(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
繊維基材が第1の樹脂に埋設されてなるコア基板と、前記コア基板を挟むように設けられる一対の第2の樹脂層と、前記第2の樹脂層の前記コア基板側とは反対側の面上または前記第2の樹脂層と前記コア基板の界面の少なくとも一方に設けられる導体と、を備えるプリント配線板であって、
前記繊維基材の厚みは40μm以下であり、
前記コア基板の25℃における引張り弾性率が4.7GPa以下であり、
前記第1の樹脂の硬化物の25℃における引張り弾性率E1が、前記第2の樹脂層の25℃における引張り弾性率E2よりも大きく且つ3.0GPa以下であり、
前記引張り弾性率E2が0.1〜2.5GPaであり、
前記引張り弾性率E1及び前記引張り弾性率E2が下記式(1)を満たすプリント配線板。
0.1(GPa)≦E1−E2≦1.5(GPa) (1)
前記コア基板及び前記第2の樹脂層の少なくとも一方が、アクリル樹脂及びポリアミドイミド樹脂の一方又は双方を含有する請求項1〜4の何れか一項に記載のプリント配線板。
繊維基材が第1の樹脂に埋設されてなるコア基板と、前記コア基板を挟むように設けられる一対の第2の樹脂層と、前記第2の樹脂層の前記コア基板側とは反対側の面上または前記第2の樹脂層と前記コア基板の界面の少なくとも一方に設けられる金属箔と、を備える金属箔張積層板であって、
前記繊維基材の厚みは40μm以下であり、
前記コア基板の25℃における引張り弾性率が4.7GPa以下であり、
前記第1の樹脂の硬化物の25℃における引張り弾性率E1は、前記第2の樹脂層の25℃における引張り弾性率E2よりも大きく且つ3.0GPa以下であり、
前記引張り弾性率E2が0.1〜2.5GPaであり、
前記引張り弾性率E1及び前記引張り弾性率E2が下記式(1)を満たす金属箔張積層板。
0.1(GPa)≦E1−E2≦1.5(GPa) (1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、特許文献1のようにガラス短繊維を配合するプリント配線板の場合、樹脂単独のプリント配線板に比べて寸法の変化量は小さくできるものの、局所的に寸法変化のばらつきが大きくなるため、微細な配線を設ける場合に十分な接続安定性を得ることができない。また、特許文献2〜4のような、フレキシブルプリント基板は、いずれも樹脂層単独で構成されており、十分に吸湿性や熱膨張率を低減することができないため、ガラス布やガラス不織布を含むプリント配線板に比べて、金属箔をエッチングする際や回路加工後の寸法安定性が十分ではない。特許文献5は、繊維基材を含有する絶縁樹脂層からなる基板の25℃における引張り弾性率を0.5GPa以上、10GPa以下とすることによって、寸法安定性に優れ、任意に折り曲げ可能な印刷回路板を達成している。
【0008】
しかしながら、実装密度の高密度化の要求が厳しくなり、特許文献5で達成されたレベルよりもさらに上のレベルの折り曲げ性が要求されるようになった。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、より優れた耐折性を備えるプリント配線板、及び当該プリント配線板を形成できる金属箔張積層板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の第一発明では、繊維基材が第1の樹脂に埋設されてなるコア基板と、前記コア基板を挟むように設けられる一対の第2の樹脂層と、前記樹脂層の前記コア基板側とは反対側の面上または前記樹脂層と前記コア基板の界面の少なくとも一方に設けられる導体と、を備えるプリント配線板であって、
前記繊維基材の厚みは40μm以下であり、
前記第1の樹脂の硬化物の25℃における引張り弾性率が、前記第2の樹脂層の25℃における引張り弾性率よりも大きく且つ3.0GPa以下であるプリント配線板を提供する。
【0011】
このようなプリント配線板では、コア基板に含まれる第1の樹脂の硬化物の引張り弾性率は25℃において3.0GPa以下であり、このコア基板を挟むように設けられる樹脂層の引張り弾性率よりも大きくなっている。このように、引張り弾性率が大きい樹脂硬化物を繊維基材近傍に配置させ、折り曲げ時に最も大きい引張り応力が生じる外側(表面に近い部位)に引張り弾性率が小さい樹脂層を配置させることで、クラックの発生が抑制され、柔軟性及び耐折性を向上させることができる。また、本発明のプリント配線板は、繊維基材を有しているため寸法安定性に優れており、繊維基材として厚み40μm以下のものを使用しているため、柔軟性にも十分に優れている。このようなプリント配線板は、筐体に折り曲げて搭載できるので、高密度に収納することが可能である。なお、本発明における金属箔張積層板及びプリント配線板におけるコア基板及び第2の樹脂層は硬化した状態(部分的に硬化した状態を含む)である。
【0012】
本発明のプリント配線板において、コア基板は、樹脂層と接する面側に第1の樹脂からなる内部樹脂層(第1の樹脂層)を有することが好ましい。これによって、一層柔軟性に優れるプリント配線板とすることができる。
【0013】
本発明のプリント配線板は、コア基板及び第2の樹脂層の少なくとも一方が、グリシジル基を有する樹脂を含有することが好ましい。これによって、耐熱性を向上させることができる。
【0014】
また、本発明のプリント配線板は、コア基板及び第2の樹脂層の少なくとも一方が、アミド基を有する樹脂を含有することが好ましい。これによって、耐熱性を向上させることができる。
【0015】
また、本発明のプリント配線板は、コア基板及び第2の樹脂層の少なくとも一方が、アクリル樹脂及びポリアミドイミド樹脂の一方又は双方を含有することが好ましい。これによって、可とう性や耐熱性を向上させることができる。
【0016】
また、本発明のプリント配線板は、コア基板及び第2の樹脂層の少なくとも一方が、シロキサン結合を含むポリアミドイミド樹脂を含有することが好ましい。これによって、可とう性や耐熱性を一層向上させることができる。
【0017】
また、本発明のプリント配線板は、導体の厚みが0.01〜30μmであることが好ましい。これによって、優れた接続信頼性を有するとともに、折り曲げ時に導体の剥離が抑制され、耐折性を一層向上させることができる。
【0018】
また、本発明の第二発明は、繊維基材が第1の樹脂に埋設されてなるコア基板と、コア基板を挟むように設けられる一対の第2の樹脂層と、前記樹脂層の前記コア基板側とは反対側の面上または前記樹脂層と前記コア基板の界面の少なくとも一方に設けられる金属箔と、を備える金属箔張積層板であって、前記繊維基材の厚みは40μm以下であり、前記第1の樹脂の硬化物の25℃における引張り弾性率は、前記第2の樹脂層の25℃における引張り弾性率よりも大きく且つ3.0GPa以下である金属箔張積層板を提供する。
【0019】
このような金属箔張積層板では、コア基板に含まれる第1の樹脂の硬化物の引張り弾性率は25℃において3.0GPa以下であり、このコア基板を挟むように設けられる第2の樹脂層の引張り弾性率よりも大きくなっている。このように、引張り弾性率が大きい樹脂を繊維基材近傍に配置させ、折り曲げ時に最も大きい引張り応力が生じる外側に引張り弾性率が相対的に小さい樹脂層を設けることで、クラックの発生が抑制され、柔軟性及び耐折性を向上させることができる。また、本発明の金属箔張積層板は、繊維基材を有しているため寸法安定性に優れており、繊維基材として厚み40μm以下のものを使用しているため、柔軟性に十分に優れている。このような金属箔張積層板を用いれば、筐体に高密度に収納できるプリント配線板を容易に作製することができる。
【0020】
本発明の金属箔張積層板において、コア基板は、第2の樹脂層と接する面側に第1の樹脂からなる内部樹脂層(第1の樹脂層)を有することが好ましい。これによって、一層柔軟性に優れるプリント配線板を容易に作製することができる。
【0021】
本発明の金属箔張積層板は、コア基板及び第2の樹脂層の少なくとも一方が、グリシジル基を有する樹脂を含有することが好ましい。これによって、耐熱性を向上させることができる。
【0022】
また、本発明の金属箔張積層板は、コア基板及び第2の樹脂層の少なくとも一方が、アミド基を有する樹脂を含有することが好ましい。これによって、耐熱性を向上させることができる。
【0023】
また、本発明の金属箔張積層板は、コア基板及び第2の樹脂層の少なくとも一方が、アクリル樹脂及びポリアミドイミド樹脂の一方又は双方を含有することが好ましい。これによって、可とう性や耐熱性を向上させることができる。
【0024】
また、本発明の金属箔張積層板は、コア基板及び第2の樹脂層の少なくとも一方が、シロキサン結合を含むポリアミドイミド樹脂を含有することが好ましい。これによって、可とう性や耐熱性を一層向上させることができる。
【0025】
また、本発明の金属箔張積層板は、金属層の厚みが0.01〜30μmであることが好ましい。このような金属層から配線パターンが形成されたプリント配線板を折り曲げた場合、配線パターンが剥離し難いことから、耐折性を一層向上させることができる。また、十分な接続信頼性を有するプリント配線板とすることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、より優れた耐折性を備えるプリント配線板、及び当該プリント配線板を容易に形成できる金属箔張積層板を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号を用い、重複する説明を省略する。
【0029】
図1は、本発明の好適な一実施形態に係るプリント配線板の部分断面図である。
図1に示されるプリント配線板100は、多層構造を有する多層プリント配線板であり、繊維基材と第1の樹脂硬化物とを含有するコア基板30と、コア基板30を挟むようにしてコア基板30の面上にそれぞれ設けられる、第2の樹脂硬化物からなる一対の樹脂層10と、樹脂層10のコア基板30側とは反対側の面上に設けられる導体7とを備える。
【0030】
コア基板30は、繊維基材と樹脂硬化物とを含有する繊維基材層3と、繊維基材層3を挟むようにして繊維基材層3の対向する面上にそれぞれ設けられる、一対の内部樹脂層5とを備える。繊維基材層3及び内部樹脂層5がそれぞれ含有する樹脂硬化物は同一であることが好ましい。すなわち、内部樹脂層5は、第1の樹脂硬化物からなることが好ましい。
【0031】
樹脂基材層3に含有される繊維基材としては、金属箔張積層板や多層プリント配線板を製造する際に用いられるものであれば特に制限されず、例えば織布や不織布等を用いることができる。繊維基材の材質としては、ガラス、アルミナ、ボロン、シリカアルミナガラス、シリカガラス、チラノ、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ジルコニア等の無機繊維、及びアラミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルフォン、カーボン、セルロース等の有機繊維、並びにこれらの混抄系が挙げられる。これらのうち、優れた寸法安定性と耐折性とを一層高水準で両立させる観点から、ガラス不織布及びガラス繊維の織布が好ましく、ガラス繊維の織布がより好ましい。
【0032】
なお、通常、繊維基材は表面に凹凸を有しているが、本実施形態における繊維基材(繊維基材層3)の厚みBは、例えば電子顕微鏡や金属顕微鏡で金属箔張積層板の断面を観察することによって測定できる。金属箔張積層板を作製する前であれば、マイクロメータで複合樹脂層の厚みを確認することもできる。プリント配線板又は金属箔張積層板における最大厚みをいう。本実施形態において、樹脂基材の厚みBは40μm以下である。なお、プリント配線板100の優れた耐折性と寸法安定性とを一層高水準で両立させる観点から、厚みBは1〜30μmであることが好ましく、10〜20μmであることがより好ましい。なお、金属箔張積層板やプリント配線板100の各層の厚みは、プリント配線板100の断面を光学顕微鏡で観測することによって測定することができる。
【0033】
繊維基材層3及び内部樹脂層(第1の樹脂層)5に含まれる樹脂硬化物(第1の樹脂硬化物)としては、熱硬化性樹脂の樹脂硬化物が好ましく、例えばエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、トリアジン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、シアネートエステル樹脂、これら樹脂の変性系等が挙げられる。また、これらの樹脂は1種を単独で、または2種以上を組み合わせてもよい。
【0034】
繊維基材層3及び内部樹脂層(第1の樹脂層)5に含まれるエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA、ノボラック型フェノール樹脂、オルトクレゾールノボラック型フェノール樹脂等の多価フェノール又は1,4−ブタンジオール等の多価アルコールとエピクロルヒドリンを反応させて得られるポリグリシジルエーテル、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸等の多塩基酸とエピクロルヒドリンを反応させて得られるポリグリシジルエステル、アミン、アミド又は複素環式窒素塩基を有する化合物のN−グリシジル誘導体、脂環式エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0035】
上述の樹脂硬化物は、グリシジル基を有する樹脂を含有することがより好ましい。また、繊維基材層3及び内部樹脂層(第1の樹脂層)5に含まれる樹脂硬化物は、可とう性や耐熱性向上の観点から、ポリアミドイミド樹脂やアクリル樹脂を含有することがより好ましい。このポリアミドイミド樹脂は、シロキサン結合を有することがさらに好ましい。これによって、可とう性や耐熱性を一層向上させることができる。
【0036】
繊維基材層3に含まれる樹脂硬化物及び内部樹脂層(第1の樹脂層)5の引張り弾性率(以下、「引張り弾性率E1」という。)は、3.0GPa以下であり、0.01〜3.0GPaであることが好ましく、0.01〜2.0GPaであることがより好ましい。引張り弾性率E1が3.0GPaを超える場合、耐折性に優れるプリント配線板とすることができない。一方、引張り弾性率E1が0.01GPa未満の場合、プリント配線板の取り扱い性や作業性が損なわれる傾向がある。
【0037】
なお、本明細書における引張り弾性率は、社団法人日本プリント回路工業会のビルドアップ配線板規格にある機械的特性規格(JPCA−BU01−1998の4.2)に準拠して、市販の測定装置を用いて測定することができる。
【0038】
プリント配線板100には、繊維基材層3と樹脂層10との間に、樹脂層10よりも大きい引張り弾性率を有する樹脂硬化物からなる内部樹脂層(第1の樹脂層)5が形成されている。すなわち、内部樹脂層(第1の樹脂層)5の引張り弾性率は樹脂層10の引張り弾性率よりも高い。かかる構造を有することによって、折り曲げ時に発生する引張り応力が樹脂層10、内部樹脂層(第1の樹脂層)5及び繊維基材層3に分散されるため、一層耐折性を向上させることができる。
【0039】
内部樹脂層(第1の樹脂層)5の厚みは、0.1〜20μmであることが好ましく、1〜10μmであることがより好ましい。当該厚みが1〜10μmである内部樹脂層(第1の樹脂層)5を備えるプリント配線板は、一層優れた耐折性を有する。内部樹脂層(第1の樹脂層)5の厚みが10μmを超えると、プリント回路板が折り曲げ難くなる傾向にある。なお、プリント配線板100の耐折性及び柔軟性を一層向上させる観点から、繊維基材層3を挟んで設けられる一対の内部樹脂層(第1の樹脂層)5の厚みは、同一であることが好ましい。内部樹脂層(第1の樹脂層)5は、例えば、ガラスクロスなどの繊維基材に硬化性樹脂組成物を含浸させた際に、繊維基材から硬化性樹脂組成物をはみ出させることによって形成することができる。
【0040】
樹脂層10は、樹脂硬化物からなることが好ましい。樹脂層10に含まれる樹脂硬化物としては、上述した繊維基材層3及び内部樹脂層(第1の樹脂層)5に含まれる樹脂硬化物と同様のものが挙げられる。
【0041】
樹脂層10の引張り弾性率(以下、「引張り弾性率E2」という。)は、引張り弾性率E1より小さく、0.1〜2.5GPaであることが好ましく、0.2〜1.5GPaであることがより好ましい。引張り弾性率E2が2.5GPaを超える場合、十分に優れた柔軟性が損なわれる傾向がある。一方、引張り弾性率E2が0.1GPa未満である場合、形状安定性が損なわれる傾向がある。なお、引張り弾性率E1及び引張り弾性率E2は、樹脂硬化物の成分や樹脂の重量平均分子量を変えることによって調整することができる。
【0042】
なお、引張り弾性率E1及び引張り弾性率E2は、下記式(1)を満たすことが好ましい。下記式(1)の関係を満足するコア基板30及び樹脂層10を有するプリント配線板は、耐折性と寸法安定性とを一層高水準で両立させることができる。
【0044】
樹脂層10の厚みd10は、5〜30μmであることが好ましく、10〜20μmであることがより好ましい。当該厚みd10が5〜30μmである樹脂層10を備えるプリント配線板は一層優れた耐折性を有する。樹脂層10の厚みd10が30μmを超えると、プリント配線板が折り曲げ難くなる傾向にある。
樹脂層の厚みは、例えば電子顕微鏡や金属顕微鏡でプリント配線板の断面を観察することによって測定する。
【0045】
プリント配線板100の耐折性及び柔軟性を一層向上させる観点から、コア基板30を挟んで設けられる一対の樹脂層10の厚みd10は、同一であることが好ましい。また、コア基板30と一対の樹脂層10との合計の厚み(C+2d10)は120μm以下であることが好ましい。当該厚みが120μmを超える場合、十分優れた柔軟性が損なわれる傾向がある。なお、プリント配線板100を構成するそれぞれの材料の厚みは特に限定されない。
【0046】
導体7は、配線パターンであり、例えば銅箔をエッチングして得られるものである。導体7の厚みAは、0.01〜30μmであることが好ましく、0.01〜20μmであることがより好ましい。導体7の厚みAが30μmを超えると、折り曲げ時に導体7が剥離し易くなる傾向がある。一方、導体7の厚みAが0.01μm未満であると、得られるプリント配線板の電気的な接続安定性が損なわれる傾向がある。
【0047】
図2は、本発明の好適な別の実施形態に係るプリント配線板の部分断面図である。プリント配線板200は、コア基板30を挟むようにして設けられる一対の第2の樹脂層10と、第2の樹脂層10のコア基板30側とは反対側の面上に設けられる導体9とを備える。また、第2の樹脂層10とコア基板の内部樹脂層(第1の樹脂層)5との間には、導体7が設けられている。
【0048】
このような多層プリント配線板であるプリント配線板200は、所定の厚みの繊維基材層3及び引張り弾性率E1を有する樹脂硬化物を含むコア基板30と、該コア基板30を挟むようにして、引張り弾性率E1より小さい引張り弾性率E2を有する樹脂硬化物で構成される樹脂層10とが積層された積層構造を有する。このため、十分優れた耐折性と十分優れた寸法安定性とを兼ね備えている。また、厚み方向において、互いに異なる位置に配置される導体7及び導体9を有するため、より高密度で配線を設けることが可能となる。
【0049】
図3は、本発明の好適な一実施形態に係る金属箔張積層板の部分断面図である。本実施形態の金属箔張積層板300は、繊維基材層3と前記繊維基材層を挟むようにして備える一対の内部樹脂層(第1の樹脂層)5とからなるコア基板30と、前記コア基板30をさらに挟むようにして一対の第2の樹脂層10とを備え、前記第2の樹脂層10の前記コア基板30側とは反対側の面100a、100b上に設けられる一対の金属層12をさらに備える。
【0050】
金属箔張積層板300の最外層を構成する金属層12に対して、フォトリソグラフィなどの公知の方法を施すことにより、配線パターンを形成することができる。これによって、耐折性と寸法安定性に十分優れる多層プリント配線板を作製することができる。金属層12としては、銅箔やアルミニウム箔などの金属箔を用いることができ、このうち銅箔が好ましい。
【0051】
金属層12の厚みDは、0.01〜30μmであることが好ましく、0.01〜20μmであることがより好ましい。金属層12の厚みDが30μmを超えると、折り曲げ時に金属層12から形成される配線パターンが剥離し易くなる傾向がある。一方、金属層12の厚みDが0.01μm未満であると、得られるプリント配線板の電気的な接続安定性が損なわれる傾向がある。
【0052】
次に、本発明の好適な実施形態に係るプリント配線板100、200及び金属箔張積層板300の製造方法について、
図1〜
図3を適宜参照しながら、以下に説明する。まず、繊維基材と硬化性樹脂組成物を準備する。繊維基材としては市販のガラス繊維を用いることができる。
【0053】
硬化性樹脂組成物としては、樹脂成分を溶剤と混合した樹脂組成物ワニスを好適に用いることができる。樹脂成分としては、エポキシ樹脂系、ポリイミド樹脂系、ポリアミドイミド樹脂系、トリアジン樹脂系、フェノール樹脂系、メラミン樹脂系、ポリエステル樹脂系、シアネートエステル樹脂系、これら樹脂の変性系等を用いることができる。ポリアミドイミド樹脂を用いる場合には、シロキサン結合を含むポリアミドイミド樹脂を用いると、折り曲げ性の観点でなお良い。これらの樹脂は1種を単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。但し、2種以上を組み合わせる場合、共通の樹脂系を用いることにより、樹脂層同士の密着を良好にすることができる。
【0054】
溶剤としては、アルコール系、エーテル系、ケトン系、アミド系、芳香族炭化水素系、エステル系、ニトリル系等を用いることができる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせた混合溶剤として用いてもよい。
【0055】
樹脂成分としては、アクリル樹脂を含有していてもよい。アクリル樹脂としては、アクリル酸モノマ、メタクリル酸モノマ、アクリロニトリル、グリシジル基を有するアクリルモノマなどを単独で、またはこれらを複数共重合させた共重合物を使用することが可能である。アクリル樹脂の分子量は特に限定されるものではないが、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量で30万〜100万、好ましくは40万〜80万のものを用いることができる。
【0056】
硬化性樹脂組成物は、硬化剤、促進剤、難燃剤、流動調整剤、カップリング剤などを含んでいてもよい。硬化剤は、公知のものを使用することができる。例えば、エポキシ樹脂を用いる場合には、ジシアンジアミド、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン、無水フタル酸、無水ピロメリット酸、フェノールノボラックやクレゾールノボラック等の多官能性フェノール等を用いることができる。
【0057】
促進剤は、樹脂と硬化剤との反応等を促進させる目的で用いられるものであり、種類や配合量は特に限定されるものではない。促進剤としては、例えば、イミダゾール系化合物、有機リン系化合物、第3級アミン、第4級アンモニウム塩等を用いることができる。硬化剤及び促進剤は、それぞれ1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
次に、繊維基材に硬化性樹脂組成物(樹脂組成物ワニス)を塗布して樹脂含浸基材を作製する。塗布条件に特に制限はなく、例えば市販の塗工装置を用いて塗布することができる。なお、必要に応じて、複数回重ね塗りを行うことによって、コア基板30の厚み(内部樹脂層5の厚み)を調整することができる。
【0059】
塗布後、成形する前に、溶剤が揮発可能な温度以上で加熱乾燥を行うことが好ましい。この場合、樹脂組成物ワニスの作製に用いた溶剤が揮発可能な温度以上に加熱して、樹脂組成物ワニスに使用した溶剤全量に対して、その80質量%以上を揮発させることが好ましい。かかる観点から、乾燥時の温度は80〜180℃とすることが好ましい。また、繊維基材に対する樹脂組成物ワニスの含浸量は、樹脂固形分と繊維基材の総量に対して、樹脂固形分が30〜80質量%であることが好ましい。
【0060】
加熱乾燥後、樹脂含浸基材を加熱及び加圧することによって、プリプレグを得ることができる。樹脂含浸基材の加熱及び加圧の条件は、成形温度80〜250℃、成形圧力0.5.0〜8.0MPaとすることが好ましく、成形温度130〜230℃、成形圧力1.5〜5.0MPaとすることがより好ましい。この加熱及び加圧によって、繊維基材に含浸された硬化性樹脂組成物を半硬化(Bステージ)状態にすることができる。
【0061】
プリプレグの厚みは、繊維基材の厚みよりも、0.1〜10μm程度厚いことが好ましい。すなわち、繊維基材層の両主面上に、合計で0.1〜10μmの厚みを有する内部樹脂層5を形成することが好ましい。
【0062】
プリプレグの硬化物の引張り弾性率は、4.7GPa以下であることが好ましい。これによって、耐折性に優れるプリント配線板とすることができる。
【0063】
このプリプレグとは別に、金属箔の表面上に樹脂組成物層が形成された樹脂付き金属箔を作製する。金属箔としては、例えば、市販の銅箔を用いることができる。銅箔の種類は特に制限されず、例えば、0.01〜30μmの厚みを有するものを用いることができる。
【0064】
この銅箔の上に、硬化性樹脂組成物と溶剤とを含有する樹脂組成物ワニスを塗布し、溶剤が揮発可能な温度以上で乾燥することにより、樹脂付き金属箔を形成することができる。即ち、樹脂付き金属箔における樹脂層はBステージ状態である。なお、この際に用いる樹脂組成物ワニスは、上述の繊維基材に塗布するものと同様のものを用いることができる。ただし、ここで用いる樹脂組成物ワニスは、硬化して後述する樹脂層10を形成するものであるため、硬化後の引張り弾性率が、コア基板30に含まれる樹脂硬化物よりも小さい必要がある。
【0065】
樹脂付き金属箔の樹脂層の厚みは5〜100μmであることが好ましく、10〜80μmであることがより好ましい。
【0066】
次に、プリプレグを挟むようにして、樹脂付き金属箔の樹脂組成物層側をプリプレグに向けて、樹脂付き金属箔をプリプレグの両面上に樹脂付き金属箔をそれぞれ重ね、加熱及び加圧することにより、
図3に示す金属箔張積層板300を得ることができる。このときの加熱及び加圧の条件は特に限定されないが、温度150〜280℃、圧力0.5〜20MPaであることが好ましく、温度170〜250℃、圧力1〜8MPaであることがより好ましい。
【0067】
次に、金属箔張積層板300を用いて、
図1に示すような100a、100b上に配線パターン(導体7)が形成されたプリント配線板100を作製する。配線パターンの形成は、フォトリソグラフィ法等の通常の方法によって行うことができる。
【0068】
また、プリント配線板100とは別に、プリプレグの両面上に金属箔を重ね、加熱及び加圧した後、フォトリソグラフィ法等の通常の方法によって配線パターン7を形成し、別に用意した樹脂付き金属箔の樹脂組成物層側を、前記配線パターン7を形成した面に向けて重ねて加熱及び加圧し、さらに最外層の金属箔をフォトリソグラフィ法等の通常の方法によって配線パターン9を形成することによって、
図2に示すようなプリント配線板200を得ることができる。
【0069】
この際のプレスの条件としては、温度150〜280℃、圧力0.5〜20MPaであることが好ましく、温度170〜250℃、圧力1〜8MPaであることがより好ましい。
【0070】
なお、導体7、9間は、例えば、樹脂層10に貫通孔を設け、そこにめっき等によって導電体を形成することによって、電気的に導通させることができる。
【0071】
上述のプリント配線板100、200は、耐折性及び寸法安定性に十分優れており、所定の回路部品(図示せず)を実装して、筐体などの所定のスペースに折り曲げて収納することができる。これによって、高密度の実装が可能となる。
【0072】
なお、プリント配線板200を挟むようにして、さらに両面上に、一対の樹脂付き銅箔を、樹脂組成物層側をプリント配線板200に向けてそれぞれ積層し、例えば温度150〜280℃、圧力0.5〜20MPaでプレスすることによって、さらに樹脂層及び金属箔を積層し、金属箔張積層板を形成した後、フォトリソグラフィなどの公知の方法によって、導体形成を行うことも可能である。
【0073】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではない。また、内部樹脂層5と樹脂層10との間に、内部樹脂層5の引張り弾性率と樹脂層10の引張り弾性率の間の引張り弾性率を有する樹脂層を複数有していてもよい。その場合には、内部樹脂層5から外側に向かって徐々に引張り弾性率が小さくなるように樹脂層が配列されることが好ましい。
【実施例】
【0074】
以下、実施例及び比較例に基づき本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0075】
まず、以下に説明する配合例1〜7によって、熱硬化性樹脂ワニス1〜7を調製した。
【0076】
(配合例1)
ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製、商品名:NC−3000H)44質量部と、アミノトリアジンノボラックエポキシ樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製、商品名:LA−3018)11質量部と、2−フェニルイミダゾール(JSR株式会社製、商品名:G−8009L)0.2質量部と、アクリルゴム(ナガセケムテックス株式会社製、商品名:HM6−IM50)30質量部とを、メチルイソブチルケトンに溶解して、樹脂成分が均一になるまで約3時間撹拌した後、脱泡のため24時間室温で静置して、樹脂固形分30質量%の熱硬化性樹脂ワニス1を調製した。
【0077】
(配合例2)
ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製、商品名:NC−3000H)37質量部と、アミノトリアジンノボラックエポキシ樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製、商品名:LA−3018)9質量部と、2−フェニルイミダゾール(JSR株式会社製、商品名:G−8009L)0.2質量部と、アクリルゴム(ナガセケムテックス株式会社製、商品名:HM6−IM50)40質量部とを、メチルイソブチルケトンに溶解して、樹脂成分が均一になるまで約3時間撹拌した後、脱泡のため24時間室温で静置して、樹脂固形分30質量%の熱硬化性樹脂ワニス2を調製した。
【0078】
(配合例3)
ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製、商品名:NC−3000H)33質量部と、アミノトリアジンノボラックエポキシ樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製、商品名:LA−3018)8質量部と、2−フェニルイミダゾール(JSR株式会社製、商品名:G−8009L)0.2質量部と、アクリルゴム(ナガセケムテックス株式会社製、商品名:HM6−IM50)45質量部とを、メチルイソブチルケトンに溶解して、樹脂成分が均一になるまで約3時間撹拌した後、脱泡のため24時間室温で静置して、樹脂固形分30質量%の熱硬化性樹脂ワニス3を調製した。
【0079】
(配合例4)
ポリアミドイミド樹脂(日立化成コーテットサンド株式会社製、商品名:CSD40)24.87kg(樹脂固形分:28.1質量%)と、エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製、商品名:EPPN502H)2.0kgのメチルエチルケトン溶液(樹脂固形分:50質量%)と、HP4032D(日本化薬株式会社製、商品名)3.0kgと、NC3000H(日本化薬株式会社製、商品名)1.0kgのメチルエチルケトン溶液(樹脂固形分:50質量%)と、1−シアノエチル−2−エチル−1−メチルイミダゾール8.0gとを配合し、さらにOP930(クラリアント社製、商品名)1.0kgと、HP360(昭和電工株式会社製、商品名)1.5kgとを加え、樹脂成分が均一になるまで約3時間撹拌した後、脱泡のため24時間室温で静置して樹脂固形分30質量%の樹脂組成物ワニス4を調製した。
【0080】
(配合例5)
ポリアミドイミド樹脂(日立化成工業株式会社製、商品名:KS9003)23.18kg(樹脂固形分:30.2質量%)と、エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製、商品名:EPPN502H)2.0kgのメチルエチルケトン溶液(樹脂固形分:50質量%)と、HP4032D(日本化薬株式会社製、商品名)3.0kgと、NC3000(日本化薬株式会社製、商品名)1.0kgのメチルエチルケトン溶液(樹脂固形分:50質量%)と、1−シアノエチル−2−エチル−1−メチルイミダゾール8.0gとを配合し、さらにOP930(クラリアント社製、商品名)1.0kgと、HP360(昭和電工株式会社製、商品名)1.5kgとを加えて樹脂成分が均一になるまで約3時間撹拌した後、脱泡のため24時間室温で静置して樹脂固形分40質量%の樹脂組成物ワニス5を調製した。
【0081】
(配合例6)
ポリアミドイミド樹脂(日立化成工業株式会社製、商品名:KS9900B)22.44kg(樹脂固形分:31.2質量%)と、エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製、商品名:EPPN502H)2.0kgのメチルエチルケトン溶液(樹脂固形分:50質量%)と、HP4032D(日本化薬株式会社製、商品名)3.0kgと、NC3000(日本化薬株式会社製、商品名)1.0kgのメチルエチルケトン溶液(樹脂固形分50質量%)と、1−シアノエチル−2−エチル−1−メチルイミダゾール8.0gとを配合し、さらにOP930(クラリアント社製、商品名)1.0kgと、HP360(昭和電工株式会社製、商品名)1.5kgとを加えて樹脂成分が均一になるまで約3時間撹拌した後、脱泡のため24時間室温で静置して樹脂固形分40質量%の樹脂組成物ワニス6を調製した。
【0082】
(配合例7)
臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂(JER(株)製、商品名:エピコート5046、エポキシ当量:475)100質量部と、ジシアンジアミド4質量部と、イミダゾール(四国化成(株)製、商品名:2E4MZ)0.5質量部とを、プロピレングリコールモノメチルエーテルに溶解して、樹脂成分が均一になるまで約3時間撹拌した後、脱泡のため24時間室温で静置して樹脂固形分70質量%の熱硬化性樹脂ワニス7を調製した。
【0083】
[引張り弾性率の測定]
熱硬化性樹脂ワニス1〜7の硬化物の引張り弾性率を、社団法人日本プリント回路工業会のビルドアップ配線板規格にある機械的特性規格(JPCA−BU01−1998の4.2)に準拠して以下の手順で測定した。まず、熱硬化性樹脂ワニス1〜7を、それぞれ厚みが18μmの銅箔の上に乾燥後の樹脂組成物層の厚みが50μmになるように横型塗工機で塗布し、100〜140℃の乾燥炉内に5分間滞留させて乾燥し、樹脂付き銅箔を作製した。各樹脂付き銅箔の樹脂組成物層上に、粗化面を有する銅箔(日本電解株式会社製、HLA18、厚み18μm)を、該粗化面が樹脂組成物層に接触するようにそれぞれ重ねて、170℃、90分間、4.0MPaのプレス条件でプレスして、両面銅張積層板を作製した。各両面銅張積層板の外側の銅箔を両面エッチングして完全に除去した。その後、80mm×10mmのサイズに切断して、引張り弾性率測定用の試験片を得た。
【0084】
オートグラフ(島津製作所製、型番:AG−100C)を用いて、上記の通り作製した各試験片の引張り弾性率を測定した。測定は、25℃、測定長さ60mm、引張り速度5mm/minの条件で行い、測定結果を基に応力−ひずみ曲線を作成し、その測定初期の傾きから引張り弾性率を求めた。測定結果は、表1〜3に示すとおりであった。
【0085】
(実施例1)
<プリプレグの作製>
ガラスクロスWEX−1027(旭シュエーベル株式会社製、商品名、厚み19μm)に、プリプレグの厚みが20μmになるように、熱硬化性樹脂ワニス1を縦型塗工機で塗布し、120〜150℃で20分間加熱乾燥して、プリプレグを作製した。
【0086】
<樹脂付き銅箔の作製>
厚みが18μmの銅箔(日本電解株式会社製、商品名:HLA18)の上に、熱硬化性樹脂ワニス2を横型塗工機で塗布し、100〜140℃の乾燥炉中、滞留時間5分間で加熱、乾燥して、樹脂組成物層の厚みがそれぞれ15μm及び50μmである樹脂付き銅箔を作製した。
【0087】
<評価基板の作製>
プリプレグを挟むようにして、プリプレグの両面上に、樹脂厚み15μmの樹脂付き銅箔を、樹脂組成物層側がプリプレグに接触するように貼り合わせて、170℃、90分間、4.0MPaのプレス条件でプレスして両面銅箔張積層板を作製した。
【0088】
次に両面銅箔張積層板の一方面(主面)の銅箔をエッチングして、ライン幅75μm、ライン間スペース75μmの導通パターン回路を作製した。また、他方面の銅箔は全面エッチングを行って完全に除去した。このようにして得られた積層板に、樹脂厚みが50μmである一対の樹脂付き銅箔を、樹脂組成物層側が該積層板に接触するように貼り合わせて、170℃、90分間、4.0MPaのプレス条件でプレスし、外層銅箔をエッチングにより全面除去して評価基板を得た。評価基板の厚み及び各層の厚みを光学顕微鏡で観察したところ、表1に示すとおりであった。
【0089】
(実施例2)
樹脂付き銅箔を作製する際の熱硬化性樹脂ワニスとして、熱硬化性樹脂ワニス2の代わりに熱硬化性樹脂ワニス3を用いたこと以外は、実施例1と同様にして評価基板を作製した。
【0090】
(実施例3及び4)
プリプレグの作製において、プリプレグの厚みがそれぞれ30μm及び40μmになるように熱硬化性樹脂ワニス1を縦型塗工機で塗布したこと以外は、実施例2と同様にして評価基板を作製した。
【0091】
(実施例5〜8)
プリプレグを作製する際の熱硬化性樹脂ワニスとして、熱硬化性樹脂ワニス1の代わりに表1に示す熱硬化性樹脂ワニスを、樹脂付き銅箔を作製する際の熱硬化性樹脂ワニスとして、熱硬化性樹脂ワニス2の代わりに表1に示す熱硬化性樹脂ワニスを用いたこと以外は、実施例1と同様にして評価基板を作製した。
【0092】
(比較例1)
<プリプレグの作製>
ガラスクロス(旭シュエーベル(株)製、商品名:WEX−1027、厚み19μm)に、プリプレグの厚みが50μmになるように、熱硬化性樹脂ワニス1を縦型塗工機で塗布し、120〜150℃で20分間加熱乾燥して、プリプレグを作製した。
【0093】
<樹脂付き銅箔の作製>
厚みが18μmの銅箔(日本電解株式会社製、商品名:HLA18)の上に、熱硬化性樹脂ワニス1を横型塗工機で塗布し、100〜140℃の乾燥炉中、滞留時間5分間で加熱、乾燥して、樹脂組成物層の厚みが50μmである樹脂付き銅箔を作製した。
【0094】
<評価基板の作製>
プリプレグを挟むようにして、プリプレグの両面上に、厚みが18μmの銅箔(日本電解株式会社製、商品名:HLA18)をそれぞれ重ね、170℃、90分間、4.0MPaのプレス条件でプレスして両面銅箔張積層板を作製した。
【0095】
次に、両面銅箔張積層板の一方面の銅箔をエッチングして、ライン幅75μm、ライン間スペース75μmの導通パターン回路を作製した。また、他方面の銅箔は全面エッチングを行って完全に除去した。このようにして得られた積層板に、上記の通り作製した樹脂厚みが50μmである一対の樹脂付き銅箔を、樹脂組成物層側が該積層板に接触するように貼り合わせて、170℃、90分間、4.0MPaのプレス条件でプレスし、外層銅箔をエッチングにより全面除去して評価基板を得た。評価基板の厚み及び各層の厚みを光学顕微鏡で観察したところ、表2に示すとおりであった。
【0096】
(比較例2及び3)
プリプレグを作製する際の熱硬化性樹脂ワニスとして、熱硬化性樹脂ワニス1の代わりに表2に示す熱硬化性樹脂ワニスを、樹脂付き銅箔を作製する際の熱硬化性樹脂ワニスとして、熱硬化性樹脂ワニス1の代わりに表2に示す熱硬化性樹脂ワニスを用いたこと以外は、比較例1と同様にして評価基板を作製した。
【0097】
(比較例4)
プリプレグを作製する際の熱硬化性樹脂ワニスとして、熱硬化性樹脂ワニス1の代わりに表2に示す熱硬化性樹脂ワニスを、樹脂付き銅箔を作製する際の熱硬化性樹脂ワニスとして、熱硬化性樹脂ワニス2の代わりに表2に示す熱硬化性樹脂ワニスを用いたこと以外は、実施例1と同様にして評価基板を作製した。
【0098】
(比較例5及び6)
プリプレグを作製する際の熱硬化性樹脂ワニスとして、熱硬化性樹脂ワニス1の代わりに表2又は表3に示す熱硬化性樹脂ワニスを、樹脂付き銅箔を作製する際の熱硬化性樹脂ワニスとして、熱硬化性樹脂ワニス1の代わりに表2又は表3に示す熱硬化性樹脂ワニスを用いたこと以外は、比較例1と同様にして評価基板を作製した。
【0099】
(比較例7〜9)
プリプレグを作製する際の熱硬化性樹脂ワニスとして、熱硬化性樹脂ワニス1の代わりに表3に示す熱硬化性樹脂ワニスを、樹脂付き銅箔を作製する際の熱硬化性樹脂ワニスとして、熱硬化性樹脂ワニス2の代わりに表3に示す熱硬化性樹脂ワニスを用いたこと以外は、実施例1と同様にして評価基板を作製した。
【0100】
(比較例10)
評価基板の作製において、厚みが18μmの銅箔(日本電解株式会社製、商品名:HLA18)の代わりに、厚みが35μmの銅箔(日本電解株式会社製、商品名:HLA35)をプリプレグの両面上に重ねたこと以外は、比較例1と同様にして評価基板を作製した。
【0101】
(比較例11)
<プリプレグの作製>
ガラスクロスWEX−1080(旭シュエーベル株式会社製、商品名、厚み45μm)に、プリプレグの厚みが45μmとなるように、熱硬化性樹脂ワニス2を縦型塗工機で塗布し、120〜150℃で20分間加熱乾燥させて、プリプレグを作製した。
【0102】
<樹脂付き銅箔及び評価基板の作製>
上記プリプレグを用いたこと以外は、実施例2と同様にして樹脂付き銅箔及び評価基板を作製した。
【0103】
[プリプレグの硬化物の引張り弾性率の評価]
各実施例及び比較例において作製したプリプレグの硬化物の引張り弾性率(25℃)を、上述した熱硬化性樹脂ワニス1〜7の硬化物の引っ張り弾性率測定方法と同様にして測定した。測定結果は、表1〜3に示すとおりであった。
【0104】
[耐折性の評価]
実施例1〜8及び比較例1〜11で作製した評価基板の耐折性を、フレキシブルプリント配線板用銅張積層板試験方法(JIS C6471(1995))に準拠して、MIT耐折疲労試験機(東洋精機製作所製、商品名:2121011−00)を使用して評価した。試験は、曲げの半径0.38mmに対して加重500g,折り曲げ角度135度,速度175cpm(cycles per minutes)の条件で行い、導線回路パターンが断線するまでの折り曲げ回数を測定した(測定回数:5回)。全ての測定において20回以上折り曲げ可能なものを良好とした。測定結果は表1〜3に示すとおりであった。
【0105】
【表1】
【0106】
【表2】
【0107】
【表3】
【0108】
表1〜3に示すとおり、ガラス布の厚みが40μm以下であり、繊維基材層に含まれる樹脂硬化物の引張り弾性率が3.0GPa以下で、外側に配置される樹脂層の引張り弾性率よりも高い実施例1〜8は、耐折性に優れ、最低でも20回以上折り曲げ可能であることが確認された。比較例2、8及び比較例11においても折り曲げ回数30回を達成できることがあるが、10回程度で断線することがあり、ばらつきが大きく耐折性に優れるとは判定できなかった。