(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
[1.蓄電装置の電極用金属箔]
本発明の蓄電装置の電極用金属箔は、例えば
図1に示すように、電極用金属箔10の長手方向に沿う一方の側にタブ12を有し、このタブ12を含む全領域にわたって複数の貫通孔14が設けられ、かつ当該複数の貫通孔14によって所定のパターンPが形成されてなる。
【0015】
かかる所定のパターンが形成されていることで、製品により貫通孔からなるパターンが固有化されてしまうという問題を解消することができる。その結果、製品間で金属箔の共有化が容易となり、電極用金属箔の生産性をこれまで以上に向上させることができる。また、電解めっきによりパターンを形成する方法で電極用金属箔を作製する場合においては、めっき厚の差異が発生し難くなるため、電極用金属箔の作製過程において巻き皺の発生を防止することができる。
【0016】
1つの貫通孔の開口部の面積は、8×10
-7m
2(円相当径:φ1mm)以下であることが好ましく、2×10
-7m
2(円相当径:φ0.5mm)以下であることがより好ましく、7×10
-8m
2(円相当径:φ0.3mm)以下であることがさらに好ましい。8×10
-7m
2以下であることで、活物質合剤の塗着が容易となるためキャパシタの信頼性が向上し、かつ、キャパシタ全体の内部抵抗を小さくすることができる。
開口部の面積の下限値は、活物質合剤が充填できる大きさであればよいが、貫通孔加工作業の難易度を考慮すると、具体的には、2×10
-9m
2(円相当径:φ0.05mm)であることが好ましく、7×10
-10m
2(円相当径:φ0.03mm)であることがより好ましい。
【0017】
また、貫通孔の開口部の形状としては、三角形状、四角形状といった多角形状、星形、台形といった任意の形状、円形状、楕円形状等が挙げられ、これら2以上が混在していてもよい。
【0018】
本発明の蓄電装置の電極用金属箔の開口率は、5%〜55%であることが好ましく、10%〜40%であることがより好ましく、10%〜25%であることがさらに好ましい。開口率が5%〜55%であることで、短い時間で、かつ、均一なプリドープを可能とすることができる。
【0019】
ここで上記開口率は、
図2に示すように、所定のパターンを構成する1つの単位に対する貫通孔の開口部面積から求めることができる。開口率の計算は、所定パターンのうちその規準となるパターンによって異なる。そこで、本発明においては、
図2に示すように三角形ABCの面積及び三角形ABCに形成されている孔の面積の合計から開口率を求める。
【0020】
本発明の蓄電装置の電極用金属箔の厚さは35μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましく、15μm以下であることがさらに好ましい。厚さが35μm以下であることで、キャパシタの容量を保ち、かつ、電極の強度を保持することができる。また、厚さの下限値は10μmであることが好ましく、8μmであることがより好ましく、6μmであることがさらに好ましい。
【0021】
また、本発明の蓄電装置の電極用金属箔は、電極としての用途を考慮して、負極には、銅、ニッケル、銅合金及びニッケル合金からなる群から選択される金属又は合金、正極にはアルミニウム及びアルミニウム合金からなる群から選択される金属又は合金からなることが好ましい。
【0022】
[2.蓄電装置の電極用金属箔の製造方法]
本発明の蓄電装置の電極用金属箔の製造方法は、(1)開口方向に向かって幅広な複数の凹部又は貫通部が形成され、かつ当該複数の凹部又は貫通部により所定パターンが形成されてなる絶縁層を導電性基材上に有するめっき用導電性基材の絶縁層側に、めっきにより金属膜を形成する金属膜形成工程、(2)めっき用導電性基材から金属膜を剥離して金属箔を得る金属箔作製工程、(3)金属箔の長手方向に沿う一方の側にタブを形成するタブ形成工程を含む。以下、各工程について詳細に説明する。
【0023】
(1)金属膜形成工程:
金属膜形成工程においては、所定の絶縁層を導電性基材上に有するめっき用導電性基材を用いて、めっきにより金属膜を形成する。
図3に、当該めっき用導電性基材の一例を部分斜視図として示す。また、
図4に、
図3のA−A断面である断面図を示す。
図4(a)は凸部の側面が平面的であるが、
図4(b)は凸部の側面になだらかな凹凸がある場合を示す。
【0024】
めっき用導電性基材31は、導電性基材32の上に絶縁層33が形成されており、絶縁層33は末広がり(すなわち、凹部34が開口方向に向かって幅広)の形態となっている。絶縁層33に形成されている凹部34の底部には導電性基材32が露出している。
なお、導電性基材32は、導電性基材に導通している導体層を上部に有する構成であってもよい。また、絶縁層33及び凹部34の一方は、目的に応じて所望のパターンが形成され、他方は、これに対応したパターンが形成される。
【0025】
ここで、
図4に示す凹部34の側面(絶縁層33の側面)の勾配αは、角度で30°以上90°未満が好ましく、30°以上60°以下が特に好ましい。この角度が小さいと作製が困難となる傾向があり、大きいと凸部にめっきにより形成した金属層(電極用金属箔)を剥離する際の抵抗が大きくなる傾向がある。
【0026】
また、
図3に示すような絶縁層33は、その底面(導電性基材との接触面)の面積が1〜1×10
6μm
2であることが好ましく、絶縁層33の間隔(凸部と凸部の最短距離)が1〜1000μmであることが好ましい。また、絶縁層33は、底面の面積が1×10
2〜1×10
4μm
2であることがより好ましく、絶縁層の間隔が10〜100μmであることがより好ましい。
【0027】
さらに、絶縁層33の厚さは0.1μm以上100μm以下の範囲であることが好ましい。絶縁層が厚すぎると、絶縁層を形成する時間が長くなり、作業効率が低下しやすくなる。また、絶縁層が薄すぎると絶縁層にピンホールが発生しやすくなるため、めっきした際に、絶縁層を施した部分にも金属が析出しやすくなる。絶縁層の厚さは、1μm以上5μm以下であることがより好ましい。
【0028】
めっき用導電性基材の形状としては、シート形状、プレート形状、ロール形状、フープ形状等が挙げられる。ロール形状の場合は、ロール形状それ自体、及びシート形状、やプレート形状のものが導電性のロール(回転体)に巻きつけられてなる形態であることが好ましい。
フープ形状の場合は、フープの内側の2箇所から数箇所にロールを設置し、そのロールにフープ形状の導電性基材を通すような形態等が考えられる。ロール形状、フープ形状ともに金属箔を連続的に生産することが可能であるため、シート形状及びプレート形状に比較すると、生産効率が高く好ましい。
なお、上記めっき用導電性基材の絶縁層は電極用金属箔の貫通孔からなるパターンに対応するものである。
【0029】
導電性基材に用いられる導電性材料は、導電性基材の表面に電解めっきで導電層を形成させるために十分な導電性を有するものであり、金属であることが好ましい。このような導電性基材の材料としては、ステンレス鋼やクロムめっきされた鋼といった鋼、チタン、銅、クロムめっきされた鋳鉄、チタンをライニングした材料、ニッケル等の材料からなることがより好ましく、少なくとも表面が鋼又はチタンであることがさらに好ましい。
【0030】
本発明で用いられる絶縁層の材料として、ダイヤモンドに類似したカーボン、いわゆるダイヤモンドライクカーボン(以下、「DLC」という)又は無機材料のうち、絶縁性を有するものにて形成させることができる。DLCは、耐薬品性にも優れているため、特に好ましい。
【0031】
絶縁層としてのDLC薄膜を形成する方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、アーク放電法、イオン化蒸着法等の物理気相成長法、プラズマCVD法等の化学気相成長法等のドライコーティング法を採用し得るが、成膜温度が室温から制御できる高周波やパルス放電を利用するプラズマCVD法が特に好ましい。
【0032】
絶縁層を無機材料(好ましくは、Al
2O
3やSiO
2)で形成する場合にも、スパッタリング法、イオンプレーティング法といった物理的気相成長法やプラズマCVDといった化学気相成長法を用いることができる。
例えばスパッタリング法で形成する場合には、ターゲットをSiまたはAlにして反応性ガスとして酸素、窒素等を導入することでSiO
2、Si
3N
4等の酸化物、窒化物を成膜することができる。また、イオンプレーティング法を用いる場合にはSiやAlを原料とし、電子ビームをこれらに照射することで蒸発させ、基板に成膜することができる。その際に、酸素、窒素、アセチレンといった反応性ガスを導入することで酸化物、窒化物、炭化物を成膜することができる。
【0033】
CVD法で成膜する場合には金属塩化物、金属水素化物、有機金属化合物等のような化合物ガスを原料とし、それらの化学反応を利用して成膜することでできる。酸化シリコンのCVDは、例えばTEOS、オゾンを用いたプラズマCVDで行うことができる。窒化シリコンのCVDは、例えばアンモニアとシランを用いたプラズマCVDで行うことができる。
【0034】
めっき用導電性基材は、例えば、導電性基材の表面に所定のパターンが描かれるように絶縁層を形成する工程を経て製造される。
この工程は、(A)導電性基材の表面に除去可能な凸状パターンを形成する工程、(B)除去可能な凸状パターンが形成されている導電性基材の表面に絶縁層を形成する工程、及び(C)絶縁層が付着している凸状パターンを除去する工程、を含む。
【0035】
上記(A)導電性基材の表面に、除去可能な凸状パターンを形成する工程は、フォトリソグラフ法を利用して、レジストパターンを形成する方法を利用することができる。
この方法は、
(a−1)導電性基材の上に感光性レジスト層を形成する工程、
(a−2)感光性レジスト層をパターン化金属箔の形状に対応したマスクを通して、あるいはパターン化金属箔の形状に対応したデータに基づき直接露光する工程、及び
(a−3)露光後の感光性レジスト層を現像する工程、
を含む。以下、図面を参照して詳細に説明する。
【0036】
まず、
図5(a)に示すように、導電性基材32の上に感光性レジスト層(感光性樹脂層)35を形成する。この積層物の感光性レジスト層(感光性樹脂層)35に対し、フォトリソグラフ法を適用して感光性レジスト層35をパターン化する(
図5(b))。パターン化(凸状パターンの形成)は、例えばパターンが形成されたフォトマスクを感光性レジスト層35の上に載置し、露光した後、現像して感光性レジスト層35の不要部を除去して突起部36を残すことにより行われる。突起部36の形状とそれからなる凸状パターンは、導電性基材32上の凹部34とそのパターンに対応するよう考慮される。
【0037】
ついで、突起部36からなる凸状パターンを有する導電性基材32の表面に絶縁層37を形成する(
図5(c))。絶縁層の形成方法は前記したとおりである。
さらに、絶縁層37が形成されている状態で、突起部36を除去する(
図5(d))。
絶縁層の付着しているレジスト(突起部36)の除去には、市販のレジスト剥離液や無機、有機アルカリ、有機溶剤等を用いることができる。また、パターンを形成するのに使用したレジストに対応する専用の剥離液があれば、それを用いることもできる。剥離液としては、例えば、3質量%NaOH溶液を用い、剥離法としてシャワーや浸漬が適用できる。
また、絶縁層の耐熱性が十分高い場合には高温で焼成してレジストを炭化させて除去したり、レーザーを照射して焼き飛ばしたりといった方法も利用できる。
【0038】
導電性基材と絶縁層との間には、Ti、Cr、W、Si又はこれらいずれかの窒化物若しくは炭化物のいずれか1以上を含む中間層が形成されてなることが好ましい。
図6は、当該中間層を有するめっき用導電性基材の製造プロセスを示す工程断面図である。当該プロセスは、突起部36からなる凸状パターンが形成された導電性基材32の表面に、絶縁層37を形成する前に、中間層38を形成する(
図6(c′))以外は
図5の場合と同様である。
【0039】
中間層38を形成した場合、得られるめっき用導電性基材は、導電性基材32が露出しており、それ以外では、中間層38の上に絶縁層37が形成される(
図6(d′))。また、中間層は、凸状パターンの形成前に、導電性基材32の表面に形成してもよい。その後、その表面に、前記したように導電性基材32の表面に幾何学図形が描かれるように絶縁層を形成する工程を行ってもよい。この場合、中間層として、電解めっきが十分可能な程度に導電性のものを使用した場合、導電性基材32の表面はその中間層のままでよいが、十分な導電性を有していない場合は、ドライエッチング等の方法により、導電性基材32の表面の中間層を除去し、導電性基材32を露出させる。
【0040】
めっき導電性基材において、表面に形成されている絶縁層が末広がりな凸形状であるが、これは、導電性基材の表面に除去可能な凸状パターンを形成し、絶縁層を形成後に、絶縁層が付着している凸状パターンを除去することにより作製することができるため、その製造が容易で生産性に優れる。同様の理由で、この製造方法によれば工程数が少なく、特に、絶縁層が末広がりな凸形状を容易に作製することができるため、それを生産効率よく製造できる。
【0041】
本発明の電極用金属箔の製造方法においては、上記のような絶縁層を導電性基材上に有するめっき用導電性基材の絶縁層側にめっきにより金属膜を形成するが、めっき法は公知の方法を採用することができる。すなわち、めっき法としては、電解めっき法、無電解めっき法、その他のめっき法を適用することができる。
【0042】
(2)金属箔作製工程:
上記のめっき用導電性基材を用いてめっきした後、その基材上に形成されたパターン化金属箔を剥離することにより、パターン化金属箔(本発明の電極用金属箔)が得られる。この場合、剥離用基材として、別の基材に粘着剤層が積層されているものを使用し、パターン化金属箔が形成されているめっき用導電性基材の金属箔面に粘着剤を向けて、剥離用基材を圧着後、剥離し、パターン化金属箔を剥離用基材に転写してめっき用導電性基材からパターン化金属箔を剥離することもできる。パターン化金属箔は適宜、この剥離用基材から剥離して取得される。
【0043】
なお、本発明で用いられる導電性基材として、回転体(ロール)を用いることができることは既述の通りであるが、さらにこの詳細を説明する。回転体(ロール)は金属製が好ましい。さらに、回転体としてはドラム式電解析出法に用いるドラム電極等を用いることが好ましい。ドラム電極の表面を形成する物質としては上述のようにステンレス鋼、クロムめっきされた鋳鉄、クロムめっきされた鋼、チタン、チタンをライニングした材料等のめっき付着性が比較的低い材料を用いることが好ましい。導電性基材として回転体を用いることにより連続的に作製して巻物として導体層パターン付き基材を得ることが可能となるため、この場合、生産性が飛躍的に大きくなる。
【0044】
回転体を用いて、電解めっきにより形成されたパターン化金属箔を連続的に剥離しながら、構造体を巻物として得る工程を、
図7を用いて説明する。
図7は、導電性基材としてドラム電極を用いた場合に、ドラム電極を回転させつつ、金属を電解めっきにより連続的に析出させ、また、析出した金属を連続的に剥離する装置の概念を示す断面図(一部正面図)である。
【0045】
すなわち、電解浴100内の電解液101が陽極102とドラム電極等の回転体103の間のスペースに配管104とポンプ105により供給されるようになっている。陽極102と回転体103の間に電流をかけ、回転体103を一定速度で回転させると、回転体103の表面に金属が電解析出し、電解液101の外で、回転体103表面の導電性の凹部に析出した金属106に、粘着層を形成した剥離用フィルム107の粘着層を圧着ロール108で圧着し、連続的に回転体103から金属106を剥離しつつ表面に粘着層が形成されている剥離用フィルム107にその金属106を転写し、金属106が転写された剥離フィルム109とする。これはロール(図示せず)に巻き取ることができる。なお、剥離用フィルム107及び圧着ロール108を使用せず、金属106を回転体103から剥離するようにしてもよい。
【0046】
なお、上記の回転体103の表面には、絶縁層が形成されており、これに対応しためっき部である凹部が存在する。また、回転中の回転体103から、凹部に析出した金属106が剥離させられた後で、電解液101に浸かる前に、回転体103表面をエッチング洗浄したり(図示せず)してもよい。また、図示していないが陽極102の上端には高速で循環している電解液が上方へ噴出するのを防ぐために水切りロールを設置してもよく、水切りロールによってせき止められた電解液は陽極102の外部から下の電解液の浴槽へと戻り、ポンプにより循環される。さらに、図示しないがこの循環の間に消費された銅イオン源や添加剤等を必要に応じて追加する態様を加えることが好ましい。
【0047】
本発明で用いられる導電性基材として、フープ状の導電性基材を用いることができることは前記したが、さらに、この詳細を説明する。
フープ状の導電性基材に関しては、帯状の導電性基材の表面に絶縁層と凹部を形成した後、端部をつなぎ合わせる等して作製できる。導電性基材の表面を形成する物質としては上述のようにステンレス鋼、クロムめっきされた鋳鉄、クロムめっきされた鋼、チタン、チタンをライニングした材料等のめっき付着性が比較的小さい材料を用いることが好ましい。フープ状の導電性基材を用いた場合には、黒化処理、防錆処理、転写等の工程を、1つの連続した工程で処理可能となるため、パターン化金属箔の生産性が高く、また、パターン化金属箔を連続的に作製して巻物として製品とすることができる。フープ状の導電性基材の厚さは適宜決定すればよいが、100〜1000μmであることが好ましい。
【0048】
また、本発明におけるパターン化金属箔は、上記のような回転ロールやフープを利用した連続的なめっき方法に限らず枚葉で作製することも可能である。枚葉で行った場合、めっき用導電性基材の作製時の取扱が容易であり、同一のめっき用導電性基材を繰り返し使用した後に一箇所だけ絶縁層が剥離した、といった場合でもドラム状やフープ状の基材であると特定部分だけの抜き取りあるいは交換は困難であるが、枚葉であれば不良が発生しためっき用導電性基材のみを抜き取りあるいは交換することが可能である。このように枚葉で作製することにより、めっき用導電性基材に不具合が発生したときの対応が容易である。枚葉状の導電性基材の厚みは適宜決定すればよいが、めっき槽内で液の攪拌等に左右されない十分な強度を持たせることを考慮すると厚みは20μm以上が好ましい。厚すぎると重量が増え取扱が困難であるため10cm以下の厚みであることが好ましい。
【0049】
(3)タブ形成工程:
タブ形成工程では、金属箔の長手方向に沿う一方の側にタブが形成されるように一部を裁断したり、加工したりする工程である。裁断する手段としては公知の裁断機を使用すればよい。また、裁断は金属箔の状態で行なってもよいが、蓄電装置用の電極を作製する工程中で行なってもよい。
【0050】
なお、本実施形態では、上記のようなパターンめっき転写法による電極用金属箔の製造方法について述べたが、孔によるパターンの形成を従来方式のエッチング法で形成する場合も、製品間で金属箔の共有化が図れ、金属箔の生産性を向上することができる。
【0051】
[3.蓄電装置]
本発明の蓄電装置は、正極及び/又は負極を構成する電極構成体が、既述の本発明の蓄電装置の電極用金属箔から作製されてなる。蓄電装置としては、特にリチウムイオンキャパシタであることが好ましい。
以下、図面を参照して、本発明に係るリチウムイオンキャパシタの一実施形態について説明する。
【0052】
図8に示すように、本実施形態のリチウムイオンキャパシタ230(以下、キャパシタ230と略称する)は、本発明の蓄電装置の電極用金属箔から作製されてなる電極構成体を正極及び/又は負極として有している。容器208内には、中空円筒状で縦方向にポリプロピレン製軸芯201に帯状の正極構成体及び負極構成体がセパレータを介して配置された電極群207が収容されている。なお、本例では、容器208の外径は40mm、内径は39mmである。
【0053】
正極となる電極構成体及び負極となる電極構成体のいずれかを、本発明の蓄電装置の電極用金属箔から作製する場合、例えば、負極となる電極構成体の場合は、厚さ20μmの電極用金属箔の電極部(タブを除く部分)の両面に、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な負極活物質合剤を塗着する。片面塗工厚は例えば、20μm(両面で40μm)、負極活物質合剤のかさ密度は1.0g/cm
3とする。
なおこの場合、正極となる電極構成体は、例えば、厚さ20μmのアルミニウム箔(正極集電体)の両面に、正極活物質として活性炭を含む正極活物質合剤が塗着されたものが使用される。
【0054】
図8に示すように、正極板202と負極板203とは、両極板が直接接触しないように、例えば、厚さ50μmの2枚の紙セパレータ204を介して、軸芯201を中心として断面渦巻き状に捲回され、電極群207が構成されている。電極構成体のタブ(正極リード片202aと負極リード片203a)とは、それぞれ電極群207の互いに反対側に配置されており、セパレータ204の端から所定長さ(例えば、4mm)はみ出している。電極群207は、正極板202、負極板203、セパレータ204等の長さを調整することで、所定の内直径(例えば、9mm)および所定の外直径(例えば、38±0.1mm)に設定されている。
なお、電極群207の捲回終端部は、巻き解けを防止するために、粘着テープを貼り付けることで固定されている。
【0055】
電極群207の下側には、電極群207の下端側端面に対向するように、負極板203からの電位を集電するための銅製の負極集電リング206が配置されている。負極集電リング206の内周面には軸芯201の下端部外周面が嵌着されている。負極集電リング206の外周縁には、負極板203から導出された負極リード片203aの先端部が超音波溶接で接合されている。負極集電リング206の下部には電気的導通のための銅製の負極リード板209が配置されており、負極リード板209は負極外部端子を兼ねる容器208の内底部に抵抗溶接で接合されている。負極集電リング206および負極リード板209はエポキシ樹脂等の樹脂製絶縁材211で覆われ、絶縁材211は負極集電リング206の上部から容器208の内底面まで配されている構成を採用することができる。この場合、容器208の底部は絶縁材211により詰め物がなされた状態となっている。
【0056】
一方、電極群207の上側には、電極群207の上端面と対向するように、軸芯201のほぼ延長線上に正極板202からの電位を集電するためのアルミニウム製の正極集電リング205が配置されている。正極集電リング205は軸芯201の上端部に嵌着されている。正極集電リング205の周囲から一体に張り出している鍔部周縁には、正極板202から導出された正極リード片202aの先端部が超音波溶接で接合されている。
【0057】
正極集電リング205の上方には、正極外部端子を兼ねる容器蓋212が配置されている。容器蓋212は、下側に配置された蓋ケース212aと、上側に配置された蓋キャップ212bとで構成されており、これらが積層されて蓋ケース212aの周縁を蓋キャップ212bにかしめることで組み立てられている。なお、蓋ケース212aには、内圧上昇により開裂する開裂溝が形成されている。正極集電リング205の上面には、リボン状のアルミニウム箔を積層した2本の正極リード板210のうち1本の一側が接合されている。正極リード板210のもう1本の一側は、容器蓋212を構成する蓋ケース212aの外底面に接合されている。また、2本の正極リード板210の他端同士も接合されている。
【0058】
容器蓋212は、絶縁性および耐熱性を有する樹脂製ガスケット213を介して容器208の上部にかしめられている。このため、キャパシタ230の内部は密封されている。また、容器208内には、電極群207全体を浸潤可能な量の非水電解液(不図示)が注液されている。非水電解液には、例えば、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とジエチルカーボネート(DEC)とを体積比30:50:20の割合で混合した溶媒中にリチウム塩として6フッ化リン酸リチウム(LiPF
6)を1モル/リットル溶解したものが用いることができる。なお、本例のキャパシタ230の定格容量は700Fである。
【0059】
さらに、本実施形態では、捲回式のリチウムイオンキャパシタを例示したが、本発明は積層式のリチウムインオキャパシタにも適用可能である。また、本実施形態では、電極群207の中心に軸芯201を配置した例を示したが、本発明はこれに限らず、軸芯のない電極群を用いたリチウムイオンキャパシタにも適用可能である。
【0060】
本実施形態では、両面に活物質合剤が塗着された極板を例示したが、本発明はこれに限ることなく、片面のみに活物質合剤が塗着された極板にも適用が可能である。
なお、本実施形態では、特にリチウムイオンキャパシタについて記述したが、穴明き銅箔を適用するリチウムイオン電池等の蓄電装置についても同様に適用できる。
【実施例】
【0061】
(実施例1)
(円形配置パターンの形成)
液状レジスト(ZPN−2000、日本ゼオン株式会社製)を直径350mm、長さ350mmのステンレス(SUS316L)製めっき用ドラムの表面に均一に塗布し、110℃で1分間プリベークした後、厚み6μmのレジスト膜を得た。
【0062】
次いで、光不透過部である円形部の直径がφ216μm、この円形部のピッチが425μm、この円形部の配置が正三角形(
図2の三角形ABC)の格子状で全面的に形成されている幅300mmのネガフィルムを、めっき用ドラムの表面に一周巻き付け、ネガフィルムの端部間の隙間が1mm以内となる様に透明粘着テープで固定した。次いでネガフィルムを固定したドラムを20回転/分で回転しながらドラム表面全面に均一に当たる様、紫外線を200mJ/cm
2照射した。次いで115℃で1分間加熱した後、2.38%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)で現像することで、ドラム上に直径約φ216μmの円形部(深さ6μm)、円形部ピッチが425μmで正三角形の格子状に配列されたレジスト膜の円形配置パターンを形成した。これらは、レーザ顕微鏡により実測した。測定点は5点以上とした。
【0063】
(絶縁層の形成)
PBII/D装置(TypeIII、株式会社栗田製作所製)を用いてDLC膜を形成した。すなわち、チャンバー内にレジスト膜が付いたままのドラムを入れ、チャンバー内を真空状態にした後、アルゴンガスで基板表面のクリーニングを行った。
【0064】
次いで、チャンバー内にヘキサメチルジシロキサンを導入し、膜厚0.1μmとなるように中間層を成膜した。次いで、トルエン、メタン、アセチレンガスを導入し、膜厚が5〜6μmとなるように、中間層の上にDLC層を形成した(
図5(c)に対応する)。そのときレジスト膜により形成されたレジストパターンの両側面のDLC膜の厚さは、4〜6μmであった。レジストパターンの側面とドラム面に形成されたDLC膜(絶縁層)の境界面の角度は45〜51度であった。
なお、絶縁層の厚さ及び境界面の角度の測定はレーザ顕微鏡により実測した。測定点は5点で、レジスト膜の両側を測定したので計10点の最大値と最小値を採用した。
【0065】
(絶縁層の付着したレジストパターンの除去と絶縁層パターン形成)
絶縁層が付着したドラムを水酸化ナトリウム水溶液(10%、50℃)に浸漬し、ゆっくりと回転させながら8時間放置すると、レジスト膜とそれに付着したDLC膜が剥離された。一部剥がれにくい部分があったため、布で軽くこすることにより全面剥離し、絶縁層パターンが形成されためっき用ドラムを得た(
図5(d)に対応する)。
前記のレーザ顕微鏡で観察したところ、このめっき用ドラムの絶縁層の形状は、底部に向かって末広がりの凸状であり、その凸部絶縁層の側面の傾斜角は、前記境界面の角度と同様であった。絶縁層の高さは5〜6μmであった。絶縁層の底面の直径はφ216μm、絶縁層上面の直径はは約φ206μmであり、絶縁層のピッチは425μmであった。これらの数値は、レーザ顕微鏡にて少なくと5点以上を観測することにより求めた。
【0066】
(銅めっき)
めっき用ドラムを陰極として、また、チタン製電極を陽極として電解銅めっき用の電解浴(硫酸銅(5水塩)250g/L、硫酸70g/L、キューブライトAR(荏原ユージライト株式会社製、添加剤)4ml/Lの水溶液、30℃)中にドラムを浸し、ドラムの周速を0.1m/分となる様に回転させながら両極に電流をかけて電流密度を10A/dm
2として、ドラム1回転でドラムの表面に析出した銅箔の厚さがほぼ16μmになる様めっきした。その結果、銅箔はドラム表面の露出面及び絶縁層の端部を覆うように形成された。
【0067】
(剥離)
電解銅めっき用電解浴の濃度を保つ様に、適宜、硫酸銅、硫酸、キューブライトARを補充し、めっき用ドラムを回転させながら連続的にドラム上に形成された銅箔を剥離した。これにより、直径φ200μmの貫通孔がピッチ425μmで正三角形の格子状に配置されているパターンを全面的に有する幅300mmのロール状電極用金属箔が得られた。これを長さ100m作製した。
これらの数値は、光学顕微鏡にて少なくとも5点以上を観測することにより求めた。このパターンが施された電極用金属箔の形状は、絶縁層の形状を反映していた。また、正三角形格子1単位から求めた開口率は、20.1%であった。
このとき、得られた貫通孔を全面的に有する銅箔厚のバラツキは、めっき厚16μmに対し±0.2μmであった。また、銅箔の作製時に銅箔を巻き取る際に巻き皺が発生することはなかった。
次に、得られた銅箔を全長7mの防錆処理ラインにより搬送速度2m/分で防錆処理を施したが、特に巻き皺が発生することはなかった。
【0068】
次いで、得られた負極となる銅箔のタブ幅30mmと集電体部分幅100mm、合計130mmを2セットとし、集電体部分幅100mm2列に負極活物質を塗工装置により塗布し、連続して乾燥機により乾燥した。
【0069】
次に乾燥した電極を、ロール状カッターにより活物質合剤が塗工されていない金属箔部分を切り欠くことにより、所定間隔でタブを形成し、必要幅130mmに分離した。
【0070】
次に、正極となる厚さ20μmのアルミニウム箔を準備し、公知のエッチング工法により全面的に貫通孔を形成して負極銅箔と同様にタブ幅30mmを除く集電体部分幅100mm、合計130mmを2セットとし、集電体部分幅100mm2列に正極活物質を塗工装置により塗布後乾燥し、連続して乾燥機により乾燥した。
【0071】
次に乾燥した電極を、ロール状カッターにより活物質合剤が塗工されていない金属箔部分を切り欠くことにより、所定間隔でタブを形成し、必要幅130mmに分離した。
【0072】
次いで、公知の工程により、負極、正極金属箔をセパレータを介して捲回し、組立を経てリチウムイオンキャパシタを作製した。
【0073】
本実施例では、捲回式のリチウムイオンキャパシタを例示したが、積層式のリチウムイオンキャパシタにおいても適用が可能である。積層式においては、電極群は正負極板がセパレータを介して積層される。
【0074】
(実施例2)
次に、実施例1においてネガフィルムの光不透過部である円形部の直径がφ316μm、この円形部のピッチを550μmとした以外は同じとして電極用金属箔を作製したところ、開口率は27.0%であった。
このとき、得られた貫通孔を全面的に有する銅箔厚のバラツキは、めっき厚16μmに対し±0.3μmであった。また、銅箔の作製時に銅箔を巻き取る際に巻き皺が発生することはなかった。
【0075】
次に、得られた銅箔を全長7mの防錆処理ラインにより搬送速度2m/分で防錆処理を施したが、特に巻き皺が発生することはなかった。
【0076】
次いで、得られた負極となる銅箔のタブ幅30mmと集電体部分幅200mm、合計230mmとし、集電体部分幅200mmに負極活物質を塗工装置により塗布し、連続して乾燥機により乾燥した。
【0077】
次に乾燥した電極を、ロール状カッターにより活物質合剤が塗工されていない金属箔部分を切り欠くことにより、所定間隔でタブを形成し、必要幅230mmに切断した。
【0078】
次に、正極となる厚さ20μmのアルミニウム箔を準備し、公知のエッチング工法により全面的に貫通孔を形成して負極銅箔と同様にタブ幅30mmを除く集電体部分幅200mm、合計230mmとし、集電体部分幅200mmに正極活物質を塗工装置により塗布後乾燥し、連続して乾燥機により乾燥した。
【0079】
次に乾燥した電極を、ロール状カッターにより活物質合剤が塗工されていない金属箔部分を切り欠くことにより、所定間隔でタブを形成し、必要幅230mmに切断した。
【0080】
次いで、公知の工程により、負極、正極金属箔をセパレータを介して捲回し、組立を経てリチウムイオンキャパシタを作製した。
【0081】
(実施例3)
次に、実施例1においてネガフィルムの光不透過部である円形部の直径がφ116μm、この円形部のピッチを250μmとした以外は同じとして電極用金属箔を作製したところ、開口率は14.5%であった。
このとき、得られた貫通孔を全面的に有する銅箔厚のバラツキは、めっき厚16μmに対し±0.2μmであった。また、銅箔の作製時に銅箔を巻き取る際に巻き皺が発生することはなかった。
【0082】
次に、得られた銅箔を全長7mの防錆処理ラインにより搬送速度2m/分で防錆処理を施したが、特に巻き皺が発生することはなかった。
【0083】
次いで、得られた負極となる銅箔のタブ幅30mmと集電体部分幅100mm、合計130mmを2セットとし、集電体部分幅100mm2列に負極活物質を塗工装置により塗布し、連続して乾燥機により乾燥した。
【0084】
次に乾燥した電極を、ロール状カッターにより活物質合剤が塗工されていない金属箔部分を切り欠くことにより、所定間隔でタブを形成し、必要幅130mmに分離した。
【0085】
次に、正極となる厚さ20μmのアルミニウム箔を準備し、公知のエッチング工法により全面的に貫通孔を形成して負極銅箔と同様にタブ幅30mmを除く集電体部分幅100mm、合計130mmを2セットとし、集電体部分幅100mm2列に正極活物質を塗工装置により塗布後乾燥し、連続して乾燥機により乾燥した。
【0086】
次に乾燥した電極を、ロール状カッターにより活物質合剤が塗工されていない金属箔部分を切り欠くことにより、所定間隔でタブを形成し、必要幅130mmに分離した。
【0087】
次いで、公知の工程により、負極、正極金属箔をセパレータを介して捲回し、組立を経てリチウムイオンキャパシタを作製した。
【0088】
本実施例では、本発明によるパターンめっき転写法により幅300mmの全面に貫通孔を明けた孔明き銅箔を形成し、同一の銅箔で電極構成体の幅130mm2列の場合と幅230mmの電極構成体を形成することができた。
【0089】
この様に、タブ部分も貫通孔を設けることにより、製品によりパターンが固有化されることがなくなり、製品間で金属箔の共有化が図れ、電極用金属箔の生産性を向上することができた。
本実施例によればタブに従来なかった貫通孔が明くことになるが、タブの形成においても特に問題は発生しなかった。
また、本実施例では、パターンめっき転写法による電極構成体の形成について述べたが、孔の形成を従来方式のエッチング法で形成する場合も、全面に貫通孔を明けた孔明き銅箔を形成することにより、製品間で金属箔の共有化が図れ、金属箔の生産性を向上することができる。
【0090】
さらに、電解めっきによる方法で電極用金属箔を形成する場合においては、電極用金属箔の全面に貫通孔を有しているため電極用金属箔が析出する部位の面積が同一となり、めっき厚16μmに対しめっき厚のバラツキが±0.2〜0.3μmと小さく、電極用金属箔の作製並びに防錆処理時等の銅箔の巻取りにおいて巻き皺が発生する問題を防止することができた。
【0091】
(比較例)
比較例として、タブに貫通孔を設けなかった以外は実施例1と同様にして電極用金属箔を作製した。開口率は20.1%であった。
その結果、タブ部分のめっき厚が13μmとなり、貫通孔のある部分の16μmに対し3μm薄くなり、銅箔の作製時に銅箔を巻き取る際に巻き皺が発生した。
次に、得られた銅箔を全長7mの防錆処理ラインにより搬送速度2m/分で防錆処理を施したが、この銅箔厚さの差が原因となって銅箔の巻き取り時に巻き皺が発生した。
【0092】
以上、本実施例では金属箔に金属として銅を例示したが、本発明はこれに限ることなく、コスト等を考慮し、例えば、銅合金、ニッケル、ニッケル合金を用いるようにしてもよい。