特許第5896200号(P5896200)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5896200半導体素子搭載用パッケージ基板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5896200
(24)【登録日】2016年3月11日
(45)【発行日】2016年3月30日
(54)【発明の名称】半導体素子搭載用パッケージ基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/12 20060101AFI20160317BHJP
【FI】
   H01L23/12 N
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2011-207249(P2011-207249)
(22)【出願日】2011年9月22日
(65)【公開番号】特開2012-94840(P2012-94840A)
(43)【公開日】2012年5月17日
【審査請求日】2014年8月26日
(31)【優先権主張番号】特願2010-218898(P2010-218898)
(32)【優先日】2010年9月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】日立化成株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田村 匡史
(72)【発明者】
【氏名】杉林 学
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 邦司
(72)【発明者】
【氏名】服部 清男
【審査官】 豊島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−032918(JP,A)
【文献】 特開2010−135720(JP,A)
【文献】 特開2005−101137(JP,A)
【文献】 特開2003−181970(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L23/12−23/15
H05K3/10−3/26
3/38
3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1キャリア金属箔と第2キャリア金属箔とベース金属箔とをこの順の配置となるようめっきで積層形成、前記第1キャリア金属箔と第2キャリア金属箔との間及び第2キャリア金属箔とベース金属箔との間にそれぞれ金属酸化物を含有する剥離層を設けた多層金属箔を準備し、この多層金属箔のベース金属箔側と基材とを積層してコア基板を形成する工程と、
前記多層金属箔の第1キャリア金属箔と第2キャリア金属箔との間で、第1キャリア金属箔を物理的に剥離する工程と、
前記コア基板に残った第2キャリア金属箔上に第1のパターンめっきを行う工程と、
前記第1のパターンめっきを含む第2キャリア金属箔上に絶縁層を積層して積層体を形成する工程と、
前記多層金属箔の第2キャリア金属箔とベース金属箔との間で、前記積層体を第2キャリア金属箔とともにコア基板から物理的に剥離して分離する工程と、
前記剥離した積層体の第2キャリア金属箔上にエッチングレジストを形成してエッチングを行い、前記第1のパターンめっき上または前記絶縁層上に立体回路を形成する工程と、
を有する半導体素子搭載用パッケージ基板の製造方法。
【請求項2】
第1キャリア金属箔と第2キャリア金属箔とベース金属箔とをこの順の配置となるようめっきで積層形成、前記第1キャリア金属箔と第2キャリア金属箔との間及び第2キャリア金属箔とベース金属箔との間にそれぞれ金属酸化物を含有する剥離層を設けた多層金属箔を準備し、この多層金属箔のベース金属箔側と基材とを積層してコア基板を形成する工程と、
前記多層金属箔の第1キャリア金属箔と第2キャリア金属箔との間で、第1キャリア金属箔を物理的に剥離する工程と、
前記コア基板に残った第2キャリア金属箔上に第1のパターンめっきを行う工程と、
前記第1のパターンめっきを含む第2キャリア金属箔上に絶縁層を積層して積層体を形成する工程と、
前記多層金属箔の第2キャリア金属箔とベース金属箔との間で、前記積層体を第2キャリア金属箔とともにコア基板から物理的に剥離して分離する工程と、
前記剥離した積層体の第2キャリア金属箔上に第2のパターンめっきを行う工程と、
前記第2のパターンめっきを行った部分以外の第2キャリア金属箔をエッチングにより除去し、前記第1のパターンめっき上または前記絶縁層上に立体回路を形成する工程と、を有する半導体素子搭載用パッケージ基板の製造方法。
【請求項3】
第1キャリア金属箔と第2キャリア金属箔とベース金属箔とをこの順の配置となるようめっきで積層形成、前記第1キャリア金属箔と第2キャリア金属箔との間及び第2キャリア金属箔とベース金属箔との間にそれぞれ金属酸化物を含有する剥離層を設けた多層金属箔を準備し、この多層金属箔のベース金属箔側と基材とを積層してコア基板を形成する工程と、
前記多層金属箔の第1キャリア金属箔と第2キャリア金属箔との間で、第1キャリア金属層を物理的に剥離する工程と、
前記コア基板に残った第2キャリア金属箔上に第1のパターンめっきを行う工程と、
前記第1のパターンめっきを含む第2キャリア金属箔上に絶縁層を積層して積層体を形成する工程と、
前記多層金属箔の第2キャリア金属箔とベース金属箔との間で、前記積層体を第2キャリア金属箔とともにコア基板から物理的に剥離して分離する工程と、
前記分離した積層体の第2キャリア金属箔を除去して、前記第1のパターンめっきを前記絶縁層の表面に露出させる工程と、
を有する半導体素子搭載用パッケージ基板の製造方法。
【請求項4】
請求項1から3の何れかにおいて、
多層金属箔は、第2キャリア金属箔とベース金属箔との間の剥離強度が、第1キャリア金属箔と第2キャリア金属箔との間の剥離強度よりも大きく形成された多層金属箔である半導体素子搭載用パッケージ基板の製造方法。
【請求項5】
請求項1からの何れかにおいて、
多層金属箔は、平均粗さ(Ra)0.3μm〜1.2μmの凹凸を予め設けた第2キャリア銅箔の表面に、第1キャリア銅箔が積層された多層金属箔である半導体素子搭載用パッケージ基板の製造方法。
【請求項6】
請求項1から5の何れかにおいて、
第1キャリア金属箔と第2キャリア金属箔とベース金属箔とをこの順の配置となるようにめっきで積層形成し、前記第1キャリア金属箔と第2キャリア金属箔との間及び第2キャリア金属箔とベース金属箔との間にそれぞれ金属酸化物を含有する剥離層を設けた多層金属箔を準備し、この多層金属箔のベース金属箔側と基材とを積層してコア基板を形成する工程では、
前記多層金属箔が、ベース金属箔上に第2キャリア金属箔と第1キャリア金属箔をめっきで積層形成することにより形成される導体素子搭載用パッケージ基板の製造方法。
【請求項7】
請求項1から6の何れかにおいて、
第1キャリア金属箔と第2キャリア金属箔との間に設けられた剥離層は、前記第1キャリア金属箔側に付着した状態で剥離し、
第2キャリア金属箔とベース金属箔との間に設けられた剥離層は、前記ベース金属箔側に付着した状態で剥離するように設けられる導体素子搭載用パッケージ基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高密度化が可能な半導体素子搭載用パッケージ基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品の小型化や高密度化に伴い、システム化された半導体素子搭載用パッケージ基板(以下、「パッケージ基板」ということがある。)が求められている。SiP(System in Package)に代表されるPoP(Package on Package)では、近年、一つのパッケージ基板に半導体素子を複数積み重ねたパッケージが主流となってきている。これに伴い、PoP用のパッケージ基板では、半導体素子との接続端子を高密度に配置する必要が生じ、外層回路の微細化が要求されている。
【0003】
微細な外層回路を形成する方法としては、厚さが2μm程度の薄い銅箔を備えた絶縁基材に層間接続孔を設け、薄い銅箔上及び層間接続孔内に厚さ0.1μm程度の薄付け無電解銅めっきを行い、その上にめっきレジストを形成して外層回路となる部分をパターン電気めっきで厚付けした後、めっきレジストを除去し、全面をエッチングすることによって、パターン電気めっきしていない部分のみ(即ち、導体の薄い部分のみ)を除去して外層回路を形成する方法がある(特許文献1)。
【0004】
また、物理的に剥離可能なキャリア銅箔付き極薄銅箔(厚さ1〜5μm)のキャリア銅箔面に絶縁樹脂を設けて支持基板を形成し、この支持基板の極薄銅箔上にパターン銅めっきにより外層回路となる導体パターンを形成し、その上に絶縁樹脂や層間接続を形成した後、キャリア銅箔を含む支持基板を物理的に剥離し、さらに極薄銅箔をエッチングにより除去することで微細な外層回路を形成する方法がある(特許文献2)。
【0005】
さらに、キャリア膜の中間膜の表面に所定パターンの配線膜を形成し、配線膜の表面にパターンめっきにより導電性ピラーを形成し、層間絶縁膜を形成した配線部材を2つ用意し、導電性ピラーの先端面同士が接するように積層一体化し、中間膜をエッチングストップ層としてキャリア膜をエッチング除去し、さらに中間膜をエッチングにより除去することで配線を形成する方法がある(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−140176号公報
【特許文献2】特開2005−101137号公報
【特許文献3】特開2006−135277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の方法では、パターン電気銅めっきの給電層として、絶縁基材上に設けられた薄い銅箔と薄付け無電解銅めっきとを用いるため、パターン電気めっき後に全面をエッチングする際には、給電層(薄い銅箔と薄付け無電解銅めっきとを合わせた層)の厚さ分のエッチングが必要になる。このエッチングによって給電層を除去する際に、アンダーカットが生じる傾向がある。このため、形成される外層回路と絶縁基材との実質的な密着幅が減少し、例えばライン/スペースが15μm/15μm以下レベルの微細な外層回路の形成は難しい問題があった。
【0008】
また、特許文献2の方法では、キャリア銅箔付きの極薄銅箔(厚さ1〜5μm)面に絶縁樹脂を積層して支持基板を形成する際、支持基板の表面側に露出した極薄銅箔の表面に絶縁樹脂の樹脂粉が付着することがあり、この極薄銅箔に付着した樹脂粉が、極薄銅箔を加工して微細な外層回路を形成する際に、歩留まり低下の要因になる可能性がある。
【0009】
また、特許文献3の方法は、中間膜をエッチングストップ層としてキャリア膜をエッチング除去し、さらに中間膜をエッチングにより除去するが、エッチングストップ層にピンホール等の欠陥が生じ易いため歩留まりが低下する可能性があり、またエッチングを2段階に行うため、形成された外層回路の表面の凹凸が増大し、半導体素子との接続信頼性が低下する可能性がある。
【0010】
また、半導体素子とパッケージ基板の接続端子との電気的接続は、フリップチップ接続やワイヤーボンディング接続が用いられるが、接続端子が微細になるほど接続信頼性に対する表面凹凸(絶縁層と接続端子との段差)の影響が増大する傾向がある。このため、接続端子となる外層回路と絶縁層との平坦化が要求されている。一方で、搭載する半導体素子との接続形態によっては、バンプやピラー等の形成が要求される場合もある。
【0011】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、樹脂粉の付着を抑制することにより歩留まり向上が可能であり、アンダーカットが生じない埋め込み回路を形成することにより微細で密着力があり、表面が絶縁層に対して平坦な外層回路が形成可能であり、また、任意の箇所に立体回路を形成することによりバンプやピラー等の種々の金属構成を形成可能な半導体素子搭載用パッケージ基板の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、以下のものに関する。
(1) 第1キャリア金属箔と第2キャリア金属箔とベース金属箔とをこの順の配置となるようめっきで積層形成、前記第1キャリア金属箔と第2金属箔との間及び第2金属箔とベース金属箔との間にそれぞれ金属酸化物を含有する剥離層を設けた多層金属箔を準備し、この多層金属箔のベース金属箔側と基材とを積層してコア基板を形成する工程と、前記多層金属箔の第1キャリア金属箔と第2キャリア金属箔との間で、第1キャリア金属箔を物理的に剥離する工程と、前記コア基板に残った第2キャリア金属箔上に第1のパターンめっきを行う工程と、前記第1のパターンめっきを含む第2キャリア金属箔上に絶縁層を積層して積層体を形成する工程と、前記多層金属箔の第2キャリア金属箔とベース金属箔との間で、前記積層体を第2キャリア金属箔とともにコア基板から物理的に剥離して分離する工程と、前記剥離した積層体の第2キャリア金属箔上にエッチングレジストを形成してエッチングを行い、前記第1のパターンめっき上または前記絶縁層上に立体回路を形成する工程と、を有する半導体素子搭載用パッケージ基板の製造方法。
(2) 第1キャリア金属箔と第2キャリア金属箔とベース金属箔とをこの順の配置となるようめっきで積層形成、前記第1キャリア金属箔と第2金属箔との間及び第2金属箔とベース金属箔との間にそれぞれ金属酸化物を含有する剥離層を設けた多層金属箔を準備し、この多層金属箔のベース金属箔側と基材とを積層してコア基板を形成する工程と、前記多層金属箔の第1キャリア金属箔と第2キャリア金属箔との間で、第1キャリア金属箔を物理的に剥離する工程と、前記コア基板に残った第2キャリア金属箔上に第1のパターンめっきを行う工程と、前記第1のパターンめっきを含む第2キャリア金属箔上に絶縁層を積層して積層体を形成する工程と、前記多層金属箔の第2キャリア金属箔とベース金属箔との間で、前記積層体を第2キャリア金属箔とともにコア基板から物理的に剥離して分離する工程と、前記剥離した積層体の第2キャリア金属箔上に第2のパターンめっきを行う工程と、前記第2のパターンめっきを行った部分以外の第2キャリア金属箔をエッチングにより除去し、前記第1のパターンめっき上または前記絶縁層上に立体回路を形成する工程と、を有する半導体素子搭載用パッケージ基板の製造方法。
(3) 第1キャリア金属箔と第2キャリア金属箔とベース金属箔とをこの順の配置となるようめっきで積層形成、前記第1キャリア金属箔と第2金属箔との間及び第2金属箔とベース金属箔との間にそれぞれ金属酸化物を含有する剥離層を設けた多層金属箔を準備し、この多層金属箔のベース金属箔側と基材とを積層してコア基板を形成する工程と、前記多層金属箔の第1キャリア金属箔と第2キャリア金属箔との間で、第1キャリア金属層を物理的に剥離する工程と、前記コア基板に残った第2キャリア金属箔上に第1のパターンめっきを行う工程と、前記第1のパターンめっきを含む第2キャリア金属箔上に絶縁層を積層して積層体を形成する工程と、前記多層金属箔の第2キャリア金属箔とベース金属箔との間で、前記積層体を第2キャリア金属箔とともにコア基板から物理的に剥離して分離する工程と、前記分離した積層体の第2キャリア金属箔を除去して、前記第1のパターンめっきを前記絶縁層の表面に露出させる工程と、を有する半導体素子搭載用パッケージ基板の製造方法。
(4) 上記(1)から(3)の何れかにおいて、多層金属箔は、第2キャリア金属箔とベース金属箔との間の剥離強度が、第1キャリア金属箔と第2キャリア金属箔との間の剥離強度よりも大きく形成された多層金属箔である半導体素子搭載用パッケージ基板の製造方法。
(5) 上記(1)から()の何れかにおいて、多層金属箔は、平均粗さ(Ra)0.3μm〜1.2μmの凹凸を予め設けた第2キャリア銅箔の表面に、第1キャリア銅箔が積層された多層金属箔である半導体素子搭載用パッケージ基板の製造方法。
(6) 上記(1)から(5)の何れかにおいて、第1キャリア金属箔と第2キャリア金属箔とベース金属箔とをこの順の配置となるようにめっきで積層形成し、前記第1キャリア金属箔と第2金属箔との間及び第2金属箔とベース金属箔との間にそれぞれ金属酸化物を含有する剥離層を設けた多層金属箔を準備し、この多層金属箔のベース金属箔側と基材とを積層してコア基板を形成する工程では、前記多層金属箔が、ベース金属箔上に第2キャリア金属箔と第1キャリア金属箔をめっきで積層形成することにより形成される導体素子搭載用パッケージ基板の製造方法。
(7) 上記(1)から(6)の何れかにおいて、第1キャリア金属箔と第2キャリア金属箔との間に設けられた剥離層は、前記第1キャリア金属箔側に付着した状態で剥離し、第2キャリア金属箔とベース金属箔との間に設けられた剥離層は、前記ベース金属箔側に付着した状態で剥離するように設けられる導体素子搭載用パッケージ基板の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、樹脂粉の付着を抑制することにより歩留まり向上が可能であり、アンダーカットが生じない埋め込み回路を形成することにより微細で密着力があり、表面が絶縁層に対して外層回路が形成可能であり、また、任意の箇所に立体回路を形成することによりバンプやピラー等の種々の金属構成を形成可能な半導体素子搭載用パッケージ基板の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に用いる多層金属箔の断面図である。
図2】本発明のパッケージ基板の製造方法の一部を表すフロー図である。
図3】本発明のパッケージ基板の製造方法の一部を表すフロー図である。
図4】本発明のパッケージ基板の製造方法の一部を表すフロー図である。
図5】本発明のパッケージ基板の製造方法の一部を表すフロー図である。
図6】本発明のパッケージ基板の製造方法の一部を表すフロー図である。
図7】本発明のパッケージ基板の製造方法の一部を表すフロー図である。
図8】本発明のパッケージ基板の製造方法の一部を表すフロー図である。
図9】本発明のパッケージ基板の製造方法を用いて作製した半導体パッケージの 断面図である。
図10】本発明のパッケージ基板の製造方法の一部を表すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のパッケージ基板の製造方法の一例について、図1図8を用いて以下に説明する。
【0016】
まず、図1に示すように、第1キャリア金属箔10と第2キャリア金属箔11とベース金属箔12とをこの順に積層して形成した多層金属箔9を準備する。
【0017】
第1キャリア金属箔10は、第2キャリア金属箔11の表面(第1キャリア金属箔10側の表面)を保護するためのものであり、第2キャリア金属箔11との間で物理的に剥離可能とされる。第2キャリア金属箔11の表面を保護できれば、特に材質や厚みは問わないが、汎用性や取り扱い性の点で、材質としては銅箔やアルミニウム箔が好ましく、厚みとしては1〜35μmが好ましい。また、第1キャリア金属箔10と第2キャリア金属箔11との間には、これらの金属箔10、11の間での剥離強度を安定化するための剥離層13を設けるのが好ましく、剥離層13としては、絶縁樹脂と積層する際の加熱・加圧を複数回行っても剥離強度が安定化しているものが好ましい。このような剥離層13としては、特開2003−181970号公報に開示された金属酸化物層と有機剤層を形成したものや、特開2003−094553号公報に開示されたCu−Ni−Mo合金からなるもの、再公表特許WO2006/013735号公報に示されたNi及びWの金属酸化物又はNi及びMoの金属酸化物を含有するものが挙げられる。なお、この剥離層13は、第1キャリア金属箔10を第2キャリア金属箔11との間で物理的に剥離する際には、第1キャリア金属箔10側に付着した状態で剥離し、第2キャリア金属箔11の表面には残留しないものが望ましい。
【0018】
第2キャリア金属箔11は、第1キャリア金属箔10を剥離した後の表面に第1のパターンめっき18を行うために電流を供給するシード層となるものであり、第1キャリア金属箔10との間およびベース金属箔12との間で物理的に剥離可能とされる。ベース金属箔12とともに給電層として機能すればよく、特に材質や厚みは問わないが、汎用性や取り扱い性の点で、材質としては銅箔やアルミニウム箔が好ましく、厚みとしては1から18μmのものを使用できる。ただ、後述するように外層回路2を形成する際(図7(14)、図8(14)、図10(13))にはエッチングで除去されるので、エッチング量のばらつきを極力低減して高精度な微細回路を形成するためには1〜5μmの極薄金属箔が好ましい。また、第1キャリア金属箔10との間およびベース金属箔12との間には、これらの金属箔10、12との間での剥離強度を安定化するため、上述したような剥離層13、14を設けるのが好ましい。なお、この剥離層14は、第2キャリア金属箔11とベース金属箔12とが一体となってシード層として作用するようにするため、導電性を有するものが望ましい。また、剥離層14は、第2キャリア金属箔11とベース金属箔12との間で物理的に剥離する際には、ベース金属箔12側に移行するのが望ましい。これにより、ベース金属箔12を剥離した後の積層体22側には、第2キャリア金属箔11の表面が露出するので、後工程で行う第2キャリア金属箔11のエッチングが、剥離層14によって阻害されることがない。
【0019】
ベース金属箔12は、多層金属箔9を基材16と積層してコア基板17を作製する際に、基材16と積層される側に位置するものであり、第2キャリア金属箔11との間で物理的に剥離可能とされる。基材16と積層される際に、基材16との接着性を有していれば特に材質や厚みは問わないが、汎用性や取り扱い性の点で、材質としては銅箔やアルミニウム箔が好ましく、厚みとしては9〜70μmが好ましい。また、第2キャリア金属箔11との間には、この金属箔11との間での剥離強度を安定化するため、上述したような剥離層14を設けるのが好ましい。
【0020】
多層金属箔9としては、3層以上の金属箔(例えば、上述したように、第1キャリア金属箔10と第2キャリア金属箔11とベース金属箔12)を有する多層金属箔9であって、少なくとも2箇所の間(例えば、上述したように、第1キャリア金属箔10と第2キャリア金属箔11との間および第2キャリア金属箔11とベース金属箔12との間)が物理的に剥離可能なものを用いる。多層金属箔9のベース金属箔12側に基材16を積層してコア基板17を形成する工程の際には、第1キャリア金属箔10の表面に樹脂粉等の異物が付着することがあるが、このような異物が付着したとしても、第1キャリア金属箔10を第2キャリア金属箔11との間で物理的に剥離することで、樹脂粉等の異物の影響のない第2キャリア金属箔11の表面が形成されるので、高品質な金属箔表面を確保することができる。したがって、第2キャリア金属箔11をシード層として使用して第1のパターンめっき18を行う場合にも、欠陥の発生を抑制することができるので、歩留りの向上を図ることが可能になる。
【0021】
次に、図2(1)に示すように、多層金属箔9のベース金属箔12側と基材16とを積層してコア基板17を形成する。基材16は、多層金属箔9と積層一体化してコア基板17を形成するものであり、基材16としては、一般的に半導体素子搭載用パッケージ基板1の絶縁層3として使用されるものを用いることができる。このような基材16として、ガラスエポキシ、ガラスポリイミド等が挙げられる。コア基板17は、多層金属箔9を用いて、パッケージ基板1を製造する際に支持基板となるものであり、剛性を確保することによって、作業性を向上させること、およびハンドリング時の損傷を防いで歩留りを向上させるのを主な役割とするものである。このため、基材16としては、ガラス繊維等の補強材を有するものが望ましく、例えば、ガラスエポキシ、ガラスポリイミド等のプリプレグを、多層金属箔9と重ねて、熱プレス等を用いて加熱・加圧して積層一体化することで形成できる。基材16の両側(図2(1)の上下両側)に多層金属箔9を積層し、この後の工程を行うことで、1回の工程で2つのパッケージ基板1を製造する工程を進めることができるので、工数低減を図ることができる。また、コア基板17の両側に対称な構成の積層板を構成できるので、反りを抑制することができ、作業性や製造設備への引っ掛かり等による損傷も抑制できる。
【0022】
次に、図2(2)に示すように、多層金属箔9の第1キャリア金属箔10と第2キャリア金属箔11との間で、第1キャリア金属箔を物理的に剥離する。第1キャリア金属箔10の表面には、積層時に基材16の材料となるプリプレグ等からの樹脂粉等の異物が付着する場合がある。このため、この第1キャリア金属箔10を用いて回路を形成する場合は、表面に付着した樹脂粉等の異物によって、回路に断線や短絡等の欠陥が生じることがあり、歩留りの低下に繋がる可能性がある。しかし、このように、第1キャリア金属箔10を剥離し除去することにより、樹脂粉等の異物が付着していない第2キャリア金属箔11を使用して回路を形成することができるので、回路欠陥の発生を抑制することができ、歩留りを改善することが可能になる。また、第1キャリア金属箔10を物理的に剥離可能であるため、第1キャリア金属箔10と第2キャリア金属箔11との間の剥離強度を調整することで、剥離作業を容易に行うことができる。このとき、多層金属箔9の第1キャリア金属箔10と第2キャリア金属箔11との間の剥離層13は、第1キャリア金属箔10側に移行するのが望ましい。これにより、第1キャリア金属箔10を剥離した後の第2キャリア金属箔11側には、第2キャリア金属箔11の表面が露出するので、後工程で行う第2キャリア金属箔11上へのめっきレジスト形成や第1のパターンめっき18の形成が、剥離層13によって阻害されることがない。
【0023】
ここで、多層金属箔9は、第2キャリア金属箔11とベース金属箔12との間の剥離強度が、第1キャリア金属箔10と第2キャリア金属箔11との間の剥離強度よりも大きく形成された多層金属箔9であるのが望ましい。これにより、第1キャリア金属箔10と第2キャリア金属箔11との間で物理的に剥離する際に、第2キャリア金属箔11とベース金属箔12との間が同時に剥離するのを抑制することができる。剥離強度としては、加熱・加圧する前(基材16となるプリプレグを積層してコア基板17を形成する前)の初期において、第1キャリア金属箔10と第2キャリア金属箔11との間では2N/m〜50N/m、第2キャリア金属箔11とベース金属箔12との間では10N/m〜70N/mとし、第1キャリア金属箔10と第2キャリア金属箔11との間の剥離強度が、第2キャリア金属箔11とベース金属箔12との間の剥離強度よりも5N/m〜20N/m小さく、加熱・加圧した後(基材16となるプリプレグを積層してコア基板17を形成した後)の剥離強度の変化率が、初期に対して20%程度以下になるようにすると、製造工程でのハンドリングで剥離することがなく、一方で加熱・加圧した後でも剥離する際は容易であり、しかも第1キャリア金属箔10を剥離する際に、第2キャリア金属箔11が同時に剥れるのを抑制することができるので作業性がよい。
【0024】
剥離強度の調整は、例えば、特開2003−181970号公報や特開2003−094553号公報、再公表特許WO2006/013735号公報に示されるように、剥離層の下地となる第2キャリア金属箔11の表面(第1キャリア金属箔10側の表面)の粗さを調整したり、剥離層となる金属酸化物や合金めっき層を形成するためのめっき液組成や条件を調整することにより可能となる。
【0025】
次に、図2(3)に示すように、コア基板17に残った第2キャリア金属箔11上に第1のパターンめっき18を行う。上述したように、第2キャリア金属箔11の表面(第1キャリア金属箔10側の表面)には、積層時に使用するプリプレグ等からの樹脂粉等の異物は付着しないので、これに起因する回路欠陥を抑制可能となる。第1のパターンめっき18は、第2キャリア金属箔11上に、めっきレジスト(図示しない。)を形成した後、電気めっきを用いて行うことができる。めっきレジストとしては、一般的なパッケージ基板の製造プロセスで用いられる感光性レジストを使用することができる。電気めっきとしては、一般的なパッケージ基板の製造プロセスで用いられる硫酸銅めっきを用いることができる。
【0026】
多層金属箔9は、平均粗さ(Ra)が0.3μm〜1.2μmの凹凸を予め設けた第2キャリア金属箔11の表面に、剥離層13を介して第1キャリア金属箔10が積層された多層金属箔9であるのが望ましい。これにより、第1キャリア金属箔10を剥離層13とともに物理的に剥離した後の第2キャリア金属箔11の表面は、予め設けた平均粗さ(Ra)が0.3μm〜1.2μmの凹凸を有する。このため、第2キャリア金属箔11の表面(第1キャリア金属箔10側の表面)に、第1のパターンめっき18用のめっきレジストを形成する際に、めっきレジストの密着や解像性を向上させることができ、高密度回路の形成に有利となる。また、第2キャリア金属箔11の表面に予め凹凸を設けておくことで、第1キャリア金属箔10を剥離した後に、第2キャリア金属箔11の表面に粗面化処理を行う必要がないため、工数の低減を図ることができる。
【0027】
第2キャリア金属箔11の表面に設ける凹凸の表面粗さは、平均粗さ(Ra)が0.3〜1.2μmであるのが、めっきレジストの密着や解像性を改善しつつ、第1のパターンめっき18後の剥離性を確保できる点で望ましい。平均粗さ(Ra)が0.3μm未満の場合、めっきレジストの密着不足が生じる傾向があり、平均粗さ(Ra)が1.2μmを超える場合、めっきレジストが追従し難くなりやはり密着不足が生じる傾向がある。さらに、めっきレジストのライン/スペースが15μm/15μmよりも微細になる場合には、平均粗さ(Ra)が0.5μm〜0.9μmであるのが望ましい。ここで、平均粗さ(Ra)とは、JIS B 0601(2001)で規定される平均粗さ(Ra)であり、触針式表面粗さ計などを用いて測定することが可能である。なお、平均粗さ(Ra)の調整は、第2キャリア金属箔11が銅箔であれば、第2キャリア金属箔11としての銅箔を形成する際の電気銅めっきの組成(添加剤等を含む)や条件(電流密度や時間等)を調整することで可能となる。
【0028】
次に、図3(4)に示すように、第1のパターンめっき18を含む第2キャリア金属箔11上に絶縁層3を積層して積層体22を形成する。絶縁層3としては、一般的にパッケージ基板1の絶縁層3として使用されるものを用いることができる。このような絶縁層3として、エポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂等が挙げられ、例えば、エポキシ系やポリイミド系の接着シート、ガラスエポキシやガラスポリイミド等のプリプレグを、熱プレス等を用いて加熱・加圧して積層一体化することで形成できる。ここで、積層体22とは、このように積層一体化した状態のもののうち、第1のパターンめっき18を含む第2キャリア金属箔11上に積層されたものをいう。絶縁層3となるこれらの樹脂の上に、さらに導体層20となる金属箔とを重ねて同時に加熱・加圧して積層一体化した場合は、この導体層20も含む。また、後述するように、導体層20により内層回路6を形成したり、導体層20を接続する層間接続5を形成した場合は、これらの内層回路6や層間接続5も含む。
【0029】
次に、図3(5)、(6)に示すように、層間接続孔21を形成し、層間接続5や内層回路6を形成してもよい。層間接続5は、例えば、いわゆるコンフォーマル工法を用いて層間接続孔21を形成した後、この層間接続孔21内をめっきすることで形成することができる。このめっきには、下地めっきとして薄付け無電解銅めっきを行った後、厚付けめっきとして無電解銅めっきや電気銅めっき、フィルドビアめっき等を用いることができる。エッチングする導体層20の厚みを薄くして微細回路を形成し易くするためには、薄付けの下地めっきの後、めっきレジストを形成し、厚付けめっきを電気銅めっきやフィルドビアめっきで行うのが望ましい。内層回路6は、例えば、層間接続孔21へのめっきを行った後、エッチングによって不要部分の導体層20を除去することにより形成することができる。
【0030】
次に、図4(7)、(8)および図5(9)、(10)に示すように、内層回路6や層間接続5の上に、さらに絶縁層3と導体層20を形成し、図3(5)、(6)のときと同様にして、所望の層数となるように、内層回路6や外層回路2、7、層間接続5を形成することもできる。
【0031】
次に、図6(11)に示すように、多層金属箔9の第2キャリア金属箔11とベース金属箔12との間で、積層体22を第2キャリア金属箔11とともにコア基板17から物理的に剥離して分離する。このとき、多層金属箔9の第2キャリア金属箔11とベース金属箔12との間の剥離層14は、ベース金属箔12側に移行するのが望ましい。これにより、ベース金属箔12を剥離した後の積層体22側には、第2キャリア金属箔11の表面が露出するので、後工程で行う第2キャリア金属箔11のエッチングが、剥離層14によって阻害されることがない。
【0032】
次に、図7(12)〜(14)に示すように、分離して剥離した積層体22の第2キャリア金属箔11上にエッチングレジスト25を形成して積層体22の第2キャリア金属箔11をエッチングして、前記第1のパターンめっき18を絶縁層3の表面に露出させるとともに、第1のパターンめっき18上または絶縁層3上に立体回路24を形成する。また、図8(12)〜(14)に示すように、分離して剥離した積層体22の第2キャリア金属箔11上に第2のパターンめっき23を行い、第2のパターンめっき23を行った部分以外の第2キャリア金属箔11をエッチングにより除去し、第1のパターンめっき18を絶縁層3の表面に露出させるとともに、第1のパターンめっき18上または絶縁層3上に立体回路24を形成することもできる。また、図10(12)〜(14)に示すように、分離した積層体22の第2キャリア金属箔11をエッチング等により除去して、第1のパターンめっき18を絶縁層3の表面に露出させる。なお、図7(12)〜(14)、図8(12)〜(14)及び図10(12)〜(14)は、図6(11)のように分離した積層体22のうち、下側の部分のみを表している。これにより、外層回路2を形成する際に、外層回路2の側面がエッチングによって侵食されないため、アンダーカットを生じないので、微細な外層回路2を形成することができる。また、本発明で形成される外層回路2は、絶縁層3に埋め込まれた状態となるため、外層回路2の底面だけでなく、両側の側面も絶縁層3と密着しているため、微細回路であっても、十分な密着性を確保することができる。また、第2キャリア金属箔11として厚さ1μm〜5μmの極薄銅箔を用いた場合は、僅かなエッチング量でも第2キャリア金属箔11を除去することができるため、絶縁層3に埋め込まれ、絶縁層3から露出した外層回路2の表面は平坦であり、ワイワーボンディングやフリップチップ接続の際の接続信頼性を確保することができ、半導体素子との接続端子として用いられるのに適している。また、半導体素子との接続端子を、層間接続5と平面視において重なる位置の外層回路2に設けることが可能であるため、半導体素子との接続端子を層間接続5の直上または直下に設けることが可能であり、小型化・高密度化にも対応が可能である。さらに、任意の箇所に立体回路24を形成することによりバンプやピラー等の種々の金属構成を形成可能であり、第2キャリア金属箔11や第2のパターンめっき23の厚みを変えることで、任意の高さに形成することも可能であるため、種々の半導体素子(図示しない。)や他のパッケージ基板との接続形態に対応することができる。例えば、図9に示すように、キャビティを設けなくても、PoPを構成することが可能となる。
【0033】
次に、必要に応じてソルダーレジスト4や保護めっき8を形成してもよい。保護めっき8としては、一般的にパッケージ基板の接続端子の保護めっきとして用いられるニッケルめっきと金めっきが望ましい。
【0034】
以上のように、本発明のパッケージ基板の製造方法によれば、層間接続と重なる位置に平坦でかつ微細な埋め込み回路を有するパッケージ基板を形成することができ、ワイヤーボンディングやフリップチップ接続に適したパッケージ基板を形成することができる。また、任意の箇所に立体回路を形成することによりバンプやピラー等の種々の金属構成を備えるパッケージ基板を形成することができる。
【実施例】
【0035】
以下に、本発明の実施例を説明するが、本発明は本実施例に限定されない。
【0036】
(実施例1)
まず、図1に示すように、第1キャリア金属箔10と第2キャリア金属箔11とベース金属箔12とをこの順に積層して形成した多層金属箔9を準備した。第1キャリア金属箔10は9μmの銅箔を、第2キャリア金属箔11は3μmの極薄銅箔を、ベース金属箔12は18μmの銅箔を用いている。ベース金属箔12の表面(第2キャリア金属箔11側の表面)には、物理的な剥離が可能になるように、剥離層14を設けた。また、第2キャリア金属箔11の表面(第1キャリア金属箔10側の表面)には、平均粗さ(Ra)0.7μmの凹凸を予め設けた。また、この凹凸の上、つまり第1キャリア金属箔10との間には、物理的な剥離が可能になるように、剥離層13を設けた。ベース金属箔12と第2キャリア金属箔11との間、及び第2キャリア金属箔11と第1キャリア金属箔10との間の剥離層13、14は、何れもNi(ニッケル)、Mo(モリブデン)、クエン酸を含有するめっき浴を用いて金属酸化物層を形成することで形成した。なお、剥離強度の調整は、電流密度と時間を調整することで、剥離層13、14を形成する金属酸化物量を調整して行った。このときの加熱・加圧する前(基材16となるプリプレグを積層してコア基板17を形成する前)の初期の剥離強度は、ベース金属箔12と第2キャリア金属箔11との間が47N/m、第2キャリア金属箔11と第1キャリア金属箔10との間が29N/mであった。なお、加熱・加圧した後(基材16となるプリプレグを積層してコア基板17を形成した後)の剥離強度の変化率は、初期に対して約10%程度上昇した程度であった。
【0037】
図1に示す多層金属箔9の作製は、具体的には以下のように行った。
(1)ベース金属箔12として、厚さ18μmの電解銅箔を用い、硫酸30g/Lに60秒浸漬して酸洗浄後に流水で30秒間水洗を行った。
(2)洗浄した電解銅箔を陰極とし、酸化イリジウムコーテイングを施したTi極板を陽極とし、Ni(ニッケル)、Mo(モリブデン)、クエン酸を含有するめっき浴として、硫酸ニッケル6水和物30g/L、モリブデン酸ナトリウム2水和物3.0g/L、クエン酸3ナトリウム2水和物30g/L、pH6.0、液温度30℃の浴にて、電解銅箔の光沢面に、電流密度20A/dmで5秒間電解処理し、ニッケルとモリブデンからなる金属酸化物を含有する剥離層14を形成した。
(3)剥離層14を形成後の表面に、硫酸銅5水和物200g/L、硫酸100g/L、液温度40℃の浴にて、酸化イリジウムコーテイングを施したTi極板を陽極として、電流密度4A/dmで200秒間電解めっきを行い、厚さ3μmの第2キャリア金属箔11となる金属層を形成した。
(4)第2キャリア金属箔11となる金属層を形成した後の表面に、上記(2)と同様の浴を用いて、電流密度10A/dmで10秒間電解処理し、ニッケルとモリブデンからなる金属酸化物を含有する剥離層13を形成した。
(5)剥離層13を形成した後の表面に、上記(3)と同様の浴を用いて、電流密度4A/dmで600秒間電解めっきを行い厚さ9μmの第1キャリア金属箔10となる金属層を形成した。
(6)基材16と接触する面に、硫酸銅めっきにより粒状の粗化粒子を形成し、クロメート処理及びシランカップリング剤処理を施した。また、基材16と接しない面にはクロメート処理を施した。
【0038】
次に、図2(1)に示すように、多層金属箔9のベース金属箔12側と基材16とを積層してコア基板17を形成した。基材16としてガラスエポキシのプリプレグを用い、このプリプレグの上下両側に多層金属箔9を重ねて、熱プレスを用いて加熱・加圧して積層一体化した。
【0039】
次に、図2(2)に示すように、多層金属箔9の第1キャリア金属箔10と第2キャリア金属箔11との間で、第1キャリア金属箔10を物理的に剥離した。
【0040】
次に、図2(3)に示すように、コア基板17に残った第2キャリア金属箔11上に第1のパターンめっき18を行った。第1のパターンめっき18は、第2キャリア金属箔11上に、感光性のめっきレジストを形成した後、硫酸銅電気めっきを用いて形成した。
【0041】
次に、図3(4)に示すように、第1のパターンめっき18を含む第2キャリア金属箔11上に絶縁層3と導体層20として銅箔(12μm)を積層して積層体22を形成した。絶縁層3としては、エポキシ系の接着シートを熱プレスを用い、加熱・加圧して積層一体化することで形成した。
【0042】
次に、図3(5)、(6)に示すように、層間接続5や内層回路6を形成した。層間接続5は、コンフォーマル工法を用いて層間接続孔21を形成した後、この層間接続孔21内をめっきすることで形成した。このめっきには、下地めっきとして薄付け無電解銅めっきを行った後、感光性のめっきレジストを形成し、厚付けめっきを硫酸銅電気めっきで行った。この後、エッチングによって不要部分の導体層20を除去することにより内層回路6を形成した。
【0043】
次に、図4(7)、(8)および図5(9)、(10)に示すように、内層回路6や層間接続5の上に、さらに絶縁層3と導体層20を形成し、内層回路6や外層回路2、7、層間接続5を形成して、4層の導体層20を有する積層体22を形成した。
【0044】
次に、図6(11)に示すように、多層金属箔9の第2キャリア金属箔11とベース金属箔12との間で、積層体22を第2キャリア金属箔11とともにコア基板17から物理的に剥離して分離した。
【0045】
次に、図7(12)〜(14)に示すように、分離して剥離した積層体22の第2キャリア金属箔11上にエッチングレジストを形成して積層体22の第2キャリア金属箔11をエッチングして、前記第1のパターンめっき18を前記絶縁層3の表面に露出させるとともに、第1のパターンめっき18上または絶縁層3上に立体回路24を形成した。
【0046】
次に、感光性のソルダーレジストを形成し、その後、保護めっきとして、無電解ニッケルめっきと無電解金めっきを行い、パッケージ基板を形成した。
【0047】
(実施例2)
ベース金属箔12と第2キャリア金属箔11との間、及び第2キャリア金属箔11と第1キャリア金属箔10との間の剥離強度を、何れもNi(ニッケル)、Mo(モリブデン)、クエン酸を含有するめっき浴を用いて金属酸化物層を形成する際の電流密度や時間を変えることで、剥離層13、14を形成する金属酸化物量を調整して変化させた。具体的には、電流密度10A/dmで10秒間電解処理し、ニッケルとモリブデンからなる金属酸化物を含有する剥離層14を形成し、電流密度7.5A/dmで15秒間電解処理し、ニッケルとモリブデンからなる金属酸化物を含有する剥離層13を形成した。このときの加熱・加圧する前の初期の剥離強度は、ベース金属箔12と第2キャリア金属箔11との間が23N/m、第2キャリア金属箔11と第1キャリア金属箔10との間が18N/mであった。なお、加熱・加圧した後の剥離強度は、初期に対して10〜20%程度上昇した程度であった。これ以外は実施例1と同様にしてパッケージ基板を作製した。
【0048】
(実施例3)
ベース金属箔12と第2キャリア金属箔11との間、及び第2キャリア金属箔11と第1キャリア金属箔10との間の剥離強度を、何れもNi(ニッケル)、Mo(モリブデン)、クエン酸を含有するめっき浴を用いて金属酸化物層を形成する際の電流を変えることで、剥離層13、14を形成する金属酸化物量を調整して変化させた。具体的には、電流密度5A/dmで20秒間電解処理し、ニッケルとモリブデンからなる金属酸化物を含有する剥離層14を形成し、電流密度2A/dmで20秒間電解処理し、ニッケルとモリブデンからなる金属酸化物を含有する剥離層13を形成した。このときの加熱・加圧する前の初期の剥離強度は、ベース金属箔12と第2キャリア金属箔11との間が15N/m、第2キャリア金属箔11と第1キャリア金属箔10との間が2N/mであった。なお、加熱・加圧した後の剥離強度は、初期に対して10〜20%程度上昇した程度であった。これ以外は実施例1と同様にしてパッケージ基板を作製した。
【0049】
(実施例4)
ベース金属箔12と第2キャリア金属箔11との間、及び第2キャリア金属箔11と第1キャリア金属箔10との間の剥離強度を、何れもNi(ニッケル)、Mo(モリブデン)、クエン酸を含有するめっき浴を用いて金属酸化物層を形成する際の電流を変えることで、剥離層13、14を形成する金属酸化物量を調整して変化させた。具体的には、電流密度25A/dmで4秒間電解処理し、ニッケルとモリブデンからなる金属酸化物を含有する剥離層14を形成し、電流密度20A/dmで4秒間電解処理し、ニッケルとモリブデンからなる金属酸化物を含有する剥離層13を形成した。このときの加熱・加圧する前の初期の剥離強度は、ベース金属箔12と第2キャリア金属箔11との間が68N/m、第2キャリア金属箔11と第1キャリア金属箔10との間が48N/mであった。なお、加熱・加圧した後の剥離強度は、初期に対して5〜10%程度上昇した程度であった。
【0050】
上記で準備した多層金属箔9を用い、実施例1の図7(12)〜(14)に示す工程の代わりに、図8(12)〜(14)に示すように、分離して剥離した積層体22の第2キャリア金属箔11上に第2のパターンめっき23を行い、第2のパターンめっき23を行った部分以外の第2キャリア金属箔11をエッチングにより除去し、第1のパターンめっき18を絶縁層3の表面に露出させるとともに、第1のパターンめっき18上または絶縁層3上に立体回路24を形成した。この工程以外は、実施例1と同様にしてパッケージ基板を作製した。
【0051】
(実施例5)
ベース金属箔12と第2キャリア金属箔11との間、及び第2キャリア金属箔11と第1キャリア金属箔10との間の剥離強度を、何れもNi(ニッケル)、Mo(モリブデン)、クエン酸を含有するめっき浴を用いて金属酸化物層を形成する際の電流を変えることで、剥離層13、14を形成する金属酸化物量を調整して変化させた。具体的には、電流密度20A/dmで5秒間電解処理し、ニッケルとモリブデンからなる金属酸化物を含有する剥離層14を形成し、電流密度10A/dmで10秒間電解処理し、ニッケルとモリブデンからなる金属酸化物を含有する剥離層13を形成した。このときの加熱・加圧する前の初期の剥離強度は、ベース金属箔12と第2キャリア金属箔11との間が43N/m、第2キャリア金属箔11と第1キャリア金属箔10との間が28N/mであった。なお、加熱・加圧した後の剥離強度は、初期に対して10〜15%程度上昇した程度であった。これ以外は実施例4と同様にしてパッケージ基板を作製した。
【0052】
(実施例6)
ベース金属箔12と第2キャリア金属箔11との間、及び第2キャリア金属箔11と第1キャリア金属箔10との間の剥離強度を、何れもNi(ニッケル)、Mo(モリブデン)、クエン酸を含有するめっき浴を用いて金属酸化物層を形成する際の電流を変えることで、剥離層13、14を形成する金属酸化物量を調整して変化させた。具体的には、電流密度10A/dmで10秒間電解処理し、ニッケルとモリブデンからなる金属酸化物を含有する剥離層14を形成し、電流密度2.5A/dmで40秒間電解処理し、ニッケルとモリブデンからなる金属酸化物を含有する剥離層13を形成した。このときの加熱・加圧する前の初期の剥離強度は、ベース金属箔12と第2キャリア金属箔11との間が22N/m、第2キャリア金属箔11と第1キャリア金属箔10との間が4N/mであった。なお、加熱・加圧した後の剥離強度は、初期に対して5〜15%程度上昇した程度であった。これ以外は実施例4と同様にしてパッケージ基板を作製した。
【0053】
(実施例7)
ベース金属箔12と第2キャリア金属箔11との間、及び第2キャリア金属箔11と第1キャリア金属箔10との間の剥離強度を、何れもNi(ニッケル)、Mo(モリブデン)、クエン酸を含有するめっき浴を用いて金属酸化物層を形成する際の電流を変えることで、剥離層13、14を形成する金属酸化物量を調整して変化させた。具体的には、電流密度20A/dmで5秒間電解処理し、ニッケルとモリブデンからなる金属酸化物を含有する剥離層14を形成し、電流密度10A/dmで10秒間電解処理し、ニッケルとモリブデンからなる金属酸化物を含有する剥離層13を形成した。このときの加熱・加圧する前の初期の剥離強度は、ベース金属箔12と第2キャリア金属箔11との間が45N/m、第2キャリア金属箔11と第1キャリア金属箔10との間が26N/mであった。なお、加熱・加圧した後の剥離強度は、初期に対して10%程度上昇した程度であった。
【0054】
上記で準備した多層金属箔9を用い、実施例1の図7(12)〜(14)に示す工程の代わりに、図10(12)〜(14)に示すように、分離して剥離した積層体22の第2キャリア金属箔11をエッチングにより除去し、第1のパターンめっき18を絶縁層3の表面に露出させ絶縁層3に埋め込まれた外層回路2を形成した。この工程以外は、実施例1と同様にしてパッケージ基板を作製した。
【0055】
表1に、実施例1〜7について、絶縁層3に埋め込まれて形成された外層回路2の仕上がり状態、第1キャリア金属箔10と第2キャリア金属箔11との間の剥離強度、第2キャリア金属箔11とベース金属箔12との間の剥離強度、ハンドリング時のキャリア金属箔の剥れの有無を示す。実施例1〜7の何れもライン/スペースが10μm/10μmまでの微細な外層回路2を形成することができた(表1の“○”は、アンダーカットのないことを示す。)。また、断面を観察した結果、何れもアンダーカットは生じていなかった。さらに、断面の観察結果から、第2キャリア金属箔11は3μmの極薄銅を用いているため、僅かなエッチング量で均一に除去されており、外層回路2の表面はほぼ平坦であった。また、実施例1〜6の何れも、製造工程でのハンドリングで第1キャリア金属箔10と第2キャリア金属箔11との間や、第2キャリア金属箔11とベース金属箔12との間が剥離することはなかった(表1の“○”は、剥れがないことを示す。)。また、第1キャリア金属箔10と第2キャリア金属箔11との間で剥離する際に、第2キャリア金属箔11とベース金属箔12との間が剥離することはなかった。
【0056】
【表1】
【0057】
加熱・加圧する前(基材16となるプリプレグを積層してコア基板17を形成する前)の初期の剥離強度(N/m)の測定は、10mm幅にカットした多層金属箔のサンプルを作製し、テンシロンRTM−100(株式会社オリエンテック製、商品名、「テンシロン」は登録商標。)を用い、JIS Z 0237の90度引き剥がし法に準じて、室温(25℃)で、まず、第1キャリア金属箔を90度方向に毎分300mmの速さで引き剥がして測定し、次に、第2キャリア金属箔を90度方向に毎分300mmの速さで引き剥がして測定した。また、加熱・加圧した後(基材16となるプリプレグを積層してコア基板17を形成した後)の剥離強度も、初期の剥離強度と同様にして測定し、初期に対する変化率を求めた。なお、多層金属箔9と基材16となるガラスエポキシプリプレグとを積層してコア基板17を形成する際の加熱・加圧の条件は、真空プレスを用いて、圧力3MPa、温度175℃、保持時間1.5hrである。
【符号の説明】
【0058】
1:半導体素子搭載用パッケージ基板
2:外層回路または埋め込み回路
3:絶縁層
4:ソルダーレジスト
5:層間接続
6:内層回路
7:外層回路
8:保護めっき
9:多層金属箔
10:第1キャリア金属箔
11:第2キャリア金属箔
12:ベース金属箔
13:剥離層
14:剥離層
16:基材
17:コア基板
18:第1のパターンめっき
20:導体層
21:層間接続孔
22:積層体
23:第2のパターンめっき
24:立体回路
25:エッチングレジスト
26:はんだ
27:半導体素子
28:半導体パッケージ
29:封止材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10