(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0020】
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物は、脂環式ジオールに由来する構成単位を含むポリウレタン樹脂を含有する。本発明においては、ポリウレタン樹脂は、さらにアミド結合及び/又はイミド結合を有することが好ましい。係るポリウレタン樹脂は、例えば以下の2つの方法で合成することができる。
(1)脂環式ジオール若しくは脂環式ジオールに由来する構成単位を有するポリカーボネートジオールを含むジオールと、イソシアネート基を有するポリイソシアネートとを反応させて、ウレタン結合を有するポリイソシアネートを得、これを酸無水物と反応させる。
(2)脂環式ジオール若しくは脂環式ジオールに由来する構成単位を有するポリカーボネートジオール、及びカルボキシル基を有するジヒドロキシ化合物を含むジオールと、イソシアネート基を有するポリイソシアネートとを反応させる。
【0021】
(1)の合成法では、先ず、脂環式ジオール、及び、脂環式ジオールに由来する構成単位を有するポリカーボネートジオールから選ばれるジオールと、イソシアネート基を有するポリイソシアネートとを反応させて、脂環式骨格及びウレタン結合を有するポリイソシアネート(以下、「(A−1)化合物」という。)を合成する。
【0022】
脂環式ジオールは、例えば、1,2−シクロペンタンジメタノール、1,3−シクロペンタンジメタノール及びビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.0]デカン等の5員環ジオール、並びに、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、及び2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−プロパン等の6員環ジオールから選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。これらの中で、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール及び1,4−シクロヘキサンジメタノールが好ましく、1,4−シクロヘキサンジメタノールが特に好ましい。
【0023】
1,4−シクロヘキサンジメタノールは、工業生産品であり入手が容易であり、しかも、メチロール基がパラ位にあるために反応性が高くて高重合度のポリウレタン樹脂が得やすく、また、得られたポリウレタン樹脂のガラス転移温度が高い等の利点を有している。1,4−シクロヘキサンジメタノールのトランス体とシス体の比率(モル比)は、通常60/40〜100/0である。
【0024】
脂環式ジオール由来の構成単位を含むポリカーボネートジオールとしては、例えば、下記一般式(1A)で表される化合物及び下記一般式(1B)で表される化合物が挙げられる。
【0026】
式(1A)中、R
1は炭素数5〜10の脂環式炭化水素基を有する2価の有機基を示し、nは1〜30の整数を示す。同一分子中に含まれるR
1は同一でも異なっていてもよい。R
1としては、例えば、1,4−シクロヘキサンジメタノール残基(即ち1,4−シクロヘキサンジメタノールから2つのOHを除いた部分)が挙げられる。式(1A)で表される化合物は、例えば、宇部興産社製の「UC−100」として商業的に入手可能である。
【0028】
式(1B)中、R
2は炭素数5〜10の脂環式炭化水素基を有する2価の有機基、又は炭素数1〜18のアルキレン基を示す。1分子中に含まれる複数のR
2は同一でも異なっていてもよく、複数のR
2のうち少なくとも1つは、炭素数5〜10の脂環式炭化水素基を有する2価の有機基である。mは1〜30の整数を示す。
【0029】
式(1B)で表される化合物は、例えば、脂環式炭化水素基を有する2価の有機基を有するジオールに由来する構成単位と、炭素数1〜18のアルキレン基を有するジオールに由来する構成単位とをR
2として含む共重合カーボネートジオールであり得る。この場合、脂環式炭化水素基を有する2価の有機基を有するジオールに由来する構成単位に対する、アルキレン基を有するジオールに由来する構成単位のモル比は、好ましくは0.3〜3である。このモル比が係る範囲内にあることにより、特に優れた電気特性及び耐折性が得られる。同様の観点から、このモル比は、より好ましくは0.5〜2.5、更に好ましくは0.75〜2.25である。
【0030】
脂環式炭化水素基を有する2価の有機基を有するジオールが1,4−シクロヘキサンジメタノールであり、炭素数1〜18のアルキレン基を有するジオールが1,6−ヘキサンジオールであることが好ましい。言い換えると、式(1B)で表される化合物は、好ましくは、1,4−シクロヘキサンジメタノールと1,6−ヘキサンジオールとの共重合体である共重合カーボネートジオールである。1,4−シクロヘキサンジメタノールと1,6−ヘキサンジオールとのモル比が3/1である共重合カーボネートジオールは、宇部興産社製の商品名「UM−CARB90(3/1)」として、1,4−シクロヘキサンジメタノールと1,6−ヘキサンジオールとのモル比が1/1である共重合カーボネートジオールは、宇部興産社製の商品名「UM−CARB90(1/1)」として、1,4−シクロヘキサンジメタノールと1,6−ヘキサンジオールとのモル比が1/3である共重合カーボネートジオールは、宇部興産社製の商品名「UM−CARB90(1/3)」として商業的にそれぞれ入手可能である。
【0031】
脂環式ジオールが有する脂環式骨格は、例えば3員環、4員環、5員環、6員環及び7員環等の単環式骨格であってもよいし、ビシクロ環、トリシクロ環及びスピロ環等の多環式骨格であってもよい。6員環の脂環式骨格は、一般に、下記式に示されるようなイス型の立体配座を有している。2個の置換基があるとき、立体化学的には、脂環式骨格はcis−又はtrans−の構造を有している。1位と4位に置換基を有する1,4−シクロヘキサン誘導体の場合、電気特性をより向上できる観点から、それら置換基がcis−の配置であることが好ましい。1位と3位に置換基を有する1,3−シクロヘキサン誘導体の場合、それらがtrans−の配置であることが好ましい。すなわち、脂環式骨格は、立体的になるべく直線的な構造でないことが好ましい。
【0033】
例えば、1,4−シクロヘキサン誘導体(1,4−シクロヘキサンジメタノール等)の場合、低反り性の観点から、cis:transの比率は、100:0〜70:30、又は0:100〜30:70であることが好ましく、70:30〜30:70であることがさらに好ましい。
【0034】
ガラス転移温度の向上や、弾性率の向上などの特性が付与され易く、電気特性を向上できる観点から、脂環式ジオールに由来する構成単位の比率は、ポリウレタン樹脂の全体質量に対して、0.1〜30質量%が好ましい。この比率が0.1質量未満では、電気特性の向上の効果が小さくなる傾向があり、30質量%を超えると結晶性が向上して、ポリウレタン樹脂の溶剤への溶解性が低化する傾向にある。同様の観点から、この比率は3〜25質量%がより好ましく、5〜25質量%が特に好ましい。上記比率の計算において、「脂環式ジオールに由来する構成単位」は、脂環式ジオールから2つの水酸基を除いた部分を意味する。例えば、脂環式ジオールが1,4−シクロヘキサンジメタノールである場合、1,4−シクロヘキサンジメタノールから2つの水酸基を除いた部分を「脂環式ジオールに由来する構成単位」とみなし、その比率を計算する。
【0035】
ポリウレタン樹脂が脂環式骨格を有すると、分子運動の抑制に繋がり、ガラス転移温度の向上や、弾性率の向上などの特性が付与され易く、保護膜の電気特性(絶縁信頼性)を向上させることができる。
【0036】
ポリイソシアネートと反応させるジオールは、脂環式ジオール若しくは脂環式ジオール由来の構成単位を有するポリカーボネートジオールに加えて、これら以外のジオール化合物を更に含んでいてもよい。このようなジオール化合物としては、例えば、ポリブタジエンジオール、ポリイソプレンジオール、脂肪族ジオール由来の構成単位を含むポリカーボネートジオール、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリカプロラクトンジオール、シリコーンジオール、及び、カルボキシル基を有するジヒドロキシ化合物が挙げられる。低反り性及び可とう性を向上できる観点から、下記一般式(2)で表される、脂肪族ジオールに由来する構成単位を含むポリカーボネートジオールが好ましい。式(2)中、Rは炭素数1〜18のアルキレン基を示し、mは1〜30の整数を示す。
【0038】
一般式(2)で表されるポリカーボネートジオールの数平均分子量は500〜5000であることが好ましく、750〜4000であることがより好ましく、1000〜3000であることが特に好ましい。
【0039】
一般式(2)で表されるポリカーボネートジオールとしては、例えば、α,ω−ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)ジオール及びα,ω−ポリ(3−メチル−ペンタメチレンカーボネート)ジオールが挙げられる。市販されているものとしては、ダイセル化学社製のPLACCEL CD−205,205PL,205HL,210,210PL,210HL,220,220PL,220HL(商品名)、旭化成ケミカルズ社製のPCDL T−5651,T−5652,T−6001,T−6002,G−3452,PCDX−55(商品名)、宇部興産社製のUH−50,100,200,300,UHC−50−100,UHC−50−200等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0040】
3つのヒドロキシ基を有するトリオール化合物をジオールと組み合わせて用いることもできる。トリオール化合物としては、1,2,3−プロパントリオール(グリセリン)、及び1,2,4−ブタントリオール等が挙げられる。このように、3つのヒドロキシル基を有し、かつ1級ヒドロキシ基及び2級ヒドロキシ基のような反応性の異なる官能基を有する化合物を用いれば、ヒドロキシ基を有するポリウレタン樹脂を合成することができる。
【0041】
ジオールと反応させるポリイソシアネートとしては、例えば、下記一般式(4)で表されるジイソシアネート化合物が挙げられる。式(4)中、Xは2価の有機基を示す。
OCN−X−NCO (4)
【0042】
式(4)中のXで示される2価の有機基としては、例えば、炭素数1〜20のアルキレン基、並びに、未置換若しくはメチル基等の炭素数1〜5の低級アルキル基で置換されているフェニレン基及びナフチレン基等のアリーレン基が挙げられる。アルキレン基の炭素数は、より好ましくは1〜18である。Xで示される2価の有機基は、好ましくは、フェニレン基、キシリレン基、ナフチレン基、ジフェニルメタン−4,4’−ジイル基及びジフェニルスルホン−4,4’−ジイル基のような芳香環を有する基から選ばれる。また、水添ジフェニルメタン−4,4’−ジイル基も好ましい。
【0043】
式(4)で表されるジイソシアネート化合物としては、例えば、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート;3,2’−、3,3’−、4,2’−、4,3’−、5,2’−、5,3’−、6,2’−又は6,3’−ジメチルジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート;3,2’−、3,3’−、4,2’−、4,3’−、5,2’−、5,3’−、6,2’−又は6,3’−ジエチルジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート;3,2’−、3,3’−、4,2’−、4,3’−、5,2’−、5,3’−、6,2’−又は6,3’−ジメトキシジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート;ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート;ジフェニルメタン−3,3’−ジイソシアネート;ジフェニルメタン−3,4’−ジイソシアネート等のジフェニルメタンジイソシアネート化合物及びこれらの水添物;ジフェニルエーテル−4,4’−ジイソシアネート;ベンゾフェノン−4,4’−ジイソシアネート;ジフェニルスルホン−4,4’−ジイソシアネート;トリレン−2,4−ジイソシアネート;トリレン−2,6−ジイソシアネート;2,4−トリレンジイソシアネート;2,6−トリレンジイソシアネート;m−キシリレンジイソシアネート;p−キシリレンジイソシアネート;1,5−ナフタレンジイソシアネート;4,4’−[2,2ビス(4−フェノキシフェニル)プロパン]ジイソシアネートが挙げられる。これらのジイソシアネート化合物のように、式(4)中のXが芳香環を有する基である芳香族ジイソシアネート化合物を使用することが好ましい。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0044】
式(4)で表されるジイソシアネート化合物としては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、水添m−キシリレンジイソシアネート、及びリジンジイソシアネート等の脂肪族又は脂環式イソシアネートを使用することができる。ポリイソシアネートとして、式(4)で表されるジイソシアネート化合物と共に、三官能以上のポリイソシアネートを用いてもよい。
【0045】
式(4)で表されるジイソシアネート化合物は、経日変化を避けるためにイソシアネート基がブロック剤で安定化されていてもよい。ブロック剤としては、ヒドロキシアクリレート、メタノールを代表とするアルコール、フェノール、オキシムが挙げられるが、特に制限はない。
【0046】
ジオールとポリイソシアネートとの反応は、有機溶媒、好ましくは非含窒素系極性溶媒の存在下に、これらを加熱縮合させることにより行うことができる。
【0047】
上記非含窒素系極性溶媒は、例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル及びトリエチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル系溶媒;ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ジメチルスルホン及びスルホラン等の含硫黄系溶媒;γ−ブチロラクトン及び酢酸セロソルブ等のエステル系溶媒;シクロヘキサノン及びメチルエチルケトン等のケトン系溶媒;並びに、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素系溶媒から選ばれる。これらは1種類を単独で又は2種類以上組み合わせて使用することができる。
【0048】
上記溶媒の中でも、生成する樹脂が溶解可能な溶媒を選択して使用するのが好ましい。また、合成後、そのまま熱硬化性樹脂組成物の溶媒として好適なものを使用することが好ましい。上記溶媒の中でも、高揮発性であり、かつ効率良く均一系で反応を行うためには、シクロヘキサノン及びメチルエチルケトン等のケトン系溶媒が特に好ましい。
【0049】
溶媒の使用量は、(A−1)化合物を合成する原材料の総量に対して、0.8〜5.0倍(質量比)であることが好ましい。この使用量が0.8倍未満であると、合成時の粘度が高くなりすぎて、攪拌不能により合成が困難となる傾向があり、5.0倍を超えると、反応速度が低下する傾向がある。
【0050】
反応温度は、70〜210℃であることが好ましく、75〜190℃であることがより好ましく、80〜180℃であることが特に好ましい。この温度が70℃未満では反応時間が長くなり過ぎる傾向があり、210℃を超えると反応中ゲル化が起こり易くなる傾向がある。反応時間は、反応容器の容量、採用される反応条件により適宜選択することができる。
【0051】
必要に応じて、三級アミン類、アルカリ金属、アルカリ土類金属、スズ、亜鉛、チタニウム、コバルト等の金属又は半金属化合物等の触媒存在下に反応を行ってもよい。
【0052】
ジオールとポリイソシアネートとを反応させる際の配合割合は、生成する(A−1)化合物の数平均分子量、及び、生成する(A−1)化合物の末端を水酸基にするかイソシアネート基にするかに応じて、適宜調整される。
【0053】
末端に水酸基を有する(A−1)化合物を合成する場合、水酸基数とイソシアネート基数との比率(水酸基数/イソシアネート基数)を、1.01以上に調整することが好ましく、2.0以下に調整することが好ましい。
【0054】
末端にイソシアネート基を有する(A−1)化合物を合成する場合、イソシアネート基数と水酸基数との比率(イソシアネート基数/水酸基数)が、1.01以上になるように調整することが好ましく2.0以下に調整することが好ましい。
【0055】
(A−1)化合物の数平均分子量は、500〜30000であることが好ましく、1000〜25000であることがより好ましく、1500〜20000であることが特に好ましい。
【0056】
(A−1)化合物は、それ自体、脂環基及びウレタン結合を有するポリウレタン樹脂として用いられ得る。より好ましくは、末端に水酸基又はイソシアネート基を有する(A−1)化合物と、ジカルボン酸、酸無水物基を有する3価のポリカルボン酸又はその誘導体、及び酸無水物基を有する4価のポリカルボン酸から選ばれるカルボン酸化合物とを反応させて、脂環基と、アミド結合及び/又はイミド結合とを有するポリウレタン樹脂を生成させる。
【0057】
耐薬品性及び電気特性を向上できる観点からは、末端にイソシアネート基を有する(A−1)化合物を用いることが好ましい。これを上記カルボン酸化合物と反応させることにより、ポリマー主鎖中にアミド結合及び/又はイミド結合を有するポリウレタン樹脂を容易に合成することができる。
【0058】
上記ジカルボン酸は、特に限定されないが、例えば、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジオン酸、ドデカンジオン酸、トリデカンジオン酸、テトラデカンジオン酸、ペンタデカンジオン酸、ヘキサデカンジオン酸、オクタデカンジオン酸、及びエイコサンジオン酸等の脂肪族ジカルボン酸;1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ジシクロヘキサンメタン−4,4’−ジカルボン酸、及びノルボルナンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;イソフタル酸、テレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、及び2,7−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸から選ばれる。
【0059】
酸無水物基を有する3価のポリカルボン酸及びその誘導体としては、特に限定されないが、例えば、下記一般式(5)又は(6)で表される化合物を挙げることができる。
【0062】
式(5)及び(6)中、R’は、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基又はフェニル基を示し、Y
1は、−CH
2−、−CO−、−SO
2−、又は−O−を示す。
【0063】
酸無水物基を有する3価のポリカルボン酸としては、コスト面等から、無水トリメリット酸が特に好ましい。
【0064】
酸無水物基を有する4価のポリカルボン酸についても特に限定されないが、例えば、下記一般式(7)で表されるテトラカルボン酸二無水物を挙げることができる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0066】
式(7)中、Y
2は、下記式(8)で示される複数の基から選ばれる一種の4価の基を示す。
【0068】
(A−1)化合物と反応させるカルボン酸化合物は、上記ジカルボン酸、酸無水物基を有する3価のポリカルボン酸又はその誘導体、及び酸無水物基を有する4価のポリカルボン酸から選ばれる少なくとも1種の化合物である。
【0069】
(A−1)化合物を、これ以外のイソシアネート化合物(以下、「(A−2)化合物」という。)とともに、上記カルボン酸化合物と反応させてポリウレタン樹脂を得てもよい。(A−2)化合物としては、(A−1)化合物以外のイソシアネート化合物であれば、特に限定されず、例えば、上記式(4)で表されるジイソシアネート化合物、3価以上のポリイソシアネートが挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0070】
本実施形態においては、上記イソシアネート化合物と共にアミン化合物を併用することもできる。アミン化合物としては、上記イソシアネート化合物におけるイソシアネート基をアミノ基に転換した化合物が挙げられる。イソシアネート基のアミノ基への転換は、公知の方法により行うことができる。アミン化合物の数平均分子量の好ましい範囲は、上記の(A−1)化合物と同様である。
【0071】
(A−2)化合物の総量の50〜100質量%が芳香族ポリイソシアネートであることが好ましい。この芳香族ポリイソシアネートは、溶解性、機械特性及びコスト面等のバランスを考慮すれば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートであることが特に好ましい。
【0072】
(A−1)化合物と(A−2)化合物とを併用する場合、(A−1)化合物/(A−2)化合物の当量比は、0.1/0.9〜0.9/0.1であることが好ましく、0.2/0.8〜0.8/0.2であることがより好ましく、0.3/0.7〜0.7/0.3であることが特に好ましい。当量比がこの範囲にあると、被着体とのより良好な密着性を得ることができる。
【0073】
カルボン酸化合物とイソシアネート化合物との反応の際、イソシアネート化合物中のイソシアネート基の総数に対する、カルボキシル基と酸無水物基の総数の比(カルボキシル基と酸無水物基の総数/イソシアネート基の総数)は、0.6〜1.4であることが好ましく、0.7〜1.3であることがより好ましく、0.8〜1.2であることが特に好ましい。この比が0.6未満又は1.4を超えると、アミド結合及び/又はイミド結合を含むポリウレタン樹脂の数平均分子量を高くすることが困難となる傾向がある。
【0074】
アミド結合及び/又はイミド結合を有するポリウレタン樹脂の数平均分子量は、5000〜65000であることが好ましく、6000〜60000であることがより好ましく、7000〜50000又は7000〜25000であることが特に好ましい。数平均分子量が5000未満であると、耐候性、又は耐薬品性が低下する傾向があり、数平均分子量が65000を超えると、非含窒素系極性溶媒に溶解し難くなり、合成中に不溶化しやすい傾向がある。
【0075】
本明細書において、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて換算した値を意味する。数平均分子量、重量平均分子量及び分散度は、以下のように定義される。
(a)数平均分子量(Mn)
Mn=Σ(N
iM
i)/ΣNi=ΣX
iM
i
(X
i=分子量M
iの分子のモル分率=N
i/ΣN
i)
(b)重量平均分子量(Mw)
Mw=Σ(N
iM
i2)/ΣN
iM
i=ΣW
iM
i
(W
i=分子量M
iの分子の重量分率=N
iM
i/ΣN
iM
i)
(c)分子量分布(分散度)
分散度=Mw/Mn
【0076】
ポリウレタン樹脂の酸価は、好ましくは10〜35mgKOH/gである。ポリウレタン樹脂の酸価が35mgKOH/gを超えると、反りが大きくなる傾向があり、10mgKOH/g未満では、硬化が不十分であるために耐候性又は屈曲性等が低下する傾向がある。低反り性、熱硬化性及び電気特性を向上できる観点から、ポリウレタン樹脂の酸価は、より好ましくは13〜33mgKOH/g、更に好ましくは15〜33mgKOH/gである。
【0077】
ポリウレタン樹脂の酸価は、以下の方法により測定することができる。まず、ポリウレタン樹脂溶液約1gを精秤する。その後、このポリウレタン樹脂溶液に対して、イソプロピルアルコール/トルエン=1/2(質量比)の混合溶媒を30g添加し、均一に溶解する。得られた溶液に指示薬であるフェノールフタレインを適量添加し、0.1NのKOH溶液(アルコール性)を用いて滴定を行う。そして、滴定結果より以下の式(I):
A=10×Vf×56.1/(Wp×I)・・・・・(I)
により酸価を算出する。式(I)中、Aは酸価(mgKOH/g)を示し、Vfは0.1NのKOH溶液の滴定量(mL)を示し、Wpはポリウレタン樹脂溶液の質量(g)を示し、Iはポリウレタン樹脂溶液の不揮発分の割合(質量%)を示す。
【0078】
次に(2)のポリウレタン樹脂の合成法について説明する。(2)の合成法では、脂環式ジオール若しくは脂環式ジオールに由来する構成単位を有するポリカーボネートジオール、及びカルボキシル基を有するジヒドロキシ化合物を含むジオールと、イソシアネート基を有するポリイソシアネートとを反応させてポリウレタン樹脂が得られる。
【0079】
脂環式ジオール若しくは脂環式ジオール由来の構成単位を有するポリカーボネートジオール、及びイソシアネート基を有する化合物は、(1)の合成法で説明したものと同様のものを用いることができる。脂環式ジオール若しくは脂環式ジオール由来の構成単位を有するポリカーボネートジオール以外のジオール化合物を用いることもできる。このようなジオール化合物も(1)の合成法で説明したものを用いることができる。
【0080】
カルボキシル基を有するジヒドロキシ化合物としては、例えば、下記一般式(3)で表される化合物が挙げられる。式(3)中、R
3は、炭素数1〜5のアルキル基を示す。
【0082】
式(3)で表される化合物として、例えば、ジメチロールプロピオン酸、及びジメチロールブタン酸が挙げられる。
【0083】
脂環式ジオール若しくは脂環式ジオールに由来する構成単位を有するポリカーボネートジオール、及びカルボキシル基を有するジヒドロキシ化合物を含むジオールと、イソシアネート基を有するポリイソシアネートとの反応は、(1)の合成法で説明した(A−1)化合物と同様の条件で行うことができる。これにより、(2)の合成法によるポリウレタン樹脂を得ることができる。
【0084】
このようにして得られるポリウレタン樹脂の数平均分子量は、5000〜65000であることが好ましく、6000〜60000であることがより好ましく、7000〜50000又は7000〜25000であることが特に好ましい。数平均分子量が5000未満であると、耐候性、又は耐薬品性が低下する傾向があり、数平均分子量が65000を超えると、非含窒素系極性溶媒に溶解し難くなり、合成中に不溶化しやすい傾向がある。
【0085】
式(3)で表される化合物を用いることにより、好ましくは10〜35mgKOH/g、より好ましくは13〜33mgKOH/g、更に好ましくは15〜33mgKOH/gの酸価を有するポリウレタン樹脂を容易に得ることができる。式(3)で表される化合物の含有量は、上記酸価になるように調整することが好ましい。
【0086】
ポリウレタン樹脂は、側鎖にカルボキシル基を有さず、末端にカルボキシル基又は酸無水物基を有する、(1)の合成法により得られるポリウレタン樹脂が好ましい。分子の末端にカルボキシル基又は酸無水物基を有し、且つアミド結合及び/又はイミド結合を導入することで、電気特性をより一層向上することができる。屈曲性もより一層向上できる観点から、分子の末端にカルボキシル基又は酸無水物基を有し、且つアミド結合及びイミド結合を有するポリウレタン樹脂が特に好ましい。側鎖にカルボキシル基が多く存在すると、硬化剤と反応させた際、多くのエステル結合を有することにより、耐候性が低下し、更には、分子鎖中の橋架けが多くなるために、水分子が浸入し易くなり、電気特性が低下する傾向がある。
【0087】
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物は、好ましくは、ポリウレタン樹脂を硬化させる硬化剤を更に含有する。硬化剤としては、エポキシ樹脂又はポリイソシアネート化合物を用いることができる。
【0088】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ株式会社製の商品名「エピコート828」等)、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(東都化成株式会社製の商品名「YDF−170」等)、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ株式会社製の商品名「エピコート152、154」;日本化薬株式会社製の商品名「EPPN−201」;ダウケミカル社製の商品名「DEN−438」等)、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製の商品名「EOCN−125S,103S,104S」等)、多官能エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ株式会社製の商品名「Epon1031S」;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製の商品名「アラルダイト0163」;ナガセ化成株式会社製の商品名「デナコールEX−611,EX−614,EX−614B,EX−622,EX−512,EX−521,EX−421,EX−411,EX−321」等)、アミン型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ株式会社製の商品名「エピコート604」;東都化成株式会社製の商品名「YH−434」、「YH−434L」;三菱ガス化学株式会社製の商品名「TETRAD−X」、「TERRAD−C」;日本化薬株式会社製の商品名「GAN」;住友化学株式会社製の商品名「ELM−120」等)、複素環含有エポキシ樹脂(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製の商品名「アラルダイトPT810」等)、脂環式エポキシ樹脂(UCC社製の商品名「ERL4234,4299,4221,4206」等)、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂(大日本インキ化学工業社製の商品名「HP−7200」、「HP−7200H」)等が挙げられる。これらは、単独で又は2種類以上組合せて使用することができる。これらのエポキシ樹脂のうち、3個以上のエポキシ基を有するアミン型エポキシ樹脂は、耐溶剤性、耐薬品性、耐湿性の向上の点で特に好ましい。3個以上のエポキシ基を有する好ましいエポキシ樹脂は、例えば、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンである。
【0089】
ポリイソシアネート化合物としては、例えば、上記一般式(4)に示したジイソシアネート化合物、3官能イソシアネート、その他4官能以上のイソシアネートが挙げられる。ポリウレタン樹脂と硬化剤とを混合した際の経日変化のことを考慮すると、イソシアネート基がブロック剤で安定化されたポリイソシアネート化合物を使用することが好ましい。ブロック剤としては、アルコール、フェノール、オキシム等が挙げられるが、特に制限はない。このブロックイソシアネートとしては、例えば、旭化成ケミカルズ社製の商品名「DURANATE17B−60PX、TPA−B80E、MF−B60X、MF−K60X、E402−B80T」、昭和電工社製の商品名「カレンズMOI−BM、MOI−BP」、住友バイエルウレタン社製の商品名「BL−3175、BL−4165、デスモカップ11、デスモカップ−12」などが挙げられる。ブロックイソシアネートは、ポリウレタン樹脂の熱硬化温度に合わせて選ぶことが好ましく、低温硬化の際は、BL−3175が特に好ましい。
【0090】
硬化剤としては、エポキシ樹脂及びポリイソシアネート化合物を単独又は併用することが可能であり、ポリウレタン樹脂の反応性基に合わせて選ぶことができる。例えば、ポリウレタン樹脂がヒドロキシ基を有している場合、ブロックイソシアネートを用いることが好ましく、ポリウレタン樹脂がカルボキシル基又はアミノ基を有している場合、エポキシ樹脂を用いることが好ましい。硬化剤は、ポリウレタン樹脂の反応性基と反応するものであれば、エポキシ樹脂及びポリイソシアネート化合物に限定されない。
【0091】
硬化剤の含有率は、脂環式ジオールに由来する構成単位を含み、酸価が10〜35mgKOH/gであるポリウレタン樹脂と硬化剤との合計質量に対して1〜30質量%であることが好ましく、2〜20質量%であることがより好ましく、2.5〜15質量%であることが特に好ましい。これにより、保護膜としての硬化膜が好適な電気特性、反り性及び耐候性を有することができる
【0092】
熱硬化性樹脂組成物には、チキソトロピー係数の向上、成膜性、硬化膜における耐候性、印刷性等の理由から、無機充填剤(無機フィラー)、及び/又は、有機充填剤(有機フィラー)を含有させることができる。
【0093】
無機充填剤としては、例えば、シリカ(SiO
2)、アルミナ(Al
2O
3)、チタニア(TiO
2)、酸化タンタル(Ta
2O
5)、ジルコニア(ZrO
2)、窒化ケイ素(Si
3N
4)、チタン酸バリウム(BaO・TiO
2)、炭酸バリウム(BaCO
3)、チタン酸鉛(PbO・TiO
2)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ジルコン酸ランタン鉛(PLZT)、酸化ガリウム(Ga
2O
3)、スピネル(MgO・Al
2O
3)、ムライト(3Al
2O
3・2SiO
2)、コーディエライト(2MgO・2Al
2O
3/5SiO
2)、タルク(3MgO・4SiO
2・H
2O)、チタン酸アルミニウム(TiO
2−Al
2O
3)、イットリア含有ジルコニア(Y
2O
3−ZrO
2)、ケイ酸バリウム(BaO・8SiO
2)、窒化ホウ素(BN)、炭酸カルシウム(CaCO
3)、ハイドロタルサイト、硫酸カルシウム(CaSO
4)、酸化亜鉛(ZnO)、チタン酸マグネシウム(MgO・TiO
2)、硫酸バリウム(BaSO
4)、有機ベントナイト、カーボン(C)が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの中でも、特に、スクリーン印刷性、電気特性の観点からは、シリカ(SiO
2)が好ましい。難燃性を向上できる観点からは、ハイドロタルサイトが好ましい。
【0094】
ハイドロタルサイト(hydrotalcite)は、下記一般式(18)で表される複水酸化物である。式(18)中、M
1は、Mg
2+、Fe
2+、Zn
2+、Ca
2+、Li
2+、Ni
2+、Co
2+又はCu
2+を示し、M
2は、Al
3+、Fe
3+又はMn
3+を示し、xは2〜5の整数を示し、nは正の整数を示す。
M
18−xM
2x(OH)
16CO
3・nH
2O (18)
【0095】
これらの中でも、下記の化学組成式で表される、マグネシウム及びアルミニウムを含む化合物が特に好ましい。
Mg
6Al
2(OH)
16CO
3・4H
2O
【0096】
このようなハイドロタルサイトは、HT−P(堺化学株式会社製、商品名)として商業的に入手可能である。
【0097】
有機充填剤としては、アミド結合、イミド結合、エステル結合又はエーテル結合を有する樹脂(耐熱性樹脂)の微粒子が好ましい。このような樹脂としては、耐熱性と機械特性の観点から、好ましくはポリイミド樹脂若しくはその前駆体、ポリアミドイミド樹脂若しくはその前駆体、又はポリアミド樹脂の微粒子が用いられる。
【0098】
有機充填剤としての樹脂は、以下のようにして製造することができる。ポリイミド樹脂は、(i)芳香族テトラカルボン酸二無水物と、(ii)芳香族ジアミン化合物とを反応させて得ることができる。
【0099】
(i)芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、無水ピロメリット酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビスフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ベンゼン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,6−ジクロルナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,7−ジクロルナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−テロラクロルナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン−1,8,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジメチルシラン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メチルフェニルシラン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジフェニルシラン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェニルジメチルシリル)ベンゼン二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,3,3−テトラメチルジシクロヘキサン二無水物、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス{4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル}ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス{4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル}プロパン二無水物、4,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、1,4−ビス(2−ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼンビス(トリメリテート無水物)、1,3−ビス(2−ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼンビス(トリメリテート無水物)、1,2−(エチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,3−(トリメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,4−(テトラメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,5−(ペンタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,6−(ヘキサメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,7−(ヘプタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,8−(オクタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,9−(ノナメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,10−(デカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,12−(ドデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,16−(ヘキサデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,18−(オクタデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)等が挙げられる。これらは2種以上を混合して用いてもよい。
【0100】
上記(i)芳香族テトラカルボン酸二無水物に加えて、目的に応じて芳香族テトラカルボン酸二無水物以外のテトラカルボン酸二無水物を、芳香族テトラカルボン酸二無水物の50モル%を超えない範囲で用いることができる。このようなテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、エチレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、ピラジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、チオフェン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、デカヒドロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロナフタレン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ビス{エキソービシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物}スルホン、ビシクロ−(2,2,2)−オクト(7)−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物、テトラヒドロフラン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0101】
(ii)芳香族ジアミン化合物としては、例えば、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、4,4’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルケトン、3,4’−ジアミノジフェニルケトン、4,4’−ジアミノジフェニルケトン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,4’−ジアミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3,4’−ジアミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−アミノフェニル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、3,3’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスアニリン、3,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスアニリン、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスアニリン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン等が挙げられる。これらは2種以上を混合して用いてもよい。
【0102】
上記(ii)芳香族ジアミン化合物に加えて、目的に応じて芳香族ジアミン化合物以外のジアミン化合物を、芳香族ジアミン化合物の50モル%を超えない範囲で用いることができる。このようなジアミン化合物としては、例えば、1,2−ジアミノエタン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルポリシロキサン等が挙げられる。
【0103】
上記(i)芳香族テトラカルボン酸二無水物と、上記(ii)芳香族ジアミン化合物とは、ほぼ等モルで反応させることが膜特性としての点で好ましい。(i)芳香族テトラカルボン酸二無水物と、(ii)芳香族ジアミン化合物との反応は、有機溶媒中で行うことができる。有機溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ2(1H)−ピリミジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等の含窒素化合物;スルホラン、ジメチルスルホキシド等の硫黄化合物;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、γ−ヘプタラクトン、α−アセチル−γ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトン等のラクトン類;ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、ジエチレングリコ−ルジメチル(又はジエチル、ジプロピル、ジブチル)エーテル、トリエチレングリコール(又はジエチル、ジプロピル、ジブチル)エーテル、テトラエチレングリコールジメチル(又はジエチル、ジプロピル、ジブチル)エーテル等のエーテル類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン等のケトン類;ブタノール、オクチルアルコール、エチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコールモノメチル(又はモノエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(又はモノエチル)エーテル、テトラエチレングリコールモノメチル(又はモノエチル)エーテル等のアルコール類;フェノール、クレゾール、キシレノール等のフェノール類;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート等のエステル類;トルエン、キシレン、ジエチルベンゼン、シクロヘキサン等の炭化水素類;トリクロロエタン、テトタクロロエタン、モノクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類等が用いられる。これらの有機溶媒は、単独又は混合して用いられる。溶解性、低吸湿性、低温硬化性、環境安全性等を考慮するとラクトン類、エーテル類、ケトン類等を用いることが好ましい。
【0104】
反応温度は80℃以下、好ましくは0〜50℃である。反応が進行するにつれ反応液は徐々に増粘する。この場合、ポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミド酸が生成する。このポリアミド酸を部分的にイミド化してもよく、これもポリイミド樹脂の前駆体に含まれる。
【0105】
ポリイミド樹脂は、上記反応物(ポリアミド酸)を脱水閉環して得られる。脱水閉環は、120℃〜250℃で熱処理する方法(熱イミド化)や脱水剤を用いて行う方法(化学イミド化)で行うことができる。120℃〜250℃で熱処理する方法の場合、脱水反応で生じる水を系外に除去しながら行うことが好ましい。この際、ベンゼン、トルエン、キシレン等を用いて水を共沸除去してもよい。
【0106】
脱水剤を用いて脱水閉環を行う方法は、脱水剤として無水酢酸、無水プロピオン酸、無水安息香酸等の酸無水物、ジシクロヘキシルカルボジイミド等のカルボジイミド化合物等を用いるのが好ましい。このとき必要に応じて、ピリジン、イソキノリン、トリメチルアミン、アミノピリジンイミダゾール等の脱水触媒を用いてもよい。脱水剤又は脱水触媒は、芳香族テトラカルボン酸二無水物1モルに対し、それぞれ1〜8モルの範囲で用いることが好ましい。
【0107】
ポリアミドイミド樹脂又はその前駆体は、上記のポリイミド樹脂又はその前駆体の製造において、芳香族テトラカルボン酸二無水物の代わりに、トリメリット酸無水物又はトリメリット酸無水物誘導体(トリメリット酸無水物のクロライド等)等の三価のトリカルボン酸無水物又はその誘導体を使用して製造することができる。また、芳香族ジアミン化合物及びその他のジアミン化合物の代わりに、アミノ基以外の残基がそのジアミン化合物に対応するジイソシアネート化合物を使用して製造することもできる。使用できるジイソシアネート化合物としては、上記の芳香族ジアミン化合物又はその他のジアミン化合物とホスゲン又は塩化チオニルを反応させて得られるものがある。
【0108】
ポリアミド樹脂は、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸等の芳香族ジカルボン酸、これらのジクロライド、酸無水物等の誘導体と、上記の芳香族ジアミン化合物又はこれと他のジアミン化合物とを反応させることにより製造することができる。
【0109】
エステル結合を有する耐熱性樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂が挙げられる。ポリエステル樹脂としては、上記のテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸等の芳香族ジカルボン酸、これらのジクロライド、酸無水物等の誘導体と、1,4−ジヒドロキシベンゼン、ビスフェノールF、ビスフェノールA、4,4’−ジヒドロキシビフェニル等の芳香族ジオール化合物とを反応させて得られるものが挙げられる。
【0110】
ポリアミドイミド樹脂としては、芳香族テトラカルボン酸二無水物と、イソフタル酸ジヒドラジドを必須成分として含有する芳香族ジアミン化合物とを反応させて得られるポリアミドイミド樹脂が好ましく用いられる。芳香族テトラカルボン酸二無水物及び芳香族ジアミン化合物としては、前述したものが用いられる。イソフタル酸ジヒドラジドの芳香族ジアミン化合物中のモル比は1〜100モル%とすることが好ましい。1モル%未満では、変性ポリアミドイミド樹脂に対する耐溶解性が低下する傾向にあり、イソフタル酸ジヒドラジドの含有量が多いと、本発明の熱硬化性樹脂組成物によって形成される層の耐湿性が低下する傾向にあるので10〜80モル%がより好ましく、20〜70モル%が特に好ましく用いられる。このポリアミドイミド樹脂は芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミン化合物との配合比、使用有機溶媒、合成法等を上述したポリイミド樹脂の合成と同様にして得ることができる。
【0111】
トリメリット酸無水物、及び必要に応じてジカルボン酸と、ポリイソシアネートとを反応させて得られるポリアミドイミド樹脂は、加熱することにより有機溶剤に不溶性になりやすく、このポリアミドイミド樹脂からなる有機微粒子を使用することもできる。このポリアミドイミド樹脂の製造方法については、前記したポリアミドイミド樹脂の製造方法と同様にして製造することができる。
【0112】
微粒子化の方法としては、例えば、非水分散重合法(特公昭60−48531号公報、特開昭59−230018号公報)、沈殿重合法(特開昭59−108030号公報、特開昭60−221425号公報)、樹脂溶液から改修した粉末を機械粉砕する方法、樹脂溶液を貧触媒に加えながら高せん断下に微粒子化する方法、樹脂溶液の噴霧溶液を乾燥して微粒子を得る方法、洗剤又は樹脂溶液中で溶剤に対して溶解性の温度依存性を持つ樹脂を析出微粒子化する方法等が挙げられる。
【0113】
熱硬化性樹脂組成物に配合する無機微粒子及び/又は有機微粒子は、平均粒子径50μm以下、最大粒子径100μm以下の粒子径を有するものが好ましく用いられる。平均粒子径が50μmを超えると、後述するチキソトロピー係数が1.1以上のペーストが得られにくくなり、最大粒子径が100μmを超えると、塗膜の外観、密着性が不十分となる傾向がある。平均粒子径は、より好ましくは、30μm以下、さらに好ましくは10μm以下、特に好ましくは3μm以下であり、最大粒子径はより好ましくは80μm以下、さらに好ましくは60μm以下、特に好ましくは40μm以下である。粒子径の下限値は、小さい程好ましい。
【0114】
熱硬化性樹脂組成物は、ポリウレタン樹脂を溶解する有機溶剤を含有してもよい。この有機溶剤としては、非含窒素系極性溶媒が挙げられる。非含窒素系極性溶媒としては、例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテルなどのエーテル系溶媒;例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ジメチルスルホン、スルホランなどの含硫黄系溶媒;例えば、γ−ブチロラクトン、酢酸セロソルブ、酢酸ブチルカルビトール、酢酸2−ブトキシエチルなどのエステル系溶媒;例えば、シクロヘキサノン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒;例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上組み合わせて使用することができる。ポリウレタン樹脂はその組成によって溶解性が異なるので、樹脂を溶解可能な溶剤を選択して使用する。
【0115】
上記の有機溶剤の中でも、特に消泡性、レベリング性などの印刷性とレジストや溶剤の配線間の流れ出し(ブリード)を抑制する観点から、γ−ブチロラクトンが好ましい。
【0116】
樹脂溶液に無機及び/又は有機の微粒子を分散させる方法としては、通常、塗料分野で行われているロール練り、ミキサー混合等が適用され、十分な分散が行われる方法であればよい。
【0117】
熱硬化性樹脂組成物には、塗工時の作業性及び被膜形成前後の膜特性を向上させるため、消泡剤、レベリング剤等の界面活性剤類、染料又は顔料等の着色剤類、熱安定剤、酸化防止剤、難燃剤、滑剤を添加することもできる。
【0118】
熱硬化性樹脂組成物は、回転型粘度計により測定される25℃における粘度が、20Pa・s〜80Pa・sであることが好ましく、30Pa・s〜50Pa・sであることがより好ましい。係る粘度が、20Pa・s未満であると、印刷後の樹脂組成物の流れ出しが大きくなるとともに膜厚が薄膜化する傾向があり、80Pa・sを超えると、樹脂組成物の基材への転写性が低下するとともに印刷膜中のボイド及びピンホールが増加する傾向がある。
【0119】
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物は、フレキシブル配線板の配線パターンに熱硬化性樹脂組成物を印刷する工程と、印刷された熱硬化性樹脂組成物を熱硬化させて保護膜としての硬化膜を形成させる工程とを含む方法により、フレキシブル配線板の配線パターンの保護膜を形成するために好適に使用できる。本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物を用いて形成された保護膜を有するフレキシブル配線板は、電気特性に優れ、なおかつ基材の反りが十分小さく、基材の屈曲性に優れている。そのため、フレキシブル配線板が信頼性に優れたものになり得る。本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物は、特に、配線パターンの一部又は全てが、予めメッキ処理により形成されたメッキ層を有するフレキシブル配線板の表面の保護膜形成に適している。メッキ処理としては、例えば、すず、ニッケル又は金によるメッキが挙げられる。
【0120】
熱硬化の条件は、メッキ層の銅配線への拡散を防ぎ、かつ保護膜として好適な反り性、柔軟性を得る観点から、好ましくは、80℃〜130℃、特に好ましくは90℃〜120℃であるが、この範囲には限定されず、例えば、50〜200℃、中でも、50〜140℃の範囲で硬化させることもできる。加熱時間は、メッキ層の銅配線への拡散を防ぎ、かつ保護膜として好適な反り性、柔軟性を得る観点から、60〜150分、好ましくは、80〜120分であるが、この範囲には限定されず、1〜1000分、例えば、5〜300分、中でも、10〜150分の範囲で硬化させることもできる。
【0121】
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物が120℃で60分間の加熱により膜厚30μmの硬化膜を形成したときに、該硬化膜の25℃での引張り弾性率が、100MPa〜4000MPaであることが好ましい。これにより、保護膜としての硬化膜が好適な電気特性及び屈曲性を有することができる。同様の観点から、上記引張り弾性率は、200MPa〜3500MPa、400MPa〜3000MPa、又は600MPa〜2500MPaであることがより好ましい。また、保護膜として好適な屈曲性と低反り性を得ることができる観点から、上記硬化膜の25℃での伸び率は、好ましくは10%〜1000%、より好ましくは100%〜500%、更に好ましくは200%〜400%である。引張り弾性率は大きいことが好ましいが、4000MPaを超えると、保護膜にクラック生じる可能性がある。また、伸び率も大きいことが好ましいが、1000%を超えると、電気特性を高いレベルに維持することが困難となる可能性がある。更に、保護膜として好適な電気特性を得ることができる観点から、上記硬化膜の25℃での吸水率は、好ましくは0以上1.5%未満、より好ましくは0以上1.0%未満である。
【0122】
図1は、フレキシブル配線板の一実施形態を示す平面図である。
図1に示すフレキシブル配線板100は、基材3と、基材3上に設けられた配線パターン5と、配線パターン5を覆う保護膜7とを備える。保護膜7は、上述の熱硬化性樹脂組成物が硬化して形成される硬化膜である。
【0123】
基材3としては、ポリイミドフィルム、エポキシ接着剤層付きポリイミドフィルム等が挙げられる。基材3の厚みは、好ましくは10〜200μmである。
【0124】
配線パターン5は、メッキ処理により形成されたメッキ層をその表面に有していることが好ましい。メッキ処理としては、Snメッキ、ニッケルメッキ、金メッキ等が挙げられる。配線パターン5の配線幅は、好ましくは5〜100μmである。配線パターン5の配線間隔は、好ましくは5〜100μmである。
【0125】
フレキシブル配線板100は、例えば、基材3上に配線パターン3を設ける工程と、配線パターン3をSnメッキ処理する工程と、Snメッキ処理された配線パターン3の少なくとも一部を覆うように熱硬化性樹脂組成物を印刷する工程と、印刷された前記熱硬化性樹脂組成物を硬化して保護膜7を形成する工程と、を備える方法により製造することができる。熱硬化性樹脂組成物の印刷は、好ましくはスクリーン印刷により行われる。
【0126】
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物は、基材の厚みが200μmを超えるリジッド基板の保護膜にも適用することができる。
【0127】
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物は、スクリーン印刷、ディスペンサ、スピンコートなどの塗布方法により、各種電気製品や電子部品の被膜形成材料として好適に用いられる。特に、スクリーン印刷による塗布が好ましい。
【0128】
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物は、例えば、半導体素子、プリント基板分野などの電子部品用オーバーコート材、液状封止材、層間絶縁膜、表面保護膜、ソルダレジスト層、接着層などを形成するための材料として好適に用いられる。また、エナメル線用ワニス、電気絶縁用含浸ワニス、注型ワニス、マイカ、ガラスクロス等の基材と組み合わせたシート用ワニス、MCL積層板用ワニス、摩擦材料用ワニスなどにも使用できる。また、本発明の熱硬化性樹脂組成物によれば、基材に対する密着性及び印刷作業性に優れることから、樹脂被膜が回路基板等から剥離することを防止することができ、信頼性の高い電子部品を得ることができる。
【実施例】
【0129】
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0130】
1.ポリウレタン樹脂の合成
合成例1
上述の化学式(1B)で表され、R
2として、1,4−シクロヘキサンジメタノールに由来する構成単位と1,6−ヘキササンジオールに由来する構成単位とを3:1のモル比で含み、nが平均4〜6の範囲であるポリカーボネートジオール(UM―CARB90(3/1)、宇部興産株式会社製、平均分子量:約900)を準備した。攪拌装置、温度計、コンデンサーを備えた反応容器に、上記ポリカーボネートジオール156.98g(0.175mol)と、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートであるデスモジュール−W(住化バイエルウレタン株式会社製)91.70g(0.350mol)と、溶媒であるγ−ブチロラクトン(三菱化学株式会社製)165.80gとを仕込み、150℃ですべての原料を溶解させ、4時間反応させて、ウレタン結合を有するポリイソシアネートを生成させた。
【0131】
次いで、反応液の温度を80℃まで下げ、デスモジュール−Wを45.85g(0.175mol)と、無水トリメリット酸(三菱ガス化学株式会社製)33.60g(0.175mol)と、γ−ブチロラクトン(三菱化学株式会社製)162.33gとを加え、150℃に昇温してすべての原料を溶解させ、3時間反応させた。
【0132】
反応液の温度を80℃まで下げ、ジオールであるネオペンチルグリコール(関東化学株式会社製)16.40g(0.158mol)を加え、120℃に昇温して全ての原料を溶解させ、4時間反応させた。その後反応液の温度を80℃まで下げ、トリオールであるグリセリン(関東化学株式会社製)9.67g(0.105mol)と、γ−ブチロラクトン(三菱化学株式会社製)26.07gとを加え、110℃に昇温して反応を進行させた。IR測定により反応液中のイソシアネート基の存在を確認しながら反応を行い、系中のイソシアネート基が確認されなくなった時点を反応の終点とみなした。反応時間は11.5時間であった。
【0133】
以上の反応により、水酸基及びイミド結合を有するポリウレタン樹脂を得た。得られたポリウレタン樹脂の数平均分子量は8000、分散度は4.36、固形分の酸価は27mgKOH/g、水酸基価は16mgKOH/gであった。
【0134】
合成例2
上述の化学式(1B)で表され、R
2として、1,4−シクロヘキサンジメタノールに由来する構成単位と1,6−ヘキササンジオールに由来する構成単位とを1:1のモル比で含み、nが平均4〜6の範囲であるポリカーボネートジオール(UM―CARB90(1/1)、宇部興産株式会社製、平均分子量:約900)を準備した。攪拌装置、温度計、コンデンサーを備えた反応容器に、上記ポリカーボネートジオール158.12g(0.175mol)と、デスモジュール−Wを91.70g(0.350mol)と、γ−ブチロラクトン166.55gとを仕込み、150℃ですべての原料を溶解させ、4時間反応させて、ウレタン結合を有するポリイソシアネートを生成させた。
【0135】
次いで、反応液の温度を80℃まで下げ、デスモジュール−Wを45.85g(0.175mol)と、無水トリメリット酸33.60g(0.175mol)と、γ−ブチロラクトン162.72gとを加え、150℃ですべての原料を溶解させ、3時間反応させた。
【0136】
反応液の温度を80℃まで下げ、ネオペンチルグリコール16.40g(0.158mol)を加え、120℃で全ての原料を溶解させ、4時間反応させた。その後反応液の温度を80℃まで下げ、グリセリン9.67g(0.105mol)と、γ−ブチロラクトン26.07gとを加え、110℃で反応させた。IR測定により反応液中のイソシアネート基の存在を確認しながら反応を行い、系中のイソシアネート基が確認されなくなった時点を反応の終点とみなした。反応時間は12時間であった。
【0137】
以上の反応により、水酸基及びイミド結合を有するポリウレタン樹脂を得た。得られたポリウレタン樹脂の数平均分子量は8400、分散度は4.54、固形分の酸価は27mgKOH/g、水酸基価は16mgKOH/gであった。
【0138】
合成例3
上述の化学式(1B)で表され、R
2として、1,4−シクロヘキサンジメタノールに由来する構成単位と1,6−ヘキササンジオールに由来する構成単位とを1:3のモル比で含み、nが平均4〜6の範囲であるポリカーボネートジオール(UM―CARB90(1/3)、宇部興産株式会社製、平均分子量:約900)を準備した。攪拌装置、温度計、コンデンサーを備えた反応容器に、上記ポリカーボネートジオール156.48g(0.175mol)と、デスモジュール−Wを91.70g(0.350mol)と、γ−ブチロラクトン166.55gとを仕込み、150℃ですべての原料を溶解させ、4時間反応させた。
【0139】
次いで、反応液の温度を80℃まで下げ、デスモジュール−Wを45.85g(0.175mol)と、無水トリメリット酸(三菱ガス化学株式会社製)33.60g(0.175mol)と、γ−ブチロラクトン161.08gとを仕込み、150℃ですべての原料を溶解させ、3時間反応させて、ウレタン結合を有するポリイソシアネートを生成させた。
【0140】
反応液の温度を80℃まで下げ、ネオペンチルグリコール16.40g(0.158mol)を加え、120℃で全ての原料を溶解させ、4時間反応させた。その後反応液の温度を80℃まで下げ、グリセリン(関東化学株式会社製)9.67g(0.105mol)と、γ−ブチロラクトン26.07gとを加え、110℃で反応させた。IR測定により反応液中のイソシアネート基の存在を確認しながら反応を行い、系中のイソシアネート基が確認されなくなった時点を反応の終点とみなした。反応時間は14時間であった。
【0141】
以上の反応により、水酸基及びイミド結合を有するポリウレタン樹脂を得た。得られたポリウレタン樹脂の数平均分子量は8000、分散度は4.23、固形分の酸価は28mgKOH/g、水酸基価は17mgKOH/gであった。
【0142】
合成例4
UM―CARB90(1/1)と、上述の式(2)で表され、Rが1,6−ヘキサンジオールに由来する構成単位であり、mが平均9.5〜11.5の範囲であるポリカーボネートジオールであるPCDL T−6001(旭化成ケミカルズ株式会社製)を準備した。攪拌装置、温度計、コンデンサーを備えた反応容器に、UM―CARB90(1/1)を79.06g(0.088mol)及びPCDL T−6001を85.53g(0.088mol)と、デスモジュール−Wを91.70g(0.350mol)と、γ−ブチロラクトン170.86gとを加え、150℃ですべての原料を溶解させ、4時間反応させて、ウレタン結合を有するポリイソシアネートを生成させた。
【0143】
次いで、反応液の温度を80℃まで下げ、デスモジュール−Wを45.85g(0.175mol)と、無水トリメリット酸33.60g(0.175mol)と、γ−ブチロラクトン164.88gとを加え、150℃ですべての原料を溶解させ、3時間反応させた。
【0144】
反応液の温度を80℃まで下げ、ネオペンチルグリコール16.40g(0.158mol)を加え、120℃に昇温して全ての原料を溶解させ、4時間反応させた。その後反応液の温度を80℃まで下げ、グリセリン9.67g(0.105mol)と、γ−ブチロラクトン26.07gとを加え、110℃に昇温して反応させた。IR測定により反応液中のイソシアネート基の存在を確認しながら反応を行い、系中のイソシアネート基が確認されなくなった時点を反応の終点とみなした。反応時間は11.5時間であった。
【0145】
以上の反応により、水酸基及びイミド結合を有するポリウレタン樹脂を得た。得られたポリウレタン樹脂の数平均分子量は9000、分散度は5.42、固形分の酸価は27mgKOH/g、水酸基価は16mgKOH/gであった。
【0146】
合成例5
UM―CARB90(1/1)と、上述の式(2)で表され、Rが1,6−ヘキサンジオールに由来する構成単位であり、mが平均21.5〜23.5の範囲であるポリカーボネートジオールであるPCDL T−6002(旭化成ケミカルズ株式会社製)を準備した。攪拌装置、温度計、コンデンサーを備えた反応容器に、UM―CARB90(1/1)を67.77g(0.075mol)及びPCDL T−6002を148.96g(0.075mol)と、デスモジュール−Wを78.60g(0.30mol)と、γ−ブチロラクトン196.89gとを加え、150℃ですべての原料を溶解させ、4時間反応させて、ウレタン結合を有するポリイソシアネートを生成させた。
【0147】
次いで、反応液の温度を80℃まで下げ、デスモジュール−Wを39.30g(0.15mol)と、無水トリメリット酸28.80g(0.15mol)と、γ−ブチロラクトン166.54gとを仕込み、150℃ですべての原料を溶解させ、3時間反応させた。
【0148】
反応液の温度を80℃まで下げ、ネオペンチルグリコール14.06g(0.135mol)を加え、120℃に昇温して全ての原料を溶解させ、4時間反応させた。その後反応液の温度を80℃まで下げ、グリセリン8.29g(0.09mol)とγ−ブチロラクトン22.35gとを加え、110℃に昇温して反応させた。IR測定により反応液中のイソシアネート基の存在を確認しながら反応を行い、系中のイソシアネート基が確認されなくなった時点を反応の終点とみなした。反応時間は10時間であった。
【0149】
以上の反応により、水酸基及びイミド結合を有するポリウレタン樹脂を得た。得られたポリウレタン樹脂の数平均分子量は9600、分散度は6.18、固形分の酸価は22mgKOH/g、水酸基価は13mgKOH/gであった。
【0150】
合成例6
攪拌装置、温度計、コンデンサーを備えた反応容器に、UM―CARB90(3/1)を91.52g(0.10mol)及びPCDL T−6002を99.51g(0.05mol)と、デスモジュール−Wを78.60g(0.30mol)と、γ−ブチロラクトン179.75gとを仕込み、150℃ですべての原料を溶解させ、4時間反応させて、ウレタン結合を有するポリイソシアネートを生成させた。
【0151】
次いで、反応液の温度を80℃まで下げ、デスモジュール−Wを39.30g(0.15mol)と、無水トリメリット酸28.80g(0.15mol)と、γ−ブチロラクトン157.87gとを仕込み、150℃ですべての原料を溶解させ、3時間反応させた。
【0152】
反応液の温度を80℃まで下げ、ネオペンチルグリコール14.06g(0.135mol)を加え、120℃に昇温して全ての原料を溶解させ、4時間反応させた。その後反応液の温度を80℃まで下げ、グリセリン8.29g(0.09mol)と、γ−ブチロラクトン22.35gとを加え、110℃に昇温して反応させた。IR測定により反応液中のイソシアネート基の存在を確認しながら反応を行い、系中のイソシアネート基が確認されなくなった時点を反応の終点とみなした。反応時間は18時間であった。
【0153】
以上の反応により、水酸基及びイミド結合を有するポリウレタン樹脂を得た。得られたポリウレタン樹脂の数平均分子量は8500、分散度は4.99、固形分の酸価は23mgKOH/g、水酸基価は14mgKOH/gであった。
【0154】
合成例7
攪拌装置、温度計、コンデンサーを備えた反応容器に、UM―CARB90(1/1)を91.37g(0.10mol)及びPCDL T−6002を99.51g(0.05mol)と、デスモジュール−Wを78.60g(0.30mol)と、γ−ブチロラクトン179.65gとを仕込み、150℃ですべての原料を溶解させ、4時間反応させて、ウレタン結合を有するポリイソシアネートを生成させた。
【0155】
次いで、反応液の温度を80℃まで下げ、デスモジュール−Wを39.30g(0.15mol)と、無水トリメリット酸28.80g(0.15mol)と、γ−ブチロラクトン157.93gとを加え、150℃に昇温してすべての原料を溶解させ、3時間反応させた。
【0156】
反応液の温度を80℃まで下げ、ネオペンチルグリコール14.06g(0.135mol)を加え、120℃に昇温して全ての原料を溶解させ、4時間反応させた。その後反応液の温度を80℃まで下げ、グリセリン8.29g(0.09mol)とγ−ブチロラクトン22.35gとを加え、110℃に昇温して反応させた。IR測定により反応液中のイソシアネート基の存在を確認しながら反応を行い、系中のイソシアネート基が確認されなくなった時点を反応の終点とみなした。反応時間は18時間であった。
【0157】
以上の反応により、水酸基及びイミド結合を有するポリウレタン樹脂を得た。得られたポリウレタン樹脂の数平均分子量は8800、分散度は5.19、固形分の酸価は23mgKOH/g、水酸基価は14mgKOH/gであった。
【0158】
合成例8
攪拌装置、温度計、コンデンサーを備えた反応容器に、UM―CARB90(1/1)を161.44g(0.179mol)を入れ、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートであるMILLIONATE MT(日本ポリウレタン工業株式会社製)53.65g(0.214mol)、及び、2,4−トリレンジイソシアネートと2,6−トリレンジイソシアネートとの質量比80:20の混合物であるコスモネートT−80(三井化学ポリウレタン株式会社製)24.89g(0.143mol)と、γ−ブチロラクトン159.93gとを仕込み、150℃ですべての原料を溶解させ、4時間反応させて、ウレタン結合を有するポリイソシアネートを生成させた。
【0159】
次いで、反応液の温度を60℃まで下げ、無水トリメリット酸63.71g(0.332mol)を加え完全に溶解させた後、MILLIONATE MTを23.00g(0.092mol)及びコスモネートT−80を10.67g(0.061mol)と、γ−ブチロラクトン342.98gとを加え、120℃に昇温してすべての原料を溶解させ、1時間反応させた。
【0160】
その後、反応液の温度を180℃まで上げ、180℃で2時間反応させた。続いて、反応液の温度を120℃まで下げ、2−ブタノンオキシム(和光純薬株式会社製)5.61gを加え、反応を終了させた。
【0161】
得られたアミド結合及びイミド結合を有するポリウレタン樹脂の数平均分子量は9200、分散度は3.09、固形分の酸価は31mgKOH/gであった。
【0162】
合成例9
UM―CARB90(1/1)と、上述の式(2)で表され、Rが1,6−ヘキサンジオールに由来する構成単位であり、mが平均21.5〜23.5の範囲であるポリカーボネートジオールであるPLACCEL CD−220(ダイセル化学工業株式会社製)を準備した。攪拌装置、温度計、コンデンサーを備えた反応容器に、UM―CARB90(1/1)を71.79g(0.079mol)とPLACCEL CD−220を158.34g(0.079mol)とを入れ、MILLIONATE MTを47.72g(0.190mol)及びコスモネートT−80を22.14g(0.127mol)と、γ−ブチロラクトン200.00gとを仕込み、150℃ですべての原料を溶解させ、4時間反応させて、ウレタン結合を有するポリイソシアネートを生成させた。
【0163】
次いで、反応液の温度を60℃まで下げ、無水トリメリット酸56.66g(0.295mol)を入れ完全に溶解させた後、MILLIONATE MTを20.45g(0.082mol)及びコスモネートT−80を9.49g(0.055mol)と、γ−ブチロラクトン191.58gとを加え、120℃ですべての原料を溶解させ、1時間反応させた。
【0164】
その後、反応液の温度を180℃まで上げ、180℃で2時間反応させた。続いて、反応液の温度を120℃まで下げ、2−ブタノンオキシム4.99gを加え、反応を終了させた。
【0165】
得られたアミド結合及びイミド結合を有するポリウレタン樹脂の数平均分子量は8700、分散度は3.09、固形分の酸価は26mgKOH/gであった。
【0166】
合成例10
攪拌装置、温度計、コンデンサーを備えた反応容器に、UM―CARB90(1/1)を158.12g(0.175mol)及びPLACCEL CD−220を348.76g(0.175mol)を入れ、MILLIONATE MTを105.11g(0.60mol)及びコスモネートT−80を48.76g(0.28mol)と、γ−ブチロラクトン440.50gとを仕込み、150℃ですべての原料を溶解させ、4時間反応させて、ウレタン結合を有するポリイソシアネートを生成させた。
【0167】
次いで、反応液の温度を60℃まで下げ、無水トリメリット酸124.80g(0.65mol)を入れ完全に溶解させた後、MILLIONATE MTを45.05g(0.18mol)及びコスモネートT−80を20.90g(0.12mol)と、γ−ブチロラクトン421.99gとを仕込み、120℃に昇温してすべての原料を溶解させ、1時間反応させた。
【0168】
反応液の温度を180℃まで上げ、180℃で3時間、150℃で0.5時間、130℃で0.5時間反応させた。続いて、120℃で2−ブタノンオキシム10.99gを加え、反応を終了させた。
【0169】
得られたアミド結合及びイミド結合を有するポリウレタン樹脂の数平均分子量は13900、分散度は3.29、固形分の酸価は19mgKOH/gであった。
【0170】
合成例11
攪拌装置、温度計、コンデンサーを備えた反応容器に、UM―CARB90(1/1)を121.47g(0.133mol)とPLACCEL CD−220を132.91g(0.067mol)を入れ、MILLIONATE MTを59.91g(0.239mol)及びコスモネートT−80を27.80g(0.160mol)と、γ−ブチロラクトン228.06gとを仕込み、150℃ですべての原料を溶解させ、4時間反応させて、ウレタン結合を有するポリイソシアネートを生成させた。
【0171】
次いで、反応液の温度を60℃まで下げ、無水トリメリット酸71.14g(0.371mol)を加え完全に溶解させた後、MILLIONATE MTを25.68g(0.103mol)及びコスモネートT−80を11.91g(0.068mol)と、γ−ブチロラクトン229.01gとを加え、120℃に昇温してすべての原料を溶解させ、1時間反応させた。
【0172】
反応液の温度を180℃まで上げ、180℃で2.5時間、150℃で1時間、120℃で1時間反応させた。続いて、120℃で2−ブタノンオキシム10.99gを加え、反応を終了させた。
【0173】
得られたアミド結合及びイミド結合を有するポリウレタン樹脂の数平均分子量は13100、分散度は3.30、固形分の酸価は20mgKOH/gであった。
【0174】
合成例12
攪拌装置、温度計、コンデンサーを備えた反応容器にUM―CARB90(1/1)を88.03g(0.096mol)とPCDL T−6002を191.17g(0.096mol)とを入れ、MILLIONATE MTを57.81g(0.231mol)及びコスモネートT−80を26.82g(0.154mol)と、γ−ブチロラクトン242.56gとを仕込み、150℃ですべての原料を溶解させ、4時間反応させて、ウレタン結合を有するポリイソシアネートを生成させた。
【0175】
次いで、反応液の温度を60℃まで下げ、無水トリメリット酸68.64g(0.378mol)を入れ完全に溶解させた後、MILLIONATE MTを24.78g(0.099mol)及びコスモネートT−80を11.50g(0.066mol)と、γ−ブチロラクトン232.23gとを加え、120℃に昇温してすべての原料を溶解させ、1時間反応させた。
【0176】
反応液の温度を180℃まで上げ、180℃で3.5時間、150℃で0.5時間、120℃で0.5時間反応させた。続いて、120℃で2−ブタノンオキシム(和光純薬株式会社製)6.05gを加え、反応を終了させた。
【0177】
得られたアミド結合及びイミド結合を有するポリウレタン樹脂の数平均分子量は12600、分散度は3.73、固形分の酸価は21mgKOH/gであった。
【0178】
合成例13
攪拌装置、温度計、コンデンサーを備えた反応容器に、シクロヘキサンジメタノール(EASTMAN株式会社製)30.93g(0.215mol)と、PCDL T−6001を30.21g(0.031mol)と、PCDL T−6002を69.72g(0.035mol)とを入れ、MILLIONATE MTを84.24g(0.337mol)及びコスモネートT−80を39.08g(0.224mol)と、γ−ブチロラクトン169.45gとを仕込み、150℃ですべての原料を溶解させ、4時間反応させて、ウレタン結合を有するポリイソシアネートを生成させた。
【0179】
次いで、反応液の温度を60℃まで下げ、無水トリメリット酸71.14g(0.371mol)を入れ完全に溶解させた後、MILLIONATE MTを13.51g(0.054mol)及びコスモネートT−80を6.27g(0.036mol)と、γ−ブチロラクトン182.80gとを加え、120℃に昇温してすべての原料を溶解させ、1時間反応させた。
【0180】
反応液の温度を180℃まで上げ、180℃で3時間、120℃で0.5時間反応させた。続いて、120℃で2−ブタノンオキシム7.16gを加え、反応を終了させた。
【0181】
得られたアミド結合及びイミド結合を有するポリウレタン樹脂の数平均分子量は10600、分散度は2.57、固形分の酸価は28mgKOH/gであった。
【0182】
合成例14
攪拌装置、温度計、コンデンサーを備えた反応容器に、UM−CARB90(1/1)を128.03(0.140mol)と、PLACCEL CD−220を141.28g(0.070mol)とを入れた。そこに、MILLIONATE MTを52.55g(0.210mol)及びコスモネートT−80を24.38g(0.140)と、γ−ブチロラクトン230.83gとを仕込み、150℃ですべての原料を溶解させ、4時間反応させて、ウレタン結合を有するポリイソシアネートを生成させた。
【0183】
次いで、反応液の温度を60℃まで下げ、無水トリメリット酸67.25g(0.35mol)を加え、これを完全に溶解させてから、MILLIONATE MTを31.55g(0.126mol)及びコスモネートT−80を14.63g(0.084mol)と、γ−ブチロラクトン235.00gとを加え、120℃に昇温してすべての原料を溶解させ、1時間反応を進行させた。その後、反応液の温度を180℃まで上げ、180℃で3時間、150℃で1.5時間、120℃で1時間反応を進行させた。続いて、120℃で2−ブタノンオキシム6.16gを加え、反応を終了させた。
得られたアミド結合及びイミド結合を有するポリウレタン樹脂の数平均分子量は14100、分散度は3.20、固形分の酸価は13.3mgKOH/gであった。
【0184】
合成例15
攪拌装置、温度計、コンデンサーを備えた反応容器に、UM−CARB90(1/1)を238.88g(0.268mol)と、2,2−ジメチロールプロピオン酸(日本化成株式会社製)17.71g(0.132mol)と、デスモジュール−Wを110.04g(0.420mol)と、γ−ブチロラクトン370.67gとを仕込み、120℃ですべての原料を溶解させ、7.5時間反応させた。次いで、110℃まで降温し、2−ブタノンオキシム4.04gを加え、1時間反応させた後、反応を終了させた。
【0185】
得られたカルボキシル基を有するポリウレタン樹脂の数平均分子量は13100、分散度は2.52、固形分の酸価は20.0mgKOH/gであった。
【0186】
比較合成例1
攪拌装置、温度計、コンデンサーを備えた反応容器に、PLACCEL CD220を628g及びPCDL T−6001を400gと、2,2−ジメチロールプロピオン酸(日本化成株式会社製)41gと、デスモジュール−Wを565g(2.16mol)と、γ−ブチロラクトン1090gとを仕込み、150℃ですべての原料を溶解させ、4時間反応させて、ウレタン結合を有するポリイソシアネートを生成させた。
【0187】
次いで、反応液の温度を80℃まで下げ、滴下ロートにより、ポリマーポリオールである1,2−繰り返し単位を有するポリブタジエンジオール(商品名:G−1000、日本曹達社製)183g(0.11mol)と、γ−ブチロラクトン656gとを30分かけて滴下した。滴下終了後、140℃で2時間反応させた。
【0188】
反応液の温度を90℃まで下げ、滴下ロートにより、2,2−ジメチロールプロピオン酸122gと、γ−ブチロラクトン194gとを30分かけて滴下した。110℃で6.5時間反応させた後、2−ブタノンオキシム20gを加え、反応を終了させた。
【0189】
得られたカルボキシル基を有するポリウレタン樹脂の数平均分子量は10800、分散度5.10、固形分の酸価は36.2mgKOH/gであった。
【0190】
比較合成例2
攪拌装置、温度計、コンデンサーを備えた反応容器に、UM―CARB90(3/1)を316.24gと、2,2−ジメチロールプロピオン酸20.12g(0.15mol)と、デスモジュール−Wを275.10g(1.05mol)と、γ−ブチロラクトン407.64gとを仕込み、150℃ですべての原料を溶解させ、4時間反応させて、ウレタン結合を有するポリイソシアネートを生成させた。
【0191】
次いで、反応液の温度を80℃まで下げ、滴下ロートにより、ポリブタジエンジオールであるG−1000を78.81gと、γ−ブチロラクトン255.56gとを30分かけて滴下した。滴下終了後、140℃で2時間反応させた。
【0192】
反応液の温度を90℃まで下げ、滴下ロートにより、2,2−ジメチロールプロピオン酸59.63g(0.4445mol)と、γ−ブチロラクトン96.71gとを30分かけて滴下した。110℃で5時間反応させた後、2−ブタノンオキシム10.01gを加え、反応を終了させた。
【0193】
得られたカルボキシル基を有するポリウレタン樹脂の数平均分子量は10000、分散度は5.32、固形分の酸価は37mgKOH/gであった。
【0194】
比較合成例3
攪拌装置、温度計、コンデンサーを備えた反応容器に、PCDL T−6001を171.1g(0.175mol)と、デスモジュール−Wを91.7g(0.350mol)と、γ−ブチロラクトン175.2gとを仕込み、150℃ですべての原料を溶解させ、4時間反応させて、ウレタン結合を有するポリイソシアネートを生成させた。
【0195】
次いで、反応液の温度を80℃まで下げ、デスモジュール−Wを45.9g(0.175mol)と、無水トリメリット酸33.6g(0.175mol)と、γ−ブチロラクトン197.2gとを加え、150℃に昇温してすべての原料を溶解させ、3時間反応させた。
【0196】
反応液の温度を80℃まで下げ、ネオペンチルグリコール16.4g(0.158mol)を仕込み、120℃に昇温して全ての原料を溶解させ、4時間反応させた。その後反応液の温度を80℃まで下げ、グリセリン9.7g(0.105mol)を加え、110℃で反応させた。R測定により反応液中のイソシアネート基の存在を確認しながら反応を行い、系中のイソシアネート基が確認されなくなった時点を反応の終点とみなした。反応時間は9.5時間であった。
【0197】
以上の反応により、水酸基及びイミド結合を有するポリウレタン樹脂を得た。得られたポリウレタン樹脂の数平均分子量は8400、分散度は5.80、固形分の酸価は27mgKOH/g、水酸基価は16mgKOH/gであった。
【0198】
比較合成例4
攪拌装置、温度計、コンデンサーを備えた反応容器に、PLACCEL CD−220を687.86g(0.35mol)を入れ、MILLIONATE MTを105.11g(0.60mol)及びコスモネートT−80を48.76g(0.28mol)と、γ−ブチロラクトン561.15gとを仕込み、150℃ですべての原料を溶解させ、4時間反応させて、ウレタン結合を有するポリイソシアネートを生成させた。
【0199】
次いで、反応液の温度を60℃まで下げ、無水トリメリット酸124.80g(0.65mol)を加え完全に溶解させた後、MILLIONATE MTを45.05g(0.18mol)及びコスモネートT−80を20.90g(0.12mol)と、γ−ブチロラクトン482.32gとを加え、120℃に昇温してすべての原料を溶解させ、1時間反応させた。
【0200】
反応液の温度を180℃まで上げ、180℃で4時間、150℃で2時間、120℃で1時間反応させた。続いて、120℃で2−ブタノンオキシム10.99gを加え、反応を終了させた。
【0201】
得られたアミド結合及びイミド結合を有するポリウレタン樹脂の数平均分子量は13500、分散度は2.97、固形分の酸価は18mgKOH/gであった。
【0202】
比較合成例5
攪拌装置、温度計、コンデンサーを備えた反応容器に、UM−CARB90(1/1)を171.58g(0.193mol)と、2,2−ジメチロールプロピオン酸(日本化成株式会社製)11.07g(0.083mol)と、デスモジュール−Wを151.31g(0.578mol)と、γ−ブチロラクトン222.64gとを仕込み、150℃ですべての原料を溶解させ、4時間反応させ、70℃まで降温した。次いで、70℃で反応容器に2,2−ジメチロールプロピオン酸36.89g(0.909mol)とγ−ブチロラクトン153.76gを加え、120℃にて2.5時間反応させた。次いで、110℃まで降温し、2−ブタノンオキシム5.55gを加え、1時間反応させた後、反応を終了させた。
【0203】
得られたカルボキシル基を有するポリウレタン樹脂の数平均分子量は9800、分散度は3.45、固形分の酸価は53.3mgKOH/gであった。
【0204】
比較合成例6
攪拌装置、温度計、コンデンサーを備えた反応容器に、UM−CARB90(1/1)を418.93g(0.470mol)と、2,2−ジメチロールプロピオン酸(日本化成株式会社製)4.02g(0.030mol)と、デスモジュール−Wを137.55g(0.525mol)と、γ−ブチロラクトン565.55gとを仕込み、120℃ですべての原料を溶解させ、9.5時間反応させた。次いで、110℃まで降温し、2−ブタノンオキシム5.05gを加え、1時間反応させた後、反応を終了させた。
【0205】
得られたカルボキシル基を有するポリウレタン樹脂の数平均分子量は12600、分散度は2.48、固形分の酸価は3.0mgKOH/gであった。
【0206】
比較合成例7
攪拌装置、温度計、コンデンサーを備えた反応容器に、UM―CARB90(1/1)を225.89g(0.25mol)と、デスモジュール−Wを131.00g(0.50mol)と、γ−ブチロラクトン292.00gとを仕込み、150℃ですべての原料を溶解させ、4時間反応させて、ウレタン基を有するポリイソシアネートを生成させた。
【0207】
その後、反応液の温度を80℃まで下げ、デスモジュール−Wを13.10g(0.05mol)と、無水トリメリット酸9.60g(0.05mol)と、γ−ブチロラクトン87.59gとを加え、150℃ですべての原料を溶解させ、3時間反応させた。
【0208】
反応液の温度を80℃まで下げ、ネオペンチルグリコール34.37g(0.33mol)を加え、120℃で全ての原料を溶解させ、4時間反応させた。その後反応液の温度を80℃まで下げ、グリセリン20.26g(0.22mol)と、γ−ブチロラクトン54.63gとを加え、110℃で反応させた。IR測定により反応液中のイソシアネート基の存在を確認しながら反応を行い、系中のイソシアネート基が確認されなくなった時点を反応の終点とみなした。反応時間は8時間であった。
【0209】
以上の反応により、水酸基及びイミド結合を有するポリウレタン樹脂を得た。得られたポリウレタン樹脂の数平均分子量は8200、分散度は4.02、固形分の酸価は6.5mgKOH/g、水酸基価は28.4mgKOH/gであった。
【0210】
比較合成例8
攪拌装置、温度計、コンデンサーを備えた反応容器に、ETERNACOLL UM−90(1/1)を271.06(0.30mol)を入れ、MILLIONATE MT(日本ポリウレタン工業株式会社製)60.06(0.24mol)及びコスモネートT−80(三井化学ポリウレタン株式会社製)27.87g(0.16mol)と、γ−ブチロラクトン382.60gとを仕込み、150℃ですべての原料を溶解させ、4時間反応させて、ウレタン基を有するポリイソシアネートを生成させた。次いで、反応液の温度を60℃まで下げ、無水トリメリット酸19.21g(0.10mol)を加え完全に溶解させた後、120℃に昇温してすべての原料を溶解させ、1時間反応させた。
【0211】
反応液の温度を180℃まで上げ、180℃で2時間、150℃で4時間、130℃で1時間反応させた。続いて、110℃で2−ブタノンオキシム4.40gを加え、反応を終了させた。
【0212】
得られたアミド結合及びイミド結合を有するポリウレタン樹脂の数平均分子量は12800、分散度は2.90、固形分の酸価は4.1mgKOH/gであった。
【0213】
表1、2、3、4及び5に各ウレタン樹脂の原料の仕込み量と酸価をまとめて示す。表中、括弧内の数値はモル比を示す。
【0214】
【表1】
【0215】
【表2】
【0216】
【表3】
【0217】
【表4】
【0218】
【表5】
【0219】
2.熱硬化性樹脂組成物の調製
上記の合成例、比較合成例で得られたポリウレタン樹脂と、エポキシ樹脂(テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン)であるエポトートYH−434L(東都化成株式会社製)と、ブロックイソシアネートであるBL−3175(住友バイエルウレタン株式会社製)と、γ−ブチロラクトン(三菱化学株式会社製)と、消泡剤としてのBYK−A555(ビッケミー社製、商品名)0.3重量部とをフラスコ内で混合し、U字羽根で混練して、熱硬化性樹脂組成物を調整した。各成分の比率(重量部)を表6、7に示す。
【0220】
【表6】
【0221】
【表7】
【0222】
3.評価
(1)絶縁信頼性
HHBT(High temperature High humidity Bias Test)
厚さ38μmのポリイミドフィルムと、厚さ8μmの銅箔(スパッタ銅)及び銅箔上に形成された厚さ0.2〜0.3μmのSnめっき層を有する櫛形の銅配線(配線パターン)とから構成されるフレキシブル銅張り積層板(銅配線幅/銅配線間幅=15μm/15μm)を準備した。このフレキシブル銅張り積層板に、各熱硬化性樹脂組成物を、SUS200メッシュ板を用いてスクリーン印刷により乾燥膜厚が10μmになるように塗布した。塗布された熱硬化性樹脂組成物を120℃で1時間の加熱により硬化させ、その後、未硬化を防ぐために125℃で7.5時間更に加熱して、保護膜を形成させた。保護膜が形成された基板を65℃、相対湿度95%の雰囲気下において100Vのバイアス電圧を印加し、以下の基準でHHBT抵抗値を評価した。以下の値は、測定開始から100時間経過までの抵抗値の平均値である。
A:1.0×10
12Ω以上
B:5.0×10
11Ω以上1.0×10
12Ω未満
C:1.0×10
11Ω以上5.0×10
11Ω未満
D:5.0×10
10Ω以上1.0×10
11Ω未満
E:1.0×10
10Ω以上5.0×10
10Ω未満
F:1.0×10
10Ω未満
【0223】
PCBT(Pressure Cooker Bias Test)
厚さ38μmのポリイミドフィルムと、厚さ8μmの銅箔(スパッタ銅)及び銅箔上に形成された厚さ0.2〜0.3μmのSnめっき層を有する櫛形の銅配線(配線パターン)とから構成されるフレキシブル銅張り積層板(銅配線幅/銅配線間幅=12.5μm/12.5μm)を準備した。このフレキシブル銅張り積層板に、各熱硬化性樹脂組成物を、SUS200メッシュ版を用いてスクリーン印刷により乾燥膜厚が10μmになるように塗布した。塗布された熱硬化性樹脂組成物を120℃で1時間の加熱により硬化させて、保護膜を形成させた。保護膜が形成された基板を120℃、相対湿度85%の雰囲気下において100Vのバイアス電圧を印加し、マイグレーション発生までの時間を測定して、以下の基準で絶縁信頼性を評価した。
A:300時間以上
B:200時間以上300時間未満
C:150時間以上200時間未満
D:100時間以上150時間未満
E:50時間以上100時間未満
F:50時間未満
【0224】
(2)反り性
厚さ38μmのポリイミドフィルムと、厚さ8μmの銅箔(スパッタ銅)及び銅箔上に形成された厚さ0.2〜0.3μmのSnめっき層を有する銅配線(配線パターン)とから構成されるフレキシブル銅張り配線板(縦48mm、横35mm)を準備した。このフレキシブル銅張り配線板に、各熱硬化性樹脂組成物を、硬化後の厚みが10μmとなる膜厚で塗布した。塗布された熱硬化性樹脂組成物を、120℃で60分間と、その後の150℃で4時間の加熱により硬化させて、保護膜を形成させた。保護膜が形成されたフレキシブル銅張り配線板を、保護膜の面を下にして定盤上に置き、定盤からフレキシブル銅張り配線板の反りの頂点までの距離(mm)を測定し、その値を反り高さとした。測定された反り高さに基づいて、反り性を以下の2段階で評価した。
A:4.0mm未満
B:4.0mm以上6.0mm未満
C:6.0mm以上8.0mm未満
D:8.0mm以上
【0225】
(3)ガラス転移温度
各熱硬化性樹脂組成物を離型PETフィルムにアプリケータで塗布し、120℃、60分間の加熱により硬化した。硬化した塗膜(膜厚:約30μm)をカミソリで4mm×20mmの大きさに切断してから、離型PETフィルムより剥離した。得られた試験片を用い、熱機械分析装置(TMA)を用いて、下記条件でガラス転移温度を測定した。
チャック間長さ:10mm
昇温速度:10℃/分
荷重:3gf
【0226】
(4)吸水率
以下の手順で吸水率を測定した。
i)ガラス板(100mm×100mm)をアセトン中で超音波洗浄し、その質量(W1)を精密天秤で精秤する。
ii)ガラス板(75mm×75mm)の端5mmをマスキングし、ガラス板に熱硬化性樹脂組成物を乾燥膜厚20μmになるように塗布する。塗布後、マスキングを取り外し、120℃、60分間の加熱により塗膜を硬化して、試験片を得る。試験片の質量(W2)を精密天秤により精秤する。
iii)上記試験片をイオン交換水中に25℃で24時間浸漬し、イオン交換水から取り出された試験片に付着している水分を除去してから、試験片の質量(W3)を精秤する。
iV)下記、計算式により吸水率を算出し、以下の4段階で評価した。
計算式:吸水率[%]={(W3−W2)/(W2−W1)}×100
A:1.0%未満
B:1.0%以上1.5%未満
C:1.5%以上2.0%未満
D:2.0%以上
【0227】
(5)弾性率、伸び率
熱硬化性樹脂組成物を離型PETフィルムにアプリケータで塗布し、120℃、60分間の加熱により硬化させた。硬化した塗膜(膜厚:約30μm)をカミソリで10mm幅(長さは約60mm)の短冊状に切断してから、離型PETフィルムより剥離した。得られた試験片に関して精密万能試験機(オートグラフ、島津製作所社製、型番:「AGS−5KNG」)を用いて下記条件で引張り試験を行い、引張り弾性率および伸び率を測定した
引張り条件:チャック間長さ20mm
引張り速度:5mm/分
【0228】
(6)(i)屈曲性−1(MIT(Massachusetts Institute of Technology)試験)
厚さ38μmのポリイミドフィルムと、厚さ8μmの銅箔(スパッタ銅)及び銅箔上に形成された厚さ0.2〜0.3μmのSnめっき層を有する櫛形の銅配線(配線パターン)とから構成されるフレキシブル銅張り積層板(縦48mm、横35mm、銅配線幅/銅配線間幅=15μm/15μm)を準備した。このフレキシブル銅張り積層板の基板に、SUS200メッシュ版を用いてスクリーン印刷により乾燥膜厚が10μmになるように塗布し、120℃で1時間と、その後の125℃で7.5時間の加熱により硬化して、
図1に示される形態の試験片を得た。硬化後の試験片に対して、MIT試験機を用いて下記条件にてAの位置で保護膜を内側にして折り曲げを繰り返し実施し、導通がとれなくなるサイクル数を求めた。屈曲性は以下の5段階で評価した。
耐MIT試験条件
荷重:100gf
角度:角対向135°
速度:175回/分
先端:R0.38mm円筒
評価基準
A:80回以上
B:60回以上80回未満
C:50回以上60回未満
D:40回以上50回未満
E:40回未満
【0229】
(6)(ii)屈曲性−2
厚さ38μmのポリイミドフィルムと、厚さ8μmの銅箔(スパッタ銅)及び銅箔上に形成された厚さ0.2〜0.3μmのSnめっき層を有する櫛形の銅配線(配線パターン)とから構成されるフレキシブル銅張り積層板(縦48mm、横35mm、銅配線幅/銅配線間幅=12.5μm/12.5μm)を準備した。このフレキシブル銅張り積層板の基板に、SUS200メッシュ版を用いてスクリーン印刷により乾燥膜厚が10μmになるように塗布し、120℃で1時間と、その後の125℃で7.5時間の加熱により硬化して、
図1に示される形態の試験片を得た。硬化後の試験片に対して、MIT試験機を用いて下記条件にてAの位置で保護膜を内側にして折り曲げを繰り返し実施し、導通がとれなくなるサイクル数を求めた。屈曲性は以下5段階で評価した。
耐MIT試験条件
荷重:100gf
角度:角対向135°
速度:175回/分
先端:R1.0mm円筒
評価基準
A:200回以上
B:150回以上200回未満
C:100回以上150回未満
D:80回以上100回未満
E:80回未満
【0230】
(7)密着性
フレキシブル銅張り積層板の基板(銅配線幅/銅配線間幅=15μm/15μm)に、SUS200メッシュ版を用いてスクリーン印刷により乾燥膜厚が10μm、縦15mm×横40mmになるように塗布し、120℃で1時間の加熱により硬化した。硬化後、試料面のクロスカット試験を行い、硬化膜の剥離の度合いを評価した。クロスカット試験は、碁盤目試験は、JIS K5600に準じて100個のマス目に対して残存した目の個数を表記する碁盤目試験により行った。以下3段階で密着性を評価した。
A:100/100(剥離なし=密着性良好)
B:99/100〜95/100
C:<95/100
【0231】
(8)タック性
熱硬化性樹脂組成物を、SUS200メッシュ版で、幅50mmポリイミドフィルムにスクリーン印刷により乾燥膜厚が10μm、塗膜が縦15mm×横40mmになるように塗膜間隔5cmで連続印刷した。印刷後のフィルムを120℃で1時間の加熱により硬化した。連続印刷したポリイミドフィルムを、500gの荷重を加えながら、ロールで巻き取った。25℃、相対湿度60%の雰囲気下において、48時間放置し、熱硬化性樹脂組成物の印刷面とポリイミドフィルムの裏面との接触面の張り付き荷重について以下の基準で評価した。張り付き荷重は、熱硬化性樹脂組成物の印刷面からポリイミドフィルムが剥がれる荷重を測定し、以下3段階で評価した。
張り付き荷重
A:0.23g以下
B:0.23g超1.00g以下
C:1.00g超
【0232】
(8)耐候性(耐PCT(Pressure Cooker Test)性)
フレキシブル銅張り積層板の櫛形基板(銅配線幅/銅配線間幅=15μm/15μm)に、SUS200メッシュ版を用いてスクリーン印刷により乾燥膜厚が10μm、縦15mm×横40mmになるように塗布し、120℃で1時間の加熱により硬化した。硬化後の試験片をオートクレーブにより、121℃、0.2MPa(飽和蒸気圧)の条件で処理し、100時間後の塗膜外観を観察した。以下3段階で塗膜外観を評価した。
A:膨れ、割れ、表面の荒れなし(良好)
B:表面の荒れあり
C:膨れ、割れあり
【0233】
【表8】
【0234】
【表9】