(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願発明が対象とする被検査物の対象部は、金属材料により形成されており、酸化被膜が形成されることになる。このため、被検査物の検査を実施する場合には、接触子がこの酸化被膜を突き抜け又は破って、対象部と直接的に当接しなければならないことになる。
このようなことから、この酸化被膜を破るために接触子の加重を大きくする方法を例示することができるが、検査用治具にはこの接触子が数千〜数万本も備えられるため、接触子一本の加重を大きくすると、接触子を保持する保持体に極めて大きな加重が負荷されることになる。このように加重が大きくなると、保持体に大きな影響を与え、保持体が破損してしまう問題を有していた。
このような問題点から、接触子の有する加重を大きくすることなく、酸化被膜を破って対象部に当接することのできる接触子やその検査用治具の提案が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、被検査物の対象部の電気的特性を検査するための検査装置用の検査用治具に取り付けられる接触子であって、前記検査装置と電気的に接続される電極部と端面が導通接触する後端部と、先端部と、前記後端部と
前記先端部との間に形成された長軸方向の螺旋状のばね部とからなる円筒部と、前記円筒部内に配置されている棒状部であって、先端が前記円筒部の前記先端部から延出していて前記対象部に当接し、後端が前記円筒部の
前記後端部内に配置されている棒状部とを有し、前記円筒部の前記先端部に、前記円筒部と前記棒状部とを接合して電気的に導通させる接合部を有し、前記円筒部の前記後端部内に、前記棒状部を前記円筒部の円周方向に回転駆動させるための回動部を有し、前記回動部は、前記円筒部の前記後端部内に、前記棒状部の後端部から延設される凸形状の雄型部と、前記雄型
部と嵌合す
る凹形状の雌型部とを備え、前記雄型部は、先鋭となる二つの傾斜面により形成され、前記雌型部は、前記二つの傾斜面と係合する傾斜面を有し、前記雄型部の二つの傾斜面により形成される頂部と、前記雌型部の二つの傾斜面により形成される谷部は、非使用時の平面視において、重なり合わない位置関係にあり、検査時に、前記頂部と前記谷部との間に隙間があることを特徴とする接触子を提供する。
請求項2記載の発明は、前記回動部は、前記ばね部の収縮量に応じて、前記円周方向の駆動量が調整されていることを特徴とする請求項1記載の接触子を提供する。
請求項3記載の発明は、被検査物の対象部の電気的特性を検査するための検査装置用の検査用治具であって、請求項1の接触子と、該接触子を前記検査装置に電気的に接続するための電極部と、前記接触子の前記先端部を前記被検査物の前記対象部上の所定の検査点へ案内するためのヘッド部と、前記接触子の前記後端部を前記電極部へ案内するためのベース部とを備え、前記ヘッド部が、前記接触子の前記先端部を係止する係止部と、該先端部から突出する前記棒状部を前記所定の検査点へ案内するための貫通孔とを備える、検査用治具を提供する。
【発明の効果】
【0009】
請求項1又は
3記載の発明によれば、接触子の円筒部が回動部を有しており、接触子の棒状部を該円筒部の円周方向に回動させることができる。このため、対象部に接触子が当接した際に、棒状部が回動することにより、対象部の酸化被膜を破り、対象部と接触子の好適な導通接触を可能に
し、ばね部の収縮量に応じて、棒状部の円周方向の駆動量が調整されることになるため、適宜な駆動量をばね部の収縮量にて調整することがで
き、凸形状の雄型部と凹形状の雌型部から形成されることにより、雄型部と雌型部の嵌合を利用して簡便に構成することがで
き、雄型部と雌型部の傾斜面を利用することにより、漸次変化させることができるとともに容易に当接させることができ
、さらに、雄型部の二つの傾斜面により形成される頂部と、雌型部の二つの傾斜面により形成される谷部が、非使用時における平面視において、重なり合わない位置関係にあるので、使用時に棒状部が回動することになる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、添付図面に基づいて、上記の基板や半導体装置の被検査物の対象部の検査用の接触子が取り付けられた検査用治具について説明を行う。なお、各添付図において、各部材の厚さ、長さ、形状、部材同士の間隔等は、理解の容易のために、拡大・縮小・変形・簡略化等を行っている。
【0012】
[検査用治具の概略の構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る検査用治具10の概略の構成を示す一部断面正面図である。検査用治具10は、ヘッド部12、ベース部14及び電極部16を備える。ヘッド部12及びベース部14は、樹脂あるいはセラミックス等の絶縁性の板状部材からなる。ヘッド部12及びベース部14は、棒状の支持部材11及びその周囲に環装されたスペーサ11sによって所定の距離だけ離隔されて保持されている。
【0013】
ヘッド部12には複数の貫通孔12hが形成されていて、それに挿入された接触子20の先端部22fが所定の位置に案内される。ベース部14には複数の貫通孔14hが形成されていて、それに挿入された接触子20の後端部22rが電極部16へ案内される。
【0014】
接触子20の後端部22rは、電極部16に固定された導線18の端部と接触しており、導線18は図示せぬ検査装置に接続されている。なお、この図示せぬ検査装置が、検査用治具10を介して、被検査物30の対象部間の電気信号を送受信することにより、対象部間の抵抗値の良否判定を行うことになる。
【0015】
図1においては、図面の簡略化のために、一部の接触子20のみを示す。また、
図1に示すように、被検査物の検査時には、検査用治具10の下方に、検査対象の被検査物30を配置し、検査用治具10を下降させて接触子20の先端部24aを所定の検査点、例えば、30d1に接触させ、それにより、対象部の電気的特性の検査を行う。
【0016】
[接触子の構造]
図2(A)から
図2(C)は、本願発明の検査用治具に用いられる接触子の一実施形態に係る概略構成図である。
図2(A)は、
図1の検査用治具に用いることができる一実施形態に係る接触子20を示す。
図2(B)は、円筒部の一実施形態を示す一部概略断面図である。
図2(C)は、棒状部の一実施形態を示す概略図である。
接触子20は、導電性の円筒部22と導電性の棒状部24とから構成されていて、棒状部24が、導電性の円筒部22内に挿通されている。
【0017】
円筒部22は、
図2Bで示される如く、円筒形状の先端部22fと、円筒形状の後端部22rと、それらの間に形成されたばね部22sとからなり、ばね部22sは円筒部22の壁面周縁に長軸方向の螺旋形状に形成される。
後端部22rは、導線18の端部と導通接触する。この後端部22rの端面と導線18の端面が当接して導通状態となる。
先端部22fは、その開口端から後述する棒状部24の一部が突出して配置される。先端部22fには、棒状部24と電気的に接続されるとともに、円筒部22と棒状部24を固着する接合部P1が形成される。
【0018】
棒状部24は、
図2Cで示される如く、円柱形状の本体部24bと先鋭形状の先端部24aとから構成されている。
棒状部24は、
図2Aで示される如く、先端部22f、ばね部22s及び後端部22r内に挿通されている。棒状部24の先端部24aは、円筒部22の先端部22fの先端面22feから突出している。一方、棒状部24の後端部側は、円筒部22の後端部22rの後端面よりも内側に引っ込んだ位置にある。その引っ込んだ位置までの距離は、棒状部24の先端部24aが押されて後退した場合に、それとともに移動する棒状部24の後端部側が、円筒部22の後端部22rの後端面から出ない程度の大きさである。
【0019】
円筒形状の先端部22fの接合部P1で示す位置において、円筒形状の先端部22fと棒状部24の本体部24bとが、詳しくは後述のとおり、抵抗溶接、レーザ溶接又はかしめによって接合されていて、互いに固定されている。そのため、円筒形状の先端部22fと円柱形状の本体部24bとは一緒に移動する。また、この接合部P1によって、円筒形状の先端部22fと棒状部24の本体部24bとが電気的に導通可能となっている。
【0020】
接合部P1は、先端部22fの先端面22feから離れた位置にある。そのような位置において接合を行ったのは、接合の際にその部分がやや変形することがあり、例えば、
図3に示すように、接触子20を検査治具に取り付けて先端部22fをヘッド部12の貫通孔12hの大径部12h1に挿入したときに、その変形が貫通孔に影響を与えないようにするためである。
【0021】
接触子20は、円筒部22の後端部22rに、棒状部24を円筒部22の円周方向に回転駆動させる回動部26を備えてなる。この回動部26は、棒状部24の先端部24aが対象部に当接し、ばね部22sが収縮される際に、棒状部24を円筒部22の円周方向に回転させる。このため、棒状部24の先端部24aも円周方向に回転されることになり、先端部24aの対象部が対象部表面を擦りながら移動することなる。このように棒状部24の先端部24aが対象部表面を擦りながら移動するため、対象部表面の酸化被膜を擦り破ることができる。
【0022】
この回動部26は、ばね部22sの収縮量に応じて、円周方向の回動量が調整される。具体的には、ばね部22sの収縮量が増加するに応じて、棒状部24の円周方向の回動量が増加するように調整される。このように調整されることにより、棒状部24が対象部に当接した後の検査用治具10の移動量(被検査物方向への押し込み量)に応じて調整することができる。
【0023】
回動部26は、具体的に、棒状部24の後端部24cに設けられる凸形状の雄型部264と、円筒部22の後端部22rに設けられる凹形状の雌型部262を形成することができる。
この雄型部264は、棒状部24の後端部24cから電極部側に延設される凸形状に形成される。雌型部262は、円筒部22の後端部22rの端部に、雄型部264の凸形状と嵌合する凹形状に形成される。このため、
図2Aで示される如く、雄型部24と雌型部262は、お互いが向き合って配置されることになり、棒状部24が対象部に当接して電極部側へ押し込み移動した際に、棒状部24の雄型部264と円筒部22の雌型部262が嵌合するように、棒状部24が回動することになる。
【0024】
雄型部264と雌型部262は、夫々凸形状と凹形状に形成できることを説明したが、次のような具体的な形状にすることができる。雄型部264は、
図2Cで示される如く、先鋭となる二つの傾斜面264a、264bにより形成される。このように形成されることにより、雄型部264が三角柱(マイナススドライバーの形状)の形状となる。また、雌型部262は、円柱又は円筒の部材に雄型部264と嵌合する形状の切欠が形成される。この雌型部262の切欠部分に雄型部264の全部又は一部が嵌合されることになる。雌型部262を円柱や円筒の一部を切欠いて形成することにより、切欠部の周縁が湾曲形状になり、雄型部264がこの雌型部262の周縁部に当接した場合に、棒状部24を回動し易く形成されることになる。
【0025】
雌型部262は、雄型部264が三角柱に形成された場合には、三角柱の二つの傾斜面264a、264bと対応して係合する傾斜面により形成される。この傾斜面は、雄型部264の先鋭状に形成される二つの傾斜面262a、262bと係合するように、漸次広がる開口となるように二つの傾斜を有するように形成されることが好ましい。
このように形成されることで、先端が三角柱状の雄型部264とこの三角柱を受け入れるv字状に雌型部262に形成されることにより、雄型部264と雌型部262がより嵌合し易くなり、棒状部24が回動し易くなる。
【0026】
雌型部264は、上記の如き傾斜面262a、262bを有して形成される。この傾斜面262a、262bの長さは特に限定されないが、雄型部262の傾斜面264a、264bの長さよりも長く形成され、検査時に収縮するばね部22sの運動を阻害しない限りにおいて、できるだけ長く形成されることが好ましい。この雌型部264の傾斜面262a、262bの長さが長く形成されればされるほど、棒状部24の回動を好適に行うことができるからである。
【0027】
雄型部264は、上記の如き三角柱状の山型に形成され、雌型部262は、三角柱と嵌合できる谷型に形成されることができるが、このように形成される場合、雄型部264の山型の山頂部264cが直線状に形成され、雌型部262の谷型部の谷底部262cが直線状に形成されることになる。このとき、接触子20が非使用時(対象部に当接していない場合)の平面視において、直線状の雄型部264の山頂部264cと、直線状の雌型部262の谷底部262cが重なり合わないように配置されることが好ましい。
このような位置となるように配置されることによって、雄型部264が雌型部262の傾斜面に当接した後、棒状部24が回動しながら雄型部264と雌型部262が嵌合するようになる。
このように、接触子20を形成する際に、雄型部264の山頂部264cと雌型部262の谷底部262cがねじれの位置に配置されることによって、好適に棒状部24が回動することができるようになる。
なお、雄型部264の山頂部264cと雌型部262の谷底部262cとは、必ず密着する必要はない。
【0028】
雄型部264を凸形状の部材、雌型部262を凹形状の部材として説明したが、お互いに嵌合することとのできる部材であれば、逆の形状であっても構わない。
【0029】
図2Bで示される円筒部22は、例えば、外径が、約25から300μmで、内径が10から250μmのニッケルあるいはニッケル合金のチューブを用いることができる。この実施形態では、一例として、外径φ1が、約150μm、内径φ2が約125μm、全長L1が約20mmのニッケルチューブを用いるが、それに限定されるものではない。円筒部22の先端部22fの端面22fe及び後端部22rの後端面を除いて周面を必要に応じて絶縁被覆してもよい。
【0030】
また、円筒形状の先端部22fの長さL2は約5mmで、ばね部22sの長さL3は約10mmで、後端部22rの長さL4は約5mmである。これらの値は一例であり、それらに限定されるものではない。
【0031】
円筒部22は、例えば、次のような製法によって製造することができる。
[製法例1]
(1)まず、円筒部22の中空部を形成するための芯線(図示せず)を用意する。なお、この芯線は、円筒部22の内径φ2を規定する所望の太さ(上記の実施形態では、直径が約125μm)のSUS線を用いる。
(2)次いで、芯線(SUS線)にフォトレジスト被膜を塗布し、この芯線の周面を覆う。そのフォトレジスト被膜の所望の部分を露光・現像・加熱処理して螺旋状のマスクを形成する。例えば、芯線を中心軸の周りに回転させながらレーザにより所定の部分を露光して螺旋状のマスクを形成する。円筒部22においては、円筒形状の先端部22fと円筒形状の後端部22rとの間の長さL3のばね部22sに対応する位置にマスクを形成する。
(3)次いで、その芯線にニッケルめっきを実施する。このとき、芯線は導電性であるため、フォトレジストマスクが形成されていない箇所にニッケルめっきが付着する。
(4)次いで、フォトレジストマスクを除去して、芯線を引き抜き、所望の長さで筒体を切断して、円筒部22を形成する。芯線を完全に引き抜く前に筒体を切断してもよいことは、いうまでもない。
【0032】
また、円筒部22は、下記の方法でも製造することもできる。
[製法例2]
(1)まず、製法例1と同様に、円筒部22の中空部を形成するための芯線(図示せず)を用意し、その芯線にニッケルを所望の厚さめっきして、芯線の周面にニッケルめっき層を形成する。
(2)次に、そのニッケルめっき層の表面にフォトレジストを塗布する。そのフォトレジストの所望の部分を露光・現像・加熱処理して螺旋状のマスクを形成する。例えば、芯線を中心軸の周りに回転させながら、レーザにより露光して螺旋状のマスクを形成する。円筒部22においては、円筒形状の先端部22fと円筒形状の後端部22rとの間の長さL3のばね部22sに対応する位置にマスクを形成する。
(3)次いで、ニッケルめっきをエッチング除去する。このとき、フォトレジストマスクが形成されていない箇所のニッケルめっきが除去される。
(4)次いで、フォトレジストマスクを除去して、芯線を引き抜き、所望の長さで筒体を切断して、円筒部22を形成する。芯線を完全に引き抜く前に筒体を切断してもよいことは、いうまでもない。
【0033】
上記の製法は例示であり、円筒部の製造方法は、それらの製法に限定されるものではない。
【0034】
図2Cは、接触子20を構成する棒状部24を示す。棒状部24として、例えば、直径φ3が、約110μmのタングステン、工具用炭素鋼(SK材)、ベリリウム銅等からなる円柱形状部材を用いることができる。その直径は、棒状部24が筒形状部22内で移動自在であるため、円筒部22の内径よりも小さい。長さは、検査用治具のヘッド部12(
図1)から先端部を突出させる長さに応じて変わるが、円筒部22とほぼ同じかそれよりも短くてよい。
【0035】
まず、接触子20の検査対象とする被検査物の対象部の所定の検査点に接触する先端部として機能する部分を残して、円筒部22内に棒状部24に挿入する。一例として、棒状部24の先端部24aを含めて約2mmから3mm程度を、円筒部22の先端部22fの先端面22feから突出させている。
【0036】
次に、円筒部22の先端部22fの先端面22feに近い位置において、円筒部22の先端部22fと棒状部24の本体部24bとを接合する。例えば、抵抗溶接により、対向する一対の電極部40によって挟み、加圧しながら短時間定電流を流して、その位置において、円筒部22の先端部22fと棒状部24の本体部24bとを溶接する。それに代えて、その位置をかしめて円筒部22の先端部22fと棒状部24の本体部24bとを接合してもよい。
【0037】
[検査用治具の概要]
図3は、検査用治具の一部の拡大断面図である。
図3に示すように、ヘッド部12の下面には板厚の薄いプレート12uが取り付けられていて、ヘッド部12には大径部12h1が形成され、プレート12uには小径部12h2が形成されている。ただし、プレート12uを用いることなく、ヘッド部12自体に大径部12h1と小径部12h2とを形成してもよい。
【0038】
大径部12h1には、接触子20の円筒部22の先端部22fが挿入されていて、その先端部22fの先端面22feが、大径部12h1から小径部12h2移る部分にある、小径部12h2を形成するプレート12uの面に当接している。小径部12h2には棒状部24が挿通され、先端部24aがヘッド部12から突出している。この場合、小径部12h2を形成するプレート12uの面は係止部を構成する。
一方、接触子20の後端部22rの後端面は、ベース部14の貫通孔14hに挿入されて導線18の端面と接触している。
【0039】
図3の状態においては、ヘッド部12の係止部を形成するプレート12uの面から電極部16の導線18の端面までの距離は、
図2Aのように負荷のかかっていない自然長の円筒部22の長さよりも小さい。そのため、
図3においては、その係止部によって円筒部22の先端部22fが押し上げられて、ばね部22sが収縮している。それにより、円筒部22の後端部22rが電極部16の導線18の端面に押し当てられている。これは、検査用治具に接触子を備えた際に、予めばね部22sを収縮させた状態に保持させることにより、電極部へ所定の圧力をかけて保持させることができる。そのため、後端部22rと導線18との接触抵抗値を低減し且つ安定して抑えることができる。
【0040】
図3の状態では、棒状部24の雄型部264は、円筒部22の雌型部262が有する斜面262a(又は262b)と当接している。この場合、雄型部264の山頂部264cと雌型部262の谷底部262cはねじれの位置にあることになる。
【0041】
図4は、
図3の検査用治具を用いて被検査物の検査を行うときの状況を説明するための検査用治具の一部の拡大断面図である。
基板等の被検査物の検査時に、検査用治具10を下降させて接触子20の先端部24aを被検査物30の配線等の対象部上の所定の検査点30d1に当接する。それにより、
図4に示すように、接触子20の棒状部24は、押し上げられてヘッド部12の貫通孔12h内に入り込む。上記のとおり、円筒部22の先端部22fと棒状部24とはP1において接合されているため、棒状部24が押し上げられると、それとともに円筒部22の先端部22fも押し上げられる。その結果、円筒部22の先端部22fの先端面22feは、ヘッド部12の小径部12h2の係止部を形成するプレート12uの面から離れる。
【0042】
図4の状態では、上記の如き検査が実施されることになるが、このとき、雄型部264と雌型部262とが嵌合された状態となっている。このとき、雄型部264の山頂部264cと雌型部262の谷底部262cが平面視において平行に(一直線状に)配置されていることになる。
【0043】
図5は、本接触子の雄型部と雌型部の動作を示す拡大概念図である。
図5(a)は接触子を検査用治具に備え付けられた状態を示し、
図5(c)は接触子が対象部に当接して検査が実施されている状態を示し、
図5(b)は(a)と(c)の間の状態を示している。
まず、
図5(a)に示される如く、対象部に接触子20の棒状部24の先端部24aが当接し、棒状部24を押圧し始めると、棒状部24の雄型部264の一部が雌型部262の斜面264aと当接して移動(図示する矢印方向に移動)する。
【0044】
そして、さらに棒状部24が対象部に押圧されると、雄型部264の斜面264aと雌型部262の斜面262aが密接状態となるように、棒状部24(雄型部264)が回転方向(円筒部の円周方向)に回動し始める(
図5(b)参照)。
そしてさらに、棒状部24が対象部に押圧されると、雄型部264の斜面264aと雌型部262の斜面262aが密接される。このとき、雄型部264の山頂部264cと雌型部262の谷底部262cとが対向するように配置され、直線状の山頂部264cと直線状の谷底部262cは平行な位置関係を有している。
なお、この
図5(c)の場合、山頂部264cと谷底部262cとの間に隙間が生じているが、接触子20と対象部は検査に必要な押圧力をばね部22sから得ていることになる。
【0045】
なお、検査が終了して検査用治具10が被検査物から離れると、棒状部24の先端部24aを押し上げる力がなくなるため、円筒部22の先端部22fは再びヘッド部12の係止部を形成するプレート12uの面に当接し、そこに保持される(
図3)。
また、ばね部22sが円筒部22の壁面に形成されており、板ばねと同様の構成を有していることになることから、棒状部24の先端部24aと対象部を離間する方向に移動させると、ばね部22sが上記説明の円周方向とは逆方向の復元力が働きながら、ばね部22sが基の長さに戻ることになる。このため、
図5(a)から(c)の逆状態((c)から(a))に動作することになる。
【0046】
また、上記の実施形態は基板を被検査物として説明をしたが、それに限定されるものではなく、被検査物として半導体装置も含む。
【0047】
また、上記の実施形態として、円筒部の後端部の端面は平坦として表したが、複数の先鋭形状の突出部を持つように形成してもよい。また、棒状部の先端部は先鋭形状として表したが、平坦でも半球形状でもクラウン状でもよい。
【0048】
以上、本発明に係る被検査物検査用の検査用治具及びそれに用いることのできる接触子のいくつかの実施形態について説明したが、本発明はそれらの実施形態に拘束されるものではなく、当業者が容易になしえる追加、削除、改変等は、本発明に含まれるものであり、また、本発明の技術的範囲は、添付の特許請求の範囲の記載によって定められることを承知されたい。