2−i−1−M
iが受信した端末装置2−iのn番目の周波数チャネルの熱雑音ベクトルを表す。したがって、端末装置2−iにおける、第nの周波数チャネルにおける、1〜L
A番目のトレーニングシンボルに対応する受信信号行列Y
i,nは、式(18)として表すことができる。
【0074】
式(18)において、行列N
i,nは、端末装置2−iのn番目の周波数チャネルにおいて、送受信アンテナ2−i−1−1〜2−i−1−M
iが1〜L
A番目の受信タイミングで受信した信号に対する熱雑音行列を表す。端末装置2−iにおいて、行列Aとs
nは既知であるため、(As
n)
−1を受信信号行列Y
i,nに乗算することで、ウエイトチャネル行列を式(19)のように求めることができる。
【0076】
式(19)において、行列H’’
i,nが、推定されたウエイトチャネル行列であり、M
i×L
Aの行列である。端末装置2−iは、得られたH’’
i,nをそのままフィードバック情報とすることもできるし、H’’
i,nの中からL
i個の行ベクトルを選択してフィードバックすることもできる。また、H’’
i,nに特異値分解を行って式(20)のように表し、信号空間に対応する右特異行列V
(ws)i,n(L
A×M
i行列)のうちL
i個の列ベクトルを、フィードバックすることもできる。
【0078】
式(20)において、U
(w)i,nは、左特異行列である。行列Σ
(w)i,nは、特異値を対角要素とし、非対角項が0のM
i×L
Aの対角行列である。行列V
(wn)i,n(L
A×(L
A−M
i)行列)は、右特異行列のうち、特異値に対応しないベクトルの集まりを表す。上記の説明では、基地局装置1のアンテナ数NがL
Aより多いことを前提としていた。これに対して、端末装置2−iの送受信アンテナ数M
iの方がL
Aより多い場合には、右特異行列の列ベクトルの全てが特異値と対応するため右特異行列V
(ws)i,n(L
A×L
A行列)のうちL
i個の列ベクトルを選択してフィードバックすることができる。また、H’’
i,nのエルミート転置行列の列ベクトルにグラムシュミットの直交化法を用いて得られる基底ベクトルのうち、L
i個の列ベクトルを選択して、フィードバックすることができる。直交化法による基底ベクトルは、式(21)のようにQR分解によっても得ることができる。
【0080】
式(21)により得られた直交行列(Q
(ws)i,n Q
(wn)i,n)のうちM
i×M
iの三角行列R
i,nに対応するQ
(ws)i,nのうち、L
i個の列ベクトルをフィードバックするようにしてもよい。
【0081】
上述したように、L
iは、基地局装置が端末装置2−iにフィードバックを要求したチャネルの次元であり、実際に基地局装置が端末装置2−iに送信を行う空間ストリーム数L’
iはL
i以下に設定される。Q
(ws)i,nやV
(ws)i,nは、ユニタリ行列の一部となっている。チャネル情報から得られるこれらの行列、すなわちウエイトチャネル行列H’’
i,n、またはこの行列から選択したL
i個のベクトルや、この行列に上述した特異値分解や直交化法を行うことにより得られた行列から選択したL
i個のベクトルが上述したウエイトチャネル情報であり、ウエイト信号空間行列G’
i,n、と定義する。
【0082】
端末装置2−iの送信信号生成回路2−i−5は、ウエイト信号空間行列G’
i,nを再生可能な形に圧縮して送信信号を生成する。例えば、ユニタリ行列としての特徴を用いて角度情報に変換したり、周波数領域の信号を時間領域の信号に変換したり、空間相関を利用してCompressive sensingなどを用いることで情報を圧縮できる。そして、無線信号送受信回路2−i−2が、生成された送信信号を基地局装置1に送受信アンテナ2−i−1−1〜2−i−1−M
iを介して送信する。基地局装置1の無線信号送受信回路1−3は、送受信アンテナ1−4−1〜1−4−Nを介して端末装置2−1〜2−Kからの信号を受信し、受信信号復調回路1−5は、それぞれの信号からウエイトチャネル情報を読み出してウエイトチャネル情報記憶回路1−6に書き込んで記憶させる。
【0083】
上記のようにしてウエイトチャネル情報を取得することで、基地局装置1は、チャネル推定用に用いるWLTのタイムスロットの数をL
A個に削減でき、各端末装置2−iがフィードバックするウエイト信号空間行列G’
i,nのサイズも、L
A×L
iに削減できる。また、信号処理に用いるウエイト信号空間行列G’
i,nのサイズが小さくなっているため送信ウエイトの演算量も低減することができる。
これに対して、ウエイトチャネル行列としては基地局装置1の送受信アンテナ1−4−1〜1−4−Nが有するN次元の信号空間のうち、L
A次元の部分空間しか推定していないため、N個のトレーニング信号をそのまま用いた方式よりも特性が劣化する。この特性劣化を防ぐために、本実施形態の構成ではトレーニングウエイトを逐次的に更新する。
【0084】
基地局装置1が、端末装置2−iと一度以上通信を行うと、通信相手の信号空間に対するウエイト信号空間行列G’
i,nがウエイトチャネル情報記憶回路1−6に記憶される。記憶されているウエイト信号空間行列が更新されると、更新回数vをv=v+1として、トレーニングウエイトの更新回数を増加させ、トレーニングウエイト生成回路1−8は、ウエイト信号空間行列G’
i,nをウエイトチャネル情報記憶回路1−6から読み出す(ステップS105)。更新回数が、2回目以降(v≧2)の場合、新たにトレーニングウエイトを生成するにはウエイト信号空間行列G’
i,nを用いる。まず、K個の端末装置2−1〜2−Kの組み合わせに対し式(22)のようにしてQR分解を行う。
【0086】
式(22)によって得られた直交行列(Q
(ps)n Q
(pn)i,n)のうち、ΣL
i×ΣL
iの三角行列R
(ps)nに対応するL
A×ΣL
i行列Q
(ps)i,nとトレーニングウエイトW
(v)nを新たな(v+1)回目のトレーニングウエイトの生成に用いる。なお、ΣL
iは、L
iのi=1〜Kまでの総和を表す。v=v+1とし、新たなトレーニングウエイトW’
n(v)は、式(23)として算出することができる(v≧2)。
【0088】
式(23)は、ΣL
i個のN×1の列ベクトルW
(v−1)nQ
(ps)nに、ランダムウエイトから新たな列ベクトルをL
0個加えた構成となっている。ここで、W
(v−1)nQ
(ps)nを信号空間トレーニングウエイトと定義する。信号空間トレーニングウエイトはすでに用いられたランダムウエイトの部分空間となっているため、新たに加えたL
0個の列ベクトルは、信号空間トレーニングウエイトW
(v−1)nQ
(ps)nと直交しており、内積を計算すると0になる。v=1の段階でのトレーニングウエイト込みのチャネル情報推定では、1〜L
A個のランダムウエイトに対応するチャネル情報を算出するのに対して、毎回L
A個のトレーニングシンボルを用いながら、v=2ではL
A+L
0、v=3ではL
A+2L
0と、付加トレーニングウエイトにより徐々に推定する信号空間の次元を増やすことができるのが本実施形態の処理の特徴である。
【0089】
ここで、ランダムウエイトは、N個のベクトルであるため、Nと、v、L
A、L
iの関係が式(24)になると、新たにランダムウエイトからベクトルを選択することができない。
【0091】
そこで、トレーニングウエイト生成回路1−8は、ステップS105においてv=v+1とした後、vが式(24)の関係を満たすか否か、すなわち選択されていないL
0個のベクトルがランダムウエイトに残っているか否かを判定する(ステップS106)。トレーニングウエイト生成回路1−8は、vが式(24)の関係を満たさないと判定した場合、すなわち、選択されていないL
0個のベクトルがランダムウエイトに残っている場合、式(23)に従ってトレーニングウエイトを更新する。そして、ステップS104に戻り更新されたトレーニングウエイトを用いてチャネル推定を行い、選択されていないL
0個のベクトルがランダムウエイトに残っている間、ステップS104からの処理を繰り返す(ステップS107)。一方、vが式(24)の関係を満たす場合、すなわち、選択されていないL
0個のベクトルがランダムウエイトに残っていない場合、トレーニングウエイト生成回路1−8は、ランダムウエイトを更新する(ステップS108)。
【0092】
ランダムウエイトの更新は、ウエイト信号空間行列G’
i,nと前回のトレーニングウエイトW’
n(v−1)を用いて式(25)に示すようにQR法により更新することができる。
【0094】
式(25)において、左辺はN×L
A行列のトレーニングウエイトとL
A×(L
1+L
2+・・・+L
K)行列となるG’
i,nの集合行列の乗算で得られるN×(L
1+L
2+・・・+L
K)=N×ΣL
i行列である。直交行列Q
(r)nは、N×Nの行列となり、信号空間(上三角行列R
(rs)n)に対応するN×ΣL
i行列のQ
(rs)nとN×(N−ΣL
i)行列のQ
(rn)nから形成される。ランダムウエイトW
R,nは新たに、式(26)として求められる。
【0096】
トレーニングウエイト生成回路1−8は、式(26)により求められたランダムウエイトを内部の記憶領域に書き込んで記憶させてステップS102に戻り、トレーニングウエイトの生成を繰り返す。これにより、ランダムウエイトは、初回は、チャネル情報となんら関係ない完全にランダムなものが用いられるのに対して、更新されることにより、ランダムウエイトW
R,nそのものがチャネル情報から算出されたものとなり、ランダムウエイトのみからトレーニングウエイトを選択してもチャネルに最適化されたものを利用することが可能となる。ステップS102の式(15)は、Q
(r)nを用いて表すと、式(27)として表される。
【0098】
チャネルが時間に対し全く変動しなければ、Q
(rs)nは全端末装置2−1〜2−Kのチャネル行列の信号空間と一致し、Q
(rs)nはヌル信号空間に対応するため、Q
(rs)nのいかなる列ベクトルを送信ウエイトとしても、各端末装置2−iに信号は届かないことになる。これに対して、実際のシステムではチャネルは変動し、チャネル情報には熱雑音や量子化雑音などの誤差が含まれてしまう。このチャネル情報のずれを補正するため、本実施形態の基地局装置1は、逐次的にQ
(rs)nのトレーニングウエイトを加え、継続的にウエイトチャネル情報を効率よく推定し続けることができる。したがって、本実施形態の基地局装置1は、トレーニングウエイトの更新、及びランダムウエイトの更新を繰り返し行うことで、L
A個のトレーニングシンボルだけを用いて、送信アンテナ数分のトレーニングシンボルを送信した場合と同等の信号空間に対するチャネル情報を取得することができる。
【0099】
図2のフローチャートは、送信方法選択回路1−7において通信相手となる端末装置が決定された時に開始し、この通信相手の組み合わせが終了・変更された際に終了とすることができる。例えば、送信方法選択回路1−7の通信相手を示すグループIDの生成によりフローチャートを開始し、当該グループIDの割り当てを変更または取り消しした際に終了とすることができる。または、ステップS102からステップS108までのいずれかのステップにおいて、一定時間T
f経過しても同じステップまで戻ってこない場合に終了とすることができる。例えば、S104におけるウエイトトレーニングシンボルの送信が1秒間行われなかった場合に、フローチャートを終了することができる。
【0100】
また、
図2の処理の途中で、トレーニングウエイト生成回路1−8は、フィードバックを行うベクトル数L
i、付加トレーニングウエイトに含まれる列ベクトルの数L
0、通信相手となる端末装置2−iの組み合わせを変更することができる。フィードバックを行うベクトル数L
iの変更は、送信方法選択回路1−7が端末装置2−iとの通信環境に応じて行う。または、端末装置2−iからフィードバックされた信号空間行列のベクトル数を元にL
iを更新することもできる。また、これらの変更は、基地局装置1の運用者の操作を受けて任意に変更させてもよいし、基地局装置1が内部に備える計時手段であるタイマが計測する時間の経過、あるいはネットワークを通じて受信する外部の時計やタイマなどの計時手段からの時間の情報に基づく時間の経過とともにトレーニングウエイト生成回路1−8が変化させてもよい(ステップS109)。これらが更新されることにより、ステップS103の式(15)においてトレーニングウエイトをランダムウエイトから選択する数が変更され、ステップS104の式(22)におけるウエイトチャネル行列G’
i,nのベクトル数が変更され、ステップS106において選択するL
0の数が変更されることになる。
【0101】
L
Aを一定値とした場合に、フィードバックを行うベクトル数L
iが変更されると、L
Aが一定となるように、式(14)に従ってL
0を変更することになる。このような条件では、L
0が時間的に変化するため、新たに選択可能なランダムウエイトが存在するかどうかの判定式は式(24)で表現することができなくなる。この場合には、ステップS103におけるランダムウエイトからトレーニングウエイトを選択する数を初期値として、ステップS107においてランダムウエイトから新たにベクトルを選択するごとに、選択したベクトル数を累積して記憶領域に記憶しておき、ステップS106においてまだ使われていないL
0個のベクトルがランダムウエイトに残っているか判定する必要がある。この場合の判定条件は、ステップS103において初めにランダムウエイトから選択したベクトル数をL(1)、ステップS107において新たに追加するランダムウエイト数をL(v)とした場合、式(28)として表すことができる。
【0103】
式(28)を満たしている場合には、トレーニングウエイト生成回路1−8は、ステップS106において、新たに選択できるランダムウエイトが残っていると判定することができ、ステップS107の処理に進むことができる。
フィードバックを行うベクトル数L
iを変化させることにより、端末装置2−iからのフィードバック量を増加または軽減することができる。これに伴って基地局装置1の演算量も増加または軽減することになるため使用する環境に応じた負荷の調整を行うことが可能となる。また、L
0を任意に変化させることで、例えば、上述したタイマが前回のチャネル推定から経過した時間を計測することにより、その計測した時間に従ってL
0を増加させることで、後述するようにサイクルタイムを一定にすることができ、それにより、伝送特性を維持することが可能となる。
また、ステップS106において、L
0個のベクトルが残っているか判定する代わりに、1つ以上のベクトルが残っているか判定することもできる。この場合、一つでもランダムウエイトの選択されていないベクトルが残っていれば、このランダムウエイトを付加トレーニングウエイトとして用いる。このときは、付加トレーニングウエイトの数を一時的にN−ΣL(i)とするか、L
0に足りない分は既に選択されているランダムウエイトから重複して選択することができる。このようにして、N個のランダムウエイトのベクトルを使い切り、全ての信号空間に対応する情報を推定することで、チャネル情報の推定精度を高めることもできる。
【0104】
上記のようにして更新を繰り返したトレーニングウエイトを用いて、基地局装置1が、端末装置2−iに対して送信を行う処理について説明する。送信方法選択回路1−7は、端末装置2−iからフィードバックされたウエイト信号空間行列G’
i,n、をウエイトチャネル情報記憶回路1−6から読み出す。ウエイト信号空間行列G’
i,n、すなわち端末装置2−iにおける第n番目の周波数チャネルに対して得られるL
i個のベクトルからなるL
A×L
iの行列は、推定したウエイトチャネル行列のうちのL
i個の行ベクトルの複素共役転置行列であってもよい。また、受信ウエイト行列β
i,nを端末装置2−iにおいて予め定義し式(29)のようにウエイト信号空間行列G’
i,nを表してもよい。
【0106】
また、前述したように、ウエイトチャネル行列H’’
i,nに基づいて特異値分解やQR分解することにより得られるV
(ws)i,nやQ
(ws)i,nを用いて以下の式(30)、(31)としても表すことができる。
【0109】
式(30)、(31)において、[A]
Lは、N×M行列AからL個の列ベクトルを選択してN×Lの行列を得る関数である。端末装置2−iにおける受信ウエイト行列β
i,nとしては、H’
i,nをQR分解して得られるM
i×M
iのユニタリ行列のうち、対応する三角行列の対角成分が大きいものからL
i個のベクトルをM
i×M
iのユニタリ行列の中から選択して得られるM
i×L
iの行列にエルミート共役をとることで得られるL
i×M
iの行列を用いたり、H’
i,nに対し特異値分解で得られる左特異行列のうち、大きい特異値に対応するL
i個のベクトルを選択し得られるM
i×L
i行列に対し、エルミート共役をとることで得られるL
i×M
iの行列などを用いることができる。
【0110】
送信方法選択回路1−7は、これらのウエイト信号空間行列G’
i,nを従来における信号空間行列G
i,nとし、例えば、上述したBD法による送信ウエイトを算出する手法などによりマルチユーザMIMOやシングルユーザMIMOなどの送信ウエイト演算手法を用いて送信ウエイトを算出することができる。ただし、算出した送信ウエイトは、トレーニングウエイトを含んだチャネル情報に基づく送信ウエイトとなる。そのため、v回目の更新がされたトレーニングウエイトを含んだチャネル情報に基づいて算出されたi番目の端末装置のn番目の周波数チャネルにおける送信ウエイトW
(v)i,,nは、各送信アンテナ(送受信アンテナ1−4−1〜1−4−N)に対する送信ウエイトとはならない。各送信アンテナに対する送信ウエイトW
i,nは、v回目で用いたトレーニングウエイトW
n’
(v)と送信ウエイトW
(v)i,,nにより式(32)として算出されることになる。
【0112】
以下、
図4、5を参照しつつ、上記の実施形態の構成による効果を説明する。チャネルモデルとして、IEEE802.11nで提案されているModel Cのシナリオを用いた。アンテナ間隔0.5λのアレーアンテナ、ベルシェイプのドップラー分布を用い、ドップラースプレッドを0.41Hz、コヒーレンスタイム800msとしている。また、端末装置数を2とし、基地局装置1と端末装置2−1、2−2の間の距離を5m、帯域幅20MHz、フーリエ変換による周波数チャネル数を64、そのうちデータを送信する周波数チャネル数を52(F=52)としている。また、受信アンテナ数2、フィードバックを行うベクトル数を2(L
i=2)、データ送信時の空間多重数を2(L
i’=2)としている。
図4は、この条件において、通信を開始してからの時間(ms)に対する伝送可能ビット数(Achievable bit rate)について測定した結果である。伝送可能ビット数は、式(33)として定義している。
【0114】
式(33)において、σ
2は熱雑音の分散値である。また、本実施形態では、ウエイトトレーニングシンボルを送信する時間間隔をT
0と定義した。
図4では、T
0=10 [ms]としている。また、送信ウエイトW
k,nは、1ms前のチャネル情報を元に算出されていると仮定し、データ通信中のチャネルの時変動は考慮しないものとしている。
【0115】
図4において、点線、破線、及び実線で示されているラインは、それぞれ送信アンテナ数が8、16、32の場合に従来のチャネル推定手法により、送信アンテナ数だけのトレーニングシンボルを送信し、チャネル情報の推定を行った場合の伝送可能ビット数を示している。一方、+および×で示されるポイントが、それぞれ送信アンテナ数が16および32の場合に本実施形態の構成によるウエイトトレーニングシンボルを用いて算出されたチャネル情報を用いて通信を行った場合の、伝送可能な伝送可能ビット数である。10msごとに、徐々に特性が改善していき送信アンテナ数が16素子の場合には60ms、32素子の場合には、140ms経過した後には、ほぼ従来のチャネル推定手法、すなわち送信アンテナ数と同数のトレーニングシンボルをチャネル推定に用いた場合と同等の特性が得られていることがわかる。この収束に必要な時間は、式(34)で示されるサイクルタイムT
Cで表すことができる。
【0117】
従来のチャネル推定手法を用いた場合、32または16のトレーニングシンボルを用いているのに対し、本実施形態の手法では、L
1+L
2+L
0=6のウエイトトレーニングシンボルしか用いていないため、チャネル推定のためのオーバヘッドを大きく削減できる。
また、6個のウエイトトレーニングシンボルのみを用いるだけでも、従来のチャネル推定手法を用いた8×2のMIMO方式の伝送特性(
図4の点線)を大きく上回る伝送特性が得られているもわかる。これは、例えば、トレーニングシンボルを送信できる数を標準化規格などで変更することなく、送信アンテナ数を増やすことができる効果があることを意味している。
【0118】
図4の結果は収束するものの、従来の送信アンテナ数だけトレーニングシンボルを送信するチャネル推定手法に対して特性が少し劣化する。これは、チャネルの時間変動のため、完全には信号空間に対応するトレーニングウエイトにならないためである。この特性劣化は、サイクルタイムが大きくなるに従って増加する。
図5は、サイクルタイムを70ms、140ms、280ms、560msとした場合の伝送可能ビット数の累積分布関数(CDF:cumulative distribution function)に基づく累積確率分布を示した図である。×、□、○で示されているラインは、それぞれ送信アンテナ数が8、16、32の場合の従来のチャネル推定手法による分布を示したものである。従来の32素子のアンテナ数だけチャネルを全て推定する方式(
図5の○で示されるポイント)に比べ、収束に必要な時間であるサイクルタイムが増加するにつれ、伝送特性が徐々に劣化しているのが分かる。それでもなお、16×2のMIMOチャネル方式における16本のアンテナ数のチャネルを全て推定する方式(
図5の□で示されるポイント)に比べ、パイロットシンボルを6つ(L
A=6)しか用いていないにもかかわらず、高い伝送特性を有していることがわかる。
【0119】
上記のように本実施形態の構成では、全ての自由度(送信アンテナ数)のチャネル情報を推定し終えるまでにかかるサイクルタイムに比例して特性が若干劣化する。したがって、式(34)に基づいて付加トレーニングウエイトに含まれる列ベクトルの数L
0を設定することで、サイクルタイムT
Cをあらかじめ定めた値以下と伝送特性が劣化しすぎないようにすることができる。
図4と
図5のシミュレーションでは、チャネル推定を一定間隔T
0で行うことを仮定しているが、実際の通信において、このように定期的なチャネル推定を行えるとは限らない。そこで、前回チャネル推定を行ってから、経過した時間に応じてL
0を設定する。例えば、
図5の結果から、T
Cを140ms以下になるように設定することを考える。この場合、10ms間隔に、L
0=2でチャネル推定が行われていれば、サイクルタイム140msで通信できる。チャネル推定が、20ms間隔になってしまう場合には、L
0=4とすることで、サイクルタイムを一定にできる。すなわち式(35)に基づいてL
0を決めることができる。
【0121】
式(35)において、Tは前回のチャネル推定からの経過時間であり、式(35)において、以下の式(36)の演算子はA以上で、最も小さい整数を表す関数である。
【0123】
なお、本実施形態の構成は、マルチユーザMIMO通信のため選択された複数の端末装置組み合わせに対してそれぞれ独立に用いることができる。すなわち、送信方法選択回路が決定した端末装置2−iの組み合わせごとにランダムウエイトW
R,nをトレーニングウエイト生成回路が記憶する。トレーニングウエイト生成回路1−8が、トレーニングウエイトの生成を行う場合には、送信方法選択回路1−7が指定する通信相手の端末装置の組み合わせに対応するランダムウエイトW
R,nを用いトレーニングウエイトの生成を行う。これにより、1つの基地局装置1を用いて複数の端末装置2−iの組み合わせを扱うことが可能である。
【0124】
また、マルチユーザMIMO通信において、予め選択された端末装置の組み合わせの中で、一部の端末装置からのみ、チャネル情報のフィードバックを要求する場合や、パケット衝突などの問題により、一部の端末装置からのチャネル情報のフィードバックが取得できない場合もある。このような場合、式(22)のG’
i,nは、全ての端末装置から取得することができないため、z番目の端末装置からのチャネル情報が取得できなかった場合には、G’
z,nを用いずに式(22)を計算するか、または前回の通信でz番目の端末装置からフィードバックされた過去の情報であるG’
z,nを代わりに用いることもできる。ただし、過去のG’
z,nを用いる場合には、対応するトレーニングウエイトが異なるため、信号空間トレーニングウエイトの演算に工夫が必要となる。ここで端末装置2−1〜2−3との通信を考え、チャネル情報のフィードバックを求めたにもかかわらず、端末装置2−3から正常に信号空間行列が取得できなかった場合を考える(z=3)。端末装置2−1と2−2からは信号空間行列が得られているため、これらの端末装置に対しては式(22)と同様に、式(37)として、信号空間行列が得られた端末に対するユニタリ行列をQ’
(ps)nとして得ることができる。
【0126】
端末装置2−3からは前回信号空間行列を取得した際のトレーニングウエイトを用いる。すなわち、相手からのチャネル情報についてフィードバックがない場合に対応するため、トレーニングウエイト生成回路1−8が過去のトレーニングウエイトを記憶しておくことができる。端末装置2−3に対応する信号空間トレーニングウエイトは、信号空間行列取得時の更新回数をqとし、W
(q)nG’
3,nと表わすことができる。よって、トレーニングウエイトは、式(38)として得られる。
【0128】
または、予め、信号空間トレーニングウエイトのベクトルが互いに直交するように変換しておくこともできる。QR分解を用いて、式(39)として得られたQ
(pps)nを用いて、式(40)とすることができる。
【0131】
このようにすることで、ある特定の端末装置のウエイトチャネル情報が取得できなくてもウエイトチャネル情報の更新を行うことができる。
【0132】
上記の実施形態の構成により、基地局装置1は、トレーニング信号の数を低減しつつ、従来の方式と同等の伝送特性のMU−MIMO通信を行うことが可能となる。
また、上記の実施形態の構成により、トレーニングウエイトを用いたトレーニングシンボルによるチャネル推定を行うことで、システムに対するチャネル推定フレームのオーバヘッド、チャネル関連情報のフィードバック量、チャネル関連情報をフィードバックするまでの時間差、を減らすことができ、高いシステムスループットを有する無線通信システムを実現することができる。
また、上記の実施形態の構成により、基地局装置1は、チャネル推定用に用いるウエイトトレーニングシンボルのタイムスロットの数をL
A個に削減することができる。これにより、各端末装置2−iにおけるウエイトチャネル行列の推定の演算量を軽減させることができ、フィードバックするウエイト信号空間行列G’
i,nのサイズも、L
A×L
iに削減することができる。これにより、チャネル推定におけるトラフィック量を減らすことができるとともに、基地局装置1における送信ウエイトの演算量も低減することができる。
また、上記の実施形態の構成により、基地局装置1は、付加トレーニングウエイトを加えてトレーニングウエイトを更新し、また、付加トレーニングウエイトの選択元のランダムウエイトが不足した場合にはランダムウエイトを更新してトレーニングウエイトを逐次的に更新することが可能となる。これにより、基地局装置1の送受信アンテナ1−4−1〜1−4−Nが有するN次元の信号空間のうちL
A次元の部分空間しか推定していないために生じる特性劣化を防き、N個のトレーニング信号をそのまま用いた方式と同程度の伝送特性を維持することが可能となる。
なお、本発明に記載の送信装置とは、例えば、本実施形態の基地局装置1である。また、本発明に記載の所定の数のベクトルとは、例えば、本実施形態のL
i個のベクトルである。
【0133】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。