特許第5894567号(P5894567)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5894567
(24)【登録日】2016年3月4日
(45)【発行日】2016年3月30日
(54)【発明の名称】液晶表示装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1337 20060101AFI20160317BHJP
【FI】
   G02F1/1337 525
【請求項の数】12
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2013-171373(P2013-171373)
(22)【出願日】2013年8月21日
(65)【公開番号】特開2015-40950(P2015-40950A)
(43)【公開日】2015年3月2日
【審査請求日】2014年8月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】311002067
【氏名又は名称】JNC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三宅 敢
(72)【発明者】
【氏名】淺木 大明
(72)【発明者】
【氏名】松本 俊寛
(72)【発明者】
【氏名】宮地 弘一
(72)【発明者】
【氏名】大木 洋一郎
(72)【発明者】
【氏名】近藤 史尚
【審査官】 磯野 光司
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−512903(JP,A)
【文献】 特開2013−242526(JP,A)
【文献】 Nobuhiro KAWATSUKI et al.,Molecular-Oriented Photoalignment Layer for Liquid Crystals,Japanese Journal of Applied Physics,2007年 1月10日,Vol.46, No.1,p.339-341
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1337
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方の基板に光配向膜を有する一対の基板を備える液晶表示装置の製造方法であって、
前記光配向膜は、液晶配向剤から形成され、前記少なくとも一方の基板の主面に対して水平な方向に液晶分子を配向させるものであり、
前記液晶配向剤は、2種類以上のポリアミック酸又はその誘導体、及び、溶媒を含み、
前記2種類以上のポリアミック酸又はその誘導体は、少なくとも下記化学式(1−1)で表されるジアミンと第1のテトラカルボン酸二無水物とを反応させて得られる化合物、及び、少なくとも下記化学式(1−2)で表されるジアミンと第2のテトラカルボン酸二無水物とを反応させて得られる化合物を含み、
前記第1及び第2のテトラカルボン酸二無水物の少なくとも1つは、下記化学式(2)で表される化合物であり、
前記液晶表示装置の製造方法は、
工程(1)前記少なくとも一方の基板上に前記液晶配向剤による膜を形成する工程、
工程(2)前記少なくとも一方の基板上の前記液晶配向剤による膜の仮焼成を行う工程、
工程(3)仮焼成された前記液晶配向剤による膜に光照射を行う工程、及び、
工程(4)光照射された前記液晶配向剤による膜の本焼成を行う工程
をこの順で含み、
前記工程(4)は、前記液晶配向剤による膜を低温から高温へ複数回本焼成する操作を含むことを特徴とする液晶表示装置の製造方法。
【化1】
(R及びRは独立して−CH又は水素原子である。)
【化2】
【請求項2】
前記溶媒は、ブチルセロソルブ、及び/又は、N−メチル−ピロリドンを含むことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置の製造方法。
【請求項3】
前記工程(4)は、異なる温度に設定された複数の加熱装置を用いて行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の液晶表示装置の製造方法。
【請求項4】
前記工程(4)は、異なる温度の定温期間を複数有するように、本焼成を段階的に行う操作を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の液晶表示装置の製造方法。
【請求項5】
前記工程(4)は、第1の温度、及び、前記第1の温度よりも高い第2の温度での2回の本焼成を行うことを特徴とする請求項4に記載の液晶表示装置の製造方法。
【請求項6】
前記工程(4)は、第1の温度、前記第1の温度よりも高い第2の温度、並びに、前記第1及び第2の温度の間の第3の温度での3回の本焼成を行うことを特徴とする請求項4に記載の液晶表示装置の製造方法。
【請求項7】
前記第1の温度は、100℃以上、120℃以下であることを特徴とする請求項5又は6に記載の液晶表示装置の製造方法。
【請求項8】
前記第2の温度は、200℃以上であることを特徴とする請求項5又は6に記載の液晶表示装置の製造方法。
【請求項9】
前記第1の温度は、100℃以上、120℃以下であり、
前記第2の温度は、200℃以上であることを特徴とする請求項5又は6に記載の液晶表示装置の製造方法。
【請求項10】
前記工程(2)は、70℃以下の温度範囲内で仮焼成を行うことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の液晶表示装置の製造方法。
【請求項11】
前記工程(3)は、偏光度が30:1以上の直線偏光を照射することを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の液晶表示装置の製造方法。
【請求項12】
前記液晶表示装置は、液晶表示モードがIPSモード、又は、FFSモードであることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の液晶表示装置の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置の製造方法、及び、液晶表示装置に関する。より詳しくは、配向膜の形成条件に関わる液晶表示装置の製造方法、及び、上記液晶表示装置の製造方法により製造される液晶表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、一対のガラス基板等に液晶表示素子を挟持して構成され、薄型で軽量かつ低消費電力といった特長を活かして、モバイル用途や各種のモニター、テレビ等、日常生活やビジネスに欠かすことのできないものとなっている。近年においては、電子ブック、フォトフレーム、IA(Industrial Appliance:産業機器)、PC(Personal Computer:パーソナルコンピュータ)、タブレットPC、スマートフォン用途等に幅広く採用されている。これらの用途において、種々の性能が要求され、様々な液晶表示モードが開発されている。
【0003】
近年よく用いられている液晶表示モードとしては、基板の主面に対して垂直な方向に、負の誘電率異方性を有する液晶分子を配向させるVA(Vertical Alignment)モードや、基板の主面に対して水平な方向に、正又は負の誘電率異方性を有する液晶分子を配向させる、IPS(In−Plane Switching)モード、及び、FFS(Fringe Field Switching)モード等が挙げられる。
【0004】
液晶分子を配向させるための、配向膜の配向処理方法としては、例えば、ラビング法や光配向法が挙げられる。特に、光配向法は、優れた視角特性を有する液晶表示装置を得る技術として、近年検討されている。光配向法は、配向膜の材料として光活性材料を用い、形成した膜に対して紫外線等の光を照射することによって、配向膜に配向規制力を生じさせる方法である。光配向法によれば、配向膜にラビング処理を施さなくても、電圧印加時の液晶分子の配向方向を複数の方向に制御することが可能であり、優れた視角特性を得ることができる。また、光配向法によれば、ラビング処理とは異なり、配向処理を配向膜の膜面に対して非接触で行うことができるため、配向処理中の汚れ、ごみ等の発生を抑制することもできる。
【0005】
ここで、これらの配向処理によって均一な配向規制力を生じさせ、表示不良を防止する配向処理方法を開示した文献が知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。また、配向膜を形成する過程の本焼成を行う工程によって、ポリマーの配向度を高めることを開示した文献が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−179328号公報
【特許文献2】特許第4459417号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】サカモト等(K.Sakamoto,et al)、「光配向したポリアミック酸フィルムの面内分子秩序:熱イミド化時の向上(In−plane Molecular Order of a Photo−oriented Polyamic Acid Film:Enhancement upon Thermal Imidization)」、Molecular Crystals and Liquid Crystals、2004、Vol.412、p.293−299
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した通り、光配向法による配向膜(以下、光配向膜とも言う。)の配向処理が検討されている。ここで、アゾベンゼンを主鎖に含むポリイミド配向膜を用いて、液晶表示モードがIPSモードやFFSモードである液晶表示装置を光配向法によって作製したところ、黒表示時に光漏れが発生し、コントラストが低下することがあった。この現象は、上記以外の組み合わせ、例えば、アゾベンゼンを主鎖に含むポリイミド配向膜を用いて、液晶表示モードが垂直配向モード(例えば、VAモード等)である液晶表示装置を、光配向法によって作製した場合には、発生しないものであった。
【0009】
本発明者らは、その原因について検討した結果、上記現象は、光配向処理を行っても、配向膜に含まれるポリマー(以下、単にポリマーとも言う。)の配向度が充分に高まらず、液晶分子の配向乱れを引き起こすためであることを見出した。ここで、配向度とは、例えば、所定の方向に配向するように光配向処理されたポリマーの異方性の程度を示すものである。異方性の程度は、例えば、屈折率異方性や吸収率異方性等で測定することができる。
【0010】
上記特許文献1は、配向膜を用いてカイラルスメクチック液晶を配向させる際に、均一にむらなくハイプレチルトによるユニフォーム配向を達成し、液晶の表示不良を防止できる液晶配向膜の製造方法、及び、液晶素子の製造方法を提供する、としている。しかしながら、上記特許文献1に記載の発明は、ラビング法によって、カイラルスメクチック液晶を配向させるものであり、上記課題を解決するための工夫の余地があった。また、上記特許文献1に記載の発明は、配向膜の配向均一性を高めるための発明であり、ポリマーの配向度を高めるための本発明とは、本質的に課題が異なる。
【0011】
上記特許文献2は、斜め照射を行わずに、液晶配向素子に必要な液晶プレチルト角を発現させることができる液晶配向処理方法、及び、液晶表示素子を提供する、としている。しかしながら、上記特許文献2に記載の発明は、IPSモードやFFSモードの液晶表示装置については何ら開示しておらず、上記課題を解決するための工夫の余地があった。
【0012】
上記非特許文献1は、アゾベンゼンを主鎖に含むポリイミド配向膜の配向度を測定したところ、本焼成前の配向度よりも、本焼成後の配向度の方が高くなる、としている。しかしながら、上記非特許文献1は、本焼成の条件については250℃、1時間を開示しているのみであり、本焼成の条件を最適化するという点で、上記課題を解決するための工夫の余地があった。また、上記非特許文献1は、仮焼成についても何ら開示していない。仮焼成を行わない場合は、光配向膜の膜厚むらが発生し、表示品位が低下してしまう。
【0013】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、光配向膜を有し、表示品位を充分に向上することができる液晶表示装置の製造方法、及び、上記液晶表示装置の製造方法により製造される液晶表示装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、ポリマーの配向度が充分に高まらない原因について種々検討したところ、本焼成の温度を、ポリマーのイミド化が充分に進行する温度まで瞬時に上昇させるようにすると、ポリマーの配向度が充分に高まらないまま固定化されてしまうことを見出した。光配向処理直後のポリマーは、光照射によってポリマーを完全に配向させることができないため、所定の配向方向からずれたものも含んでおり、ポリマーの配向度が充分に高まっていない状態である。よって、上記現象は、その配向度が充分に高まっていないポリマーが、そのままの状態でイミド化することで、配向度が充分に高まらないまま固定化されてしまうためであると考えられる。これは、イミド化したポリマーは剛直性を有するために熱運動性(以下、単に運動性とも言う。)が低く、上述したような所定の配向方向からずれたポリマーが、配向方向に配向し直すことが難しくなるためであるとも考えられる。
【0015】
そこで、本発明者らは、光配向膜を有し、表示品位を充分に向上することができる液晶表示装置の製造方法について種々検討したところ、本焼成を行う工程で、低温から高温へ複数回本焼成する操作を行うことに着目した。そして、ポリマーのイミド化が充分に進行しない程度の温度で、ポリマーの運動性が増し、ポリマーが光配向処理による配向方向により配向しやすくなることが分かった。その結果、ポリマーの配向度が高まり、本焼成の温度プロファイルを最適化すれば、光配向膜を有し、表示品位を充分に向上することができることを見出した。これにより、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
【0016】
すなわち、本発明の一態様によれば、少なくとも一方の基板に光配向膜を有する一対の基板を備える液晶表示装置の製造方法であって、上記光配向膜は、液晶配向剤から形成され、上記少なくとも一方の基板の主面に対して水平な方向に液晶分子を配向させるものであり、上記液晶配向剤は、2種類以上のポリアミック酸又はその誘導体、及び、溶媒を含み、上記2種類以上のポリアミック酸又はその誘導体は、少なくとも下記化学式(1−1)で表されるジアミンと第1のテトラカルボン酸二無水物とを反応させて得られる化合物、及び、少なくとも下記化学式(1−2)で表されるジアミンと第2のテトラカルボン酸二無水物とを反応させて得られる化合物を含み、上記第1及び第2のテトラカルボン酸二無水物の少なくとも1つは、下記化学式(2)で表される化合物であり、上記液晶表示装置の製造方法は、工程(1)上記少なくとも一方の基板上に上記液晶配向剤による膜を形成する工程、工程(2)上記少なくとも一方の基板上の上記液晶配向剤による膜の仮焼成を行う工程、工程(3)仮焼成された上記液晶配向剤による膜に光照射を行う工程、及び、工程(4)光照射された上記液晶配向剤による膜の本焼成を行う工程をこの順で含み、上記工程(4)は、上記液晶配向剤による膜を低温から高温へ複数回本焼成する操作を含む液晶表示装置の製造方法であってもよい。
【0017】
【化1】
(R及びRは独立して−CH又は水素原子である。)
【0018】
【化2】
【0019】
本発明の一態様に係る液晶表示装置の製造方法としては、その他の工程により特に限定されるものではない。
【0020】
また、本発明の別の一態様によれば、上記液晶表示装置の製造方法により製造される、液晶表示モードがIPSモード、又は、FFSモードである液晶表示装置であってもよい。
【0021】
本発明の別の一態様に係る液晶表示装置としては、その他の構成要素により特に限定されるものではなく、液晶表示装置に通常用いられるその他の構成を適宜適用することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、光配向膜を有し、表示品位を充分に向上することができる液晶表示装置の製造方法、及び、上記液晶表示装置の製造方法により製造される液晶表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施例1の仮焼成の温度プロファイルを示すグラフである。
図2】実施例1の本焼成の温度プロファイルを示すグラフである。
図3】実施例2−1の本焼成の温度プロファイルを示すグラフである。
図4】実施例2−2の本焼成の温度プロファイルを示すグラフである。
図5】実施例2−3の本焼成の温度プロファイルを示すグラフである。
図6】実施例2−5の本焼成の温度プロファイルを示すグラフである。
図7】実施例2−6の本焼成の温度プロファイルを示すグラフである。
図8】実施例2−7の本焼成の温度プロファイルを示すグラフである。
図9】実施例3−1の本焼成の温度プロファイルを示すグラフである。
図10】実施例3−2の本焼成の温度プロファイルを示すグラフである。
図11】実施例3−3の本焼成の温度プロファイルを示すグラフである。
図12】実施例3−4の本焼成の温度プロファイルを示すグラフである。
図13】実施例3−5の本焼成の温度プロファイルを示すグラフである。
図14】実施例4−1の仮焼成の温度プロファイルを示すグラフである。
図15】実施例4−2の仮焼成の温度プロファイルを示すグラフである。
図16】実施例4−4の仮焼成の温度プロファイルを示すグラフである。
図17】実施例4−5の仮焼成の温度プロファイルを示すグラフである。
図18】実施例4−6の仮焼成の温度プロファイルを示すグラフである。
図19】実施例6の本焼成の温度プロファイルを示すグラフである。
図20】実施例7の本焼成の温度プロファイルを示すグラフである。
図21】比較例1の本焼成の温度プロファイルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の液晶表示装置の製造方法は、特定の組成を有する液晶配向剤を用いるものである。上記液晶配向剤は、ポリマー固形分として、[A]少なくとも上記化学式(1−1)で表されるジアミンと上記第1のテトラカルボン酸二無水物とを反応させて得られるポリアミック酸又はその誘導体、及び、[B]少なくとも上記化学式(1−2)で表されるジアミンと第2のテトラカルボン酸二無水物とを反応させて得られるポリアミック酸又はその誘導体、を含む。上記第1及び第2のテトラカルボン酸二無水物の少なくとも1つは、上記化学式(2)で表される化合物である。また、本明細書中、ポリマーは、上記2種類以上のポリアミック酸又はその誘導体に相当する。
【0025】
上記液晶配向剤は、更にポリマー固形分として、[C]下記化学式(3−1)〜(3−9)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1つのジアミン、及び、下記化学式(4−1)〜(4−6)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1つのテトラカルボン酸二無水物を反応させて得られるポリアミック酸又はその誘導体を含むものであってもよい。下記化学式(3−1)〜(3−9)で表されるジアミンと、下記化学式(4−1)〜(4−6)で表されるテトラカルボン酸二無水物とは、原料入手の容易さ、ポリマー製造時の容易さ、及び、電気特性等の観点から好適なものである。
【0026】
【化3】
【0027】
上記化学式(3−1)〜(3−9)において、mは1〜12のいずれかの整数である。G21は独立して単結合、−O−、−S−、−S−S−、−SO−、−CO−、−CONH−、−NHCO−、−C(CH−、−C(CF−、−(CHm’−、−O−(CHm’−O−、又は、−S−(CHm’−S−であり、m’は独立して1〜12のいずれかの整数である。G22は独立して単結合、−O−、−S−、−CO−、−C(CH−、−C(CF−、又は、炭素数1〜10のアルキレンである。各化学式中のシクロヘキサン環、及び、ベンゼン環の任意の−Hは、−F、−CH、−OH、−CF、又は、ベンジルで置換されてもよい。環を構成するいずれかの炭素原子に結合位置が固定されていない基は、その環における結合位置が任意であることを示している。そして、シクロヘキサン環、又は、ベンゼン環への−NHの結合位置は、G21又はG22の結合位置を除く任意の位置である。G23は独立して炭素数1〜6のアルキレン、フェニレン、又は、アルキル置換されたフェニレンであり、wは1〜10のいずれかの整数である。G24は−CH−、又は、−NH−である。R21及びR22は独立して炭素数1〜3のアルキル、又は、フェニルである。
【0028】
【化4】
【0029】
上記化学式(4−1)、(4−4)、(4−5)において、Xは独立して単結合、又は、−CHである。
【0030】
上記化学式(4−2)において、Gは単結合、炭素数1〜20のアルキレン、−CO−、−O−、−S−、−SO−、−C(CH−、又は、−C(CF−である。
【0031】
上記化学式(4−2)〜(4−4)において、Yは独立して、下記化学式(5)で表される3価の基の群から選択される1つであり、これらの基の任意の水素は、メチル、エチル、又は、フェニルで置換されてもよい。
【0032】
【化5】
【0033】
上記化学式(4−3)〜(4−5)において、環Aは炭素数3〜10の単環式炭化水素の基、又は、炭素数6〜30の縮合多環式炭化水素の基であり、この基の任意の水素は、メチル、エチル、又は、フェニルで置換されてもよく、環に掛かっている結合手は、環を構成する任意の炭素に連結しており、2本の結合手が同一の炭素に連結してもよい。
【0034】
上記化学式(4−6)において、G10は独立して−O−、−COO−、又は、−OCO−であり、rは独立して0又は1である。
【0035】
上記液晶配向剤によれば、光配向膜を形成することができる。上記光配向膜は、上記少なくとも一方の基板の主面に対して水平な方向に液晶分子を配向させるもの(以下、水平光配向膜とも言う。)である。水平光配向膜は、少なくとも近接する液晶分子を、水平光配向膜の膜面に対して、実質的に水平に配向させるものであればよく、いわゆる、IPSモードやFFSモード等の液晶表示装置を構成する光配向膜であることが好適な実施形態の1つである。なお、実質的に水平に配向させるとは、例えば、液晶分子のプレチルト角が、水平光配向膜の膜面に対して15°以下であることが好ましく、1°以下であることが更に好ましい。
【0036】
本発明の液晶表示装置の製造方法によれば、上述したような液晶配向剤を用いて、上記工程(1)〜(4)を行う。上記工程(1)(以下、液晶配向剤による膜を形成する工程とも言う。)については、例えば、インクジェット方式、又は、スピンコート法により塗布する方法や、フレキソ方式により印刷(転写)する方法等があり、以降の工程によって光配向膜として機能し得るように、上記液晶配向剤を用いて、上記少なくとも一方の基板上に膜が形成されるようにすればよい。膜形成条件は、膜形成方法等に応じて適宜設定すればよい。膜厚等も、通常設定される光配向膜の膜厚等と同様になるようにすればよい。上記少なくとも一方の基板についても、光配向膜形成のための処理が施される基板であればよく、種々の処理がなされた基板であってもよい。
【0037】
上記工程(2)(以下、仮焼成工程とも言う。)については、例えば、上記液晶配向剤による膜を加熱/乾燥し、上記溶媒を蒸発させるものである。ここで、仮焼成工程により、上記溶媒は、部分的に除去されてもよいし、実質的に完全に除去されてもよい。また、仮焼成工程は、例えば、所定の温度に設定された、ホットプレートや、熱風循環式の炉等の加熱装置により行われる。
【0038】
上記工程(3)(以下、光照射工程とも言う。)については、仮焼成された上記液晶配向剤による膜に対して、例えば、紫外線、可視光線、又は、これらの両方によって、光配向処理するものであり、偏光紫外線が好適に用いられる。
【0039】
上記工程(4)(以下、本焼成工程とも言う。)によれば、例えば、ポリマーをイミド化させたり、残存した溶媒を揮発させたりする。また、本焼成工程は、例えば、所定の温度に設定された、ホットプレートや、熱風循環式の炉等の加熱装置により行われる。
【0040】
また、上記「工程(4)は、上記液晶配向剤による膜を低温から高温へ複数回本焼成する操作を含む」とは、例えば、加熱途中で異なる温度の定温領域を複数有するように段階的に行う、又は、昇温速度を複数回変化させる等の、意図して操作された温度プロファイルにより本焼成を行うことである。これは、例えば、上記液晶配向剤による膜が形成された基板を、所定の温度に設定されたホットプレート等の加熱装置を用いて、途中で何ら操作することなく単に1回のみ加熱したと言えるような成り行きで生じた温度プロファイルで本焼成を行うことではない。
【0041】
上記工程(2)及び(4)における温度条件、例えば、仮焼成及び本焼成の最高到達温度は、通常の光配向膜を調製するときに設定される条件とすることができる。また、上記工程(3)における光照射条件も同様に、通常の光配向膜を調製するときに設定される条件とすることができる。
【0042】
以下に実施例を掲げ、本発明について図面を参照して更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。また、以下の実施例は、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜組み合わされてもよいし、変更されてもよい。
【0043】
[実施例1]
実施例1は、本焼成を異なる2つの温度の2段階で行った場合である。実施例1に係る液晶表示装置の製造方法について、以下に順次説明する。
【0044】
(基板の準備)
FFSモードの電極構造を有するガラス基板を用いた。また、このガラス基板に対向する対向基板として、素ガラス基板を用いた。
【0045】
(液晶配向剤)
ポリマー固形分として、上記化合物[A]及び[B]を含み、更に上記化合物[C]を少なくとも1種類含むものを用いた。本実施例では、上記第1及び第2のテトラカルボン酸二無水物は、上記化学式(2)で表されるテトラカルボン酸二無水物である。溶媒として、N−メチル−ピロリドン、及び、ブチルセロソルブを混合したものを用いた。ポリマー固形分濃度は3重量%、N−メチル−ピロリドンは67重量%、ブチルセロソルブは30重量%とした。
【0046】
(液晶配向剤による膜を形成する工程)
2枚の基板上に、液晶配向剤をスピンコート法により塗布し、液晶配向剤による膜を形成した。
【0047】
(仮焼成工程)
2枚の基板上の液晶配向剤による膜に対して、図1に示すような温度プロファイルで仮焼成を行った。図1は、実施例1の仮焼成の温度プロファイルを示すグラフである。60℃に設定されたホットプレート上に両基板を載せると、図1に示すように、室温(25℃)から60℃までの昇温時間は30秒であり、その後、仮焼成を60℃で120秒間行った。ホットプレートとしては、アズワン社製のホットプレート(商品名:EC−1200N)を用いた。また、仮焼成工程後の液晶配向剤による膜の膜厚は、100nm程度であった。
【0048】
(光照射工程)
2枚の基板上の仮焼成工程後の液晶配向剤による膜に対して、波長365nmの直線偏光紫外線を照射した。直線偏光紫外線の偏光度は、波長365nmで30:1とした。直線偏光紫外線の照射は基板法線方向から行い、その照射量は、波長365nmで1000mJ/cmとした。ガラス基板上の画素電極のスリットが伸びる方向と、直線偏光紫外線の偏光方向とがなす角度を10°とした。
【0049】
(本焼成工程)
2枚の基板上の光照射工程後の液晶配向剤による膜に対して、図2に示すような温度プロファイルで本焼成を行った。図2は、実施例1の本焼成の温度プロファイルを示すグラフである。まず、110℃に設定されたホットプレート上に両基板を載せると、図2に示すように、室温(25℃)から110℃までの昇温時間は1分であり、その後、1回目の本焼成を110℃で20分間行った。次に、別に準備した230℃に設定されたホットプレート上へ両基板を載せ替えると、図2に示すように、110℃から230℃までの昇温時間は1分であり、その後、2回目の本焼成を230℃で20分間行った。これにより、両基板上に水平光配向膜を形成した。ホットプレートとしては、アズワン社製のホットプレート(商品名:EC−1200N)を用い、窒素パージしながら本焼成を行った。また、本焼成工程後の水平光配向膜の膜厚は、70nmであった。すなわち、本焼成工程後の配向膜は、仮焼成工程後のそれよりも膜厚が薄くなった。
【0050】
その後、対向基板上にシールを描画して両基板を貼り合わせ、液晶層を形成する液晶材を封入した。その後、貼り合わされた基板を130℃で40分間加熱し、液晶層の再配向処理(液晶分子が熱運動することにより、光配向処理による配向方向により配向する)を行った。以上により、光照射工程における直線偏光紫外線の偏光方向と直交する方向に、液晶分子が一軸配向したFFSモードの液晶表示パネルが得られた。ここで、液晶材は両基板を貼り合わせた後に封入したが、2枚の基板のうちの一方に予め滴下しておいてもよい。液晶材としては、正の誘電率異方性を有する液晶分子を含むものを用いて、その誘電率異方性Δεは6であり、屈折率異方性Δnは0.1であった。また、シール材等は、例えば、通常の液晶表示装置を製造する工程と同様に形成されるものであってもよい。
【0051】
上記の各工程では、イエロー蛍光灯の下で作業を行い、液晶表示パネルが蛍光灯からの紫外線に曝されないようにした。その後、液晶表示パネルに、偏光板、バックライト等の部材を適宜配置させることで、実施例1に係る液晶表示装置が得られた。
【0052】
[比較例1]
比較例1は、実施例1において本焼成を途中で何ら操作することなく1回のみ行った場合である。比較例1に係る液晶表示装置の製造方法は、本焼成工程以外、実施例1のそれと同様であるため、重複する点については説明を省略する。
【0053】
(本焼成工程)
2枚の基板上の光照射工程後の液晶配向剤による膜に対して、図21に示すような温度プロファイルで本焼成を行った。図21は、比較例1の本焼成の温度プロファイルを示すグラフである。230℃に設定されたホットプレート上に両基板を載せると、図21に示すように、室温(25℃)から230℃までの昇温時間は2分であり、その後、本焼成を230℃で40分間行った。これにより、両基板上に水平光配向膜を形成した。
【0054】
[評価結果:実施例1、及び、比較例1]
実施例1、及び、比較例1に係る液晶表示装置の製造方法により製造された液晶表示装置について、コントラストを測定した。また、実施例1については、VHR(Voltage Holding Ratio:電圧保持率)も測定した。VHRとは、1フレーム期間中に充電された電荷が保持される割合であり、通常、本焼成によるイミド化が不足すると、VHRが低下してしまうことがある。
【0055】
(コントラストの測定方法)
液晶表示装置の構成としては、光源に富士フィルム社製の白色バックライト(商品名:カラーイルミネータープロA4)を用いて、サンリッツ社製の偏光板(商品名:HLC2−2518)2枚の間に液晶表示パネルを配置した。なお、光源側に配置された偏光板の透過容易軸と、液晶層の遅相軸とが、平行になるように配置した。コントラストは、(コントラスト)=(パラレルニコル輝度)/(クロスニコル輝度)で測定され、液晶層には電圧を印加しない状態で行った。輝度(パラレルニコル輝度、及び、クロスニコル輝度)の測定には、トプコン社製の分光放射計(商品名:SR−UL2)を用いた。
【0056】
(VHRの測定方法)
VHRの測定には、東陽テクニカ社製の液晶物性評価システム(商品名:6254型)を用いた。印加電圧は5V、保持時間は16.67ms、測定温度は60℃とした。
【0057】
(評価結果)
各例の評価結果について、以下に説明する。
【0058】
(実施例1)
コントラストは1800以上であり、比較例1の500未満と比べて非常に高く、製品に適したレベルであった。これは、実施例1で、ポリマーの配向度が高く、クロスニコル輝度が低くなったためである。また、VHRは99%であり、製品に適したレベルであった。よって、実施例1に係る液晶表示装置の製造方法によれば、表示品位を充分に向上することができる。また、実施例1の本焼成工程のタクトタイムは、比較例1の本焼成工程のそれと同じであるため、実施例1に係る液晶表示装置の製造方法によれば、タクトタイムを変えることなく、ポリマーの配向度を高めることができる。
【0059】
(比較例1)
コントラストは500未満であり、非常に低かった。これは、比較例1で、ポリマーの配向度が低く、クロスニコル輝度が高くなったためである。
【0060】
実施例1のコントラストが、比較例1のそれと比べて非常に高かった理由について説明する。実施例1では、1回目の本焼成を110℃で行うことで、ポリマーの運動性を高め、その結果、ポリマーの配向度を高めることができる。ここで、ポリアミック酸を含むポリマーを用いる場合は、160℃程度からイミド化が顕著に始まると考えられているため、2回目の本焼成を230℃で行うことで、ポリマーのイミド化が充分に進行し、高い配向度が固定化される。一方、比較例1では、本焼成工程の加熱途中で何ら操作されることなく、ポリマーのイミド化が充分に進行する温度(230℃)まで瞬時に上昇してしまうため、ポリマーの配向度が充分に高まらないまま固定化されてしまう。よって、実施例1のコントラストは、比較例1のそれと比べて非常に高かった。
【0061】
[実施例2−1]
実施例2−1は、実施例1において1回目の本焼成の温度を80℃とした場合である。実施例2−1に係る液晶表示装置の製造方法は、本焼成工程以外、実施例1のそれと同様であるため、重複する点については説明を省略する。
【0062】
(本焼成工程)
2枚の基板上の光照射工程後の液晶配向剤による膜に対して、図3に示すような温度プロファイルで本焼成を行った。図3は、実施例2−1の本焼成の温度プロファイルを示すグラフである。まず、80℃に設定されたホットプレート上に両基板を載せると、図3に示すように、室温(25℃)から80℃までの昇温時間は0.5分であり、その後、1回目の本焼成を80℃で20分間行った。次に、別に準備した230℃に設定されたホットプレート上へ両基板を載せ替えると、図3に示すように、80℃から230℃までの昇温時間は1.5分であり、その後、2回目の本焼成を230℃で20分間行った。これにより、両基板上に水平光配向膜を形成した。
【0063】
[実施例2−2]
実施例2−2は、実施例2−1において1回目の本焼成の温度を90℃とした場合である。実施例2−2に係る液晶表示装置の製造方法は、本焼成工程以外、実施例2−1のそれと同様であるため、重複する点については説明を省略する。
【0064】
(本焼成工程)
2枚の基板上の光照射工程後の液晶配向剤による膜に対して、図4に示すような温度プロファイルで本焼成を行った。図4は、実施例2−2の本焼成の温度プロファイルを示すグラフである。まず、90℃に設定されたホットプレート上に両基板を載せると、図4に示すように、室温(25℃)から90℃までの昇温時間は0.5分であり、その後、1回目の本焼成を90℃で20分間行った。次に、別に準備した230℃に設定されたホットプレート上へ両基板を載せ替えると、図4に示すように、90℃から230℃までの昇温時間は1.5分であり、その後、2回目の本焼成を230℃で20分間行った。これにより、両基板上に水平光配向膜を形成した。
【0065】
[実施例2−3]
実施例2−3は、実施例2−1において1回目の本焼成の温度を100℃とした場合である。実施例2−3に係る液晶表示装置の製造方法は、本焼成工程以外、実施例2−1のそれと同様であるため、重複する点については説明を省略する。
【0066】
(本焼成工程)
2枚の基板上の光照射工程後の液晶配向剤による膜に対して、図5に示すような温度プロファイルで本焼成を行った。図5は、実施例2−3の本焼成の温度プロファイルを示すグラフである。まず、100℃に設定されたホットプレート上に両基板を載せると、図5に示すように、室温(25℃)から100℃までの昇温時間は1分であり、その後、1回目の本焼成を100℃で20分間行った。次に、別に準備した230℃に設定されたホットプレート上へ両基板を載せ替えると、図5に示すように、100℃から230℃までの昇温時間は1分であり、その後、2回目の本焼成を230℃で20分間行った。これにより、両基板上に水平光配向膜を形成した。
【0067】
[実施例2−4]
実施例2−4は、実施例2−1において1回目の本焼成の温度を110℃とした場合であり、実施例1と同様である。実施例2−4に係る液晶表示装置の製造方法は、実施例1のそれと同様であるため、重複する点については説明を省略する。
【0068】
[実施例2−5]
実施例2−5は、実施例2−1において1回目の本焼成の温度を120℃とした場合である。実施例2−5に係る液晶表示装置の製造方法は、本焼成工程以外、実施例2−1のそれと同様であるため、重複する点については説明を省略する。
【0069】
(本焼成工程)
2枚の基板上の光照射工程後の液晶配向剤による膜に対して、図6に示すような温度プロファイルで本焼成を行った。図6は、実施例2−5の本焼成の温度プロファイルを示すグラフである。まず、120℃に設定されたホットプレート上に両基板を載せると、図6に示すように、室温(25℃)から120℃までの昇温時間は1分であり、その後、1回目の本焼成を120℃で20分間行った。次に、別に準備した230℃に設定されたホットプレート上へ両基板を載せ替えると、図6に示すように、120℃から230℃までの昇温時間は1分であり、その後、2回目の本焼成を230℃で20分間行った。これにより、両基板上に水平光配向膜を形成した。
【0070】
[実施例2−6]
実施例2−6は、実施例2−1において1回目の本焼成の温度を130℃とした場合である。実施例2−6に係る液晶表示装置の製造方法は、本焼成工程以外、実施例2−1のそれと同様であるため、重複する点については説明を省略する。
【0071】
(本焼成工程)
2枚の基板上の光照射工程後の液晶配向剤による膜に対して、図7に示すような温度プロファイルで本焼成を行った。図7は、実施例2−6の本焼成の温度プロファイルを示すグラフである。まず、130℃に設定されたホットプレート上に両基板を載せると、図7に示すように、室温(25℃)から130℃までの昇温時間は1分であり、その後、1回目の本焼成を130℃で20分間行った。次に、別に準備した230℃に設定されたホットプレート上へ両基板を載せ替えると、図7に示すように、130℃から230℃までの昇温時間は1分であり、その後、2回目の本焼成を230℃で20分間行った。これにより、両基板上に水平光配向膜を形成した。
【0072】
[実施例2−7]
実施例2−7は、実施例2−1において1回目の本焼成の温度を140℃とした場合である。実施例2−7に係る液晶表示装置の製造方法は、本焼成工程以外、実施例2−1のそれと同様であるため、重複する点については説明を省略する。
【0073】
(本焼成工程)
2枚の基板上の光照射工程後の液晶配向剤による膜に対して、図8に示すような温度プロファイルで本焼成を行った。図8は、実施例2−7の本焼成の温度プロファイルを示すグラフである。まず、140℃に設定されたホットプレート上に両基板を載せると、図8に示すように、室温(25℃)から140℃までの昇温時間は1分であり、その後、1回目の本焼成を140℃で20分間行った。次に、別に準備した230℃に設定されたホットプレート上へ両基板を載せ替えると、図8に示すように、140℃から230℃までの昇温時間は1分であり、その後、2回目の本焼成を230℃で20分間行った。これにより、両基板上に水平光配向膜を形成した。
【0074】
[評価結果:実施例2−1〜2−7]
実施例2−1〜2−7に係る液晶表示装置の製造方法により製造された液晶表示装置について、本焼成の温度、並びに、コントラスト及びVHRの評価結果を表1にまとめた。ここで、コントラスト及びVHRについては、実施例1と同様な方法で測定した。
【0075】
(コントラスト及びVHRの評価方法)
コントラストについては、レベル1:コントラストが1800以上、レベル2:コントラストが1200以上、1800未満、レベル3:コントラストが500以上、1200未面、レベル4:コントラストが500未満、の4段階で評価した。ここで、評価結果がレベル1、2又は3である場合を製品に適したレベルであると判断し、評価結果がレベル4である場合を製品に適したレベルに達していないと判断した。VHRについては、98%以上である場合を製品に適したレベルであると判断した。
【0076】
【表1】
【0077】
(評価結果)
各例の評価結果について、以下に説明する。
【0078】
(実施例2−1)
コントラストの評価結果はレベル2であり、製品に適したレベルであった。これは、実施例2−1で、ポリマーの配向度が高く、クロスニコル輝度が低くなったためである。また、VHRは99%であり、製品に適したレベルであった。よって、実施例2−1に係る液晶表示装置の製造方法によれば、表示品位を充分に向上することができる。また、実施例2−1の本焼成工程のタクトタイムは、比較例1の本焼成工程のそれと同じであるため、実施例2−1に係る液晶表示装置の製造方法によれば、タクトタイムを変えることなく、ポリマーの配向度を高めることができる。
【0079】
(実施例2−2)
コントラストの評価結果はレベル2であり、製品に適したレベルであった。これは、実施例2−2で、ポリマーの配向度が高く、クロスニコル輝度が低くなったためである。また、VHRは99%であり、製品に適したレベルであった。よって、実施例2−2に係る液晶表示装置の製造方法によれば、表示品位を充分に向上することができる。また、実施例2−2の本焼成工程のタクトタイムは、比較例1の本焼成工程のそれと同じであるため、実施例2−2に係る液晶表示装置の製造方法によれば、タクトタイムを変えることなく、ポリマーの配向度を高めることができる。
【0080】
(実施例2−3)
コントラストの評価結果はレベル1であり、製品に適したレベルであった。これは、実施例2−3で、ポリマーの配向度が高く、クロスニコル輝度が低くなったためである。また、VHRは99%であり、製品に適したレベルであった。よって、実施例2−3に係る液晶表示装置の製造方法によれば、表示品位を充分に向上することができる。また、実施例2−3の本焼成工程のタクトタイムは、比較例1の本焼成工程のそれと同じであるため、実施例2−3に係る液晶表示装置の製造方法によれば、タクトタイムを変えることなく、ポリマーの配向度を高めることができる。
【0081】
(実施例2−4)
コントラストの評価結果はレベル1であり、製品に適したレベルであった。これは、実施例2−4で、ポリマーの配向度が高く、クロスニコル輝度が低くなったためである。また、VHRは99%であり、製品に適したレベルであった。よって、実施例2−4に係る液晶表示装置の製造方法によれば、表示品位を充分に向上することができる。また、実施例2−4の本焼成工程のタクトタイムは、比較例1の本焼成工程のそれと同じであるため、実施例2−4に係る液晶表示装置の製造方法によれば、タクトタイムを変えることなく、ポリマーの配向度を高めることができる。
【0082】
(実施例2−5)
コントラストの評価結果はレベル1であり、製品に適したレベルであった。これは、実施例2−5で、ポリマーの配向度が高く、クロスニコル輝度が低くなったためである。また、VHRは99%であり、製品に適したレベルであった。よって、実施例2−5に係る液晶表示装置の製造方法によれば、表示品位を充分に向上することができる。また、実施例2−5の本焼成工程のタクトタイムは、比較例1の本焼成工程のそれと同じであるため、実施例2−5に係る液晶表示装置の製造方法によれば、タクトタイムを変えることなく、ポリマーの配向度を高めることができる。
【0083】
(実施例2−6)
コントラストの評価結果はレベル2であり、製品に適したレベルであった。これは、実施例2−6で、ポリマーの配向度が高く、クロスニコル輝度が低くなったためである。また、VHRは99%であり、製品に適したレベルであった。よって、実施例2−6に係る液晶表示装置の製造方法によれば、表示品位を充分に向上することができる。また、実施例2−6の本焼成工程のタクトタイムは、比較例1の本焼成工程のそれと同じであるため、実施例2−6に係る液晶表示装置の製造方法によれば、タクトタイムを変えることなく、ポリマーの配向度を高めることができる。
【0084】
(実施例2−7)
コントラストの評価結果はレベル2であり、製品に適したレベルであった。これは、実施例2−7で、ポリマーの配向度が高く、クロスニコル輝度が低くなったためである。また、VHRは99%であり、製品に適したレベルであった。よって、実施例2−7に係る液晶表示装置の製造方法によれば、表示品位を充分に向上することができる。また、実施例2−7の本焼成工程のタクトタイムは、比較例1の本焼成工程のそれと同じであるため、実施例2−7に係る液晶表示装置の製造方法によれば、タクトタイムを変えることなく、ポリマーの配向度を高めることができる。
【0085】
実施例2−3〜2−5のコントラストが、他の実施例のそれと比べて高かった理由について説明する。ポリマーの配向度を高めるためには、まず、ポリマーのイミド化が充分に進行しない程度の温度でポリマーの運動性を高め、その後、ポリマーのイミド化を充分に進行させることで高い配向度を固定化することが重要である。ここで、1回目の本焼成の温度が高過ぎると、イミド化が徐々に始まり、ポリマーの剛直性が増すため、コントラストが低下する可能性がある。1回目の本焼成の温度が低過ぎると、ポリマーの運動性が低下するため、コントラストが低下する可能性がある。よって、実施例2−3〜2−5の1回目の本焼成の温度(100〜120℃)を選択することで、ポリマーの運動性がより高まり、その結果、ポリマーの配向度をより高めることができる。その後、2回目の本焼成で高い配向度を固定化するとともに、残存した溶媒を揮発させて良好な電気特性(VHR)を得ることができる。
【0086】
以上より、1回目の本焼成の温度は、100℃以上、120℃以下であることが好ましいことが分かった。1回目の本焼成の温度が100℃未満である場合は、ポリマーの運動性が充分に高まらない可能性がある。1回目の本焼成の温度が120℃を超える場合は、ポリマーのイミド化が徐々に始まり、ポリマーの配向度が充分に高まらない可能性がある。また、1回目の本焼成は20分間行うものとしたが、ポリマーの運動性を高める観点から、これ以上の時間で行っても同様の効果が得られるのは明らかである。
【0087】
[実施例3−1]
実施例3−1は、実施例1において2回目の本焼成の温度を180℃とした場合である。実施例3−1に係る液晶表示装置の製造方法は、本焼成工程以外、実施例1のそれと同様であるため、重複する点については説明を省略する。
【0088】
(本焼成工程)
2枚の基板上の光照射工程後の液晶配向剤による膜に対して、図9に示すような温度プロファイルで本焼成を行った。図9は、実施例3−1の本焼成の温度プロファイルを示すグラフである。まず、110℃に設定されたホットプレート上に両基板を載せると、図9に示すように、室温(25℃)から110℃までの昇温時間は1分であり、その後、1回目の本焼成を110℃で20分間行った。次に、別に準備した180℃に設定されたホットプレート上へ両基板を載せ替えると、図9に示すように、110℃から180℃までの昇温時間は1分であり、その後、2回目の本焼成を180℃で20分間行った。これにより、両基板上に水平光配向膜を形成した。
【0089】
[実施例3−2]
実施例3−2は、実施例3−1において2回目の本焼成の温度を190℃とした場合である。実施例3−2に係る液晶表示装置の製造方法は、本焼成工程以外、実施例3−1のそれと同様であるため、重複する点については説明を省略する。
【0090】
(本焼成工程)
2枚の基板上の光照射工程後の液晶配向剤による膜に対して、図10に示すような温度プロファイルで本焼成を行った。図10は、実施例3−2の本焼成の温度プロファイルを示すグラフである。まず、110℃に設定されたホットプレート上に両基板を載せると、図10に示すように、室温(25℃)から110℃までの昇温時間は1分であり、その後、1回目の本焼成を110℃で20分間行った。次に、別に準備した190℃に設定されたホットプレート上へ両基板を載せ替えると、図10に示すように、110℃から190℃までの昇温時間は1分であり、その後、2回目の本焼成を190℃で20分間行った。これにより、両基板上に水平光配向膜を形成した。
【0091】
[実施例3−3]
実施例3−3は、実施例3−1において2回目の本焼成の温度を200℃とした場合である。実施例3−3に係る液晶表示装置の製造方法は、本焼成工程以外、実施例3−1のそれと同様であるため、重複する点については説明を省略する。
【0092】
(本焼成工程)
2枚の基板上の光照射工程後の液晶配向剤による膜に対して、図11に示すような温度プロファイルで本焼成を行った。図11は、実施例3−3の本焼成の温度プロファイルを示すグラフである。まず、110℃に設定されたホットプレート上に両基板を載せると、図11に示すように、室温(25℃)から110℃までの昇温時間は1分であり、その後、1回目の本焼成を110℃で20分間行った。次に、別に準備した200℃に設定されたホットプレート上へ両基板を載せ替えると、図11に示すように、110℃から200℃までの昇温時間は1分であり、その後、2回目の本焼成を200℃で20分間行った。これにより、両基板上に水平光配向膜を形成した。
【0093】
[実施例3−4]
実施例3−4は、実施例3−1において2回目の本焼成の温度を210℃とした場合である。実施例3−4に係る液晶表示装置の製造方法は、本焼成工程以外、実施例3−1のそれと同様であるため、重複する点については説明を省略する。
【0094】
(本焼成工程)
2枚の基板上の光照射工程後の液晶配向剤による膜に対して、図12に示すような温度プロファイルで本焼成を行った。図12は、実施例3−4の本焼成の温度プロファイルを示すグラフである。まず、110℃に設定されたホットプレート上に両基板を載せると、図12に示すように、室温(25℃)から110℃までの昇温時間は1分であり、その後、1回目の本焼成を110℃で20分間行った。次に、別に準備した210℃に設定されたホットプレート上へ両基板を載せ替えると、図12に示すように、110℃から210℃までの昇温時間は1分であり、その後、2回目の本焼成を210℃で20分間行った。これにより、両基板上に水平光配向膜を形成した。
【0095】
[実施例3−5]
実施例3−5は、実施例3−1において2回目の本焼成の温度を220℃とした場合である。実施例3−5に係る液晶表示装置の製造方法は、本焼成工程以外、実施例3−1のそれと同様であるため、重複する点については説明を省略する。
【0096】
(本焼成工程)
2枚の基板上の光照射工程後の液晶配向剤による膜に対して、図13に示すような温度プロファイルで本焼成を行った。図13は、実施例3−5の本焼成の温度プロファイルを示すグラフである。まず、110℃に設定されたホットプレート上に両基板を載せると、図13に示すように、室温(25℃)から110℃までの昇温時間は1分であり、その後、1回目の本焼成を110℃で20分間行った。次に、別に準備した220℃に設定されたホットプレート上へ両基板を載せ替えると、図13に示すように、110℃から220℃までの昇温時間は1分であり、その後、2回目の本焼成を220℃で20分間行った。これにより、両基板上に水平光配向膜を形成した。
【0097】
[実施例3−6]
実施例3−6は、実施例3−1において2回目の本焼成の温度を230℃とした場合であり、実施例1と同様である。実施例3−6に係る液晶表示装置の製造方法は、実施例1のそれと同様であるため、重複する点については説明を省略する。
【0098】
[評価結果:実施例3−1〜3−6]
実施例3−1〜3−6に係る液晶表示装置の製造方法により製造された液晶表示装置について、本焼成の温度、並びに、コントラスト及びVHRの評価結果を表2にまとめた。ここで、コントラスト及びVHRについては、実施例2−1〜2−7と同様な方法で測定及び評価した。
【0099】
【表2】
【0100】
(実施例3−1)
コントラストの評価結果はレベル2であり、製品に適したレベルであった。これは、実施例3−1で、ポリマーの配向度が高く、クロスニコル輝度が低くなったためである。また、VHRは98%であり、製品に適したレベルであった。よって、実施例3−1に係る液晶表示装置の製造方法によれば、表示品位を充分に向上することができる。また、実施例3−1の本焼成工程のタクトタイムは、比較例1の本焼成工程のそれと同じであるため、実施例3−1に係る液晶表示装置の製造方法によれば、タクトタイムを変えることなく、ポリマーの配向度を高めることができる。
【0101】
(実施例3−2)
コントラストの評価結果はレベル1であり、製品に適したレベルであった。これは、実施例3−2で、ポリマーの配向度が高く、クロスニコル輝度が低くなったためである。また、VHRは98%であり、製品に適したレベルであった。よって、実施例3−2に係る液晶表示装置の製造方法によれば、表示品位を充分に向上することができる。また、実施例3−2の本焼成工程のタクトタイムは、比較例1の本焼成工程のそれと同じであるため、実施例3−2に係る液晶表示装置の製造方法によれば、タクトタイムを変えることなく、ポリマーの配向度を高めることができる。
【0102】
(実施例3−3)
コントラストの評価結果はレベル1であり、製品に適したレベルであった。これは、実施例3−3で、ポリマーの配向度が高く、クロスニコル輝度が低くなったためである。また、VHRは99%であり、製品に適したレベルであった。よって、実施例3−3に係る液晶表示装置の製造方法によれば、表示品位を充分に向上することができる。また、実施例3−3の本焼成工程のタクトタイムは、比較例1の本焼成工程のそれと同じであるため、実施例3−3に係る液晶表示装置の製造方法によれば、タクトタイムを変えることなく、ポリマーの配向度を高めることができる。
【0103】
(実施例3−4)
コントラストの評価結果はレベル1であり、製品に適したレベルであった。これは、実施例3−4で、ポリマーの配向度が高く、クロスニコル輝度が低くなったためである。また、VHRは99%であり、製品に適したレベルであった。よって、実施例3−4に係る液晶表示装置の製造方法によれば、表示品位を充分に向上することができる。また、実施例3−4の本焼成工程のタクトタイムは、比較例1の本焼成工程のそれと同じであるため、実施例3−4に係る液晶表示装置の製造方法によれば、タクトタイムを変えることなく、ポリマーの配向度を高めることができる。
【0104】
(実施例3−5)
コントラストの評価結果はレベル1であり、製品に適したレベルであった。これは、実施例3−5で、ポリマーの配向度が高く、クロスニコル輝度が低くなったためである。また、VHRは99%であり、製品に適したレベルであった。よって、実施例3−5に係る液晶表示装置の製造方法によれば、表示品位を充分に向上することができる。また、実施例3−5の本焼成工程のタクトタイムは、比較例1の本焼成工程のそれと同じであるため、実施例3−5に係る液晶表示装置の製造方法によれば、タクトタイムを変えることなく、ポリマーの配向度を高めることができる。
【0105】
(実施例3−6)
コントラストの評価結果はレベル1であり、製品に適したレベルであった。これは、実施例3−6で、ポリマーの配向度が高く、クロスニコル輝度が低くなったためである。また、VHRは99%であり、製品に適したレベルであった。よって、実施例3−6に係る液晶表示装置の製造方法によれば、表示品位を充分に向上することができる。また、実施例3−6の本焼成工程のタクトタイムは、比較例1の本焼成工程のそれと同じであるため、実施例3−6に係る液晶表示装置の製造方法によれば、タクトタイムを変えることなく、ポリマーの配向度を高めることができる。
【0106】
実施例3−3〜3−6の表示品位(コントラスト及びVHR)が、実施例3−1、3−2のそれと比べて良好であった理由について説明する。2回目の本焼成の温度が高くなるほど、ポリマーのイミド化が充分に進行し、残存した溶媒も揮発して減少するため、VHRがより高まる。また、2回目の本焼成の温度が高くなるほど、ポリマーのイミド化が充分に進行するため、1回目の本焼成で得られた高い配向度を固定化することができ、その結果、コントラストがより高まる。よって、実施例3−3〜3−6の2回目の本焼成の温度(200℃以上)を選択することで、より良好な表示品位を得ることができる。
【0107】
以上より、2回目の本焼成の温度は、200℃以上であることが好ましいことが分かった。2回目の本焼成の温度が200℃未満である場合は、ポリマーのイミド化、及び、残存した溶媒の揮発が充分に進行しない可能性がある。また、2回目の本焼成の温度は、200℃以上、250℃以下であることが更に好ましい。2枚の基板のうちの一方がカラーフィルタ層を有し、2回目の本焼成の温度が250℃を超える場合は、カラーフィルタ層の退色が発生し、表示品位が低下する可能性がある。
【0108】
[実施例4−1]
実施例4−1は、実施例1において仮焼成の温度を40℃とした場合である。実施例4−1に係る液晶表示装置の製造方法は、仮焼成工程以外、実施例1のそれと同様であるため、重複する点については説明を省略する。
【0109】
(仮焼成工程)
2枚の基板上の液晶配向剤による膜に対して、図14に示すような温度プロファイルで仮焼成を行った。図14は、実施例4−1の仮焼成の温度プロファイルを示すグラフである。40℃に設定されたホットプレート上に両基板を載せると、図14に示すように、室温(25℃)から40℃までの昇温時間は30秒であり、その後、仮焼成を40℃で120秒間行った。
【0110】
[実施例4−2]
実施例4−2は、実施例4−1において仮焼成の温度を50℃とした場合である。実施例4−2に係る液晶表示装置の製造方法は、仮焼成工程以外、実施例4−1のそれと同様であるため、重複する点については説明を省略する。
【0111】
(仮焼成工程)
2枚の基板上の液晶配向剤による膜に対して、図15に示すような温度プロファイルで仮焼成を行った。図15は、実施例4−2の仮焼成の温度プロファイルを示すグラフである。50℃に設定されたホットプレート上に両基板を載せると、図15に示すように、室温(25℃)から50℃までの昇温時間は30秒であり、その後、仮焼成を50℃で120秒間行った。
【0112】
[実施例4−3]
実施例4−3は、実施例4−1において仮焼成の温度を60℃とした場合であり、実施例1と同様である。実施例4−3に係る液晶表示装置の製造方法は、実施例1のそれと同様であるため、重複する点については説明を省略する。
【0113】
[実施例4−4]
実施例4−4は、実施例4−1において仮焼成の温度を70℃とした場合である。実施例4−4に係る液晶表示装置の製造方法は、仮焼成工程以外、実施例4−1のそれと同様であるため、重複する点については説明を省略する。
【0114】
(仮焼成工程)
2枚の基板上の液晶配向剤による膜に対して、図16に示すような温度プロファイルで仮焼成を行った。図16は、実施例4−4の仮焼成の温度プロファイルを示すグラフである。70℃に設定されたホットプレート上に両基板を載せると、図16に示すように、室温(25℃)から70℃までの昇温時間は30秒であり、その後、仮焼成を70℃で120秒間行った。
【0115】
[実施例4−5]
実施例4−5は、実施例4−1において仮焼成の温度を80℃とした場合である。実施例4−5に係る液晶表示装置の製造方法は、仮焼成工程以外、実施例4−1のそれと同様であるため、重複する点については説明を省略する。
【0116】
(仮焼成工程)
2枚の基板上の液晶配向剤による膜に対して、図17に示すような温度プロファイルで仮焼成を行った。図17は、実施例4−5の仮焼成の温度プロファイルを示すグラフである。80℃に設定されたホットプレート上に両基板を載せると、図17に示すように、室温(25℃)から80℃までの昇温時間は30秒であり、その後、仮焼成を80℃で120秒間行った。
【0117】
[実施例4−6]
実施例4−6は、実施例4−1において仮焼成の温度を90℃とした場合である。実施例4−6に係る液晶表示装置の製造方法は、仮焼成工程以外、実施例4−1のそれと同様であるため、重複する点については説明を省略する。
【0118】
(仮焼成工程)
2枚の基板上の液晶配向剤による膜に対して、図18に示すような温度プロファイルで仮焼成を行った。図18は、実施例4−6の仮焼成の温度プロファイルを示すグラフである。90℃に設定されたホットプレート上に両基板を載せると、図18に示すように、室温(25℃)から90℃までの昇温時間は30秒であり、その後、仮焼成を90℃で120秒間行った。
【0119】
[評価結果:実施例4−1〜4−6]
実施例4−1〜4−6に係る液晶表示装置の製造方法により製造された液晶表示装置について、仮焼成の温度、並びに、コントラスト及びVHRの評価結果を表3にまとめた。ここで、コントラスト及びVHRについては、実施例2−1〜2−7と同様な方法で測定及び評価した。
【0120】
【表3】
【0121】
(実施例4−1)
コントラストの評価結果はレベル1であり、製品に適したレベルであった。これは、実施例4−1で、ポリマーの配向度が高く、クロスニコル輝度が低くなったためである。また、VHRは99%であり、製品に適したレベルであった。よって、実施例4−1に係る液晶表示装置の製造方法によれば、表示品位を充分に向上することができる。
【0122】
(実施例4−2)
コントラストの評価結果はレベル1であり、製品に適したレベルであった。これは、実施例4−2で、ポリマーの配向度が高く、クロスニコル輝度が低くなったためである。また、VHRは99%であり、製品に適したレベルであった。よって、実施例4−2に係る液晶表示装置の製造方法によれば、表示品位を充分に向上することができる。
【0123】
(実施例4−3)
コントラストの評価結果はレベル1であり、製品に適したレベルであった。これは、実施例4−3で、ポリマーの配向度が高く、クロスニコル輝度が低くなったためである。また、VHRは99%であり、製品に適したレベルであった。よって、実施例4−3に係る液晶表示装置の製造方法によれば、表示品位を充分に向上することができる。
【0124】
(実施例4−4)
コントラストの評価結果はレベル1であり、製品に適したレベルであった。これは、実施例4−4で、ポリマーの配向度が高く、クロスニコル輝度が低くなったためである。また、VHRは99%であり、製品に適したレベルであった。よって、実施例4−4に係る液晶表示装置の製造方法によれば、表示品位を充分に向上することができる。
【0125】
(実施例4−5)
コントラストの評価結果はレベル2であり、製品に適したレベルであった。これは、実施例4−5で、ポリマーの配向度が高く、クロスニコル輝度が低くなったためである。また、VHRは99%であり、製品に適したレベルであった。よって、実施例4−5に係る液晶表示装置の製造方法によれば、表示品位を充分に向上することができる。
【0126】
(実施例4−6)
コントラストの評価結果はレベル2であり、製品に適したレベルであった。これは、実施例4−6で、ポリマーの配向度が高く、クロスニコル輝度が低くなったためである。また、VHRは99%であり、製品に適したレベルであった。よって、実施例4−6に係る液晶表示装置の製造方法によれば、表示品位を充分に向上することができる。
【0127】
実施例4−1〜4−4のコントラストが、実施例4−5、4−6のそれと比べて高かった理由について説明する。仮焼成の温度が高過ぎると、液晶配向剤による膜中の溶媒が揮発し過ぎることになり、仮焼成工程後の溶媒の残存量が少なくなる。その結果、光配向処理に伴うポリマーの運動性が低くなってしまい、ポリマーの配向度が高まらない。そのため、光配向膜の膜質や表示品位に影響を与えない程度で、仮焼成の温度を低くすると、仮焼成工程後の溶媒の残存量が相対的に多くなり、液晶配向剤による膜の全量に対するポリマーの密度が低くなる。その結果、光配向処理に伴うポリマーの運動性が増し、光配向処理後のポリマーの配向度が高まると考えられる。よって、実施例4−1〜4−4の仮焼成の温度(70℃以下)を選択することで、より良好な表示品位を得ることができる。
【0128】
以上より、仮焼成の温度は、70℃以下であることが好ましいことが分かった。仮焼成の温度が70℃を超える場合は、仮焼成工程後の溶媒の残存量が少なくなり、ポリマーの運動性が充分に高まらない可能性がある。また、仮焼成の温度は、40℃以上、70℃以下であることが更に好ましい。仮焼成の温度が40℃未満である場合は、溶媒の対流による膜厚むらが発生し、表示品位が低下する可能性がある。また、仮焼成の時間は、30秒以上、600秒以下であることが好ましい。ただし、仮焼成工程後の液晶配向剤による膜において、溶媒(液相)からポリマー(固形分)が析出している状態が前提である。仮焼成の時間が短過ぎると、溶媒の残存量が多過ぎることによるむらが発生してしまい、仮焼成の時間が長過ぎると、製造効率が悪化する可能性がある。
【0129】
[実施例5−1]
実施例5−1は、実施例1において直線偏光紫外線の偏光度を5:1とした場合である。実施例5−1に係る液晶表示装置の製造方法は、光照射工程以外、実施例1のそれと同様であるため、重複する点については説明を省略する。
【0130】
(光照射工程)
2枚の基板上の仮焼成工程後の液晶配向剤による膜に対して、波長365nmの直線偏光紫外線を照射した。直線偏光紫外線の偏光度は、波長365nmで5:1とした。直線偏光紫外線の照射は基板法線方向から行い、その照射量は、波長365nmで1000mJ/cmとした。ガラス基板上の画素電極のスリットが伸びる方向と、直線偏光紫外線の偏光方向とがなす角度を10°とした。
【0131】
[実施例5−2]
実施例5−2は、実施例5−1において直線偏光紫外線の偏光度を30:1とした場合であり、実施例1と同様である。実施例5−2に係る液晶表示装置の製造方法は、実施例1のそれと同様であるため、重複する点については説明を省略する。
【0132】
[実施例5−3]
実施例5−3は、実施例5−1において直線偏光紫外線の偏光度を700:1とした場合である。実施例5−3に係る液晶表示装置の製造方法は、光照射工程以外、実施例5−1のそれと同様であるため、重複する点については説明を省略する。
【0133】
(光照射工程)
2枚の基板上の仮焼成工程後の液晶配向剤による膜に対して、波長365nmの直線偏光紫外線を照射した。直線偏光紫外線の偏光度は、波長365nmで700:1とした。直線偏光紫外線の照射は基板法線方向から行い、その照射量は、波長365nmで1000mJ/cmとした。ガラス基板上の画素電極のスリットが伸びる方向と、直線偏光紫外線の偏光方向とがなす角度を10°とした。
【0134】
[評価結果:実施例5−1〜5−3]
実施例5−1〜5−3に係る液晶表示装置の製造方法により製造された液晶表示装置について、直線偏光紫外線の偏光度、並びに、コントラスト及びVHRの評価結果を表4にまとめた。ここで、コントラスト及びVHRについては、実施例2−1〜2−7と同様な方法で測定及び評価した。
【0135】
【表4】
【0136】
(実施例5−1)
コントラストの評価結果はレベル2であり、製品に適したレベルであった。これは、実施例5−1で、ポリマーの配向度が高く、クロスニコル輝度が低くなったためである。また、VHRは99%であり、製品に適したレベルであった。よって、実施例5−1に係る液晶表示装置の製造方法によれば、表示品位を充分に向上することができる。
【0137】
(実施例5−2)
コントラストの評価結果はレベル1であり、製品に適したレベルであった。これは、実施例5−2で、ポリマーの配向度が高く、クロスニコル輝度が低くなったためである。また、VHRは99%であり、製品に適したレベルであった。よって、実施例5−2に係る液晶表示装置の製造方法によれば、表示品位を充分に向上することができる。
【0138】
(実施例5−3)
コントラストの評価結果はレベル1であり、製品に適したレベルであった。これは、実施例5−3で、ポリマーの配向度が高く、クロスニコル輝度が低くなったためである。また、VHRは99%であり、製品に適したレベルであった。よって、実施例5−3に係る液晶表示装置の製造方法によれば、表示品位を充分に向上することができる。
【0139】
実施例5−2、5−3のコントラストが、実施例5−1のそれと比べて高かった理由について説明する。これは、実施例5−2、5−3では、実施例5−1と比べて、光照射工程における直線偏光紫外線の偏光度を高くすることで、光照射直後のポリマーの異方性が増し、その結果、以降の工程を経てポリマーの配向度がより高まるためである。
【0140】
以上より、直線偏光紫外線の偏光度は、波長365nmで30:1以上であることが好ましいことが分かった。直線偏光紫外線の偏光度が30:1未満である場合は、光照射直後のポリマーの異方性が充分に増大しない可能性がある。
【0141】
[実施例6]
実施例6は、実施例1において本焼成を異なる3つの温度の3段階で行った場合である。実施例6に係る液晶表示装置の製造方法は、本焼成工程以外、実施例1のそれと同様であるため、重複する点については説明を省略する。
【0142】
(本焼成工程)
2枚の基板上の光照射工程後の液晶配向剤による膜に対して、図19に示すような温度プロファイルで本焼成を行った。図19は、実施例6の本焼成の温度プロファイルを示すグラフである。まず、110℃に設定されたホットプレート上に両基板を載せると、図19に示すように、室温(25℃)から110℃までの昇温時間は1分であり、その後、1回目の本焼成を110℃で20分間行った。次に、別に準備した160℃に設定されたホットプレート上へ両基板を載せ替えると、図19に示すように、110℃から160℃までの昇温時間は0.5分であり、その後、2回目の本焼成を160℃で10分間行った。最後に、更に別に準備した230℃に設定されたホットプレート上へ両基板を載せ替えると、図19に示すように、160℃から230℃までの昇温時間は0.5分であり、その後、3回目の本焼成を230℃で10分間行った。これにより、両基板上に水平光配向膜を形成した。
【0143】
[評価結果:実施例6]
実施例6に係る液晶表示装置の製造方法により製造された液晶表示装置について、実施例1と同様な方法でコントラスト及びVHRを測定した。実施例6の評価結果について、以下に説明する。
【0144】
コントラストは1800以上であり、製品に適したレベルであった。これは、実施例6で、ポリマーの配向度が高く、クロスニコル輝度が低くなったためである。また、VHRは99%以上であり、製品に適したレベルであった。よって、実施例6に係る液晶表示装置の製造方法によれば、表示品位を充分に向上することができる。また、実施例6の本焼成工程のタクトタイムは、比較例1の本焼成工程のそれと同じであるため、実施例6に係る液晶表示装置の製造方法によれば、タクトタイムを変えることなく、ポリマーの配向度を高めることができる。
【0145】
以上より、本焼成を異なる3つの温度の3段階で行った場合についても、表示品位を充分に向上することができることが分かった。また、ポリマーの配向度を高めるように、本焼成を3つ以上の異なる複数の温度の複数段階で行った場合についても、本発明の効果を奏することは言うまでもない。
【0146】
[実施例7]
実施例7は、実施例1において昇温させながら2段階で行った場合である。実施例7に係る液晶表示装置の製造方法は、本焼成工程以外、実施例1のそれと同様であるため、重複する点については説明を省略する。
【0147】
(本焼成工程)
2枚の基板上の光照射工程後の液晶配向剤による膜に対して、図20に示すような温度プロファイルで本焼成を行った。図20は、実施例7の本焼成の温度プロファイルを示すグラフである。まず、100℃に設定されたホットプレート上に両基板を載せると、図20に示すように、室温(25℃)から100℃までの昇温時間は1分であり、その後、1回目の本焼成を100℃から120℃へ20分間かけて昇温(昇温速度:1℃/分)させて行った。次に、別に準備した200℃に設定されたホットプレート上へ両基板を載せ替えると、図20に示すように、120℃から200℃までの昇温時間は1分であり、その後、2回目の本焼成を200℃から240℃へ20分間かけて昇温(昇温速度:2℃/分)させて行った。これにより、両基板上に水平光配向膜を形成した。
【0148】
[評価結果:実施例7]
実施例7に係る液晶表示装置の製造方法により製造された液晶表示装置について、実施例1と同様な方法でコントラスト及びVHRを測定した。実施例7の評価結果について、以下に説明する。
【0149】
コントラストは1800以上であり、製品に適したレベルであった。これは、実施例7で、ポリマーの配向度が高く、クロスニコル輝度が低くなったためである。また、VHRは99%以上であり、製品に適したレベルであった。よって、実施例7に係る液晶表示装置の製造方法によれば、表示品位を充分に向上することができる。また、実施例7の本焼成工程のタクトタイムは、比較例1の本焼成工程のそれと同じであるため、実施例7に係る液晶表示装置の製造方法によれば、タクトタイムを変えることなく、ポリマーの配向度を高めることができる。
【0150】
以上より、本焼成を昇温させながら2段階で行った場合についても、表示品位を充分に向上することができることが分かった。また、ポリマーの配向度を高めるように、本焼成を昇温させながら3段階以上で行った場合についても、本発明の効果を奏することは言うまでもない。また、本焼成を降温させながら2段階以上で行った場合についても、本発明の効果を奏することは言うまでもない。
【0151】
[実施例8]
実施例8は、実施例1において、FFSモードの電極構造を有するガラス基板として薄膜トランジスタ素子を有するアクティブマトリクス基板を、対向基板としてカラーフィルタ基板を用いて、更に、負の誘電率異方性を有する液晶分子を含む液晶材を用いた場合である。実施例8に係る液晶表示装置の製造方法は、上記以外、実施例1のそれと同様であるため、重複する点については説明を省略する。なお、液晶材としては、誘電率異方性Δεは−4であり、屈折率異方性Δnは0.1のものを用いた。
【0152】
[評価結果:実施例8]
実施例8に係る液晶表示装置の製造方法により製造された液晶表示装置について、実施例1と同様な方法でコントラストを測定した。実施例8の評価結果について、以下に説明する。
【0153】
コントラストは1800以上であり、製品に適したレベルであった。これは、実施例8で、ポリマーの配向度が高く、クロスニコル輝度が低くなったためである。よって、実施例8に係る液晶表示装置の製造方法によれば、表示品位を充分に向上することができる。
【0154】
以上より、使用する基板を変更し、液晶材を変更した場合についても、表示品位を充分に向上することができることが分かった。また、使用する基板及び液晶材のどちらか一方を変更した場合についても、本発明の効果を奏することは言うまでもない。
【0155】
なお、IPSモードやFFSモードの液晶表示装置でアクティブ駆動した場合において、誘電率異方性が負の液晶分子を用いた場合は、誘電率異方性が正の液晶分子を用いた場合と比べて、白表示時の透過率が高くなる。これは、誘電率異方性が負の液晶分子は、基板面に対して垂直な方向の電界成分に反応しないためであり、液晶分子が基板面内から立ち上がることによる透過率の損失が少なくなる。よって、白透過率を向上する観点からは、誘電率異方性が負の液晶分子を用いることが好ましい。
【0156】
上述した各実施例は、異なる温度に設定された複数台のホットプレートを用いて本焼成を行う場合であるが、1台のホットプレートを用いて異なる温度に順次変化させながら本焼成を行うこともできる。1台のホットプレートを用いる場合は、加熱装置の設置面積をより縮小することができ、装置レイアウトの自由度を向上することができる。一方、複数台のホットプレートを用いる場合は、加熱装置の設置面積は増えてしまうが、1台のホットプレートを用いた場合のように、本焼成工程後にホットプレートの温度を開始温度まで下げる時間を要しないため、製造効率をより向上することができる。なお、複数台のホットプレートを用いた場合は、ホットプレート間で基板を搬送する際に基板温度が一瞬低下することがあるが、これは本発明の課題の解決に対して問題を与えるものではない。
【0157】
上述した各実施例は、FFSモードの液晶表示装置についての場合であるが、同じ水平配向膜を有するIPSモードの液晶表示装置についての場合であっても、本発明の効果を奏することは言うまでもない。
【0158】
[付記]
以下に、本発明に係る液晶表示装置の製造方法における好ましい態様の例を挙げる。各例は、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜組み合わされてもよい。
【0159】
上記溶媒は、ブチルセロソルブ、及び/又は、N−メチル−ピロリドンを含むものであってもよい。また、その他に、N−エチル−ピロリドン、γブチルラクトン、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジイソブチルケトン及びその構造異性体、プロピレングリコールモノブチルエーテル、並びに、ジアセトンアルコールからなる群より選択される化合物を含むものであってもよい。
【0160】
上記工程(4)は、異なる温度に設定された複数の加熱装置を用いて行うものであってもよい。これにより、上記液晶配向剤による膜を低温から高温へ複数回本焼成する操作を好適に行うことができる。また、1台の加熱装置を用いる場合と比べて、製造効率をより向上することができる。
【0161】
上記工程(4)は、1台の加熱装置を用いて異なる温度に順次変化させながら行うものであってもよい。これにより、上記液晶配向剤による膜を低温から高温へ複数回本焼成する操作を好適に行うことができる。また、複数の加熱装置を用いる場合と比べて、加熱装置の設置面積をより縮小することができ、装置レイアウトの自由度を向上することができる。
【0162】
上記工程(4)は、異なる温度の定温期間を複数有するように、本焼成を段階的に行う操作を含むものであってもよい。これにより、本焼成を異なる複数の温度の多段階で行うことができ、意図して操作された温度プロファイルによる本焼成を行うことができる。ここで、定温期間は、例えば、±5℃の温度範囲内で1分以上保たれた加熱状態の期間を意味するものであってもよい。
【0163】
上記工程(4)は、第1の温度、及び、上記第1の温度よりも高い第2の温度での2回の本焼成を行うものであってもよい。これにより、本焼成を、異なる2つの温度の2段階で行うことができる。
【0164】
上記工程(4)は、第1の温度、上記第1の温度よりも高い第2の温度、並びに、上記第1及び第2の温度の間の第3の温度での3回の本焼成を行うものであってもよい。これにより、本焼成を、異なる3つの温度の3段階で行うことができる。
【0165】
上記第1の温度は、80℃以上、140℃以下であるものであってもよく、100℃以上、120℃以下であるものが更に好ましい。これにより、ポリマーの運動性を充分に高め、その結果、ポリマーの配向度を充分に高めることができる。上記第1の温度が80℃未満である場合は、ポリマーの運動性が低くなる可能性があり、140℃を超える場合は、徐々にイミド化し始める可能性がある。
【0166】
上記第2の温度は、180℃以上であるものであってもよく、200℃以上であるものが更に好ましく、200℃以上、250℃以下であるものが特に好ましい。これにより、ポリマーのイミド化が充分に進行し、高い配向度を固定化することができる。上記第2の温度が180℃未満である場合は、ポリマーのイミド化が不充分になる可能性がある。
【0167】
上記第1の温度は、100℃以上、120℃以下であり、上記第2の温度は、200℃以上であるものであってもよい。これにより、ポリマーの運動性を充分に高め、その結果、ポリマーの配向度を充分に高めることができる。その後、ポリマーのイミド化が充分に進行し、高い配向度を固定化することができる。
【0168】
上記工程(4)は、異なる温度での2回の本焼成を行い、1回目の本焼成は100℃以上、120℃以下の温度範囲内で順次温度を変化させながら行われ、2回目の本焼成は200℃以上の温度範囲内で順次温度を変化させながら行われるものであってもよい。これにより、ポリマーの運動性を充分に高め、その結果、ポリマーの配向度を充分に高めることができる。その後、ポリマーのイミド化が充分に進行し、高い配向度を固定化することができる。
【0169】
上記工程(2)は、70℃以下の温度範囲内で仮焼成を行うものであってもよく、40℃以上、70℃以下の温度範囲内で仮焼成を行うものが更に好ましい。これにより、光配向処理に伴うポリマーの運動性が充分に増し、光配向処理後のポリマーの配向度を充分に高めることができる。
【0170】
上記工程(3)は、偏光度が5:1以上の直線偏光を照射するものであってもよく、30:1以上の直線偏光を照射するものが更に好ましい。これにより、光配向処理後のポリマーの配向度を充分に高めることができる。偏光度が5:1未満である場合は、光照射直後のポリマーの異方性が増大しない可能性がある。
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