特許第5897130号(P5897130)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5897130アルコール精製装置及びアルコール精製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5897130
(24)【登録日】2016年3月11日
(45)【発行日】2016年3月30日
(54)【発明の名称】アルコール精製装置及びアルコール精製方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20160317BHJP
   C12P 7/02 20060101ALI20160317BHJP
   C12M 1/12 20060101ALI20160317BHJP
   B01D 61/14 20060101ALI20160317BHJP
   B01D 71/06 20060101ALI20160317BHJP
   B01D 61/58 20060101ALI20160317BHJP
   B01D 65/08 20060101ALI20160317BHJP
   B01D 61/36 20060101ALI20160317BHJP
【FI】
   C12M1/00 D
   C12M1/00 Z
   C12P7/02
   C12M1/12
   B01D61/14 500
   B01D71/06
   B01D61/58
   B01D65/08
   B01D61/36
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-526825(P2014-526825)
(86)(22)【出願日】2013年6月25日
(86)【国際出願番号】JP2013067377
(87)【国際公開番号】WO2014017237
(87)【国際公開日】20140130
【審査請求日】2014年9月8日
(31)【優先権主張番号】特願2012-167698(P2012-167698)
(32)【優先日】2012年7月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005902
【氏名又は名称】三井造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101340
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 英一
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 利晴
(72)【発明者】
【氏名】宮地 健
(72)【発明者】
【氏名】八田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】鞍懸 直史
【審査官】 長谷川 茜
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−063259(JP,A)
【文献】 特開2006−043576(JP,A)
【文献】 特開2006−042673(JP,A)
【文献】 特開2012−035163(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/005010(WO,A1)
【文献】 特開2005−087882(JP,A)
【文献】 特開2005−087890(JP,A)
【文献】 特開2010−207776(JP,A)
【文献】 膜,2007年 7月 1日,Vol.32, No.4,p.234-237
【文献】 化学工学会 研究発表講演要旨集 化学工学会第42回秋季大会,2010年 5月26日,p.557,L207
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00− 3/10
C12P 1/00−41/00
C02F 1/44
B01D 61/00−71/82
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導入された発酵原料を酵母によりアルコールに転化して、アルコールを含有した発酵液を生成する発酵槽と、
アルコールを選択透過させる機能を有する脱アルコール膜を備え、前記発酵槽で生成した前記発酵液を導入して、該脱アルコール膜の透過側にアルコールを分離する脱アルコール膜装置と、を備えたアルコール精製装置であって、
前記脱アルコール膜装置に供給される発酵液中に含まれ、前記脱アルコール膜の分離機能を低下させる原因となる膜劣化性有機酸を吸着して除去する有機酸吸着材を備えた有機酸吸着装置を有し、
前記有機酸吸着材は、人工または天然のゼオライトであり、
前記脱アルコール膜として疎水性を有するゼオライト膜を用いる
ことを特徴とするアルコール精製装置。
【請求項2】
前記有機酸吸着装置の前段に、該有機酸吸着装置が備える前記有機酸吸着材を安定化させるための吸着材安定化手段を有し、
該吸着材安定化手段は、前記有機酸吸着装置に供給される発酵液から微生物を含む固形分を除去するための遠心分離機を少なくとも有することを特徴とする請求項1記載のアルコール精製装置。
【請求項3】
前記吸着材安定化手段は、前記遠心分離機により固形分が除去された前記発酵液から、更に固形分を除去するための精密ろ過膜又は限外ろ過膜を備えた膜濾過装置を有することを特徴とする請求項2記載のアルコール精製装置。
【請求項4】
前記有機酸吸着材は、前記発酵液中に含まれる有機酸のうち前記膜劣化性有機酸を選択的に吸着して除去することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のアルコール精製装置。
【請求項5】
前記有機酸吸着材は、前記膜劣化性有機酸として、少なくとも酢酸及びコハク酸を吸着して除去することを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のアルコール精製装置。
【請求項6】
導入された発酵原料を酵母によりアルコールに転化して、アルコールを含有した発酵液を生成する発酵工程と、
アルコールを選択透過させる機能を有する脱アルコール膜を用いて、前記発酵工程で生成した前記発酵液を導入して、該脱アルコール膜の透過側にアルコールを分離する脱アルコール膜工程と、を備えたアルコール精製方法であって、
前記脱アルコール膜工程に供給される発酵液中に含まれ、前記脱アルコール膜の分離機能を低下させる原因となる膜劣化性有機酸を、有機酸吸着材で吸着して除去する有機酸吸着工程を有し、
前記有機酸吸着材は、人工または天然のゼオライトであり、
前記脱アルコール膜として疎水性を有するゼオライト膜を用いる
ことを特徴とするアルコール精製方法。
【請求項7】
前記有機酸吸着工程の前段に、該有機酸吸着工程で用いる前記有機酸吸着材を安定化させるための吸着材安定化工程を有し、
該吸着材安定化工程は、前記有機酸吸着工程に供給される発酵液から微生物を含む固形分を除去するための液遠心分離工程を少なくとも有することを特徴とする請求項記載のアルコール精製方法。
【請求項8】
前記吸着材安定化工程は、前記液遠心分離工程により固形分が除去された前記発酵液から、更に固形分を除去するための精密ろ過膜又は限外ろ過膜による膜濾過工程を有することを特徴とする請求項記載のアルコール精製方法。
【請求項9】
前記有機酸吸着材は、前記発酵液中に含まれる有機酸のうち前記膜劣化性有機酸を選択的に吸着して除去することを特徴とする請求項の何れかに記載のアルコール精製方法。
【請求項10】
前記有機酸吸着材は、前記膜劣化性有機酸として、少なくとも酢酸及びコハク酸を吸着して除去することを特徴とする請求項の何れかに記載のアルコール精製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコール精製装置及びアルコール精製方法に関し、詳しくは、脱アルコール膜を備えたアルコール精製装置及びこれを用いたアルコール精製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでの化石燃料に依存するエネルギー生産体系は、地球上での炭酸ガスをはじめとした温室効果ガスの増加をもたらし続けている。一方、我が国のみならず地球上には植物など未利用な生物系有機資源であるバイオマスが豊富に存在し、毎年蓄積され続けている。植物は炭酸ガスを吸収することから、バイオマスをエネルギー資源として活用することは、地球上で炭素循環のバランスがとれ、化石資源の使用量を削減できるために、その結果として温室効果ガスを削減可能となることから様々な開発が積極的に進められている。
【0003】
バイオマスから得られるエネルギー資源としては、メタンガス、水素ガス、エタノール、ブタノール等がある。これらの中で、常温・常圧下での酵母などの微生物による発酵反応により生産できるエタノールは、燃焼に伴う排出ガス中の有害物質の量がガソリンと比較して少ない等、石油代替液体燃料として特に重要視されている。しかしながら、発酵法で生産されるエタノールの濃度は、15%程度と希薄であることから、液体燃料として利用するためには濃縮する工程が不可欠となる。このための技術としては、蒸留法を用いることが一般的である。さらに、希薄な発酵エタノールを蒸留法で濃縮する前には、発酵液中から酵母菌体を除去する固液分離の工程が必要であり、しかも蒸留工程は、生産されるエタノールの約半分のエネルギーを消費すると言われるほどのエネルギー多消費型のプロセスである。したがって、生産コスト的な競争力が石油と比較して非常に乏しく、バイオマスエタノールの実用化が進んでいない。
【0004】
一方、蒸留法に代わる技術として、特許文献1は分離膜を用いる発酵エタノールの濃縮法を提案している。その原理は、次の通りである。エタノールに対して選択性を有する分離膜を介して一方に発酵液を供給し、反対(透過)側のみを減圧にすることによって、膜内を透過してきたエタノールの蒸気化を容易にして、その蒸気を冷却、液化して取り出す方法である。透過側を減圧にする代わりに、不活性ガスで透過側の膜面から蒸発する蒸気を掃引して冷却器へ導き、透過蒸気のみを液化することも可能である。この方法は、浸透気化分離法と呼ばれる技術である。
【0005】
しかし、発酵液中には副生成物や菌体が含まれており、これらが浸透気化分離膜の分離性能を低下させる原因になる。
【0006】
特許文献2は、発酵液中の副生成物や菌体が、浸透気化分離膜の利用に邪魔にならないように、あらかじめろ過膜や精密ろ過膜による膜処理を行うことを開示しているが、膜処理を行っても、除去できる対象物の種類や量は限られる。
【0007】
また、特許文献3は、精密ろ過機能を有する多孔性の膜、アルコール選択的透過性の浸透気化分離膜、アルコール選択的透過性の気体分離膜を順次積層した多層構造型分離膜を開示している。これを用いて発酵液から高濃度アルコールを製造する際は、まず、多孔性の膜により発酵液中に存在している酵母や細菌などの微生物を除去した後に、浸透気化分離膜、次いで気体分離膜を介して、アルコールを選択的に透過する。ここで浸透気化分離膜は、発酵液中の有機酸が気体分離膜に接触(吸着)することを防止するために設けられる。
【0008】
このように、浸透気化分離膜を用いて有機酸を除去する場合は、当該浸透気化分離膜に有機酸が吸着してしまい、膜の分離性能が低下する問題がある。特許文献3は、浸透気化分離膜として、有機酸が吸着、透過せず、さらにアルコール透過性を有するものを選択して用いるとしているが、膜の選択によって有機酸の吸着を防止するには限界がある。
【0009】
アルコール選択的疎水性浸透気化膜の組成として、ゼオライトの一種である結晶構造にアルミナを含まないシリカライトを用いた時の劣化事例が特許文献4で詳細に報告されている。特許文献4では、シリカライト膜を用いて、発酵エタノールの濃縮をそのまま行なうと、回収されるエタノールの濃度が経時的に低下してくるという現象が報告されている。
【0010】
その原因として、標準試薬で調整した5wt%エタノール水溶液にコハク酸を0.1〜0.3wt%添加したところ、添加量に相関して、程度の激しい浸透気化膜の性能低下が生じることから、アルコール発酵液中に含まれ得るコハク酸が、性能劣化を引き起こすということが、非特許文献1(J.Chem.Technol.Biotechnol., Vol.78, p1006‐1010, 2003)に述べられている。
【0011】
このような有機酸の問題に対して、特許文献4、5及び6は、発酵液を浸透気化分離膜に供する前に、あらかじめ発酵液にpH調整液を添加して、pHを5以上中性までの範囲内に調整維持し、有機酸をイオン化された状態としておくことで、該有機酸の浸透気化分離膜への吸着を防止することを開示している。
【0012】
また、特許文献4、5及び6は、浸透気化分離膜に供される発酵液に活性炭を添加することで、該浸透気化分離膜の分離性能を低下させる「有機酸以外の物質」を吸着除去するとしている。このように、「有機酸以外の物質」の吸着除去を目的とするときに、有機酸が吸着してしまっては、吸着飽和あるいは吸着競合により、目的とする「有機酸以外の物質」が吸着除去できなくなってしまう。当然、特許文献4の実施例の表1に示される通り、発酵液中の有機酸(コハク酸)は、活性炭吸処理前(濃度0.14wt%)と処理後(濃度0.11wt%)で、実質的に吸着除去されない。特許文献4、5及び6共に、発酵液への活性炭添加前後における有機酸含量に大きな差異が認められないことを開示しており、有機酸については、あくまでもpH調整維持によって対応しようとするものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開昭63−24890号公報
【特許文献2】特開2003−135090号公報
【特許文献3】特開2005−87882号公報
【特許文献4】特開2006−42673号公報
【特許文献5】特開2007−63259号公報
【特許文献6】特開2006−43576号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】J.Chem.Technol.Biotechnol., Vol.78, p1006‐1010, 2003
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明者は、特許文献4、5及び6に記載された技術について検討したが、発酵液のpHは、発酵原料等の発酵条件の影響によって変動し易く、更に、通常、発酵液は緩衝液としての性質を有するため、これを所定のpH範囲となるように調整維持するには限界があり、実用的ではなかった。
【0016】
そこで、本発明の課題は、吸着処理の後段階でアルカリpH調整液によるpH調整を行なわずとも、高い膜劣化要因物質の吸着能あるいは中和能を有する有機酸吸着材を用いることによって、脱アルコール膜、例えばシリカライト膜等のゼオライト系のアルコール選択的疎水性浸透気化膜の性能低下を抑えることができるアルコール精製装置及びアルコール精製方法を提供することにある。
【0017】
また本発明の他の課題は、以下の記載により明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題は以下の各発明によって解決される。
【0019】
1.
導入された発酵原料を酵母によりアルコールに転化して、アルコールを含有した発酵液を生成する発酵槽と、
アルコールを選択透過させる機能を有する脱アルコール膜を備え、前記発酵槽で生成した前記発酵液を導入して、該脱アルコール膜の透過側にアルコールを分離する脱アルコール膜装置と、を備えたアルコール精製装置であって、
前記脱アルコール膜装置に供給される発酵液中に含まれ、前記脱アルコール膜の分離機能を低下させる原因となる膜劣化性有機酸を吸着して除去する有機酸吸着材を備えた有機酸吸着装置を有し、
前記有機酸吸着材は、人工または天然のゼオライトであり、
前記脱アルコール膜として疎水性を有するゼオライト膜を用いる
ことを特徴とするアルコール精製装置。
【0020】
2.
前記有機酸吸着装置の前段に、該有機酸吸着装置が備える前記有機酸吸着材を安定化させるための吸着材安定化手段を有し、
該吸着材安定化手段は、前記有機酸吸着装置に供給される発酵液から微生物を含む固形分を除去するための遠心分離機を少なくとも有することを特徴とする前記1記載のアルコール精製装置。
【0021】
3.
前記吸着材安定化手段は、前記遠心分離機により固形分が除去された前記発酵液から、更に固形分を除去するための精密ろ過膜又は限外ろ過膜を備えた膜濾過装置を有することを特徴とする前記2記載のアルコール精製装置。
【0022】
4.
前記有機酸吸着材は、前記発酵液中に含まれる有機酸のうち前記膜劣化性有機酸を選択的に吸着して除去することを特徴とする前記1〜3の何れかに記載のアルコール精製装置。
【0023】
5.
前記有機酸吸着材は、前記膜劣化性有機酸として、少なくとも酢酸及びコハク酸を吸着して除去することを特徴とする前記1〜4の何れかに記載のアルコール精製装置。
【0026】

導入された発酵原料を酵母によりアルコールに転化して、アルコールを含有した発酵液を生成する発酵工程と、
アルコールを選択透過させる機能を有する脱アルコール膜を用いて、前記発酵工程で生成した前記発酵液を導入して、該脱アルコール膜の透過側にアルコールを分離する脱アルコール膜工程と、を備えたアルコール精製方法であって、
前記脱アルコール膜工程に供給される発酵液中に含まれ、前記脱アルコール膜の分離機能を低下させる原因となる膜劣化性有機酸を、有機酸吸着材で吸着して除去する有機酸吸着工程を有し、
前記有機酸吸着材は、人工または天然のゼオライトであり、
前記脱アルコール膜として疎水性を有するゼオライト膜を用いる
ことを特徴とするアルコール精製方法。
【0027】

前記有機酸吸着工程の前段に、該有機酸吸着工程で用いる前記有機酸吸着材を安定化させるための吸着材安定化工程を有し、
該吸着材安定化工程は、前記有機酸吸着工程に供給される発酵液から微生物を含む固形分を除去するための液遠心分離工程を少なくとも有することを特徴とする前記記載のアルコール精製方法。
【0028】

前記吸着材安定化工程は、前記液遠心分離工程により固形分が除去された前記発酵液から、更に固形分を除去するための精密ろ過膜又は限外ろ過膜による膜濾過工程を有することを特徴とする前記記載のアルコール精製方法。
【0029】

前記有機酸吸着材は、前記発酵液中に含まれる有機酸のうち前記膜劣化性有機酸を選択的に吸着して除去することを特徴とする前記の何れかに記載のアルコール精製方法。
【0030】
10
前記有機酸吸着材は、前記膜劣化性有機酸として、少なくとも酢酸及びコハク酸を吸着して除去することを特徴とする前記の何れかに記載のアルコール精製方法。
【発明の効果】
【0033】
本発明によると、吸着処理の後段階でアルカリpH調整液によるpH調整を行なわずとも、高い膜劣化要因物質の吸着能あるいは中和能を有する有機酸吸着材を用いることによって、脱アルコール膜、例えばシリカライト膜等のゼオライト系のアルコール選択的疎水性浸透気化膜の性能低下を抑えることができるアルコール精製装置及びアルコール精製方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明に係るアルコール精製装置の一例を示す概略図
図2】本発明に係るアルコール精製装置の他の例を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、発明を実施するための形態について説明する。
【0036】
図1は、本発明に係るアルコール精製装置の一例を示す概略図である。
【0037】
図1において、1は発酵槽、2は吸着材安定化手段、3は有機酸吸着装置、4はアルコール精製手段、5は冷却器、6は真空ポンプ、7は精製アルコール貯留槽、8はアルコール回収手段である。
【0038】
発酵槽1は、導入された発酵原料を酵母によりアルコールに転化するアルコール発酵を行い、アルコールを含有する発酵液を生成する。
【0039】
酵母は、発酵原料からアルコールを生成可能なものであれば格別限定されない。
【0040】
また、発酵原料は、酵母によりアルコールに転化可能なものであれば格別限定されないが、例えば穀物由来の原料が好ましい。
【0041】
発酵によって生成されるアルコールとしては、例えばエタノール、ブタノール等を好ましく例示でき、特にエタノールであることが好ましい。
【0042】
本発明において、発酵槽1内の温度は、30〜45℃の範囲であることが好ましい。
【0043】
発酵槽1から生成されるアルコールを含有する発酵液のpHは、格別限定されないが、通例、3〜7の範囲に有り、これは発酵の状況により変化する。本発明においては、pH調整をおこなっていない低pH状態の発酵液を脱アルコール膜に供する場合であっても、該膜の分離性能の低下を防止できる。
【0044】
発酵槽1で生成した発酵液は、吸着材安定化手段2に導入される。
【0045】
本発明において、吸着材安定化手段2は、後段の有機酸吸着装置3の有機酸吸着材を安定化させる機能を有し、具体的には、固形分による吸着材の閉塞(圧力損失の増大)の防止や、有機酸吸着材に酵母菌などのような微生物が付着することによりバイオリアクター化して、不純物を生成したり、更に付着した微生物が発酵液中の栄養分により増殖して、該吸着材表面を覆ってしまい、吸着性能の低下や、圧力損失の増大を招いたりすることを防止して、本発明の効果をより好適に発揮させる。特に、有機酸吸着材に酵母菌などのような微生物が有機酸吸着材に付着すると、不純物として有機酸が生成される場合があり、有機酸を除去するための有機酸吸着材が、有機酸発生源になってしまう恐れもあるが、本発明によれば、このような事態を好適に回避できる。
【0046】
本態様において、吸着材安定化手段2は、遠心分離機21と膜濾過装置22を備えている。
【0047】
遠心分離機21としては、格別限定されないが、連続式遠心分離機を用いることが好ましく、具体的には、竪型遠心分離機や横型遠心分離機(デカンター)を好ましく例示でき、特に微生物を高度に除去する観点から竪型遠心分離機が好適である。
【0048】
遠心分離機21において微生物を含む固形分が除去された発酵液は、次いで、膜濾過装置22に供され、更なる固形分の除去が行われる。
【0049】
膜濾過装置22が備える濾過膜としては、格別限定されないが、精密ろ過膜(MF膜)や、NF膜、限外ろ過膜(UF膜)等を適宜選択して用いることができ、特にMF膜が好適である。
【0050】
図示の例では、吸着材安定化手段2が、遠心分離機21と膜濾過装置22により構成される場合を示したが、これに限定されるものではない。本発明において、吸着材安定化手段2は、少なくとも遠心分離機21により構成されることが好ましく、少なくとも遠心分離機21及び膜濾過装置22により構成されることがより好ましく、少なくとも遠心分離機21、膜濾過装置及び連続ストレーナー(詳しくは図2を参酌して後述する)により構成されることが更に好ましい。
【0051】
ところで、本発明者は、発酵液中には、遠心分離では取り除くことが困難な浮遊物が存在する場合があることに着目し、この浮遊物を分析した結果、油分であることを見出した。そこで、吸着材安定化手段2においては、上述した遠心分離機21及び膜濾過装置22に加えて、更に油水分離器(不図示)を備えることも好ましいことである。油水分離器は、好ましくは遠心分離機21の後段且つ膜濾過装置22の前段に設けられ、遠心分離でも取り除けない浮遊物(油分)を発酵液から除去する。
【0052】
以上に説明した吸着材安定化手段2において発酵液から分離された固形分(油水分離器で分離した油分も好ましく含むことができる。)は、通常、ある程度のアルコールを含むため、このアルコールを回収するために、後述するアルコール回収手段8に供することが好ましい。
【0053】
一方、固形分が除去された発酵液は、有機酸吸着装置3に供される。
【0054】
有機酸吸着装置3は、吸着塔本体31内に、有機酸吸着材を充填した充填層32を備え、吸着塔31に導入された発酵液を、充填層32と接触させるように構成されている。
【0055】
本発明において、有機酸吸着装置3は、発酵液中に含まれ得る有機酸の中で、後段に設けられた脱アルコール膜装置41が備える脱アルコール膜の分離性能を低下させる原因となる膜劣化性有機酸を除去する。
【0056】
本発明者は、後に実施例に示すように、簡単な試験によって、発酵液中に含まれ得る有機酸のうち、脱アルコール膜の分離性能を低下させる原因となる膜劣化性有機酸を特定できることを明らかにした。
【0057】
この知見に基づくが故に、本発明においては、有機酸吸着装置3において、有機酸吸着材を用いて、発酵液に含まれる膜劣化性有機酸を吸着除去するものであり、この結果、pHの調整維持を行わなくても、後段の脱アルコール膜装置41が備える脱アルコール膜の分離性能の低下を防止できる効果が得られる。
【0058】
本発明において、膜劣化性有機酸としては、酢酸、コハク酸、乳酸及びりんご酸を例示でき、少なくともこれらを、有機酸吸着装置3において除去することが好ましい。
【0059】
有機酸吸着材として、Al、Si、Zr、Tiから選ばれた1つ以上の元素を含む化合物または酸化物を用いることが好ましく、具体的には、人工または天然のゼオライト、Al、SiO、ZrO、及びTiO等を好ましく例示でき、中でも人工または天然のゼオライトを好ましく用いることができる。
【0060】
人工または天然のゼオライトとしては、A型、Y型、シリカライト、チタノシリケート等を好ましく用いることができる。吸着材に好適な物性として、比表面積が、好ましくは50m/g以上、より好ましくは300m/g以上が好ましい。比表面積はN−ブルナウアー・エメット・テーラー(BET)法を用いて測定した。
【0061】
また、本発明においては、有機酸吸着材として、後段で用いる脱アルコール膜やゼオライト系の脱水膜と同材質の吸着材を選定して用いることができる。ここで、同材質とは、例えば脱アルコール膜がゼオライトで構成されていれば、有機酸吸着材としてゼオライトを用いることである。
【0062】
吸着材は、効果が少なくなった際、再生処理して再利用しても構わない。例えば、一般的な再生処理方法として、加熱処理、真空除去処理、キャリアガス脱離処理、水洗浄処理や薬液洗浄処理等のコンディショニング処理などが挙げられる。
【0063】
本発明において、有機酸吸着材は、発酵液中に含まれる有機酸のうち膜劣化性有機酸を選択的に吸着して除去できるものを好ましく用いることができる。有機酸吸着材が、膜劣化性有機酸を選択的に吸着することにより、該吸着材表面(有機酸吸着面)が他の有機酸の多量吸着によって飽和され難くなり、膜劣化性有機酸を長期にわたって効率良く吸着して、脱アルコール膜の分離機能を更に安定して保持できるようになる。仮に同様な有機酸で劣化する脱水膜があればその対策にも使用できる。本発明者は、実施例において、一例として、吸着材としてシリカライトを用いることにより、膜劣化性有機酸を選択的に吸着できることを明らかにしている。
【0064】
有機酸吸着装置3において膜劣化性有機酸が除去された発酵液は、次いで、アルコール精製手段4に導入される。
【0065】
本態様において、アルコール精製手段4は、脱アルコール膜装置41、ベーパーコンプレッサー42及び脱水膜装置43により構成されている。
【0066】
有機酸吸着装置3を経た発酵液は、まず、脱アルコール膜装置41に供される。
【0067】
脱アルコール膜装置41は、アルコールを選択的に透過可能な脱アルコール膜を備えており、該脱アルコール膜の透過側の領域は、真空ポンプ6に接続され、減圧状態に維持されている。
【0068】
脱アルコール膜装置41が備える脱アルコール膜としては、膜表面への水の接近を拒むと共に、アルコールの接近を許容することにより、アルコールを選択透過させる機能を発現し得る膜が用いられ、例えば、疎水性のゼオライト分離膜を好ましく用いることができる。
【0069】
疎水性のゼオライト分離膜としては、例えば、天然のゼオライトより、人工のシリカライトにより構成された膜が好ましく挙げられ、これらは必要があれば更に適宜表面を疎水化処理して用いられる。
【0070】
疎水化処理されたゼオライト分離膜としては、疎水性のゼオライト、例えばシリカライトの膜表面に脂肪族炭化水素等の高分子やチタン等を導入したものを好ましく用いることができ、中でもシリカライト膜組成のシリカの一部をチタンで置換してなるチタノシリケート膜を用いると、アルコールの分離効率に優れると共に、あらかじめ膜劣化性有機酸が除去されたことによる耐久性向上効果を顕著に発揮することができる。
【0071】
脱アルコール膜の形態は、格別限定されず、例えば、中空糸膜状や平膜状のものを好ましく用いることができる。
【0072】
発酵液を脱アルコール膜装置41に供することにより、脱アルコール膜を介した透過側に、アルコールが気化した状態で分離される。
【0073】
本発明においては、上述した通り、あらかじめ有機酸吸着装置3において膜劣化性有機酸が除去、あるいは中和されるため、脱アルコール膜の膜劣化を防止して、耐久性のある脱アルコール膜を用いたアルコール精製を実現できる効果が得られる。特に、発酵槽1において連続発酵を行う場合は、発酵槽から連続的に抜き出される発酵液を、脱アルコール膜で安定して連続的に処理することが容易となる。
【0074】
アルコールの分離を促進するために、透過側をキャリアガスで置換することも好ましいことである。
【0075】
本発明において、脱アルコール膜装置41は、脱アルコール膜の透過側に、アルコール濃度が好ましくは85重量%以上の範囲に精製された精製アルコールを生成する。
【0076】
ベーパーコンプレッサー42は、脱アルコール膜の透過側に生成したアルコール蒸気を断熱圧縮することにより、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上まで加熱することで、後段の脱水手段の一例である脱水膜装置43が備える脱水膜における脱水効率を向上する。ベーパーコンプレッサー42を用いれば、少ないエネルギー消費量で加熱を行うことができ、本発明において好ましいことである。
【0077】
ベーパーコンプレッサー42を経たアルコールは、不純物としての水を含んだ混合蒸気の状態で脱水膜装置43が備える脱水膜に供される。
【0078】
脱水膜装置43が備える脱水膜は、水を選択的に透過することで、該膜の透過側に水を脱水する。この透過側の領域は、真空ポンプ6に接続されることにより、減圧状態に保持されている。
【0079】
脱水膜としては、格別限定されず、例えば親水処理が施されたゼオライト膜等を好ましく用いることができる。
【0080】
脱水膜に供されるアルコールは、通常はアルコール濃度が十分に高いことが要求されるが、本発明においては、上述したように、脱アルコール膜装置41からのアルコールは、アルコール濃度が好ましくは85重量%以上の範囲に精製されているため、脱水膜を好適に適用できる。
【0081】
本発明において、脱水手段は、以上に説明した脱水膜装置である場合に限定されず、例えば吸着式脱水塔などであってもよい。
【0082】
脱水手段を経た精製アルコールは、真空ポンプ6に吸引されることで冷却器5に導入され、凝縮された後、精製アルコール貯留槽7に貯留される。
【0083】
脱水手段によって分離された水は、真空ポンプ92に吸引されることで冷却装置91に導入され、凝縮された後、分離水タンク93に貯留される。
【0084】
一方、アルコール回収手段8は、吸着材安定化手段2で発酵液から分離された固形分側からアルコールを回収する機能を有し、格別限定されないが、例えばエバポレーター等のようなアルコール蒸留手段により構成することができる。
【0085】
アルコール回収手段8により回収されたアルコールは、脱アルコール膜装置41に供される発酵液に添加することで、精製アルコールの収率を向上することができ、更に、脱アルコール膜装置41から生成する精製アルコール中のアルコール濃度が更に向上するため、脱水手段として脱水膜装置43を用いる場合の適用性を更に高める効果を奏する。
【0086】
アルコール回収手段8において、アルコールが蒸留された後の乾燥残渣は、飼料あるいは肥料として好適に利用できる。
【0087】
図2は、本発明に係るアルコール精製装置の他の例を示す概略図である。図中、図1と同符号は同構成を指し、図1を参酌してした説明が援用される。
【0088】
本発明においては、図2に示すように、吸着材安定化手段2が、遠心分離機21の前段に連続ストレーナー20を備えることも好ましいことである。連続ストレーナーは、遠心分離機21に供される前の発酵液中の比較的大きな夾雑物(固形分)を分離除去するために用いられ、多段に設けた目開きの異なるストレーナーで構成することができる。ストレーナーは、炭素鋼板やステンレス鋼板に所定の目開きの孔を所定ピッチであけた多孔スクリーンを使用したり、あるいは炭素棒線やステンレス線による所定目開きの平織・畳織の金網を使用したり、さらにこの金網に補強用多孔板を取付けた二重構造スクリーンを使用することもできる。またY形ストレーナーと称されるスクリーンを使用することも好ましい。
【0089】
多段に設けたストレーナーの各々の目開きの値は、格別限定されるものではなく、適宜設定可能であるが、本発明の効果をより顕著に奏する観点では、例えば、以下のように設定することが好ましい。
【0090】
ストレーナーを2段に設けた場合、第1段の目開きを0.7mm〜2mmとし、第2段の目開きを0.3mm〜0.5mmとすることが好ましい。
【0091】
ストレーナーを3段に設けた場合、第1段の目開きを1.5mm〜3mmとし、第2段の目開きを0.5mm〜1mmとし、第3段の目開きを0.3mm〜0.5mmとすることが好ましい。
【0092】
以上のような設定とすることで、特に、吸着材安定化手段2全体の目詰まりの低下や、酵母菌除去効率の向上という効果が奏される。例えば、後段に遠心分離機21を設ける場合等において、目詰まりのほとんどない連続安定運転を可能にする効果が得られる。遠心分離機21として、例えば遠心ディスク間0.5mm程度の遠心分離機を用いた場合において、安定化の効果は顕著となる。
【0093】
本発明においては、上記のように吸着材安定化手段2が安定化されることにより、その後段の有機酸吸着装置3も更に安定化され、これにより、更に、脱アルコール膜装置41を備えたアルコール精製手段4も安定化されるという、プロセス全体に亘る連鎖的相乗効果も奏される。
【0094】
図2の例において、アルコール回収手段8は、吸着材安定化手段2で発酵液から分離された固形分側(連続ストレーナー、遠心分離機21及びMF膜22の少なくとも1又は2以上ないし全てにおいて分離された固形分側)からアルコールを回収することが好ましい。
【0095】
また、本発明においては、以上に説明した連続ストレーナーに代えて、あるいは連続ストレーナーと組み合わせて、沈殿槽を用いることも好ましいことである。沈殿槽により固形分を沈降分離させ、粗く固形分を分離した上澄液を、上述した遠心分離機21に供給することも好ましいことである。
【実施例】
【0096】
本発明の実施例について説明する。かかる実施例によって本発明が限定されるものではない。
【0097】
1.吸着材の有機酸吸着性能の評価
(実施例1)
発酵液を模擬した液で吸着材の有機酸吸着性能を評価した。
【0098】
アルコールとしてエタノール7重量%と、発酵液に含まれ得る有機酸として、コハク酸、乳酸、りんご酸、酢酸、又はクエン酸から選ばれた有機酸2重量%とを含む水溶液を調製した。100ccのサンプル管に、有機酸を含む水溶液50g、吸着材を3g入れ、室温で1時間、マグネチックスターラーで撹拌し、吸着飽和させた。吸着材試料としては、粒子径75μm以下のシリカライト粉末(比表面積400m/g)を用いた。吸着材の投入前後の水溶液の有機酸濃度を、高速液体クロマトグラフィーを用いて分析し、有機酸濃度の減少量から、吸着材1g当たりに吸着した有機酸量を求めた。結果を表1に示す。
【0099】
(比較例1)
実施例1において、吸着材試料を、粒子径2〜3mmの石炭系活性炭粉末(比表面積760m/g)に変更した以外は同様に評価し、その結果を表1に示した。表1のデータは実施例1と同等の条件の特許文献4の記載データから算出した引用データである。
【0100】
【表1】
【0101】
(実施例2)
実施例1において、シリカライトのかさ密度範囲を800〜1000kg/mとし、単位容積当たりの有機酸吸着量を計算した。結果を表2に示した。
【0102】
(比較例2)
比較例1において、活性炭のかさ密度範囲を400〜540kg/mとし、単位容積当たりの有機酸吸着量を計算した。結果を表2に示した。
【0103】
【表2】
【0104】
<評価>
表1の結果より、シリカライトからなる吸着材に、コハク酸、乳酸、りんご酸、酢酸、及びクエン酸、中でも酢酸及びコハク酸が、他の有機酸よりも選択的に吸着されたことを示しており、このことから、有機酸吸着材によって、膜劣化性有機酸を選択的に吸着して除去できることがわかる。
【0105】
表2の結果より、同容積の吸着材を吸着槽に充填したとしても、シリカライトの有機酸吸着容量は、活性炭の有機酸吸着容量よりも、大きいことがわかる。
【0106】
2.アルコール精製試験
(実施例3)
図1に示したものと同様のアルコール精製装置を用いて、以下の通りアルコールの精製を行った。
【0107】
(発酵工程)
発酵槽において、発酵原料として、コーンやコーンストーバーを供給して、糖化処理後、酵母菌を加え連続発酵を行い、発酵液を連続的に抜き出した。抜き出された発酵液中のエタノール濃度は5.3重量%であり、pHは5未満の範囲で変動していた。
【0108】
(固液分離工程)
遠心分離機(竪型遠心分離機)による遠心分離、及び、濾過膜(MF膜)による膜濾過により発酵液から固形分を除去した。
【0109】
(有機酸吸着工程)
有機酸吸着材としてシリカライトを用いて、発酵液中の膜劣化性有機酸の除去を行った。
【0110】
(脱アルコール膜工程)
脱アルコール膜としてチタノシリケート膜を用いて、該膜の透過側にアルコールを気相として分離した。
【0111】
なお、アルコール分離工程に至るまで、発酵槽から抜き出された発酵液のpH調製は行わなかった。
【0112】
(脱水膜工程)
気相に分離されたアルコールを、ベーパーコンプレッサーを用いて断熱圧縮することにより、120℃に加熱した後、これを親水処理されたゼオライトからなる脱水膜に供して脱水処理を行い、エタノール濃度が99.38%である精製アルコールを得た。
【0113】
(アルコール回収工程)
上記固液分離工程で固形分と共に発酵液から除去されたアルコールを、エバポレーターを用いて蒸留により回収し、これをアルコール分離工程4に供される直前の発酵液に添加した。
【0114】
乾燥残渣は、固形燃料や飼料に利用するために回収した。
【0115】
<評価>
本発明のアルコール精製方法によると、発酵液のpHの調整維持を行わなくても、脱アルコール膜の分離性能の低下を防止することができることが確認できた。
【0116】
また、有機酸吸着材に微生物が付着することによりバイオリアクター化して、不純物を生成したり、付着した微生物が発酵液中の栄養分により増殖して、吸着材表面を覆ってしまうといった現象は見られなかった。
【0117】
更に、以上の実施例において、図2に示したように、遠心分離機の前段に連続ストレーナーを備えることによって、吸着材安定化手段2全体の目詰まりの低下や、酵母菌除去効率の向上という効果がより顕著となった。
【符号の説明】
【0118】
1:発酵槽
2:吸着材安定化手段(固液分離手段)
20:連続ストレーナー(又は沈殿槽)
21:遠心分離機
22:膜濾過装置
3:有機酸吸着装置
31:吸着塔本体
32:充填層
4:アルコール精製手段
41:脱アルコール膜装置
42:ベーパーコンプレッサー
43:脱水膜装置
5:冷却器
6:真空ポンプ
7:精製アルコール貯留槽
8:アルコール回収手段(エバポレーター)
91:冷却器
92:真空ポンプ
93:分離水タンク
図1
図2