(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、絶縁樹脂の低誘電率化による電界緩和をはかり、部分放電の抑制を試みても、部分放電を完全になくすことは困難であり、絶縁電線やモータの寿命を延ばすには未だ十分ではなかった。
【0008】
そこで、本発明者らは、頻繁に起こる部分放電による破壊的な絶縁皮膜の劣化を防ぎ、絶縁被膜の長寿命化を図るには、絶縁皮膜の絶縁破壊電圧を高くすることが重要であるとの見地から検討を行い、絶縁樹脂の低誘電率化による部分放電の抑制は必ずしも絶縁破壊電圧の向上には繋がらないとの知見を得た。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、絶縁層の絶縁破壊電圧特性を向上させることができ、絶縁層の絶縁破壊を抑制することができる絶縁層の耐絶縁破壊性向上方法、耐熱性及び耐絶縁破壊性に優れた、電気絶縁材料、電気電子部品、並びに、絶縁電線及びこれを用いたステータ又はローター、これらのステータ又はローターを用いたインバータ駆動モータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明者らは鋭意検討を行った結果、特定のポリブタジエン系樹脂によって変性された変性ポリアミドイミド樹脂を含有する樹脂組成物から形成した絶縁皮膜を有する絶縁エナメル線が、絶縁破壊電圧特性、特には、グリセリン/飽和食塩水に浸漬した過酷環境下での絶縁破壊試験において高い絶縁破壊電圧を示すことを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明は、下記の第1群及び第2群から選択される少なくとも1種の変性ポリアミドイミド樹脂を提供する。
第1群:下記のA群、B群及びC群から選択される少なくとも1種のポリブタジエン系樹脂の存在下、トリカルボン酸無水物若しくはその誘導体と、ジイソシアネート化合物若しくはジアミノ化合物と、を反応させて得られる変性ポリアミドイミド樹脂。
第2群:下記のA群、B群及びC群から選択される少なくとも1種のポリブタジエン系樹脂と、ポリアミドイミド樹脂と、を混合して得られる変性ポリアミドイミド樹脂。
A群:ポリブタジエン、ポリイソプレン、及びこれらの水素添加物。
B群:水酸基、イソシアネート基、アミノ基、オキシラン基、酸無水物基、アルコキシ基、アクリロイル基及びメタクリロイル基からなる群より選択される一種以上の官能基を有するポリブタジエン系樹脂及びこれらの水素添加物。
C群:共重合成分として炭素数が12以上の不飽和脂肪酸を含むポリブタジエン系樹脂及びこれらの水素添加物。
【0012】
本発明の変性ポリアミドイミド樹脂において、上記第1群及び上記第2群におけるポリブタジエン系樹脂の使用量が、得られる変性ポリアミドイミド樹脂の全量を基準として0.01〜15質量%であることが好ましい。
【0013】
本発明はまた、上記本発明の変性ポリアミドイミド樹脂のうちの1種以上を含む電気絶縁材料を提供する。
【0014】
本発明の電気絶縁材料によれば、絶縁破壊電圧特性に優れ電気絶縁層を形成することができ、これにより、高電圧が掛かったときの絶縁層の絶縁破壊を抑制することが可能となり、電気機器やモータなどの長寿命化を図ることができる。この効果は、特に高電圧が掛かるインバータ制御においてより有効となる。また、本発明の電気絶縁材料によれば、薄い絶縁層でも十分な絶縁破壊電圧特性が得られることから、電気機器やモータなどの小型化、軽量化に寄与することもできる。
【0015】
本発明は、導体上に設けられる絶縁層の耐絶縁破壊性を向上する方法であって、導体に、下記の第1群及び第2群から選択される少なくとも1種の変性ポリアミドイミド樹脂を含有する電気絶縁材料を塗布し焼付けることにより絶縁層を形成することを特徴とする絶縁層の耐絶縁破壊性向上方法を提供する。
第1群:下記のA群、B群及びC群から選択される少なくとも1種のポリブタジエン系樹脂の存在下、トリカルボン酸無水物若しくはその誘導体と、ジイソシアネート化合物若しくはジアミノ化合物と、を反応させて得られる変性ポリアミドイミド樹脂。
第2群:下記のA群、B群及びC群から選択される少なくとも1種のポリブタジエン系樹脂と、ポリアミドイミド樹脂と、を混合して得られる変性ポリアミドイミド樹脂。
A群:ポリブタジエン、ポリイソプレン、及びこれらの水素添加物。
B群:水酸基、イソシアネート基、アミノ基、オキシラン基、酸無水物基、アルコキシ基、アクリロイル基及びメタクリロイル基からなる群より選択される一種以上の官能基を有するポリブタジエン系樹脂及びこれらの水素添加物。
C群:共重合成分として炭素数が12以上の不飽和脂肪酸を含むポリブタジエン系樹脂及びこれらの水素添加物。
【0016】
本発明の絶縁層の耐絶縁破壊性向上方法によれば、絶縁層の絶縁破壊電圧特性を向上させることができ、これにより、高電圧が掛かったときの絶縁層の絶縁破壊を抑制することが可能となり、電気機器やモータなどの長寿命化を図ることができる。この効果は、特に高電圧が掛かるインバータ制御においてより有効となる。また、本発明の絶縁層の耐絶縁破壊性向上方法によれば、薄い絶縁層でも十分な絶縁破壊電圧特性が得られることから、電気機器やモータなどの小型化、軽量化に寄与することもできる。
【0017】
本発明の絶縁層の耐絶縁破壊性向上方法において、上記第1群及び上記第2群におけるポリブタジエン系樹脂の使用量が、得られる変性ポリアミドイミド樹脂の全量を基準として0.01〜15質量%であることが好ましい。
【0018】
本発明はまた、導体と、該導体に、下記の第1群及び第2群から選択される少なくとも1種の変性ポリアミドイミド樹脂を含有する電気絶縁材料を塗布し焼付けることにより形成された絶縁皮膜と、を備える電気電子部品を提供する。
第1群:下記のA群、B群及びC群から選択される少なくとも1種のポリブタジエン系樹脂の存在下、トリカルボン酸無水物若しくはその誘導体と、ジイソシアネート化合物若しくはジアミノ化合物と、を反応させて得られる変性ポリアミドイミド樹脂。
第2群:下記のA群、B群及びC群から選択される少なくとも1種のポリブタジエン系樹脂と、ポリアミドイミド樹脂と、を混合して得られる変性ポリアミドイミド樹脂。
A群:ポリブタジエン、ポリイソプレン、及びこれらの水素添加物。
B群:水酸基、イソシアネート基、アミノ基、オキシラン基、酸無水物基、アルコキシ基、アクリロイル基及びメタクリロイル基からなる群より選択される一種以上の官能基を有するポリブタジエン系樹脂及びこれらの水素添加物。
C群:共重合成分として炭素数が12以上の不飽和脂肪酸を含むポリブタジエン系樹脂及びこれらの水素添加物。
【0019】
本発明の電気電子部品において、上記第1群及び前記第2群におけるポリブタジエン系樹脂の使用量が、得られる変性ポリアミドイミド樹脂の全量を基準として0.01〜10質量%であることが好ましい。
【0020】
本発明はまた、導体と、該導体に、下記の第1群及び第2群から選択される少なくとも1種の変性ポリアミドイミド樹脂を含有する電気絶縁材料を塗布し焼付けることにより形成された絶縁皮膜と、を備える絶縁電線を提供する。
第1群:下記のA群、B群及びC群から選択される少なくとも1種のポリブタジエン系樹脂の存在下、トリカルボン酸無水物若しくはその誘導体と、ジイソシアネート化合物若しくはジアミノ化合物と、を反応させて得られる変性ポリアミドイミド樹脂。
第2群:下記のA群、B群及びC群から選択される少なくとも1種のポリブタジエン系樹脂と、ポリアミドイミド樹脂と、を混合して得られる変性ポリアミドイミド樹脂。
A群:ポリブタジエン、ポリイソプレン、及びこれらの水素添加物。
B群:水酸基、イソシアネート基、アミノ基、オキシラン基、酸無水物基、アルコキシ基、アクリロイル基及びメタクリロイル基からなる群より選択される一種以上の官能基を有するポリブタジエン系樹脂及びこれらの水素添加物。
C群:共重合成分として炭素数が12以上の不飽和脂肪酸を含むポリブタジエン系樹脂、及びこれらの水素添加物。
【0021】
本発明の絶縁電線は、上記絶縁皮膜を有することにより、耐熱性及び耐絶縁破壊性に優れたものになり得る。本発明の絶縁電線によれば、高電圧が掛かったときの絶縁層の絶縁破壊を抑制することが可能となり、電気機器やモータなどの長寿命化を図ることができる。この効果は、特に高電圧が掛かるインバータ制御においてより有効となる。また、本発明の絶縁電線は、絶縁皮膜を薄くしても優れた絶縁破壊電圧特性を示すことができ、コイルやモータなどの小型化、軽量化に寄与することできる。
【0022】
本発明の絶縁電線において、上記第1群及び上記第2群におけるポリブタジエン系樹脂の使用量が、得られる変性ポリアミドイミド樹脂の全量を基準として0.01〜10質量%であることが好ましい。
【0023】
本発明はまた、上記本発明の絶縁電線を用いてなるコイルを備えるステータ又はローターを提供する。本発明のステータ又はローターは、本発明の絶縁電線を用いてなるコイルを備えることにより、高電圧が掛かる場合であっても絶縁破壊しにくく長寿命化が可能である。また、本発明のステータ及びローターは、小型化、軽量化が可能である。
【0024】
本発明はまた、上記本発明のステータ又はローターを備えるインバータ駆動モータを提供する。本発明のインバータ駆動モータは、本発明のステータ又はローターを備えることにより、高電圧が掛かる場合であっても絶縁破壊しにくく長寿命化が可能である。また、本発明のインバータ駆動モータは、小型化、軽量化が可能である。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、絶縁層の絶縁破壊電圧特性を向上させることができ、絶縁層の絶縁破壊を抑制することができる絶縁層の耐絶縁破壊性向上方法、耐熱性及び耐絶縁破壊性に優れた、電気絶縁材料、電気電子部品、並びに、絶縁電線及びこれを用いたステータ又はローター、これらのステータ又はローターを用いたインバータ駆動モータを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明に係る電気絶縁材料は、本発明に係る変性ポリアミドイミド樹脂を少なくとも1種含有する。
【0028】
本発明に係る変性ポリアミドイミド樹脂としては、(I)所定のポリブタジエン系樹脂成分を分子構造中に有するポリアミドイミド樹脂、(II)ポリアミドイミド樹脂と、所定のポリブタジエン系樹脂とを混合してなるものが挙げられる。本発明に係る電気絶縁材料は、上記(I)及び(II)の変性ポリアミドイミド樹脂のうちの一種以上と、更にポリブタジエン系樹脂及び/又はポリアミドイミド樹脂とを含んでいてもよい。なお、本明細書では、ポリブタジエン及びポリイソプレンもポリブタジエン系樹脂成分として説明する。
【0029】
上記(I)の変性ポリアミドイミド樹脂は、所定のポリブタジエン系樹脂(以下(c)成分ということがある。)の存在下に、トリカルボン酸無水物若しくはその誘導体(以下(a)成分或いは酸成分ということがある。)とジイソシアネート化合物若しくはジアミノ化合物(以下(b)成分ということがある。)とを反応させて得ることができる。
【0030】
また、上記(II)の変性ポリアミドイミド樹脂は、ポリアミドイミド樹脂と、所定のポリブタジエン系樹脂を混合することにより得ることができる。これらの混合はこれらが溶解する溶剤中で行うことが好ましく、混合に際しては適宜加熱(好ましくは室温〜100℃)される。ここで、未変性のポリアミドイミド樹脂は、トリカルボン酸無水物若しくはその誘導体と、ジイソシアネート化合物若しくはジアミノ化合物とを反応させて得られるものである。
【0031】
本発明においては、一層高い絶縁破壊電圧を得る観点から、上記(I)の変性ポリアミドイミド樹脂が好ましい。
【0032】
本発明において用いられるトリカルボン酸無水物としては、イソシアネート基又はアミノ基と反応する酸無水物基を有する3価のカルボン酸であれば、その誘導体を含め特に制限はなく用いることができる。例えば、下記一般式(I)又は(II)で示される酸無水物基を有する3価のカルボン酸無水物がある。耐熱性を考慮すると芳香族基を有するものが好ましく、耐熱性、コスト面等を考慮すれば、トリメリット酸無水物が特に好ましい。これらは、目的に応じて単独又は混合して用いることができる。
【0033】
【化1】
(Yは、−CH
2−、−CO−、−SO
2−又は−O−を示す。)
【0035】
また、酸成分の一部に、必要に応じて、テトラカルボン酸二無水物(ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6−ピリジンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−スルホニルジフタル酸二無水物、m−ターフェニル−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物(3,3”,4,4”−m−ターフェニルテトラカルボン酸二無水物)、4,4’−オキシジフタル酸二無水物、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(2,3−又は3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−又は3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス[4−(2,3−又は3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス[4−(2,3−又は3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ−[2,2,2]−オクト−7−エン−2:3:5:6−テトラカルボン酸二無水物等)などのテトラカルボン酸二無水物などを使用することができる。
【0036】
また、ジイソシアネート化合物若しくはジアミノ化合物としては、下記一般式(III)、(IV)、(V)で示される二価のアミノ基又はイソシアネート基を有する芳香族化合物が使用できる。
【0037】
【化3】
【化4】
【化5】
[これらの式中、R
2はアルキル基、水酸基又はアルコキシ基を示し、R
3はアミノ基又はイソシアネート基を示す。R
2のアルキル基又はアルコキシ基としては、炭素数1〜20のものが好ましい。]
【0038】
一般式(III)、(IV)又は(V)で示される芳香族ジイソシアネート化合物又は芳香族ジアミノ化合物として、例えば、4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジイソシアナトビフェニル、3,4’−ジイソシアナトビフェニル、4,4’−ジイソシアナト−3,3’−ジメチルビフェニル、4,4’−ジイソシアナト−2,2’−ジメチルビフェニル、4,4’−ジイソシアナト−3,3’−ジエチルビフェニル、4,4’−ジイソシアナト−2,2’−ジエチルビフェニル、4,4’−ジイソシアナト−3,3’−ジメトキシビフェニル、4,4’−ジイソシアナト−2,2’−ジメトキシビフェニル、1,5−ジイソシアナトナフタレン、2,6−ジイソシアナトナフタレン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジアミノビフェニル、3,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジメチルビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチルビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジエチルビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメトキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジメトキシビフェニル、1,5−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノナフタレン等が挙げられる。これらは、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0039】
また、ジイソシアネート化合物若しくはジアミノ化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジイソシアナトジフェニルエーテル、2,2−ビス[4−(4’−イソシアナトフェノキシ)フェニル]プロパン、トリレンジアミン、キシリレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス[4−(4’−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン等の芳香族ジイソシアネート化合物又は芳香族ジアミノ化合物を使用することができる。
【0040】
更に、ジイソシアネート化合物若しくはジアミノ化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、ジアミノイソホロン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、1,4−ジアミノトランスシクロヘキサン、水添m−キシリレンジアミン、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジイソシアナトイソホロン、ビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン、1,4−ジイソシアナトトランスシクロヘキサン、水添m−キシリレンジイソシアネート等の脂肪族若しくは脂環式イソシアネート化合物を使用することができる。ただし、上記の化合物を使用するときは、前記した芳香族ジイソシアネート化合物又は芳香族ジアミノ化合物を併用することが好ましい。これらの使用量は、得られる樹脂の耐熱性等の観点から、ジイソシアネート化合物若しくはジアミノ化合物全量の50モル%以下が好ましい。
【0041】
上述したジイソシアネート化合物若しくはジアミノ化合物は、3官能以上のポリイソシアネート化合物若しくはポリアミノ化合物を併用することもできる。
【0042】
本発明において用いられるジイソシアネート化合物若しくはジアミノ化合物としては、耐熱性、溶解性、機械特性、コスト面等のバランスを考慮すれば、4,4 ’−ジフェニルメタンジイソシアネートが特に好ましい。
【0043】
また、経日変化を避けるために必要な場合、ブロック剤でイソシアネート基を安定化したものを使用してもよい。ブロック剤としては、例えば、アルコール、フェノール、オキシム等が挙げられるが、特に制限はない。
【0044】
本発明で用いられる所定のポリブタジエン系樹脂としては、例えば、下記A群、B群及びC群から選択される少なくとも1種が挙げられる。
A群:ポリブタジエン、ポリイソプレン、及びこれらの水素添加物。
B群:水酸基、イソシアネート基、アミノ基、オキシラン基、酸無水物基、アルコキシ基、アクリロイル基及びメタクリロイル基からなる群より選択される一種以上の官能基を有するポリブタジエン系樹脂及びこれらの水素添加物。
C群:共重合成分として炭素数が12以上の不飽和脂肪酸を含むポリブタジエン系樹脂及びこれらの水素添加物。
【0045】
本発明で用いられる所定のポリブタジエン系樹脂は、官能基を有するものが好ましく、イソシアネート基、アミノ基又はカルボキシル基と反応性を有する官能基を有しているものがより好ましい。このような官能基としては、水酸基、カルボキシル基、オキシラン基(エポキシ基若しくはグリシジル基)、アルコシキ基等が挙げられる。
【0046】
ポリブタジエン系樹脂としては、1,4−繰り返し単位、1,2−繰り返し単位又はこれらの両方を有するポリブタジエンがある。なお、上記1,4−繰り返し単位は、下式(1t)または(1c)で表され、これらの繰り返し単位はポリブタジエンの構成成分として混ざっていてもよく、また、1,2−繰り返し単位は、下式(1−2)で表される。
【0049】
本発明で用いられるポリブタジエン系樹脂は、上記のポリブタジエンの水素添加物を包含する。
【0050】
1,2−繰り返し単位を主に有するポリブタジエンとしては、Nisso PBのB−1000、B−2000,B−3000(いずれも日本曹達(株)製)等があり、1,2−繰り返し単位を主に有するポリブタジエン(水素添加物)としては、Nisso PBのBI−2000,BI−3000(いずれも日本曹達(株)製)等がある。これらは、上記A群のポリブタジエン系樹脂として用いることができる。
【0051】
本発明で用いられるポリブタジエン系樹脂は、前記したポリブタジエン又はその水素添加物の一方又は両方の末端に、水酸基を有するものを包含する。1,4−繰り返し単位を主に有する水酸基末端のポリブタジエンとしては、例えば、Poly bd R−45HT、Poly bd R−15HT(いずれも出光興産(株)製)、1,2−繰り返し単位を主に有する水酸基末端のポリブタジエンとしては、例えば、Nisso PBのG−1000、G−2000,G−3000(いずれも日本曹達(株)製)等、1,2−繰り返し単位を主に有する水酸基末端のポリブタジエン(水素添加物)としては、Nisso PBのGI−1000、GI−2000,GI−3000(いずれも日本曹達(株)製)等が挙げられる。これらは、上記B群の水酸基を有するポリブタジエン系樹脂として用いることができる。また、上記B群に属する本発明で用いられるポリブタジエン系樹脂として、Nisso PB GQ−1000(日本曹達(株)製;Nisso PBのG−1000の空気酸化物、分子中に水酸基、カルボキシル基及びエステル基を有する)を使用することができる。
【0052】
本発明で用いられるポリブタジエン系樹脂は、エポキシ化ポリブタジエンを包含する。エポキシ化ポリブタジエンとしては、末端エポキシ基を有するものとしてデナレックスR−45EPT(ナガセケムテックス(株)製、商品名、Poly bd R−45HTから誘導されたもの)、内部エポキシ基を有するものとしてエポリードPB3600(ダイセル化学工業(株)製、商品名、Poly bd R−45HTから誘導されたもの)、日本曹達(株)製 EPB−13(Nisso PB C−1000とビスフェノール型エポキシ樹脂との反応物、エポキシ当量600〜780、粘度780〜950P/50℃)等がある。これらは、上記B群のオキシラン基(例えば、エポキシ基、グリシジル基)を有するポリブタジエン系樹脂として用いることができる。
【0053】
本発明で用いられるポリブタジエン系樹脂は、ポリイソプレン、その水素添加物及びこれらの一方又は両方の末端に水酸基を有するものを包含する。これらのうち、末端に水酸基を有するものが好ましい。水酸基末端のポリイソプレンとしては、例えば、Poly IP(出光興産(株)製)等が挙げられる。ポリイソプレン及びその水素添加物は、上記A群のポリブタジエン系樹脂として用いることができる。また、水酸基末端のポリイソプレンは、上記B群の水酸基を有するポリブタジエン系樹脂として用いることができる。
【0054】
上記B群における酸無水物基を有するポリブタジエン系樹脂としては、無水マレイン酸変性ポリブタジエン(Nisso PB BN−1015、日本曹達(株)製、1,2−ポリブタジエンのマレイン化物)を用いることができる。また、上記B群におけるイソシアネート基を有するポリブタジエン系樹脂としては、末端イソシアネート化ポリブタジエン(Poly bd HTP−9、出光興産(株)製、TDIプレポリマー(ポリブタジエンジオールPoly bd R−45HTとトリレンジイソシアネート(TDI)の反応物))、ウレタン変性ポリブタジエン(Nisso PB TP1001、日本曹達(株)製、1,2−ポリブタジエンジオール1モルとTDI三量体2モルとの反応物)を用いることができる。なお、TDI三量体は、トリレンジイソシアネート3モルとトリメロールプロパン1モルの反応生成物あり、イソシアネート基を1分子中に3個有する。
【0055】
上記B群におけるアクリロイル基を有するポリブタジエン系樹脂としては、アクリレート化ポリブタジエン(BAC−45、大阪有機化学工業(株)製、ポリブタジエン末端アクリレート(ポリブタジエンジオールNisso PB R−45HTとアクリル酸の反応物;CAS No.308077−38−5)を用いることができる。上記B群におけるメタクリロイル基を有するポリブタジエン系樹脂としては、UC−102、UC−203(いずれもクラレ(株)製;メタクリロイル基を有する液状ポリイソプレンゴム)を用いることができる。
【0056】
上記B群におけるアミノ基を有するポリブタジエン系樹脂は、特開平9−71687号公報、国際公開第03/029299号パンフレットに記載の方法により製造することができる。
【0057】
本発明で用いられるポリブタジエン系樹脂は、ブタジエン若しくはイソプレンと、共重合モノマーとの共重合体、及びその水素添加物を包含する。この場合、ブタジエン若しくはイソプレンの含有量は、50モル%以上であることが好ましく、80モル%以上であることがより好ましい。
【0058】
共重合モノマーとしては、炭素数が12以上の不飽和脂肪酸が挙げられる。炭素数が12以上の不飽和脂肪酸としては、1分子中に、炭素数が12〜24で、炭素−炭素二重結合が1〜4個のものが好ましい。このような不飽和脂肪酸としては、リノレン酸(α−リノレン酸、γ−リノレン酸等)、リノール酸、エイコサジエン酸、ドコサジエン酸、ピノレン酸、エレオステアリン酸、ミード酸、ジホモ−γ−リノレン酸、エイコサトリエン酸、ステアリドン酸、アラキドン酸、エイコサテトラエン酸、アドレン酸、オレイン酸等が挙げられる。
【0059】
上記不飽和脂肪酸の共重合体中における含有量は、5〜30質量%が好ましい。
【0060】
リノレン酸とブタジエンの共重合体(ブタジエン成分は主に1,4−繰り返し単位である)としてはBYK−A555(BYK−Chemie社製)等がある。
【0061】
上記不飽和脂肪酸の共重合体は、上記C群のポリブタジエン系樹脂として用いることができる。
【0062】
本発明で用いるポリブタジエン系樹脂の数平均分子量は、500〜10000が好ましく、1000〜5000がより好ましく、1200〜4000が特に好ましい。また、性状としては、常温で液状のものが好ましい。なお、本明細書において、樹脂の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて換算した値とする。
【0063】
上記(I)の変性ポリアミドイミド樹脂を合成するときの、(a)成分(前記酸成分を意味する)と、(b)成分(前記したジイソシアネート化合物若しくはジアミノ化合物の成分を意味する)との配合割合は、酸成分のカルボキシル基及び酸無水物基並びに存在するときは反応性の水酸基の総数に対する、ジイソシアネート化合物若しくはジアミノ化合物のイソシアネート基及びアミノ基の総数の比が、0.6〜1.4となるようにすることが好ましく、0.7〜1.3となるようにすることがより好ましく、0.8〜1.2となるようにすることが特に好ましい。この比が小さくなりすぎると樹脂の分子量を高くすることが困難となる傾向があり、この比が大きくなりすぎると、発泡反応が激しくなり、また、未反応成分の残存が多くなって樹脂の安定性が悪くなる傾向がある。
【0064】
(c)成分(ポリブタジエン系樹脂を意味する)の使用量は、得られる変性ポリアミドイミド樹脂の全量を基準として0.01〜15質量%であることが好ましい。本実施形態においては、(a)成分、(b)成分及び(c)成分の合計量100質量部に対して、0.01〜15質量部とすることが好ましい。添加量が少なすぎると、絶縁破壊電圧向上の効果が小さくなり、多すぎると樹脂中の分散状態又は相容状態が悪くなり、耐熱特性と機械特性が下がる傾向がある。ポリブタジエン系樹脂の変性ポリアミドイミド樹脂又はその原料との相溶性の観点から、(c)成分の使用量は、より好ましくは0.01〜10質量%、特に好ましくは0.01〜3質量%である。
【0065】
ポリアミドイミド樹脂は、例えば、次の製造法で得ることができる。
(1)(a)成分及び(b)成分を一度に混合し、反応させてポリアミドイミド樹脂を合成する方法。
(2)(a)成分に対し(b)成分を過剰量で反応させて末端にイソシアネート基を有するアミドイミドオリゴマーを合成した後、(a)成分を追加し反応させてポリアミドイミド樹脂を合成する方法。
(3)(a)成分の過剰量と(b)成分を反応させて末端に酸又は酸無水物基を有するアミドイミドオリゴマーを合成した後、(a)成分と(b)成分を追加し反応させてポリアミドイミド樹脂を合成する方法。
【0066】
上記のいずれの方法においても、反応温度は80〜150℃とすることが好ましい。また、反応時間は、所望の数平均分子量になることを考慮して決定されるが、通常1〜10時間が好ましい。
【0067】
上記(I)の変性ポリアミドイミド樹脂を合成する場合、上記の方法において、(c)成分を、(a)成分と(b)成分との反応の開始前若しくは最初、反応途中又は反応後に添加することができる。これらのうち、(c)成分を反応途中に添加することが、ポリアミドイミド樹脂本来の特性の発揮及び得られる樹脂の特性の安定性の観点から最も好ましい。
【0068】
上記(II)の変性ポリアミドイミド樹脂を合成する場合、上記の方法により得られたポリアミドイミド樹脂と、(c)成分とを、混合し、好ましくは室温〜50℃で、混合物が均一化するまで攪拌する。攪拌時間は、1〜3時間が好ましい。ここで用いられるポリアミドイミド樹脂の数平均分子量は、9,000〜90,000が好ましく、10,000〜70,000がより好ましい。
【0069】
合成溶媒又は混合溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N ’−ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクトン、N,N’−ジメチルプロピレン尿素〔1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロピリジミン−2(1H)−オン〕、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、スルホラン等の極性溶媒、キシレン、トルエン等の芳香族炭化水素溶媒、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類などが使用される。
【0070】
合成溶媒又は混合溶媒の使用量は、(a)成分と(b)成分の合計量100質量部に対して100〜300質量部とすることが好ましく、150〜250質量部とすることがより好ましい。合成溶媒の使用量が少なすぎると、発泡反応が起こりやすくなり、多すぎると合成時間が長くなる傾向があり、また、樹脂濃度が低くなるため、合成液を使用して塗料化した際に厚膜化しにくくなる傾向がある。
【0071】
このようにして得られた変性ポリアミドイミド樹脂の数平均分子量は、9,000〜90,000のものであることが好ましい。数平均分子量が小さすぎると、塗料としたときの造膜性が悪くなる傾向があり、数平均分子量が大きすぎると、塗料として適正な濃度で溶媒に溶解したときに粘度が高くなり、塗装時の作業性が劣る傾向がある。このことから、変性ポリアミドイミド樹脂の数平均分子量は、10,000〜70,000にすることがより好ましい。
【0072】
上記範囲内への数平均分子量の調整は、必要な時間、合成を継続するように管理することにより行うことができる。
【0073】
本発明に係る変性ポリアミドイミド樹脂は、必要に応じて着色剤等の添加剤と混合して使用することができる。また、本発明に係る変性ポリアミドイミド樹脂は、絶縁塗料などの電気絶縁材料として使用することができる。
【0074】
上記の変性ポリアミドイミド樹脂は、前記の合成溶媒又は混合溶媒と同様の溶媒に溶解、又は該溶媒で希釈し、適当な粘度に調整して使用することができる。絶縁塗料とする場合、一般に固形分は10〜50質量%とすることが好ましい。このような絶縁塗料の作製には、変性ポリアミドイミド樹脂の合成溶液を使用してもよい。
【0075】
本発明に係る変性ポリアミドイミド樹脂を含む電気絶縁材料は、コイル含浸用絶縁材料としても使用することができる。また、本発明に係る変性ポリアミドイミド樹脂を含む電気絶縁材料は、高電圧抵抗性が求められる絶縁板等に適用することができる。
【0076】
本発明に係る絶縁層の耐絶縁破壊性向上方法は、絶縁層が設けられる導体に、上記の本発明に係る電気絶縁材料を塗布し焼付けることにより絶縁層を形成することを特徴とする。
【0077】
導体としては、銅線等の金属線、その他の絶縁性が付与されるものが挙げられる。これらの導体は、別の絶縁層を有するものであってもよい。
【0078】
上記導体としては、例えば、後述する金属線や、インバータ制御電気機器などに用いられる電気電子部品が挙げられる。本実施形態に係る電気電子部品は、特に、高電圧用、インバータ制御用として有用である。
【0079】
本発明に係る方法を金属線に適用した場合、耐薬品性、耐加水分解性、耐熱性、絶縁破壊電圧特性などに優れた高絶縁信頼性のエナメル線が得られる。また、本発明に係る方法によれば、絶縁破壊に対して高い耐性を有する電気電子部品を得ることができる。
【0080】
本発明に係る電気絶縁材料を塗布する方法としては、電線(金属線)に塗布する場合、ダイス塗装、フェルト塗装等があり、その他の用途には、刷毛塗り、浸漬塗布(ディッピング)等がある。また、コイル自体を固めるためには、コイルに滴下して含浸する方法、コイルを浸漬する方法(ディッピング)が挙げられる。
【0081】
本発明に係る電気絶縁材料は、被塗物に塗装後、260〜520℃で2秒〜数分の熱処理で乾燥・硬化させることができる。低温で乾燥・硬化させると溶剤が残り、基材を保護する塗膜特性が劣る可能性がある。また、260℃未満の硬化では、塗膜の乾燥・硬化が不十分になることがある。加熱時間は短かすぎると塗膜に残存溶媒がのこり、長すぎる加熱は無駄が増えることになる。
【0082】
金属線(電線)に塗布した電気絶縁材料の乾燥・硬化方法(焼付け方法)としては、常法により行うことができるが、電気絶縁材料を塗布した電線に加熱炉を通過させるのが最も一般的である。
【0083】
本発明に係る絶縁層の耐絶縁破壊性向上方法においては、本発明に係る電気絶縁材料を数回塗布して、絶縁層を形成することが好ましい。
【0084】
絶縁層の層厚は、全体として、20〜200μmが好ましく、40〜150μmがより好ましい。塗膜が薄すぎると、絶縁性が不十分になり、厚すぎるとコイルにしたときの導体割合が低下し、電気的な能力が低下する。また、塗膜が厚すぎると、小型化、薄型化に不利となる。
【0085】
次に、本発明に係る絶縁電線について説明する。
図1は、本発明に係る絶縁電線の一実施形態を示す模式断面図である。
図1に示される絶縁電線10は、導体1と、該導体1に、上記本発明に係る変性ポリアミドイミド樹脂を含有する電気絶縁材料を塗布し焼付けることにより形成された絶縁皮膜2とを備える。
【0086】
絶縁皮膜2は、他の絶縁材料と組合せた多層構造になっていてもよい。この場合、絶縁皮膜は、異なった材料を2層以上積層したものとなるが、本発明に係る変性ポリアミドイミド樹脂を含む絶縁層は、導体に接触する最内層であっても、外気と接触する最外層であっても、中間の層であってもよい。他の絶縁材料としては、ポリエステルイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、本発明に係る変性ポリアミドイミド樹脂以外のポリアミドイミド樹脂などがある。
【0087】
導体1としては、銅線等の金属線が挙げられる。金属線の断面形状は、円形であっても、正方形又は矩形状若しくは平角状であってもよい。
【0088】
絶縁電線10は、本発明に係る電気絶縁材料により形成された絶縁皮膜2を備えることにより、耐薬品性、耐加水分解性、耐熱性、絶縁破壊電圧特性などに優れた高絶縁信頼性のエナメル線とすることができる。
【0089】
電気絶縁材料の塗布、焼付けは、上述した方法で行うことができる。
【0090】
本発明に係る絶縁電線においては、本発明に係る電気絶縁材料を1回塗布・焼付けして、絶縁皮膜を形成することもできるが、絶縁破壊電圧を一層向上させる観点から、本発明に係る電気絶縁材料を2回〜数十回塗布・焼付けして、絶縁皮膜を形成することが好ましい。
【0091】
本発明に係る絶縁電線の絶縁皮膜は、皮膜構造的には、上記の変性ポリアミドイミド樹脂を含有する電気絶縁材料を塗布し、一層焼付けた時に、変性ポリアミドイミド樹脂の薄層(例えば厚さ約2nm)の高密度層が表面に生成しているものと本発明者らは考えている。従って、本発明に係る電気絶縁材料を2回〜数十回塗布後硬化された絶縁皮膜中には多層の高密度層が存在するようになり、この高密度層が存在するために、エナメル線の絶縁破壊電圧が一層向上したと考えられる。
【0092】
本発明に係る絶縁電線は、ステータ若しくはローターのコイルに用いることができる。このようなステータ若しくはローターは、インバータ駆動モータやその他の高電圧駆動モータなどに装備される。インバータ駆動モータとしては、ハイブリッド自動車用モータ、電気自動車用モータ、ハイブリッドディーゼル機関車用モータ、電気自動二輪車のモータ、エレベータ用モータ、建設機械に使用されるモータなどがある。本発明に係る絶縁電線を用いてなるコイルは、上記の用途において、耐熱性及び優れた耐絶縁破壊性を発揮することができる。
【0093】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はこれに制限されるものではない。
【実施例】
【0094】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが本発明はこれらに限定されるものではない。
【0095】
(実施例1)
攪拌機、冷却管、窒素導入管及び温度計を備えた2リットル四つ口フラスコにトリメリット酸無水物192.1g(1.0モル)、4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン252.8g(1.01モル)及びN−メチル−2−ピロリドン543.8gを仕込み130℃まで昇温し、撹拌下に約1時間反応させた後、末端水酸基を有するポリイソプレン(Poly IP)0.22g(溶剤を除く原料の総量に対して0.05質量%)を添加し、さらに約2時間撹拌下に反応させて加熱を停止し、N,N−ジメチルアセトアミド239.7gを仕込み不揮発分32.8質量%の変性ポリアミドイミド樹脂溶液を得た。得られた変性ポリアミドイミド樹脂の数平均分子量は、16000であった。この変性ポリアミドイミド樹脂溶液を絶縁塗料として、下記エナメル線の製造例に従ってエナメル線を作製した。
【0096】
(実施例2)
攪拌機、冷却管、窒素導入管及び温度計を備えた2リットル四つ口フラスコにトリメリット酸無水物192.1g(1.0モル)、4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン252.8g(1.01モル)及びN−メチル−2−ピロリドン543.8gを仕込み130℃まで昇温し、撹拌下に約1時間反応させた後、リノレン酸とブタジエンの共重合体(BYK−A555、BYK−Chemie社製)0.44g(溶剤を除く原料の総量に対して0.1質量%)を添加し、さらに約2.5時間撹拌下に反応させて加熱を停止し、N,N−ジメチルアセトアミド239.7gを仕込み不揮発分32.3質量%の変性ポリアミドイミド樹脂溶液を得た。得られた変性ポリアミドイミド樹脂の数平均分子量は、16700であった。この変性ポリアミドイミド樹脂溶液を絶縁塗料として、下記エナメル線の製造例に従ってエナメル線を作製した。
【0097】
(実施例3)
攪拌機、冷却管、窒素導入管及び温度計を備えた2リットル四つ口フラスコにトリメリット酸無水物192.1g(1.0モル)、4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン252.8g(1.01モル)及びN−メチル−2−ピロリドン543.8gを仕込み130℃まで昇温し、撹拌下に約1時間反応させた後、水酸基末端のポリブタジエン(Poly bd R−15HT、出光興産(株)製)2.2g(溶剤を除く原料の総量に対して0.5質量%)を添加し、さらに約3時間撹拌下に反応させて加熱を停止し、N,N−ジメチルアセトアミド239.7gを仕込み不揮発分31.6質量%の変性ポリアミドイミド樹脂溶液を得た。得られた変性ポリアミドイミド樹脂の数平均分子量は、17900であった。この変性ポリアミドイミド樹脂溶液を絶縁塗料として、下記エナメル線の製造例に従ってエナメル線を作製した。
【0098】
(実施例4)
攪拌機、冷却管、窒素導入管及び温度計を備えた2リットル四つ口フラスコにトリメリット酸無水物192.1g(1.0モル)、4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン252.8g(1.01モル)N−メチル−2−ピロリドン543.8gを仕込み130℃まで昇温し、撹拌下に約1時間反応させた後、水酸基末端のポリブタジエン(Poly bd R−45HT、出光興産(株)製)1.1g(溶剤を除く原料の総量に対して0.25質量%)を添加し、さらに約4時間撹拌下に反応させて加熱を停止し、N,N−ジメチルアセトアミド239.7gを仕込み不揮発分31.7質量%の変性ポリアミドイミド樹脂溶液を得た。得られた変性ポリアミドイミド樹脂の数平均分子量は、18700であった。この変性ポリアミドイミド樹脂溶液を絶縁塗料として、下記エナメル線の製造例に従ってエナメル線を作製した。
【0099】
(実施例5)
攪拌機、冷却管、窒素導入管及び温度計を備えた2リットル四つ口フラスコにトリメリット酸無水物192.1g(1.0モル)、4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン252.8g(1.01モル)及びN−メチル−2−ピロリドン530.0gを仕込み120℃まで昇温し、約4時間撹拌下に反応させて加熱を停止し、N,N−ジメチルアセトアミド239.7gを仕込み、不揮発分32.0質量%のポリアミドイミド樹脂溶液を得た。得られたポリアミドイミド樹脂の数平均分子量19000はであった。得られたポリアミドイミド樹脂溶液に水酸基末端のポリブタジエン(Poly bd R−45HT、出光興産(株)製)4.4g(溶剤を除く原料の総量に対して1.0質量%)を添加し、40℃で3時間撹拌混合し、変性ポリアミドイミド樹脂溶液を得た。これを絶縁塗料として、下記エナメル線の製造例に従ってエナメル線を作製した。
【0100】
(実施例6)
攪拌機、冷却管、窒素導入管及び温度計を備えた2リットル四つ口フラスコにトリメリット酸無水物192.1g(1.0モル)、4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン252.8g(1.01モル)及びN−メチル−2−ピロリドン543.8gを仕込み140℃まで昇温し、約3時間撹拌下に反応させて加熱を停止し、N,N−ジメチルアセトアミド220.7gを仕込み不揮発分32.9質量%のポリアミドイミド樹脂溶液を得た。得られたポリアミドイミド樹脂の数平均分子量は、17200であった。得られたポリアミドイミド樹脂溶液にリノレン酸とブタジエンの共重合体(BYK−A555、BYK−Chemie社製)0.66g(溶剤を除く原料の総量に対して0.15質量%)を添加し、40℃で3時間撹拌混合して変性ポリアミドイミド樹脂溶液を得た。これを絶縁塗料として、下記エナメル線の製造例により、エナメル線を作製した。
【0101】
(実施例7)
攪拌機、冷却管、窒素導入管及び温度計を備えた2リットル四つ口フラスコにトリメリット酸無水物192.1g(1.0モル)、4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン252.8g(1.01モル)及びN−メチル−2−ピロリドン543.8gを仕込み140℃まで昇温し、約3時間撹拌下に反応させて加熱を停止し、N,N−ジメチルアセトアミド233.6gを仕込み不揮発分32.3質量%のポリアミドイミド樹脂溶液を得た。得られたポリアミドイミド樹脂の数平均分子量は、17000であった。得られたポリアミドイミド樹脂溶液にポリブダジエングリコール(Nisso PB G−1000、日本曹達(株)製)4.4g(溶剤を除く原料の総量に対して1.0質量%)を添加し、40℃で3時間撹拌混合して変性ポリアミドイミド樹脂溶液を得た。これを絶縁塗料として、下記エナメル線の製造例により、エナメル線を作製した。
【0102】
(実施例8)
攪拌機、冷却管、窒素導入管及び温度計を備えた2リットル四つ口フラスコにトリメリット酸無水物192.1g(1.0モル)、4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン252.8g(1.01モル)及びN−メチル−2−ピロリドン543.8gを仕込み140℃まで昇温し、約3時間撹拌下に反応させて加熱を停止し、N,N−ジメチルアセトアミド227.1gを仕込み不揮発分32.4質量%のポリアミドイミド樹脂溶液を得た。得られたポリアミドイミド樹脂の数平均分子量は、17500であった。得られたポリアミドイミド樹脂溶液にポリブダジエングリコールの空気酸化物(Nisso PB GQ−1000、日本曹達(株)製)4.4g(溶剤を除く原料の総量に対して1.0質量%)を添加し、40℃で3時間撹拌混合して変性ポリアミドイミド樹脂溶液を得た。これを絶縁塗料として、下記エナメル線の製造例により、エナメル線を作製した。
【0103】
(実施例9)
攪拌機、冷却管、窒素導入管及び温度計を備えた2リットル四つ口フラスコにトリメリット酸無水物192.1g(1.0モル)、4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン252.8g(1.01モル)及びN−メチル−2−ピロリドン543.8gを仕込み140℃まで昇温し、約3時間撹拌下に反応させて加熱を停止し、N,N−ジメチルアセトアミド252.4gを仕込み不揮発分31.8質量%のポリアミドイミド樹脂溶液を得た。得られたポリアミドイミド樹脂の数平均分子量は、17900であった。得られたポリアミドイミド樹脂溶液にポリブダジエンホモポリマー(Nisso PB B−1000、日本曹達(株)製)4.4g(溶剤を除く原料の総量に対して1.0質量%)を添加し、40℃で3時間撹拌混合して変性ポリアミドイミド樹脂溶液を得た。これを絶縁塗料として、下記エナメル線の製造例により、エナメル線を作製した。
【0104】
(実施例10)
攪拌機、冷却管、窒素導入管及び温度計を備えた2リットル四つ口フラスコにトリメリット酸無水物192.1g(1.0モル)、4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン252.8g(1.01モル)及びN−メチル−2−ピロリドン543.8gを仕込み140℃まで昇温し、約3時間撹拌下に反応させて加熱を停止し、N,N−ジメチルアセトアミド254.8gを仕込み不揮発分31.7質量%のポリアミドイミド樹脂溶液を得た。得られたポリアミドイミド樹脂の数平均分子量は、17700であった。得られたポリアミドイミド樹脂溶液に無水マレイン酸変性ポリブタジエン(Nisso PB BN−1015、日本曹達(株)製、1,2−ポリブタジエンのマレイン化物)4.4g(溶剤を除く原料の総量に対して1.0質量%)を添加し、40℃で3時間撹拌混合して変性ポリアミドイミド樹脂溶液を得た。これを絶縁塗料として、下記エナメル線の製造例により、エナメル線を作製した。
【0105】
(実施例11)
攪拌機、冷却管、窒素導入管及び温度計を備えた2リットル四つ口フラスコにトリメリット酸無水物192.1g(1.0モル)、4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン252.8g(1.01モル)及びN−メチル−2−ピロリドン543.8gを仕込み140℃まで昇温し、約3時間撹拌下に反応させて加熱を停止し、N,N−ジメチルアセトアミド249.5gを仕込み不揮発分31.8質量%のポリアミドイミド樹脂溶液を得た。得られたポリアミドイミド樹脂の数平均分子量は、17400であった。得られたポリアミドイミド樹脂溶液にアクリレート化ポリブタジエン(BAC−45、大阪有機化学工業(株)製、ポリブタジエン末端アクリレート(ポリブタジエンジオールPoly bd R−45HTとアクリル酸の反応物;CAS No.308077−38−5)4.4g(溶剤を除く原料の総量に対して1.0質量%)を添加し、40℃で3時間撹拌混合して変性ポリアミドイミド樹脂溶液を得た。これを絶縁塗料として、下記エナメル線の製造例により、エナメル線を作製した。
【0106】
(実施例12)
攪拌機、冷却管、窒素導入管及び温度計を備えた2リットル四つ口フラスコにトリメリット酸無水物192.1g(1.0モル)、4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン252.8g(1.01モル)及びN−メチル−2−ピロリドン543.8gを仕込み140℃まで昇温し、約3時間撹拌下に反応させて加熱を停止し、N,N−ジメチルアセトアミド259.2gを仕込み不揮発分31.3質量%のポリアミドイミド樹脂溶液を得た。得られたポリアミドイミド樹脂の数平均分子量は、18100であった。得られたポリアミドイミド樹脂溶液に末端エポキシ化ポリブタジエン(デナレックスR−45EPT、ナガセケムテックス(株)製)4.4g(溶剤を除く原料の総量に対して1.0質量%)を添加し、40℃で3時間撹拌混合して変性ポリアミドイミド樹脂溶液を得た。これを絶縁塗料として、下記エナメル線の製造例により、エナメル線を作製した。
【0107】
(実施例13)
攪拌機、冷却管、窒素導入管及び温度計を備えた2リットル四つ口フラスコにトリメリット酸無水物192.1g(1.0モル)、4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン252.8g(1.01モル)及びN−メチル−2−ピロリドン543.8gを仕込み140℃まで昇温し、約3時間撹拌下に反応させて加熱を停止し、N,N−ジメチルアセトアミド253.1gを仕込み不揮発分31.4質量%のポリアミドイミド樹脂溶液を得た。得られたポリアミドイミド樹脂の数平均分子量は、17900であった。得られたポリアミドイミド樹脂溶液に末端イソシアネート化ポリブタジエン(Poly bd HTP−9、出光興産(株)製)4.4g(溶剤を除く原料の総量に対して1.0質量%)を添加し、40℃で3時間撹拌混合して変性ポリアミドイミド樹脂溶液を得た。これを絶縁塗料として、下記エナメル線の製造例により、エナメル線を作製した。
【0108】
(実施例14)
攪拌機、冷却管、窒素導入管及び温度計を備えた2リットル四つ口フラスコにトリメリット酸無水物192.1g(1.0モル)、4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン252.8g(1.01モル)及びN−メチル−2−ピロリドン543.8gを仕込み140℃まで昇温し、約3時間撹拌下に反応させて加熱を停止し、N,N−ジメチルアセトアミド253.1gを仕込み不揮発分31.0質量%のポリアミドイミド樹脂溶液を得た。得られたポリアミドイミド樹脂の数平均分子量は、18300であった。得られたポリアミドイミド樹脂溶液にウレタン変性ポリブダジエンポリブタジエン(Nisso PB TP1001、日本曹達(株)製、イソシアネート基を有するウレタン変性ポリブタジエン、1,2−ポリブタジエンジオール1モルとTDI三量体2モルの反応物)4.4g(溶剤を除く他の原料の総量に対して1.0質量%)を添加し、40℃で3時間撹拌混合して変性ポリアミドイミド樹脂溶液を得た。これを絶縁塗料として、下記エナメル線の製造例により、エナメル線を作製した。
【0109】
上記TDI三量体は、トリレンジイソシアネート3モルとトリメロールプロパン1モルの反応生成物であり、イソシアネート基を1分子中に3個有する。
【0110】
(実施例15)
攪拌機、冷却管、窒素導入管及び温度計を備えた2リットル四つ口フラスコにトリメリット酸無水物192.1g(1.0モル)、4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン252.8g(1.01モル)及びN−メチル−2−ピロリドン543.8gを仕込み130℃まで昇温し、撹拌下に約1時間反応させた後、ポリブダジエンホモポリマー(Nisso PB B−1000、日本曹達(株)製)2.2g(溶剤を除く原料の総量に対して0.5質量%)を添加し、さらに約2時間撹拌下に反応させて加熱を停止し、N,N−ジメチルアセトアミド247.7gを仕込み不揮発分31.9質量%の変性ポリアミドイミド樹脂溶液を得た。得られた変性ポリアミドイミド樹脂の数平均分子量は、17500であった。この変性ポリアミドイミド樹脂溶液を絶縁塗料として、下記エナメル線の製造例に従ってエナメル線を作製した。
【0111】
(実施例16)
攪拌機、冷却管、窒素導入管及び温度計を備えた2リットル四つ口フラスコにトリメリット酸無水物192.1g(1.0モル)、4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン252.8g(1.01モル)及びN−メチル−2−ピロリドン543.8gを仕込み130℃まで昇温し、撹拌下に約1時間反応させた後、無水マレイン酸変性ポリブタジエン(Nisso PB BN−1015、日本曹達(株)製、1,2−ポリブタジエンのマレイン化物)2.2g(溶剤を除く原料の総量に対して0.5質量%)を添加し、さらに約2時間撹拌下に反応させて加熱を停止し、N,N−ジメチルアセトアミド253.9gを仕込み不揮発分31.8質量%の変性ポリアミドイミド樹脂溶液を得た。得られた変性ポリアミドイミド樹脂の数平均分子量は、17300であった。この変性ポリアミドイミド樹脂溶液を絶縁塗料として、下記エナメル線の製造例に従ってエナメル線を作製した。
【0112】
(実施例17)
攪拌機、冷却管、窒素導入管及び温度計を備えた2リットル四つ口フラスコにトリメリット酸無水物192.1g(1.0モル)、4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン252.8g(1.01モル)及びN−メチル−2−ピロリドン543.8gを仕込み130℃まで昇温し、撹拌下に約1時間反応させた後、末端エポキシ化ポリブタジエン(デナレックスR−45EPT、ナガセケムテックス(株)製)2.2g(溶剤を除く原料の総量に対して0.5質量%)を添加し、さらに約2時間撹拌下に反応させて加熱を停止し、N,N−ジメチルアセトアミド241.7gを仕込み不揮発分31.4質量%の変性ポリアミドイミド樹脂溶液を得た。得られた変性ポリアミドイミド樹脂の数平均分子量は、17700であった。この変性ポリアミドイミド樹脂溶液を絶縁塗料として、下記エナメル線の製造例に従ってエナメル線を作製した。
【0113】
(実施例18)
攪拌機、冷却管、窒素導入管及び温度計を備えた2リットル四つ口フラスコにトリメリット酸無水物192.1g(1.0モル)、4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン252.8g(1.01モル)及びN−メチル−2−ピロリドン543.8gを仕込み130℃まで昇温し、撹拌下に約1時間反応させた後、末端イソシアネート化ポリブタジエン(Poly bd HTP−9、出光興産(株)製)2.2g(溶剤を除く原料の総量に対して0.5質量%)を添加し、さらに約2時間撹拌下に反応させて加熱を停止し、N,N−ジメチルアセトアミド253.1gを仕込み不揮発分31.1質量%の変性ポリアミドイミド樹脂溶液を得た。得られた変性ポリアミドイミド樹脂の数平均分子量は、17900であった。この変性ポリアミドイミド樹脂溶液を絶縁塗料として、下記エナメル線の製造例に従ってエナメル線を作製した。
【0114】
(実施例19)
攪拌機、冷却管、窒素導入管及び温度計を備えた2リットル四つ口フラスコにトリメリット酸無水物192.1g(1.0モル)、4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン252.8g(1.01モル)及びN−メチル−2−ピロリドン543.8gを仕込み130℃まで昇温し、撹拌下に約1時間反応させた後、ウレタン変性ポリブダジエンポリブタジエン(Nisso PB TP1001、日本曹達(株)製)2.2g(溶剤を除く原料の総量に対して0.5質量%)を添加し、さらに約2時間撹拌下に反応させて加熱を停止し、N,N−ジメチルアセトアミド249.9gを仕込み不揮発分31.6質量%の変性ポリアミドイミド樹脂溶液を得た。得られた変性ポリアミドイミド樹脂の数平均分子量は、17400であった。この変性ポリアミドイミド樹脂溶液を絶縁塗料として、下記エナメル線の製造例に従ってエナメル線を作製した。
【0115】
(比較例1)
攪拌機、冷却管、窒素導入管及び温度計を備えた2リットル四つ口フラスコにトリメリット酸無水物192.1g(1.00モル)、4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン250.3g(1.00モル)及びN−メチル−2−ピロリドン361.9gを仕込み、130℃まで昇温し、撹拌下に4時間反応させて加熱を停止し、ポリアミドイミド樹脂溶液(不揮発分重量32.2質量%)を得た。得られたポリアミドイミド樹脂の数平均分子量16500であった。得られたポリアミドイミド樹脂溶液を絶縁塗料として、下記エナメル線の製造例に従ってエナメル線を作製した。
【0116】
(比較例2)
攪拌機、冷却管、窒素導入管及び温度計を備えた2リットル四つ口フラスコにトリメリット酸無水物192.1g(1.00モル)、4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン252.8g(1.01モル)及びN−メチル−2−ピロリドン543.8gを仕込み、130℃まで昇温し、撹拌下に5時間反応させて加熱を停止し、ポリアミドイミド樹脂溶液(不揮発分重量31.9質量%)を得た。得られたポリアミドイミド樹脂の数平均分子量18000であった。得られたポリアミドイミド樹脂溶液を絶縁塗料として、下記エナメル線の製造例に従ってエナメル線を作製した。
【0117】
(比較例3)
攪拌機、冷却管、窒素導入管及び温度計を備えた2リットル四つ口フラスコにトリメリット酸無水物192.1g(1.0モル)、4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン252.8g(1.01モル)及びN−メチル−2−ピロリドン543.8gを仕込み130℃まで昇温し、撹拌下に約1時間反応させた後、ポリブタジエンジカルボン酸(Nisso PB C−1000、日本曹達(株)製)4.4g(溶剤を除く原料の総量に対して1.0質量%)を添加し、さらに約2時間撹拌下に反応させて加熱を停止し、N,N−ジメチルアセトアミド249.1gを仕込み不揮発分31.8質量%の変性ポリアミドイミド樹脂溶液を得た。得られた変性ポリアミドイミド樹脂の数平均分子量は、17100であった。この変性ポリアミドイミド樹脂溶液を絶縁塗料として、下記エナメル線の製造例に従ってエナメル線を作製した。
【0118】
〔エナメル線の製造例〕
実施例1〜19、及び比較例3で得られた変性ポリアミドイミド樹脂溶液及び比較例1、2で得られたポリアミドイミド樹脂溶液を用いて下記に示す焼付け条件に従って直径1.0mmの銅線に塗布し、焼付けを行い、エナメル線を製造した。
〔焼付条件〕
塗装回数:ダイス8回(塗装、焼付を8回繰り返し)
焼付け炉:熱風式竪炉(炉長5m)
炉温:入口/出口=320℃/430℃
線速:12m/分
【0119】
得られたエナメル線皮膜は、いずれも外観上良好であった。エナメル線皮膜の皮膜厚は、マイクロメータでエナメル線の直径を測り、次いで、皮膜を焼いて除いた後の導線の直径を測り、その差を1/2することにより求めた。結果を表1に示した。
【0120】
各エナメル線皮膜の特性を下記の方法により試験し、結果を表1に示した。
(1)外観:目視により、樹脂組成物ワニスの外観及び塗膜の濁り、表面の肌荒れを調べた。
(2)可撓性:JIS C3003.7.1(1)に準じて調べた。
(3)絶縁破壊電圧:JIS C3003.10.(1)(2個より法)に準じて調べた。
(4)一方向式耐摩耗性:JIS C3003.9に準じて行った。
(5)耐軟化温度:JIS C3003.12(2)に準じて行った。
(6)誘電率:5%食塩水にエナメル線を浸漬し、同じ食塩水に浸漬した金属電極間の静電容量を測定し、電極長と皮膜厚の関係から比誘電率を算出した。静電容量の測定はインピーダンスアナライザを用いて、1kHZにて測定した。
(7)グリセリン耐圧:グリセリン/飽和食塩水重量比=85/15にエナメル線1mを浸漬し、JIS C 3003.10.(1)と同電圧、規定の速さで上昇させ、破壊電圧を測定した(検出電流5mA)。
【0121】
【表1】
【0122】
【表2】
【0123】
【表3】
【0124】
表1に示されるように、実施例1〜19で得られたエナメル線は、比較例1〜2で得られたエナメル線よりも、絶縁破壊電圧及びグリセリン耐圧が向上しており、しかも耐摩耗性及び耐軟化温度も良好であった。また、実施例1〜19で得られたエナメル線は、比較例3で得られたエナメル線よりもグリセリン耐圧が向上していた。