(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1から4までのいずれか一項記載のTiキレート触媒または請求項5から7までのいずれか1項記載のTiキレート触媒配合物のルイス酸型反応物質により触媒される重付加または重縮合反応のための触媒としての使用。
全組成物を基準として、0.001〜15質量%の請求項1から4までのいずれか1項で定義されるTiキレート触媒または請求項5から7までのいずれか1項で定義される配合物中に式IAのTiキレート触媒を含む、請求項9記載の重合性組成物。
全組成物を基準として、0.01〜5質量%の請求項1から4までのいずれか1項で定義されるTiキレート触媒または請求項5から7までのいずれか1項で定義される配合物中に式IAのTiキレート触媒を含む、請求項9記載の重合性組成物。
ルイス酸の存在下で架橋可能な成分が、(a)ブロック化もしくは非ブロック化イソシアネートまたはイソチオシアネート成分および(b)ポリオールの混合物である、請求項14記載の方法。
電磁放射線で照射する代わりに混合物を熱処理に付すか、または混合物を電磁放射線で照射し、そして照射と同時にまたは照射後に熱処理に付すことを特徴とする、請求項14又は15記載の方法。
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規光潜在性触媒化合物および特に2ポットポリウレタンを架橋するための触媒としてのそれらの適用に関する。
【0002】
例えば、イソシアネート成分を、任意のヒドロキシル官能性化合物を含むポリオール、さらにはポリチオールと有機金属(特にスズ)触媒の存在下で架橋することにより、ポリウレタン(PU)を製造することは当該技術分野で公知である。対応する触媒は、多くの刊行物、例えばUS2005/0282700、US5545600、US4292252などから公知である。WO2006/136211などで報告されているように、例えばシラン架橋接着剤またはシーリングで使用する場合のシロキサン修飾バインダーなどの他の縮合または付加反応による架橋を触媒するために、同じ種類の有機金属触媒を使用することもできる。
【0003】
今日使用される標準的触媒は、Sn化合物系である。これらの触媒は、潜在的ではなく、したがって、ポリオールとポリイソシアネートとの反応は、触媒が添加されるとすぐに加速される。短い反応時間(濃度および条件に応じて、約0.5時間〜2時間)の後、反応は完了する。この反応時間は、混合物が製造された後の樹脂系の作業時間枠を制限する。
【0004】
したがって、熱または光などの外部活性化による要求に応じてのみ反応を引き起こせることが非常に望ましい。これにより、樹脂混合物を含む作業時間枠が、理想的には外部トリガーがオンになるまで拡大される。
【0005】
本発明の根底にある更なる問題は、これらの生成物により生じる環境問題のためにスズ触媒に課される法的圧力にある。環境に対してあまり有害でないまたは有害でない代替金属によりスズ触媒が置換されるのが、産業界で見られる一般的傾向である。
【0006】
PU架橋の光潜在性触媒が当該技術分野で報告されている(例えば、WO2007/147851およびWO2009/050115)。これらの触媒は、UV光での照射により活性化することができる。従来技術は、ほとんどの場合、光潜在性スズ触媒を記載しているが、Bi、Zr、Al、およびTi触媒も記載している。光潜在性Ti触媒の例はごくわずかしか記載されていない。これらのTi触媒は、良好な光潜在性挙動を示すが、これらを含むPU配合物は、不十分なポットライフをもたらす。
【0007】
特定のTiキレート錯体は十分なポットライフ安定性も提供することが現在見出されている。
【0008】
したがって、本発明は、式I
【化1】
(式中、
R
1は、1以上のR’
2、R’
3またはR’
4により置換されたC
6〜C
14アリールを意味するか;
あるいは2つのR
1が一緒になって、非置換直鎖もしくは分枝C
1〜C
12アルキレンであるか、1以上のフェニル、ベンゾイル、ナフチルまたはナフトイルにより置換された直鎖もしくは分枝C
1〜C
12アルキレンであるか、
あるいは2つのR
1が一緒になって、1以上の非連続的O原子により中断された非置換直鎖もしくは分枝C
2〜C
12アルキレンであるか、または1以上のフェニル、ベンゾイル、ナフチルもしくはナフトイルにより中断された1以上の非連続的O原子により中断された直鎖もしくは分枝C
2〜C
12アルキレンであるか、
あるいは2つのR
1が一緒になって、フェニレン、ビフェニレンまたはナフチレンであるか(ここで、前記フェニレン、ビフェニレンもしくはナフチレンは、非置換であるか、または1以上のR’
2、R’
3もしくはR’
4により置換されている)、
あるいは2つのR
1は一緒になって、−(CH
2)
n−フェニレン−(CH
2)
n−であり(ここで、CH
2基は、場合によって、C
1〜C
20アルキルまたはC
6〜C
14アリールにより置換されている);
nは1または2の整数であり;
R
2、R
3、R
4、R’
2、R’
3、およびR’
4は、互いに独立して、水素、ハロゲン、直鎖もしくは分枝C
1〜C
20アルキル、C
1〜C
20アルコキシ、C
6〜C
14アリール、C
1〜C
20アルカノイル、C
1〜C
20アルカノイルオキシ、C
1〜C
20アルコキシカルボニル、C
7〜C
15アロイル、C
7〜C
15アロイルオキシ、ニトリル、ニトロ、C
1〜C
20アルキルチオ、C
6〜C
14アリールチオまたはNR
8R
9であり;
R
5、R
6およびR
7は、互いに独立して、水素、直鎖もしくは分枝C
1〜C
20アルキル、C
6〜C
14アリールまたはハロゲンであるか(ただし、R
5、R
6およびR
7のすべてがハロゲンであるわけではなく、またR
5、R
6およびR
7の1以下が水素であるとする)、
あるいはR
5およびR
6は、それらが結合しているC原子と一緒になって、5〜7員飽和環を形成し;
R
8およびR
9は、互いに独立して、水素、直鎖もしくは分枝C
1〜C
20アルキル、ベンジル、C
7〜C
15アロイル、C
1〜C
20アルカノイル、非置換フェニル、1以上のハロゲン、C
1〜C
6アルコキシまたはC
1〜C
6アルキルにより置換されたフェニルであるか、あるいはR
8およびR
9は、それらが結合しているN原子と一緒になって5または6員飽和または不飽和環を形成し、この環は、場合によって、N原子に加えて、さらなるN原子またはO原子を含み、この環には場合によって1もしくは2個のベンゾ環が縮合している)のTiキレート触媒化合物にある。
【0009】
式IのTiキレート化合物は、置換基OR
1の性質が従来技術と異なっている。OR
1はフェノラートであるか、または2個のリガンドOR
1は共有結合して、二座リガンドを形成する。本発明の光潜在性Ti化合物は、意外にも、最新技術と比較して、より長いポットライフを有するが、等しい光潜在性を有することが見出された。
【0010】
本発明はさらに、Tiキレート化合物と過剰(1〜50%w/w)の特異的キレートリガンドとの特異的な組み合わせの使用に関し、これにより触媒の良好な光潜在性を維持しつつ、配合物のポットライフが著しく改善される。少量の特定の1,3−ジケトン添加剤を、本発明の目的である光潜在性Ti化合物に添加することは、意外にも、最新技術と比較してさらに長いポットライフをもたらすが、同等の光潜在性をもたらすことが判明した。
【0011】
したがって、本発明の対象はさらに、
(i)少なくとも1つの式IA
【化2】
(式中、
R
1は、1以上のR’
2、R’
3またはR’
4により置換されたC
6〜C
14アリールを意味するか;
あるいは2つのR
1が一緒になって、非置換直鎖もしくは分枝C
1〜C
12アルキレンであるか、または1以上のフェニル、ベンゾイル、ナフチルまたはナフトイルにより置換された直鎖もしくは分枝C
1〜C
12アルキレンであるか、
あるいは2つのR
1が一緒になって、1以上の非連続的O原子により中断された非置換直鎖もしくは分枝C
2〜C
12アルキレンであるか、または1以上のフェニル、ベンゾイル、ナフチルまたはナフトイルにより置換された1以上の非連続的O原子により中断された直鎖もしくは分枝C
2〜C
12アルキレンであるか、あるいは2つのR
1が一緒になって、フェニレン、ビフェニレンまたはナフチレン(ここで、前記フェニレン、ビフェニレンまたはナフチレンは、非置換であるか、または1以上のR’
2、R’
3もしくはR’
4により置換される)であるか、
あるいは2つのR
1は一緒になって、−(CH
2)
n−フェニレン−(CH
2)
n−であり(ここで、CH
2基は、場合によって、C
1〜C
20アルキルまたはC
6〜C
14アリールにより置換されている);
【化3】
R
2、R
3、R
4、R’
2、R’
3、およびR’
4は、互いに独立して、水素、ハロゲン、直鎖もしくは分枝C
1〜C
20アルキル、C
1〜C
20アルコキシ、C
6〜C
14アリール、C
1〜C
20アルカノイル、C
1〜C
20アルカノイルオキシ、C
1〜C
20アルコキシカルボニル、C
7〜C
15アロイル、C
7〜C
15アロイルオキシ、ニトリル、ニトロ、C
1〜C
20アルキルチオ、C
6〜C
14アリールチオまたはNR
8R
9であり;
R
8およびR
9は、互いに独立して、水素、直鎖もしくは分枝C
1〜C
20アルキル、ベンジル、C
7〜C
15アロイル、C
1〜C
20アルカノイル、非置換フェニル、1以上のハロゲン、C
1〜C
6アルコキシまたはC
1〜C
6アルキルにより置換されたフェニルであるか、あるいはR
8およびR
9は、それらが結合しているN原子と一緒になって5または6員飽和または不飽和環を形成し(この環は、場合によって、N原子に加えて、さらなるN原子またはO原子を含み、この環には場合によって1もしくは2個のベンゾ環が縮合している);
R
10、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17、R
18、R
19、R
20およびR
21は、互いに独立して、水素、直鎖もしくは分枝C
1〜C
20アルキル、C
6〜C
14アリールまたはハロゲンである(ただし、R
10、R
11、R
12の1以下が水素であるか、R
13、R
14、R
15の1以下が水素であるか、R
16、R
17、R
18の1以下が水素であるか、R
19、R
20、R
21の1以下が水素であるか、またはR
10およびR
11、R
13およびR
14、R
16およびR
17、またはR
19およびR
20はそれらが結合しているC原子と一緒になって、5〜7員飽和環を形成する)の化合物;ならびに
(ii)式IIa、IIbまたはIIc
【化4】
(式中、
【化5】
R’
10、R’
11、R’
12、R’
13、R’
14およびR’
15は、R
10、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15について記載した意味のうちの1つを有する)の少なくとも1つのキレートリガンド化合物
を含むTiキレート触媒配合物である。
【0012】
C
1〜C
20アルキルは、直鎖もしくは分枝または環状であり、例えば、C
1〜C
18−、C
1〜C
14−、C
1〜C
12−、C
1〜C
8−、C
1〜C
6−またはC
1〜C
4アルキルである。例として、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、たとえばシクロペンチル、ヘキシル、たとえばシクロヘキシル、ヘプチル、2,4,4−トリメチルペンチル、2−エチルヘキシル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、オクタデシルおよびイコシル、好ましくはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチルが挙げられる。
【0013】
C
1〜C
18アルキル、C
1〜C
14アルキル、C
1〜C
12アルキル、C
1〜C
8アルキル、C
1〜C
6アルキルおよびC
1〜C
4アルキルは、対応する数までのC原子の、C
1〜C
20アルキルについて前述と同じ意味を有する。
【0014】
C
6〜C
14アリールは、例えばフェニル、ナフチル、アンスリルまたはフェナンスリルであり、特にフェニルまたはナフチルであり、好ましくはフェニルである。
【0015】
1以上のR’
2、R’
3またはR’
4により置換されたC
6〜C
14アリールは、例えば1〜5回、たとえば1〜4回または1回、2回もしくは3回、R’
2、R’
3またはR’
4で置換されている。置換基は、フェニル環の、例えば2,4,6−、2,6−、2,4−、2,5−、2,3,4−、2−、4−または5−位で結合している。
【0016】
C
1〜C
12アルキレンは、直鎖もしくは分枝アルキレン、例えばメチレン、エチレン、プロピレン、1−メチルエチレン、1,2−ジメチルエチレン、1,1,2,2−テトラメチルエチレン、1,4−ジメチル−ブチレン、1,3−ジメチルプロピレン、ブチレン、1−メチルプロピレン、2−メチル−プロピレン、ペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン、ノニレン、デシレンまたはドデシレン、特にエチレン、プロピレン、1,2−ジメチルエチレン、1,1,2,2−テトラメチルエチレン、1,4−ジメチルブチレンまたは1,3−ジメチルプロピレンである。
【0017】
ハロゲンは、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨード基、特にフルオロ、クロロまたはブロモ、特にクロロおよびブロモを意味する。
【0018】
C
1〜C
20アルコキシは直鎖もしくは分枝であり、例えばC
1〜C
16−、C
1〜C
12−、C
1〜C
8−、C
1〜C
6−またはC
1〜C
4−アルコキシである。例として、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブチルオキシ、sec−ブチルオキシ、イソ−ブチルオキシ、tert−ブチルオキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、2,4,4−トリメチルペンチルオキシ、2−エチルヘキシルオキシ、オクチルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ、ドデシルオキシ、ヘキサデシルオキシ、オクタデシルオキシまたはイコシルオキシ、特にメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブチルオキシ、sec−ブチルオキシ、イソ−ブチルオキシ、tert−ブチルオキシ、特にメトキシが挙げられる。
【0019】
C
1〜C
20アルカノイルは直鎖もしくは分枝であり、例えば、C
1〜C
18−、C
1〜C
14−、C
1〜C
12−、C
1〜C
8−、C
1〜C
6−もしくはC
1〜C
4アルカノイルまたはC
4〜C
12−もしくはC
4〜C
8アルカノイルである。例として、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブタノイル、イソブタノイル、ペンタノイル、ヘキサノイル、ヘプタノイル、オクタノイル、ノナノイル、デカノイル、ドデカノイル、テトラデカノイル、ペンタデカノイル、ヘキサデカノイル、オクタデカノイル、イコサノイル、好ましくはアセチルが挙げられる。
【0020】
C
2〜C
20アルカノイルオキシは、直鎖または分枝であり、例えばC
2〜C
12−、C
2〜C
6−、C
2〜C
4−アルキノイルオキシである。例として、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、ブタノイルオキシ、イソブタノイルオキシ、好ましくはアセチルオキシが挙げられる。
【0021】
C
7〜C
15アロイルは、「イル」部分で−CO基を有する、前記定義のC
6〜C
14アリールである。例として、ベンゾイル、ナフトイル、フェナンスロイルおよびアンスロイル、特にベンゾイルおよびナフトイル、とりわけベンゾイルが挙げられる。
【0022】
C
7〜C
15アロイルオキシは、「イル」部分で−(CO)O−基を有する、前記定義のC
6〜C
14アリールである。例として、ベンゾイルオキシ、ナフトイルオキシ、フェナンスロイルオキシおよびアンスロイルオキシ、特にベンゾイルオキシおよびナフトイルオキシ、とりわけベンゾイルオキシが挙げられる。
【0023】
C
1〜C
20アルキルチオは、「イル」部分でS原子を有するC
1〜C
20アルキルである。C
1〜C
20アルキルは、対応する数までのC原子の、C
1〜C
20アルキルについて前記と同じ意味を有する。C
1〜C
20アルキルチオは、直鎖または分枝または環状であり、例えば、メチルチオエチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、n−ブチルチオ、sec−ブチルチオ、イソブチルチオ、tert−ブチルチオ、特にメチルチオである。
【0024】
C
6〜C
14アリールチオはC
6〜C
14アリールであり、これは「イル」部分でS原子を有する。C
6〜C
14アリールは、C
6〜C
14アリールについて前記と同じ意味を有する。例として、フェニルチオ、ナフチルチオ、アンスリルチオ、フェナンスリルチオ、特にフェニルチオが挙げられる。
【0025】
R
8およびR
9が、それらが結合しているN原子と一緒になって5または6員飽和または不飽和環を形成する場合、この環は、場合によって、N原子に加えて、さらなるN原子またはO原子を含み、例えば、ピロール、ピロリジン、オキサゾール、ピリジン、1,3−ジアジン、1,2−ジアジン、ピペリジンまたはモルホリン環、特にモルホリン環が形成される。
【0026】
前記5または6員飽和または不飽和環がさらに1または2個のベンゾ環と縮合している場合、例えばカルバゾール構造が形成される。
【0027】
式IまたはIAの2つのR
1が一緒になって直鎖もしくは分枝C
1〜C
12アルキレンである場合、たとえば
【化6】
のような構造が形成され、ここで、C
1〜C
12アルキレンは前記定義の直鎖または分枝であり、場合によって請求項で定義されるように置換されている。
【0028】
式IまたはIAの2つのR
1が一緒になってフェニレン、ビフェニレンまたはナフチレンである場合、たとえば
【化7】
のような構造が形成される。アリール基が2以上の環から構成される場合、置換基R’
2、R’
3およびR’
4は、1つの環のみに位置するか、または「2以上の」環にわたって分布していることは明かである。
【0029】
R
10およびR
11が、それら結合しているC原子と一緒になって、5〜7員飽和環を形成するか、またはR
13およびR
14が、それらが結合しているC原子と一緒になって、5〜7員飽和環を形成するか、またはR
16およびR
17が、それらが結合しているC原子と一緒になって、5〜7員飽和環を形成するか、またはR
19およびR
20が、それらが結合しているC原子と一緒になって、5〜7員飽和環を形成する場合、前記環は、シクロペンチル、シクロヘキシルまたはシクロヘプチルであり、例えば
【化8】
などの構造が形成される。
【0030】
「光潜在性触媒」とは、光での照射、特に150〜800nm、たとえば200〜800または200〜600nmの波長の光で照射すると、活性触媒を提供する化合物を指す。
【0031】
この文脈で「および/または」または「または/および」という用語は、1つの所定の選択肢(置換基)が存在し得るだけでなく、複数の所定の選択肢(置換基)が一緒になって、すなわち異なる選択肢(置換基)の混合物も存在し得ることを表すことが意図される。
【0032】
「少なくとも」という用語は、所定の1つまたは2以上の、例えば1または2または3、好ましくは2を示すことが意図される。
【0033】
「場合により置換された」という用語は、非置換であるかまたは置換されているかのいずれかである基を意味する。
【0034】
本明細書およびそれに続く特許請求の範囲全体にわたって、文脈上別段の解釈を必要とする場合を除き、「含む(comprise)」、または「comprises」もしくは「comprising」などの語尾変化は、記載された整数もしくはステップまたは整数もしくはステップの群を含むが、任意の他の整数もしくはステップまたは整数もしくはステップの群を除外しないことを意味すると理解される。
【0035】
「(メタ)アクリレート」という用語は、本出願に関しては、アクリレートならびに対応するメタクリレートを指すことを意味する。
【0036】
本明細書中で前述、後述および全文の文脈での潜在性触媒化合物一般(特に式I、IA、I’、I’’、IA’およびIA’’の潜在性触媒化合物)に関する選好は、化合物自体だけを指すのではなく、請求項の全範疇を指すことを意図する。すなわち、潜在性触媒化合物を含む組成物、ならびに前記化合物を用いる使用または方法クレームを指す。
【0037】
興味深いのは、例えば、
R
1が、1以上のR’
2、R’
3またはR’
4により置換されたフェニルを表すか;
あるいは2つのR
1が一緒になって、非置換直鎖もしくは分枝C
1〜C
8アルキレンであるか、または1以上のフェニル、ベンゾイル、ナフチルまたはナフトイルによって置換された直鎖もしくは分枝C
1〜C
8アルキレンであるか、
あるいは2つのR
1が一緒になって、1以上の非連続的O原子によって中断された非置換直鎖もしくは分枝C
2〜C
8アルキレンであるか、または1以上のフェニル、ベンゾイル、ナフチルもしくはナフトイルによって置換された、1以上の非連続的O原子によって中断された直鎖もしくは分枝C
2〜C
8アルキレンであるか、
あるいは2つのR
1が一緒になってフェニレン、ビフェニレンまたはナフチレン(ここで、前記フェニレン、ビフェニレンもしくはナフチレンは非置換であるか、または1以上のR’
2、R’
3もしくはR’
4で置換されている)であるか、
あるいは2つのR
1が一緒になって、−(CH
2)
n−フェニレン−(CH
2)
n−(ここで、CH
2基は、場合によってC
1〜C
20アルキルまたはC
6〜C
14アリールによって置換されている)であり;
R
2、R
3、R
4、R’
2、R’
3、およびR’
4が、互いに独立して、水素、ハロゲン、直鎖もしくは分枝C
1〜C
12アルキル、C
1〜C
12アルコキシ、フェニル、C
1〜C
12アルカノイル、C
1〜C
12アルカノイルオキシ、C
1〜C
12アルコキシカルボニル、ベンゾイル、ベンゾイルオキシ、ニトリル、ニトロ、C
1〜C
12アルキルチオ、フェニルチオまたはNR
8R
9であり;
R
5、R
6およびR
7が、互いに独立して、水素、直鎖もしくは分枝C
1〜C
12アルキル、フェニル、ハロゲン(ただし、R
5、R
6およびR
7のすべてがハロゲンであるわけではなく、またR
5、R
6およびR
7のうちの1以下が水素であるか、またはR
5およびR
6は、それらが結合しているC原子と一緒になって、5〜7員飽和環を形成するものとする)であり;
R
8およびR
9が、互いに独立して、水素、直鎖もしくは分枝C
1〜C
12アルキル、ベンゾイル、C
1〜C
12アルカノイル、非置換フェニル、1以上のハロゲン、C
1〜C
4アルキルまたはC
1〜C
4アルコキシにより置換されたフェニル、ベンジルであるか、あるいはR
8およびR
9は、それらが結合しているN原子と一緒になって5または6員飽和または不飽和環を形成する(これは場合によってN原子に加えてさらなるN原子またはO原子を含み、この環に、場合によって1つまたは2つのベンゾ環が縮合している)、前述の式Iの化合物である。
【0038】
R
1が、1以上のR’
2、R’
3またはR’
4により置換されたフェニルであるか;
あるいは2つのR
1が一緒になって、直鎖もしくは分枝非置換または置換C
1〜C
20アルキレンとして、−C(R
22)
2−(CH
2)
n−C(R
22)
2−であり;
nが1〜3の整数であり;
R
22が、互いに独立して、水素、C
1〜C
4アルキル、特にメチル、フェニルまたはベンゾイルであり;
R
2、R
3、R
4、R’
2、R’
3およびR’
4が、互いに独立して、前記定義のとおりであり、
R
5が、水素、C
1〜C
4アルキル、フェニルまたはハロゲンであり、特にR
5がメチルであり;そして
R
6およびR
7がメチルである、式Iの化合物も興味深い。
【0039】
例えば、式I’およびI’’
【化9】
(式中、
R
2、R
3、R
4、R’
2、R’
3、R’
4、R
5、R
22およびnは、前記定義のとおりである)の化合物。
【0040】
好ましくは、式I、I’およびI’’において、R’
2、R’
3およびR’
4は、互いに独立して、水素、C
1〜C
4アルキルまたはC
1〜C
4アルコキシである。
【0041】
式I’’において、R
22は好ましくは、水素、C
1〜C
4アルキル、特にメチルまたはフェニルであり、nは、好ましくは1または2である。
【0042】
R
1が、1以上のR’
2、R’
3またはR’
4により置換されたフェニルであるか;
あるいは2つのR
1が、直鎖もしくは分枝非置換または置換C
1〜C
20アルキレンとして一緒になって、−C(R
22)
2−(CH
2)
n−C(R
22)
2−であり;
nが1〜3の整数であり;
R
22が、互いに独立して、水素、C
1〜C
4アルキル、特にメチル、フェニルまたはベンゾイルであり、
【化10】
R
2、R
3、R
4、R’
2、R’
3およびR’
4が、互いに独立して、前記定義のとおりであり、
R
10、R
11、R
13、R
14、R
16、R
17、R
19およびR
20が、互いに独立して、水素、C
1〜C
4アルキル、フェニルまたはハロゲンであり、特にR
10、R
11、R
13、R
14、R
16、R
17、R
19およびR
20がメチルであり;そして
R
12、R
15、R
18およびR
21がメチルである、式IAの化合物も興味深い。
【0043】
例えば、式IA’およびIA’’の化合物
【化11】
(式中、
Y、Y
1、Y
2、Y
3、R’
2、R’
3、R’
4、R
22およびnは、前記定義のとおりである)。
【0044】
興味深いのは、特に
R
1が、1以上のR’
2、R’
3またはR’
4により置換されたフェニルであるか;
あるいは2つのR
1が一緒になって、非置換直鎖もしくは分枝C
1〜C
6アルキレン、1以上のフェニルまたはベンゾイルにより置換された直鎖もしくは分枝C
1〜C
6アルキレンであるか、あるいは2つのR
1が一緒になって、ビフェニレンであり;
R
2、R
3およびR
4が、互いに独立して、水素またはC
1〜C
4アルコキシであり;
R’
2、R’
3、R’
4が、互いに独立して、水素またはC
1〜C
4アルキルであり;
R
5、R
6およびR
7が、C
1〜C
4アルキル、特にメチルである、前記定義の式Iの化合物である。
【0045】
さらに興味深いのは、
R
1が、1以上のR’
2、R’
3またはR’
4により置換されたフェニルであるか;
あるいは2つのR
1が一緒になって、非置換直鎖もしくは分枝C
1〜C
6アルキレン、1以上のフェニルまたはベンゾイルにより置換された直鎖もしくは分枝C
1〜C
6アルキレンであるか、あるいは2つのR
1が一緒になって、ビフェニレンであり;
R
2、R
3およびR
4が、互いに独立して、水素またはC
1〜C
4アルコキシであり;
R’
2、R’
3、R’
4が、互いに独立して、水素またはC
1〜C
4アルキルであり;
【化12】
R
10、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17、R
18、R
19、R
20およびR
21がC
1〜C
4アルキル、特にメチルである、前述の式IAの化合物のTiキレート触媒配合物である。
【0046】
特に興味深いのは、
(i)少なくとも1つの前記定義の式Iの化合物;および
(ii)少なくとも1つの式IIa、IIbまたはIIcのキレートリガンド化合物
【化13】
(式中、
【化14】
R’
10、R’
11、R’
12、R’
13、R’
14およびR’
15は、R
10、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15について記載した意味のうちの1つを有する)を含むTiキレート触媒配合物である。
【0047】
R
1は、例えばフェニルまたはナフチル(どちらも1以上のR’
2、R’
3またはR’
4で置換されている)を表すか;
あるいは2つのR
1が一緒になって、非置換直鎖もしくは分枝C
1〜C
8アルキレン、1以上のフェニルまたはベンゾイルにより置換された直鎖もしくは分枝C
1〜C
8アルキレンであるか、あるいは2つのR
1が一緒になって、フェニレンまたはビフェニレンであり(ここで、前記フェニレンまたはビフェニレンは、非置換であるか、または1以上のR’
2、R’
3もしくはR’
4により置換されている);
好ましくは、R
1は、1以上のR’
2、R’
3またはR’
4により置換されたフェニルであるか;あるいは2つのR
1が一緒になって、非置換直鎖もしくは分枝C
1〜C
8アルキレン、1以上のフェニルまたはベンゾイルにより置換された直鎖もしくは分枝C
1〜C
8アルキレンであるか、あるいは2つのR
1が一緒になって、フェニレンまたはビフェニレン、特にビフェニレンであり、ここで、前記フェニレンまたはビフェニレンは非置換であるか、または1以上のR’
2、R’
3もしくはR’
4により置換されている。
【0048】
R
2、R
3、R
4、R’
2、R’
3、およびR’
4は、例えば、互いに独立して、水素、ハロゲン、直鎖もしくは分枝C
1〜C
20アルキル、C
1〜C
20アルコキシ、C
6〜C
14アリール、C
1〜C
20アルカノイル、C
2〜C
20アルカノイルオキシ、C
7〜C
15アロイル、C
7〜C
15アロイルオキシ、ニトリル、ニトロ、C
1〜C
20アルキルチオ、C
6〜C
14アリールチオまたはNR
8R
9であり;
R
2、R
3およびR
4は、例えば、互いに独立して、水素、直鎖もしくは分枝C
1〜C
12アルキル、C
1〜C
12アルコキシまたはフェニルであり;例えば、水素、直鎖もしくは分枝C
1〜C
12アルキルまたはC
1〜C
12アルコキシであり;特に水素またはC
1〜C
4アルコキシである。
【0049】
R’
2、R’
3、およびR’
4は、例えば、互いに独立して、水素、直鎖もしくは分枝C
1〜C
12アルキル、C
1〜C
12アルコキシまたはフェニルであり;例えば、水素、直鎖もしくは分枝C
1〜C
12アルキルまたはC
1〜C
12アルコキシであり;特に、水素または直鎖もしくは分枝C
1〜C
4アルキルである。
【0050】
R
5、R
6およびR
7は、互いに独立して、例えば水素、直鎖もしくは分枝C
1〜C
12アルキルまたはフェニルである。ただし、1以下のR
5、R
6およびR
7が水素であるか;あるいは例えば水素または直鎖もしくは分枝C
1〜C
12アルキル、特に直鎖もしくは分枝C
1〜C
4アルキル、特にメチルである。例えば、R
5、R
6およびR
7基のうち2つは、直鎖もしくは分枝C
1〜C
4アルキル、特にメチルであり、他の(第3の)基は水素である。
【0051】
R
8およびR
9は、例えば、互いに独立して、水素、直鎖もしくは分枝C
1〜C
6アルキル、フェニル、ベンジルであるか、あるいはR
8およびR
9は、それらが結合しているN原子と一緒になって、5または6員飽和環(この環は、場合によって、N原子に加えて、さらなるN原子またはO原子、好ましくはO原子を含む)を形成するか;あるいはR
8およびR
9は、例えば、互いに独立して、水素、直鎖もしくは分枝C
1〜C
6アルキル、フェニル、ベンジルであるか、あるいはR
8およびR
9は、それらが結合しているN原子と一緒になって、モルホリノ環を形成するか;あるいはR
8およびR
9は、例えば、互いに独立して、水素、直鎖もしくは分枝C
1〜C
6アルキル、フェニルまたはベンジルである。
【0052】
【化15】
【0053】
R
10、R
11、R
12は、互いに独立して、水素、直鎖もしくは分枝C
1〜C
20アルキル、C
6〜C
14アリールまたはハロゲンであるか、あるいはR
10およびR
11は、それらが結合しているC原子と一緒になって、5〜7員飽和環を形成し(ただし、R
10、R
11、R
12のうち1つのみ水素であるとする);例えば、R
10、R
11、R
12は、互いに独立して、水素、直鎖もしくは分枝C
1〜C
12アルキル、またはフェニルであり(ただし、R
10、R
11、R
12のうち1つのみ水素であるとする);例えば、R
10は水素であり、R
11およびR
12は、C
1〜C
4アルキル、特にメチルであり;好ましくはR
10、R
11、R
12は、C
1〜C
4アルキル、特にメチルである。
【0054】
R
13、R
14、R
15は、互いに独立して、水素、直鎖もしくは分枝C
1〜C
20アルキル、C
6〜C
14アリールまたはハロゲンであるか、あるいはR
13およびR
14は、それらが結合しているC原子と一緒になって、5〜7員飽和環を形成し(ただし、R
13、R
14、R
15のうち1つのみ水素であるとする);例えば、R
13、R
14、R
15は、互いに独立して、水素、直鎖もしくは分枝C
1〜C
12アルキル、またはフェニルであり(ただし、R
13、R
14、R
15のうち1のみ水素であるとする);例えば、R
13が水素であり、R
14およびR
15は、C
1〜C
4アルキル、特にメチルであり;好ましくは、R
13、R
14、R
15がC
1〜C
4アルキル、特にメチルである。
【0055】
R
16、R
17、R
18は、互いに独立して、水素、直鎖もしくは分枝C
1〜C
20アルキル、C
6〜C
14アリールまたはハロゲンであるか、あるいはR
16およびR
17は、それらが結合しているC原子と一緒になって、5〜7員飽和環を形成し(ただし、R
16、R
17、R
18のうち1つのみ水素であるとする);例えば、R
16、R
17、R
18は、互いに独立して、水素、直鎖もしくは分枝C
1〜C
12アルキル、またはフェニルであり(ただし、R
16、R
17、R
18のうち1つのみ水素であるとする);例えば、R
16が水素であり、R
17およびR
18がC
1〜C
4アルキル、特にメチルであり;好ましくは、R
16、R
17、R
18がC
1〜C
4アルキル、特にメチルである。
【0056】
R
19、R
20およびR
21は、互いに独立して、水素、直鎖もしくは分枝C
1〜C
20アルキル、C
6〜C
14アリールまたはハロゲンであるか、あるいはR
19およびR
20は、それらが結合しているC原子と一緒になって、5〜7員飽和環を形成する(ただし、R
19、R
20、R
21のうち1つのみ水素であるとする);例えば、R
19、R
20、R
21は、互いに独立して、水素、直鎖もしくは分枝C
1〜C
12アルキル、またはフェニルである(ただし、R
19、R
20、R
21のうち1つのみ水素であるとする);例えば、R
19が水素であり、R
20およびR
21がC
1〜C
4アルキル、特にメチルであり;好ましくはR
19、R
20、R
21がC
1〜C
4アルキル、特にメチルである。
【0057】
本発明の化合物は、公知方法により、たとえばリガンド交換反応により特定の既知Tiキレート化合物から、例えばWO2009/050115に記載されているような
【化16】
(WO2009/050115の実施例57および55を参照)または化合物A
【化17】
(製造法は、下記の具体的な実施例を参照)から製造することができる。
【0058】
本発明による化合物を、これらの化合物(または対応する置換基を有する類似の化合物)から、それらを適切なフェノールまたはキレート化二官能性アルコールと反応させることによって製造することができる。リガンド交換反応は自発的に起こるか、または低級アルコールを共沸的に除去し、フェノール、またはキレート化二官能性アルコールにより置換する。当業者は、そのような反応およびそれについての条件に精通している。
【0059】
【化18】
【0060】
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6およびR
7の定義は、前記のとおりである。
【0061】
【化19】
【0062】
R
1、Y、Y
1、Y
2、Y
3およびXの定義は前記のとおりである。
【0063】
本発明の化合物はまた、ワンポット法により、四塩化チタンまたはチタンテトラアルコキシドから、スキームにしたがって製造することもできる。
【0064】
【化20】
【0065】
当業者は、そのような有機金属反応でとらなければならない条件および注意に精通している。
【0066】
例えば、不活性反応雰囲気下で作業することが有利である。なぜなら、原則として、有機金属中間体(金属アルコキシド、金属エノラートなど)は、非常に感湿性であるからである。したがって、反応を、有利には窒素またはアルゴンガス流下で、有利には対応する反応装置を反応前に通常の方法で、たとえば加熱し、続いてエバキュエーションすることによって不活性化することにより実施する。
【0067】
本発明の生成物の単離および仕上げ処理において、水分および酸素に対する安定性に応じて、対応して適切な注意を払うことも必要である。
【0068】
本発明による化合物の製造法における好適な溶媒は、例えば、無水非プロトン性溶媒、特にトルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン、ジクロロメタン、ジオキサンおよびテトラヒドロフラン(THF)または無水アルコール、特にメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールまたはイソプロピルアルコールである。反応はまた、溶媒を使用せずに実施することもできる。
【0069】
反応温度は、例えば0℃から約200℃まで、または室温(たとえば、20℃)〜150℃、好ましくは室温〜100℃の範囲である。
【0070】
圧力は、例えば、標準圧力(760Torr)〜1mmHgの範囲であり、好ましくは軽い真空または標準圧力を使用する。
【0071】
前記反応で中間体として使用可能ないくつかの化合物は、市販の、たとえばTi錯体であるか、または前記WO2009/050115に記載されているようにして製造することができる。
【0072】
本発明の化合物IIa、IIbおよびIIc(1つの化合物の互変異性形態を表す)は、市販されているか、または当業者に周知の反応である、各エステルもしくは活性化カルボン酸およびメチルケトンのクライゼン縮合により製造することができる。あるいは、R. Noyori et al. J. Am. Chem. Soc. 1980, 102, 2095に記載されているようにエポキシケトンの転位により製造することができる。
【0073】
式IAの化合物および式IIa、IIbおよびIIcの化合物を含むTiキレート触媒配合物は、例えば異なるアプローチを用いて形成される:
i)式IAの光潜在性触媒を溶媒、または架橋される配合物の一部中に溶解させ、式IIa、IIbおよびIIcの1,3−ジケトン化合物をこの溶液または配合物の別の部分のいずれかに添加する(または逆の順序で);
ii)Tiキレート触媒配合物を前もって式IAの光潜在性触媒と式IIa、IIbおよびIIcの1,3−ジケトン化合物との物理的混合物として、場合によってキシレンまたは酢酸ブチルなどの有機溶媒中溶液として製造し、これを貯蔵することができる(この混合物は、式IAの化合物を1,3−ジケトンと混合する、または式IAの化合物の製造中に1,3−ジケトンを添加することによって製造することができる)。
【0074】
式IIa、IIbおよびIIcの化合物の好適な例は、これらに限定されるものでないが、例えば以下のものである。
【0075】
【表1】
【0076】
Tiキレート触媒配合物は、例えば1〜50%(w/w)の式IIa、IIbまたはIIcの1,3−ジケトン[すなわち、成分(ii)]および99〜50%(w/w)の式Iの化合物[すなわち、成分(i)]を含む。Tiキレート触媒配合物は、好ましくは2〜35%(w/w)の式IIa、IIbまたはIIcの1,3−ジケトン[すなわち、成分(ii)]および98〜65%(w/w)の式Iの化合物[すなわち、成分(i)]、特に5〜30%の式IIa、IIbまたはIIcの1,3−ジケトン[すなわち、成分(ii)]および95〜70%(w/w)の式Iの化合物[すなわち、成分(i)]を含む。
【0077】
本発明の組成物、およびそれらを架橋させるための方法は、カプセル材料、シーラント、接着剤、フォーム、印刷版およびコーティング、特に輸送機関(自動車)および工業用コーティングとして有用である。輸送機関用コーティングとして、本発明の組成物は、OEM(相手先商標製品の製造会社)と自動車補修コーティングの両方として有用である。それらはまた、プライマーコーティングとしても用いることができる。それらは、多くの場合、周囲条件下で丈夫な硬いコーティングに硬化し、透明または着色のいずれであっても、ベースコート、中間コーティングおよびトップコートとして使用することができる。これにより、それらは屋外で輸送用車両を塗りなおすために特に有用となる。
【0078】
本発明は、ルイス酸型反応物質により触媒される重付加または重縮合反応の触媒としての(光)潜在性化合物を提供する。特に好ましいのは、ポリオールとイソシアネートとの反応である。
【0079】
したがって、本発明の対象はまた、前述のTiキレート触媒化合物または前述のTiキレート触媒配合物の、ルイス酸型反応物質により触媒される重付加または重縮合反応、特にブロック化もしくは非ブロック化イソシアネートまたはイソチオシアネート成分をポリオールで架橋して、ポリウレタン(PU)を形成するための触媒としての使用;ならびに
(a)少なくとも1つのブロック化もしくは非ブロック化イソシアネートまたはイソチオシアネート、
(b)少なくとも1つのポリオール;および
(c1)少なくとも1つの前記Tiキレート触媒化合物、あるいは
(c2)少なくとも1つの前記Tiキレート触媒配合物
を含む重合性組成物である。
【0080】
前記重合性組成物は、成分(a)、(b)および(c1)または(c2)に加えて、さらなる添加剤(d)、特に光増感剤化合物を含み得る。
【0081】
光重合性組成物は、一般的に、全組成物を基準として前記定義の配合物中、0.001〜15質量%、たとえば0.05〜15質量%、好ましくは0.01〜5質量%、最も好ましくは0.05〜2.5%の前記Tiキレート触媒化合物または式IAのTiキレート触媒化合物を含む。言い換えると、前記定義の量は、前記定義のTiキレート触媒配合物中に存在する式IIa、IIbおよびIIcmの化合物を除く活性触媒化合物を指す。当該量は、組成物の全質量に基づく。
【0082】
水分硬化性シリコーンエラストマーの架橋のためのTiキレート触媒の使用は、たとえば、J.−M. Pujol and C. Prebet J. Adhesion Sci. Technol. 2003, 17, 261に記載されている。シリコーン組成物の架橋による硬化は、建築における防水加工シール(G.M. Lucas(WO02/062893)またはT. Detemmerman et al.(WO2008/045395))、構造物の艶出し、自動車エンジンのガスケットにおける接着剤、電子装置用接着剤、および防汚または撥水性コーティング(H. Kobayashi et al.(WO02/098983))などの多くの用途で用いられる。Tiキレートは、たとえば電気回路および電極用(A. Nabeta et al.(WO2009/054279))、K. Fujimoto and K. Ueda EP1715015で記載されているような感圧接着剤の硬化用、またはシランおよびフェノール樹脂系接着剤組成物の硬化用(S. Sano et al.(EP1842889))のシーラントまたはコーティング剤として使用される室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物に用いることもできる。それらは、たとえばT.W. Wilson WO02/100937に記載されているような非シリコーンゴム組成物の硬化用に用いることもできる。Tiキレート触媒は、エポキシ樹脂の硬化(W.J. Blank et al Journal of Coatings Technology 2002, 74, 33)、たとえばJ.D.B. Smith J. Applied Polym. Sci. 1981, 26, 979に記載されているような無水エポキシ樹脂のため、または熱活性化可能な接着剤テープに用いられるカルボキシルエポキシ樹脂(T. Krawinkel(WO2008/043660))に用いることもできる。
【0083】
金属触媒架橋反応の他の例は、例えば、耐摩耗性および耐候性コーティングの製造において用いられるシロキサン末端オリゴマーとエポキシドとの反応(M. Priesch(DE19935471))、エポキシ樹脂のヒドロキシル末端ポリ(ジメチルオキシシラン)およびアミノプロピルトリエトキシシランクロスリンカーとの反応(M. Alagar et al. Eur. Polym. J. 2000, 36, 2449)、あるいは加水分解性シリル基を末端とするポリエーテルのエポキシシランおよびケチミン(Y. Murayama, JP06049346)またはH. M. Haugsby et al. EP399682に記載されているようなオキシモ−エトキシ官能性シーラントとの反応である。生物付着保護用室温加硫性(RTV)シロキサンゴムの使用は、J. M. Delehanty et al.(GB2444255)により報告されている。金属触媒により触媒されるゾルゲル反応は、例えばJ. Mendez−Vivar, J. of Sol−Gel Sci. Technol. 2006, 38(2), 159に記載されている。
【0084】
本発明の別の対象は、ルイス酸の存在下で架橋可能な化合物を重合するための方法であって、本発明による化合物または本発明による配合物を前記化合物に添加し、結果として得られる混合物を200〜800nmの波長範囲の電磁放射線で照射することを特徴とする方法であり;特に、ルイス酸の存在下で架橋可能な成分が、(a)ブロック化または非ブロック化イソシアネートまたはイソチオシアネート成分および(b)ポリオールの混合物である方法である。
【0085】
さらに興味深いのは、電磁放射線で照射する代わりに混合物を熱処理に付すか、または混合物を電磁放射線で照射し、照射と同時にまたは照射後に熱処理に付すことを特徴とする前記定義の方法である。
【0086】
本発明のさらなる対象は、接着剤、コーティング、シーリング、埋込用成分、印刷インク、印刷版、フォーム、成形化合物、または光構造化層の製造について前述した方法、ならびに接着剤、コーティング、シーリング、埋込用成分、印刷インク、印刷版、フォーム、成形化合物、または光構造化層の製造について前述した重合性組成物の使用である。
【0087】
別の対象は、少なくとも1つの表面にて前述の組成物および前述の重合または架橋組成物でコーティングされた基体である。
【0088】
ポリオール(成分(b))は、一般的に、少なくとも2つのヒドロキシ官能基を有するポリマーまたはオリゴマー有機種として定義される。
【0089】
好適なポリオールの例として、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセロール、1,2,6−ヘキサントリオール、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、2−メチルプロパン−1,3−ジオール、ネオペンチルグリコール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメチロール、ネオペンチルグリコールおよびヒドロキシピバル酸のモノエステル、水素化ビスフェノールA、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチルペンタン−1,3−ジオール、ジメチロールプロピオン酸、ペンタエリスリトール、ジ−トリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトールなど、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0090】
好適なポリオールにはさらに、最近開発された超分岐OH−ポリマーも含まれる。
【0091】
少なくとも2つのヒドロキシル官能基を含むヒドロキシル官能性化合物は、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、たとえばポリ−THF−ポリオール、ポリアクリレートポリオール、ポリウレタンポリオール、セルロースアセトブチレート、ヒドロキシル官能性エポキシ樹脂、アルキド、およびデンドリマーポリオール、たとえばWO93/17060で記載されているものから選択することもできる。また、ヒドロキシル官能性オリゴマーおよびモノマー、たとえばHO官能性ビニルオリゴマー、たとえばヒマシ油およびトリメチロールプロパンも含まれ得る。興味深いポリオールは、アクリルおよびポリエステルポリオール、たとえばBASFから入手可能なJoncryl(登録商標)アクリルポリオール(たとえば、Joncryl(登録商標)512または922)、またはNuplex Resinsから入手可能なSetalux(登録商標)およびSetal(登録商標)製品(たとえば、Setalux(登録商標)1187XX−60、Setal(登録商標)1606BA−80)、またはBayer Material Scienceから得られるDesmophen(登録商標)製品(たとえば、Desmophen(登録商標)AVPLS2350)である。
【0092】
本発明の文脈でさらに、たとえば水性2Kポリウレタンなどの水性系で好適なポリオール成分も用いることができる。そのようなポリオール成分は、例えばBASFから商標Joncryl(登録商標)、たとえばJoncryl(登録商標)8311、および商標Luhydran(登録商標)、たとえばLuhydran(登録商標)5938Tで、ならびにBayer Material Scienceから商標BAYHYDROL(登録商標)、たとえばBAYHYDROL(登録商標)XP2470で市販されている。
【0093】
好適なイソシアネート成分(a)は、例えばイソシアネート(ヒドロキシルと反応可能な官能基を有する)であり、次のような構造のものである:
【化21】
(式中、R
70はヒドロカルビル構造である)。
【0094】
有機(ポリ)イソシアネートは、例えば、2.5〜5の平均NCO官能価を有する多官能性、好ましくは遊離ポリイソシアネートが挙げられ、脂肪族、脂環式、芳香脂肪族または芳香族性であり得る。例えば、ジ−、トリ−またはテトラ−イソシアネートである。ポリイソシアネートとしては、ビウレット、ウレタン、ウレトジオン、およびイソシアヌレート誘導体を挙げることができる。好適なポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレートおよびイソホロンジイソシアネートのイソシアヌレートなどのイソシアヌレート構造単位を有するポリイソシアネート;2分子のヘキサメチレンジイソシアネートまたはイソホロンジイソシアネートなどのジイソシアネートおよびエチレングリコールなどのジオールの付加物;ヘキサメチレンジイソシアネートのウレチジオン;イソホロンジイソシアネートのウレチジオンまたはイソホロンジイソシアネート;トリメチロールプロパンおよびメタ−テトラメチルキシレンジイソシアネートの付加物などが挙げられる。
【0095】
これらの有機ポリイソシアネートの例としては、1,6−ジイソシアナトヘキサン、イソホロンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタン−ジイソシアネート、4,4’−ビス(イソシアナト−シクロヘキシル)メタン、1,4−ジイソシアナト−ブタン、1,5−ジイソシアナト−2,2−ジメチルペンタン、2,2,4−トリメチル−1,6−ジイソシアナトヘキサン、1,10−ジイソシアナトデカン、4,4−ジイソシアナト−シクロヘキサン、2,4−ヘキサヒドロトルエンジイソシアネート、2,6−ヘキサヒドロトルエンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、1−イソシアナト−3−(イソシアナトメチル)−1−メチルシクロヘキサン、m−α,α−α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、オメガ,オメガ−ジプロピルエーテルジイソシアネート、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,2−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4−メチル−1,3−ジイソシアナトシクロヘキサン、トランス−ビニリデンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメチル−ジシクロヘキシルメタン4,4’−ジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、1,3−ビス(1−イソシアナト−メチルエチル)ベンゼン、1,4−ビス(1−イソシアナト−1−メチルエチル)ベンゼン、1,3−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、キシレンジイソシアネート、1,5−ジメチル−2,4−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、1,5−ジメチル−2,4−ビス(2−イソシアナトエチル)ベンゼン、1,3,5−トリエチル−2,4−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、4,4’−ジイソシアナトジフェニル、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジイソシアナトジフェニル、3,3’−ジフェニル−4,4’−ジイソシアナトジフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジイソシアナトジフェニル、4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、ジイソシアナトナフタレン、それらの前記誘導体、およびそれらの混合物が挙げられる。さらなる例として、イソシアヌレート構造単位を有するポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートまたは2分子のイソホロンジイソシアネートなどのジイソシアネート、およびエチレングリコールなどのジオールの付加物、3分子のヘキサメチレンジイソシアネートのおよび1分子の水の付加物(たとえば、商標Desmodur(登録商標)NでBayer Corporationから入手可能)、1分子のトリメチロールプロパンおよび3分子のトルエンジイソシアネートの付加物(商標Desmodur(登録商標)LでBayer Corporationから入手可能)、1分子のトリメチロールプロパンおよび3分子のイソホロンジイソシアネートの付加物、1,3,5−トリイソシアナトベンゼンおよび2,4,6−トリイソシアナトトルエンなどの化合物、ならびに1分子のペンタエリスリトールおよび4分子のトルエンジイソシアネートの付加物が挙げられる。
【0096】
ヒドロキシル基と反応可能なイソシアネートの具体例として、HDIトリマー、たとえばBayerから入手可能なDesmodur(登録商標)3300、またはBASFから入手可能なBasonat(登録商標)HI100が挙げられる。後者の理想化構造を以下に示す(ペンタマー、ヘプタマーおよびさらに高分子量種も存在し得る):
【化22】
【0097】
通常、これらの生成物は周囲温度で液体であり、広範囲で市販されている。特に好ましいイソシアネート硬化剤は、トリイソアネートおよび付加物である。例えば、1,8−ジイソシアナト−4−(イソシアナトメチル)オクタン、3モルのトルエンジイソシアネートの1モルのトリメチロールプロパンに対する付加物、1,6−ジイソシアナトヘキサンのイソシアヌレートトリマー、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレートトリマー、1,6−ジイソシアナトヘキサンのウレトジオンダイマー、1,6−ジイソシアナトヘキサンのビウレットトリマー、3モルのm−α,α−α’,α’−テトラメチルキシレンジイソシアネートの1モルのトリメチロールプロパンに対する付加物、ならびにそれらの混合物である。
【0098】
特に興味深いのは、1,6−ヘキサンジイソシアネートおよびイソホロンジイソシアネートの環状トリマー(イソシアヌレート)およびウレトジオンである。通常、これらの化合物は、少量のそれらの高級同族体を含む。
【0099】
場合によって、本発明の組成物を水性コーティング組成物として使用する場合、これは、C
1〜C
4アルコキシポリアルキレンオキシド基などの非イオン性基で置換された有機親水性ポリイソシアネート化合物も含み得る。全固体ポリイソシアネート化合物に基づいて、例えば30質量%、たとえば20質量%、好ましくは15質量%の非イオン性基が存在するであろう。イオン的に安定化されたポリイソシアネートも使用することができる。
【0100】
本明細書中の組成物のいずれにおいても、ポリマー材料は、比較的低分子量から比較的高分子量までの範囲であり得る。これは、架橋前の組成物の粘度が低く保たれ、溶媒(複数可)の必要性を回避又は最小とするように、比較的低分子量のものであるのが好ましい。
【0101】
場合によって組成物中に存在し得る他の添加剤(d)としては、1以上の溶媒が挙げられる(そして溶媒としてのみ作用することが意図される)。これらは、好ましくはヒドロキシルまたは第1もしくは第2アミノなどの基を含まない。
【0102】
使用に応じて、組成物は他の材料(d)を含み得る。成分、添加剤または補助剤(d)の例として、顔料、染料、乳化剤(界面活性剤)、顔料分散助剤、レベリング剤、クレーター防止剤、消泡剤、湿潤剤、垂れ防止剤、熱安定剤、UV吸収剤、酸化防止剤、乾燥剤およびフィラーが挙げられる。
【0103】
例えば、特にカプセル材料およびシーラントとして使用される場合、組成物は、フィラー、顔料、および/または酸化防止剤を含み得る。
【0104】
コーティングとして使用される場合、本発明の組成物は、場合によって、典型的に添加された当該技術分野で公知の成分を含み、これらは以下で記載する。例えば、不活性であるかまたはヒドロキシルもしくはイソシアネート以外の官能基を有するかのいずれかであり、またコーティング組成物中の他の反応性材料と反応する他のポリマー(e)(特に低分子量「官能化オリゴマー」)が存在してもよい。
【0105】
コーティングの成分または潜在的な架橋剤として使用可能なそのような官能化オリゴマーの代表例は、次のとおりである:
【0106】
− ヒドロキシルオリゴマー:例えば、ペンタエリスリトール、ヘキサンジオール、トリメチロールプロパンなどの多官能性アルコールと、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物などの環状モノマー無水物との反応生成物は、酸オリゴマーを産生する。これらの酸オリゴマーを、一官能性エポキシ樹脂、たとえばブチレンオキシド、プロピレンオキシドなどとさらに反応させて、ヒドロキシルオリゴマーを形成する。
【0107】
− シランオリゴマー:例えばイソシアナトプロピルトリメトキシシランとさらに反応させた前記ヒドロキシルオリゴマー。
【0108】
− エポキシオリゴマー:例えばシクロヘキサンジカルボン酸のジグリシジルエステル、例えばHuntsman製のAraldite(登録商標)CY−184、および脂環式エポキシ樹脂、例えばDaicel製のCelloxide 2021など、または例えばヒドロキシル末端エポキシ化ポリブタジエン、たとえばSartomer製のPoly bd600および605。例えば、オキセタン誘導体、たとえばToagosei製のOXT101および121またはPerstorp製のTMPOも反応性材料として好適である。
【0109】
− アルジミンオリゴマー:例えば、イソブチルアルデヒドとイソホロンジアミンなどのジアミンとの反応生成物。
【0110】
− ケチミンオリゴマー:例えばメチルイソブチルケトンとイソホロンジアミンなどのジアミンとの反応生成物。
【0111】
− メラミンオリゴマー:例えば市販のメラミン、たとえばCytec Industries製のCYMEL(登録商標)1168など。
【0112】
− AB官能化オリゴマー:例えば、前記酸オリゴマーを当量基準で50%の一官能性エポキシ、たとえばブチレンオキシドまたは前記ヒドロキシルおよび酸オリゴマーのブレンドまたは前記の任意の他のブレンドとさらに反応させることによって作製される酸/ヒドロキシル官能性オリゴマー。
【0113】
− CD官能化クロスリンカー:例えば、エポキシ/ヒドロキシル官能性クロスリンカー、たとえばDixie Chemical製のSorbitol DCE−358(登録商標)のポリグリシジルエーテルまたは前記ヒドロキシルオリゴマーおよびエポキシクロスリンカーのブレンドまたは前記の任意の他のブレンド。
【0114】
好ましい官能化オリゴマーは、例えば、約3,000を超えない質量平均分子量と約1.5を超えない多分散性を有し;さらに好ましいオリゴマーは、約2,500を超えない分子量および約1.4を超えない多分散性を有し;最も好ましいオリゴマーは、約2,200を超えない分子量および約1.25を超えない多分散性を有する。
【0115】
他の添加剤には、例えば、イソホロン(isopherone)ジアミンなどのジアミンとマレイン酸ジエチルなどのマレイン酸ジアルキルとの反応生成物であるポリアスパラギン酸エステルも含まれる。
【0116】
場合によって、少なくとも2つのヒドロキシル官能基を含むヒドロキシル官能性化合物が硬化性材料中に存在していてもよい。少なくとも2つのヒドロキシル官能基を含むヒドロキシル官能性化合物は、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリアクリレートポリオール、ポリウレタンポリオール、セルロースアセトブチレート、ヒドロキシル官能性エポキシ樹脂、アルキド、およびデンドリマーポリオール、たとえばWO93/17060に記載されているものから選択することができる。また、ヒドロキシル官能性オリゴマーおよびモノマー、たとえばヒマシ油およびトリメチロールプロパンを含めることができる。興味深いポリオールは、アクリレートポリオール、たとえばNuplex Resinsから入手可能なアクリレートポリオールSetalux(登録商標)1187である。
【0117】
コーティング組成物は、少なくとも1つの溶媒中に溶解させた高固形分コーティング系に配合することができる。溶媒は、通常、有機溶媒である。好ましい溶媒として、芳香族炭化水素、たとえば石油ナフサまたはキシレン;ケトン、たとえばメチルアミルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトンまたはアセトン;エステル、たとえば酢酸ブチルまたは酢酸ヘキシル;およびグリコールエーテルエステル、たとえばプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどが挙げられる。
【0118】
本発明の組成物はさらに、非環状オリゴマー、すなわち直線状もしくは芳香族であるバインダー(e)を含み得る。そのような非環状オリゴマーは、たとえば、ヒドロキシルオリゴマーなどで無水コハク酸由来または無水フタル酸由来の部分を含み得る。
【0119】
コーティング組成物としての本発明の組成物はまた、例えばバインダーとして、3,000超の質量平均分子量のアクリルポリマーまたはEtna Product Inc.製のSCD(登録商標)−1040などの通常のポリエステルを、改善された外観、垂れ下り抵抗、流量およびレベリングなどのために含み得る。アクリルポリマーは、例えば、アクリレート、メタクリレート、スチレンなどの典型的なモノマーおよびヒドロキシエチルアクリレート、グリシジルメタクリレート、またはガンマ−メタクリルイルプロピルトリメトキシシランなどの官能性モノマーから構成される。
【0120】
コーティング組成物は、例えば、有機媒体中に分散されたポリマーである、分散されたアクリル成分のバインダー(e)も含み得、この粒子は、立体安定化として知られているものにより安定化される。以下、立体バリアによって覆われた分散相または粒子を、「高分子ポリマー」または「コア」と呼ぶ。このコアに結合した、立体バリアを形成する安定剤を「マクロモノマー鎖」または「アーム」と呼ぶ。
【0121】
分散されたポリマーは、分散されたポリマーの質量を基準として、約10〜90%、好ましくは50〜80質量%の約50,000〜500,000の質量平均分子量を有する高分子量コアを含む。好ましい平均粒子サイズは、0.1〜0.5μmである。コアに結合したアームは、分散されたポリマーの約10〜90%、好ましくは10〜59質量%を占め、約1,000〜30,000、好ましくは1,000〜10,000の質量平均分子量を有する。分散されたポリマーの高分子コアは、例えば、場合によってエチレン性不飽和モノマー(複数可)と共重合した、重合アクリルモノマー(複数可)から構成される。好適なモノマーとしては、スチレン、アルキルアクリレートもしくはメタクリレート、エチレン性不飽和モノカルボン酸、および/またはシラン含有モノマーが挙げられる。メチルメタクリレートなどのモノマーは、高Tg(ガラス転移温度)分散ポリマーに寄与し、一方、ブチルアクリレートまたは2−エチルヘキシルアクリレートなどの「軟化」モノマーは、低Tg分散ポリマーに寄与する。他の任意のモノマーは、ヒドロキシアルキルアクリレートもしくはメタクリレートまたはアクリロニトリルである。場合によって、高分子コアは、アリルメタクリレートなどのジアクリレートもしくはジメタクリレートの使用またはヒドロキシル部分の多官能性イソシアネートとの後反応により架橋され得る。コアに結合したマクロモノマーアームは、アルキルメタクリレート、アルキルアクリレート(それぞれ、アルキル基中に1〜12個の炭素原子を含む)、ならびにグリシジルアクリレートもしくはグリシジルメタクリレートまたはエチレン性不飽和モノカルボン酸の重合モノマーを、アンカリングおよび/または架橋のために含み得る。典型的に有用なヒドロキシ含有モノマーは、前述のヒドロキシアルキルアクリレートまたはメタクリレートである。
【0122】
場合によって、例えばケトン系キレート化剤を(さらなる添加剤(d)として)コーティング組成物に添加してもよい。これらのキレート化剤の例としては、アルファ−ヒドロキシルケトン、縮合芳香族ベータ−ヒドロキシケトン、マロン酸ジアルキル、アセト酢酸エステル、アセト酢酸アミド、乳酸アルキル、およびピルビン酸アルキルが挙げられる。ケトン系キレート化剤は、例えば固形分基準で10質量%まで、好ましくは5質量%までの量で使用される。
【0123】
一実施形態では、コーティング組成物はポットライフ延長剤をさらに含む。ポットライフ延長剤は、光潜在性触媒が潜在性形態である程度の触媒活性を示す場合、特に有益である。光潜在性触媒が、組成物のポットライフを低下させる触媒活性な不純物を含む場合も同様であり得る。ポットライフ延長剤は、コーティング組成物のポットライフ、すなわち、全成分を混合してから、粘度が高くなりすぎて組成物を塗布できなくなる瞬間までの時間を増大させる。ポットライフ延長剤は、好適には、前記光潜在性触媒と同様の量で存在し得る。好ましいポットライフ延長剤は、特に塗布されたコーティングを40〜60℃などの高温で硬化させる場合に、コーティング組成物の乾燥速度にほとんどまたは全くマイナスの影響を及ぼさない。したがって、これらのポットライフ延長剤は、ポットライフと乾燥速度とのバランスを改善する。ポットライフ延長剤はまた、コーティングの外観にプラスの影響を及ぼし得る。好適なポットライフ延長剤の例として、カルボン酸基含有化合物、たとえば酢酸、プロピオン酸またはペンタン酸が挙げられる。芳香族カルボン酸基含有化合物、特に安息香酸が好ましい。他の好適なポットライフ延長剤は、フェノール化合物、第3級アルコール、たとえば第3級ブタノールおよび第3級アミルアルコール、ならびにチオール基含有化合物である。前記ポットライフ延長剤の組み合わせ、たとえば芳香族カルボン酸基含有化合物およびチオール基含有化合物またはメルカプトカルボン酸の組み合わせを使用することもできる。
【0124】
本発明による組成物は、水性組成物、溶媒系組成物または無溶媒組成物であり得る。組成物は液体オリゴマーから構成され得るため、高固形分組成物または無溶媒組成物としての使用に特に適している。あるいは、本発明のコーティング組成物は、水性コーティング分散液であり、この場合、イソシアネート反応性化合物は20℃超のTgを有する。コーティング組成物は、粉末コーティング組成物およびホットメルトコーティング組成物中でも使用することができる。例えば、組成物中の理論的揮発性有機化合物含有量(VOC)は、約450g/l未満、たとえば約350g/l未満、または約250g/l未満である。
【0125】
本発明の組成物は、特にコーティング組成物として、例えば、顔料、安定剤、レオロジー調節剤、フロー剤、強化剤およびフィラーなど通常の添加剤も含み得る。そのようなさらなる添加剤は、もちろん、(コーティング)組成物の使用目的に依存するであろう。
【0126】
本発明による組成物を、典型的には、スプレー、静電スプレー、ローラーコーティング、カーテンコーティング、ディッピングまたはブラッシングなど通常の技術によって基体上に塗布する。本発明の配合物は、例えば、屋外物品、たとえば自動車および他の車体部品用の透明コーティングとして有用である。基体を場合によって、例えば、本発明の組成物でコーティングする前に、プライマーおよびまたはカラーコートもしくは他の表面調合物で準備する。
【0127】
コーティング組成物の層を、例えば、数分から24時間までの範囲、典型的には8時間未満、好ましくは5分〜3時間の範囲で(放射線源の種類に応じて)、たとえばUV光に暴露することによって潜在性触媒を活性化した後に周囲条件下で硬化させて、基体上に所望のコーティング特性を有するコーティングを形成する。当業者には、実際の硬化時間が、厚さ、潜在性触媒濃度、配合物中の成分をはじめとするいくつかのパラメータに依存し;そして任意のさらなる機械的補助器具、例えば、硬化速度を加速するためにコーティングされた基体上に連続して空気を流すのを助けるファンに依存することは理解される。所望により、硬化速度は、コーティングされた基体を、一般には約60℃〜150℃の範囲の温度で、例えば約15〜90分の期間加熱することによってさらに加速することができる。加熱は例えば、オーブン中での加熱、試料を熱風に付すこと、IR暴露、マイクロ波、または当該技術分野で公知の任意の他の好適な手段により実施する。前記加熱ステップはOEM(相手先商標製品の製造会社)条件下で特に有用である。硬化時間は、例えば雰囲気の湿度など他のパラメータにも依存する可能性がある。
【0128】
本発明の潜在性触媒は、例えば、コーティング用途および一般的にポリウレタンの硬化が必要とされる分野で使用することができる。例えば、組成物は、工業用およびメンテナンス用コーティング用途における透明または有色コーティングとして好適である。
【0129】
本発明による組成物は、UV硬化性接着剤において、たとえば感圧接着剤、積層接着剤、ホットメルト接着剤、湿気硬化接着剤、シラン反応性接着剤またはシラン反応性シーラントなどの製造、および関連する用途における使用にも好適である。
【0130】
前記接着剤は、ホットメルト接着剤であり得、同様に水性もしくは溶媒系接着剤、液体無溶媒接着剤または2成分反応性接着剤であり得る。特に好適なのは、感圧接着剤(PSA)、例えばUV硬化性ホットメルト感圧接着剤である。前記接着剤は、例えば少なくとも1つのゴム成分、粘着付与剤として少なくとも1つの樹脂成分および少なくとも1つの油成分を、例えば30:50:20の質量比で含む。好適な粘着付与剤は、天然または合成樹脂である。当業者は、好適な対応する化合物ならびに好適な油成分またはゴムを認識している。
【0131】
例えばブロック化形態でイソシアネートを含む予備重合した接着剤を、例えば高温で加工することができ、そしてホットメルト処理後に基体上にコーティングすることができ、その後、ブロック化イソシアネートを含むさらなる硬化ステップにより完全硬化を達成し、これは光潜在性触媒の光活性化によって実現する。
【0132】
ホットメルト接着剤は、感圧接着剤として興味深く、環境的観点から望ましくない溶媒系組成物の使用と置換するのに好適である。高流量粘度を達成するためのホットメルト押出処理には、高い適用温度が必要である。イソシアネートを含む本発明の組成物は、ホットメルトコーティングの製造においてクロスリンカーとして好適であり、この場合、クロスリンカーは(メタ)アクリレートPSAの官能性コモノマーとの化学反応を開始する。コーティング操作の後、PSAをまず熱により、または二重架橋機構を実施することによって架橋させ、PSAを続いてUV光で架橋させる。UV架橋照射は、200〜400nmの波長範囲、さらにはUV照射装置源、ならびに光潜在性金属触媒によって可視範囲まで、たとえば650nmにまで及ぶ短波紫外線によって起こる。そのような系および方法は、例えばUS2006/0052472(その開示内容は、参考として本明細書で援用される)に記載されている。
【0133】
本発明の組成物は、種々の基体上の塗布に好適であり、たとえば、自動車OEM(相手先商標製品の製造会社)または典型的には車体のコーティングで用いられる補修用途において透明コーティングを提供するために特に好適である。本発明のコーティング組成物は、例えば、透明コーティング組成物、有色組成物、金属化コーティング組成物、ベースコート組成物、モノコート組成物またはプライマーの形態で配合することができる。基体は、例えば、プライマーおよびもしくはカラーコートまたは他の表面調合物で、本発明の組成物でのコーティング前に準備することができる。
【0134】
本発明のコーティング組成物の塗布に適した基体としては、自動車ボディー(または車両ボディー一般)、自動車下請け供給者により製造および塗装されるありとあらゆる物品、フレームレール、商用トラックおよびトラックボディー(これらに限定されるものではないが、例えば、飲料ボディー、ユーティリティーボディー、生コンクリート運搬車両ボディー、廃棄物運搬車両ボディー、ならびに消防車および緊急車両ボディーを含む)、ならびにそのようなトラックボディーに対する任意の可能性のあるアタッチメントまたは部品、バス、農機具および建設機器、トラックキャップおよびカバー、商用トレーラー、民生用トレーラー、レクリエーション用車両、例えばこれらに限定されるものではないが、トレーラーハウス、キャンパー、コンバージョンバン、バン、娯楽用車両、娯楽船スノーモービル、オフロードカー、水上バイク、オートバイ、自転車、ボート、および航空機が挙げられる。
【0135】
基体は、さらに工業用および商業用の新しい構造物およびそのメンテナンス;セメントおよび木の床;例えばオフィスビルディングおよび住居などの商業用および住宅構造の壁;遊園地設備;コンクリート表面、例えば駐車場および車路;アスファルトおよびコンクリート路面、木製基体、海洋表面;屋外構築物、例えば橋梁、塔;コイルーティング;貨車;プリント基板;機械;OEMツール;標識;グラスファイバー構造物;スポーツ用品;ゴルフボール;ならびにスポーツ設備を含む。
【0136】
しかし、本発明の組成物はまた、一般的に、例えばプラスチック、金属、ガラス、セラミックなどの基体上に、例えばその接着剤(これに限定されない)としての機能で塗布することもできる。
【0137】
本発明の潜在性触媒で架橋されるイソシアネートとして、ブロック化イソシアネートも使用することができる。前記化合物は、例えば、組成物中で使用する前に「脱ブロック化」されるか、または反応中に脱ブロック化することができるか、またはたとえば熱もしくは照射による潜在性触媒の「活性化」の過程で、ブロック化形態で反応に参加することができる。
【0138】
ブロック化イソシアネートは当該技術分野で公知であり、例えばD.A. Wicks, Z.W. Wicks 総説Progress in Organic Coatings, 41 (2001), 1−83、ならびにC. Guertler, M. Homann, M. Mager, M. Schelhaas, T. Stingl, Farbe+Lack 2004, 110(12), 34;(どちらの文書も参考として本明細書で援用される)に記載されている。
【0139】
好適なイソシアネート成分は、例えば前記のとおりである。
【0140】
イソシアネートに好適なブロッキング剤は、当該技術分野で公知のもの、例えば、アルコール、フェノール、アミン、イミド、アミド、グアニジン、アミジン、トリアゾール、ピラゾール、活性メチレン化合物、ケトオキシム、オキシム、マロンエステル、アセト酢酸アルキル、ホルミエート、ラクタム、イミダゾール、トリアゾール、ピラゾール、CH−酸性環状ケトンおよびメルカプタンである。
【0141】
例として、脂肪族、脂環式、芳香族、またはアルキルモノアルコールもしくはフェノール化合物、例えば低級脂肪族アルコール、例えばメチル、エチル、クロロエチル、プロピル、ブチル、アミル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシルおよびラウリルアルコール、3,3,5−トリメチルヘキサノールなどが挙げられる。芳香族アルキルアルコールとしては、例えばフェニルカルビノールおよびエチルフェニルカルビノールが挙げられる。グリコールエーテル、たとえばエチルグリコールモノエチルエーテル、エチルグリコールモノブチルエーテルおよびその同等物を用いることができる。使用可能なフェノール化合物の例には、フェノール、置換フェノール、例えばクレゾール、キシレノール、ニトロフェノール、クロロフェノール、エチルフェノール、t−ブチルフェノールおよび2,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエンが含まれる。
【0142】
使用可能な他のブロッキング剤の例としては、第3級ヒドロキシルアミン、たとえばジエチルエタノールアミン、ラクタム、たとえばカプロラクタムおよびオキシム、たとえばメチルエチルケトンオキシム、アセトンオキシムおよびシクロヘキサノンオキシムが挙げられる。
【0143】
具体例として、ブタノンオキシム、ジイソプロピルアミン、1,2,4−トリアゾール、ジメチル−1,2,4−トリアゾール、イミダゾール、マロン酸および酢酸のエチラート、アセトンオキシム、3,5−ジメチルピラゾール、イプシロン−カプロラクタムカプロラクタム、N−メチル−、N−エチル、N−(イソ)プロピル、N−n−ブチル、N−イソ−ブチル−、N−tert−ブチルベンジルアミンまたは1,1−ジメチルベンジルアミン、N−アルキル−N−1,1−ジメチルメチルフェニルアミン;ベンジルアミンならびに活性化二重結合を有する化合物、たとえばマロン酸エステル、Ν,Ν−ジメチルアミノプロピルベンジルアミンおよび第3級アミン基を含む他の化合物(適切であれば、置換ベンジルアミンおよび/またはジベンジルアミン)の付加物が挙げられる。
【0144】
数例ではオキシムおよびフェノールの使用が望ましい。なぜなら、これらのオキシムまたはフェノールでブロックされたある特定のポリイソシアネートは比較的低温でブロックが外せるからである。
【0145】
好適なCH−酸性ケトンの例は、WO04/058849で記載され、参考として本明細書で援用される。好ましいのは、シクロペンタノン−2−カルボキシメチルエステル、シクロペンタノン−2−カルボキシエチルエステル、シクロペンタノン−2−カルボキシニトリル、シクロヘキサノン−2−カルボキシメチルエステル、シクロヘキサノン−2−カルボキシエチルエステル、シクロペンタノン−2−カルボニルメタン、特にシクロペンタノン−2−カルボキシメチルエステル、シクロペンタノン−2−カルボキシエチルエステル、シクロヘキサノン−2−カルボキシメチルエステルおよびシクロヘキサノン−2−カルボキシエチルエステル、とりわけシクロペンタノン−2−カルボキシエチルエステルおよびシクロヘキサノン−2−カルボキシエチルエステルである。
【0146】
異なるブロッキング剤の混合物も使用することができ、本発明の組成物において使用可能なブロック化イソシアネートが異なるブロッキング基を有し得ることは明かである。
【0147】
組成物は、ブロック化イソシアネートを、例えば全組成物を基準として、5〜95質量%、好ましくは20〜80質量%の量で含む。イソシアネートのポリオールに対する比は、例えば約2:1〜1:2、好ましくは1.2:1〜1:1.2で変化する。ブロック化イソシアネートの分子量MWは、例えば約100〜50000、特に200〜20000の範囲である。
【0148】
光潜在性触媒(c)に加えて、光重合性組成物は種々の添加剤(d)を含むことができる。
【0149】
本発明の対象はまた、成分(a)、(b)および(c1)または(c2)に加えて、さらなる添加剤(d)、特に光増感剤化合物を含む前記の重合性組成物でもある。
【0150】
添加剤(d)は、例えばさらなる共開始剤またはスペクトル感度をシフトもしくは拡大させる増感剤である。一般に、これらは、芳香族カルボニル化合物、例えばベンゾフェノン、チオキサントン、アントラキノンおよび3−アシルクマリン誘導体またはエオシン、ローダミンおよびエリスロシン染料などの染料であり、これらは、例えば、エネルギー移動または電子移動により全体的な量子収率を改善する。共開始剤として添加可能な好適な染料の例は、トリアリールメタン、例えばマラカイトグリーン、インドリン、チアジン、例えばメチレンブルー、キサントン、チオキサントン、オキサジン、アクリジンまたはフェナジン、例えばサフラニン、および式
【化23】
(式中、Rはアルキルまたはアリールであり、R’は水素またはアルキルもしくはアリール基である)のローダミン、例えばローダミンB、ローダミン6GまたはビオラミンR、ならびにスルホローダミンBもしくはスルホローダミンGである。同様に好適なのは、例えば、5,7−ジヨード−3−ブトキシ−6−フルオロンなどのフルオロンである。
【0151】
光増感剤として特に興味深いのは、チオキサントンおよびチオキサントン誘導体、ベンゾフェノンおよびベンゾフェノン誘導体、クマリンおよびクマリン誘導体である。
【0152】
成分(d)として好適な光増感剤のさらなる具体例は3−(アロイルメチレン)−チアゾリンおよび3−(アロイルメチレン)−チアゾリン誘導体ならびにローダニン誘導体である。
【0153】
好適な増感剤の具体例は、当業者に公知であり、例えばWO06/008251 page 36, line 30 to page 38, line8(その開示内容は、参考として本明細書で援用される)に公開されている。
【0154】
非置換および置換ベンゾフェノンまたはチオキサントンが特に好ましい。好適なベンゾフェノンの例として、ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(エチルメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ジフェニルベンゾフェノン、4,4’−ジフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ビス(p−イソプロピルフェノキシ)ベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、2−メトキシカルボニルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド、4−メトキシ−3,3’−メチルベンゾフェノン、イソプロピルチオキサントン、クロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、1,3−ジメチル−2−(2−エチルヘキシルオキシ)チオキサントンが挙げられる。
【0155】
同様に好ましいのは、ベンゾフェノンおよび/またはチオキサントンの混合物、例えばベンゾフェノンおよび4−メチルベンゾフェノンの混合物または4−メチルベンゾフェノンおよび2,4,6−トリメチルベンゾフェノンの混合物である。
【0156】
本発明の範囲内で、ヒドロキシルケトン、アミノケトン、モノアシルホスフィンオキシド、ビスアシルホスフィンオキシドおよびオキシムエステルなどのラジカル生成光開始剤も増感剤として用いることができる。
【0157】
さらなる通例の添加剤(d)は、使用目的に応じて、光学的光沢剤、フィラー、顔料、染料、湿潤剤、レベリング助剤、静電防止剤、流動性向上剤および接着促進剤、酸化防止剤、光安定剤、たとえばUV吸収剤、例えばヒドロキシベンゾトリアゾール、ヒドロキシフェニル−ベンゾフェノン、オキサルアミドまたはヒドロキシフェニル−s−トリアジンタイプのものである。これらの化合物は(立体障害アミン(HALS)の有無にかかわらず)個別にまたは混合物で用いることができる。
【0158】
組成物は、染料および/または白色および着色顔料も含み得る。適用法の種類に応じて、有機ならびに無機顔料を使用する。そのような添加剤は当業者に公知であり、数例を挙げる:二酸化チタン顔料、たとえばルチルタイプまたはアナターゼタイプのもの、カーボンブラック、酸化亜鉛、例えば亜鉛白、酸化鉄、例えば鉄黄、ベンガラ、クロムイエロー、クロムグリーン、ニッケルチタンイエロー、群青、コバルトブルー、バナジウム酸ビスマス、カドミウムイエローまたはカドミウムレッド。有機顔料の例として、モノアゾ顔料またはビスアゾ顔料、ならびにそれらの金属錯体、フタロシアニン顔料、多環式顔料、例えばペリレン−、アントラキノン−、チオインディゴ−、キナクリドン−またはトリフェニルメタン顔料、ならびにジケト−ピロロ−ピロール−、イソインドリノン−、たとえばテトラクロルイソインドリノン−、イソインドリン−、ジオキサジン−、ベンズイミダゾロン−およびキノフタロン顔料が挙げられる。
【0159】
顔料を、本発明による組成物では単独または組み合わせで使用する。
【0160】
使用目的に応じて、顔料を、当該技術分野で通例の量で、例えば、全配合物に基づいて、1〜60質量%、または10〜30質量%の量で使用する。
【0161】
組成物は、異なるクラスの有機染料も含み得る。例として、アゾ染料、メチン染料、アントラキノン染料または金属錯体染料が挙げられる。通例の濃度は、例えば、全配合物を基準として、0.1〜20%、特に1〜5%である。
【0162】
添加剤は、応用分野およびこの分野で必要とされる特性に応じて選択される。前記添加剤は、当該技術分野で通例であり、したがって、各用途で通常の量で添加される。
【0163】
場合によっては、加熱は露光中または露光後に実施するのが有利であり得る。このように、多くの場合、架橋反応を加速することが可能である。本発明による前記方法において、電磁放射線で照射する代わりに、本発明の潜在性触媒を含む混合物を熱処理に付すことができる。別の可能性は、前述のように、反応混合物を電磁放射線で照射し、照射と同時にまたは照射後に熱処理に付すことである。
【0164】
本発明の対象は、したがって、電磁放射線で照射する代わりに混合物を熱処理に付す、または混合物を電磁放射線で照射し、そして照射と同時にまたは照射後に熱処理に付すことを特徴とする前述の方法でもある。
【0165】
本発明の組成物は、種々の目的のために、例えば、印刷インクとして、クリアコートとして、白色塗料として(例えば、木材、プラスチックまたは金属用)、コーティングとして(特に紙、木材、金属またはプラスチック用)、粉末コーティングとして、建物および道路をマーキングするための日光硬化性外部コーティングとして、写真複製処理のため、ホログラフィック記録材料用、画像記録処理のため、または有機溶媒もしくは水性アルカリ性媒体を用いて現像可能な印刷板を製造するため、スクリーン印刷用マスクを製造するため、歯科用充填剤として、感圧接着剤および水分硬化性シラン修飾接着剤をはじめとする接着剤として、シーリングのため、積層樹脂として、エッチングレジストまたは永久レジストとして、および電子回路用ソルダーマスクとして、埋込成分用、成形品用、マス養生(透明な型中でのUV硬化)またはステレオリソグラフィー法による三次元物品の製造のため(例えばUS4575330で記載されているとおり)、複合材料(例えば、ガラス繊維および/または他の繊維および他の助剤を含み得るスチレン系ポリエステル)および他の厚層組成物を製造するため、電子部品のコーティングまたはカプセル化のため、または光ファイバー用コーティングとして、用いることができる。
【0166】
表面コーティングでは、プレポリマーと、単不飽和モノマーも含み得る多不飽和モノマーとの混合物を使用することが一般的である。ここでのプレポリマーは、コーティングフィルムの特性に主に関与し、これを変えることにより、熟練者は硬化フィルムの特性に影響を及ぼすことができる。多不飽和モノマーは、クロスリンカーとして機能し、コーティングフィルムを不溶性にする。単不飽和モノマーは反応性希釈剤として機能し、これにより溶媒を使用する必要なしに粘度を低下させる。
【0167】
本発明の組成物は「二重硬化」用途にも好適である。二重硬化とは、熱架橋成分およびUV架橋成分、例えば2Kポリウレタン(熱硬化性成分として)およびアクリレート成分(UV硬化性成分として)を含む系を意味する。前記「二重硬化」組成物を、放射線への暴露と加熱との組み合わせにより硬化させ、この場合、照射および加熱は、同時に実施するか、またはまず照射ステップを実施し、続いて加熱するか、もしくは組成物をまず加熱し、続いて放射線に暴露するかのいずれかである。
【0168】
「二重硬化」組成物は、一般的に、熱硬化成分用の開始剤化合物および光硬化ステップ用の本発明による光活性化合物を含む。
【0169】
本発明の組成物は、例えば、あらゆる種類の基体用コーティング材料として好適であり、基体の例として、木材、織物、紙、セラミック、ガラス、プラスチック、例えばポリエステル、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリオレフィンまたは酢酸セルロース(特にフィルムの形態で)、ならびにAl、Cu、Ni、Fe、Zn、MgまたはCoおよびGaAs、SiもしくはSiO
2などの金属が挙げられ、その上に保護コーティング、または像様露光により画像を適用することが意図される。
【0170】
液体組成物、溶液、分散液、エマルジョンまたは懸濁液を基体に塗布することにより、基体をコーティングすることができる。溶媒および濃度の選択は、組成物の種類およびコーティング法に主に依存する。溶媒は不活性でなければならない:言い換えると、溶媒は成分との化学反応を受けてはならず、コーティング操作後、乾燥処理中に再度除去できなければならない。好適な溶媒の例として、ケトン、エーテルおよびエステル、たとえばメチルエチルケトン、イソブチルメチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、N−メチルピロリドン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1,2−ジメトキシエタン、酢酸エチル、酢酸n−ブチルおよび3−エトキシプロピオン酸エチルが挙げられる。
【0171】
公知コーティング法を使用して、例えばスピンコーティング、ディップコーティング、ナイフコーティング、カーテンコーティング、ブラッシング、スプレーコーティング、特に静電スプレーコーティングおよびリバースロールコーティングにより、また電気泳動析出により、溶液を基体に均一に塗布する。層を一時的な柔軟性支持体に塗布し、次いで最終基体、例えば銅被覆回路基板に、積層による層転写によってコーティングすることも可能である。
【0172】
塗布量(層厚さ)および基体(層支持体)の性質は、所望の応用分野の機能である。層厚さの範囲は、一般に、約0.1μmから数mm、例えば1〜2000μm、好ましくは5〜200μm、特に5〜60μm(溶媒の蒸発後)の値を含む。
【0173】
本発明による組成物は、電着塗料またはプライマーにおける使用にも好適であり:電着塗料は、一般的に、主剤としてのヒドロキシル基を含む樹脂と、硬化剤としてのポリイソシアネート化合物(場合によって、ブロッキング剤でブロックする)とから構成される。電着ステップは、例えば、脱イオン水などで希釈しておいた電着塗料用樹脂組成物を含む電着浴の温度を、通常、15〜35℃に調節し、約5〜40質量%の固形分濃度に調節し、系のpHを4〜9の範囲に調節することにより、50〜400kVの負荷電圧の条件下で実施することができる。
【0174】
電着塗料用樹脂組成物を用いることによって形成可能な電着コーティングフィルムのフィルム厚さは特に限定されない。好ましくは、一般的に、硬化フィルム厚さを基準として10〜40μmの範囲である。UV架橋照射は、本発明による触媒中のUV光活性部分および使用する光増感剤に応じて、200〜650nmの波長範囲の短波紫外線により実施する。同時に、またはその後に、電着塗料を熱硬化ステップに付すことも可能である。そのような塗料の例は、US2005/0131193およびUS2001/0053828(どちらも、参考として本明細書で援用される)に記載されている。
【0175】
本発明の組成物はまた、「粉末コーティング組成物」または「粉末コーティング」(熱硬化性または放射線硬化性のいずれか)を製造するためにも使用される。「粉末コーティング組成物」または「粉末コーティング」とは、"Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry, 5th, Completely Revised Edition, Vol. A 18", pages 438 to 444 (1991) in Section 3.4に記載の定義を意味する。すなわち、粉末コーティングは、粉末形態で、主に金属の基体に塗布される、熱可塑性またはベーキング可能な架橋性ポリマーによって形成される。粉末を被コーティングワークピースと接触させる方法は、静電粉末スプレー、静電流動床焼結、固定床焼結、流動床焼結、回転焼結または遠心焼結など種々の塗布技術の典型である。
【0176】
粉末コーティング組成物用の好ましい有機フィルム形成バインダーは、例えば、エポキシ樹脂、ポリエステル−ヒドロキシアルキルアミド、ポリエステル−グリコールウリル、エポキシ−ポリエステル樹脂、ポリエステル−トリグリシジルイソシアヌレート、ヒドロキシ官能性ポリエステル−ブロック化ポリイソシアネート、ヒドロキシ官能性ポリエステル−ウレトジオン、アクリレート樹脂と硬化剤、またはそのような樹脂の混合物をベースとするストービング系である。
【0177】
放射線硬化性粉末コーティングは、例えば、固体樹脂および反応性二重結合を含むモノマー、例えばマレエート、ビニルエーテル、アクリレート、アクリルアミドおよびそれらの混合物をベースとする。本発明の組成物との混合物におけるUV硬化性粉末コーティングは、例えば、不飽和ポリエステル樹脂を固体アクリルアミド(例えば、メチルメチルアクリルアミドグリコレート)、アクリレート、メタクリレートまたはビニルエーテルおよびフリーラジカル光開始剤と混合することによって配合することができ、そのような配合物は、例えば、論文"Radiation Curing of Powder Coating", Conference Proceedings, Radtech Europe 1993 by M. Wittig and Th. Gohmannに記載されているとおりである。粉末コーティングは、例えば、DE4228514およびEP636669に記載されているようなバインダーも含み得る。
【0178】
粉末コーティングは、白色または着色顔料をさらに含んでもよい。たとえば、良好な隠蔽力の硬化粉末コーティングを得るために、好ましくはルチル二酸化チタンを50質量%までの濃度で用いることができる。手順は、通常、例えば金属または木材などの基体上への粉末の静電または摩擦静電スプレー、加熱による粉末の融解、および、平滑なフィルムが形成された後の、コーティングの紫外線および/または可視光での放射線硬化を含む。
【0179】
本発明の組成物はさらに、例えば印刷インクの製造に用いることができる。印刷インクは、一般に、当業者に公知であり、当該技術分野で広く用いられ、文献に記載されている。それらは、有色印刷インクおよび染料で着色された印刷インクである。
【0180】
本発明の放射線感受性組成物を、像様露光に付すこともできる。この場合、ネガ・レジストとして使用される。それらは、エレクトロニクス(ガルバノレジスト、エッチングレジストおよびソルダーレジスト)、オフセット印刷版、フレキソ印刷および凸版印刷版またはスクリーン印刷版などの印刷版の製造用、マーキングスタンプの製造用に好適であり、集積回路の製造において、ケミカルミリングのためまたはマイクロレジストとして用いることができる。可能な層支持体およびコーティングされた基体の加工条件は、対応して様々である。
【0181】
「像様」露光という用語は、あらかじめ決められたパターンを含むフォトマスク、例えばスライドを通した露光、コンピュータ制御下で、例えば、コーティングされた基体の表面上を移動して画像を形成するレーザー光線による露光、およびコンピュータ制御された電子線での照射の両方に関する。材料の像様露光後、かつ現像前に、露光部分のみを熱硬化させる短時間の熱処理を実施するのが有利であり得る。用いる温度は、一般的に50〜150℃であり、好ましくは80〜130℃であり;熱処理期間は、一般的に0.25から10分の間である。
【0182】
光硬化のための使用のさらなる分野は、金属コーティング、例えば金属パネルおよびチューブ、缶または瓶のふたの表面コーティングの分野、およびポリマーコーティング上の光硬化、例えばPVCベースの床または壁紙の分野である。
【0183】
紙コーティングの光硬化は、例えば、ラベル、レコードスリーブまたはブックカバーの無色ワニス塗装である。
【0184】
複合組成物から作製された成形品を製造するための本発明の組成物の使用も同様に興味深い。複合組成物は、自立性マトリックス材料、例えばガラス繊維織物など、あるいは、例えば植物繊維[K.−P. Mieck, T. Reussmann in Kunststoffe 85 (1995), 366−370参照]であって、光硬化配合物を含浸させたものから構成される。本発明による組成物から製造される成形品は、高い機械的安定性および耐性を有するものである。本発明の組成物は、例えば、EP007086で記載されているように、組成物の成形、含浸およびコーティングにおいても使用することができる。そのような組成物は、例えば、それらの硬化活性および耐黄変性に関して厳しい要求が課せられるファインコーティング樹脂、あるいは平面または縦方向もしくは横方向の波形光拡散パネルなどの繊維強化成形品である。
【0185】
新規組成物の放射線に対する感受性は、一般的に、約190nmからUV領域を経て赤外領域(約20,000nm、特に1200nm)におよび、特に190nm〜650nm(光開始剤部分(場合によって、本明細書中で前述の増感剤との組み合わせで)に応じて)におよび、したがって、非常に広範囲にわたる。好適な放射線は、例えば、太陽光または人工光源からの光に存在する。したがって、多数の非常に異なる種類の光源が用いられる。点光源およびアレイ(「ランプカーペット」)のどちらも好適である。例として、カーボンアークランプ、キセノンアークランプ、中圧、超高圧、高圧および低圧水銀ランプ(おそらくは金属ハロゲン化物ドープを有する(金属−ハロゲンランプ))、マイクロ波刺激金属蒸気ランプ、エキシマーランプ、超化学線蛍光管、蛍光灯、アルゴン白熱灯、電子フラッシュ、写真投光照明灯、電子線およびX線が挙げられる。ランプと本発明にしたがって露光される基体との距離は、意図される用途ならびにランプの種類および出力に応じて変わる可能性があり、例えば、2cm〜150cmであり得る。レーザー光源、例えばエキシマーレーザー、たとえば248nmでの露光のためのクリプトンFレーザーも好適である。可視領域におけるレーザーも用いることができる。
【0186】
あるいは、化学線は、発光ダイオード(LED)または有機発光ダイオード(OLED)、たとえばUV発光ダイオード(UV−LED)により提供される。前記LEDは、放射線源の即時オンオフ切り替えを可能にする。さらに、UV−LEDは、一般的に、狭い波長分布を有し、ピーク波長をカスタマイズする可能性を提供し、さらに電気エネルギーのUV放射線への効率的な変換も提供する。
【0187】
前述のように、使用する光源に応じて、多くの場合、その吸収スペクトルが放射線源の発光スペクトルとできるだけ密接に一致する、前述の増感剤を使用することが有利である。
【0188】
以下の実施例は、本発明の範囲を前記実施例のみに限定することなく、本発明をさらに詳細に説明する。部およびパーセンテージは、記載の残りの部分および請求項では、特に別段の記載がない限り、質量基準である。特定の異性体について言及することなく3個以上の炭素原子を有するアルキル基について言及される場合、それぞれの場合でn−異性体が意図される。
【0189】
調製例:
触媒前駆体化合物Aの調製
【化24】
【0190】
100mlの乾燥三口フラスコ中、17.3g(61ミリモル)のTi(VI)イソプロポキシドを45mlの乾燥2−プロパノールにアルゴン下で溶解させる。25.0g(122ミリモル)の4,4−ジメチル−1−フェニルペンタン−1,3−ジオンを30分にわたって室温でゆっくりと添加する。2時間後、反応フラスコを氷浴中で冷却し、結果として得られる白色沈殿をろ過する。フィルターケーキを2−プロパノールで洗浄し、次いで減圧下で乾燥して、26.9g(77%)の標記生成物を白色固体として得る。構造を
1H−NMRスペクトルにより確認する。融点107〜109℃。
【0191】
実施例1:
【化25】
の調製
50mlの乾燥三口フラスコ中、1.0g(1.75ミリモル)の化合物Aを20mlの乾燥トルエンにアルゴン下で溶解させる。0.42g(1.75ミリモル)の2,3−ジヒドロキシ−1,2−ジフェニルプロパン−1−オン[H. J. Hageman, Die Makromolekulare Chemie, Rapid Communications (1981), 2(8), 517−521にしたがって調製]を15分かけて室温でゆっくりと添加する。2−プロパノールの共沸除去のために、反応混合物を60℃まで減圧(80ミリバール)下で2時間加熱する。溶媒を次いで減圧下で完全に除去して、褐色がかった固体として標記化合物を得る。構造を
1H−NMRスペクトル(CDCl
3)により確認する。
【0192】
【0193】
実施例2〜7:
実施例1に記載の方法にしたがい、適切なジオールを用いて、実施例2〜7の化合物を調製する。化合物および物理データを下記第1表に記載する。
【0194】
第1表
【表2】
【0195】
【表3】
【0196】
実施例8:
【化26】
の調製
50mlの乾燥三口フラスコ中、1.0g(1.75ミリモル)の化合物Aを20mlの乾燥トルエンにアルゴン下で溶解させる。0.33g(3.50ミリモル)のフェノールを15分にわたって室温でゆっくりと添加する。2−プロパノールを共沸的に除去するために、反応混合物を減圧下(80ミリバール)で60℃まで2時間加熱する。溶媒を次いで減圧下で完全に除去して、標記化合物をオレンジ色固体として得る。構造を
1H−NMRスペクトル(CDCl
3)により確認する。融点129〜131℃。
【0197】
実施例9〜11:
実施例9〜11の化合物を、実施例8に記載の方法に従い、適切なアルコールおよびTi(IV)イソプロポキシド錯体を用いて調整する。化合物および物理データを下記第2表に記載する。
【0198】
第2表
【表4】
【0199】
適用例:
ポリアクリルポリオールおよび脂肪族ポリイソシアネートベースの2パックポリウレタンシステムのポットライフ:
ポリウレタンは、2つの基本成分:ポリオール(成分A)とポリイソシアネート(成分B)との反応生成物である。AとBとの反応をスピードアップするために、AとBの全組成物に有機金属光潜在性触媒を添加する。
【0200】
以下の実施例で、成分Aは、ポリイソシアネート以外の全成分を含む。光潜在性触媒を成分Aに注意深く溶解させた後、成分Bを添加する。
【0201】
成分A
73.1部のポリオール(Desmophen(登録商標)AVPLS2350;Bayer AG)
0.9部の流動改善剤(Byk 355;Byk−Chemie)
0.7部の消泡剤(Byk 141 ;Byk−Chemie)
0.7部の流動改善剤(Byk 333;Byk−Chemie)
24.6部のキシレン/酢酸メトキシプロピル/酢酸ブチル(1/1/1)
成分B
脂肪族ポリイソシアネート[(HDI−Trimer) Desmodur(登録商標)N3390 BA;Bayer AG]
基本試験配合物は:
7.52部の成分A
2.00部の成分B
から構成される。
【0202】
実施例A1
0.1質量%のTi触媒の金属を基本的試験配合物に添加することによって、試験試料を調製する。成分AおよびBをあわせて混合した後、配合物の可視ポットライフ(粘度の変化が見られない時間)、相当な粘度になるまでの時間、および高粘度になるまでの時間を観察する。
【0203】
試験で使用する触媒ならびに試験結果を下記第1表にまとめる。
【0204】
第1表
【表5】
【0205】
実施例A2
Ti触媒の固体基準で0.025質量%の金属および0.125質量%の増感剤(ベンゾフェノン、DAROCUR(登録商標))(固体基準)を基本的試験配合物に添加することによって、試験試料を調製する。
【0206】
混合物を76μmのスプリットコーターで長さ30cmの2枚のガラス板上に塗布する。1枚の板は、IST Metz製のUVプロセッサー(水銀ランプ、2*100W/cm)を使用して5m/分のベルト速度で照射し、第2の試料は照射しない。
【0207】
「不粘着時間」を測定することによって、混合物の反応性を定量する。したがって、試料をByK Gardner製の乾燥レコーダー上に配置する。この場合、針はコーティングされた基体上を24時間にわたり一定速度で移動する。暗所、室温で記録を実施する。「不粘着時間」は、レコーダー中の針が触れる際、表面に粘着性が残らないような方法で試料が硬化するのに必要な時間である。
【0208】
「不粘着時間」の値が低いほど、ポリオールとイソシアネートとの反応は速い。
【0209】
照射試料と非照射試料の「不粘着時間」の値間の差が大きいほど(照射試料の不粘着値は、非照射試料の値よりも低い)、触媒はより「光潜在性」である。試験で使用する触媒ならびに結果を以下の第2表にまとめる。
【0210】
第2表
【表6】
【0211】
実施例A3
以下の市販の1,3−ジケトンを使用した。
【0212】
【表7】
【0213】
Ti触媒および1,3−ジケトン添加剤を実施例A1の基本的試験配合物の成分A7.52gに添加することによって、試験試料を調製する。成分Aを2.0gの成分Bと混合した後、配合物の可視ポットライフ(粘度の変化が見られない時間)、相当な粘度になるまでの時間、および高粘度になるまでの時間を観察する。
【0214】
試験で使用する触媒および添加剤ならびに試験の結果を以下の第3表にまとめる。
【0215】
第3表
【表8】