(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記基板を保持する基板ホルダと、前記基板ホルダに保持された前記基板を囲むように設けられ、撥液性の領域を含む平坦面と、を有する基板ステージをさらに備える請求項1〜10のいずれか一項記載の露光装置。
前記基板を保持する基板ホルダと、前記基板ホルダに保持された前記基板を囲むように設けられ、前記基板ホルダに保持された前記基板の表面とほぼ面一である平坦面と、を有する基板ステージをさらに備える請求項1〜10のいずれか一項記載の露光装置。
投影光学系の像面側に液浸領域を形成するとともに、基板の表面の一部を覆う前記液浸領域の液体を介して前記基板に露光光を照射する露光装置で用いられるステージ制御方法であって、
前記液浸領域が形成されている状態で、直線距離が所定距離よりも長い第1位置から第2位置へ前記ステージを移動させるときに、液体流出が起きないように、前記所定距離よりも短い直線距離で前記ステージの移動方向を変更するステージ制御方法。
投影光学系の像面側に液浸領域を形成するとともに、基板の表面の一部を覆う前記液浸領域の液体を介して前記基板に露光光を照射する露光装置で用いられるステージ制御方法であって、
前記液浸領域が形成されている状態で、直線距離が所定距離よりも長い第1位置から第2位置へ前記ステージを移動させるときに、前記液体中に気体成分が形成されないように、前記所定距離よりも短い直線距離で前記ステージの移動方向を変更するステージ制御方法。
投影光学系の像面側に液浸領域を形成するとともに、基板の表面の一部を覆う前記液浸領域の液体を介して前記基板に露光光を照射する露光装置で用いられるステージ制御方法であって、
前記液浸領域が形成されている状態で、直線距離が所定距離よりも長い第1位置から第2位置へ前記ステージを移動させるときに、液体流出が起きないように、前記ステージの移動速度を制限するステージ制御方法。
投影光学系の像面側に液浸領域を形成するとともに、基板の表面の一部を覆う前記液浸領域の液体を介して前記基板に露光光を照射する露光装置で用いられるステージ制御方法であって、
前記液浸領域が形成されている状態で、直線距離が所定距離よりも長い第1位置から第2位置へ前記ステージを移動させるときに、前記液体中に気体成分が形成されないように、前記ステージの移動速度を制限するステージ制御方法。
前記露光装置は、前記基板の表面が対向するように配置された液体回収口を有し、前記液浸領域を形成するための流路形成部材を備える請求項18〜21のいずれか一項記載のステージ制御方法。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の露光方法及び露光装置について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれらに限定されない。
図1は本発明の露光装置の一実施形態を示す概略構成図である。
【0038】
図1において、露光装置EXは、マスクMを支持するマスクステージMSTと、基板Pを支持する基板ステージPSTと、マスクステージMSTに支持されているマスクMを露光光ELで照明する照明光学系ILと、露光光ELで照明されたマスクMのパターン像を基板ステージPSTに支持されている基板Pに投影露光する投影光学系PLと、露光装置EX全体の動作を統括制御する制御装置CONTとを備えている。露光装置EX全体は、電力会社から供給される商用電源(第1駆動源)100Aからの電力によって駆動されるようになっている。
【0039】
本実施形態の露光装置EXは、露光波長を実質的に短くして解像度を向上するとともに焦点深度を実質的に広くするために液浸法を適用した液浸露光装置であって、基板P上に液体LQを供給する液体供給機構10と、基板P上の液体LQを回収する第1液体回収機構20及び第2液体回収機構40とを備えている。露光装置EXは、少なくともマスクMのパターン像を基板P上に転写している間、液体供給機構10から供給した液体LQにより投影光学系PLの投影領域AR1を含む基板P上の一部に、投影領域AR1よりも大きく且つ基板Pよりも小さい液浸領域AR2を局所的に形成する。具体的には、露光装置EXは、投影光学系PLの像面側終端部の光学素子2と、その像面側に配置された基板P表面との間に液体LQを満たす局所液浸方式を採用し、この投影光学系PLと基板Pとの間の液体LQ及び投影光学系PLを介してマスクMを通過した露光光ELを基板Pに照射することによってマスクMのパターンを基板Pに投影露光する。
【0040】
また、後に詳述するように、露光装置EXは、液体供給機構10から供給された液体LQの圧力を調整する圧力調整機構90を備えている。圧力調整機構90は、液体供給機構10から供給された液体LQに更に液体LQを追加可能な圧力調整用液体供給部91と、液体LQの一部を回収可能な圧力調整用液体回収部92とを備えている。圧力調整機構90の動作は制御装置CONTにより制御される。
【0041】
本実施形態では、露光装置EXとしてマスクMと基板Pとを走査方向における互いに異なる向き(逆方向)に同期移動しつつマスクMに形成されたパターンを基板Pに露光する走査型露光装置(所謂スキャニングステッパ)を使用する場合を例にして説明する。以下の説明において、投影光学系PLの光軸AXと一致する方向をZ軸方向、Z軸方向に垂直な平面内でマスクMと基板Pとの同期移動方向(走査方向)をX軸方向、Z軸方向及びX軸方向に垂直な方向(非走査方向)をY軸方向とする。また、X軸、Y軸、及びZ軸まわりの回転(傾斜)方向をそれぞれ、θX、θY、及びθZ方向とする。
【0042】
照明光学系ILは、マスクステージMSTに支持されているマスクMを露光光ELで照明するものであり、露光用光源、露光用光源から射出された光束の照度を均一化するオプティカルインテグレータ、オプティカルインテグレータからの露光光ELを集光するコンデンサレンズ、リレーレンズ系、露光光ELによるマスクM上の照明領域をスリット状に設定する可変視野絞り等を有している。マスクM上の所定の照明領域は照明光学系ILにより均一な照度分布の露光光ELで照明される。照明光学系ILから射出される露光光ELとしては、例えば水銀ランプから射出される輝線(g線、h線、i線)及びKrFエキシマレーザ光(波長248nm)等の遠紫外光(DUV光)や、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)及びF
2レーザ光(波長157nm)等の真空紫外光(VUV光)などが用いられる。本実施形態においてはArFエキシマレーザ光が用いられる。
【0043】
本実施形態において、液体LQには純水が用いられる。純水はArFエキシマレーザ光のみならず、例えば水銀ランプから射出される輝線(g線、h線、i線)及びKrFエキシマレーザ光(波長248nm)等の遠紫外光(DUV光)も透過可能である。
【0044】
マスクステージMSTは、マスクMを保持して移動可能であって、例えばマスクMを真空吸着(又は静電吸着)により固定している。マスクステージMSTは、リニアモータ等を含むマスクステージ駆動装置MSTDにより、投影光学系PLの光軸AXに垂直な平面内、すなわちXY平面内で2次元移動可能及びθZ方向に微少回転可能である。そして、マスクステージMSTは、X軸方向に指定された走査速度で移動可能となっており、マスクMの全面が少なくとも投影光学系PLの光軸AXを横切ることができるだけのX軸方向の移動ストロークを有している。
【0045】
マスクステージMST上には移動鏡31が設けられている。また、移動鏡31に対向する位置にはレーザ干渉計32が設けられている。マスクステージMST上のマスクMの2次元方向の位置、及びθZ方向の回転角(場合によってはθX、θY方向の回転角も含む)はレーザ干渉計32によりリアルタイムで計測され、計測結果は制御装置CONTに出力される。制御装置CONTは、レーザ干渉計32の計測結果に基づいてマスクステージ駆動装置MSTDを駆動することでマスクステージMSTに支持されているマスクMの位置を制御する。
【0046】
投影光学系PLは、マスクMのパターンを所定の投影倍率βで基板Pに投影露光するものであって、基板P側の先端部に設けられた光学素子(レンズ)2を含む複数の光学素子で構成されており、これら光学素子2は鏡筒PKで支持されている。本実施形態において、投影光学系PLは、投影倍率βが例えば1/4あるいは1/5の縮小系である。なお、投影光学系PLは等倍系及び拡大系のいずれでもよい。
【0047】
本実施形態の投影光学系PLの先端部の光学素子2は鏡筒PKより露出しており、液浸領域AR2の液体LQが接触する。光学素子2は螢石で形成されている。螢石表面、あるいはMgF
2、Al
2O
3、SiO
2等を付着させた表面は水との親和性が高いので、光学素子2の液体接触面2Aのほぼ全面に液体LQを密着させることができる。すなわち、本実施形態においては光学素子2の液体接触面2Aとの親和性が高い液体(水)LQを供給するようにしているので、光学素子2の液体接触面2Aと液体LQとの密着性が高く、光学素子2と基板Pとの間の光路を液体LQで確実に満たすことができる。なお、光学素子2は、水との親和性が高い石英であってもよい。また、光学素子2の液体接触面2Aに親水化(親液化)処理を施して、液体LQとの親和性をより高めるようにしてもよい。
【0048】
基板ステージPSTは、基板Pを保持して移動可能であって、XYステージ51と、XYステージ51上に搭載されたZチルトステージ52とを含んで構成されている。XYステージ51は、ステージベースSBの上面の上方に不図示の非接触ベアリングである気体軸受(エアベアリング)を介して非接触支持されている。XYステージ51(基板ステージPST)はステージベースSBの上面に対して非接触支持された状態で、リニアモータ等を含む基板ステージ駆動装置PSTDにより、投影光学系PLの光軸AXに垂直な平面内、すなわちXY平面内で2次元移動可能及びθZ方向に微小回転可能である。このXYステージ51上にZチルトステージ52が搭載され、Zチルトステージ52上に不図示の基板ホルダを介して基板Pが例えば真空吸着等により保持されている。Zチルトステージ52は、Z軸方向、θX方向、及びθY方向にも移動可能に設けられている。基板ステージ駆動装置PSTDは制御装置CONTにより制御される。
【0049】
基板ステージPST(Zチルトステージ52)上には移動鏡33が設けられている。また、移動鏡33に対向する位置にはレーザ干渉計34が設けられている。基板ステージPST上の基板Pの2次元方向の位置、及び回転角はレーザ干渉計34によりリアルタイムで計測され、計測結果は制御装置CONTに出力される。制御装置CONTはレーザ干渉計34の計測結果に基づいてリニアモータ等を含む基板ステージ駆動装置PSTDを駆動することで基板ステージPSTに支持されている基板Pの位置決めを行う。
【0050】
また、露光装置EXは、基板ステージPSTに支持されている基板Pの表面の位置を検出する後述するフォーカス・レベリング検出系(80)を備えている。フォーカス・レベリング検出系の受光結果は制御装置CONTに出力される。制御装置CONTはフォーカス・レベリング検出系の検出結果に基づいて、基板P表面のZ軸方向の位置情報、及び基板PのθX及びθY方向の傾斜情報を検出することができる。Zチルトステージ52は、基板Pのフォーカス位置及び傾斜角を制御して基板Pの表面をオートフォーカス方式、及びオートレベリング方式で投影光学系PLの像面に合わせ込み、XYステージ51は基板PのX軸方向及びY軸方向における位置決めを行う。なお、ZチルトステージとXYステージとを一体的に設けてよいことは言うまでもない。
【0051】
基板ステージPSTの近傍には、基板P上のアライメントマークあるいは基板ステージPST(Zチルトステージ52)上に設けられた基準マーク(後述)を検出する基板アライメント系(不図示)が設けられている。また、マスクステージMSTの近傍には、マスクMと投影光学系PLとを介して基板ステージPST(Zチルトステージ52)上の基準マークを検出するマスクアライメント系360が設けられている。マスクアライメント系360は、所謂TTM(スルー・ザ・マスク)方式(あるいはTTR(スルー・ザ・レチクル)方式ともいう)のアライメント系を構成している。なお、基板アライメント系の構成としては、例えば特開平4−65603号公報に開示されているものを用いることができ、マスクアライメント系360の構成としては、例えば特開平7−176468号公報に開示されているものを用いることができる。
【0052】
また、基板ステージPST(Zチルトステージ52)上には、基板ステージPSTに保持された基板Pを囲むようにプレート部材56が設けられている。プレート部材56は環状部材であって、基板Pの外側に配置されている。プレート部材56は、基板ステージPSTに保持された基板Pの表面とほぼ同じ高さ(面一)の平坦面(平坦部)57を有している。平坦面57は、基板ステージPSTに保持された基板Pの外側の周囲に配置されている。
【0053】
プレート部材56は、例えばポリ四フッ化エチレン(テフロン(登録商標))などの撥液性を有する材料によって形成されている。そのため、平坦面57は撥液性を有する。なお、例えば所定の金属などでプレート部材56を形成し、その金属製のプレート部材56の少なくとも平坦面57に対して撥液処理を施すことで、平坦面57を撥液性にしてもよい。プレート部材56(平坦面57)の撥液処理としては、例えば、ポリ四フッ化エチレン等のフッ素系樹脂材料、アクリル系樹脂材料、シリコン系樹脂材料等の撥液性材料を塗布、あるいは前記撥液性材料からなる薄膜を貼付する。また、表面処理のための膜は、単層膜であってもよいし複数の層からなる膜であってもよい。撥液性にするための撥液性材料としては液体LQに対して非溶解性の材料が用いられる。また、撥液性材料の塗布領域としては、プレート部材56の表面全域に対して塗布してもよいし、例えば平坦面57など撥液性を必要とする一部の領域のみに対して塗布するようにしてもよい。
【0054】
基板Pの周囲に、基板P表面とほぼ面一の平坦面57を有するプレート部材56を設けたので、基板Pのエッジ領域Eを液浸露光するときにおいても、基板Pのエッジ部の外側には段差部がほぼ無いので、投影光学系PLの下に液体LQを保持し、投影光学系PLの像面側に液浸領域AR2を良好に形成することができる。また、平坦面57を撥液性にすることにより、液浸露光中における基板P外側(平坦面57外側)への液体LQの流出を抑え、また液浸露光後においても液体LQを円滑に回収できて、平坦面57上に液体LQが残留することを防止することができる。
【0055】
なお本実施形態においては、プレート部材56は、基板Pの周囲だけに形成されているが、基板ステージPST(Zチルトステージ52)上のほぼ全面に配置するようにしてもよい。この場合、移動鏡33の上面も、基板ステージPSTの上面とほぼ面一にしてもよい。また、投影光学系PLの像面側の光路空間に液体LQを良好に保持できるならば、基板ステージPST上面と基板ステージPSTに保持された基板Pの表面とにわずかな段差があってもよい。
【0056】
液体供給機構10は、所定の液体LQを投影光学系PLの像面側に供給するためのものであって、液体LQを送出可能な液体供給部11と、液体供給部11にその一端部を接続する供給管12(12A、12B)とを備えている。液体供給部11は、液体LQを収容するタンク、及び加圧ポンプ等を備えている。基板P上に液浸領域AR2を形成する際、液体供給機構10は液体LQを基板P上に供給する。なお、液体供給部11のタンク、加圧ポンプは、必ずしも露光装置EXが備えている必要はなく、露光装置EXが設置される工場などの設備を代用することもできる。
【0057】
第1液体回収機構20は、投影光学系PLの像面側の液体LQを回収するためのものであって、液体LQを回収可能な第1液体回収部21と、第1液体回収部21にその一端部を接続する回収管22(22A、22B)とを備えている。第1液体回収部21は例えば真空ポンプ等の真空系(吸引装置)、回収された液体LQと気体とを分離する気液分離器、及び回収した液体LQを収容するタンク等を備えている。なお真空系として、露光装置EXに真空ポンプを設けずに、露光装置EXが配置される工場の真空系を用いるようにしてもよい。基板P上に液浸領域AR2を形成するために、第1液体回収機構20は液体供給機構10より供給された基板P上の液体LQを所定量回収する。
【0058】
第2液体回収機構40は、投影光学系PLの像面側の液体LQを回収するためのものであって、液体LQを回収可能な第2液体回収部41と、第1液体回収部41にその一端部を接続する回収管42(42A、42B)とを備えている。第2液体回収部41は例えば真空ポンプ等の真空系(吸引装置)、回収された液体LQと気体とを分離する気液分離器、及び回収した液体LQを収容するタンク等を備えている。なお真空系として、露光装置EXに真空ポンプを設けずに、露光装置EXが配置される工場の真空系を用いるようにしてもよい。
【0059】
なお、基板P(基板ステージPST)上に局所的に液浸領域AR2を形成するための機構は、上述に限られず、例えば米国特許公開第2004/020782号公報や国際公開第2004/055803号公報に開示されている機構を採用することもできる。
【0060】
また、第2液体回収機構40は、第1液体回収機構20を含む露光装置EX全体の駆動源である商用電源100Aとは別の無停電電源(第2駆動源)100Bを有している。無停電電源100Bは、例えば商用電源100Aの停電時に、第2液体回収機構40の駆動部に対して電力(駆動力)を供給する。
【0061】
なお、第2液体回収機構40に電力を供給する電源100Bは、無停電電源であることが望ましいが、商用電源100Aと同一のものであってもよい。この場合、電力会社からの電力供給が停止されない限り、電源100A、100Bのいずれか一方に異常が生じても、他方の電源から供給される電力で駆動する液体回収機構を使って液浸領域AR2を形成する液体LQを回収することができる。
【0062】
Zチルトステージ52のうちプレート部材56の外側には、基板Pの外側に流出した液体LQを回収する第3液体回収機構60を構成する液体回収口61が設けられている。液体回収口61はプレート部材56を囲むように形成された環状の溝部であって、その内部にはスポンジ状部材や多孔質体等からなる液体吸収部材62が配置されている。液体吸収部材62は交換可能である。また、液体回収口61には基板ステージPST内部に形成された回収流路の一端部が接続され、その回収管の他端部は基板ステージPSTの外側に設けられた第3液体回収部(いずれも不図示)が接続されている。第3液体回収部は、第1、第2液体回収部同様、真空ポンプ等の真空系(吸引装置)、回収された液体LQと気体とを分離する気液分離器、及び回収した液体LQを収容するタンク等を備えている。なお、第3液体回収部の真空系、気液分離器、タンクなどは、必ずしも露光装置EXが備えている必要はなく、露光装置EXが設置される工場などの設備を代用することもできる。
【0063】
第3液体回収機構60を設けたことにより、仮に液体LQが基板P及びプレート部材56の外側に流出したとしても、その流出した液体LQを回収することができ、流出した液体LQの気化による基板Pの置かれている環境変動等の不都合の発生を防止することができる。なお、第3液体回収機構60(第3液体回収部)に真空系を設けずに、液体吸収部材62で回収した液体LQを自重により基板ステージPSTの外側に垂れ流す構成であってもよい。更に、真空系を含む第3液体回収部を設けずに、基板ステージPST上に液体吸収部材62のみを配置しておき、液体LQを吸収した液体吸収部材62を定期的に(例えば1ロット毎に)交換する構成としてもよい。この場合、基板ステージPSTは液体LQにより重量変動するが、液体吸収部材62で回収した液体LQの重量に応じてステージ制御パラメータを変更することで、ステージ位置決め精度を維持できる。
【0064】
投影光学系PLの終端部の光学素子2の近傍には流路形成部材70が配置されている。
流路形成部材70は、中央に開口部70B(光透過部)が形成された環状部材であり、開口部70Bには光学素子2が収容される。すなわち、流路形成部材70は、基板P(基板ステージPST)の上方において光学素子2の周りを囲むように設けられた環状部材である。流路形成部材70は、例えばアルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ジュラルミン、及びこれらを含む合金によって形成可能である。あるいは、流路形成部材70は、ガラス(石英)等の光透過性を有する透明部材(光学部材)によって構成されてもよい。
【0065】
流路形成部材70は、基板P(基板ステージPST)の上方に設けられ、その基板P表面に対向するように配置された液体供給口13(13A、13B)を備えている。本実施形態において、流路形成部材70は2つの液体供給口13A、13Bを有している。液体供給口13A、13Bは流路形成部材70の下面70Aに設けられている。
【0066】
また、流路形成部材70は、その内部に液体供給口13(13A、13B)に対応した供給流路14(14A、14B)を有している。供給流路14A、14Bの一端部は供給管12A、12Bを介して供給部11にそれぞれ接続され、他端部は液体供給口13A、13Bにそれぞれ接続されている。
【0067】
供給管12A、12Bの途中には、液体供給部11から送出され、液体供給口13A、13Bのそれぞれに対する単位時間あたりの液体供給量を制御するマスフローコントローラと呼ばれる流量制御器16A、16Bがそれぞれ設けられている。流量制御器16(16A、16B)による液体供給量の制御は制御装置CONTの指令信号の下で行われる。
【0068】
更に、流路形成部材70は、基板P(基板ステージPST)の上方に設けられ、その基板P表面に対向するように配置された液体回収口23を備えている。本実施形態において、流路形成部材70は2つの液体回収口23A、23Bを有している。液体回収口23A、23Bは流路形成部材70の下面70Aに設けられている。
【0069】
また、流路形成部材70は、その内部に液体回収口23(23A、23B)に対応した回収流路24(24A、24B)を有している。回収流路24A、24Bの一端部は回収管22A、22Bを介して第1液体回収部21にそれぞれ接続され、他端部は液体回収口23A、23Bにそれぞれ接続されている。
【0070】
更に、流路形成部材70は、基板P(基板ステージPST)の上方に設けられ、その基板P表面に対向するように配置された補助液体回収口43を備えている。本実施形態において、流路形成部材70は2つの補助液体回収口43A、43Bを有している。補助液体回収口43A、43Bは流路形成部材70の下面70Aに設けられている。
【0071】
また、流路形成部材70は、その内部に補助液体回収口43(43A、43B)に対応した回収流路44(44A、44B)を有している。回収流路44A、44Bの一端部は回収管42A、42Bを介して第2液体回収部41にそれぞれ接続され、他端部は補助液体回収口43A、43Bにそれぞれ接続されている。
【0072】
本実施形態において、流路形成部材70は、液体供給機構10、第1液体回収機構20、及び第2液体回収機構40それぞれの一部を構成している。そして、液体供給機構10を構成する液体供給口13A、13Bは、投影光学系PLの投影領域AR1を挟んだX軸方向両側のそれぞれの位置に設けられており、第1液体回収機構20を構成する液体回収口23A、23Bは、投影光学系PLの投影領域AR1に対して液体供給機構10の液体供給口13A、13Bの外側に設けられており、第2液体回収機構40を構成する補助液体回収口43A、43Bは、投影光学系PLの投影領域AR1に対して第1液体回収機構20の液体回収口23A、23Bの外側に設けられている。
【0073】
液体供給部11及び流量制御器16の動作は制御装置CONTにより制御される。基板P上に液体LQを供給する際、制御装置CONTは、液体供給部11より液体LQを送出し、供給管12A、12B、及び供給流路14A、14Bを介して、基板Pの上方に設けられている液体供給口13A、13Bより基板P上に液体LQを供給する。このとき、液体供給口13A、13Bは投影光学系PLの投影領域AR1の両側に配置されており、その液体供給口13A、13Bを介して、投影領域AR1の両側から液体LQを供給可能である。また、液体供給口13A、13Bのそれぞれから基板P上に供給される液体LQの単位時間あたりの量は、供給管12A、12Bのそれぞれに設けられた流量制御器16A、16Bにより個別に制御可能である。
【0074】
第1液体回収部21の液体回収動作は制御装置CONTにより制御される。制御装置CONTは、第1液体回収部21による単位時間あたりの液体回収量を制御可能である。基板Pの上方に設けられた液体回収口23A、23Bから回収された基板P上の液体LQは、流路形成部材70の回収流路24A、24B、及び回収管22A、22Bを介して第1液体回収部21に回収される。
【0075】
第2液体回収部41の液体回収動作は制御装置CONTにより制御される。制御装置CONTは、第2液体回収部41による単位時間あたりの液体回収量を制御可能である。基板Pの上方に設けられた補助液体回収口43A、43Bから回収された基板P上の液体LQは、流路形成部材70の回収流路44A、44B、及び回収管42A、42Bを介して第2液体回収部41に回収される。また、第2液体回収機構40は無停電電源100Bにより常時駆動している。例えば、商用電源100Aが停電した場合、第1液体回収機構20の液体回収動作は停止するが、第2液体回収機構40の第2液体回収部41は、無停電電源100Bより供給される電力で駆動される。この場合、第2液体回収部41を含む第2液体回収機構40の液体回収動作は、制御装置CONTに制御されず、例えば第2液体回収機構40に内蔵された別の制御装置からの指令信号に基づいて制御される。あるいは、商用電源100Aの停電時においては、無停電電源100Bは、第2液体回収機構40に加えて制御装置CONTにも電力を供給するようにしてもよい。この場合、その無停電電源100Bからの電力によって駆動される制御装置CONTが、第2液体回収機構40の液体回収動作を制御するようにしてもよい。
【0076】
なお、本実施形態において、供給管12A、12Bは1つの液体供給部11に接続されているが、供給管の数に対応した液体供給部11を複数(例えば2つ)設け、供給管12A、12Bのそれぞれを前記複数の液体供給部11のそれぞれに接続するようにしてもよい。
【0077】
また、回収管22A、22Bは、1つの液体回収部21に接続されているが、回収管の数に対応した第1液体回収部21を複数(例えば2つ)設け、回収管22A、22Bのそれぞれを前記複数の第1液体回収部21のそれぞれに接続するようにしてもよい。
【0078】
同様に、回収管42A、42Bは、1つの液体回収部41に接続されているが、回収管の数に対応した第2液体回収部41を複数(例えば2つ)設け、回収管42A、42Bのそれぞれを前記複数の第2液体回収部41のそれぞれに接続するようにしてもよい。
【0079】
投影光学系PLの光学素子2の液体接触面2A、及び流路形成部材70の下面(液体接触面)70Aは親液性(親水性)を有している。本実施形態においては、光学素子2及び流路形成部材70の液体接触面に対して親液処理が施されており、その親液処理によって光学素子2及び流路形成部材70の液体接触面が親液性となっている。換言すれば、基板ステージPSTに保持された基板Pの被露光面(表面)と対向する部材の表面のうち少なくとも液体接触面は親液性となっている。本実施形態における液体LQは極性の大きい水であるため、親液処理(親水処理)としては、例えばアルコールなど極性の大きい分子構造の物質で薄膜を形成することで、この光学素子2や流路形成部材70の液体接触面に親水性を付与する。すなわち、液体LQとして水を用いる場合にはOH基など極性の大きい分子構造を持ったものを前記液体接触面に設ける処理を行うのが望ましい。あるいは、MgF
2、Al
2O
3、SiO
2などを前記液体接触面に設けてもよい。
【0080】
なお、本実施形態においては、流路形成部材70の下面(基板P側を向く面)70Aはほぼ平坦面であるが、流路形成部材70の下面70Aのうち投影光学系PLに対して補助液体回収口43(43A、43B)より外側の領域に、XY平面に対して傾斜した面、具体的には投影領域AR1(液浸領域AR2)に対して外側に向かうにつれて基板Pの表面に対して離れるように(上に向かうように)傾斜する所定長さを有する傾斜面(トラップ面)を設けてもよい。こうすることにより、基板Pの移動に伴って投影光学系PLと基板Pとの間の液体LQが流路形成部材70の下面70Aの外側に流出しようとしても、トラップ面で捕捉されるため、液体LQの流出を防止することができる。ここで、トラップ面に親液処理を施して親液性にすることで、補助液体回収口43の外側に流出した液体LQはトラップ面で捕捉される。なお、基板Pの表面に塗布されている膜(フォトレジスト等の感光材膜や、反射防止膜あるいは液体から感光材を保護する膜等)が撥液性(撥水性)の場合には、補助液体回収口43の外側に流出した液体LQをより確実にトラップ面で捕捉できる。
【0081】
図2は基板ステージPST(Zチルトステージ52)を上方から見た平面図である。
図2において、平面視矩形状のZチルトステージ52の互いに垂直な2つの縁部に移動鏡33が設けられている。また、Zチルトステージ52のほぼ中央部に、基板Pを保持するZチルトステージ52の一部を構成する基板ホルダPHが配置されている。基板Pの周囲には、基板Pの表面とほぼ同じ高さ(面一)の平坦面57を有するプレート部材56が設けられている。プレート部材56は環状部材であって、基板ホルダPHに保持された基板Pを囲むように配置されている。
【0082】
また、Zチルトステージ52(基板ステージPST)上のうち、プレート部材56の外側の所定位置には、基準部材300が配置されている。基準部材300には、前記基板アライメント系により検出される基準マークPFMと、マスクアライメント系360により検出される基準マークMFMとが所定の位置関係で設けられている。また、基準部材300の上面301はほぼ平坦面となっており、フォーカス・レベリング検出系の基準面として使ってもよい。更に、基準部材300の上面301は基板P表面、プレート部材56の表面(平坦面)57とほぼ同じ高さ(面一)に設けられている。
【0083】
また、Zチルトステージ52(基板ステージPST)上のうち、プレート部材56の外側の所定位置には、光学センサとして例えば特開昭57−117238号公報に開示されているような照度ムラセンサ400が配置されている。照度ムラセンサ400は平面視矩形状の上板402を備えている。上板402の上面401はほぼ平坦面となっており、基板P表面、プレート部材56の表面(平坦面)57とほぼ同じ高さ(面一)に設けられている。上板402の上面401には、光を通過可能なピンホール部403が設けられている。上面401のうち、ピンホール部403以外はクロムなどの遮光性材料で覆われている。
【0084】
また、Zチルトステージ52(基板ステージPST)上のうち、プレート部材56の外側の所定位置には、光学センサとして例えば特開2002−14005号公報に開示されているような空間像計測センサ500が設けられている。空間像計測センサ500は平面視矩形状の上板502を備えている。上板502の上面501はほぼ平坦面となっており、フォーカス・レベリング検出系の基準面として使ってもよい。そして、上板502の上面501は基板P表面、プレート部材56の表面(平坦面)57とほぼ同じ高さ(面一)に設けられている。上板502の上面501には、光を通過可能なスリット部503が設けられている。上面501のうち、スリット部503以外はクロムなどの遮光性材料で覆われている。
【0085】
また、不図示ではあるが、Zチルトステージ52(基板ステージPST)上には、例えば特開平11−16816号公報に開示されているような照射量センサ(照度センサ)も設けられており、その照射量センサの上板の上面は基板P表面やプレート部材56の表面(平坦面)57とほぼ同じ高さ(面一)に設けられている。
【0086】
本実施形態における露光装置EXは、マスクMと基板PとをX軸方向(走査方向)に移動しながらマスクMのパターン像を基板Pに投影露光するものであって、走査露光時には、液浸領域AR2の液体LQ及び投影光学系PLを介してマスクMの一部のパターン像が投影領域AR1内に投影され、マスクMが−X方向(又は+X方向)に速度Vで移動するのに同期して、基板Pが投影領域AR1に対して+X方向(又は−X方向)に速度β・V(βは投影倍率)で移動する。そして、
図2に示すように、基板P上には複数のショット領域S1〜S12が設定されており、1つのショット領域への露光終了後に、基板Pのステッピング移動によって次のショット領域が走査開始位置に移動し、以下、ステップ・アンド・スキャン方式で基板Pを移動しながら各ショット領域に対する走査露光処理が順次行われる。なお本実施形態では、制御装置CONTは、投影光学系PLの光軸AXが
図2の破線矢印58に沿って進むようにレーザ干渉計34の出力をモニタしつつXYステージ51を移動するものとする。
【0087】
図2に示すように、投影光学系PLの投影領域AR1は、Y軸方向を長手方向とし、X軸方向を短手方向とした平面視矩形状に設定されている。なお、プレート部材56のうち円環状に形成されている平坦面57の幅は少なくとも投影領域AR1より大きく形成されていることが好ましい。これにより、基板Pのエッジ領域Eを露光するときにおいて、露光光ELはプレート部材56の外側に照射されない。更には、平坦面57の幅は、投影光学系PLの像面側に形成される液浸領域AR2よりも大きく形成されていることが好ましい。これにより、基板Pのエッジ領域Eを液浸露光するときに、液浸領域AR2はプレート部材56の平坦面57上に形成され、プレート部材56の外側には形成されないので、液浸領域AR2の液体LQがプレート部材56の外側に流出する等の不都合の発生を防止することができる。
【0088】
図3は流路形成部材70を示す概略斜視図である。
図3に示すように、流路形成部材70は投影光学系PLの終端部の光学素子2の周りを囲むように設けられた環状部材であって、第1部材71と、第1部材71の上部に配置される第2部材72と、第2部材72の上部に配置される第3部材73と、第3部材73の上部に配置される第4部材74とを備えている。流路形成部材70を構成する第1〜第4部材71〜74のそれぞれは板状部材であって、その中央部に投影光学系PL(光学素子2)を配置可能な穴部71A〜74Aを有している。
【0089】
第1〜第4部材71〜74のそれぞれには、溝部や貫通穴が適宜形成されており、これら溝部や貫通穴を接続することで、第1〜第4部材71〜74からなる流路形成部材70の内部に、供給流路14及び回収流路24、44が形成される。
【0090】
露光装置EXは、基板ステージPSTに保持されている基板P表面の面位置情報を検出するフォーカス・レベリング検出系80を備えている。フォーカス・レベリング検出系80は、所謂斜入射方式のフォーカス・レベリング検出系であって、液浸領域AR2の液体LQを介して基板Pに斜め方向から検出光Laを照射する投光部81と、基板Pで反射した検出光Laの反射光を受光する受光部82とを備えている。なお、フォーカス・レベリング検出系80の構成としては、例えば特開平8−37149号公報に開示されているものを用いることができる。
【0091】
流路形成部材70のうち、−Y側及び+Y側の側面のそれぞれには、中央部側(投影光学系PL側)に向かって凹む凹部75、76がそれぞれ形成されている。一方の凹部75にはフォーカス・レベリング検出系80の投光部81から射出された検出光Laを透過可能な第1光学部材83が設けられ、他方の凹部76には基板P上で反射した検出光Laを透過可能な第2光学部材84が設けられている。第1光学部材83及び第2光学部材84はフォーカス・レベリング検出系80の光学系の一部を構成しているとともに、流路形成部材70の一部を構成している。換言すれば、本実施形態においては、流路形成部材70の一部がフォーカス・レベリング検出系80の一部を兼ねている。
【0092】
そして、第1光学部材83及び第2光学部材84を含む流路形成部材70は、投影光学系PL先端の光学素子2とは分離した状態で支持されている。
【0093】
なお、液体供給機構10、第1液体回収機構20、及び第2液体回収機構40の流路の一部を形成する流路形成部材70から、第1光学部材83及び第2光学部材84を分離して、流路形成部材70と第1、第2光学部材83,84とを分離して支持してもよい。
【0094】
投光部81及び受光部82は投影光学系PLの投影領域AR1を挟んでその両側にそれぞれ設けられている。
図3に示す例では、投光部81及び受光部82は投影領域AR1を挟んで±Y側のそれぞれにおいて投影領域AR1に対して離れた位置に設けられている。
フォーカス・レベリング検出系80の投光部81は、基板P表面に投影光学系PLの光軸AXに対して所定の入射角θで検出光Laを照射する。投光部81から射出された検出光Laは、第1光学部材83を通過し、基板P上の液体LQを介して基板P上に斜め方向から入射角θで照射される。基板P上で反射した検出光Laの反射光は、第2光学部材84を通過した後、受光部82に受光される。ここで、フォーカス・レベリング検出系80の投光部81は、基板P上に複数の検出光Laを照射する。これにより、フォーカス・レベリング検出系80は、基板P上における例えばマトリクス状の複数の各点(各位置)での各フォーカス位置を求めることができ、求めた複数の各点でのフォーカス位置に基づいて、基板P表面のZ軸方向の位置情報、及び基板PのθX及びθY方向の傾斜情報を検出することができる。
【0095】
制御装置CONTは、フォーカス・レベリング検出系80の検出結果に基づいて、基板ステージ駆動装置PSTDを介して基板ステージPSTのZチルトステージ52を駆動することにより、Zチルトステージ52に保持されている基板PのZ軸方向における位置(フォーカス位置)、及びθX、θY方向における位置を制御する。すなわち、Zチルトステージ52は、フォーカス・レベリング検出系80の検出結果に基づく制御装置CONTからの指令に基づいて動作し、基板Pのフォーカス位置(Z位置)及び傾斜角を制御して、基板Pの表面(被露光面)をオートフォーカス方式、及びオートレベリング方式で投影光学系PL及び液体LQを介して形成される像面に対して最適な状態に合わせ込む。
【0096】
また、
図3に示すように、露光装置EXは、液体供給機構10から供給された液体LQの圧力を調整する圧力調整機構90を備えている。圧力調整機構90は、液体供給機構10から供給された液体LQに更に液体LQを追加可能な圧力調整用液体供給部91と、液体LQの一部を回収可能な圧力調整用液体回収部92とを備えている。
【0097】
圧力調整用液体供給部91には供給管93(93A、93B)の一端部が接続されており、供給管93(93A、93B)の他端部は流路形成部材70の内部に形成されている供給流路94(94A、94B)に接続されている。圧力調整用液体供給部91は液体LQを収容するタンク、及び加圧ポンプ等を備えている。
【0098】
供給管93Aの他端部は流路形成部材70の凹部75に配置されている。流路形成部材70の凹部75における側面に供給流路94Aの一端部が形成されており、この供給流路94Aの一端部に供給管93Aの他端部が接続されている。また、供給管93Bの他端部は流路形成部材70の凹部76に配置されている。流路形成部材70の凹部76における側面に供給流路94Bの一端部が形成されており、この供給流路94Bの一端部に供給管93Bの他端部が接続されている。
【0099】
圧力調整用液体回収部92には、回収管95(95A、95B)の一端部が接続されており、回収管95(95A、95B)の他端部は流路形成部材70の内部に形成されている回収流路96(96A、96B)の一端部に接続されている。圧力調整用液体回収部92は、例えば真空ポンプ等の真空系(吸引装置)、回収された液体LQと気体とを分離する気液分離器、及び回収した液体LQを収容するタンク等を備えている。なお真空系として、露光装置EXに真空ポンプを設けずに、露光装置EXが配置される工場の真空系を用いるようにしてもよい。
【0100】
回収管95Aの他端部は流路形成部材70の凹部75に配置されている。流路形成部材70の凹部75における側面に回収流路96Aの一端部が形成されており、この回収流路96Aの一端部に回収管95Aの他端部が接続されている。また、回収管95Bの他端部は流路形成部材70の凹部76に配置されている。流路形成部材70の凹部76における側面に回収流路96Bの一端部が形成されており、この回収流路96Bの一端部に回収管95Bの他端部が接続されている。
【0101】
図4は流路形成部材70を下面70A側から見た斜視図である。
図4において、投影光学系PLの投影領域AR1はY軸方向(非走査方向)を長手方向とする矩形状に設定されている。液体LQが満たされた液浸領域AR2は、投影領域AR1を含むように実質的に2つの液体回収口23A、23Bで囲まれた領域内であって且つ基板P上の一部に局所的に形成される。なお、液浸領域AR2は少なくとも投影領域AR1を覆っていればよく、必ずしも2つの液体回収口23A、23Bで囲まれた領域全体が液浸領域にならなくてもよい。
【0102】
液体供給口13A、13Bは、基板Pに対向する流路形成部材70の下面70Aにおいて、投影領域AR1に対して走査方向(X軸方向)両側のそれぞれに設けられている。具体的には、液体供給口13Aは、流路形成部材70の下面70Aのうち、投影領域AR1に対して走査方向一方側(−X側)に設けられ、液体供給口13Bは他方側(+X側)に設けられている。つまり液体供給口13A、13Bは投影領域AR1の近くに設けられ、走査方向(X軸方向)に関して投影領域AR1を挟むようにその両側に設けられている。
液体供給口13A、13Bのそれぞれは、Y軸方向に延びる平面視略コ字状(円弧状)のスリット状に形成されている。流路形成部材70の下面70AのうちY軸方向両側には第1、第2光学部材83、84が配置されており、液体供給口13A、13Bは、流路形成部材70の下面70Aのうち、第1、第2光学部材83、84が配置されている以外の領域に亘って形成されている。そして、液体供給口13A、13BのY軸方向における長さは少なくとも投影領域AR1のY軸方向における長さより長くなっている。液体供給口13A、13Bは、少なくとも投影領域AR1を囲むように設けられている。液体供給機構10は、液体供給口13A、13Bを介して投影領域AR1の両側で液体LQを同時に供給可能である。
【0103】
液体回収口23A、23Bは、基板Pに対向する流路形成部材70の下面70Aにおいて、投影領域AR1に対して液体供給機構10の液体供給口13A、13Bの外側に設けられており、投影領域AR1に対して走査方向(X軸方向)両側のそれぞれに設けられている。具体的には、液体回収口23Aは、流路形成部材70の下面70Aのうち、投影領域AR1に対して走査方向一方側(−X側)に設けられ、液体回収口23Bは他方側(+X側)に設けられている。液体回収口23A、23Bのそれぞれは、Y軸方向に延びる平面視略コ字状(円弧状)のスリット状に形成されている。液体回収口23A、23Bは、流路形成部材70の下面70Aのうち、第1、第2光学部材83、84が配置されている以外の領域に亘って形成されている。そして、液体回収口23A、23Bは、液体供給口13A、13Bを囲むように設けられている。
【0104】
補助液体回収口43A、43Bは、基板Pに対向する流路形成部材70の下面70Aにおいて、投影領域AR1に対して第1液体回収機構20の液体回収口23A、23Bの外側に設けられており、投影領域AR1に対して走査方向(X軸方向)両側のそれぞれに設けられている。具体的には、補助液体回収口43Aは、流路形成部材70の下面70Aのうち、投影領域AR1に対して走査方向一方側(−X側)に設けられ、補助液体回収口43Bは他方側(+X側)に設けられている。補助液体回収口43A、43Bのそれぞれは、Y軸方向に延びる平面視略コ字状(円弧状)のスリット状に形成されている。補助液体回収口43A、43Bは、流路形成部材70の下面70Aのうち、第1、第2光学部材83、84が配置されている以外の領域に亘って形成されている。そして、補助液体回収口43A、43Bは、液体供給口13A、13B及び液体回収口23A、23Bを囲むように設けられている。
【0105】
なお、液体供給口13は投影領域AR1のX軸方向両側のそれぞれに1つずつ設けられている構成であるが、複数に分割されていてもよく、その数は任意である。同様に、液体回収口23及び補助液体回収口43のそれぞれも複数に分割されていてもよい。
【0106】
また、投影領域AR1の両側に設けられた液体供給口13のそれぞれは互いにほぼ同じ大きさ(長さ)に形成されているが、互いに異なる大きさであってもよい。同様に、投影領域AR1の両側に設けられた液体回収口23のそれぞれが互いに異なる大きさであってもよいし、投影領域AR1の両側に設けられた補助液体回収口43のそれぞれが互いに異なる大きさであってもよい。
【0107】
また、供給口13のスリット幅と回収口23、43のスリット幅とは同じであってもよいし、回収口23、43のスリット幅を、供給口13のスリット幅より大きくしてもよいし、逆に回収口23、43のスリット幅を、供給口13のスリット幅より小さくしてもよい。
【0108】
また、流路形成部材70(第1部材71)の下面70AにはY軸方向を長手方向とする凹部78が形成されている。凹部78によって形成されたYZ平面にほぼ平行な内壁面78Aには、液体LQの圧力を検出する圧力センサ120が設けられている。圧力センサ120は、投影光学系PLの光学素子2の下面2A及び流路形成部材70の下面70Aと基板Pとの間に形成された液浸領域AR2の液体LQの圧力を検出可能であって、その検出結果を制御装置CONTに出力する。なお、圧力センサ120の設置位置としては、液浸領域AR2の液体LQの流れに影響を及ぼさず、液浸領域AR2の液体LQに接触可能な位置(液体LQの圧力検出可能な位置)であればよい。そして、流路形成部材70の下面70Aのうち、凹部78の長手方向ほぼ中央部に、投影光学系PLの先端部の光学素子2が露出している。
【0109】
流路形成部材70の下面70Aにおいて、凹部78内に形成されたXY平面と平行な平坦部78Bには、投影光学系PLの投影領域AR1に対して非走査方向(Y軸方向)両側のそれぞれに、圧力調整用液体回収口(圧力調整用回収口)98A、98Bが設けられている。圧力調整用回収口98A、98Bは、流路形成部材70の内部に形成されている回収流路96A、96Bの他端部のそれぞれに接続されている。そして、圧力調整用回収口98A、98Bのそれぞれは、回収流路96A、96B、及び回収管95A、95Bを介して圧力調整用液体回収部92に接続されている。圧力調整用液体回収部92が駆動されることにより、圧力調整用回収口98A、98Bを介して液体LQを回収することができる。
【0110】
圧力調整用回収口98Aは、流路形成部材70の下面70Aに形成された凹部78のうち、投影領域AR1に対して非走査方向一方側(−Y側)に設けられ、圧力調整用回収口98Bは、他方側(+Y側)に設けられている。そして、圧力調整用回収口98A、98Bは投影光学系PLによる投影領域AR1の近くに設けられ、投影光学系PLの投影領域AR1に対して液体供給機構10の液体供給口13A、13Bよりも近くに配置されている。
【0111】
また、圧力調整用液体回収部92は真空系を有しており、投影光学系PLの像面側の光学素子2の近傍に配置されている圧力調整用回収口98A、98Bを介して、投影光学系PLの像面側の気体を排出する(負圧化する)ことができる。すなわち、圧力調整用液体回収部92及び圧力調整用回収口98A、98Bを含む圧力調整機構90は、投影光学系PLの像面側の気体を排出(排気)する排出(排気)手段としての機能を有している。なお、圧力調整機構90とは別に、排気機構を設けてもよい。
【0112】
流路形成部材70の下面70Aにおいて、凹部78内に形成された平坦部78Bには、投影光学系PLの投影領域AR1に対して非走査方向(Y軸方向)両側のそれぞれに、圧力調整用液体供給口(圧力調整用供給口)97A、97Bが設けられている。圧力調整用供給口97A、97Bは、流路形成部材70の内部に形成されている供給流路94A、94Bの他端部のそれぞれに接続されている。そして、圧力調整用供給口97A、97Bのそれぞれは、供給流路94A、94B、及び供給管93A、93Bを介して圧力調整用液体供給部91に接続されている。圧力調整用液体供給部91が駆動されることにより、圧力調整用供給口97A、97Bを介して液体LQを供給することができる。
【0113】
圧力調整用供給口97Aは、流路形成部材70の下面70Aに形成された凹部78のうち、投影領域AR1に対して非走査方向一方側(−Y側)に設けられ、圧力調整用供給口97Bは、他方側(+Y側)に設けられている。そして、圧力調整用供給口97A、97Bは投影光学系PLによる投影領域AR1の近くに設けられ、投影光学系PLの投影領域AR1に対して液体供給機構10の液体供給口13A、13Bよりも近くに配置されている。
【0114】
そして、液体供給口13A、13Bは、投影領域AR1、圧力調整用供給口97(97A、97B)、及び圧力調整用回収口98(98A、98B)を囲むように設けられている。
【0115】
なお、本実施形態においては、圧力調整用供給口97A、97Bは、投影光学系PLの投影領域AR1に対して圧力調整用回収口98A、98Bの外側に設けられているが、内側に設けられてもよいし、圧力調整用供給口97A、97Bと圧力調整用回収口98A、98Bとが近接して設けられていてもよい。あるいは、例えば圧力調整用供給口97A、97BをX軸方向(又はY軸方向)に関して投影領域AR1の両側のそれぞれに設け、圧力調整用回収口98A、98BをY軸方向(又はX軸方向)に関して投影領域AR1の両側のそれぞれに設けてもよい。この場合、投影領域AR1に対する圧力調整用供給口97A、97Bの距離と、投影領域AR1に対する圧力調整用回収口98A、98Bの距離とは、異なっていてもよいし、ほぼ等しくてもよい。
【0116】
図5は
図3のA−A断面矢視図、
図6は
図3のB−B断面矢視図である。
図5に示すように、供給流路14A、14Bのそれぞれは、その一端部を供給管12A、12Bに接続しており、他端部を液体供給口13A、13Bに接続している。また、供給流路14A、14Bのそれぞれは、水平流路部14hと鉛直流路部14sとを有している。液体供給部11より供給管12A、12Bを介して供給された液体LQは、供給流路14A、14Bに流入し、水平流路部14hをほぼ水平方向(XY平面方向)に流れた後、ほぼ直角に曲げられて鉛直流路部14sを鉛直方向(−Z方向)に流れ、液体供給口13A、13Bより基板Pの上方より基板P上に供給される。
【0117】
回収流路24A、24Bのそれぞれは、その一端部を回収管22A、22Bに接続しており、他端部を液体回収口23A、23Bに接続している。また、回収流路24A、24Bのそれぞれは、水平流路部24hと鉛直流路部24sとを有している。真空系を有する第1液体回収部21の駆動により、基板P上の液体LQは、その基板Pの上方に設けられている液体回収口23A、23Bを介して回収流路24A、24bに鉛直上向き(+Z方向)に流入し、鉛直流路部24sを流れる。このとき、液体回収口23A、23Bからは、基板P上の液体LQとともにその周囲の気体(空気)も流入(回収)される。回収流路24A、24Bに+Z方向に流入した液体LQは、ほぼ水平方向に流れの向きを変えられた後、水平流路部24hをほぼ水平方向に流れる。その後、回収管22A、22Bを介して第1液体回収部21に吸引回収される。
【0118】
回収流路44A、44Bのそれぞれは、その一端部を回収管42A、42Bに接続しており、他端部を補助液体回収口43A、43Bに接続している。また、回収流路44A、44Bのそれぞれは、水平流路部44hと鉛直流路部44sとを有している。真空系を有する第2液体回収部41の駆動により、基板P上の液体LQは、補助液体回収口43A、43Bを介して回収流路44A、44bに鉛直上向き(+Z方向)に流入し、鉛直流路部44sを流れる。このとき、補助液体回収口43A、43Bからは、基板P上の液体LQとともにその周囲の気体(空気)も流入(回収)される。回収流路44A、44Bに+Z方向に流入した液体LQは、ほぼ水平方向に流れの向きを変えられた後、水平流路部44hをほぼ水平方向に流れる。その後、回収管42A、42Bを介して第2液体回収部41に吸引回収される。
【0119】
流路形成部材70と投影光学系PLの光学素子2との間には間隙部Gが設けられている。間隙部Gは、投影光学系PLの光学素子2と流路形成部材70とを振動的に分離するために設けられたものである。また、流路形成部材70を含む液体供給機構10、第1液体回収機構20、及び第2液体回収機構40と、投影光学系PLとはそれぞれ別の支持機構で支持されており、振動的に分離されている。これにより、流路形成部材70を含む液体供給機構10、第1液体回収機構20、及び第2液体回収機構40で発生した振動が、投影光学系PL側に伝達することを防止している。
【0120】
また、間隙部Gを形成する流路形成部材70の内側面70T、及び光学素子2の側面2Tのそれぞれは撥液性となっている。具体的には、内側面70T及び側面2Tのそれぞれは、撥液処理を施されることによって撥液性を有している。撥液処理としては、フッ素系樹脂材料、アクリル系樹脂材料、シリコン系樹脂材料等の撥液性材料を塗布、あるいは前記撥液性材料からなる薄膜を貼付する。また、表面処理のための膜は、単層膜であってもよいし複数の層からなる膜であってもよい。一方、上述したように、投影光学系PLの光学素子2の液体接触面2A、及び第1、第2光学部材83、84の下面を含む流路形成部材70の下面(液体接触面)70Aは親液性(親水性)を有している。
【0121】
流路形成部材70の下面70Aのうち、投影領域AR1に対して液体供給口13A、13Bの外側には溝部130が形成されている。液体回収口23A、23Bは、流路形成部材70の下面70Aのうち溝部130の内部に形成されている。溝部130は、流路形成部材70の下面70Aにおいて液体回収口23に沿うように形成されているとともに、
図4及び6から分かるように、第1、第2光学部材83、84の下面においても連続して形成されており、投影領域AR1を囲むように環状に形成されている。また、投影領域AR1に対して溝部130の外側には環状の壁部131が形成されている。壁部131は基板P側に突出する凸部である。本実施形態において、壁部131の下面131Aと基板Pとの距離は、投影光学系PLの光学素子2の下面2Aと基板Pとの距離Dとほぼ同じである。壁部131は、溝部130を含む壁部131の内側の領域の少なくとも一部に液体LQを保持可能である。
【0122】
図7は液体供給口13A、13B、液体回収口23A、23B、溝部130、及び壁部131の位置関係を示す平面図である。液体供給口13A、13Bから供給された液体LQは、投影光学系PLの光学素子2と基板Pとの間に液浸領域AR2を形成するとともに、壁部131の内側の領域である溝部130の一部を満たし、予備液浸領域AR3を形成する。なお、溝部130の全てが常に液体LQで満たされるわけではなく、その一部が液体LQで満たされて、予備液浸領域AR3が形成される。このように、液体回収口23A、23Bの外側に壁部131を設けて液体回収口23A、23Bを含むように溝部(バッファ部)130を形成したことにより、液浸領域AR2の外側に液体LQを保持する予備液浸領域AR3が形成される。ここで、液浸領域AR2の液体LQと予備液浸領域AR3の液体LQとは密接しており、液体LQは液浸領域AR2と予備液浸領域AR3との間を行き来(流通)可能である。光学素子2等と同様、壁部131及び溝部130の表面は親液性であるので、液浸領域AR2の液体LQと予備液浸領域AR3の液体LQとは分離することなく連続する。
【0123】
液体供給機構10から基板P上に供給された液体LQは、投影光学系PLの光学素子2Aと基板Pとの間を液体LQで満たして投影領域AR1を覆うように液浸領域AR2を形成する。更に、液浸領域AR2が形成された後も、液体LQが供給され続けることにより、液浸領域AR2の外側領域の一部にも液体LQが満たされて予備液浸領域AR3が形成される。そして、液浸領域AR2及び予備液浸領域AR3を形成した後、第1液体回収機構20を駆動し、液体LQの供給量と回収量とが略同一あるいは供給量が回収量をやや上回る程度に設定し、その状態を維持する。このようにして、露光開始時には、例えば、液浸領域AR2を形成する液体LQの約10〜20%程度以上と同量の液体LQで予備液浸領域AR3が形成される。
【0124】
図8は走査露光時における予備液浸領域AR3の挙動を示す模式図である。
図2との関係で説明したように、基板Pの走査露光時(ステップ移動及びスキャン移動)には、投影光学系PLに対して基板PがXY方向に移動する。投影光学系PLの光学素子2の下面2A、すなわち液浸領域AR2の液体LQは、基板Pの移動に引きずられて、基板Pの移動方向に沿う方向に移動する。特に走査露光時には、基板Pが高速移動(例えば、400mm/秒程度)するので、液体LQの移動量が大きくなる。この場合、液体LQが基板Pとともに移動すると、投影光学系PLの下面2Aの一部(基板Pの移動方向の後方側)において、液体LQの剥離が発生して液浸領域AR2が良好に形成されず、露光精度の劣化を引き起こす可能性がある。ところが、液浸領域AR2の外側に更に予備液浸領域AR3を設けることで、基板Pが移動すると、液浸領域AR2の液体LQが基板Pの移動方向前方側の予備液浸領域AR3に流れ込む。それと同時に、基板Pの移動方向後方側の予備液浸領域AR3の液体LQが液浸領域AR2に流れ込む。すなわち、予備液浸領域AR3が液浸領域AR2の予備タンクとして機能し、基板Pの移動に伴って、液浸領域AR2から溢れた液体LQを回収し、一方では液浸領域AR2に向けて液体LQを供給する。これにより、液体LQの流出を防止するとともに、液浸領域AR2の液体LQの不足を補い、常に液浸領域AR2を液体LQで満たすことができる。そして、予備液浸領域AR3が形成される領域、すなわち壁部131に囲まれた領域は、全領域が完全に液体LQで満たされないので、液浸領域AR2から予備液浸領域AR3に回収された液体LQが壁部131の外側に漏れだすことなく、壁部131に囲まれた領域内に留まることができる。
【0125】
また、基板Pの移動方向が反転した場合等には、予備液浸領域AR3に回収された液体LQが液浸領域AR2に戻され、一方、液浸領域AR2の液体LQが予備液浸領域AR3に戻されるように移動する。また、基板Pが非走査方向に往復移動する場合や、走査方向の移動と非走査方向の移動を繰り返すような場合であっても、同様に液体LQは、液浸領域AR2と予備液浸領域AR3との間で行き来して、常に液浸領域AR2を液体LQで満たすことができる。
【0126】
なおここでは、壁部131の下面131Aと基板Pとの距離は、投影光学系PLの光学素子2の下面2Aと基板Pとの距離Dとほぼ同じであるが、異なっていてもよい。例えば、壁部131の下面131Aと基板Pとの距離を、光学素子2の下面2Aと基板Pとの距離Dよりも小さくなるようにしてもよいし、その逆の関係にしてもよい。なお、壁部131の下面131Aと基板Pとの距離は、できるだけ近い(狭い)方が好ましい。距離が近いほど液体LQの表面張力により液体LQを確実に保持でき、外側への液体LQの流出を防止できることができる。一方、壁部131の下面131Aと基板Pとの距離が近いほど、基板Pなどと干渉する不都合が発生する可能性が高くなるので、本実施形態のように、壁部131の下面131Aが投影光学系PLの光学素子2の下面2Aとほぼ同じ位置(Z方向)となるように形成することにより、上記不都合の発生を回避できる。
【0127】
同様に、
図5や
図6に示したように、流路形成部材70の下面70Aにおいて、投影領域AR1に対して壁部131の外側には第2壁部132及び第3壁部133が形成されており、第2壁部132及び第3壁部133の間に形成された溝部134に、補助液体回収部43A、43Bが設けられている。これら第2、第3壁部132、133によって、基板Pの外側への液体LQの流出を更に確実に防止することができる。
【0128】
図6に示すように、流路形成部材70の下面70Aには凹部78が形成されており、凹部78内に形成された平坦部78Bは、投影光学系PLの光学素子2の液体接触面2A、及び第1、第2光学部材83、84の下面より高く(基板Pに対して遠く)なっている。
つまり、流路形成部材70の凹部78における平坦部78Bと第1、第2光学部材83、84との間に段差部が形成されているとともに、流路形成部材70の凹部78における下面と光学素子2の液体接触面2Aとの間にも段差部が形成されている。すなわち、流路形成部材70の下面70Aのうちで凹部78内の平坦部78Bが、鉛直方向(Z方向)に関して、最も高い位置に形成され、かつその平坦部78Bは、鉛直方向(Z方向)に関して、投影光学系PLの光学素子2の下面2Aよりも高い位置に形成されている。流路形成部材70の下面70Aに凹部78を設けない構成の場合、すなわち流路形成部材70の下面70Aと光学素子2の下面(液体接触面)2Aと第1、第2光学部材83、84の下面とが面一の場合、フォーカス・レベリング検出系80の検出光Laを所定の入射角θで基板Pの所望領域(この場合、投影領域AR1)に照射しようとすると、検出光Laの光路上に例えば流路形成部材70が配置されて検出光Laの照射が妨げられたり、あるいは検出光Laの光路を確保するために入射角θや投影光学系PLの光学素子2の下面(液体接触面)2Aと基板P表面との距離(ワーキングディスタンス)Dを変更しなければならないなどの不都合が生じる。しかしながら、流路形成部材70の下面70Aのうち、フォーカス・レベリング検出系80を構成する第1、第2光学部材83、84に連続するように凹部78を設けたことにより、投影光学系PLの光学素子2の下面(液体接触面)2Aと基板P表面との距離Dを所望の値に保ちつつ、フォーカス・レベリング検出系80の検出光Laの光路を確保して基板P上の所望領域に検出光Laを照射することができる。
【0129】
図9は第1〜第4部材71〜74によって形成される流路形成部材70のうち第4部材74を除いた状態を示す斜視図である。
図9に示すように、第3部材73のうち投影光学系PLの−X側及び+X側のそれぞれには、供給流路14Aのうち鉛直流路14sを形成する貫通穴であるスリット部が形成されている。また、不図示ではあるが、第2部材72には第3部材73と接続したときに前記スリット部と接続されるスリット部が形成されており、第1部材71にも同様のスリット部が形成されている。そして、第1〜第3部材71〜73を接続して前記スリット部どうしを接続することにより、鉛直流路14sが形成される。また、第3部材73の上面には、供給管12A、12Bのそれぞれと鉛直流路部14sとを接続する水平流路部14hを形成するテーパ状溝部が形成されている。水平流路部14hを形成するテーパ状溝部は、供給管12A、12Bに対する接続部から鉛直流路部14sに向かって水平方向に漸次拡がるように形成されている。このように、水平流路部14hをテーパ状に形成することで、液体供給部11から供給管12A、12Bを介して供給された液体LQは水平流路部14hにおいてY軸方向に十分に拡がった後、垂直流路部14sを介して基板P上に供給されるため、基板P上の広い領域に同時に液体LQを供給することができる。
【0130】
図10は第1〜第4部材71〜74によって形成される流路形成部材70のうち第1、第2部材71及び72部材を除いた状態を下面70A側から見た斜視図である。
図10に示すように、第3部材73のうち投影光学系PLの−X側及び+X側のそれぞれには、回収流路24Aのうち鉛直流路24sを形成する貫通穴であるスリット部が形成されている。また、不図示ではあるが、第2部材72には第3部材73と接続したときに前記スリット部と接続されるスリット部が形成されており、第1部材71にも同様のスリット部が形成されている。そして、第1〜第3部材71〜73を接続して前記スリット部どうしを接続することにより、鉛直流路24sが形成される。また、第3部材73の下面には、回収管22A、22Bのそれぞれと鉛直流路部24sとを接続する水平流路部24hを形成するテーパ状溝部が形成されている。水平流路部24hを形成するテーパ状溝部は、鉛直流路部24sから回収管22A、22Bに対する接続部に向かって水平方向に漸次窄まるように形成されている。このように、水平流路部24hをテーパ状に形成することで、Y軸方向を長手方向とする液体回収口23A、23Bでの液体回収力分布が均一化され、基板P上の広い領域の液体LQを液体回収口23A、23Bを介して同時に回収することができる。
【0131】
次に、上述した構成を有する露光装置EXを用いてマスクMのパターン像を基板Pに露光する方法について
図11に示す模式図を参照しながら説明する。
【0132】
マスクMがマスクステージMSTにロードされるとともに、基板Pが基板ステージPSTにロードされた後、基板Pの走査露光処理を行うに際し、制御装置CONTは液体供給機構10を駆動し、基板P上に対する液体供給動作を開始する。液浸領域AR2を形成するために液体供給機構10の液体供給部11から供給された液体LQは、
図11(a)に示すように、供給管12A、12Bを流通した後、供給流路14A、14Bを介して液体供給口13A、13Bより基板P上に供給される。
【0133】
制御装置CONTは、液体供給機構10を使って基板P上に対する液体LQの供給を開始するときに、圧力調整機構90のうち、真空系を有する圧力調整用液体回収部92を駆動する。真空系を有する圧力調整用液体回収部92が駆動されることにより、投影光学系PLの像面側の光学素子2近傍に設けられている圧力調整用回収口98A、98Bを介して、投影光学系PLの像面側近傍の空間の気体が排出され、その空間が負圧化される。このように、制御装置CONTは、圧力調整機構90の圧力調整用液体回収部92を駆動し、液体供給機構10の液体供給口13A、13Bよりも投影光学系PLによる投影領域AR1の近くに配置された圧力調整用回収口98A、98Bを介して、投影光学系PLの像面側の気体の排出を行いながら、液浸領域AR2を形成するための液体供給機構10による液体供給を開始する。
【0134】
投影光学系PLの投影領域AR1の近くに配置された圧力調整用回収口98A、98Bを介して投影光学系PLの像面側の気体の排出を行いながら、液体供給機構10による液体LQの供給を行うことにより、その圧力調整用回収口98A、98B近傍が負圧化されるので、供給された液体LQはその負圧化された負圧化領域(空間)に円滑に配置される。圧力調整用回収口98A、98Bは液体供給口13A、13Bより投影領域AR1の近くに設けられているので、投影領域AR1を液体LQで良好に覆うことができる。
【0135】
特に、本実施形態においては、投影光学系PLの像面側には流路形成部材70の凹部78が形成されているため、液浸領域AR2を形成するために液体LQを供給した際、供給した液体LQが凹部78に入り込まず、液浸領域AR2の液体LQ中に気泡などの気体部分が生成される可能性が高くなる。気体部分が生成されると、その気体部分によって、基板P上にパターン像を形成するための露光光ELが基板P上に到達しない、あるいは基板P上にパターン像を形成するための露光光ELが基板P上の所望の位置に到達しない、あるいは例えばフォーカス・レベリング検出系80の検出光Laが基板P上や受光部82に到達しない、あるいは検出光Laが基板P上の所望の位置に到達しないなどの現象が生じ、露光精度及び計測精度の劣化を招く。ところが、投影光学系PLの像面側の気体を排出しながら液体供給機構10による液体供給を開始することで、前記凹部78に液体LQを円滑に配置することができる。したがって、投影光学系PLの像面側に形成される液浸領域AR2に気体部分が生成される不都合を防止することができ、高い露光精度及び計測精度を得ることができる。特に本実施形態では、排気機構の排気口を構成する圧力調整用回収口98A、98Bを凹部78の内側であって、流路形成部材70の下面70Aの最も高い位置に設けたので、液体LQをより円滑に凹部78に配置することができる。また、排気機構の排気口を構成する圧力調整用回収口98A、98Bを投影光学系PLの光学素子2の下面2Aよりも高い位置に設けたので、光学素子2の下面2Aに気体が残ってしまう不都合も防止できる。
【0136】
そして、基板P上に供給された液体LQによって、投影光学系PLと基板Pとの間に液浸領域AR2が形成される。ここで、供給管12A、12Bを流通した液体LQはスリット状に形成された供給流路14A、14B及び液体供給口13A、13Bの幅方向に拡がり、基板P上の広い範囲に供給される。液体供給口13A、13Bから基板P上に供給された液体LQは、投影光学系PLの先端部(光学素子2)の下端面と基板Pとの間に濡れ拡がるように供給され、投影領域AR1を含む基板P上の一部に、基板Pよりも小さく且つ投影領域AR1よりも大きい液浸領域AR2を局所的に形成する。このとき、制御装置CONTは、液体供給機構10のうち投影領域AR1のX軸方向(走査方向)両側に配置された液体供給口13A、13Bのそれぞれより、投影領域AR1の両側から基板P上への液体LQの供給を同時に行う。
【0137】
また、制御装置CONTは、液体供給機構10の駆動と並行して、第1液体回収機構20の第1液体回収部21を駆動し、
図11(b)に示すように基板P上の液体LQの回収を行う。そして、制御装置CONTは、上述したように、液体供給機構10及び第1液体回収機構20の駆動を制御して、液浸領域AR2とともに予備液浸領域AR3も形成する。
【0138】
液浸領域AR2が形成された後、制御装置CONTは、圧力調整機構90の圧力調整用液体回収部92による投影光学系PLの像面側の気体排出動作を停止する。
【0139】
制御装置CONTは、液体供給機構10による基板P上に対する液体LQの供給と並行して、第1液体回収機構20による基板P上の液体LQの回収を行いつつ、基板Pを支持する基板ステージPSTをX軸方向(走査方向)に移動しながら、マスクMのパターン像を投影光学系PLと基板Pとの間の液体LQ及び投影光学系PLを介して基板P上に投影露光する。このとき、液体供給機構10は走査方向に関して投影領域AR1の両側から液体供給口13A、13Bを介して液体LQの供給を同時に行っているので、液浸領域AR2は均一且つ良好に形成されている。
【0140】
本実施形態において、投影領域AR1の走査方向両側から基板Pに対して液体LQを供給する際、制御装置CONTは、液体供給機構10の流量制御器16A、16Bを使って単位時間あたりの液体供給量を調整し、基板P上の1つのショット領域の走査露光中に、走査方向に関して投影領域AR1の一方側から供給する液体量(単位時間あたりの液体供給量)を、他方側から供給する液体量と異ならせる。具体的には、制御装置CONTは、走査方向に関して投影領域AR1の手前から供給する単位時間あたりの液体供給量を、その反対側で供給する液体供給量よりも多く設定する。
【0141】
例えば、基板Pを+X方向に移動しつつ露光処理する場合、制御装置CONTは、投影領域AR1に対して−X側(すなわち液体供給口13A)からの液体量を、+X側(すなわち液体供給口13B)からの液体量より多くし、一方、基板Pを−X方向に移動しつつ露光処理する場合、投影領域AR1に対して+X側からの液体量を、−X側からの液体量より多くする。このように、制御装置CONTは、基板Pの移動方向に応じて、液体供給口13A、13Bからのそれぞれの単位時間あたりの液体供給量を変える。
【0142】
基板Pを液浸露光中、液浸領域AR2の液体LQの圧力は圧力センサ120により常時モニタされている。圧力センサ120の検出結果は制御装置CONTに出力される。制御装置CONTは、基板Pの液浸露光中に、圧力センサ120の検出結果に基づいて、液体供給機構10から基板P上に供給された液体LQの圧力を圧力調整機構90を使って調整する。
【0143】
制御装置CONTは、圧力調整機構90の圧力調整用液体供給部91及び圧力調整用液体回収部92を使って基板P上に対する液体LQの追加、又は基板P上の液体LQの一部回収を行うことによって、液体LQが基板Pに及ぼす力を低減するように液体LQの圧力を調整する。
【0144】
例えば、圧力センサ120の検出結果に基づいて、液浸領域AR2の液体LQの圧力が予め設定されている所定値に対して低いと判断したとき、あるいは液浸領域AR2の圧力が液浸領域AR2の外の圧力(大気圧)より低い(負圧である)と判断したとき、制御装置CONTは、液体LQが基板Pに及ぼす力を低減するように、つまりその液体LQの圧力が所定値になるように、圧力調整用液体供給部91を駆動し、
図11(b)に示すように、圧力調整用供給口97A、97Bを介して、液浸領域AR2の液体LQに更に液体LQを追加する。液体LQが追加されることにより、液浸領域AR2の液体LQの圧力が上昇して前記所定値となる。これにより、液体LQが基板Pに及ぼす力が低減される。
【0145】
逆に、圧力センサ120の検出結果に基づいて、液浸領域AR2の液体LQの圧力が予め設定されている所定値に対して高いと判断したとき、あるいは液浸領域AR2の圧力が液浸領域AR2の外の圧力(大気圧)より高い(陽圧である)と判断したとき、制御装置CONTは、液体LQが基板Pに及ぼす力を低減するように、つまりその液体LQの圧力が所定値になるように、圧力調整用液体回収部92を駆動し、
図11(c)に示すように、圧力調整用回収口98A、98Bを介して、液浸領域AR2の液体LQの一部を回収する。液体LQの一部が回収されることにより、液浸領域AR2の液体LQの圧力が下降して前記所定値となる。これにより、液体LQが基板Pに及ぼす力が低減される。
【0146】
このように、圧力調整機構90で液体供給機構10から供給された液体LQの圧力を調整することで、例えば液体LQの圧力変動に伴う基板Pや基板ステージPSTの変形、あるいは投影光学系PLの光学素子2の変位や振動の発生を防止することができる。したがって、高い露光精度及び計測精度を得ることができる。
【0147】
特に、本実施形態においては、投影光学系PLの像面側の液浸領域AR2の液体LQに接する流路形成部材70に凹部78が設けられており、その凹部78においては液体LQの圧力変動が生じやすい。また、基板Pを走査移動することによって液体LQが移動するため、圧力変動は顕著となる。そこで、その凹部78の内側に、液浸領域AR2の液体LQの圧力調整をするために液体LQを追加する圧力調整用供給口97A、97Bを設けるとともに、液体LQの一部を回収する圧力調整用回収口98A、98Bを設けたので、上記凹部78で生じる圧力変動を効果的に低減することができ、また圧力調整を良好に行うことができる。
【0148】
また、基板P上の液浸領域AR2の液体LQを第1液体回収機構20の液体回収口23A、23Bを介して回収しきれなかった場合、その回収しきれなかった液体LQは液体回収口23A、23Bの外側に流出するが、
図11(d)に示すように、第2液体回収機構40の補助液体回収口43A、43Bを介して回収されるので、液体LQの流出を防止することができる。また、第1液体回収機構20に何らかの異常が生じて液体回収動作不能となった場合や、液体供給機構10に何らかの異常が生じて誤作動し、大量に液体LQが供給されてしまって第1液体回収機構20だけでは液体LQを回収しきれない場合でも、第2液体回収機構40で液体LQを回収することができ、液体LQの流出を防止することができる。したがって、流出した液体LQに起因する機械部品等の錆びや駆動系の漏電の発生、あるいは流出した液体LQの気化による基板Pの置かれている環境変動を防止することができ、露光精度及び計測精度の劣化を防止することができる。この場合、第2液体回収機構40にマスフローコントローラ等を設けておき、第2液体回収機構40で液体LQが回収されたときに、液体供給機構10からの液体供給を止めるようにしてもよい。
【0149】
また、
図1に示したように、第2液体回収機構40は無停電電源100Bを有しており、第1液体回収機構20を含む露光装置EX全体の駆動源である商用電源100Aが停電などの異常を生じても、第2液体回収機構40に対する電力の供給は無停電電源100Bに切り替わるので、第2液体回収機構40で液体LQを良好に回収することができる。したがって、液体LQの流出を防止することができ、また、基板P上に残留した液体LQを放置せずに第2液体回収機構40で回収できるので、基板Pを支持する基板ステージPST周辺の機械部品の錆びや故障、あるいは基板Pの置かれている環境変動等といった不都合の発生を防止することができる。
【0150】
例えば商用電源100Aが停電したとき、無停電電源100Bは、第2液体回収機構240を構成する例えば真空系の電力駆動部、気液分離器の電力駆動部等に対してそれぞれ電力を供給する。具体的には、商用電源100Aが停電したとき、無停電電源100Bは、第2液体回収機構40に対する電力供給を、例えば内蔵バッテリに切り替えて無瞬断給電する。その後、無停電電源100Bは、長時間の停電に備えて、内蔵発電機を起動し、第2液体回収機構40に対する電力供給をバッテリから発電機に切り替える。こうすることにより、商用電源100Aが停電しても、第2液体回収機構40に対する電力供給が継続され、第2液体回収機構40による液体回収動作を維持することができる。なお、無停電電源100Bとしては上述した形態に限られず、公知の無停電電源を採用することができる。また、本実施形態では、商用電源100Aが停電したときのバックアップ電源として無停電電源装置を例にして説明したが、もちろん、バックアップ電源としてバックアップ用バッテリを用い、商用電源100Aの停電時に、そのバッテリに切り替えるようにしてもよい。
【0151】
また、商用電源100Aが停電したとき、無停電電源100Bは、第3液体回収機構60に対しても電力の供給を行うようにしてもよい。こうすることにより、例えば液体LQの液浸領域AR2の一部がプレート部材56上に配置されている状態のときに商用電源100Aが停電して、基板Pの外側に液体LQが流出しても、第3液体回収機構60はその流出した液体LQを回収することができる。なお、商用電源100Aが停電したとき、無停電電源100Bは、基板Pを保持する基板ステージPSTの吸着機構に電力を供給するようにしてもよい。こうすることにより、商用電源100Aが停電した場合であっても基板ステージPST(Zチルトステージ52)による基板Pの吸着保持を維持することができるので、停電によってZチルトステージ52に対する基板Pの位置ずれが生じない。したがって、停電復帰後において露光動作を再開する場合の露光処理再開動作を円滑に行うことができる。
【0152】
また、商用電源100Aの停電時に、無停電電源100Bは、露光装置EXを構成する各機構(装置)のうち、第2液体回収機構40以外の機構に電力(駆動力)を供給するようにしてもよい。例えば商用電源100Aの停電時に、第2液体回収機構40に加えて、第1液体回収機構10に対しても電力を供給することで、液体LQの流出を更に確実に防止することができる。
【0153】
なお、液体供給機構10の供給管12にノーマルクローズ方式のバルブを設けておき、商用電源100Aが停電したとき、そのノーマルクローズ方式のバルブが供給管12の流路を機械的に遮断するようにしてもよい。こうすることにより、商用電源100Aの停電後において、液体供給機構10から基板P上に液体LQが漏出する不都合がなくなる。
【0154】
ところで、基板P表面(液体接触面)の材料特性に応じて、液体LQが基板Pに及ぼす力が変化する。具体的には基板P表面と液体LQとの親和性、更に具体的には基板Pの液体LQに対する接触角に応じて、液体LQが基板Pに及ぼす力が変化する。基板P表面の材料特性は、その基板P表面に塗布される感光材や、その感光材上に塗布される例えば感光材を保護する保護膜などの所定の膜に応じて変化する。圧力調整機構90は、基板P表面と液体LQとの親和性を考慮して液体LQの圧力調整を行うことができる。例えば基板P表面が親液性の場合には、その液体LQは基板P上において濡れ拡がろうとするため、基板P上での液体LQの圧力は低下する(負圧化する)。したがって、基板P表面が親液性の場合には、圧力調整機構90は圧力調整用供給口97A、97Bを介して液体PQの追加を行い、基板P上の液浸領域AR2の液体LQの圧力を上昇させて、液体LQが基板Pに及ぼす力を低減させる。一方、基板P表面が撥液性の場合には、基板P上での液体LQの圧力は上昇する(陽圧化する)。したがって、基板P表面が撥液性の場合には、圧力調整機構90は圧力調整用回収口98A、98Bを介して液体PQの一部回収を行い、基板P上の液浸領域AR2の液体LQの圧力を下降させて、液体LQが基板Pに及ぼす力を低減させる。
【0155】
そして、液体LQの基板P上での圧力は、基板Pの液体LQに対する親和性(接触角)に応じた値となるため、基板Pの液体LQに対する親和性(接触角)を予め求めておき、その求めた結果に基づいて基板P上での液体LQの圧力を予め実験又はシミュレーションによって求めておき、その求めた圧力に関する情報を制御装置CONT(あるいはこれに接続する記憶装置)に記憶しておくことにより、上記圧力センサ120を用いなくても、制御装置CONTは、前記圧力に関する情報に基づいて、液体LQの圧力を調整するための調整量(圧力調整用供給口97から供給する単位時間あたりの液体供給量又は圧力調整用回収口98を介して回収する単位時間あたりの液体回収量)を求め、その求めた調整量に基づいて、液体LQの追加又は一部回収を行うことができる。
【0156】
なおここでは、基板Pの表面(液体接触面)の液体LQに対する親和性(接触角)を考慮して液体LQの圧力調整が行われるように説明したが、基板P上の液浸領域AR2の液体LQの圧力調整を、流路形成部材70の下面(液体接触面)70Aや投影光学系PLの光学素子2の下面(液体接触面)2Aの液体LQに対する親和性(接触角)を考慮して行うようにしてもよい。なお、光学素子2や流路形成部材70の液体LQに対する親和性は大きく変化せず、一方、基板Pの液体LQに対する親和性は使用する感光材などに応じて例えばロット毎に変化するため、実際には、光学素子2や流路形成部材70の液体LQに対する親和性は考慮しなくても、基板P表面の液体LQに対する親和性を考慮することで、液体LQの圧力調整を良好に行うことができる。
【0157】
なお、上述した実施形態においては、液体LQの液浸領域AR2を基板P上に形成する場合について説明したが、
図2を参照して説明したような、基準部材300の上面301に液体LQの液浸領域AR2を形成する場合もある。そして、その上面301上の液浸領域AR2の液体LQを介して各種計測処理を行う場合がある。その場合、圧力調整機構90は、基準部材300上に形成された液浸領域AR2の液体LQが基準部材300に及ぼす力を低減するように液体LQの圧力調整を行うことができる。このとき、圧力調整機構90は、基準部材300の上面301と液体LQとの親和性を考慮して、液体LQの圧力調整を行うことができる。同様に、圧力調整機構90は、照度ムラセンサ400の上板402の上面401や、空間像計測センサ500の上板502の上面501等に液体LQの液浸領域AR2が形成されたときにも、液体LQが上板402や上板502に及ぼす力を低減するように、液体LQの圧力調整を行うことができる。更には、Zチルトステージ52(基板ステージPST)上面に液浸領域AR2を形成する構成も考えられ、その場合、圧力調整機構90は、液体LQが基板ステージPSTに及ぼす力を低減するように圧力調整を行うことができる。
【0158】
なお、上述した実施形態においては、圧力調整機構90は、基板P上に形成された液浸領域AR2の液体LQの圧力調整動作を基板Pの液浸露光中に行っているが、基板Pを液浸露光する前や後に行ってもよい。
【0159】
なお上述した実施形態においては、圧力調整用供給口97と圧力調整用回収口98とは互いに独立した口であるが、液体供給部91及び液体回収部92が1つの口を兼用し、その1つの口を介して液体供給及び回収を行ってもよい。
【0160】
上述した実施形態において、複数(2つ)並べて設けられた圧力調整用供給口97A、97Bのそれぞれからの単位時間あたりの液体供給量を、液体LQが基板Pに及ぼす力を低減するように、例えば基板Pの移動方向や走査速度に応じて互いに異なる値にしてもよい。同様に、複数並んだ圧力調整用回収口98A、98Bのそれぞれを介した単位時間あたりの液体回収量を互いに異なる値にしてもよい。
【0161】
なお、上述した実施形態においては、圧力調整用供給口97及び圧力調整用供給口98は、非走査方向(Y軸方向)に2つずつ並べて設けられているが、走査方向(X軸方向)に関して複数並べで設けてもよい。X軸方向に関して複数並べて設ける場合、投影領域AR1を挟んでその両側にそれぞれ設けることができる。この場合においても、液体LQ圧力調整を行うときに、X軸方向に複数並んだ圧力調整用供給口97のそれぞれからの液体供給量を、液体LQが基板Pに及ぼす力を低減するように、例えば基板Pの走査方向や走査速度に応じて互いに異なる値にしてもよい。同様に、X軸方向に複数並んだ圧力調整用回収口98それぞれからの液体回収量を互いに異なる値にしてもよい。
【0162】
また、上述した実施形態においては、圧力調整用供給口97及び圧力調整用回収口98はそれぞれ2つずつ設けられているが、1つずつでもよいし、2つ以上の任意の複数箇所に設けられてもよい。また、圧力調整用供給口97及び圧力調整用回収口98の形状は円形状に限られず、例えば矩形状や多角形状、円弧状、所定方向を長手方向とするスリット状であってもよい。
【0163】
また上述した実施形態においては、圧力センサ120は1つ設けられている構成であるが、液浸領域AR2の液体LQに接する位置において任意の複数箇所のそれぞれに設けてもよい。その場合、複数の圧力センサ120それぞれの出力に基づいて、複数の圧力調整用供給口97(97A、97B)それぞれからの液体供給量を互いに異なる値にしてもよい。同様に、複数の圧力センサ120それぞれの出力に基づいて、複数の圧力調整用回収口98(98A、98B)それぞれを介した液体回収量を互いに異なる値にしてもよい。
【0164】
また、上述した実施形態においては、液体LQの供給又は回収を行って、液体LQの圧力調整を行っているが、液体LQの接触角を調整するようにしてもよい。
【0165】
なお、上述した実施形態において、液体供給口13、液体回収口23、及び補助液体回収口43や、それらに接続される供給流路14、回収流路24、及び回収流路44などに、スポンジ状部材や多孔質セラミックスなどからなる多孔質体を配置してもよい。
【0166】
なお、上述した実施形態においては、基板Pの露光中に、液体供給口13A、13Bの両方から液体LQを供給するようにしているが、どちらか一方から供給するようにしてもよい。また、液体供給機構10(液体供給口13A、13B)を省略して、圧力調整用供給口97からの液体LQの供給のみで液浸領域AR2を形成するようにしてもよい。
【0167】
以下、本発明の別の実施形態について説明する。以下の説明において、上述した実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略もしくは省略する。
【0168】
図12は流路形成部材70及びその流路形成部材70に取り付けられたフォーカス・レベリング検出系80の光学系を構成する第1、第2光学部材の別の実施形態を示す図である。
図12において、第1、第2光学部材83A、84Aのそれぞれはプリズムによって構成されており、プリズムからなる第1、第2光学部材83A、84Aによって、フォーカス・レベリング検出系80の検出光Laの進行方向の向きが変えられるようになっている。本実施形態においては、第1、第2光学部材83A、84Aのそれぞれは平行シフトプリズム、具体的には菱形プリズムによって構成されており、入射した検出光Laを平行移動する。
【0169】
第1、第2光学部材83A、84Aのそれぞれは、流路形成部材70の内側面70Tに取り付けられている。そして、第1、第2光学部材83A、84Aのうち、少なくとも検出光Laの通過する上端領域KA1及び下端領域KA2は流路形成部材70から露出している。第1、第2光学部材83A、84Aの上端領域KA1は流路形成部材70の上面より突出(露出)しており、下端領域KA2は投影光学系PLと基板Pとの間の空間に対して露出している。なお
図12に示す例では、第1光学部材83Aは投影光学系PL(光学素子2)の−X側に設けられ、第2光学部材84Aは+X側に設けられている。第1、第2光学部材83A、84Aを投影光学系PLの−X側及び+X側のそれぞれに設けることにより、圧力調整用供給口97に接続する供給流路94や供給管93、及び圧力調整用回収口98に接続する回収流路96や回収管95と、第1、第2光学部材83A、84Aとの干渉が防止されている。
【0170】
フォーカス・レベリング検出系80の投光部81から射出された検出光LaはXZ平面にほぼ平行な面に沿って進行し、第1光学部材83Aの上端領域KA1より入射した後、第1光学部材83Aを通過することによって−Z方向にシフトされ、下端領域KA2より射出される。そして、第1光学部材83Aを通過した検出光Laは基板Pに照射されて反射した後、第2光学部材84Aに対して下端領域KA2より入射する。第2光学部材84Aに下端領域KA2より入射した検出光Laは+Z方向にシフトした後、上端領域KA1より射出され、受光部82に受光される。
【0171】
このように、流路形成部材70にフォーカス・レベリング検出系80の光学系を構成する第1、第2光学部材83A、84Aをプリズムによって構成することで、検出光Laの基板Pに対する入射角θを大きくすることができ、流路形成部材70を含む装置構成の設計の自由度を向上することができる。また、流路形成部材70の大きさを小さくすることもできる。
【0172】
図13は圧力調整機構90の別の実施形態を示す模式図である。
図13において、圧力調整機構90は、液体LQを送出可能な液体供給部91を備えている。
図13における液体供給部91は液体回収部(92)の機能を兼ね備えているものとする。流路形成部材70の内側面70Tには供給口97C、97Dが形成されている。また、流路形成部材70の内部には、その一端部を供給管93A、93Bを介して液体供給部91に接続し、他端部を供給口97C、97Dに接続した供給流路94A、94Bが形成されている。また、流路形成部材70の下面70Aには、上述した実施形態同様、液体供給口13A、13B、液体回収口23A、23B、及び補助液体回収口43A、43Bが形成されている。
【0173】
そして、液体供給部91から送出される液体LQは、供給管93A、93B、及び供給流路94A、94Bを介して、供給口97C、97Dより、流路形成部材70の内側面70Tと投影光学系PLの光学素子2の側面2Tとの間の間隙部Gに供給されるようになっている。また、上述したように本実施形態における液体供給部91は液体回収部の機能を有しており、液体回収部が駆動されることにより、間隙部Gの液体LQ又は気体は、供給口(回収口)97C、97D、供給流路(回収流路)94A、94B、及び供給管(回収管)93A、93Bを介して液体供給部(液体回収部)91に吸引回収されるようになっている。
【0174】
基板P上に液体LQの液浸領域AR2を形成したとき、例えば毛細管現象などによって基板P上の液体LQが間隙部Gに流入し、滞留する可能性がある。間隙部Gに液体LQが長時間滞留すると、その液体LQは汚染する可能性が高くなり、その汚染された間隙部Gの液体LQが例えば基板Pの液浸露光中に投影光学系PLと基板Pとの間に流入すると、露光精度の劣化をもたらす可能性がある。そこで、制御装置CONTは圧力調整機構90を適宜駆動することで、流路形成部材70の内側面70Tと光学素子2の側面2Tとの間に滞留する液体LQを除去することができる。すなわち、本実施形態における圧力調整機構90は、流路形成部材70の内側面70Tと光学素子2の側面2との間の液体LQを除去する液体除去機構としての機能を有している。
【0175】
図14は、
図13に示した圧力調整機構(液体除去機構)90の動作の一例を示す図である。
図14(a)に示すように、投影光学系PLと液浸領域AR2の液体LQとを介して基板Pに露光光ELを照射中に、圧力調整機構90を駆動して、流路形成部材70の内側面70Tと光学素子2の側面2Tとの間の間隙部Gに滞留する液体LQを除去することができる。
図14(a)に示す例では、液体供給部91より送出された液体LQが供給口97C、97Dより間隙部Gに供給されている。供給口97C、97Dより供給された液体LQにより、間隙部Gに配置されていた(滞留していた)液体LQは下方に排出されて基板P上に流出し、基板P上の液体LQとともに第1液体回収機構20の液体回収口23A、23Bより回収される。
図14(a)に示す例では、基板Pの露光中においても供給口97C、97Dより液体LQが常時間隙部Gに供給されるので、間隙部Gに配置された液体LQは汚染される前に基板P上に流出するため、露光精度に影響を与えない。なお
図14(a)に示す例では基板Pに露光光ELを照射しながら間隙部Gに液体LQを供給しているが、もちろん基板Pに対して露光光ELを照射する前や後に、間隙部Gに液体LQを供給してもよい。
【0176】
図14(b)に示すように、供給口97C、97Dを介して間隙部Gに液体LQを供給することにより間隙部Gより排出した液体LQを、第3液体回収機構60を使って回収するようにしてもよい。こうすることにより、間隙部Gにおいて汚染された液体LQを基板Pなどに付着させることなく、間隙部Gより排出して回収することができる。
【0177】
図14(c)に示すように、間隙部Gの液体LQを回収口97C、97Dを介して吸引回収するようにしてもよい。こうすることによっても、間隙部Gの液体LQを除去することができる。
【0178】
上述した間隙部Gの液体LQの除去処理は、基板ステージPSTに対する基板Pの交換時(ロード・アンロード時)や基板Pのロット毎など、所定のタイミングで定期的に行うことができる。また、
図14(a)を参照して説明したように、基板Pの露光中に液体除去動作を行ってもよいし、露光中以外のタイミングで行ってもよい。
【0179】
また、
図14(d)に示すように、基板Pを露光処理していないときにおいて、液体供給部91を駆動して液体LQを常に間隙部Gに供給するようにしてもよい。この場合、液体供給量を調整することにより、供給口97C、97Dより供給された液体LQは投影光学系PL(光学素子2)の側面2Tを伝わって、下面(液体接触面)2Aに濡れ拡がる。
光学素子2から滴り落ちた液体LQは、第3液体回収機構60で回収することができる。
供給口97C、97Dより供給した液体LQで光学素子2の下面2Aを含む表面を常に濡らしておくことにより、光学素子2(投影光学系PL)の乾燥を防止し、液体LQの付着跡(所謂ウォーターマーク)が生成される不都合を防止することができる。
【0180】
ところで、上述した各実施形態においては、液体供給機構10及び液体回収機構20(40、60)を使って液体LQの供給及び回収を行い、基板P上を含む基板ステージPST上に局所的に液浸領域AR2を形成している状態で、その基板ステージPSTを移動しつつ露光処理や計測処理を行っているが、基板ステージPSTの移動条件によっては、基板Pの外側に液体LQが流出したり、液浸領域AR2に気体部分が生成されるなど、投影光学系PLの像面側に液体LQを良好に保持することができず、液浸領域AR2が良好に形成されない状況が発生する可能性がある。
【0181】
そこで、液体供給機構10と液体回収機構20とによって基板ステージPST上に保持された基板P上を含む基板ステージPST上に局所的に液浸領域AR2を形成している状態で、基板ステージPSTを第1位置から第2位置へほぼ直線的に移動させるときに、第1位置と第2位置との間隔に応じて基板ステージPSTの移動速度を異ならせるとよい。
【0182】
なおここで、「基板ステージPST上の液浸領域AR2」は「基板ステージPST上に保持された基板P上の液浸領域AR2」も含む。
【0183】
本実施形態においては、基板Pをステップ・アンド・スキャン方式で移動しながら各ショット領域に対する走査露光処理を順次行う構成であるが、例えば露光装置EXのリセット動作やキャリブレーション動作など(以下、「キャリブレーション動作」と総称する)において、制御装置CONTは、キャリブレーション動作の開始を指令したときの基板ステージPSTの位置(第1位置)から、キャリブレーション動作を行うための位置(第2位置)まで基板ステージPSTを長距離移動する。その距離(第1位置と第2位置との間隔)は、上記ステップ移動やスキャン移動の距離に比べて大きく、投影光学系PLの像面側に液体LQを保持しておくことが困難である。
【0184】
そこで、制御装置CONTは、第1位置と第2位置との間隔が、予め設定されている所定量以上の場合には、第1位置と第2位置との間隔が所定量よりも短い場合に比べて、基板ステージPSTの移動速度を小さくする。例えば、上述したようなキャリブレーション動作のために長距離移動するときの基板ステージPSTの移動距離が、露光処理時におけるステップ・アンド・スキャン時の基板ステージPSTの移動距離に比べて長い(例えば2倍以上)場合には、前記長距離移動するときの移動速度を、露光処理時におけるステップ・アンド・スキャン時の基板ステージPSTの移動速度に比べて遅くする。こうすることにより、投影光学系PLの像面側に液体LQの液浸領域AR2を良好に形成することができる。
【0185】
以上説明したように、第1位置と第2位置との間隔が長く、基板ステージPSTが長距離を移動するような場合、投影光学系PLの像面側に液体LQを良好に保持しておくことが困難になる可能性があるが、そのような場合には基板ステージPSTの移動速度を遅くすることで、投影光学系PLの像面側に液体LQを良好に保持することができる。したがって、液体LQの流出や気体部分の生成などを防止し、液体LQの流出や気体部分の生成などに起因する露光精度及び計測精度の劣化を防止することができる。一方、第1位置と第2位置との間隔が短く、基板ステージPSTが長距離を移動しない場合、基板ステージPSTの移動速度を速くすることで、スループットを向上することができる。
【0186】
なお上記所定量、及びその所定量以上の距離を移動するときの基板ステージPSTの移動速度は、例えば基板P、光学素子2、流路形成部材70などの液体LQに対する親和性(液体の接触角)を考慮して、実験やシミュレーションを行うことで予め求めておくことができる。
【0187】
なおこの場合において、基板ステージPSTの移動速度を遅くするよりも、スループットが向上されるならば、第1位置から第2位置へ直線的な移動を行わずに、且つ移動速度を小さくすることなしに、前記所定量よりも短い直線距離で基板ステージPSTの移動方向を変更しながら、第2位置へ到達するようにしてもよい。
【0188】
また、液体供給機構10と液体回収機構20とによって基板ステージPST上に局所的に液浸領域AR2を形成している状態で、基板ステージPSTを第1位置から第2位置へほぼ直線的に移動させるときに、投影光学系PLの像面側に液体LQを良好に保持するために、第1位置から第2位置への基板ステージPSTの移動方向に応じて基板ステージPSTの移動速度を異ならせることもできる。
【0189】
例えば
図15の模式図に示すように、液浸領域AR2を形成するための液体供給機構10の液体供給口13A、13B、及び液体回収機構20の液体回収口23A、23Bに対して基板ステージPSTを移動する際、基板ステージPSTをX軸方向に移動するときとY軸方向に移動するときとで、基板ステージPSTの移動速度を異ならせる。
【0190】
本実施形態における液体回収機構20の液体回収口23は、
図4などを参照して説明したように、流路形成部材70の下面70Aのうち、投影領域AR1に対して+Y側及び−Y側の領域には設けられていない。すなわち、投影領域AR1(液浸領域AR2)に対してY軸方向に沿う方向には液体回収口23が配置されておらず、そのY軸方向に沿う方向においては、液体回収機構20による液体回収力が弱くなっている。すなわち、Y軸方向に沿う方向が、液体回収機構20による液体回収力が弱い方向である。
【0191】
そこで、制御装置CONTは、基板ステージPSTを液体回収機構20による液体回収力が弱い方向、すなわちY軸方向に移動させる場合には、その基板ステージPSTをY軸方向とは異なる方向(例えばX軸方向に沿う方向)に移動させる場合に比べて、基板ステージPSTの移動速度を小さくする。
【0192】
例えば、露光処理時において基板ステージPSTをX軸方向にスキャン移動させるときの基板ステージPSTの移動速度(例えば400mm/秒程度)に対して、Y軸方向にステップ移動するときや、上述したようなキャリブレーション動作をするためにY軸方向やX軸方向に関して斜め方向に移動するときの基板ステージPSTの移動速度を例えば200mm/秒程度に遅くする。こうすることにより、投影光学系PLの像面側に液体LQを保持しておくことができ、液体LQの流出や液浸領域AR2での気体部分の生成を防止することができる。
【0193】
なおこの場合も、基板ステージPSTの移動速度を遅くするよりも、スループットの向上を優先する場合には、第1位置から第2位置へ直線的な移動を行わずに、且つ移動速度を小さくすることなしに、前記所定量よりも短い直線距離で基板ステージPSTの移動方向を変更しながら、第2位置へ到達するようにしてもよい。また、回収力の弱い方向、及びその方向へ移動するときの基板ステージPSTの移動速度は、例えば基板P、光学素子2、流路形成部材70などの液体LQに対する親和性(液体LQの接触角)を考慮して、実験やシミュレーションを行うことで予め求めておくことができる。
【0194】
以上説明したように、液体LQの供給口13及び回収口23の配置や大きさによっては、基板ステージPSTの移動方向によって投影光学系PLの像面側に液体LQを良好に保持できずにその液体LQが流出したり、あるいは液浸領域AR2の液体LQが枯渇したり剥離するなど、投影光学系PLの像面側の液浸領域に気体部分が生成される不都合が生じる可能性があるが、基板ステージPSTの移動方向に応じて基板ステージPSTの移動速度を異ならせることで、液体LQの流出や気体部分の生成などの不都合の発生を防止することができ、液体LQの流出に起因する露光精度及び計測精度の劣化を防止することができる。そして、基板ステージPSTを液体回収力が弱い方向に移動させる場合には、基板ステージPSTの移動速度を遅くすることで、投影光学系PLの像面側に液浸領域AR2を良好に形成することができる。一方、例えば液体回収力や液体供給力が強い方向に基板ステージPSTを移動する場合には、基板ステージPSTの移動速度を速くすることで、スループットを向上することができる。
【0195】
なお本実施形態においては、液浸領域AR2に対してY軸方向に沿う方向に液体回収口23が配置されておらず、そのY軸方向において液体回収機構20による液体回収力が弱くなるように説明したが、液体回収口23が配置されていない場合だけでなく、例えば
図16に示すように、液浸領域AR2に対してY軸方向に液体回収口23(23D)が配置されていても、そのY軸方向に配置された液体回収口23Dは複数に分割された(まばらな)ものである場合、そのY軸方向での液体回収力は弱い。このような構成を有する液体回収口23においても、基板ステージPSTをY軸方向へ移動させる場合には、基板ステージPSTをY軸方向とは異なる方向に移動させる場合に比べて、基板ステージPSTの移動速度を小さくすることが好ましい。
【0196】
あるいは、複数に分割された液体回収口23が投影領域AR1(液浸領域AR2)を囲むように配置されている場合において、前記複数の液体回収口23のうち、例えば液浸領域AR2に対してY軸方向に沿う位置に設けられた液体回収口23による液体回収力が弱い場合には、基板ステージPSTをY軸方向へ移動させるとき、Y軸方向とは異なる方向に移動させる場合に比べて、基板ステージPSTの移動速度を小さくすることが好ましい。
【0197】
また、基板Pの周囲に形成されている基板ステージPST上の平坦面57が液浸領域AR2を形成する十分な広さを有している場合には、基板ステージPSTの移動速度を落として第1位置から第2位置へ移動するのではなく、基板ステージPSTを第1位置からその第1位置近傍で液浸領域AR2が平坦面57上に形成される第1中継位置へ移動し、さらに液浸領域AR2を平坦面57上に形成したまま、第1中継位置から基板ステージPSTを第2位置近傍で液浸領域AR2が平坦面57上に形成される第2中継位置へ移動し、その第2中継位置から基板ステージPSTを第2位置へ移動するようにしてもよい。この場合、基板ステージPST上の平坦面57表面は液体LQに対して撥液性なので、投影光学系PLの像面側に液浸領域AR2を保持した状態で、基板ステージPSTを高速に移動することができ、基板ステージPSTの移動速度を落として直線的に移動するよりも、第1位置から第2位置へより短時間に基板ステージPSTを移動できる場合もある。
【0198】
なお、以上において、キャリブレーション動作において、基板ステージPSTを第1位置から第2位置へ移動するときに、その移動方向や移動距離を考慮して、基板ステージPSTの速度や移動経路を調整する場合を一例として説明したが、キャリブレーション動作に限らず、基板P上のあるショット領域の露光完了後に次のショット領域の露光を開始するためのステップ移動など、露光装置EXで実行される各種の動作において基板ステージPSTの速度や移動経路を調整することができる。
【0199】
また、基板ステージPSTに限らず、投影光学系PLに対向する物体上に液浸領域AR2を形成した状態で、その物体を移動する場合には、その物体の移動速度や移動経路を調整してもよい。
【0200】
上述したように、本実施形態における液体LQは純水により構成されている。純水は、半導体製造工場等で容易に大量に入手できるとともに、基板P上のフォトレジストや光学素子(レンズ)等に対する悪影響がない利点がある。また、純水は環境に対する悪影響がないとともに、不純物の含有量が極めて低いため、基板Pの表面、及び投影光学系PLの先端面に設けられている光学素子の表面を洗浄する作用も期待できる。なお工場等から供給される純水の純度が低い場合には、露光装置が超純水製造器を持つようにしてもよい。
【0201】
そして、波長が193nm程度の露光光ELに対する純水(水)の屈折率nはほぼ1.44と言われており、露光光ELの光源としてArFエキシマレーザ光(波長193nm)を用いた場合、基板P上では1/n、すなわち約134nmに短波長化されて高い解像度が得られる。更に、焦点深度は空気中に比べて約n倍、すなわち約1.44倍に拡大されるため、空気中で使用する場合と同程度の焦点深度が確保できればよい場合には、投影光学系PLの開口数をより増加させることができ、この点でも解像度が向上する。
【0202】
なお、上述したように液浸法を用いた場合には、投影光学系の開口数NAが0.9〜1.3になることもある。このように投影光学系の開口数NAが大きくなる場合には、従来から露光光として用いられているランダム偏光光では偏光効果によって結像性能が悪化することもあるので、偏光照明を用いるのが望ましい。その場合、マスク(レチクル)のライン・アンド・スペースパターンのラインパターンの長手方向に合わせた直線偏光照明を行い、マスク(レチクル)のパターンからは、S偏光成分(TE偏光成分)、すなわちラインパターンの長手方向に沿った偏光方向成分の回折光が多く射出されるようにするとよい。投影光学系PLと基板P表面に塗布されたレジストとの間が液体で満たされている場合、投影光学系PLと基板P表面に塗布されたレジストとの間が空気(気体)で満たされている場合に比べて、コントラストの向上に寄与するS偏光成分(TE偏光成分)の回折光のレジスト表面での透過率が高くなるため、投影光学系の開口数NAが1.0を越えるような場合でも高い結像性能を得ることができる。また、位相シフトマスクや特開平6−188169号公報に開示されているようなラインパターンの長手方向に合わせた斜入射照明法(特にダイボール照明法)等を適宜組み合わせると更に効果的である。
【0203】
また、例えばArFエキシマレーザを露光光とし、1/4程度の縮小倍率の投影光学系PLを使って、微細なライン・アンド・スペースパターン(例えば25〜50nm程度のライン・アンド・スペース)を基板P上に露光するような場合、マスクMの構造(例えばパターンの微細度やクロムの厚み)によっては、Wave guide効果によりマスクMが偏光板として作用し、コントラストを低下させるP偏光成分(TM偏光成分)の回折光よりS偏光成分(TE偏光成分)の回折光が多くマスクMから射出されるようになるので、上述の直線偏光照明を用いることが望ましいが、ランダム偏光光でマスクMを照明しても、投影光学系PLの開口数NAが0.9〜1.3のように大きい場合でも高い解像性能を得ることができる。また、マスクM上の極微細なライン・アンド・スペースパターンを基板P上に露光するような場合、Wire Grid効果によりP偏光成分(TM偏光成分)がS偏光成分(TE偏光成分)よりも大きくなる可能性もあるが、例えばArFエキシマレーザを露光光とし、1/4程度の縮小倍率の投影光学系PLを使って、25nmより大きいライン・アンド・スペースパターンを基板P上に露光するような場合には、S偏光成分(TE偏光成分)の回折光がP偏光成分(TM偏光成分)の回折光よりも多くマスクMから射出されるので、投影光学系PLの開口数NAが0.9〜1.3のように大きい場合でも高い解像性能を得ることができる。
【0204】
更に、マスク(レチクル)のラインパターンの長手方向に合わせた直線偏光照明(S偏光照明)だけでなく、特開平6−53120号公報に開示されているように、光軸を中心とした円の接線(周)方向に直線偏光する偏光照明法と斜入射照明法との組み合わせも効果的である。特に、マスク(レチクル)のパターンが所定の一方向に延びるラインパターンだけでなく、複数の異なる方向に延びるラインパターンが混在する場合には、同じく特開平6−53120号公報に開示されているように、光軸を中心とした円の接線方向に直線偏光する偏光照明法と輪帯照明法とを併用することによって、投影光学系の開口数NAが大きい場合でも高い結像性能を得ることができる。
【0205】
本実施形態では、投影光学系PLの先端に光学素子2が取り付けられており、このレンズにより投影光学系PLの光学特性、例えば収差(球面収差、コマ収差等)の調整を行うことができる。なお、投影光学系PLの先端に取り付ける光学素子としては、投影光学系PLの光学特性の調整に用いる光学プレートであってもよい。あるいは露光光ELを透過可能な平行平面板であってもよい。
【0206】
なお、液体LQの流れによって生じる投影光学系PLの先端の光学素子と基板Pとの間の圧力が大きい場合には、その光学素子を交換可能とするのではなく、その圧力によって光学素子が動かないように堅固に固定してもよい。
【0207】
なお、本実施形態では、投影光学系PLと基板P表面との間は液体LQで満たされている構成であるが、例えば基板Pの表面に平行平面板からなるカバーガラスを取り付けた状態で液体LQを満たす構成であってもよい。
【0208】
また、上述の液浸法を適用した露光装置は、投影光学系PLの終端光学素子2の射出側の光路空間を液体(純水)で満たして基板Pを露光する構成になっているが、国際公開第2004/019128号に開示されているように、投影光学系PLの終端光学素子2の入射側の光路空間も液体(純水)で満たすようにしてもよい。この場合、上述の実施形態と同様にして、投影光学系PLの終端光学素子2の入射側の光路空間の液体の圧力を調整するようにしてもよい。また、投影光学系PLの終端光学素子2の入射側の光路空間の気体を排気しながら液体の供給を開始することによって、その光路空間を速やかに、且つ良好に液体で満たすことができる。
【0209】
なお、本実施形態の液体LQは水であるが、水以外の液体であってもよい、例えば、露光光ELの光源がF
2レーザである場合、このF
2レーザ光は水を透過しないので、液体LQとしてはF
2レーザ光を透過可能な例えば、過フッ化ポリエーテル(PFPE)やフッ素系オイル等のフッ素系流体であってもよい。この場合、液体LQと接触する部分には、例えばフッ素を含む極性の小さい分子構造の物質で薄膜を形成することで親液化処理する。また、液体LQとしては、その他にも、露光光ELに対する透過性があってできるだけ屈折率が高く、投影光学系PLや基板P表面に塗布されているフォトレジストに対して安定なもの(例えばセダー油)を用いることも可能である。この場合も表面処理は用いる液体LQの極性に応じて行われる。また、液体LQの純水の代わりに、所望の屈折率を有する種々の流体、例えば、超臨界流体や高屈折率の気体を用いることも可能である。
【0210】
なお、上記各実施形態の基板Pとしては、半導体デバイス製造用の半導体ウエハのみならず、ディスプレイデバイス用のガラス基板や、薄膜磁気ヘッド用のセラミックウエハ、あるいは露光装置で用いられるマスクまたはレチクルの原版(合成石英、シリコンウエハ)等が適用される。
【0211】
露光装置EXとしては、マスクMと基板Pとを同期移動してマスクMのパターンを走査露光するステップ・アンド・スキャン方式の走査型露光装置(スキャニングステッパ)の他に、マスクMと基板Pとを静止した状態でマスクMのパターンを一括露光し、基板Pを順次ステップ移動させるステップ・アンド・リピート方式の投影露光装置(ステッパ)にも適用することができる。また、本発明は基板P上で少なくとも2つのパターンを部分的に重ねて転写するステップ・アンド・スティッチ方式の露光装置にも適用できる。
【0212】
また、本発明は、特開平10−163099号公報、特開平10−214783号公報、特表2000−505958号公報などに開示されているツインステージ型の露光装置にも適用できる。
【0213】
また、上述の実施形態においては、投影光学系PLと基板Pとの間に局所的に液体を満たす露光装置を採用しているが、露光対象の基板の表面全体が液体で覆われる液浸露光装置にも本発明を適用可能である。露光対象の基板の表面全体が液体で覆われる液浸露光装置の構造及び露光動作は、例えば特開平6−124873号公報、特開平10−303114号公報、米国特許第5,825,043号などに詳細に記載されている。
【0214】
露光装置に搭載した投影光学系として、種々のタイプの投影光学系を用いることもできる。例えば、反射素子と屈折素子とを含む反射屈折型の投影光学系であってもよいし、反射素子のみを含む反射型の投影投影光学系であってもよい。また、投影光学系を持たないタイプの露光装置、例えば、プロキシミティ型露光装置に本発明を適用することもできる。
【0215】
また、上述の実施形態においては、液体LQを介して基板P表面の面位置情報を検出するフォーカス・レベリング検出系を採用しているが、液体を介さずに、露光前、あるいは露光中に基板P表面の面位置情報を検出するフォーカス・レベリング検出系を採用してもよい。
【0216】
上記具体例では、流路形成部材70の開口部70B(光透過部)に、所定の間隔を隔てて投影光学系PLの先端の光学素子2を配置させたが、流路形成部材70の開口部70Bに任意の光学素子を装着してもよい。すなわち、光学素子2や前述の光学プレートを流路形成部材70に保持させてもよい。この場合にも投影光学系PLと流路形成部材70とは振動伝達防止の観点から別の支持構造であることが望ましい。
【0217】
また、本発明は、ウエハ等の被処理基板を保持して移動可能な露光ステージと、各種の基準部材や計測センサなどの計測部材を備えた計測ステージとを備えた露光装置にも適用することができる。この場合、上述の実施形態において基板ステージPSTに配置されている基準部材や各種計測センサの少なくとも一部を計測ステージに配置することができる。露光ステージと計測ステージとを備えた露光装置は、例えば特開平11−135400号に記載されている。
【0218】
露光装置EXの種類としては、基板Pに半導体素子パターンを露光する半導体素子製造用の露光装置に限られず、液晶表示素子製造用又はディスプレイ製造用の露光装置や、薄膜磁気ヘッド、撮像素子(CCD)あるいはレチクル又はマスクなどを製造するための露光装置などにも広く適用できる。
【0219】
基板ステージPSTやマスクステージMSTにリニアモータ(USP5,623,853またはUSP5,528,118参照)を用いる場合は、エアベアリングを用いたエア浮上型およびローレンツ力またはリアクタンス力を用いた磁気浮上型のどちらを用いてもよい。また、各ステージPST、MSTは、ガイドに沿って移動するタイプでもよく、ガイドを設けないガイドレスタイプであってもよい。
【0220】
各ステージPST、MSTの駆動機構としては、二次元に磁石を配置した磁石ユニットと、二次元にコイルを配置した電機子ユニットとを対向させ電磁力により各ステージPST、MSTを駆動する平面モータを用いてもよい。この場合、磁石ユニットと電機子ユニットとのいずれか一方をステージPST、MSTに接続し、磁石ユニットと電機子ユニットとの他方をステージPST、MSTの移動面側に設ければよい。
【0221】
基板ステージPSTの移動により発生する反力は、投影光学系PLに伝わらないように、特開平8−166475号公報(USP5,528,118)に記載されているように、フレーム部材を用いて機械的に床(大地)に逃がしてもよい。
【0222】
マスクステージMSTの移動により発生する反力は、投影光学系PLに伝わらないように、特開平8−330224号公報(USP5,874,820)に記載されているように、フレーム部材を用いて機械的に床(大地)に逃がしてもよい。
【0223】
以上のように、本願実施形態の露光装置EXは、本願特許請求の範囲に挙げられた各構成要素を含む各種サブシステムを、所定の機械的精度、電気的精度、光学的精度を保つように、組み立てることで製造される。これら各種精度を確保するために、この組み立ての前後には、各種光学系については光学的精度を達成するための調整、各種機械系については機械的精度を達成するための調整、各種電気系については電気的精度を達成するための調整が行われる。各種サブシステムから露光装置への組み立て工程は、各種サブシステム相互の、機械的接続、電気回路の配線接続、気圧回路の配管接続等が含まれる。この各種サブシステムから露光装置への組み立て工程の前に、各サブシステム個々の組み立て工程があることはいうまでもない。各種サブシステムの露光装置への組み立て工程が終了したら、総合調整が行われ、露光装置全体としての各種精度が確保される。なお、露光装置の製造は温度およびクリーン度等が管理されたクリーンルームで行うことが望ましい。
【0224】
半導体デバイス等のマイクロデバイスは、
図17に示すように、マイクロデバイスの機能・性能設計を行うステップ201、この設計ステップに基づいたマスク(レチクル)を製作するステップ202、デバイスの基材である基板を製造するステップ203、前述した実施形態の露光装置EXによりマスクのパターンを基板に露光する露光処理ステップ204、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程を含む)205、検査ステップ206等を経て製造される。