(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5894097
(24)【登録日】2016年3月4日
(45)【発行日】2016年3月23日
(54)【発明の名称】液化ガス供給用接続機構
(51)【国際特許分類】
F17C 13/00 20060101AFI20160310BHJP
【FI】
F17C13/00 302E
【請求項の数】8
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-46921(P2013-46921)
(22)【出願日】2013年3月8日
(65)【公開番号】特開2014-173661(P2014-173661A)
(43)【公開日】2014年9月22日
【審査請求日】2014年4月17日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005902
【氏名又は名称】三井造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100147762
【弁理士】
【氏名又は名称】藤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】徳永 嘉寛
【審査官】
白川 敬寛
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−307936(JP,A)
【文献】
特開昭58−178097(JP,A)
【文献】
特表2012−509224(JP,A)
【文献】
米国特許第06637479(US,B1)
【文献】
特開2012−255520(JP,A)
【文献】
欧州特許第00926428(EP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 1/00−13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化ガスを輸送機器へ供給するバンカーシステムの液化ガス供給用接続機構であって、
フレキシブルなバンカーホースと、
前記バンカーホースの先端に設けられ、相互に連通される第1の弁、第1の接続継手、パージガス供給弁とを備える前記液化ガスを供給する側の第1の接続部と、
第2の弁と、前記第2の弁に連通され、前記第1の接続継手と接続可能な第2の接続継手とを備える前記液化ガスの供給を受ける側の第2の接続部とを備え、
前記第1の接続部の主管の一端に前記第1の弁、他端に前記第1の接続継手が設けられ、前記第1の接続部の主管の枝管に前記パージガス供給弁が設けられ、
前記第2の接続部の主管の一端に前記第2の弁、他端に前記第2の接続継手が設けられる
ことを特徴とする液化ガス供給用接続機構。
【請求項2】
前記第1の接続部の前記枝管が、前記パージガス供給弁をパージガス供給源へと接続するための継手を更に供えることを特徴とする請求項1に記載の液化ガス供給用接続機構。
【請求項3】
前記第2の接続部の主管が枝管を備え、前記第2の接続部の前記枝管が前記第2の弁および前記第2の接続継手に連通されるサンプリング弁を更に備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の液化ガス供給用接続機構。
【請求項4】
前記パージガス供給弁に接続されるパージガス供給源が、前記輸送機器に配置されることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の液化ガス供給用接続機構。
【請求項5】
フレキシブルなバンカーホースと、
前記バンカーホースの先端に設けられ、相互に連通される第1の弁、第1の接続継手、パージガス供給弁とを備える液化ガスを供給する側の第1の接続部と、第2の弁と、前記第2の弁に連通され、前記第1の接続継手と接続された第2の接続継手とを備える前記液化ガスの供給を受ける側の第2の接続部とを備え、
前記第1の接続部の主管の一端に前記第1の弁、他端に前記第1の接続継手が設けられ、前記第1の接続部の主管の枝管に前記パージガス供給弁が設けられ、前記第2の接続部の主管の一端に前記第2の弁、他端に前記第2の接続継手が設けられる液化ガスを輸送機器へ供給するバンカーシステムの液化ガス供給用接続機構において、
前記第1の弁を閉じて液化ガスの供給を停止し、
前記パージガス供給弁を開き、パージ用のガスを前記第1及び第2の接続部へ供給し、
前記液化ガスが前記第1及び第2の接続部からパージされたか否かをモニタし、
パージ完了確認後、前記第2の弁を閉じ、前記第1及び第2の接続継手の接続を解除する
ことを特徴とする液化ガス供給用接続機構切離し方法。
【請求項6】
前記第2の接続部の主管が枝管を備え、前記第2の接続部の前記枝管が前記第2の弁および前記第2の接続継手に連通されるサンプリング弁を更に備え、前記モニタが前記サンプリング弁において実行されることを特徴とする請求項5に記載の液化ガス供給用接続機構切離し方法。
【請求項7】
前記パージ完了確認後、前記サンプリング弁を閉じた後に前記第2の弁を閉じることを特徴とする請求項6に記載の液化ガス供給用接続機構切離し方法。
【請求項8】
前記液化ガス供給停止後、前記第2の弁を閉じるまでの間、前記第2の弁を微開とすることを特徴とする請求項5〜7の何れか一項に記載の液化ガス供給用接続機構切離し方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化ガスを送液するためのシステムに関し、特に液化ガス燃料を輸送機器へ送液する際に、気化したガス燃料を管内からパージするためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境負荷がより少ない液化天然ガスを燃料として利用するLNG燃料船の普及が進められている。LNG燃料船におけるバンカー作業は、バンカーホースを船舶に接続して行われるが、液化天然ガスは、外部からの熱によりバンカーホースを含む燃料ライン内において一部沸騰し気化する。そのため送液を停止しても燃料ライン内には気化した天然ガスが残留し、バンカーホース切離しの際に、残留天然ガスが大気中に放出される。このような天然ガスの大気への漏出を防止するため、燃料ライン内に残留する天然ガスを窒素ガスなどで予めパージするLNGバンカーシステムも知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2011−503463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のパージ方法は、燃料ライン全体をパージしているため、パージ用のガス(窒素ガス)を大量に必要とする。にもかかわらず、小型な設備や、ローリ車やバンカー船などから液化ガス燃料の供給を受ける場合、パージ用のガス設備を設けていない場合もある。
【0005】
本発明は、切離し可能なラインを通して液化ガスを送液するシステムにおいて、ライン切離しの際、ライン内に残留する気化された液化ガスおよび液化ガスそのものの大気への放出を抑えるために必要なパージ用ガスの量を大幅に減らすことを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の液化ガス供給用接続機構は、相互に連通される第1の弁、第1の接続継手、パージガス供給弁とを備える第1の接続部と、第2の弁と、第2の弁に連通され、第1の接続継手と接続可能な第2の接続継手とを備える第2の接続部とを備えることを特徴としている。
【0007】
第1の接続部は、パージガス供給弁をパージガス供給源へと接続するための継手を更に備えることが好ましい。第2の接続部は、第2の弁および第2の接続継手に連通されるサンプリング弁を更に備えることが好ましい。パージガス供給源は、輸送機器に配置されることが好ましい。第1の弁が液化ガスを供給する側の弁であり、第2の弁が液化ガスの供給を受ける側の弁であることが好ましい。
【0008】
本発明の船舶は、上記何れかに記載の液化ガス供給用接続機構の第1または第2の接続部の何れか一方を備えることを特徴としている。
【0009】
液化ガスは液化ガス燃料であり、例えば船舶は液化ガスを燃料として使用する。
本発明の液化ガス供給用接続機構切離し方法は、相互に連通される第1の弁、第1の接続継手、パージガス供給弁とを備える第1の接続部と、第2の弁と、第2の弁に連通され、第1の接続継手と接続された第2の接続継手とを備える第2の接続部とを備える液化ガス供給用接続機構において、第1の弁を閉じて液化ガスの供給を停止し、パージガス供給弁を開き、パージ用のガスを第1及び第2の接続部へ供給し、液化ガスが第1及び第2の接続部からパージされたか否かをモニタし、パージ完了確認後、第2の弁を閉じ、第1及び第2の接続継手の接続を解除することを特徴としている。
【0010】
第2の接続部が、第2の弁および第2の接続継手に連通されるサンプリング弁を更に備え、モニタがサンプリング弁において実行されることが好ましい。パージ完了確認後、サンプリング弁を閉じた後に第2の弁を閉じることが好ましい。液化ガス供給停止後、第2の弁を閉じるまでの間、第2の弁を微開とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、切離し可能なラインを通して液化ガスを送液するシステムにおいて、ライン切離しの際、ライン内に残留する気化された液化ガスおよび液化ガスそのものの大気への放出を抑えるために必要なパージ用ガスの量を大幅に減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態であるライン接続機構を備える液化燃料バンカーシステムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態であるライン接続機構を備える液化ガス供給システムの構成を示すブロック図である。
【0014】
本実施形態の液化ガス供給システム10は、例えばLNG燃料船11など、液化ガスを燃料とする輸送機器へ、LNGなどの液化ガス燃料を供給するバンカーシステムである。
図1に示される例では、港湾に設置された燃料供給施設(液化ガス供給施設)12のLNG貯蔵タンク(液化ガス貯蔵タンク)13から、燃料ライン(液化ガスライン)を通して係留されたLNG燃料船11のLNG燃料タンク(液化ガスタンク)15へ液化天然ガス(液化ガス)が供給される。
【0015】
LNG貯蔵タンク13からは、例えばフレキシブルなバンカーホース16を通してLNGが送出される。バンカーホース16の先端にはアウトレット接続部17が設けられ、バンカー作業時、LNG燃料船11のインレット接続部18に接続される。アウトレット接続部17は、例えば丁字管を備え、主管の一端には液化ガス供給弁19、主管の他端には接続継手20が設けられる。また枝管にはパージガス供給弁21と継手22が設けられる。
【0016】
液化ガス供給弁19はバンカーホース16に接続されており、これを開閉することによりバンカーホース16から供給される液化ガスの流通が制御される。接続継手20は例えばフランジ継手であり、バンカー作業時、船側のインレット接続部18のフランジ継手に接続される。パージガス供給弁21は、窒素ガスなどパージ用のガスの丁字管への供給を制御する弁であり、枝管の先端に設けられた継手22等を介してパージガス供給設備23と接続可能である。
【0017】
パージガス供給設備23は、輸送機器であるLNG燃料船11に設けられ、例えば船上に積み込まれた窒素ガスボンベ(パージガス供給源)24から固定管25、フレキシブルホース26を介して窒素ガスをアウトレット接続部17へ供給する。なおフレキシブルホース26の先端には、アウトレット接続部17の枝管に設けられた継手22と連結可能な継手27が設けられる。
【0018】
インレット接続部18も例えば丁字管を備え、主管の一端には接続継手28、主管の他端には液化ガス開閉弁29が設けられる。枝管には、例えばサンプリング弁30が設けられる。接続継手28は、アウトレット接続部17の接続継手20に相補的であり、本実施形態ではフランジである。液化ガス開閉弁29は、固定パイプ31を通して船内LNG燃料タンク15へと接続される。
【0019】
次に本実施形態のバンカーシステムでのバンカー作業の手順について説明する。本実施形態では、フランジ継手20、28を接続し、液化ガス供給弁19、液化ガス開閉弁29を開くことで、LNG貯蔵タンク13からLNG燃料船11のLNG燃料タンク15へ液化天然ガスを供給する。バンカリングは、例えば液化ガス供給弁19を閉じることで終了し、このとき液化ガス開閉弁29は、開状態、より好ましくは微開状態とされる。
【0020】
その後、パージガス供給弁21を開き、パージガス供給設備23の窒素ガスボンベ24から継手27、22を介してアウトレット接続部17へ窒素ガスを供給する。なお、継手22、27の接続は、バンカリング開始前、バンカリング中、あるいはバンカリング終了後の何れに行ってもよい。
【0021】
このときアウトレット接続部17、インレット接続部18内に残留する液化天然ガスおよび気化した天然ガスは、窒素ガスにより液化ガス開閉弁29を通してLNG燃料タンク15側へと押しやられ、パージされる。作業者は、サンプリング弁30を開き、管内ガスの組成を確認(例えばメタンガス濃度が十分に低いことを確認)することでパージの完了をモニタする。パージ完了確認後、サンプリング弁30を閉めるとともに液化ガス開閉弁29及びパージガス供給弁21を閉じ、窒素ガス(パージガス)の供給を停止する。そして継手22、27の連結を解き、燃料供給施設12側のアウトレット接続部17を、船舶11側のインレット接続部18から切り離す。
【0022】
以上のように、本実施形態によれば、アウトレット接続部の液化ガス供給弁とインレット接続部の液化ガス開閉弁の間のみをパージすればよく、パージに必要なガスの量を大幅に低減できる。このため、パージ用のガス供給源を輸送機器側に配置することが可能となり、例えばパージ用のガス供給施設を持たない小規模施設などを利用する場合にも、液化ガス燃料の漏洩を防止できる。
【0023】
なお燃料供給施設は、本実施形態のように陸上タンクであってもよいが、バンカー船であってもよく、またタンクローリ車であってもよい。また、本実施形態では液化ガス燃料を使用する輸送機器を船舶としたが、貯蔵タンクからタンクローリへ液化ガス燃料を移す場合や、ロケットへの液化ガス燃料の供給など、輸送機器は船舶に限定されるものではない。また、本実施形態は、大気への放出を防止する必要がある液化ガスの供給ラインの切離しにも利用でき、液化ガスとして液化ガス燃料に限定されるものではない。
【0024】
本実施形態では、船側へパージしたため供給施設側の接続部の枝管からパージ用のガスを供給したが、供給施設側へパージする場合には、船側の枝管からパージ用のガスを供給する構成とすることも可能である。また本実施形態では両接続部に丁字管を用い各弁および継手が連通されていたが、両接続部は丁字管に限定されるものではなく、その岐数も本実施形態に限定されるものではない。またサンプリング用に別の方法を採用することにより、サンプリング弁を省略することも可能である。また、本実施形態ではパージガス供給弁とサンプリング弁をそれぞれ異なる接続部に設けたが、両者を同じ接続部に設けることも可能である。
【0025】
本実施形態の各弁には、例えば止め弁が用いられる。また液化ガス貯蔵タンク側やパージガス供給設備側などにも、バルブは存在し、バンカリング終了時やパージ終了時には、これらの弁が閉じられるが、本実施形態ではその説明が省略されている。
【0026】
また、本実施形態では、パージガス供給源(窒素ガスボンベ)を固定管(25)に接続し、固定管に接続されたフレキシブルホース(26)を介してアウトレット接続部へパージガスを供給した。しかし、固定管(25)を省き、パージガス供給源から直接フレキシブルホースを介してアウトレット接続部へパージガスを供給する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0027】
10 液化ガス供給システム
11 LNG燃料船(輸送機器)
12 燃料供給施設(液化ガス供給施設)
13 LNG貯蔵タンク(液化ガス貯蔵タンク)
15 LNG燃料タンク(液化ガスタンク)
16 バンカーホース(可撓ホース)
17 アウトレット接続部
18 インレット接続部
19 液化ガス供給弁
20 接続継手
21 パージガス供給弁
22 継手
23 パージガス供給設備
24 窒素ガスボンベ(パージガス供給源)
25 固定管
26 フレキシブルホース
27 継手
28 接続継手
29 液化ガス開閉弁
30 サンプリング弁
31 固定パイプ