【実施例】
【0101】
以下、光学系OSの実施例を、図面に基づいて説明する。なお、
図1、
図4、及び
図6は、各実施例に係る光学系OS(OS1〜OS3)の構成を示している。
【0102】
各実施例において、非球面は、光軸に垂直な方向の高さをyとし、高さyにおける各非球面の頂点の接平面から各非球面までの光軸に沿った距離(サグ量)をS(y)とし、基準球面の曲率半径(近軸曲率半径)をrとし、円錐定数をκとし、n次の非球面係数をAnとしたとき、以下の式(a)で表される。なお、以降の実施例において、「E−n」は「×10
-n」を示す。
【0103】
S(y)=(y
2/r)/[1+{1−κ(y
2/r
2)}
1/2]
+A4×y
4+A6×y
6+A8×y
8+A10×y
10 (a)
【0104】
なお、各実施例において、2次の非球面係数A2は0である。また、各実施例の表中において、非球面には面番号の左側に*を付している。
【0105】
[第1実施例]
図1は、第1実施例に係る光学系OS1のレンズ構成を示す断面図である。
【0106】
この光学系OS1は、物体側から順に、正の屈折力を有する前群GFと、開口絞りSと、正の屈折力を有する後群GRと、を有して構成されている。
【0107】
前群GFは、物体側から順に、物体側に凸面を向けた非球面正メニスカスレンズL11からなり、正の屈折力を有する第1レンズ成分LFP、両凸形状の正レンズL12と両凹形状の負レンズL13との接合による接合負メニスカスレンズからなり、負の屈折力を有し、物体側に凸面を向けた第2レンズ成分LFN1、及び、物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズL14からなり、負の屈折力を有する第3レンズ成分LFN2から構成されている。
【0108】
また、後群GRは、物体側から順に、両凹形状の負レンズL21と両凸形状の正レンズL22とが接合され、全体で負の屈折力を有し、物体側に凹面を向けた第1レンズ成分LRN、両凸形状の正レンズL23と両凹形状の負レンズL24とが接合され、全体で正の屈折力を有し、像側に凹面を向けた第2レンズ成分LRP1、及び、両凸レンズ形状の非球面正レンズL25からなり、正の屈折力を有する第3レンズ成分LRP2から構成されている。
【0109】
本第1実施例に係る光学系OS1は、前群GFの両凹形状の負レンズL13の像面側レンズ面(面番号5)と、前群GFの負メニスカスレンズL14の物体側レンズ面(面番号6)に、後述する反射防止膜が形成されている。
【0110】
なお、この光学系OS1の後群GRと像面との間には、オプティカル・ローパス・フィルター相当のダミーガラスFLが配置されている。
【0111】
以下の表1に、本第1実施例に係る光学系OS1の諸元の値を掲げる。この表1の全体諸元において、fは焦点距離、FNOはFナンバー、ωは半画角(単位:度)、Yは像高、TLは光学系OS1の全長、及び、Bfはバックフォーカスをそれぞれ表している。なお、全長TLは、この光学系OS1の最も物体側のレンズ面(第1面)から像面までの光軸上の距離を示し、空気換算バックフォーカスBfは、ダミーガラスFLを取り除いたときの、この光学系OS1の最も像側のレンズ面(第16面)から像面までの光軸上の距離を表している。また、レンズデータにおいて、第1欄mは、光線の進行する方向に沿った物体側からの光学面の順序(面番号)を、第2欄rは、各光学面の曲率半径を、第3欄dは、各光学面から次の光学面までの光軸上の距離(面間隔)を、第4欄νd及び第5欄ndは、それぞれd線(波長λ=587.6nm)に対するアッべ数及び屈折率を示している。なお、この表1に示す面番号1〜18は、
図1に示す番号1〜18に対応している。また、物面及び像面の曲率半径「∞」、曲率半径0.0000は平面を示す。また、空気の屈折率1.00000は省略してある。また、最終面(第18面)の面間隔は、像面までの光軸上の距離である。また、レンズ群焦点距離は、各レンズ群が開始する面番号(始面)および各レンズ群の焦点距離をそれぞれ示している。
【0112】
ここで、以下の全ての諸元値において掲載されている焦点距離f、曲率半径r、面間隔d、その他長さの単位は一般に「mm」が使われるが、光学系は、比例拡大または比例縮小しても同等の光学性能が得られるので、これに限られるものではない。また、これらの符号の説明及び諸元表の説明は以降の実施例においても同様である。
【0113】
(表1)第1実施例
[全体諸元]
f = 58.0216
FNO= F1.229
ω = 20.82°
Y = 21.6
TL = 122.05004
空気換算Bf = 38.01861
[レンズデータ]
m r d νd nd
(物面) ∞
* 1 41.8098 11.0500 49.53 1.744430
* 2 2652.8412 1.0000
3 117.6517 5.4000 82.57 1.497820
4 -257.3631 1.5000 48.78 1.531720
5 22.4645 11.0000
6 -55.6445 2.0000 70.31 1.487490
7 -96.0152 3.0000
8 0.0000 10.0000 開口絞りS
9 -29.5135 1.7000 28.38 1.728250
10 109.6394 11.0000 46.59 1.816000
11 -40.5171 0.1000
12 44.9154 14.5000 49.62 1.772500
13 -50.7224 1.6000 41.51 1.575010
14 33.7818 2.5000
15 54.2656 7.0000 49.53 1.744430
*16 -233.5493 36.0000
17 0.0000 2.0000 63.88 1.516800
18 0.0000 0.7000
(像面) ∞
[レンズ群焦点距離]
レンズ群 始面 焦点距離
前群 1 6928.27452
後群 9 43.40473
【0114】
この第1実施例に係る光学系OS1において、第1面、第2面及び第16面の各レンズ面は非球面形状に形成されている。次の表2に、非球面データ、すなわち円錐定数κ及び各非球面定数A4〜A10の値を示す。
【0115】
(表2)
κ A4 A6 A8 A10
第 1面 -1.3241 3.10229E-06 -7.79759E-10 3.01550E-13 -7.29996E-16
第 2面 -0.1653E+05 -7.21606E-08 7.08003E-11 -3.55610E-13 1.07080E-17
第16面 -16.7337 1.90857E-06 4.23655E-09 -1.20892E-11 2.56021E-14
【0116】
次の表3に、この第1実施例に係る光学系OS1に対する各条件式対応値を示す。なお、この表3において、fFは前群GFの焦点距離、fRは後群GRの焦点距離、fFN1は前群GF中の第2レンズ成分LFN1の焦点距離、fFN2は前群GF中の第3レンズ成分LFN2の焦点距離、fRPは後群GR中の第2レンズ成分LRP1の焦点距離、fRP2は後群GR中の第3レンズ成分LRP2の焦点距離、f0は無限遠合焦時の全系の焦点距離、rp1は後群GR中の第2レンズ成分LRP1の最も物体側の面の曲率半径、rp2は後群GR中の第2レンズ成分LRP1の最も像側の面の曲率半径、nRNPは後群GR中の第1レンズ成分LRN中の正レンズL22の媒質のd線に対する屈折率、nRNNは後群GR中の第1レンズ成分LRN中の負レンズL21の媒質のd線に対する屈折率、nRPPは後群GR中の第2レンズ成分LRP1の正レンズL23の媒質のd線に対する屈折率、nRPN:は群GR中の第2レンズ成分LRP1の負レンズL24の媒質のd線に対する屈折率、をそれぞれ表している。これらの符号の説明は以降の実施例においても同様である。
【0117】
(表3)
(1)fR/|fF|= 0.006265
(2)(−fFN1)/f0=0.9018
(3)(−fFN2)/f0=4.7562
(4)(rp2−rp1)/(rp2+rp1)=-0.1415
(5)nRNP−nRNN=0.08775
(6)nRPP−nRPN=0.1975
(7)fRP/f0=2.7473
(8)fRP2/f0=1.0302
【0118】
このように、第1実施例に係る光学系OS1は、上記条件式(1)〜(8)を全て満足している。
【0119】
図2に、この第1実施例に係る光学系OS1の無限遠合焦状態における球面収差、非点収差、歪曲収差、倍率色収差、及び、コマ収差の諸収差図を示す。各収差図において、FNOはFナンバーを、Yは像高を、ωは半画角[単位:度]を、それぞれ示している。また、各収差図において、dはd線(波長λ=587.6nm)、及び、gはg線(波長λ=435.8nm)に対する収差を表している。また、非点収差図において、実線はサジタル像面を示し、破線はメリジオナル像面を示している。また、コマ収差図は、各半画角ωにおいて、実線はd線及びg線に対するメリジオナルコマ収差を表し、原点より左側の破線はd線に対してメリジオナル方向に発生するサジタルコマ収差、原点より右側の破線はd線に対してサジタル方向に発生するサジタルコマ収差を表している。なお、この収差図の説明は以降の実施例においても同様である。この
図2に示す各収差図から明らかなように、この第1実施例に係る光学系OS1では、球面収差、サジタルコマ収差、像面湾曲、非点収差、メリジオナルコマ収差を含め諸収差が良好に補正されており、高い光学性能を有していることが分かる。
【0120】
図3において、物体側からの光線BMが図示のように光学系に入射すると、負メニスカスレンズL14における物体側のレンズ面(第1番目の反射光発生面でありその面番号は6)で反射し、その反射光は両凹形状の負レンズL13における像面側のレンズ面(第2番目の反射光発生面でありその面番号は5)で再度反射して像面Iに到達し、ゴーストやフレアを発生させてしまう。なお、第1番目の反射光発生面6は、物体から見て凹形状のレンズ面、第2番目の反射光発生面5は開口絞りから見て凹形状のレンズ面である。このような面に、より広い波長範囲で広入射角に対応した反射防止膜を形成することで、ゴーストやフレアを効果的に低減させることができる。
【0121】
[第2実施例]
図4は、第2実施例に係る光学系OS2のレンズ構成を示す断面図である。
【0122】
この光学系OS2は、物体側から順に、正の屈折力を有する前群GFと、開口絞りSと、正の屈折力を有する後群GRと、を有して構成されている。
【0123】
前群GFは、物体側から順に、物体側に凸面を向けた非球面正メニスカスレンズL11からなり、正の屈折力を有する第1レンズ成分LFP、両凸形状の正レンズL12と両凹形状の負レンズL13との接合による接合負メニスカスレンズからなり、負の屈折力を有し、物体側に凸面を向けた第2レンズ成分LFN1、及び、物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズL14からなり、負の屈折力を有する第3レンズ成分LFN2から構成されている。
【0124】
また、後群GRは、物体側から順に、両凹形状の負レンズL21と両凸形状の正レンズL22とが接合され、全体で負の屈折力を有し、物体側に凹面を向けた第1レンズ成分LRN、両凸形状の正レンズL23と両凹形状の負レンズL24とが接合され、全体で正の屈折力を有し、像側に凹面を向けた第2レンズ成分LRP1、及び、両凸レンズ形状の非球面正レンズL25からなり、正の屈折力を有する第3レンズ成分LRP2から構成されている。
【0125】
本第2実施例に係る光学系OS2は、前群GFの負メニスカスレンズL14の像面側レンズ面(面番号7)と、後群GRの両凹形状の負レンズL21の物体側レンズ面(面番号9)に、後述する反射防止膜が形成されている。
【0126】
なお、この光学系OS2の後群GRと像面との間には、オプティカル・ローパス・フィルター相当のダミーガラスFLが配置されている。
【0127】
以下の表4に、本第2実施例に係る光学系OS2の諸元の値を掲げる。なお、この表4に示す面番号1〜18は、
図4に示す番号1〜18に対応している。
【0128】
(表4)第2実施例
[全体諸元]
f = 58.0216
FNO= F1.2300
ω = 20.83°
Y = 21.6
TL = 121.55017
空気換算Bf = 38.01873
[レンズデータ]
m r d νd nd
(物面) ∞
* 1 42.3882 11.0500 49.53 1.744430
* 2 2167.3376 1.0000
3 113.8826 5.4000 82.57 1.497820
4 -622.3931 1.5000 48.78 1.531720
5 22.7071 11.0000
6 -60.3750 2.0000 52.20 1.517420
7 -96.0594 3.0000
8 0.0000 10.0000 開口絞りS
9 -28.9264 1.7000 28.38 1.728250
10 129.6692 11.0000 46.59 1.816000
11 -39.3334 0.1000
12 46.0594 14.0000 49.62 1.772500
13 -50.2692 1.6000 41.51 1.575010
14 34.3180 2.5000
15 55.6965 7.0000 49.53 1.744430
*16 -232.9169 36.0000
17 0.0000 2.0000 63.88 1.516800
18 0.0000 0.7002
(像面) ∞
[レンズ群焦点距離]
レンズ群 始面 焦点距離
前群 1 1869.98022
後群 9 43.86208
【0129】
この第2実施例に係る光学系OS2において、第1面、第2面及び第16面の各レンズ面は非球面形状に形成されている。次の表5に、非球面データ、すなわち円錐定数κ及び各非球面定数A4〜A10の値を示す。
【0130】
(表5)
κ A4 A6 A8 A10
第 1面 -1.3412 2.99857E-06 -8.24891E-10 2.35245E-13 -4.91290E-16
第 2面 -0.3444E+04 -8.68033E-08 4.62357E-11 -2.08722E-13 -2.01437E-17
第16面 -8.6128 1.92924E-06 2.40259E-09 -6.72709E-12 1.77887E-14
【0131】
次の表6に、この第2実施例に係る光学系OS2に対する各条件式対応値を示す。
【0132】
(表6)
(1)fR/|fF|= 0.02346
(2)(−fFN1)/f0=0.9251
(3)(−fFN2)/f0=5.5192
(4)(rp2−rp1)/(rp2+rp1)=-0.1461
(5)nRNP−nRNN=0.08775
(6)nRPP−nRPN=0.1975
(7)fRP/f0=2.8784
(8)fRP2/f0=1.0515
【0133】
このように、第2実施例に係る光学系OS2は、上記条件式(1)〜(8)を全て満足している。
【0134】
図5に、この第2実施例に係る光学系OS2の無限遠合焦状態における球面収差、非点収差、歪曲収差、倍率色収差、及び、コマ収差の諸収差図を示す。この
図5に示す各収差図から明らかなように、この第2実施例に係る光学系OS2では、球面収差、サジタルコマ収差、像面湾曲、非点収差、メリジオナルコマ収差を含め諸収差が良好に補正されており、高い光学性能を有していることが分かる。
【0135】
[第3実施例]
図6は、第3実施例に係る光学系OS3のレンズ構成を示す断面図である。
【0136】
この光学系OS3は、物体側から順に、正の屈折力を有する前群GFと、開口絞りSと、正の屈折力を有する後群GRと、を有して構成されている。
【0137】
前群GFは、物体側から順に、物体側に凸面を向けた非球面正メニスカスレンズL11からなり、正の屈折力を有する第1レンズ成分LFP、両凸形状の正レンズL12と両凹形状の負レンズL13との接合による接合負メニスカスレンズからなり、負の屈折力を有し、物体側に凸面を向けた第2レンズ成分LFN1、及び、物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズL14からなり、負の屈折力を有する第3レンズ成分LFN2から構成されている。
【0138】
また、後群GRは、物体側から順に、両凹形状の負レンズL21と両凸形状の正レンズL22とが接合され、全体で正の屈折力を有し、物体側に凹面を向けた第1レンズ成分LRN、両凸形状の正レンズL23と両凹形状の負レンズL24とが接合され、全体で正の屈折力を有し、像側に凹面を向けた第2レンズ成分LRP1、及び、両凸レンズ形状の非球面正レンズL25からなり、正の屈折力を有する第3レンズ成分LRP2から構成されている。
【0139】
本第3実施例に係る光学系OS3は、後群GRの両凹形状の負レンズL24の像面側レンズ面(面番号14)と、後群GRの両凸レンズ形状の非球面正レンズL25の物体側レンズ面(面番号15)に、後述する反射防止膜が形成されている。
【0140】
なお、この光学系OS3の後群GRと像面との間には、オプティカル・ローパス・フィルター相当のダミーガラスFLが配置されている。
【0141】
以下の表7に、本第3実施例に係る光学系OS3の諸元の値を掲げる。なお、この表7に示す面番号1〜18は、
図6に示す番号1〜18に対応している。
【0142】
(表7)第3実施例
[全体諸元]
f = 58.0216
FNO= F1.2300
ω = 20.82°
Y = 21.6
TL = 118.89463
空気換算Bf = 38.01320
[レンズデータ]
m r d νd nd
(物面) ∞
* 1 39.7073 11.0000 49.53 1.744430
* 2 2526.2002 0.1000
3 102.0678 6.5000 82.57 1.497820
4 -84.0848 1.5000 52.20 1.517420
5 21.4694 11.0000
6 -62.0246 2.0000 31.16 1.688930
7 -97.3881 3.0000
8 0.0000 10.0000 開口絞りS
9 -26.3978 1.7000 29.57 1.717360
10 72.7424 12.0000 46.59 1.816000
11 -37.7187 0.1000
12 45.2189 10.0000 49.62 1.772500
13 -117.8426 1.3000 41.51 1.575010
14 33.4623 3.0000
15 56.4087 7.0000 49.53 1.744430
*16 -132.4054 36.0000
17 0.0000 2.0000 63.88 1.516800
18 0.0000 0.6946
(像面) ∞
[レンズ群焦点距離]
レンズ群 始面 焦点距離
前群 1 678.80939
後群 9 42.58204
【0143】
この第3実施例に係る光学系OS3において、第1面、第2面及び第16面の各レンズ面は非球面形状に形成されている。次の表8に、非球面データ、すなわち円錐定数κ及び各非球面定数A4〜A10の値を示す。
【0144】
(表8)
κ A4 A6 A8 A10
第 1面 -0.8567 3.05299E-06 -6.59016E-10 6.97421E-13 -4.05702E-16
第 2面 0.5931E+04 6.03268E-08 7.20986E-11 -2.17040E-13 8.89735E-17
第16面 1.4374 1.57765E-06 -1.04169E-09 1.88087E-12 -4.58581E-16
【0145】
次の表9に、この第3実施例に係る光学系OS3に対する各条件式対応値を示す。
【0146】
(表9)
(1)fR/|fF|= 0.06273
(2)(−fFN1)/f0=0.9153
(3)(−fFN2)/f0=4.3742
(4)(rp2−rp1)/(rp2+rp1)=-0.1494
(5)nRNP−nRNN=0.09864
(6)nRPP−nRPN=0.1975
(7)fRP/f0=5.1695
(8)fRP2/f0=0.9306
【0147】
このように、第3実施例に係る光学系OS3は、上記条件式(1)〜(8)を全て満足している。
【0148】
図7に、この第3実施例に係る光学系OS3の無限遠合焦状態における球面収差、非点収差、歪曲収差、倍率色収差、及び、コマ収差の諸収差図を示す。この
図7に示す各収差図から明らかなように、この第3実施例に係る光学系OS3では、球面収差、サジタルコマ収差、像面湾曲、非点収差、メリジオナルコマ収差を含め諸収差が良好に補正されており、高い光学性能を有していることが分かる。
【0149】
ここで、本願の光学系OSに用いられる反射防止膜(多層広帯域反射防止膜とも言う)について説明する。
図10は、反射防止膜の膜構成の一例を示す図である。この反射防止膜101は7層からなり、レンズ等の光学部材102の光学面に形成される。第1層101aは真空蒸着法で蒸着された酸化アルミニウムで形成されている。また、この第1層101aの上に更に真空蒸着法で蒸着された酸化チタンと酸化ジルコニウムの混合物からなる第2層101bが形成される。さらに、この第2層101bの上に真空蒸着法で蒸着された酸化アルミニウムからなる第3層101cが形成され、この第3層101cの上に真空蒸着法で蒸着された酸化チタンと酸化ジルコニウムの混合物からなる第4層101dが形成される。またさらに、この第4層101dの上に真空蒸着法で蒸着された酸化アルミニウムからなる第5層101eが形成され、この第5層101eの上に真空蒸着法で蒸着された酸化チタンと酸化ジルコニウムの混合物からなる第6層101fが形成される。
【0150】
そして、このようにして形成された第6層101fの上に、ウェットプロセスによりフッ化マグネシウムとシリカの混合物からなる第7層101gが形成されて本実施形態の反射防止膜101が形成される。第7層101gの形成には、ウェットプロセスの一種であるゾル−ゲル法を用いている。ゾル−ゲル法とは、原料を混合することにより得られたゾルを、加水分解・重縮合反応などにより流動性のないゲルとし、このゲルを加熱・分解して生成物を得る方法であり、光学薄膜の作製においては、光学部材の光学面上に光学薄膜材料ゾルを塗布し、乾燥固化によりゲル膜とすることで膜を生成することができる。なお、ウェットプロセスとして、ゾル−ゲル法に限らず、ゲル状態を経ないで固体膜を得る方法を用いるようにしてもよい。
【0151】
このように、この反射防止膜101の第1層101a〜第6層101fまではドライプロセスである電子ビーム蒸着により形成され、最上層である第7層101gは、フッ酸/酢酸マグネシウム法で調製したゾル液を用いるウェットプロセスにより以下の手順で形成されている。まず、予めレンズ成膜面(上述の光学部材102の光学面)に真空蒸着装置を用いて第1層101aとなる酸化アルミニウム層、第2層101bとなる酸化チタン−酸化ジルコニウム混合層、第3層101cとなる酸化アルミニウム層、第4層101dとなる酸化チタン−酸化ジルコニウム混合層、第5層101eとなる酸化アルミニウム層、第6層101fとなる酸化チタン−酸化ジルコニウム混合層を順に形成する。そして、蒸着装置より光学部材102を取り出した後、フッ酸/酢酸マグネシウム法により調製したゾル液にシリコンアルコキシドを加えたものをスピンコート法により塗布することにより、第7層101gとなるフッ化マグネシウムとシリカの混合物からなる層を形成する。フッ酸/酢酸マグネシウム法によって調製される際の反応式を以下の式(b)に示す。
【0152】
2HF+Mg(CH3COO)2→MgF2+2CH3COOH (b)
【0153】
この成膜に用いたゾル液は、原料混合後、オートクレーブで140℃、24時間高温加圧熟成処理を施した後、成膜に用いられる。この光学部材102は、第7層101gの成膜終了後、大気中で160℃、1時間加熱処理して完成される。このようなゾル−ゲル法を用いることにより、大きさが数nmから数十nmの粒子が空隙を残して堆積することにより第7層101gが形成される。
【0154】
このようにして形成された反射防止膜101を有する光学部材の光学的性能について
図11に示す分光特性を用いて説明する。
【0155】
本実施形態に係る反射防止膜を有する光学部材(レンズ)は、以下の表10に示す条件で形成されている。ここで表10は、基準波長をλとし、基板(光学部材)の屈折率が1.62、1.74及び1.85について反射防止膜101の各層101a(第1層)〜101g(第7層)の光学膜厚をそれぞれ求めたものである。なお、表10では、酸化アルミニウムをAl2O3、酸化チタンと酸化ジルコニウム混合物をZrO2+TiO2、フッ化マグネシウムとシリカの混合物をMgF2+SiO2とそれぞれ表している。
【0156】
(表10)
物質 屈折率 光学膜厚 光学膜厚 光学膜厚
媒質 空気 1.00
第7層 MgF2+SiO2 1.26 0.268λ 0.271λ 0.269λ
第6層 ZrO2+TiO2 2.12 0.057λ 0.054λ 0.059λ
第5層 Al2O3 1.65 0.171λ 0.178λ 0.162λ
第4層 ZrO2+TiO2 2.12 0.127λ 0.13λ 0.158λ
第3層 Al2O3 1.65 0.122λ 0.107λ 0.08λ
第2層 ZrO2+TiO2 2.12 0.059λ 0.075λ 0.105λ
第1層 Al2O3 1.65 0.257λ 0.03λ 0.03λ
基板の屈折率 1.62 1.74 1.85
【0157】
図11は、表10において基準波長λを550nmとして反射防止膜101の各層の光学膜厚を設計した光学部材に光線が垂直入射する時の分光特性を表している。
【0158】
図11から、基準波長λを550nmで設計した反射防止膜101を有する光学部材は、光線の波長が420nm〜720nmの全域で反射率を0.2%以下に抑えられることが判る。また、表10において基準波長λをd線(波長587.6nm)として各光学膜厚を設計した反射防止膜101を有する光学部材でも、その分光特性にはほとんど影響せず、
図11に示す基準波長λが550nmの場合とほぼ同等の分光特性を有する。
【0159】
次に、本反射防止膜の変形例について説明する。この反射防止膜は5層からなり、表10と同様、以下の表11で示される条件で基準波長λに対する各層の光学膜厚が設計される。本変形例では、第5層の形成に前述のゾル−ゲル法を用いている。
【0160】
(表11)
物質 屈折率 光学膜厚 光学膜厚
媒質 空気 1.00
第5層 MgF2+SiO2 1.26 0.275λ 0.269λ
第4層 ZrO2+TiO2 2.12 0.045λ 0.043λ
第3層 Al2O3 1.65 0.212λ 0.217λ
第2層 ZrO2+TiO2 2.12 0.077λ 0.066λ
第1層 Al2O3 1.65 0.288λ 0.290λ
基板の屈折率 1.46 1.52
【0161】
図12は、表11において、基板の屈折率が1.52及び基準波長λを550nmとして各光学膜厚を設計した反射防止膜を有する光学部材に光線が垂直入射する時の分光特性を示している。
図12から本変形例の反射防止膜は、光線の波長が420nm〜720nmの全域で反射率が0.2%以下に抑えられることがわかる。なお、表11において基準波長λをd線(波長587.6nm)として各光学膜厚を設計した反射防止膜を有する光学部材でも、その分光特性にはほとんど影響せず、
図12に示す分光特性とほぼ同等の特性を有する。
【0162】
図13は、
図12に示す分光特性を有する光学部材への光線の入射角が30度、45度、60度の場合の分光特性をそれぞれ示す。なお、
図13、
図12には表11に示す基板の屈折率が1.46の反射防止膜を有する光学部材の分光特性が図示されていないが、基板の屈折率が1.52とほぼ同等の分光特性を有していることは言うまでもない。
【0163】
また比較のため、
図14に、従来の真空蒸着法などのドライプロセスのみで成膜した反射防止膜の一例を示す。
図14は、表11と同じ基板の屈折率1.52に以下の表12で示される条件で構成される反射防止膜を設計した光学部材に光線が垂直入射する時の分光特性を示す。また、
図15は、
図14に示す分光特性を有する光学部材への光線の入射角が30度、45度、60度の場合の分光特性をそれぞれ示す。
【0164】
(表12)
物質 屈折率 光学膜厚
媒質 空気 1.00
第7層 MgF2 1.39 0.243λ
第6層 ZrO2+TiO2 2.12 0.119λ
第5層 Al2O3 1.65 0.057λ
第4層 ZrO2+TiO2 2.12 0.220λ
第3層 Al2O3 1.65 0.064λ
第2層 ZrO2+TiO2 2.12 0.057λ
第1層 Al2O3 1.65 0.193λ
基板の屈折率 1.52
【0165】
図11〜
図13で示される本実施形態に係る反射防止膜を有する光学部材の分光特性を、
図14および
図15で示される従来例の分光特性と比較すると、本実施形態に係る反射防止膜はいずれの入射角においてもより低い反射率を有し、しかもより広い帯域で低い反射率を有することが良くわかる。
【0166】
なお、本反射防止膜は、平行平面の光学面に設けて光学素子として利用することも可能であるし、曲面状に形成されたレンズの光学面に設けて利用することも可能である。
【0167】
次に、本願の第1実施例から第3実施例に、上記表10および表11に示す反射防止膜を適用した例について説明する。
【0168】
本第1実施例の光学系において、前群GFの両凹形状の負レンズL13の屈折率は、
表1に示すように、nd=1.531720であり、前群GFの負メニスカスレンズL14の屈折率は、nd=1.487490であるため、両凹形状の負レンズL13における像面側のレンズ面に基板の屈折率が1.52に対応する反射防止膜101(表11参照)を用い、負メニスカスレンズL14における物体側のレンズ面に、基板の屈折率が1.46に対応する反射防止膜(表11参照)を用いることで各レンズ面からの反射光を少なくでき、ゴーストやフレアを低減することができる。
【0169】
本第2実施例の光学系において、前群GFの負メニスカスレンズL14の屈折率は、表4に示すように、nd=1.517420であり、後群GRの両凹形状の負レンズL21の屈折率は、nd=1.728250であるため、負メニスカスレンズL14における像面側のレンズ面に基板の屈折率が1.52に対応する反射防止膜101(表11参照)を用い、両凹形状の負レンズL21における物体側のレンズ面に、基板の屈折率が1.74に対応する反射防止膜(表10参照)を用いることで各レンズ面からの反射光を少なくでき、ゴーストやフレアを低減することができる。
【0170】
本第3実施例の光学系において、後群GRの両凹形状の負レンズL24の屈折率は、表7に示すように、nd=1.575010であり、後群GRの両凸レンズ形状の非球面正レンズL25の屈折率は、nd=1.744430であるため、両凹形状の負レンズL24における像面側のレンズ面に基板の屈折率が1.52に対応する反射防止膜101(表11参照)を用い、両凸レンズ形状の非球面正レンズL25における物体側のレンズ面に、基板の屈折率が1.74に対応する反射防止膜(表10参照)を用いることで各レンズ面からの反射光を少なくでき、ゴーストやフレアを低減することができる。
【0171】
以上の各実施例によれば、2ω=41.6°程度の包括角を有し、さらに大口径F1.2の口径を有し、ゴーストやフレアをより低減させ、高性能で球面収差、サジタルコマ収差、像面湾曲、メリジオナルコマ収差が良好に補正された光学系OSが実現できる。
【0172】
なお、以上の各実施例に示す光学系OS1〜OS3を、上述したカメラ1に搭載することにより、上述した効果を奏することは言うまでもない。また、上記各実施例は本発明の一具体例を示しているものであり、本発明はこれらに限定されるものではない。