特許第5896410号(P5896410)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5896410
(24)【登録日】2016年3月11日
(45)【発行日】2016年3月30日
(54)【発明の名称】低融点金属触媒部材
(51)【国際特許分類】
   B01J 27/185 20060101AFI20160317BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20160317BHJP
   B01J 37/00 20060101ALI20160317BHJP
   C04B 41/88 20060101ALI20160317BHJP
   C03C 17/06 20060101ALI20160317BHJP
【FI】
   B01J27/185 M
   B01J37/02 301M
   B01J37/02 301N
   B01J37/02 301R
   B01J37/00 Z
   C04B41/88 A
   C03C17/06 A
   C03C17/06 Z
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-66854(P2012-66854)
(22)【出願日】2012年3月23日
(65)【公開番号】特開2013-198827(P2013-198827A)
(43)【公開日】2013年10月3日
【審査請求日】2015年2月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000180070
【氏名又は名称】山陽特殊製鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101085
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 健至
(74)【代理人】
【識別番号】100134131
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 知理
(72)【発明者】
【氏名】廣野 友紀
(72)【発明者】
【氏名】仮屋 哲朗
【審査官】 田澤 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−256379(JP,A)
【文献】 特開2001−226757(JP,A)
【文献】 特開2006−052101(JP,A)
【文献】 特開2002−275557(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00−38/74
C04B 41/00−41/91
C03C 17/00−17/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックス、ガラス、樹脂又は軽金属からなる部材表面に、(1)Sn系低融点金属、Zn系低融点金属、P系低融点元素と、Co系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する金属粉末、又は(2)Sn系低融点金属、Zn系低融点金属、P系低融点元素と、Co系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する合金粉末、若しくは(3)Sn系低融点金属、Zn系低融点金属、P系低融点元素と、Co系として純Co、Ni系として純Ni、Ti系として純Tiからなる触媒機能を有する金属粉末及びCo系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する合金粉末の(1)〜(3)いずれか1種又は2種以上が固着していることを特徴とする触媒部材。
【請求項2】
Sn系低融点金属がSn、Zn系低融点金属がZn、P系低融点元素がPであり、これら低融点物質のSn、Zn及びPの1種または2種以上と、金属粉末が純Ni、純Co、純Tiである金属粉末の1種または2種以上と、合金粉末がNi合金、Co合金、Ti合金である合金粉末の1種または2種以上とが固着していることを特徴とする請求項1に記載の触媒部材。
【請求項3】
触媒部材は、ラトラ試験前後の質量変化割合より選出される質量減少率が20%未満と高強度であることを特徴とする請求項1または2に記載の触媒部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックス、ガラス、樹脂、あるいは軽金属からなる部材表面に、Sn系、Zn系の低融点金属及びP系低融点元素とCo系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する金属粉末、又はSn系、Zn系の低融点金属及びP系低融点元素とCo系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する合金粉末、若しくはSn系、Zn系の低融点金属及びP系低融点元素とCo系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する金属粉末及びCo系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する合金粉末が固着したことからなる触媒部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に触媒は、触媒成分単体又は触媒成分を含んだ合金粉末がバインダー等とともに混合され、ペレット、粒塊といった固形状に形成され、使用されている。具体的には、含浸法、イオン交換法、共沈法等によって金属成分を導入したのち、焼成、水素還元等の処理を行うことにより試料調製される。このような上記現状の含浸法、イオン交換法、共沈法等によって金属成分を導入したのち、バインダー等とともに混合され、焼成、水素還元等の処理を行う製造方法では、多数の製造工程を経なければならないという問題がある。
【0003】
また、現状はペレット状触媒が使用されているが、触媒使用過程においてその触媒強度や反応効率の改善が求められている。触媒機能は、触媒自身の比表面積の大きさと活性度の高さで決まるため、活性度の高い金属を用いて、かつ、大きな比表面積を得るために、発泡金属触媒や接着剤により多孔質な多種材料の表面に触媒活性金属を接着させた触媒等が使用されている。
【0004】
一方、溶融金属中にセラミックス粉末を分散させたり、金属粉末とセラミックス粉末の混合成形体を焼結してセラミックス・金属複合体を製造する方法もある。この方法によれば金属容積比率の高いセラミックス・金属複合体が得られるが、得られるセラミックス・金属複合体は金属特性が主体的となり、セラミックスを骨格とした複合体ではなく、例えば強度特性等にセラミックス固有の特性が発現され難い。
【0005】
上述した背景のもとに、セラミックス基材表面に金属被膜を形成する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。また、セラミックスを骨格とした開気孔率50%以上の海綿網目状多孔体の開気孔部に金属を有するセラミックス・金属複合体を形成する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許公開2006−52101号公報
【特許文献2】特許公開2002−275557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献1に記載されている、セラミックス基材の表面に金属被膜を形成する方法では、脱水縮合反応を介して、基材の表面上に単分子層膜として付与した後、貴金属成分とセラミックスとの親和性の高い成分から選ばれる少なくとも2種類以上の元素から構成される微粒子分散液に接触させるため、製造工程が多く、複雑であるといった問題がある。また、特許文献2に記載されている、セラミックスを骨格とした開気孔率50%以上の海綿網目状多孔体の開気孔部に金属を有するセラミックス/金属複合体を形成する方法では、金属を溶融させ、焼結させるため、製造工程が多くなって、複雑かつ製造温度を高温まで上げなければならないといった問題がある。
【0008】
また、従来は、金属塩をセラミックス等に付着させ触媒として使用しているが、金属塩では触媒活性が低く、より一層の触媒活性の向上が求められている。また、セラミックス等に金属粉末を付着させる場合は接着剤を使用するなど、触媒の強度面に問題がある。そこで、我々は、これら課題に対し、セラミックス、ガラス、樹脂、あるいは軽金属からなる部材表面に、Sn系、Zn系の低融点金属及びP系低融点元素とCo系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する金属粉末、又はSn系、Zn系の低融点金属及びP系低融点元素とCo系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する合金粉末、若しくはSn系、Zn系の低融点金属及びP系低融点元素とCo系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する金属粉末及びCo系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する合金粉末を固着、金属結合させることで、高強度を保ったまま触媒活性の高い金属を使用できる新規な触媒部材を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述のような問題を解消するために、発明者らは鋭意開発を進めた結果、セラミックス、ガラス、樹脂、あるいは軽金属からなる部材表面に、Sn系、Zn系の低融点金属及びP系低融点元素とCo系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する金属粉末、又はSn系、Zn系の低融点金属及びP系低融点元素とCo系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する合金粉末、若しくはSn系、Zn系の低融点金属及びP系低融点元素とCo系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する金属粉末及びCo系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する合金粉末を固着させることで、高強度、かつ高活性な触媒部材を実現した。これは、低融点金属および低融点物質を混合することで、セラミックス、ガラス、樹脂、あるいは軽金属からなる部材と金属の焼結温度が低く、かつ該金属に触媒活性が金属塩よりも高い金属を使用でき、製造工程も少ないといったメリットを持つ。さらに、触媒反応に関与しない触媒部材内部をセラミックス、ガラス、樹脂、あるいは軽金属に置き換えたことで、触媒質量を軽減でき、かつ未反応触媒部分の削減が可能になる。これらのことより本発明に至った。
【0010】
そこで、上記の課題を解決するための本発明の手段は、第1の手段では、セラミックス、ガラス、樹脂、あるいは軽金属からなる部材表面に、(1)Sn系、Zn系の低融点金属及びP系低融点元素とCo系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する金属粉末、又は(2)Sn系、Zn系の低融点金属及びP系低融点元素とCo系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する合金粉末、若しくは(3)Sn系、Zn系の低融点金属及びP系低融点元素とCo系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する金属粉末及びCo系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する合金粉末の(1)〜(3)のいずれか1種又は2種以上がそれぞれ固着していることを特徴とする触媒部材である。
【0011】
さらに、第2の手段では、Sn系低融点金属がSn、Zn系低融点金属がZn、P系低融点元素がPであり、これら低融点物質のSn、Zn及びPの1種または2種以上、金属粉末が純Ni、純Co、純Tiである金属粉末の1種または2種以上、合金粉末がNi合金、Co合金、Ti合金である合金粉末の1種または2種以上とが固着していることを特徴とする第1の手段の触媒部材である。
【0012】
さらに、第3の手段では、触媒部材は、ラトラ試験前後の質量変化割合より選出される質量減少率が20%未満と高強度であることを特徴とする第1の手段または第2の手段の触媒部材である。
【発明の効果】
【0013】
以上述べたように、本発明では、Sn、Zn、Pといった低融点物質を使用し、低い焼結温度でセラミックス、ガラス、樹脂、あるいは軽金属からなる部材表面に、金属粉末、合金粉末、金属と合金の混合粉末を固着させることができた。また、触媒活性が金属塩よりも高い金属を使用でき、製造工程も少ないといったメリットを持つ。さらに、触媒反応に関与しない触媒部材内部をセラミックス、ガラス、樹脂、あるいは軽金属に置き換えたことで、触媒質量を軽減でき、かつ未反応触媒部分の削減が可能になった。これにより、製造工程簡略化と低焼結温度による低コスト化、触媒反応効率の向上を可能にする極めて優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明では、「1.Sn、Zn、Pといった低融点物質を使用することにより従来よりも低い温度でセラミックス、ガラス、樹脂、あるいは軽金属と固着することができる。」、「2.Sn、Zn、Pといった低融点物質溶融による固着により、従来の接着剤による固着方法よりも触媒部材の強度が上がる。」、「3.Co系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する金属粉末及びCo系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する合金粉末を使用することにより、従来よりも触媒活性が向上する。」、「4.触媒部材中心部にセラミックス、ガラス、樹脂、あるいは軽金属を使用することにより触媒部材を軽量化することができる。」および「5.触媒部材中心部にセラミックス、ガラス、樹脂、あるいは軽金属を使用することにより触媒部材中心部で触媒反応に寄与していなかったCo系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する金属粉末及びCo系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する合金粉末を削減でき、試料の有効活用ができる。」といったこれら5点の優れた効果を発揮する。
【0015】
本発明で使用するセラミックス、ガラス、樹脂、あるいは軽金属は、軽量、機械強度、寸法信頼性、耐久性、耐熱性、耐化学薬品性等に優れた材料である。本発明で用いるセラミックス、ガラス、樹脂、あるいは軽金属において形態上の制限はないが、特に直径1〜3mm×高さ1〜3mm程度であり、円柱状あるいは円筒状あるいはビーズ状のものが望ましい。
【0016】
使用するセラミックスは特に限定しないが、例えば、酸化珪素、アルミナ、ジルコニア、フェライト、窒化ケイ素、炭化ケイ素、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸鉛、チタン酸ニオブ、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、ジルコン酸鉛、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ニオブなどの酸化物系、炭化物系のセラミックスや、石英、サファイア、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウムなどの焼成可能な単結晶や、ホウ珪酸ガラス等の低温焼成ガラスセラミックス等が使用できる。
【0017】
使用するガラスは特に限定しない。
【0018】
使用する樹脂は特に限定しないが、例えば、塩化ビニルや耐熱性樹脂等が使用できるのは言うまでもない。
【0019】
使用する軽金属は特に限定しないが、例えば、Alなどの軽量金属等が使用できるのは言うまでもない。
【0020】
上記セラミックス、ガラス、樹脂、あるいは軽金属からなる部材表面に、Sn系、Zn系の低融点金属及びP系低融点元素とCo系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する金属粉末を混合したスラリーを塗布し、低融点であるSn、Zn、Pが溶融する温度まで熱処理することにより、Sn、Zn、Pがセラミックス、ガラス、樹脂、あるいは軽金属からなる部材とCo系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する金属粉末とを強固に固着させることができる。結果、従来の接着剤による固着ではなく、金属結合等の強固な固着により、触媒強度が上がる。金属粉末を使用することで、触媒材料本来の触媒活性が向上する。触媒部材中心部にセラミックス、ガラス、樹脂、あるいは軽金属を使用することにより触媒部材を軽量化することができる。触媒部材中心部にセラミックス、ガラス、樹脂、あるいは軽金属を使用することにより触媒部材中心部で触媒反応に寄与していなかった触媒機能を有する金属粉末を削減でき、試料の有効活用ができる。
【0021】
また、セラミックス、ガラス、樹脂、あるいは軽金属からなる部材表面に、Sn系、Zn系の低融点金属及びP系低融点元素とCo系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する金属粉末を混合したスラリーを塗布するスラリー法以外にも、「1.セラミックス、ガラス、樹脂、あるいは軽金属からなる部材表面にSn系、Zn系の低融点金属及びP系低融点元素をめっき、化学蒸着、物理蒸着、コールドスプレー、溶射等により付着させ、同様にCo系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する金属粉末を付着し、その後熱処理を行う。」こと、および「2.Sn系、Zn系の低融点金属及びP系低融点元素とCo系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する金属粉末を混合した試料をめっき、化学蒸着、物理蒸着、コールドスプレー、溶射等により付着させ、その後熱処理を行う。」ことによる作製方法でも同様の効果が得られる。
【0022】
上記のセラミックス、ガラス、樹脂、あるいは軽金属からなる部材表面に、Sn系、Zn系の低融点金属及びP系低融点元素とCo系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する合金粉末を混合したスラリーを塗布し、低融点であるSn、Zn、Pが溶融する温度まで熱処理することにより、Sn、Zn、Pがセラミックス、ガラス、樹脂、あるいは軽金属からなる部材とCo系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する合金粉末とを強固に固着させることができる。結果、従来の接着剤による固着ではなく、金属結合等の強固な固着により、触媒強度が上がる。合金粉末を使用することで、触媒材料本来の触媒活性が向上する。触媒部材中心部にセラミックス、ガラス、樹脂、あるいは軽金属を使用することにより触媒部材を軽量化することができる。触媒部材中心部にセラミックス、ガラス、樹脂、あるいは軽金属を使用することにより触媒部材中心部で触媒反応に寄与していなかった触媒機能を有する合金粉末を削減でき、試料の有効活用ができる。
【0023】
このCo系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する合金粉末とは、Co、Ni、Tiそれぞれと合金を形成する亜鉛、カルシウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、アルミニウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム等から選ばれる少なくとも一種の元素(すなわち、セラミックスと親和性の高い成分で構成される微粒子)で構成される、少なくとも2種類以上の組成を有するものである。
【0024】
また、セラミックス、ガラス、樹脂、あるいは軽金属からなる部材表面に、Sn系、Zn系の低融点金属及びP系低融点元素とCo系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する合金粉末を混合したスラリーを塗布する以外にも、「1.セラミックス、ガラス、樹脂、あるいは軽金属からなる部材表面にSn系、Zn系の低融点金属及びP系低融点元素をめっき、化学蒸着、物理蒸着、コールドスプレー、溶射等により付着させ、同様にCo系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する合金粉末を付着、その後熱処理を行う。」こと、および「2.Sn系、Zn系の低融点金属及びP系低融点元素とCo系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する合金粉末を混合した試料をめっき、化学蒸着、物理蒸着、コールドスプレー、溶射等により付着させ、その後熱処理を行う。」ことによる作製方法でも同様の効果が得られる。
【0025】
上記のセラミックス、ガラス、樹脂、あるいは軽金属からなる部材表面に、Sn系、Zn系の低融点金属及びP系低融点元素とCo系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する金属粉末及びCo系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する合金粉末を混合したスラリーを塗布し、低融点であるSn、Zn、Pが溶融する温度まで熱処理することにより、Sn、Zn、Pがセラミックス、ガラス、樹脂、あるいは軽金属からなる部材とCo系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する金属粉末及びCo系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する合金粉末とを強固に固着させることができる。結果、従来の接着剤による固着ではなく、金属結合等の強固な固着により、触媒強度が上がる。金属粉末や合金粉末を使用することで、触媒材料本来の触媒活性が向上する。触媒部材中心部にセラミックス、ガラス、樹脂、あるいは軽金属を使用することにより触媒部材を軽量化することができる。触媒部材中心部にセラミックス、ガラス、樹脂、あるいは軽金属を使用することにより触媒部材中心部で触媒反応に寄与していなかった触媒機能を有する金属粉末や合金粉末を削減でき、試料の有効活用ができる
【0026】
このCo系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する合金粉末とは、Co、Ni、Tiそれぞれと合金を形成する亜鉛、カルシウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、アルミニウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム等から選ばれる少なくとも一種の元素(すなわち、セラミックスと親和性の高い成分で構成される微粒子)で構成される、少なくとも2種類以上の組成を有するものである。
【0027】
また、セラミックス、ガラス、樹脂、あるいは軽金属からなる部材表面に、Sn系、Zn系の低融点金属及びP系低融点元素とCo系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する金属粉末及びCo系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する合金粉末を混合したスラリーを塗布する以外にも、「1.セラミックス、ガラス、樹脂、あるいは軽金属からなる部材表面にSn系、Zn系の低融点金属及びP系低融点元素をめっき、化学蒸着、物理蒸着、コールドスプレー、溶射等により付着させ、同様にCo系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する金属粉末及びCo系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する合金粉末を混合した試料を付着、その後熱処理を行う。」こと、および「2.Sn系、Zn系の低融点金属及びP系低融点元素とCo系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する金属粉末及びCo系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する合金粉末を混合した試料をめっき、化学蒸着、物理蒸着、コールドスプレー、溶射等により付着させ、その後熱処理を行う。」ことによる作製方法でも同様の効果が得られる。
【0028】
また、低融点金属材料はSn、Zn及び低融点元素Pの1種または2種以上で構成されるものである。
【0029】
本発明は、「1.Sn、Zn、Pといった低融点物質を使用することにより従来よりも低い温度でセラミックス、ガラス、樹脂、あるいは軽金属と固着することができる。」、「2.Sn、Zn、Pといった低融点物質溶融による固着により、従来の接着剤による固着方法よりも触媒部材の強度が上がる。」、「3.Co系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する金属粉末及びCo系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する合金粉末を使用することにより、従来よりも触媒活性が向上する。」、「4.触媒部材中心部にセラミックス、ガラス、樹脂、あるいは軽金属を使用することにより触媒部材を軽量化することができる。」および「5.触媒部材中心部にセラミックス、ガラス、樹脂、あるいは軽金属を使用することにより触媒部材中心部で触媒反応に寄与していなかったCo系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する金属粉末及びCo系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する合金粉末を削減でき、試料の有効活用ができる。」といった、これら5点に関して優れた効果を発揮することから、触媒強度面においても、質量減少率(ラトラ試験前後の質量変化割合より触媒部材強度を評価する)が20%未満の高強度を示す。
なお、質量減少率(%)={100×(ラトラ試験前の触媒部材質量−ラトラ試験後の触媒部材質量)/ラトラ試験前の触媒部材質量}である。
【0030】
以下、本発明について説明する。
本発明に係るSn系、Zn系の低融点金属及びP系低融点元素とCo系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する金属粉末、又はSn系、Zn系の低融点金属及びP系低融点元素とCo系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する合金粉末、若しくはSn系、Zn系の低融点金属及びP系低融点元素とCo系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する金属粉末及びCo系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する合金粉末の固着厚さは触媒機能が発揮される厚さである1〜30μm程度とする。
【0031】
また、本発明に係るSn系、Zn系の低融点金属及びP系低融点元素とCo系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する金属粉末、又はSn系、Zn系の低融点金属及びP系低融点元素とCo系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する合金粉末、若しくはSn系、Zn系の低融点金属及びP系低融点元素とCo系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する金属粉末及びCo系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する合金粉末の固着表面形状は、比表面積を増大させ、触媒反応向上のために表面粗さRaが1〜300μmの粗い表面形状をしている。
【0032】
本発明において、Sn系、Zn系の低融点金属及びP系低融点元素とCo系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する金属粉末、又はSn系、Zn系の低融点金属及びP系低融点元素とCo系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する合金粉末、若しくはSn系、Zn系の低融点金属及びP系低融点元素とCo系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する金属粉末及びCo系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する合金粉末をセラミックス、ガラス、樹脂、あるいは軽金属からなる部材に固着させ、その表面粗さRaが1〜300μmとした理由は、触媒部材のうち触媒反応を起こす面の表面粗さRaが1μm未満では、触媒としての空孔率や比表面積が小さく、触媒としての作用、効果が十分に得られないことから、触媒部材のうち触媒反応を起こす面の表面粗さRaを1〜300μmとした。好ましくは、1〜50μmとする。その上限を300μmとしたのは、微細粒子を適用した場合のその比表面積向上により、触媒としての効果が十分達成させることと、Raが大き過ぎると部材としての強度が劣化するためである。
【0033】
さらに、アルカリ溶液、例えば、水酸化ナトリウム等による処理により、Sn系、Zn系の低融点金属及びP系低融点元素とCo系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する金属粉末、又はSn系、Zn系の低融点金属及びP系低融点元素とCo系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する合金粉末、若しくはSn系、Zn系の低融点金属及びP系低融点元素とCo系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する金属粉末及びCo系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する合金粉末の固着相の一部を溶出させ、スポンジ状にすることで比表面積を増大させることもできる。
【0034】
Sn系、Zn系の低融点金属及びP系低融点元素とCo系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する金属粉末、又はSn系、Zn系の低融点金属及びP系低融点元素とCo系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する合金粉末、若しくはSn系、Zn系の低融点金属及びP系低融点元素とCo系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する金属粉末及びCo系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する合金粉末の粒径は、高い触媒反応のために大きな比表面積を持つ必要があり、そのため、優れた触媒反応を示す粒径である45μm以下が好ましく、また、粒径が小さくなればなるほど比表面積が大きくなり触媒反応は活性になるので、下限値の粒径は小さな程好ましい。
【0035】
本発明に係るSn系、Zn系の低融点金属及びP系低融点元素、Co系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する金属粉末、Co系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する合金粉末は、Arガス雰囲気中で高周波誘導溶解炉により加熱溶融後、Arガス雰囲気中、ガス噴射させるとともに出湯させ、急冷凝固することで目的とするガスアトマイズ微粉末を得た。あるいは、Arガス雰囲気中で高周波誘導溶解炉により加熱溶融後、Arガス雰囲気中、回転数40000rpmで回転するディスク上に溶湯を出湯させ、急冷凝固することで目的とするディスクアトマイズ微粉末を得た。あるいは、液体急冷薄帯、共沈法、メカニカルアロイング法により試料粉末を得た。
【実施例】
【0036】
以下、本発明について実施例によって具体的に説明する。
本発明に係るSn系、Zn系の低融点金属及びP系低融点元素、Co系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する金属粉末、Co系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する合金粉末をArガス雰囲気中で高周波誘導溶解炉により加熱溶融後、Arガス雰囲気中に出湯させ、ガスアトマイズではArガスを溶湯に当てて噴霧して、またディスクアトマイズ法では回転数40000rpmで回転するディスク上に落下させ、ディスクの遠心力により溶湯を飛散させて球状微粉末を得た。あるいは、液体急冷薄帯、共沈法、メカニカルアロイング法による試料粉末を得た。また、これらの粉末の所定量を計量して混合した。この粉末をセラミックス、ガラス、樹脂、あるいは軽金属に固着させる。その作製処理方法として、上記で示したスラリー法、コールドスプレー法、めっき法を採用し、表1に本発明の効果を示した。
【0037】
【表1】
【0038】
上記で作製した粉末Sn系、Zn系の低融点金属及びP系低融点元素とCo系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する金属粉末、又はSn系、Zn系の低融点金属及びP系低融点元素とCo系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する合金粉末、若しくはSn系、Zn系の低融点金属及びP系低融点元素とCo系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する金属粉末及びCo系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する合金粉末を、それぞれスラリーにしてセラミックス、ガラス、樹脂、あるいは軽金属からなる部材に塗布し、低融点物質が溶解する温度の200〜800℃程度で熱処理を行うことで目的の物質を得た。
【0039】
例えば、コールドスプレー法では、Sn系、Zn系の低融点金属及びP系低融点元素とCo系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する金属粉末、又はSn系、Zn系の低融点金属及びP系低融点元素とCo系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する合金粉末、若しくはSn系、Zn系の低融点金属及びP系低融点元素とCo系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する金属粉末及びCo系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する合金粉末のそれぞれの噴出ノズルと金属基板間の距離を10〜20mmに保ち、ガス温度を800℃、ガス圧力を3MPa、さらに凹凸により表面粗さRaが1〜300μmになるように同じ場所への噴射を避け、N2ガスとともに試料を10〜40mm/sのノズル移動速度で金属基板上に噴出、固着させた。
【0040】
さらに、上記で作製した粉末Sn系、Zn系の低融点金属及びP系低融点元素をセラミックス、ガラス、樹脂、あるいは軽金属からなる部材にめっきし、その膜上にCo系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する金属粉末、又はCo系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する合金粉末、若しくはCo系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する金属粉末及びCo系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する合金粉末をスラリー塗布、あるいはコールドスプレーし、低融点物質が溶解する温度の200〜800℃程度で熱処理を行うことで目的の物質を得た。
【0041】
表1に示すNo.1〜3は、本発明の実施例である。
本発明の実施例であるNo.1〜3では、セラミックス、ガラス、樹脂、あるいは軽金属からなる部材表面に、Sn系、Zn系の低融点金属及びP系低融点元素とCo系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する金属粉末、又はSn系、Zn系の低融点金属及びP系低融点元素とCo系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する合金粉末、若しくはSn系、Zn系の低融点金属及びP系低融点元素とCo系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する金属粉末及びCo系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する合金粉末が固着しているため、本発明の実施例を満たす。
【0042】
固着判定が「○」というのは、セラミックス、ガラス、樹脂、あるいは軽金属からなる部材表面に固着した試料がラトラ試験を行っても質量減少率が20%未満であり、衝撃を与えても剥がれない状態のことをいう。本発明の実施例であるNo.1〜3では、質量減少率が20%未満であり、セラミックス、ガラス、樹脂、あるいは軽金属からなる部材表面に、Sn系、Zn系の低融点金属及びP系低融点元素とCo系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する金属粉末、又はSn系、Zn系の低融点金属及びP系低融点元素とCo系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する金属粉末、若しくはSn系、Zn系の低融点金属及びP系低融点元素とCo系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する金属粉末及びCo系、Ni系、Ti系の触媒機能を有する合金粉末が、強固に固着していることがわかる。