【実施例】
【0035】
以下に、本発明の実施例を説明するが、本発明は本実施例に限定されない。
【0036】
(実施例1)
まず、
図1に示すように、第1キャリア金属箔10と第2キャリア金属箔11とベース金属箔12とをこの順に積層して形成した多層金属箔9を準備した。第1キャリア金属箔10は9μmの銅箔を、第2キャリア金属箔11は3μmの極薄銅箔を、ベース金属箔12は18μmの銅箔を用いている。ベース金属箔12の表面(第2キャリア金属箔11側の表面)には、物理的な剥離が可能になるように、剥離層14を設けた。また、第2キャリア金属箔11の表面(第1キャリア金属箔10側の表面)には、平均粗さ(Ra)0.7μmの凹凸を予め設けた。また、この凹凸の上、つまり第1キャリア金属箔10との間には、物理的な剥離が可能になるように、剥離層13を設けた。ベース金属箔12と第2キャリア金属箔11との間、及び第2キャリア金属箔11と第1キャリア金属箔10との間の剥離層13、14は、何れもNi(ニッケル)、Mo(モリブデン)、クエン酸を含有するめっき浴を用いて金属酸化物層を形成することで形成した。なお、剥離強度の調整は、電流密度と時間を調整することで、剥離層13、14を形成する金属酸化物量を調整して行った。このときの加熱・加圧する前(基材16となるプリプレグを積層してコア基板17を形成する前)の初期の剥離強度は、ベース金属箔12と第2キャリア金属箔11との間が47N/m、第2キャリア金属箔11と第1キャリア金属箔10との間が29N/mであった。なお、加熱・加圧した後(基材16となるプリプレグを積層してコア基板17を形成した後)の剥離強度の変化率は、初期に対して約10%程度上昇した程度であった。
【0037】
図1に示す多層金属箔9の作製は、具体的には以下のように行った。
(1)ベース金属箔12として、厚さ18μmの電解銅箔を用い、硫酸30g/Lに60秒浸漬して酸洗浄後に流水で30秒間水洗を行った。
(2)洗浄した電解銅箔を陰極とし、酸化イリジウムコーテイングを施したTi極板を陽極とし、Ni(ニッケル)、Mo(モリブデン)、クエン酸を含有するめっき浴として、硫酸ニッケル6水和物30g/L、モリブデン酸ナトリウム2水和物3.0g/L、クエン酸3ナトリウム2水和物30g/L、pH6.0、液温度30℃の浴にて、電解銅箔の光沢面に、電流密度20A/dm
2で5秒間電解処理し、ニッケルとモリブデンからなる金属酸化物を含有する剥離層14を形成した。
(3)剥離層14を形成後の表面に、硫酸銅5水和物200g/L、硫酸100g/L、液温度40℃の浴にて、酸化イリジウムコーテイングを施したTi極板を陽極として、電流密度4A/dm
2で200秒間電解めっきを行い、厚さ3μmの第2キャリア金属箔11となる金属層を形成した。
(4)第2キャリア金属箔11となる金属層を形成した後の表面に、上記(2)と同様の浴を用いて、電流密度10A/dm
2で10秒間電解処理し、ニッケルとモリブデンからなる金属酸化物を含有する剥離層13を形成した。
(5)剥離層13を形成した後の表面に、上記(3)と同様の浴を用いて、電流密度4A/dm
2で600秒間電解めっきを行い厚さ9μmの第1キャリア金属箔10となる金属層を形成した。
(6)基材16と接触する面に、硫酸銅めっきにより粒状の粗化粒子を形成し、クロメート処理及びシランカップリング剤処理を施した。また、基材16と接しない面にはクロメート処理を施した。
【0038】
次に、
図2(1)に示すように、多層金属箔9のベース金属箔12側と基材16とを積層してコア基板17を形成した。基材16としてガラスエポキシのプリプレグを用い、このプリプレグの上下両側に多層金属箔9を重ねて、熱プレスを用いて加熱・加圧して積層一体化した。
【0039】
次に、
図2(2)に示すように、多層金属箔9の第1キャリア金属箔10と第2キャリア金属箔11との間で、第1キャリア金属箔10を物理的に剥離した。
【0040】
次に、
図2(3)に示すように、コア基板17に残った第2キャリア金属箔11上に第1のパターンめっき18を行った。第1のパターンめっき18は、第2キャリア金属箔11上に、感光性のめっきレジストを形成した後、硫酸銅電気めっきを用いて形成した。
【0041】
次に、
図3(4)に示すように、第1のパターンめっき18を含む第2キャリア金属箔11上に絶縁層3と導体層20として銅箔(12μm)を積層して積層体22を形成した。絶縁層3としては、エポキシ系の接着シートを熱プレスを用い、加熱・加圧して積層一体化することで形成した。
【0042】
次に、
図3(5)、(6)に示すように、層間接続5や内層回路6を形成した。層間接続5は、コンフォーマル工法を用いて層間接続孔21を形成した後、この層間接続孔21内をめっきすることで形成した。このめっきには、下地めっきとして薄付け無電解銅めっきを行った後、感光性のめっきレジストを形成し、厚付けめっきを硫酸銅電気めっきで行った。この後、エッチングによって不要部分の導体層20を除去することにより内層回路6を形成した。
【0043】
次に、
図4(7)、(8)および
図5(9)、(10)に示すように、内層回路6や層間接続5の上に、さらに絶縁層3と導体層20を形成し、内層回路6や外層回路2、7、層間接続5を形成して、4層の導体層20を有する積層体22を形成した。
【0044】
次に、
図6(11)に示すように、多層金属箔9の第2キャリア金属箔11とベース金属箔12との間で、積層体22を第2キャリア金属箔11とともにコア基板17から物理的に剥離して分離した。
【0045】
次に、
図7(12)〜(14)に示すように、分離して剥離した積層体22の第2キャリア金属箔11上にエッチングレジストを形成して積層体22の第2キャリア金属箔11をエッチングして、前記第1のパターンめっき18を前記絶縁層3の表面に露出させるとともに、第1のパターンめっき18上または絶縁層3上に立体回路24を形成した。
【0046】
次に、感光性のソルダーレジストを形成し、その後、保護めっきとして、無電解ニッケルめっきと無電解金めっきを行い、パッケージ基板を形成した。
【0047】
(実施例2)
ベース金属箔12と第2キャリア金属箔11との間、及び第2キャリア金属箔11と第1キャリア金属箔10との間の剥離強度を、何れもNi(ニッケル)、Mo(モリブデン)、クエン酸を含有するめっき浴を用いて金属酸化物層を形成する際の電流密度や時間を変えることで、剥離層13、14を形成する金属酸化物量を調整して変化させた。具体的には、電流密度10A/dm
2で10秒間電解処理し、ニッケルとモリブデンからなる金属酸化物を含有する剥離層14を形成し、電流密度7.5A/dm
2で15秒間電解処理し、ニッケルとモリブデンからなる金属酸化物を含有する剥離層13を形成した。このときの加熱・加圧する前の初期の剥離強度は、ベース金属箔12と第2キャリア金属箔11との間が23N/m、第2キャリア金属箔11と第1キャリア金属箔10との間が18N/mであった。なお、加熱・加圧した後の剥離強度は、初期に対して10〜20%程度上昇した程度であった。これ以外は実施例1と同様にしてパッケージ基板を作製した。
【0048】
(実施例3)
ベース金属箔12と第2キャリア金属箔11との間、及び第2キャリア金属箔11と第1キャリア金属箔10との間の剥離強度を、何れもNi(ニッケル)、Mo(モリブデン)、クエン酸を含有するめっき浴を用いて金属酸化物層を形成する際の電流を変えることで、剥離層13、14を形成する金属酸化物量を調整して変化させた。具体的には、電流密度5A/dm
2で20秒間電解処理し、ニッケルとモリブデンからなる金属酸化物を含有する剥離層14を形成し、電流密度2A/dm
2で20秒間電解処理し、ニッケルとモリブデンからなる金属酸化物を含有する剥離層13を形成した。このときの加熱・加圧する前の初期の剥離強度は、ベース金属箔12と第2キャリア金属箔11との間が15N/m、第2キャリア金属箔11と第1キャリア金属箔10との間が2N/mであった。なお、加熱・加圧した後の剥離強度は、初期に対して10〜20%程度上昇した程度であった。これ以外は実施例1と同様にしてパッケージ基板を作製した。
【0049】
(実施例4)
ベース金属箔12と第2キャリア金属箔11との間、及び第2キャリア金属箔11と第1キャリア金属箔10との間の剥離強度を、何れもNi(ニッケル)、Mo(モリブデン)、クエン酸を含有するめっき浴を用いて金属酸化物層を形成する際の電流を変えることで、剥離層13、14を形成する金属酸化物量を調整して変化させた。具体的には、電流密度25A/dm
2で4秒間電解処理し、ニッケルとモリブデンからなる金属酸化物を含有する剥離層14を形成し、電流密度20A/dm
2で4秒間電解処理し、ニッケルとモリブデンからなる金属酸化物を含有する剥離層13を形成した。このときの加熱・加圧する前の初期の剥離強度は、ベース金属箔12と第2キャリア金属箔11との間が68N/m、第2キャリア金属箔11と第1キャリア金属箔10との間が48N/mであった。なお、加熱・加圧した後の剥離強度は、初期に対して5〜10%程度上昇した程度であった。
【0050】
上記で準備した多層金属箔9を用い、実施例1の
図7(12)〜(14)に示す工程の代わりに、
図8(12)〜(14)に示すように、分離して剥離した積層体22の第2キャリア金属箔11上に第2のパターンめっき23を行い、第2のパターンめっき23を行った部分以外の第2キャリア金属箔11をエッチングにより除去し、第1のパターンめっき18を絶縁層3の表面に露出させるとともに、第1のパターンめっき18上または絶縁層3上に立体回路24を形成した。この工程以外は、実施例1と同様にしてパッケージ基板を作製した。
【0051】
(実施例5)
ベース金属箔12と第2キャリア金属箔11との間、及び第2キャリア金属箔11と第1キャリア金属箔10との間の剥離強度を、何れもNi(ニッケル)、Mo(モリブデン)、クエン酸を含有するめっき浴を用いて金属酸化物層を形成する際の電流を変えることで、剥離層13、14を形成する金属酸化物量を調整して変化させた。具体的には、電流密度20A/dm
2で5秒間電解処理し、ニッケルとモリブデンからなる金属酸化物を含有する剥離層14を形成し、電流密度10A/dm
2で10秒間電解処理し、ニッケルとモリブデンからなる金属酸化物を含有する剥離層13を形成した。このときの加熱・加圧する前の初期の剥離強度は、ベース金属箔12と第2キャリア金属箔11との間が43N/m、第2キャリア金属箔11と第1キャリア金属箔10との間が28N/mであった。なお、加熱・加圧した後の剥離強度は、初期に対して10〜15%程度上昇した程度であった。これ以外は実施例4と同様にしてパッケージ基板を作製した。
【0052】
(実施例6)
ベース金属箔12と第2キャリア金属箔11との間、及び第2キャリア金属箔11と第1キャリア金属箔10との間の剥離強度を、何れもNi(ニッケル)、Mo(モリブデン)、クエン酸を含有するめっき浴を用いて金属酸化物層を形成する際の電流を変えることで、剥離層13、14を形成する金属酸化物量を調整して変化させた。具体的には、電流密度10A/dm
2で10秒間電解処理し、ニッケルとモリブデンからなる金属酸化物を含有する剥離層14を形成し、電流密度2.5A/dm
2で40秒間電解処理し、ニッケルとモリブデンからなる金属酸化物を含有する剥離層13を形成した。このときの加熱・加圧する前の初期の剥離強度は、ベース金属箔12と第2キャリア金属箔11との間が22N/m、第2キャリア金属箔11と第1キャリア金属箔10との間が4N/mであった。なお、加熱・加圧した後の剥離強度は、初期に対して5〜15%程度上昇した程度であった。これ以外は実施例4と同様にしてパッケージ基板を作製した。
【0053】
(実施例7)
ベース金属箔12と第2キャリア金属箔11との間、及び第2キャリア金属箔11と第1キャリア金属箔10との間の剥離強度を、何れもNi(ニッケル)、Mo(モリブデン)、クエン酸を含有するめっき浴を用いて金属酸化物層を形成する際の電流を変えることで、剥離層13、14を形成する金属酸化物量を調整して変化させた。具体的には、電流密度20A/dm
2で5秒間電解処理し、ニッケルとモリブデンからなる金属酸化物を含有する剥離層14を形成し、電流密度10A/dm
2で10秒間電解処理し、ニッケルとモリブデンからなる金属酸化物を含有する剥離層13を形成した。このときの加熱・加圧する前の初期の剥離強度は、ベース金属箔12と第2キャリア金属箔11との間が45N/m、第2キャリア金属箔11と第1キャリア金属箔10との間が26N/mであった。なお、加熱・加圧した後の剥離強度は、初期に対して10%程度上昇した程度であった。
【0054】
上記で準備した多層金属箔9を用い、実施例1の
図7(12)〜(14)に示す工程の代わりに、
図10(12)〜(14)に示すように、分離して剥離した積層体22の第2キャリア金属箔11をエッチングにより除去し、第1のパターンめっき18を絶縁層3の表面に露出させ絶縁層3に埋め込まれた外層回路2を形成した。この工程以外は、実施例1と同様にしてパッケージ基板を作製した。
【0055】
表1に、実施例1〜7について、絶縁層3に埋め込まれて形成された外層回路2の仕上がり状態、第1キャリア金属箔10と第2キャリア金属箔11との間の剥離強度、第2キャリア金属箔11とベース金属箔12との間の剥離強度、ハンドリング時のキャリア金属箔の剥れの有無を示す。実施例1〜7の何れもライン/スペースが10μm/10μmまでの微細な外層回路2を形成することができた(表1の“○”は、アンダーカットのないことを示す。)。また、断面を観察した結果、何れもアンダーカットは生じていなかった。さらに、断面の観察結果から、第2キャリア金属箔11は3μmの極薄銅を用いているため、僅かなエッチング量で均一に除去されており、外層回路2の表面はほぼ平坦であった。また、実施例1〜6の何れも、製造工程でのハンドリングで第1キャリア金属箔10と第2キャリア金属箔11との間や、第2キャリア金属箔11とベース金属箔12との間が剥離することはなかった(表1の“○”は、剥れがないことを示す。)。また、第1キャリア金属箔10と第2キャリア金属箔11との間で剥離する際に、第2キャリア金属箔11とベース金属箔12との間が剥離することはなかった。
【0056】
【表1】
【0057】
加熱・加圧する前(基材16となるプリプレグを積層してコア基板17を形成する前)の初期の剥離強度(N/m)の測定は、10mm幅にカットした多層金属箔のサンプルを作製し、テンシロンRTM−100(株式会社オリエンテック製、商品名、「テンシロン」は登録商標。)を用い、JIS Z 0237の90度引き剥がし法に準じて、室温(25℃)で、まず、第1キャリア金属箔を90度方向に毎分300mmの速さで引き剥がして測定し、次に、第2キャリア金属箔を90度方向に毎分300mmの速さで引き剥がして測定した。また、加熱・加圧した後(基材16となるプリプレグを積層してコア基板17を形成した後)の剥離強度も、初期の剥離強度と同様にして測定し、初期に対する変化率を求めた。なお、多層金属箔9と基材16となるガラスエポキシプリプレグとを積層してコア基板17を形成する際の加熱・加圧の条件は、真空プレスを用いて、圧力3MPa、温度175℃、保持時間1.5hrである。