(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数個の開口部を備えているステーターと、ステーターの内側に所定の隙間を空けて配置されるローターとからなる、ミキサーユニットを備えているローター・ステータータイプのミキサーであって、
前記ステーターは、周径の異なる複数のステーターからなり、各ステーターの内側に、それぞれ前記ローターが所定の隙間を空けて配置され、
前記ローターは、回転中心から放射状に延びる複数枚の攪拌翼を備えており、各撹拌羽根の径方向で外側の壁面と、前記ステーターの内周壁面との間に前記所定の隙間が形成されていると共に、
前記ステーターと、ローターとが、ローターの回転軸が延びている方向で相互に近付く、又は離れることができるように構成されている
ことを特徴とするミキサー。
前記複数のステーターの中の最も径の小さいステーターより径方向内側の部分における前記環状の蓋部に、下側に向けて被処理流体を導入する導入孔が形成されていることを特徴とする請求項3記載のミキサー。
前記ステーターが備えている開口部は前記ステーターの周壁に全体の開口面積比率として20%以上で穿設されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項記載のミキサー。
【背景技術】
【0002】
いわゆるローター・ステータータイプのミキサーは、一般的に、
図1に示すように、複数個の開口部1を備えているステーター2と、ステーター2の内側に所定の隙間δを空けて配置されるローター3とからなるミキサーユニット4を備えている。このようなローター・ステータータイプのミキサーは、高速で回転するローター3と、固定されているステーター2との間の隙間近傍で、高い剪断応力が発生することを利用して、流体などに対して、乳化、分散、微粒化、混合などの処理を行うものであり、食品、医薬品、化学品などの分野において、処理液の調合、調製などの用途で広く使用されている。
【0003】
ローター・ステータータイプのミキサーは、処理される流体の循環方式に応じて、
図2の矢印5aで示すように処理液が循環する外部循環式ミキサー、
図2の矢印5bで示すように処理液が循環する内部循環式ミキサーに分類されることがある。
【0004】
このようなローター・ステータータイプのミキサーに関して多種多様な形状や循環方式が提供されている。例えば、特許文献1(粒子形成のための回転子固定子装置および方法)には、複数個の開口部を備えているステーターと、当該ステーターの内側に所定の隙間を空けて配置されるローターとを備えているミキサーを薬剤、栄養補助食品、食品、化学品、化粧品などの幅広い分野で利用される、粒子の形成に適用する微細粒子の生成のための装置、方法が提案されている。これによれば、効率的で、簡単で、容易にスケールアップすることができるとされている。
【0005】
また、以前から種々の形状のミキサーの性能評価方法として、幾つかの指標(理論)が報告されている。
【0006】
例えば、前述したローター・ステータータイプのミキサーに限らず、液-液分散操作に着目してみると、液滴径の寸法は、平均的なエネルギー消散率の計算値(大小)で議論できることが報告されている(非特許文献1、2)。ただし、非特許文献1、2では、平均的なエネルギー消散率の計算方法は殆ど明らかにされていない。
【0007】
個別のミキサーに適用でき、その実験結果を整理した研究例は幾つか報告されている(非特許文献3〜6)。ただし、これらの研究例(非特許文献3〜6)では、ミキサーの微粒化効果に対して、ローターとステーターの隙間(ギャップ)のみの影響や、ステーターの開口部(ホール)のみの影響などを考察しており、各ミキサーで異なる内容しか報告されていない。
【0008】
ローター・ステータータイプのミキサーの微粒化機構(メカニズム)を考察した研究例は幾つか報告されている(非特許文献7、8)。これらでは、液滴の微粒化効果には、乱流のエネルギー消散率が寄与することや、その微粒化効果には、処理液の剪断応力を受ける頻度(剪断頻度)が影響することが示唆されている。
【0009】
ローター・ステータータイプのミキサーの スケールアップ方法では、長時間で運転して得られる最終的な液滴径(最大安定の液滴径)に関して幾つか報告されている(非特許文献9)。しかし、実際の製造現場では実用的ではなく、あまり有用ではない。つまり、ミキサーの処理(撹拌、混合)時間を考慮し、所定の時間で運転して得られる液滴径を推定した有用な研究例は殆ど報告されていない。仮に、ミキサーの処理時間を考慮して、液滴径を推定していても、それは単なる実測値(実験値)に基づく現象(事実)を報告しているのみであり、理論的に解析した研究例は報告されていない。
【0010】
前述した特許文献1には所定のミキサーの優位性(性能)や設計の数値範囲などが記載されているが、高性能なミキサーの設計の数値範囲などに関して理論的な根拠が記載されておらず、高性能なミキサーの種類や形状などに関して記載されていない。
【0011】
前述したように、以前から種々の形状のミキサーの性能評価方法として、幾つかの指標(理論)が報告されているが、これらの指標は、あくまでも形状の同じ個別のミキサーにしか適用できない場合が多く、実際には形状の異なる多種多様なミキサーには適用できない場合が殆どである。例えば、ローターとステーターの隙間(ギャップ)が微粒化効果に大きく影響するミキサーのみに適用できる指標や、ステーターの開口部(ホール)が微粒化効果に大きく影響するミキサーのみに適用できる指標などは存在するものの、あらゆる形状のミキサーに適用できる包括的な指標は議論されておらず、それらを考慮した指標は殆ど存在していない。
【0012】
このように、ローター・ステータータイプのミキサーの性能評価方法やスケールアップ方法に関する研究例は殆ど存在せず、形状の異なる多種多様なミキサーに適用でき、その実験結果を包括的に整理した研究例も殆ど存在していない。
【0013】
ローター・ステータータイプのミキサーの 性能評価方法やスケールアップ方法に関して、従来技術では、(1)個別のミキサー毎に、(2)小規模の装置を使用し、(3)長時間で運転して得られる最終的な液滴径(最大安定の液滴径)を評価している場合が殆どであった。つまり、従来技術では、(A)多種多様なミキサーに、(B)大規模(実製造規模)の装置を適用し、(C)所定の時間で運転して得られる液滴径や、所定の液滴径が得られるまでの処理(撹拌)時間を評価や推定していなかった。
【0014】
例えば、ローターとステーターの隙間(ギャップ)の寸法が微粒化効果や乳化効果に大きく影響するミキサーのみに適用できる指標や、ステーターの開口部(ホール)の寸法や形状が微粒化効果や乳化効果に大きく影響するミキサーのみに適用できる指標などは存在するものの、あらゆる形状のミキサーに適用できる包括的な指標(多種多様なミキサーを統一して比較や評価できる理論)は議論されておらず、それらを考慮した指標は存在していなかった。
【0015】
そのため、現実的には、実際の処理液を使用して試行錯誤しながら、ミキサーを性能評価し、設計(開発、作製)していた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、複数個の開口部を備えているステーターと、当該ステーターの内側に所定の隙間を空けて配置されるローターとを備えているローター・ステータータイプのミキサーにおいて、処理される流体に掛かる剪断応力を向上させ、より高い性能を発揮できるミキサー、更には、処理される流体に掛かる剪断応力を変更・調整したり、処理される流体の流れ方を変更・調整できるミキサーを提案することを目的にしている。
【0019】
また、このような高い性能を発揮できるローター・ステータータイプのミキサーを、多種多様な形状や循環方式のミキサーに適用できる包括的な性能評価方法や、そのミキサーの運転条件(処理時間)を考慮した設計方法を利用して設計することを目的にしている。
【0020】
更に、前記の性能評価方法や設計方法を利用した高性能のローター・ステータータイプのミキサーを用いて、食品、医薬品、化学品などの製造方法(微粒化方法)を確立することを課題にしている。
【課題を解決するための手段】
【0021】
請求項1記載の発明は、
複数個の開口部を備えているステーターと、ステーターの内側に所定の隙間を空けて配置されるローターとからなる、ミキサーユニットを備えているローター・ステータータイプのミキサーであって、
前記ステーターは、周径の異なる複数のステーターからなり、各ステーターの内側に、それぞれ前記ローターが所定の隙間を空けて配置され
、
前記ローターは、回転中心から放射状に延びる複数枚の攪拌翼を備えており、各撹拌羽根の径方向で外側の壁面と、前記ステーターの内周壁面との間に前記所定の隙間が形成されていると共に、
前記ステーターと、ローターとが、ローターの回転軸が延びている方向で相互に近付く、又は離れることができるように構成されている
ことを特徴とするミキサー
である。
【0022】
請求項2記載の発明は、
被処理流体が、前記ステーターとその内側に所定の隙間を空けて配置される前記ローターとの間の隙間部に導入されることを特徴とする請求項1記載のミキサー
である。
【0023】
請求項3記載の発明は、
前記ステーターは、上端縁から径方向内側に伸びている環状の蓋部を備えていることを特徴とする請求項1記載のミキサー
である。
【0024】
請求項4記載の発明は、
前記複数のステーターの中の最も径の小さいステーターより径方向内側の部分における前記環状の蓋部に、下側に向けて被処理流体を導入する導入孔が形成されていることを特徴とする請求項3記載のミキサー
である。
【0025】
請求項5記載の発明は、
前記ステーターが備えている開口部は円形状であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項記載のミキサー
である。
【0026】
請求項6記載の発明は、
前記ステーターが備えている開口部は前記ステーターの周壁に全体の開口面積比率として20%以上で穿設されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項記載のミキサー
である。
【0028】
請求項7記載の発明は、
請求項1乃至6のいずれか一項記載のミキサー
を設計する方法であって
前記ミキサーの構造が、
当該ミキサーにより被処理流体に対して、乳化、分散、微粒化あるいは混合の処理を施すときに、所定の運転時間で、被処理流体の所定の液滴径を得ることができるように、
式1を用いて計算して、当該ミキサーの運転時間と、これによって得られる被処理流体の液滴径を計算することにより設計されていることを特徴とするミキサー
の設計方法。
【数1】
ε
a :総括エネルギー消散率 [m
2/s
3]
ε
g:ローターとステーターの隙間における局所剪断応力[m
2/s
3]
ε
s:ステーターの局所エネルギー消散率[m
2/s
3]
N
p :動力数 [-]
N
qd :流量数 [-]
n
r :ローターブレードの枚数 [-]
D :ローターの直径 [m]
b :ローターの翼先端の厚み [m]
δ :ローターとステーターの隙間 [m]
n
s :ステーターの孔数 [-]
d :ステーターの孔径 [m]
l :ステーターの厚み [m]
N :回転数 [1/s]
t
m :混合時間 [s]
V :液量 [m
3]
K
g :隙間における形状依存項 [m
2]
K
s :ステーターにおける形状依存項 [m
2]
K
c :ミキサー全体の形状依存項 [m
5]
である。
【0029】
ここで、式1中、
ε
a :総括エネルギー消散率 [m
2/s
3]
ε
g:ローターとステーターの隙間における局所剪断応力[m
2/s
3]
ε
s:ステーターの局所エネルギー消散率[m
2/s
3]
N
p :動力数 [-]
N
qd :流量数 [-]
n
r :ローターブレードの枚数 [-]
D :ローターの直径 [m]
b :ローターの翼先端の厚み [m]
δ :ローターとステーターの隙間 [m]
n
s :ステーターの孔数 [-]
d :ステーターの孔径 [m]
l :ステーターの厚み [m]
N :回転数 [1/s]
t
m :混合時間 [s]
V :液量 [m
3]
K
g :隙間における形状依存項 [m
2]
K
s :ステーターにおける形状依存項 [m
2]
K
c :ミキサー全体の形状依存項 [m
5]
である。
【0030】
請求項8記載の発明は、
請求項1乃至6のいずれか一項記載のミキサーをスケールダウンあるいはスケールアップする方法であって、
式1を用いて計算して得られた総括エネルギー消散率 [m
2/s
3]の計算値を一致させることにより、
前記ミキサーの運転時間と、これによって得られる被処理流体の液滴径を式1を用いて計算することで前記ミキサーにより被処理流体に対して、乳化、分散、微粒化あるいは混合の処理を施すときに、所定の運転時間で、被処理流体の所定の液滴径を得ることができるようにして
スケールダウンあるいはスケールアップ
することを特徴とす
るミキサー
のスケールダウン及びスケールアップ方法。
【数2】
ここで、式1中、
ε
a :総括エネルギー消散率 [m
2/s
3]
ε
g:ローターとステーターの隙間における局所剪断応力[m
2/s
3]
ε
s:ステーターの局所エネルギー消散率[m
2/s
3]
N
p :動力数 [-]
N
qd :流量数 [-]
n
r :ローターブレードの枚数 [-]
D :ローターの直径 [m]
b :ローターの翼先端の厚み [m]
δ :ローターとステーターの隙間 [m]
n
s :ステーターの孔数 [-]
d :ステーターの孔径 [m]
l :ステーターの厚み [m]
N :回転数 [1/s]
t
m :混合時間 [s]
V :液量 [m
3]
K
g :隙間における形状依存項 [m
2]
K
s :ステーターにおける形状依存項 [m
2]
K
c :ミキサー全体の形状依存項 [m
5]
である。
【0031】
ここで、式1中、
ε
a :総括エネルギー消散率 [m
2/s
3]
ε
g:ローターとステーターの隙間における局所剪断応力[m
2/s
3]
ε
s:ステーターの局所エネルギー消散率[m
2/s
3]
N
p :動力数 [-]
N
qd :流量数 [-]
n
r :ローターブレードの枚数 [-]
D :ローターの直径 [m]
b :ローターの翼先端の厚み [m]
δ :ローターとステーターの隙間 [m]
n
s :ステーターの孔数 [-]
d :ステーターの孔径 [m]
l :ステーターの厚み [m]
N :回転数 [1/s]
t
m :混合時間 [s]
V :液量 [m
3]
K
g :隙間における形状依存項 [m
2]
K
s :ステーターにおける形状依存項 [m
2]
K
c :ミキサー全体の形状依存項 [m
5]
である。
【0032】
請求項
9記載の発明は、
請求項1乃至7のいずれか一項記載のミキサーを用いて、被処理流体に対して、乳化、分散、微粒化あるいは混合の処理を施すことにより、食品、医薬品あるいは化学品を製造する方法であって、式1を用いて計算することにより、当該ミキサーの運転時間と、これによって得られる被処理流体の液滴径を
計算して、
望ましい液滴径を有している、食品、医薬品あるいは化学品を製造する方法。
【数3】
【0033】
ここで、式1中、
ε
a :総括エネルギー消散率 [m
2/s
3]
ε
g:ローターとステーターの隙間における局所剪断応力[m
2/s
3]
ε
s:ステーターの局所エネルギー消散率[m
2/s
3]
N
p :動力数 [-]
N
qd :流量数 [-]
n
r :ローターブレードの枚数 [-]
D :ローターの直径 [m]
b :ローターの翼先端の厚み [m]
δ :ローターとステーターの隙間 [m]
n
s :ステーターの孔数 [-]
d :ステーターの孔径 [m]
l :ステーターの厚み [m]
N :回転数 [1/s]
t
m :混合時間 [s]
V :液量 [m
3]
K
g :隙間における形状依存項 [m
2]
K
s :ステーターにおける形状依存項 [m
2]
K
c :ミキサー全体の形状依存項 [m
5]
である。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、複数個の開口部を備えているステーターと、当該ステーターの内側に所定の隙間を空けて配置されるローターとを備えているローター・ステータータイプのミキサーにおいて、処理される流体に掛かる剪断応力を向上させ、より高い性能を発揮できるミキサー、更には、処理される流体に掛かる剪断応力を変更・調整したり、処理される流体の流れ方を変更・調整できるミキサーを提供することができる。
【0036】
また、このような高い性能を発揮できるローター・ステータータイプのミキサーを、多種多様な形状や循環方式のミキサーに適用できる包括的な性能評価方法や、そのミキサーの運転条件(処理時間)を考慮した設計方法を利用して設計することができる。
【0037】
更に、前記の性能評価方法や設計方法を利用した高性能のローター・ステータータイプのミキサーを用いて、食品、医薬品、化学品などの製造方法(微粒化方法)を確立することができる。
【0038】
本発明においては、総括エネルギー消散率:ε
a という指標を適用している。各社から提供される多種多様な形状や循環方式のミキサーの総括エネルギー消散率:ε
a は、ローター(回転子)とステーター(固定子)の幾何学的な寸法、運転の動力と流量の測定値から個別に計算される。そして、この総括エネルギー消散率:ε
a は、各ミキサーの形状依存項と運転条件依存項とに分離して表現される。
【0039】
総括エネルギー消散率:ε
a という指標を用いることにより、各ミキサーの性能を評価する場合、例えば、液滴径の微粒化傾向によって性能を評価するときには、形状依存項の計算値(大小)を使用することができる。
【0040】
また、各ミキサーのスケールアップ・スケールダウンにおいては、形状依存項と運転条件依存項とを併せた総括エネルギー消散率:ε
aの計算値を使用し、その計算値を一致させることで設計することができる。
【0041】
これらの知見によって、理論的かつ実験的に従来品よりも微粒化効果や乳化効果の高いミキサー(高性能のミキサー)を開発(設計)するようにしたものである。
【0042】
すなわち、本発明においては、各ミキサーの性能評価方法へ適用できる形状依存項(係数)の数値で、高性能の範囲を指定する。具体的には、総括エネルギー消散率:ε
a という指標における形状依存項(係数)の数値で、従来のミキサー(従来品)を含まない範囲を設定したり、従来の指標(理論)では容易に計算できない(実測しないと困難な)範囲を設定することができる。
【0043】
そして、ローター・ステータータイプのミキサーを利用し、被処理流体に対して、乳化、分散、微粒化あるいは混合の処理を施すことにより、食品、医薬品あるいは化学品を製造する方法において、総括エネルギー消散率:ε
aを計算することにより、当該ミキサーの運転時間と、これによって得られる被処理流体の液滴径を推定して、望ましい液滴径を有している食品(乳製品・飲料などを含む)、医薬品(医薬部外品などを含む)あるいは化学品(化粧品などを含む)を製造することができる。
【0044】
なお、本発明に基づいて、栄養組成物(流動食、乳幼児用調製粉乳などの組成に相当する)を製造すると、風味、食感、物性、品質などが良好であり、衛生面や作業性などにも優れていたことから、本発明は、食品や医薬品へ適用することが好ましく、食品へ適用することがより好ましく、栄養組成物や乳製品へ適用することが更に好ましく、高濃度で配合された栄養組成物や乳製品へ適用することが特に好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明においては、ローター・ステータータイプのミキサーにおける微粒化効果(微粒化傾向)を議論(比較や評価)する目的で、下記の式1によって導き出される総括エネルギー消散率:ε
a を用いている。
【数4】
【0047】
ここで、式1中、
ε
a :総括エネルギー消散率 [m
2/s
3]
ε
g:ローターとステーターの隙間における局所剪断応力[m
2/s
3]
ε
s:ステーターの局所エネルギー消散率[m
2/s
3]
N
p :動力数 [-]
N
qd :流量数 [-]
n
r :ローターブレードの枚数 [-]
D :ローターの直径 [m]
b :ローターの翼先端の厚み [m]
δ :ローターとステーターの隙間 [m]
n
s :ステーターの孔数 [-]
d :ステーターの孔径 [m]
l :ステーターの厚み [m]
N :回転数 [1/s]
t
m :混合時間 [s]
V :液量 [m
3]
K
g :隙間における形状依存項 [m
2]
K
s :ステーターにおける形状依存項 [m
2]
K
c :ミキサー全体の形状依存項 [m
5]
である。
【0048】
この総括エネルギー消散率:ε
a を用いることにより、ミキサーの形状、ステーターの形状、その運転条件(処理時間など)、そのスケール(規模、寸法)などが異なる場合においても、一括(統一)してローター・ステータータイプのミキサーにおける微粒化効果(微粒化傾向)を議論(比較や評価)できる。
【0049】
上記の通り、総括エネルギー消散率:ε
a は、ローターとステーターの隙間(ギャップ)における局所剪断応力:ε
g と、ステーターの局所エネルギー消散率:ε
s の合計(和)として表現できる。
【0050】
本発明においては、総括エネルギー消散率:ε
a を導き出す計算式に含まれる、ローター・ステーターの寸法と運転時の動力・流量を測定することにより得られる、各ミキサーに固有の数値であるミキサー全体の形状依存項:K
cの値の多寡を評価することにより、ミキサーの性能を評価している。
【0051】
総括エネルギー消散率:ε
a を導き出す計算式に明らかなように、隙間における形状依存項:K
g [m
2]は、ローターとステーターの隙間:δ [m]、ローターの直径:D [m]、ローターの翼先端の厚み:b [m]に基づく各ミキサーに固有の数値である。
【0052】
また、ステーターにおける形状依存項:K
s [m
2]は、流量数:N
qd [-]、ステーターの孔数:n
s [-]、ステーターの孔径:d [m]、ステーターの厚み:l [m]、ローターとステーターの隙間:δ [m]、ローターの直径:D [m] に基づく各ミキサーに固有の数値である。
【0053】
そして、ミキサー全体の形状依存項:K
c [m
5] は、動力数:N
p [-]、流量数:N
qd [-]、ローターブレードの枚数:n
r [-]、ローターの直径:D [m]及び、隙間における形状依存項:K
g [m
2]と、ステーターにおける形状依存項K
s [m
2]とに基づく各ミキサーに固有の数値である。
【0054】
なお、動力数:N
p [-]、流量数:N
qd [-]は化学工学の分野では一般的に使われる無次元数で以下のように定義される。
【0055】
Q=N
qd・N・D
3 (Q:流量、N:回転数、Dミキサー直径)
P=N
p・ρ・N
3・D
5(ρ:密度、N:回転数、Dミキサー直径)
つまり、流量数と動力数は、実験で測定した流量、ならびに動力から導き出せる無次元数である。
【0056】
すなわち、ミキサー全体の形状依存項:K
c は、ローター・ステーターの寸法と、運転時の動力・流量を測定することにより得られる、各ミキサーに固有の値である。
【0057】
そこで、この値の大きさを比較(評価)することで、多種多様なミキサーの性能を評価できると共に、高性能のミキサーを設計(開発、作製)できる。
【0058】
本発明においては、上述した総括エネルギー消散率:ε
a を導き出す計算式に基づいてミキサーを設計している。
【0059】
<総括エネルギー消散率:ε
aと液滴径の変化(液滴の微粒化傾向)>
微粒子化の評価を行う対象として、乳製品を想定した模擬液を準備した。この乳化製品疑似液は、ミルクタンパク質濃縮物(MPC、TMP(トータルミルクプロテイン))、ナタネ油、水から構成されている。その配合や比率などを表1に示した。
【表1】
【0060】
ミキサーの性能は、液滴径の微粒化傾向を実験的に検討して評価した。
図3に示すように、外部循環式のユニットを準備し、流路の途中で液滴径を、レーザー回折式粒度分布計(島津製作所:SALD−2000)により計測した。
【0061】
なお、本発明において、液滴径の微粒化傾向を実験的に検討して、ミキサーの性能を評価するにあたり、内部循環式ミキサーに関しては、液滴径の微粒化傾向を把握することが難しい。しかし、内部循環式ミキサーも、外部循環式ミキサーも、
図1に示すように、複数個の開口部1を備えているステーター2と、ステーター2の内側に所定の隙間δを空けて配置されるローター3とからなるミキサーユニット4を備えている点で共通している。そこで、内部循環式ミキサーについて評価する場合には、
図4に示すように、外部循環式ミキサーに備えられているミキサーユニットと同一の寸法(サイズ)、形状、構造を有するローター、ステーターからなるミキサーユニットが内部循環式ミキサーに配備されていると考えて、当該外部循環式ミキサーを評価した試験の結果を内部循環式ミキサーの評価に用いた。
【0062】
ここでは、3種類のミキサーに関して、その性能を比較した。なお、ここで使用したミキサーの概要を表2に示した。
【表2】
【0063】
ミキサーA−1、A−2は、いずれも収容量が1.5リットルで、同一のメーカー品であるが、そのサイズに相違があるものである。
【0064】
表2中、隙間容積:ν
gは、
図1におけるギャップδの部分の容積である。
【0065】
ミキサーA−1、A−2(いずれも収容量:1.5リットル)、B(収容量:9リットル)が備えているローター3の攪拌羽根の数は、ミキサーA−1:4枚、ミキサーA−2:4枚、ミキサーB:4枚である。
【0066】
実験条件と総括エネルギー消散率:ε
aの計算値は、表3の通りであった。
【表3】
【0067】
表3において、K
g /(K
g+K
s)の値が0.5以上であることから、ステーターにおける形状依存項であるK
sよりも、隙間における形状依存項であるK
gが大きいこととなり、ミキサーA−1、A−2では、その隙間とステーター2の開口(孔)部1の微粒化効果を比較した場合、ミキサーの隙間δの微粒化効果が大きくて支配的であることが分かった。
【0068】
また、表3において、ε
a の値から、ミキサーの隙間δが狭い程に、また、ローター3の回転数が大きい程に、微粒化効果が高くなることが推定された。
【0069】
表2のミキサーA−1、A−2について、表3の運転条件における処理(混合)時間と、液滴径の関係(微粒化傾向)を
図5に示した。
【0070】
表3の ε
a による推定値(理論値)と同様な傾向を示し、あらゆる回転数において、ミキサーの隙間δが小さい場合に、微粒化効果(微粒化の性能)の高いことが分かった。
【0071】
なお、処理(混合)時間を横軸にして、実験結果を整理すると、液滴径の変化(液滴の微粒化傾向)を一括して表現(評価)できないことが分かった。
【0072】
次に、表2のミキサーA−1、A−2について、本発明で提案している総括エネルギー消散率:ε
a と、液滴径の関係(微粒化傾向)を
図6に示した。総括エネルギー消散率:ε
aを横軸にして実験結果を整理すると、液滴径の変化(液滴の微粒化傾向)を一括して表現(評価)できることが分かった。
【0073】
具体的には、運転条件(回転数、混合時間)と、ミキサーの形状(隙間δ、ローター3の直径)が異なっても、液滴径は同じように減少する傾向を辿ることが分かった。
【0074】
すなわち、総括エネルギー消散率:ε
aは、ローター・ステータータイプのミキサーにおいて、運転条件や形状の違いを包括的に考慮して、その性能を評価できる指標であることを確認できた。
【0075】
次に、表2のミキサーBについて、本発明で提案している総括エネルギー消散率:ε
a と、液滴径の関係(微粒化傾向)を
図7に示した。ミキサーの規模(寸法)が異なっても、液滴径は総括エネルギー消散率:ε
a の値(大きさ)に依存していることが分かった。
【0076】
また、
図6、
図7より、ミキサーの規模が異なっても、同様の微粒化傾向を示すことが分かった。
【0077】
<総括エネルギー消散率:ε
aを用いたミキサーの評価>
総括エネルギー消散率:ε
aを導き出す本発明の計算式を用いたローター・ステータータイプのミキサーの評価、特に、微粒化効果(微粒化傾向)を指標としたミキサーの評価について説明する。
【0078】
ローターとステーターの隙間(ギャップ)の寸法や、ステーターの開口部(ホール)の寸法(孔径)や形状(孔数)などが異なる場合において、それぞれの因子(各項目)がミキサーのステーターの性能へ及ぼす影響を検証(評価)した。この検証に使用したステーターに関する情報の概要を表4に示した。
【0079】
なお、実際のミキサーの性能評価には、各ミキサー全体の形状依存項K
c を、ステーター番号3(標準のステーター)の K
c で正規化した K
c / K
c _std の値を使用した。このK
c / K
c _std の値が大きくなるに従い、微粒化効果が高くなる(高性能のミキサーである)ことを意味している。
【表4】
【0080】
(ローターとステーターの隙間(ギャップ)の影響)
ローターとステーターの隙間の影響について検証した結果を
図8に示した。
【0081】
総括エネルギー消散率:ε
aを導き出す本発明の計算式に基づいて、ミキサーの微粒化効果(微粒化傾向)を計算したところ、ローターとステーターの隙間が小さい程、K
c / K
c _std の値(理論値)が大きくなることが推定された。
【0082】
一方、実際の実験結果に基づいて、ミキサーの 微粒化効果を計算したところ、その隙間が小さい程、K
c / K
c _std の値(実測値)は大きくなった。
【0083】
ここで、ローターとステーターの隙間と微粒化効果の関係について、実測値と理論値では同様の傾向を示すことが確認できた。そして、その隙間が小さい程、ミキサーの性能が高くなることが理論的かつ実験的に実証できた。
【0084】
(ステーターの開口部(ホール)の孔径の影響)
ステーターの孔径の影響について検証した結果を
図9に示した。
【0085】
総括エネルギー消散率:ε
aを導き出す本発明の計算式に基づいて、ミキサーの微粒化効果(微粒化傾向)を計算したところ、ステーターの孔径が小さい程、K
c / K
c _std の値(理論値)が大きくなることが推定された。
【0086】
一方、実際の実験結果に基づいて、ミキサーの微粒化効果を計算したところ、ステーターの孔径が小さい程、K
c / K
c _std の値(実測値)は大きくなった。
【0087】
ここで、ステーターの孔径と微粒化効果の関係について、実測値と理論値では同様の傾向を示すことが確認できた。そして、ステーターの孔径(ホール)が小さい程、ミキサーの性能が高くなることが理論的かつ実験的に実証できた。
【0088】
なお、ステーターの孔径の影響は、ローターとステーター隙間の影響よりも大きかった。
【0089】
(ステーターの開口部(ホール)の孔数(開口面積比)の影響)
ステーターの孔数(開口面積比)の影響について検証した結果を
図10に示した。
【0090】
総括エネルギー消散率:ε
aを導き出す本発明の計算式に基づいて、ミキサーの微粒化効果(微粒化傾向)を計算したところ、ステーターの孔数が多い程、K
c / K
c _std の値(理論値)が大きくなることが推定された。
【0091】
一方、実際の実験結果に基づいて、ミキサーの微粒化効果を計算したところ、ステーターの孔数が多い程、K
c / K
c _std の値(実測値)は大きくなった。
【0092】
ここで、ステーターの孔数と微粒化効果の関係について、実測値と理論値では同様の傾向を示すことが確認できた。そして、ステーターの孔数(開口面積)が多い程、ミキサーの性能が高くなることが理論的かつ実験的に実証できた。
【0093】
なお、ステーターの孔数の影響は、ローターとステーター隙間の影響よりも大きかった。
【0094】
(既存の(市販の)ミキサーの性能改善効果)
総括エネルギー消散率:ε
aを導き出す本発明の計算式に基づいて、市販されているS社とA社のミキサーの性能を比較した結果を
図11に示した。そして、本発明のミキサーの設計方法(設計思想)に基づいて、その形状を変更した場合における性能の改善(改良)効果の推定値の結果も併せて
図11に示した。S社とA社のミキサーでは、ローターやステーターの直径が異なるが、それらの異なる機種に対して、同じ指標を適用して性能を評価できることが分かった。
【0095】
例えば、S社(ローターの直径D:400mm)のミキサーの場合には、ローターとステーターの隙間δを2mmから0.5mmへ減少させる 、ステーターの孔数(開口面積比)n
sを12%から40%へ増加させる 、ステーターの孔径dを4mmから3mmへ減少させることで、微粒化効果や乳化効果(性能)が約3.5倍に改善されると考えられる。これは処理(運転)時間を現行の30%程度にまで、大幅に短縮できることを意味している。
【0096】
一方、A社(ローターの直径D:350mm)のミキサーの場合には、ローターとステーターの隙間δを0.7mmから0.5mmへ減少させる 、ステーターの孔数(開口面積比)n
sを25%から40%へ増加させる 、ステーターの孔径dを4mmから3mmへ減少させることで、微粒化効果や乳化効果(性能)が約2.0倍に改善されると考えられる。これは処理時間を現行の半分程度にまで、大幅に短縮できることを意味している。
【0097】
(高性能ミキサーの形状と設計)
本発明が提案する高性能ミキサーは、ローターが回転すると、径方向内側の混合部分と、径方向外側の混合部分という複数段(少なくても二段階以上)の混合部が形成されることになる。このような多段式(マルチステージ)での混合により、処理される流体に掛かる剪断応力を向上させることができ、高性能を実現できる。
【0098】
また、本発明が提案する高性能ミキサーでは、ステーターと、ローターとが、ローターの回転軸が延びている方向で移動可能になっていて、ローターを回転させている途中で両者の間の間隔を調整・制御することができる。これによって、処理される流体に掛かる剪断応力を変更・調整したり、処理される流体の流れ方を変更・調整することができる。
【0099】
更に、本発明が提案する高性能ミキサーでは、処理される流体を、混合部分(ミキサー部)へ直接で投入(添加)する機構が採用されている。これによって、前述した多段式(マルチステージ)での混合と合わせて、高性能を実現できる。
【0100】
このような本発明が提案する高性能ミキサーの形状、構造は、上述した、本発明の計算式に基づいて導き出される総括エネルギー消散率:ε
a を指標としたミキサーの性能評価と、その検証結果を参考にして定義されている。そして、その定義に基づいて、高性能のミキサーを設計し、そのミキサーの概要を
図12〜
図16に示した。
【0101】
(ムービングステーター(可動式の固定子))
ローター・ステータータイプのミキサーを使用し、粉体原料や液体原料を溶解(調合)して、乳化状製品を製造する場合、粉体原料と共に持ち込まれた気体(空気)を分離しないままで、ミキサーにより処理すると、調合液に微細な気泡が混入(発生)した状態となる。この微細な気泡が混入した調合液をそのまま乳化処理した場合、気泡が混入していない調合液を乳化処理した場合と比較して、微粒化や乳化の性能(効果)が劣ってしまうことが以前から知られている。
【0102】
そこで、粉体原料を溶解する初期段階において、微細な気泡の発生を抑制するためには、ミキサーにムービング・ステーターの機構を持たせることが望ましい。特に、泡立ちしやすい乳化状製品を処理する場合、ムービング・ステーターの機構を持たせることが望ましい。粉体原料を溶解する初期段階では、ステーターをローターから離すことで、高いエネルギーを消散させることなく、粉体原料を調合液へ素早く分散させる。そして、その後にステーターをローターの近傍まで移動させ、本格的に溶解・微粒化・乳化する手順が良い。
【0103】
(マルチ・ステージ・ホモゲナイザー(多段階式の乳化機構))
上述したように、本発明の計算式に基づいて導き出される総括エネルギー消散率:ε
a の値が大きい程、微粒化や乳化の性能(効果)が優れていることを確認できている。
【0104】
ここで、総括エネルギー消散率:ε
a の値は、局所エネルギー消散率:ε
l と、剪断頻度:f
s,h の積として表現できる。そして、剪断頻度:f
s,h を高めるには、微粒化や乳化するステーターを多段階式にすることが有効であると考えられる。すなわち、ミキサーにおいて2段や複数段のマルチ・ステージの形状が高性能を実現するためには有効である。
【0105】
ここで、局所エネルギー消散率:ε
lと剪断頻度:f
s,hは、以下の通りである。
【0106】
局所エネルギー消散率:ε
l[m
2/s
3]=F
a U/ρ v
s
F
a:平均力[N]
U:翼先端速度[m/s]
ρ:密度[kg/m
2]
v
s:乳化寄与体積[m
3]
平均力:F
a[N]=τ
a S
s
τ
a:平均せん断力[N/m
2]
S
s:剪断面積[m
2]
平均せん断力:τ
a=P
h/Q
P
h:乳化寄与動力[kW]
Q:流量[m
3/h]
乳化動力消散:P
h[kW]=P
n−P
p
P
n:正味動力[kW]
p
p:ポンプ動力[kW]
剪断頻度:f
s,h[1/s]=n
s n
r N/n
v
n
s:ステーターの孔数[個]
n
r:ローターブレードの枚数[枚]
N:回転数[1/s]
n
v:ステーター孔部体積[m
3]
剪断面積:S
s[m
2]=S
d+S
l
S
d:孔断面積[m
2]
S
l:孔側面積[m
2]
孔断面積:S
d[m
2]=π/4 d
2
d:ステーター孔径[m]
孔側面積:S
l[m
2]=πd l
l:ステーター厚み[m]
(ダイレクト・インジェクション(直接注入式の添加機構))
本発明の計算式に基づいて導き出される総括エネルギー消散率:ε
a を指標としたミキサーの性能評価と、その検証結果により、微粒化や乳化の性能(効果)はステーターの開口部(ホール)の孔径や孔数(開口面積比)により主に影響されることが分かった。
【0107】
よって、油脂、不溶成分、微量成分などを混合部分(ミキサー部)へ直接で投入(添加)することで、より効果的に乳化や分散される。特に一段目のステーター(径方向で内側のステーター)部分へ直接で投入(注入)すれば、一段目のステーターで予備乳化してから、さらに二段目のステーター(径方向で外側のステーター)で本格的に乳化・分散できる。
【0108】
(高性能のステーターの形状)
本発明の計算式に基づいて導き出される総括エネルギー消散率:ε
a を指標としたミキサーの性能評価と、その検証結果により、ステーターの開口部(ホール)の孔径は極力小さく、その孔数は極力多く、ローターとステーターの隙間は極力小さい場合において、ミキサーの性能が高くなることが分かった。また、ローターの翼の枚数が多い程、剪断頻度は高くなる。
【0109】
ローターとステーターの隙間が小さい程、微粒化や乳化の性能(効果)は向上するが、今回の検証実験では、ステーターの孔径や孔数よりも、微粒化や乳化の性能(効果)への影響が小さいことが分かった。
【0110】
そして、むしろ隙間が狭くなると、ローターとステーターの噛み混みなどのリスクが発生してしまう。また、ムービング・ステーターの機構を採用する場合、ミキサーの運転(稼働)中に、ステーターをローターの回転軸が延びている方向に沿って移動させることから、隙間(クリアランス)として0.5〜1mm程度で十分である。すなわち、噛み混みなどのリスクを避ける観点から、隙間として0.5mm以下までは不要である。
【0111】
今回の検証実験では、ステーターの孔径が2mm以下になると、粉体原料などが閉塞するリスクがあることが分かった。したがって、粉体原料の溶解と乳化処理を同時に達成しようとする場合、ステーターの孔径として2〜4mm程度が良い。
【0112】
一方、ステーターの孔数(開口面積比)が多い程、剪断頻度が高くなるが、ステーターの開口部の強度の問題がある。従来では一般的には、開口面積比として18〜36%を採用している場合が多いが、今回の検証実験では、開口面積比として15%以上、好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上、さらに好ましくは40%以上、特に好ましくは40〜50%が良いことが分かった。
【0113】
(同一孔径、同一開口面積比で比較した場合の最適なステーター孔形状について)
ステーターの孔の形状は、くし歯状ではなく、円形状が良い。局所エネルギー消散率:ε
l は、剪断面積:S
s に正比例することが分かっている。よって、同一の断面積であれば、円形状で剪断面積:S
s が最大となるため、くし歯状よりも円形状が微粒化や乳化の性能(効果)として優れていると考えられる。
【0114】
ステーターに形成されている開口の形状(円形、正方形、長方形)のみを変更し、その他の条件は同一にしたミキサーで総括エネルギー消散率:ε
a を算出すると表5の通りになる。
【表5】
【0115】
すなわち、同一孔径、同一開口面積の場合、櫛歯(長方形断面)より、円形や正方形で孔数が多くなり、剪断断面積も大きくなる。よって、総括エネルギー消散率:ε
aも高くなり、開口の形状が円形や正方形で、ミキサーの微粒化や乳化の性能が良くなることとなる。
【0116】
表5における形状係数の比較から、正方形と円形では性能は同等と考えられる。ただし、正方形の加工には手間を要するため、ミキサーの微粒化や乳化の性能と加工性の面から、円形断面が最適であると考えられる。
【0117】
(ローターの攪拌羽根の枚数)
剪断頻度を高くする観点では、ローターの攪拌羽根(翼)の枚数は多いと良いこととなる。ただし、吐出流量が落ちると、タンク槽内の循環回数が減るため、微粒化や乳化の性能(効果)が低下する場合がある。前記で定義した理論式によると、ローターの翼の枚数が多いと、総括エネルギー消散率:ε
aが高くなることが分かる。一般的にはローターの翼の枚数として6枚を採用しているが、それを8枚にするだけで、微粒化や乳化の性能(効果)が約1.3倍に向上すると考えられる。
【0118】
(ミキサーのスケールアップ)
本発明で提案した指標(理論)を適用しながら検証実験することで、スケールアップ方法として利用できる。特に処理(製造)時間を考慮したスケールアップ方法として有用である。
【0119】
(既存のミキサーと新規のミキサーとの比較)
既存の代表的なミキサーと、本発明で提案した新規のミキサーの特徴を比較した結果を表6に示した。
【表6】
【0120】
本発明で提案した「ムービング・ステーター」、「マルチ・ステージ・ホモゲナイザー」、「ダイレクト・インジェクション」の機能を有しているミキサーは、現在のところ見あたらない。さらに、本発明の基になるε
aに基づいた最適なステーター形状の設定(隙間、孔径、開口面積比、孔形状)ならびにローター形状(翼枚数、翼幅)のミキサーは、さらに高い乳化・微粒化効果を持つと考えられる。
【0121】
本発明の上述した計算式で求められる総括エネルギー消散率:ε
aと液滴径の微粒化傾向の関係を検討したところ、以下のようになった。
【0122】
この検討では、ローター3とステーター2の隙間(ギャップ)δが大きく(δ> 1mm、例えば、δ = 2〜10mm)、ステーター2の開口部(ホール、孔)1の数が多い(開口部1の数:例えば、n
s > 20個、例えば、n
s = 50〜5000個)3種類のミキサーに関して、その性能を比較した。
【0123】
なお、上述したように、微粒子化の評価を行う対象として乳製品を想定した表1の配合比率の模擬液を用い、
図3に図示したように、外部循環式のユニットを準備し、流路の途中で液滴径を、レーザー回折式粒度分布計(島津製作所:SALD−2000)により計測し、液滴径の微粒化傾向を調査して評価した。
【0124】
なお、ここで使用したミキサーC(収容量:100リットル)、D(収容量:500リットル)、E(収容量:10キロリットル)の概要を表7に示した。これら3種類のミキサーは、同一のメーカー品であり、市場に提供されているものである。そして、ミキサーCに関しては、隙間(ギャップ)δの寸法(大きさ)、開口部1の数が相違する5種類のミキサー(ステーターNo.1〜ステーターNo.5)について検討した。
【表7】
【0125】
なお、表7中、開口面積比Aは、「すべての開口部面積(=1孔面積×個数)/ステーターの表面積」で計算される無次元数である。
【0126】
実験条件と総括エネルギー消散率:ε
aの計算値は表8の通りであった。
【表8】
【0127】
表8において、K
g /(K
g+K
s)の値が0.1〜0.3であることから、隙間における形状依存項であるK
gよりも、ステーターにおける形状依存項であるK
sが大きいこととなり、表7のミキサーCでは、その隙間とステーター2の開口(孔)部1の微粒化効果を比較した場合、ステーター2の開口部1の微粒化効果が大きくて支配的であることが分かった。
【0128】
また、表8において、ステーター番号4のK
cで正規化したK
c / K
c _stdの値から、ステーター番号が大きくなるに従い、微粒化効果が高くなることが推定された。
【0129】
表7のミキサーC(ステーターNo.1〜ステーターNo.5)について、表8の運転条件における処理(混合)時間と、液滴径の関係(微粒化傾向)を
図12に示した。
【0130】
表8の K
c / K
c _stdによる推定値(理論値)と同様な傾向を示し、ステーターNo.1〜ステーターNo.5のいずれにおいても、K
c / K
c _std の値が大きい場合に、微粒化効果(微粒化の性能)の高いことが分かった。一方、運転条件における処理(混合)時間の妥当性などを考えると、開口面積比として0.15(15%)以上、好ましくは0.2(20%)以上、より好ましくは0.3(30%)以上、さらに好ましくは0.4(40%)以上、特に好ましくは0.4〜0.5(40〜50%)が良いことが分かった。このとき、ステーターの開口部の強度を勘案すると良い。
【0131】
また、同程度のK
c / K
c _stdの値であるステーターNo.3とNo.4では、ほぼ同等の微粒化傾向を示していることから、K
c / K
c _std と本発明の計算式で求められる総括エネルギー消散率:ε
aによりミキサーの性能を予測すると、定性的な傾向を捉えるだけでなく、定量的な傾向を説明(評価)できることが分かった。
【0132】
なお、処理(混合)時間を横軸にして、実験結果を整理すると、液滴径の変化(液滴の微粒化傾向)を一括して表現(評価)できないことが分かった。
【0133】
次に、表7のミキサーC(ステーターNo.1〜ステーターNo.5)について、本発明の計算式で求められる総括エネルギー消散率:ε
aと、液滴径の関係(微粒化傾向)を
図13に示した。
【0134】
本発明の計算式で求められる総括エネルギー消散率:ε
aを横軸にして、実験結果を整理すると、液滴径の変化(液滴の微粒化傾向)を一括して表現(評価)できることが分かった。具体的には、運転条件(回転数、混合時間)と、ミキサーの形状(隙間、ステーターの孔径、ステーターの開口面積比)が異なっても、液滴径は同じように減少する傾向を辿ることが分かった。
【0135】
すなわち、本発明の計算式で求められる総括エネルギー消散率:ε
aは、ローター・ステータータイプのミキサーにおいて、運転条件や形状の違いを包括的に考慮して、その性能を評価できる指標であることを確認できた。
【0136】
次に、表7のミキサーD、Eについて、本発明の計算式で求められる総括エネルギー消散率:ε
aと、液滴径の関係(微粒化傾向)を
図14に示した。 ミキサーの規模(寸法)が容量で200〜700リットルと異なっても、液滴径は ε
a の値(大きさ)に依存していることが分かった。また、ミキサーの規模が異なっても、同様の微粒化傾向を示すことが分かった。
【0137】
以上より、ローター3とステーター2の隙間(ギャップ)δが大きく(δ > 1mm、例えば、δ = 2〜10mm)、ステーターの開口部(ホール、孔)1の数が多い(開口部1の数:n
s > 20個、例えば、n
s = 50〜5000個)ローター・ステータータイプのミキサーでは、本発明で提案している計算式で求められる総括エネルギー消散率:ε
a の値(大きさ)を一致させることで、運転条件や形状の違いを包括的に考慮して、スケールアップできると考えられた。
【0138】
このように、本発明の計算式で求められる総括エネルギー消散率:ε
aと、液滴径の関係(微粒化傾向)は、添付の
図13に示されるように、本発明の計算式で求められる総括エネルギー消散率:ε
aを横軸にして、液滴径の変化(液滴の微粒化傾向)を一括して表現(評価)できる。
【0139】
このように本発明の計算式で求められる総括エネルギー消散率:ε
aと、液滴径はほぼ直線的な関係があることが発明者の検討によって認められている。
【0140】
ただし、統計的に信頼できる実験式を導きだすことは困難であるため、液滴径の推定は、実験から得られた液滴径と本発明の計算式で求められる総括エネルギー消散率:ε
aの関係を用いて行うこととした。
【0141】
上述したように、本発明の計算式で求められる総括エネルギー消散率:ε
aは形状依存項とそれ以外の製造条件項(時間を含む)とに分けられる。よって製造条件項(時間)を固定して形状依存項が大きくなれば、総括エネルギー消散率:ε
aは大きくなり、結果的に同じ製造条件(時間)においても液滴径は小さくなる。
【0142】
具体的には、ある製造条件下で得られる粒子径を実際に測定し、そのときのε
aを計算する。この実験によって所定の液滴径を得るために必要なε
aがわかる。
【0143】
次にミキサー形状を変更した際に計算されるε
aと変更する前のε
aの大きさを比較することによって、変更後の液滴径の減少傾向を推定する。
【0144】
つまり、前述した計算式と液滴径を推定する統計的信頼性が高い実験式はないものの、実験結果を利用することによって、ミキサー形状の影響を考慮した液滴径の減少傾向の推定が可能である。
【実施例】
【0145】
以下では、添付図面を参照して、本発明の好ましい実施形態について幾つかの実施例を説明するが、本発明は、これらの実施形態、実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載から把握される技術的範囲において種々の形態に変更可能である。
【0146】
本発明が提案する計算式に基づいて導き出される総括エネルギー消散率:ε
a を指標としたミキサーの性能評価と、その検証結果を参考にして定義した高性能のミキサーの形状および、その定義に基づいて設計した高性能のミキサーの概要を
図15〜
図19を用いて説明する。
【0147】
本発明の提案するローター・ステータータイプのミキサーは、複数個の開口部を備えているステーターと、ステーターの内側に所定の隙間を空けて配置されるローターとからなるミキサーユニット14の部分に特徴を有するものであり、その他の構造は
図1を用いて説明した従来のローター・ステータータイプのミキサーと同一である。そこで、本発明のミキサーにおいてその特徴的構造、機構になっているミキサーユニット14のみについてその一例を図示して説明する。
【0148】
本発明のローター・ステータータイプのミキサーにおけるミキサーユニット14は、
図15、
図16に図示した構造のローター13と、ステーター12、22とからで構成される。
【0149】
ステーター12、22は
図1に例示した従来のミキサーユニット4におけるステーター2と同じく、円形状の複数個の開口部11a、11bをそれぞれ備えている。
【0150】
ステーター12、22は、ステーター22の径の方が、ステーター12の径より大きく、
図17(a)図示のように、ミキサーユニット14に同心円状に配置される。
【0151】
ステーター12、22の内側に所定の隙間を空けて配置されるローター13は、回転中心になる回転軸17から放射状に延びる複数枚の攪拌翼を備えている。図示の実施形態では、8枚の攪拌翼13a、13b、13c、13d、13e、13f、13g、13hを備えている。
【0152】
各攪拌翼13a〜13hの径方向中心と、径方向外端16との間の同一径の位置に縦溝15がそれぞれ形成されている。
【0153】
図17(a)、(b)図示のようにミキサーユニット14が形成されたときには、各攪拌翼13a〜13hに形成されている縦溝15にステーター12が装入される。そして、各攪拌翼13a〜13hの径方向外端16の壁面16aと、ステーター22の内周壁面22aとの間に隙間δ2が形成される。また、各攪拌翼13a〜13hの縦溝15における外周面15aと、ステーター12の内周壁面12aとの間及び、各攪拌翼13a〜13hの縦溝15における内周面15bと、ステーター12の外周壁面12bとの間に隙間が形成される。
【0154】
このように、本発明のローター・ステータータイプのミキサーのミキサーユニット14においては、径の異なる複数のステーター12、22の内側にそれぞれローターが所定の隙間を空けて配置される構造になる。
【0155】
ローター13が回転軸17を回転中心にして矢印20で示すように回転すると、径方向内側の混合部分と、径方向外側の混合部分という二段階の混合部が形成されることになる。このような多段式(マルチステージ)での混合により高性能を実現することが可能になる。すなわち、このような多段式(マルチステージ)にすることにより、処理される流体に掛かる剪断応力を向上させることができる。
【0156】
図示の実施形態では、径方向内側の混合部分は、各攪拌翼13a〜13hの縦溝15における外周面15aと、ステーター12の内周壁面12aとの間及び、各攪拌翼13a〜13hの縦溝15における内周面15bと、ステーター12の外周壁面12bとの間に形成される。また、径方向外側の混合部分は、各攪拌翼13a〜13hの径方向外端16の壁面16aと、ステーター22の内周壁面22aとの間に形成される。
【0157】
本発明のミキサーでは、ステーター12、22と、ローター13とは、ローター13の回転軸17が延びている方向で相互に接近する、又、離れることができるようになっている。図示の実施形態では、ローター13において回転軸17が延びている方向で、
図17(b)の矢印22、23で示すように移動可能になっている。
【0158】
そこで、本発明のミキサーでは、ローター13が
図17(b)の矢印22方向に移動して、前述したように、各攪拌翼13a〜13hに形成されている縦溝15にステーター12が装入されてミキサーユニット14が形成されている状態と、ローター13が
図17(b)に仮想線で示すようにステーター12、22から離れている状態とを採れるようになっている。
【0159】
ミキサーによって粉体原料を溶解する初期段階では、ローター13を
図17(b)の矢印23で示すようにしてステーター12、22から離すことで、高いエネルギーを消散させることなく、粉体原料を調合液へ素早く分散させることができる。
【0160】
そして、その後にローター13を
図17(b)の矢印22で示すように移動させて、上述した径方向内側と、径方向外側の混合部分という二段階の混合部を形成し、ローター13を
図17(b)の矢印20方向に回転させて、本格的に溶解・微粒化・乳化する手順が良い。
【0161】
前述したようにステーター12、22と、ローター13とが、ローター13の回転軸17が延びている方向で移動可能であるので、ローター13を回転させている途中で両者の間の間隔を調整・制御することができる。これによって、処理される流体に掛かる剪断応力を変更・調整したり、処理される流体の流れ方を変更・調整することができる。
【0162】
図17(a)、(b)図示の本発明のミキサーでは、ミキサーユニット14を構成するステーター12、22の上端に沿って、ノズル18が径方向で中心側に向かって延びている。処理される流体は、ノズル18を介してノズル開口19から
図17(b)の矢印21で示すように混合部分(ミキサー部)へ直接で投入される。
【0163】
すなわち、処理される流体は内側の混合部分である、各攪拌翼13a〜13hの縦溝15における外周面15aと、ステーター12の内周壁面12aとの間に、ノズル開口19から矢印21のように、直接で投入され、そこで第一段目の混合(予備混合)が行われる。引き続いて、外側の混合部分である、各攪拌翼13a〜13hの径方向外端16の壁面16aと、ステーター22の内周壁面22aとの間で本格的な混合が行われるようになっている。
【0164】
このように、処理すべき流体を混合部分(ミキサー部)へ直接で投入(添加)することによって、より効果的に乳化や分散を行うことが可能になる。
【0165】
図18、
図19は、本発明の他の実施形態を表すものである。ステーター12、22が、上端縁から径方向内側に伸びている環状の蓋部30を備えている点が、上述した
図15〜
図17図示の実施形態と相違している。以下、この相違点を中心に説明する。
【0166】
なお、
図18、
図19図示の実施形態では、回転軸17から放射状に延びる撹拌翼は13a〜13lの12枚配備されている。
【0167】
図示の実施形態では、環状の蓋部30はステーター22の上端縁及び、ステーター12の上端縁にそれぞれ取り付けられている構造になっている。
【0168】
図18、
図19図示の実施形態によれば、ステーター12、22の上端縁から径方向内側に伸びている環状の蓋部30が配備されていることにより、処理されるべき流体が、ローター13とステーター12、22の隙間から
図17(b)中、上側方向に漏れ出てしまうことを防止できる。
【0169】
なお、
図18、
図19図示のように蓋部30が備えられている実施形態の場合、
図17(a)、(b)を用いて説明した直接投入(添加)機構は、蓋部30を利用した構造になっている。
【0170】
ステーター22の外周に回転軸17が伸びる方向に伸びている流入導管31が配備されており、流入導管31の上端に連通する導管32が蓋部30内を径方向内側に向かって伸びている。一方、複数のステーター12、22の中の最も径の小さいステーター12より径方向内側の部分における環状の蓋部30に、
図17(b)中、下側に向けて被処理流体を導入する導入孔33が形成されている。蓋部30内を径方向内側に向かって伸びる導管32が導入孔33に接続されている。これによって、処理されるべき流体は、
図18、
図19中、矢印34、35、36で示すように、流入導管31、導管32、導入孔33を介して導入(添加)される。
【0171】
蓋部30が存在していることにより、流体は、ローター13とステーター12、22の隙間から
図17(b)中、上側方向に漏れ出てしまうことはなく、2枚のステーター12、22の開口部11a、11bを径方向内側から外側に向かって通過する。これにより、処理されるべき流体は、攪拌翼13a等の縦溝15における外周面15aと、ステーター12の内周壁面12aとの間、攪拌翼13a等の縦溝15における内周面15bと、ステーター12の外周壁面12bとの間、攪拌翼13a等の径方向外端16の壁面16aと、ステーター22の内周壁面22aとの間に形成されている混合部分で、合計3回の高い剪断断応力を受ける。
【0172】
図18、19図示の実施形態の本発明のミキサーでも、
図15〜
図17図示の実施形態のミキサーと同じく、ローター13を回転させている途中でステーター12、22とローター13との間の間隔を調整・制御することができ、これによって、処理される流体に掛かる剪断応力を変更・調整したり、処理される流体の流れ方を変更・調整することができる。
【0173】
(比較検討試験)
図1を用いて説明した従来のミキサーと、
図18、19を用いて説明した本発明のミキサーとについて比較試験を行った。比較試験は、
図3に示すように、外部循環式のユニットを準備し、流路の途中で液滴径を、レーザー回折式粒度分布計(島津製作所:SALD−2000)により計測し、液滴径の微粒化傾向を検討することによって行った。
【0174】
試験に用いた従来のミキサーのステーター2の直径及び、本発明のミキサーのステーター22の直径はいずれも197mmである。以下の表9に示した配合のバター乳化液を用いて試験を行った。
【表9】
【0175】
試験結果は表10、表11及び、
図20〜
図25の通りであった。
図20より、本発明のミキサーによれば従来機よりも半分の時間で同等の微粒化傾向になることを確認できた。また、
図21より、本発明のミキサーによれば従来機よりも液滴径のばらつきが少ないこと、
図24(c)より、本発明のミキサーによれば、従来のミキサーに比較して、ローターの回転が乳化動力に寄与していることを確認できた。
【表10】
【表11】
【0176】
図25は、エネルギー消散率を数値解析した推定結果を表すものである。本発明のミキサーの方が、従来機よりも2倍エネルギー消散が高いこと、すなわち、本発明のミキサーの方が従来機と比較して2倍の能力があることがわかる。これより、本発明のミキサーによれば従来機よりも半分の時間で同等の微粒化効果が発揮されることが推定される。そして、
図20に示されている実際の微粒化傾向はこの数値解析結果と同様の傾向であった。